特許第5996102号(P5996102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5996102接触感応式の容量方式のディスプレイ用の入力機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996102
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】接触感応式の容量方式のディスプレイ用の入力機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20160908BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   G06F3/03 400F
   G06F3/044 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-514373(P2015-514373)
(86)(22)【出願日】2013年5月4日
(65)【公表番号】特表2015-525393(P2015-525393A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】EP2013001319
(87)【国際公開番号】WO2013178317
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年3月16日
(31)【優先権主張番号】102012010966.0
(32)【優先日】2012年5月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】314006226
【氏名又は名称】ステッドラー マルス ゲーエムーベーハー ウント コー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】STAEDTLER Mars GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リルケ ディクス
【審査官】 西田 聡子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0086664(US,A1)
【文献】 特開平09−006515(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/141743(WO,A1)
【文献】 実開昭57−175248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端を尖らすことができるように形成されている単純なペンである、接触感応式の容量方式のディスプレイ用の入力機器であって、
前記入力機器は、芯であるか、
又は前記入力機器は、コーティングを備えた芯であるか、
又は前記入力機器は、外装を備えた芯であるか、
又は前記入力機器は、装及びコーティングを備えた芯であり
前記芯及び前記外装、導電性に形成されている
ことを特徴とする、接触感応式の容量方式のディスプレイ用の入力機器。
【請求項2】
前記外装は、プラスチック及び/又は木材代用品(WPC)から形成されている、請求項1記載の入力機器。
【請求項3】
前記芯は、鉛芯、カラー芯、化粧芯又はイレーザ芯として形成されている、請求項1の入力機器。
【請求項4】
前記芯、前記外装及び/又は前記コーティングは、導電性の成分又は添加剤を有しており、
かつ該添加剤は、グラファイト、炭素繊維、導電煤、金属繊維、「カーボンナノチューブ」、銅顔料、銀めっきされた銅顔料及び/又は銀粉である、請求項1から3までのいずれか1項記載の入力機器。
【請求項5】
前記芯、前記外装及び/又は前記コーティングは、添加剤として、いわゆる帯電防止剤を有している、請求項1又は4記載の入力機器。
【請求項6】
導電性の前記コーティングは、カラー層又はシート層である、請求項1又は4項記載の入力機器。
【請求項7】
いわゆるタブレットコンピュータもしくはスマートフォンの接触感応式の容量方式のディスプレイのための、請求項1記載の入力機器の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部に記載された、いわゆる接触感応式の容量方式のディスプレイ用の入力機器、並びにこの入力機器の使用に関する。
【0002】
このようなディスプレイ用の入力機器は、原則的に公知である。
【0003】
例えば、導電性のシャフトから成る入力ペンが公知であり、このようなペンでは一端に、ディスプレイもしくはディスプレイの表面用の、弾性に形成された導電性で軟質のコンタクトプラグが形成されている。
【0004】
このような入力ペンには、それが純然たる入力ペンとしては価格が高すぎ、しかも筆記機能又は塗布機能を満たさないという欠点がある。
【0005】
さらに別の入力ペンは、一端に筆記機構又は塗布具もしくはアプリケータを有していて、他方の側に、コンタクトプラグとして形成された導電性の装置を有しており、このコンタクトプラグは、容量方式のディスプレイとの接触時に入力機能を可能にするもしくは発揮する。
【0006】
しかしながら上に述べた公知の入力ペンには、多くの欠点がある。
【0007】
例えばこのような入力ペンは、製造コストが高い。従来技術によるほぼすべてのこのような入力ペンは、ボールペンであり、従って使用者はその選択に関して極めて制限されている。
【0008】
ゆえに本発明の課題は、上に述べた公知の入力機器における欠点を有しておらず、かつ極めて安価に製造することができる入力機器を提供することである。本発明のさらなる課題は、入力機器を、使用者が引き続き慣れた形式で、完璧な筆記用具、製図用具、絵描き用具又は化粧用具として使用することができるようにすることである。
【0009】
この課題は、請求項1及び請求項7に記載の特徴によって解決される。
【0010】
本発明に係る入力機器は、先端を尖らせることができる単純な筆記用具、製図用具、絵描き用具、化粧用具又はイレーザであり、先端を尖らせることができるように形成された機器は少なくとも、マーキングを書くための芯又はマーキングを消すための芯から成っている。
【0011】
これによって包含される入力機器は、例えば、全体が芯として機能するソリッドコアペンであっても、又は木材、プラスチック及び/又は木材代用品(WPC)製の外装によって取り囲まれた芯であってもよい。このとき芯は、鉛芯、カラー芯、化粧芯又はイレーザ芯であってよい。
【0012】
さらにソリッドコアペン又は取り囲まれた芯が追加的に、例えばシートの形態のコーティング又は択一的な装飾表面層を有しているか否かは、些細なことである。
【0013】
驚いたことに、芯、芯外装及び/又はコーティングに導電性の成分又は添加剤を加えることによって、先端を尖らすことができる入力機器の芯材料及び/又は芯外装及び/又はコーティングが導電性に形成されていると、本発明のように単純な構造を有する安価な機器を、入力機器として利用できるということが判明している。
【0014】
上に述べたように、先端を尖らすことができる入力機器というのは、使用者が市販の鉛筆削り、手持ち式鉛筆削り又はその他の先端を尖らせる装置を用いて、使用可能な状態を得るために始めにもしくは後で尖らすことができる機器を包含する。
【0015】
芯が木材代用品によって取り囲まれている入力機器では、木材代用品は、プラスチック又はいわゆるWPC(木材プラスチック複合材)であってよい。このような入力機器もしくは外装又は外装用の部分は、押出し成形法もしくは同時押出し成形法又は射出成型法によって製造される。
【0016】
また入力機器は、色を出さない芯を有することもできる。このような芯は例えば、イレーザ芯であってよく、このイレーザ芯は同様に、いわゆるイレーザペンとしてソリッドイレーザペンであっても、又は外装を備えた芯/ストランドであってもよい。この場合においてもイレーザ材料及び/又は外装には、既に述べたように、物質/添加剤が混合されていて、これによってイレーザ材料は導電特性を有している。イレーザ芯の使用にはさらに、イレーザ芯がディスプレイとの接触時にディスプレイ上にマーキングを残さないという利点がある。イレーザ材料は軟質にかつ密着するように形成されているので、ディスプレイとの快適かつソフトな接触が可能である。
【0017】
既に述べたように、芯及び/又は芯外装及び/又はコーティングは、導電性に構成されていなくてはならず、これについては以下に例を挙げて詳しく述べる。
【0018】
ここで述べておくと、本発明によるペンを用いて、先端によっても先端とは反対側に位置する端部によっても、入力機能を発揮することができる。先端によって入力機能を発揮したい場合には、芯だけがディスプレイと接触するので、芯が導電性に形成されていなくてはならない。このように構成されていると、極めて正確な入力機能が可能である。
【0019】
入力機器の、先端とは反対に位置する側には、滑りラッカ(Gleitlack)が設けられていてよく、このようになっていると、入力機器はディスプレイ上をソフトに滑ることができる。滑りラッカは導電性に形成されていてもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0020】
導電性の場合、導電性でない領域はブリッジングされ、これによって機能は、ディスプレイに対する入力機器の当て付け角度とは無関係になる。
【0021】
滑りラッカは、先端を尖らすことができる筆記用具においていわゆる保護キャップ(Tauchkappe)として公知であるコーティングと見なすことができる。
【0022】
芯、外装及び/又はコーティングは、特定の添加剤の混合によって導電性になる。この添加剤はそれ自体が導電性を有している。
【0023】
このような添加剤としては、例えばグラファイト、炭素繊維、導電煤、金属繊維、「カーボンナノチューブ」、銅顔料、銀めっきされた銅顔料及び/又は銀粉が挙げられる。
【0024】
芯、外装、コーティング及び/又は接触エレメントを導電性にするために、これらの材料にもいわゆる帯電防止剤が添加されていてよい。帯電防止剤によって、対象物における静電気の帯電が阻止もしくは抑制される。このとき、内部の帯電防止剤と外部の帯電防止剤とを区別することが肝要である。このような帯電防止剤は、例えば金属ワイヤとして内部に加工することも、又は金属粉として外部に蒸着することもできる。
【0025】
導電性の外装のための例としては、導電性の木材代用品があり、この木材代用品は、従来技術である独国特許出願公開第102008034013号に基づいて公知のWPCであり、この木材代用品もしくはWPCは、5〜50質量%、好ましくは少なくとも10〜40質量%のグラファイトパウダの添加によって導電性にすることができる。
【0026】
従来技術による木材代用品材料は、下記の成分から成っている:
15〜30質量% 少なくとも一種のポリマ結合剤
50〜80質量% 少なくとも一種の有機充填剤
0〜20質量% 少なくとも一種の無機充填剤
0.5〜5質量% 少なくとも一種の接着促進剤
1〜30質量% 少なくとも一種のワックス
0〜10質量% 少なくとも一種のカラー顔料
0〜10質量% 少なくとも一種の無機添加剤。
【0027】
ポリオレフィンをベースとする木材代用品のための具体的な実施例は、下記のように構成されている:
60質量% 木粉
12質量% グラファイト
4質量% ワックス(アミドワックス)
2質量% 無機添加剤(ステアリン酸)
21質量% ポリオレフィン
1質量% 接着促進剤(無水マイレン酸グラフトポリプロピレン)。
【0028】
このとき驚くほど好適なこととして判明したことであるが、導電性添加剤の混合によって、市販の削り装置を用いた削り性が制限されることない。10Ncm未満のいわゆる削りモーメント(Spitzmoment)が、維持されている。
【0029】
木材によって取り囲まれた公知のペンにおけるすべての通常特性は、制限されることなく維持されている。
【0030】
外装材料としてWPCではなく、純粋なプラスチックが使用される場合には、プラスチックに導電性添加剤を混合する必要がある。
【0031】
スタンダードプラスチックは、約1014オームの電気的な体積抵抗を有している。導電性を得るための添加剤の混合によって、この値は102オームにまで低下させることができる。
【0032】
導電性プラスチックのための例としては、POLYONE社の製品「Gravi Tech GRV PP-030-IO Black FD」が挙げられる。
【0033】
芯は、鉛芯、カラー芯、イレーザ芯及び化粧芯又はチョークとして形成されていてよい。
【0034】
導電性の鉛芯は、従来技術に基づいて当業者にとって周知のように、下記のように形成されていてよい:
グラファイト 50質量%
クレー 40質量%
添加剤 1質量%
含浸剤 9質量%。
【0035】
例えばさらに、例えば市販のソリッドコアペンにおいて使用されるポリマ結合されたグラファイト芯を挙げることができる:
グラファイト 70質量%
ポリマ(PS) 20質量%
添加剤 1質量%
ワックス 9質量%。
【0036】
導電性のブルーのカラー芯のための例としては、下記の組成が挙げられる。銀めっきされた銅顔料はここでは導電性添加剤である:
1.5質量% 顔料、ブルー
39質量% 窒化ホウ素
16質量% 銀めっきされた銅顔料
5質量% ステアリン酸カルシウム
7質量% ステアリン酸
5質量% カルボキシメチルセルロース
8質量% 雲母
16.5質量% 凍石。
【0037】
汎用のイレーザ芯又はイレーザチップを導電性に構成するために、これらのイレーザにグラファイトを添加することができる。
【0038】
導電性のイレーザ物質のための基本処方は、例えば下記の通りである:
ポリマ 15〜90質量%
無機充填剤 0〜80質量%
オイル(例えばホワイト油) 0〜10質量%
グラファイト 10〜50質量%。
【0039】
ポリマはこのときSEBS、SBS、EPDM/PP又はこれらの混合物から及び/又はポリオレフィン、アクリラート又はPURを備えたものから成っていてよい。古典的な充填物質としては、チョーク、滑石及び/又はカオリンがある。
【0040】
導電性の化粧芯のための例としては、アイラインの芯が挙げられ、このアイラインの芯は、下記の組成を有している:
8質量% ステアリン酸リチウム
20質量% ミリスチン酸イソプロピル
11質量% 水酸化パーム核グリセリダーゼ
45質量% 顔料 ブルー
0.5質量% パンテノール
0.5質量% プロピルパラペン
15質量% 銀粉。
【0041】
この処方は、独国実用新案第202005021251号明細書に記載された変化態様としての処方であって、銀粉の添加/追加によって導電性にされた処方である。
【0042】
コーティングというのは、以下においてカラー層/ラッカ層又は薄いシートコーティングを意味し、これらは主として装飾目的もしくは表面シールのために役立つ。
【0043】
導電性のラッカコーティングのための1例は、下記の成分を有している:
ニトロセルロース 18質量%
可塑剤 6質量%
樹脂 6質量%
アクリラート 6質量%
グラファイト 12質量%
無機充填剤 20質量%
有機添加剤 0.5質量%
溶剤(VOC) 100質量%に対する残り。
【0044】
シートコーティングもまた導電性を有することができる。この場合の例としては、Kurz社の製品「Alufin」を挙げることができ、これはアルミニウム-金属被覆されたスタンピングホイルである。
【0045】
さらに驚くべきことであるが、導電性に構成された芯、外装及び/又はコーティング及び使用者の手との間に、直接的な接触部、もしくは直接的な導電性の移行部もしくは接点が存在している必要はない。さらに誘電体としての導電中断部が形成されていてよく、これにより、一種のコンデンサ素子が形成され、このコンデンサ素子によって、使用者のディスプレイと入力機器との接触時に十分に大きな電荷移動が生ぜしめられ、これによってタブレットにおいて入力機能を発揮することができる。
【0046】
そのために例として挙げられる入力機器では、芯及び外装が導電性であるが、薄いラッカ層は導電性ではない。入力機能は制限されずに与えられている。
【0047】
次に図1図3に示した実施形態を参照しながら本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】芯外装及びコーティングを備えた芯から成る入力機器を示す断面図である。
図2】芯と芯外装とから成る入力機器を示す断面図である。
図3】芯から成る入力機器を示す断面図である。
【0049】
図1には、芯外装113及びコーティング118を備えた芯112を有する入力機器1が示されている。図示の実施形態では、外装113及び芯112は導電性に形成されている。薄いコーティング118は、導電性に形成されていてよいが、導電性に形成する必要はない。コーティング118が導電性に形成されていない場合、図示されていない使用時に、使用者の手と入力機器1との間には、コンデンサ/誘電体が形成されている。薄いコーティング118では容量が極めて大きいので、タブレットの接触時における電荷の移動(Ladungsverschiebung)は、入力機能を得るもしくは発揮するのに十分である。
【0050】
本実施形態では、芯112、ひいては先端117も導電性に形成されているので、タブレットにおいて入力機能は、先端117によっても、先端117とは反対側に位置する端部によっても行うことができる。
【0051】
図2には、外装113を備えた芯112を有する入力機器1の択一的な態様が示されかつ記載されている。
【0052】
図3には、ソリッドコアペン(Vollminenstift)11として形成された入力機器1が示されている。芯112は、本実施形態ではペン11の全横断面にわたって延在している。
【0053】
図示されていない使用時には、使用者は入力機器をタブレットの表面と接触させ、これによりタブレットと使用者の手との間における導電接続を生ぜしめる。この接触によって電荷の移動が発生し、これによってタブレットもしくはタブレットPCにおける入力機能が発揮される。
【0054】
先端117とは反対側に位置している端部には、滑りラッカ層119が設けられており、この滑りラッカ層119は、本実施の形態では非導電性に形成されている。
【0055】
この入力機器は、いわゆるタブレットコンピュータもしくはスマートフォンの接触感応式の容量方式のディスプレイのために又はディスプレイにおいて使用される。入力機器1は、先端を尖らすことができるように形成された単純なペン11である。入力機器1は、芯であるか、又は入力機器1は、コーティングを備えた芯であるか、又は入力機器1は、外装を備えた芯であるか、又は入力機器1は、芯、外装及びコーティングを有している。芯、外装及び/又はコーティングは、導電性に形成されている。
【0056】
芯、外装及び/又はコーティングは、導電性の成分又は添加剤を有しており、このとき添加剤は、グラファイト、炭素繊維、導電煤、金属繊維、「カーボンナノチューブ」、銅顔料、銀めっきされた銅顔料及び/又は銀粉である。
【符号の説明】
【0057】
1 入力機器
11 単純なペン
112 芯
113 外装
117 先端
118 コーティング
119 滑りラッカ
図1
図2
図3