【文献】
『DSココロぬりえ』で心の状態をチェック 疲れた心を元気にしよう,週刊ファミ通,株式会社エンターブレイン,2010年 4月22日,第25巻第18号,p.46-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態においては、高齢者施設等におけるレクレーションやリハビリの一環として、塗り絵の実施事例を用いて説明する。また、本発明に係る塗り絵色彩心理診断システムを、高齢者施設等で適用した事例を用いて説明する。
<塗り絵図柄>
【0013】
まず、本実施形態に係る塗り絵について詳しく説明する。本実施形態に係る塗り絵図柄は、マンダラの模様色塗りや一般的な模様色塗り絵のような幾何学的模様ではなく、塗り絵者(高齢者等)が興味を持って取り組めるよう日常生活の中で誰もが知っている素材を図柄化したものが用いられる。また、日常的なレクレーションやリハビリの一環として実施されるため、毎回異なる図柄の塗り絵を楽しめるように複数種類の塗り絵図柄が用意される。
【0014】
さらに、本実施形態に係る塗り絵は、色塗りの際に使用される色に塗り絵者の固定概念が影響しない「塗り絵A」と、色塗りの際に使用される色に塗り絵者の固定概念が影響する「塗り絵B」というように、その図柄特性によって2つの種類・タイプに分類する。以下、まず先に塗り絵Bについて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る塗り絵Bの図柄の一例を示す図である。
図1に示される塗り絵においては、(b1)海、(b2)山、(b3)花畑といった風景画が塗り絵図柄として描かれている。
【0016】
ここで、
図1に示されるような風景画の塗り絵の場合、大抵の人は空や海は青に塗ってしまうし、山並であれば緑色に塗ってしまうし、さくらであれば桃色(ピンク色)に塗ってしまうことが多い。例えば、赤色や黒色はイライラ・不安・暴力的などといった感情を示唆することが知られているが、塗り絵者がこのような感情を持っている場合でも、空や海の図柄には青(すがすがしい等の感情を示唆)を塗ってしまう可能性が大きい。
【0017】
即ち、概念的に決まった基本色が存在する図柄を塗り絵図柄として採用すると、殆どの人が自身の固定概念に影響されていつも同じ色を選択して塗る可能性が高く、塗り絵者の心理模様が色として表現されにくいため、色彩心理を診断するための塗り絵素材として適さない。
【0018】
このような概念的に決まった基本色が存在するタイプの図柄は、自然物、自然材、自然生物など自然由来の素材に多く見られる。具体的に、木、葉、空、海、川、山、雪、星、生き物などが挙げられる。
【0019】
一方、自然由来の色(例えば、緑や青)は、癒しやリラックス効果、リラクゼーション効果をもたらしたり、自律神経を鎮め整える色が多いという特性がある。また、日本人は季節の移ろいに敏感であるため、四季折々の自然由来の図柄を用意し、外出がままならない高齢者であっても塗り絵から四季を感じることができる。このように、例えば、風景画のような、自然由来の素材図柄を用いた塗り絵図柄Bは、塗り絵者にリラクゼーション効果をもたらす、健康促進用塗り絵ともいえる。
【0020】
図2は、本実施形態に係る塗り絵Aの図柄の一例を示す図である。
図2に示される塗り絵においては、(a1)ネクタイ、(a2)帽子、(a3)カバンが、塗り絵図柄として描かれている。
【0021】
図2に示される塗り絵のように、概念的に決まった基本色が存在しない図柄を塗り絵図柄として採用すると、殆どの人がその時々の心理状態に応じて様々な色を選択して色を塗る可能性が高く、塗り絵者の心理模様が色として表現されやすいため、色彩心理を診断するための塗り絵素材として適している。
【0022】
このような概念的に決まった基本色が存在しないタイプの図柄は、塗り絵図柄Bとは逆に、現実社会において多様な色が存在する物品の図柄である。このような図柄に対して人は様々な色があることを知っているため、硬直的な色概念を持っていない。このようなタイプの図柄は、典型的には例えば、ネクタイ、帽子、カバン、コップ、車、ハンカチ、テーブルクロスなど、意匠物品に多く見られる。
【0023】
即ち、現実社会において意匠物品は、購買者の嗜好に応じて多種多様な色付けやデザインがなされる。このため、意匠物品を塗り絵図柄として採用した場合、人がイメージする色の固定概念が出ないため、塗り絵者の心理模様が表現されやすく、色彩心理をより的確に診断するための塗り絵素材として適している。
以下、意匠物品を図柄として用いた塗り絵を塗り絵A、風景画を図柄として用いた塗り絵を塗り絵Bと呼ぶ。
<システム構成>
【0024】
図3は、本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システムの構成例を示す図である。
図3の塗り絵色彩心理診断システム100は、診断サーバ1、端末2、スキャナ装置3、電子カルテサーバ4、ネットワーク5、及び塗り絵Aを含む。
【0025】
診断サーバ1は、端末2からの要求に応じて、塗り絵者に対する色彩心理診断を実行する情報処理装置である。また、診断サーバ1は、色彩心理診断に用いられる各種情報が格納されたDB(Database)1aを有する。
【0026】
端末2は、高齢者施設等の介護スタッフが利用するクライアント端末である。例えば、PCや、スマートフォン又はタブレット端末といった携帯型端末でもよい。介護スタッフは塗り絵者に対する色彩心理診断を行う際、端末2を操作する。なお、診断サーバ1が端末2を兼ねてもよく、この場合、介護スタッフは診断サーバ1を操作する。
【0027】
スキャナ装置3は、紙媒体の塗り絵Aをスキャンし、塗り絵画像データを読み取るための画像読み取り装置である。塗り絵画像データは、診断サーバ1へ送信される。なお、スキャナ装置3は、端末2に接続されていてもよいし、診断サーバ1と接続されていてもよいし、またネットワーク5と直接接続されていてもよい。診断サーバ1以外と接続されている場合、塗り絵画像データは、ネットワーク5を介して診断サーバ1へ送信される。
【0028】
電子カルテサーバ4は、介護用又は医療用の電子カルテ情報を管理する情報処理装置である。電子カルテサーバ4は、塗り絵者となる高齢者の個人情報が格納されたDB4aを有する。
【0029】
ネットワーク5は、診断サーバ1、端末2、スキャナ装置3、及び電子カルテサーバ4を相互に接続する通信ネットワークである。また、ネットワーク5は、有線又は無線を問わず、例えば、電話回線網、WiFi(登録商標)、インターネットなどのLAN及びWANネットワークを含む。
【0030】
塗り絵Bは、上述したように自然由来の素材を図柄として用いた紙媒体の塗り絵画である。高齢者等の塗り絵者により色塗りされた塗り絵Aは、スキャナ装置3によりスキャンされ、塗り絵画像データが診断サーバ1へ送信される。
<ハードウェア構成>
【0031】
図4は、本実施形態に係る診断サーバのハードウェア構成例を示す図である。診断サーバ1は、ハードウェア構成として、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、HDD(Hard Disk Drive)14、入力装置15、表示装置16、通信装置17を有する。
【0032】
CPU11は、各種プログラムの実行や演算処理を行う。ROM12は、起動時に必要なプログラムなどが記憶されている。RAM13は、CPU11での処理を一時的に記憶したり、データを記憶したりする作業エリアである。HDD14は、各種データ及びプログラムを格納する。
【0033】
入力装置15は、例えばキーボードやマウスなどの各種入力装置である。表示装置16は、ディスプレイなどで、各種の情報表示を行う装置である。通信装置17は、ネットワーク5を介し他装置との通信を行う装置である。
<ソフトウェア構成>
【0034】
図5は、本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システムの機能構成例を示す図である。塗り絵色彩心理診断システム100は、主な機能部として、塗り絵読取部101、画像解析部102、個人情報取得部103、色彩心理判定部104、推奨塗り絵選択部105、出力部106、記憶部107を有する。
塗り絵読取部101は、塗り絵者により色塗りされた塗り絵Aの画像を読み取る機能を有する。
画像解析部102は、画像解析を実行し、塗り絵Aの画像から、色塗りされた図柄の色彩情報を取得する機能を有する。
個人情報取得部103は、塗り絵者の個人情報を取得する機能を有する。
【0035】
色彩心理判定部104は、画像解析部102により取得された色彩情報と、個人情報取得部103により取得された個人情報とに基づいて、塗り絵者の色彩心理を判定する機能を有する。
【0036】
推奨塗り絵選択部105は、色彩心理判定部104により判定された色彩心理に応じて、塗り絵A及び塗り絵Bの中から、塗り絵者に推奨するための塗り絵(以下、推奨塗り絵と呼ぶ)を選択する機能を有する。
出力部106は、色彩心理判定部104により判定された色彩心理及び推奨塗り絵選択部105により選択された推奨塗り絵を出力する機能を有する。
記憶部107は、複数種類の塗り絵A、塗り絵B、及びDB1a等を記憶する機能を有する。例えば、HDD14により実現される。
【0037】
なお、塗り絵読取部101は、スキャナ装置3により実現される。また、画像解析部102、個人情報取得部103、色彩心理判定部104、推奨塗り絵選択部105、出力部106、記憶部107は、診断サーバ1を構成するコンピュータのCPU、ROM、RAM等のハードウェア資源上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されるものである。これらの機能部は、「手段」、「モジュール」、「ユニット」、又は「回路」に読替えてもよい。
[情報処理]
【0038】
次に、塗り絵の実施例として、高齢者施設の男性(山田太郎)による塗り絵Aの事例を挙げながら、塗り絵色彩心理診断システム100の実行する情報処理について詳しく説明する。
【0039】
図6は、本実施形態に係る情報処理の全体を説明するフローチャートである。本フローチャートは、ステップS1の塗り絵読取処理、ステップS2の色彩情報取得処理、ステップS3の個人情報取得処理、ステップS4の色彩心理判定処理、ステップS5の推奨塗り絵選択処理、ステップS6の出力処理を有する。以下、ステップ毎に説明する。
<塗り絵読取処理>
【0040】
ステップS1の塗り絵読取処理について説明する。スキャナ装置3の塗り絵読取部101は、塗り絵者により色塗りされた塗り絵Aの画像を読み取る処理を実行する。
【0041】
図7は、本実施形態に係る塗り絵読取処理を説明する図である。色彩心理を診断するための塗り絵素材として適した塗り絵Aの中から、塗り絵A1を塗り絵者自身に選択させる。複数種類(複数図柄)ある塗り絵Aのうち、本人の興味にマッチする塗り絵を実施してもらうためである。今回選択された塗り絵A1は、ネクタイ図柄の塗り絵である(
図2(a)参照)。男性は、色鉛筆やクレパス等の筆記具を用いて、ネクタイ図柄に色塗りを行う。色塗りされた塗り絵A1は、塗り絵A2となる。
図8は、本実施形態に係る端末の診断開始画面の一例を示す図である。
【0042】
介護スタッフは、端末2の診断開始画面200を表示し、男性から受け取った色塗りされた塗り絵A2をスキャナ装置3にセットし、「読込開始」201を押下する。「読込開始」201が押下されるとスキャナ装置3が作動し、紙媒体の塗り絵A2を電子的に読み込む。スキャナ装置3(塗り絵読取部101)により塗り絵A2が読み取られると、スキャンされて読み取ったデータである塗り絵画像A2’が表示欄202に表示される。
【0043】
次に、介護スタッフは、男性の会員No等を入力・検索するなどして、塗り絵A1の塗り絵者を端末2に入力する。その後介護スタッフは、「開始」203を押下し、色彩心理診断を開始する。「開始」203が押下されると、端末2から診断サーバ1へ、色彩心理診断の開始命令、塗り絵画像A2’、塗り絵者の情報が送信される。
【0044】
なお、例えば、会員Noなどの識別子を塗り絵A2の所定欄(非図示)に記入しておき、スキャンされて読み取った塗り絵画像A2’に対して画像処理を行うことで、当該識別子を取得し、塗り絵者の情報が自動入力されるようにしてもよい。介護スタッフが塗り絵者を端末2に入力する作業を省略できる。
【0045】
また、スキャナ装置3に代えてペンタブレットなどの絵描用デバイスを用いる場合、タブレット上に表示された塗り絵A1に対して塗り絵を行うことで、紙媒体のスキャンなしに、塗り絵画像データを取得し、診断サーバ1へ送ることも可能である。
<色彩情報取得処理>
【0046】
次に、ステップS2の色彩情報取得処理について説明する。診断サーバ1の画像解析部102は、スキャンされて読み取ったデータである塗り絵画像A2’に対して画像解析を実行し、塗り絵画像A2’から、色塗りされた図柄の色彩情報を取得する。
【0047】
図9は、本実施形態に係る塗り絵画像の画素分割の一例を示す図である。画像解析部102は、塗り絵画像A2’を画素単位でRGB値を解析し取得する。例えば、塗り絵画像A2’において、M×N個の画素が存在する場合、M×N個のRGB値を得る。
<個人情報取得処理>
【0048】
次に、ステップS3の個人情報取得処理について説明する。診断サーバ1の個人情報取得部103は、電子カルテサーバ4から、今回対象となる塗り絵者の介護支援にかかる個人情報を取得する。上述したように、電子カルテサーバ4は、高齢者施設等において予め設置されており、介護用又は医療用の電子カルテとして、全介護者の個人情報を有している。
【0049】
図10は、本実施形態に係る個人情報の一例を示す図である。
図10に示されるように、個人情報は、(a)基本情報の一例として、「会員No」、「氏名」、「性別」、「年齢」、「生年月日」、「住所」、「家族構成」、「要介護度」、「デイ通所日」、「健康状態・持病等」、「職業(過去を含む)」、「性格・個性」、「趣味」等の項目がある。
また、(b)要介護者認定項目の一例として、「基本(身体機能・起居)動作」、「生活機能」、「認知機能」、「社会生活への適応力」等の項目がある。
また、(c)塗り絵実施日当日の環境情報や体調情報がある。一例として、「日付」、「気温」、「体温」、「血圧」、「食事」等の項目がある。
このように、高齢者施設等における塗り絵者の個人情報は、介護支援に関する情報を含む。
<色彩心理判定処理>
【0050】
次に、ステップS4の色彩心理判定処理について説明する。診断サーバ1の色彩心理判定部104は、色彩情報取得処理により取得された色彩情報と、個人情報取得処理により取得された個人情報とに基づいて、塗り絵者の色彩心理を判定する。
(塗り絵色の色分類)
【0051】
図11は、本実施形態に係る塗り絵色分類表の一例を示す図である。
図11に示される塗り絵色分類表は、DB1aに予め記憶されており、塗り絵から取得された色(色彩情報)を、予め規定されている24つの色分類のうち、何れか一に分類するための表である。
【0052】
横列には、例えば、「Red」(赤色)、「Orange」(オレンジ色)、「Yellow」(黄色)、「Green」(緑色)、「Blue」(青色)、「Purple」(紫色)、「Pink」(桃色)、「Achromatic」(無彩色)という8つの主な色系統が規定される。
【0053】
また、縦列に記載されるように、各色系統は明度に応じて、例えば、1(明るめ)、2(中間)、3(暗め)という3つに分類される。よって例えば、赤色系統の場合、Red1、Red2、Red3という3つの色分類がある。
なお、実際のコンピュータ上、塗り絵色分類表における各色分類は、色分類毎に属する色のRGB値(RGB値の範囲)として規定される。
【0054】
色彩心理判定部104は、塗り絵色分類表を参照して、画像解析部102により取得された色彩情報である画素のRGB値に基づいて、各々の画素を24つある色分類のうち、何れか一に分類する。例えば、塗り絵上の画素がM×N個ある場合、それぞれの画素のRGB値を、色分類のRGB値(RGB値の範囲)に従って、色分類の何れか一に分類する。
次に、24つある色分類のうち、分類された画素が多い順に色分類を並べ、例えば、分類された画素が多い上位3つの色分類を特定する。
【0055】
なお、塗り絵Aの紙色が白色であったりと塗り絵Aの背景が例えば白色である場合、塗り絵されていない領域は白と画像解析されるが、塗り絵されていない領域が塗り絵された特定色の領域よりも比較的大きい場合、上位3つの色分類の中に白が分類される色分類が上位3つ以内に入ってしてしまう可能性がある。よって色彩心理判定部104は、上位3つの色分類の中に塗り絵Aの背景と同一色が分類される色分類が入っている場合、当該色分類を削除し、次位以降の色分類を繰り上げる処理を実行する。これにより、色塗りされていない白紙部分の色を除外できる。この場合、塗り絵Aの背景色は既知情報である。
【0056】
また、診断サーバ1に塗り絵Aの画像を予め読み込んでおき、塗り絵Aの紙媒体上における図柄の位置座標を与えておく。例えば、塗り絵A1の画像を予め読み込んでおき、塗り絵Aの紙媒体上におけるネクタイ図柄の位置座標を与えておく。この場合、色情報取得処理において、診断サーバ1の画像解析部102は、図柄の位置座標に基づいて、スキャンされて読み取ったデータである塗り絵画像A2’の図柄内の領域に対してのみ画像解析を実行し、塗り絵画像A2’から、色塗りされた図柄の色彩情報を取得する。例えば、背景色が多い塗り絵Aの場合、図柄内以外の領域の色を対象から除外することが可能となる。
【0057】
また、塗り絵色分類表の色分類の規定はあくまでも一例である。即ち、上述の8つの主な色系統はそれ以上の数に細かく分類可能であり、各色系統の明度段階も3以上の数に細かく分類可能であり、その結果、色分類はより細かく規定されうる。
(色彩心理の絞込み処理1)
【0058】
図12は、本実施形態に係る赤系統の色彩心理対応表の一例を示す図である。また、
図13は、本実施形態に係る無彩色系統の色彩心理対応表の一例を示す図である。各色系統の色彩心理対応表は、DB1aに予め記憶されている。
【0059】
図12及び
図13に示されるように色彩心理対応表においては、「色分類」と、「心理No」と、「心理・感情」との情報が対応付けられている。なお、色彩心理対応表の「色分類」は、
図11の塗り絵色分類表の分類と対応する。
【0060】
また、色彩心理対応表は、主な色系統分が規定されている。即ち、
図12の赤系統の色彩心理対応表及び
図13の無彩色系統の色彩心理対応表のほか、オレンジ系統、黄色系統、緑系統、青系統、紫系統、桃色系統の色彩心理対応表がある(非図示)。
【0061】
色彩心理判定部104は、色彩心理対応表を参照し、分類された画素が多い上位3つの色分類に対応する「色分類」に基づいて、「心理No」及び「心理・感情」を取得する。ここで、1つの「色分類」に対して「心理・感情」が複数あるのは、1つの色と人の感情とは、必ずしも1対1の関係に定まらないためである。
【0062】
例えば、分類された画素の数が1位の色分類に対応する「色分類」がRed2の場合、取得される「心理No」、「心理・感情」は、「7.感情的」〜「57.暖かい」となる。
【0063】
また例えば、分類された画素の数が2位の色分類に対応する「色分類」がAchromatic3の場合、取得される「心理No」、「心理・感情」は、「47.ひとり」〜「80.悪」となる。
(色彩心理の絞込み処理2)
【0064】
図14は、本実施形態に係る個人情報の色彩心理対応表の一例を示す図である。個人情報の色彩心理対応表は、DB1aに予め記憶されている。
図14に示されるように個人情報の色彩心理対応表においては、個人情報である「基本情報」、「要介護者認定項目」、及び「環境情報・体調情報」の値である「キーワード」と、色系統毎の「心理・感情」との情報が対応付けられている。
【0065】
色彩心理判定部104は、個人情報の色彩心理対応表を参照して、取得した個人情報の中に、「キーワード」が含まれているかどうかを判定する。取得した個人情報の中に、「キーワード」が含まれている場合、その「キーワード」に対応付けられている色系統毎の「心理・感情」を取得する。
【0066】
例えば、取得した個人情報の中に、「キーワード」不仲、社長、こだわりが強い、麻痺等、右上肢、食事接種、つめ切り、上衣の着脱、ズボン等の着脱が含まれている場合(
図10参照)、これらの「キーワード」に対応付けられている赤系統の「心理・感情」として、ストレス、情熱、活力、主張、熱いを取得する。また、無彩色系統の「心理・感情」として、ストレスを取得する。
図15は、本実施形態に係る絞込み処理の一例を示す図である。
【0067】
Red2の場合、「7.感情的」〜「57.暖かい」の中から、「キーワード」に対応付けられている赤系統の「心理・感情」ストレス、情熱、活力、主張、熱いと一致する「心理・感情」を取得する。例えば、
図15の場合、「32.主張」、「34.活力」、「40.熱い」、「45.情熱」が取得される。
【0068】
Achromatic3の場合、「47.ひとり」〜「80.悪」の中から、ストレスと一致する「心理・感情」を取得する。例えば、
図15の場合、「54.ストレス」が取得される。
【0069】
以上の処理により、色彩心理判定部104は、塗り絵色に基づく色彩心理のうち、当該塗り絵者の個人情報に基づいて絞り込みを行った結果、塗り絵者の色彩心理は、「32.主張」、「34.活力」、「40.熱い」、「45.情熱」、及び「54.ストレス」であると判定する。
<推奨塗り絵選択処理>
【0070】
次に、ステップS5の推奨塗り絵選択処理について説明する。推奨塗り絵選択部105は、色彩心理判定部104により判定された色彩心理に基づいて、複数種類の塗り絵A及び塗り絵Bの中から、次に塗り絵者に推奨するための推奨塗り絵を選択する。
図16は、本実施形態に係る塗り絵選択処理を説明するフローチャートである。
【0071】
S61:推奨塗り絵選択部105は、個人情報取得処理により取得された個人情報から、塗り絵者の「性別」及び「趣味」を取得する。例えば、
図10(a)の場合、「性別」は男性、「趣味」は釣り、ゴルフが取得される。
【0072】
S62:推奨塗り絵選択部105は、色彩心理判定部104により判定された色彩心理がネガティブな心理を含むか否かを判定する。色彩心理は、大きくはポジティブな心理とネガティブな心理とに分けることができるが、ネガティブな心理かどうかは、色彩心理判定部104により判定された色彩心理が、ネガティブワード(例えば、ストレス、怒り、激情・・)と一致するか否かにより判定しうる。なお、ネガティブワードは、予め規定された既知情報として記憶されている。
【0073】
例えば、色彩心理判定部104により判定された色彩心理が、「32.主張」、「34.活力」、「40.熱い」、「45.情熱」、及び「54.ストレス」というとき、ネガティブワードであるストレスが含まれていると判定する。
【0074】
なお、色彩心理判定部104により判定された色彩心理のうち1つのみのネガティブワードと一致した場合にネガティブな心理を含むと判定するほか、2つ、3つといたように複数のネガティブワードと一致した場合にネガティブな心理を含むと判定することも可能である。また、色彩心理判定部104により判定された色彩心理のうち、ネガティブワードと一致する色彩心理の割合が一定値以上(例えば、50%)である場合にネガティブな心理を含むと判定することも可能である。何れも塗り絵者の心理は穏やかな状態にない可能性が高いと推測できる場合にのみ、ネガティブな心理を含むと判定するためである。
ネガティブな心理を含む場合、S63へ進む。一方、ネガティブな心理を含まない場合、S64へ進む。
【0075】
S63:推奨塗り絵選択部105は、色彩心理判定部104により判定された色彩心理がネガティブな心理を含む場合、塗り絵者の心理は穏やかな状態にないことを示している。よってこの場合、推奨塗り絵選択部105は、塗り絵者に次に推奨するための推奨塗り絵として、複数種類ある塗り絵Bの中から、S61で取得した「性別」及び「趣味」と対応付けられた塗り絵(推奨塗り絵)を選択する。
【0076】
図17は、本実施形態に係る塗り絵情報の一例を示す図である。塗り絵情報は、DB1aに予め記憶されている。
図17を参照すると、例えば、S61で「性別」は男性、「趣味」は釣り、ゴルフが取得されている場合、塗り絵タイプBの中から、「性別」男、「趣味」釣りと対応付けられている塗り絵No201が選択される。
【0077】
ここで、S63の場合、選択される塗り絵は、必ず塗り絵Bである。上述したように、塗り絵Bは、例えば、風景画などの自然由来の素材図柄を用いた塗り絵であるため、塗り絵者自身も気が付かないうちに自然と緑や青などのリラクゼーション効果等のある色を用いて、塗り絵者が塗り絵を実施することが可能となる。これにより、例えば、イライラしていた塗り絵者が、塗り絵という日常的なレクレーションやリハビリが、ネガティブな心理状態を整える一助となる。
【0078】
また、塗り絵Bの中から、「性別」及び「趣味」と対応付けられた塗り絵を選択するのは、塗り絵者の関心のより高い塗り絵を選択するためである。塗り絵の図柄によっては、男性向け、女性向けがあるし、趣味に合う塗り絵の方が取り組む意欲が高くなる。
【0079】
S64:一方、推奨塗り絵選択部105は、色彩心理判定部104により判定された色彩心理がネガティブな心理を含まない場合、塗り絵者の心理は穏やかな状態にあることを示している。よってこの場合、推奨塗り絵選択部105は、塗り絵者に次に推奨するための推奨塗り絵として、複数種類ある塗り絵A及び塗り絵Bの範囲中から、S61で取得した「性別」及び「趣味」と対応付けられた塗り絵(推奨塗り絵)を選択する。即ち、選択される塗り絵は、塗り絵A又は塗り絵Bである。
【0080】
S64の場合、塗り絵者の心理は穏やかな状態にあるため、次回もまた塗り絵自体をより楽しんでもらえるよう、塗り絵A又は塗り絵Bの中から広く塗り絵者自身の趣味等にマッチする塗り絵を選択する。なお、塗り絵A又は塗り絵Bは、上述したように各々の特性を有するが、塗り絵者の心理は穏やかな状態にある場合、塗り絵A、塗り絵Bであろうともあくまでその図柄を塗り絵図柄として楽しむことができる。
【0081】
再び
図17を参照し、例えば、S61で「性別」は男性、「趣味」は釣り、ゴルフが取得されている場合、塗り絵タイプA及びBの中から、「性別」男、「趣味」釣り、及びゴルフとも対応付けられている塗り絵No104が選択される。
【0082】
なお、塗り絵は、塗り絵者の多様な「趣味」にマッチするよう、塗り絵A及び塗り絵Bのそれぞれ毎に出来る限り多くの種類(図柄)を用意するとよい。また、「性別」や「趣味」とマッチするよう塗り絵が存在しない場合、「性別」や「趣味」に依存しにくい図柄が描かれた塗り絵を選択できる。このような汎用的な図柄の塗り絵は、塗り絵情報において「性別」や「趣味」が空欄となっている。
【0083】
また、選択される塗り絵、即ち推奨塗り絵は必ずしも1つでなくともよく、S63、S64の条件に合う場合、複数選択されてもよい。複数の推奨塗り絵の中から、塗り絵者本人や介護スタッフがさらに選択可能となるからである。
<出力処理>
次に、ステップS6の出力について説明する。出力部106は、色彩心理及び推奨塗り絵を出力する。
【0084】
図18は、本実施形態に係る端末の診断結果表示画面の一例を示す図である。
図18に示されるように、端末2の診断結果表示画面210は、塗り絵画像A2’の表示欄211、色彩心理診断結果の表示欄212、スタッフ記録欄213を有する。
塗り絵画像A2’の表示欄211には、色彩心理を診断するために入力された塗り絵の画像が表示される。
【0085】
色彩心理診断結果の表示欄212には、色彩心理判定部104により判定された塗り絵者の色彩心理及び個人情報に基づく説明文や心理キーワードなどが表示される。介護スタッフは、これら情報を参考にして、高齢者心理状態の把握するための1つの情報ツールとして参考にし、ケア活動に役立てることが可能である。
スタッフ記録欄213は、表示直後は空白で、履歴表示等から参照できるよう、介護スタッフが塗り絵時の塗り絵者の様子や特記事項等を記録として記入する。
【0086】
図19は、本実施形態に係る端末の推奨塗り絵表示画面の一例を示す図である。
図19に示されるように、端末2の推奨塗り絵表示画面220は、推奨塗り絵の表示欄221、塗り絵の説明の表示欄222、「印刷」ボタン223を有する。
【0087】
推奨塗り絵の表示欄221には、推奨塗り絵選択部105により選択された推奨塗り絵が表示される。塗り絵の説明の表示欄222は、推奨塗り絵の説明や効果が表示される。「印刷」ボタン223は、押下することで、推奨塗り絵を印刷できる。
【0088】
介護スタッフは、これら情報を参考にして、次回実施する塗り絵選びに役立てることが可能である。つまり、介護スタッフ自身に知識がなくとも、次回、推奨塗り絵の表示欄221の推奨塗り絵を用いることで、次回その塗り絵者にとって適した塗り絵を実施することが可能となる。
【0089】
例えば、塗り絵者がストレスを感じている心理状態の場合、次回塗り絵Bの塗り絵を実施することで、自然と青系色や緑系色が用いられる色塗り作業を通じて、その塗り絵色から与えられるリラクゼーション効果等を得ることができる。また、塗り絵Bの塗り絵自体がその塗り絵者の性別や趣味に合う塗り絵を実施できるので、施設のアクティビティとしてもいっそう塗り絵に対して興味を持って取り組むことできる。即ち、色彩心理診断結果に基づく推奨塗り絵をその後の心理ケアに役立てることが可能である。
【0090】
なお、推奨塗り絵は複数表示されてもよい。複数の推奨塗り絵の中から、塗り絵者本人や介護スタッフの当日の希望や気分等に応じて好きな塗り絵を選択できる。
[適用事例]
本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システム100は、例えば、学校、職場、医療施設などの施設において適用することも可能である。
【0091】
例えば、学校においては、子供たちのメンタルチェックの一環として、本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システム100による塗り絵色彩心理診断を行うことが可能である。学校において、メンタルカウンセリングの一環として、塗り絵を用いた色彩心理診断を行うことで、子供たちのストレスや心の不安感を把握し、その後のケア活動の一助となる。
【0092】
なお、塗り絵者である子供の個人情報は、子供特有の不安感や悩みに少なからず影響を与える学業成績や学校の友人関係、部活動など学校生活に関する情報、さらには家庭環境などの情報を含む。これにより、塗り絵者である子供に対してより適切な塗り絵色彩心理診断を実施することが可能である。
【0093】
また、小学校や幼稚園、保育園に通う比較的低年齢の子供の場合、塗り絵自体が教育カリキュラムの一環として取り入れて実施可能なものであるため、本システムとの親和性も高い。
【0094】
また例えば、職場においては、福利厚生等の一環として、本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システム100による塗り絵色彩心理診断を行うことが可能である。職場において、従業員の健康診断のみならず、心の健康診断やメンタルカウンセリングの一環として、塗り絵を用いた色彩心理診断を行うことで、従業員の心の不安感や問題等を把握し、その後のケア活動の一助となる。
【0095】
なお、塗り絵者である従業員の個人情報は、例えば、部署、担当業務、業務成績、残業時間などの情報を含む。これにより、塗り絵者である従業員に対してより適切な塗り絵色彩心理診断を実施することが可能である。
【0096】
また例えば、医療施設においては、患者やのメンタルチェックの一環として、本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システム100による塗り絵色彩心理診断を行うことが可能である。医療施設において、患者の心のケア活動の一環として、塗り絵を用いた色彩心理診断を行うことで、患者の病気や怪我に対する不安感を把握し、その後の治療活動の一助となる。
【0097】
なおこの場合、塗り絵者である患者の個人情報は、病状、病歴などの診察情報を含む。これにより、塗り絵者である患者に対してより適切な塗り絵色彩心理診断を実施することが可能である。
【0098】
また他にも、例えば、妊娠中の妊婦や、産後育児ノイローゼの可能性のある母親にも本本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システム100による塗り絵色彩心理診断を行い、心のケア活動を支援することが可能である。
<まとめ>
【0099】
以上、本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システムにおいては、色彩心理の診断に用いられる塗り絵として、「塗り絵A」(意匠物品の塗り絵図柄)が用いられる。意匠物品は、塗り絵者の心理模様が色として表現されやすく、色彩心理を診断するための塗り絵素材として適しているためである。
【0100】
また、本実施形態に係る色彩心理は、塗り絵色に加えて、当該塗り絵者の個人情報に基づいて判定されるので、より適切な色彩心理を判定することができる。特に、高齢者施設等における塗り絵者の個人情報は、介護支援に関する情報を含むため、高齢者施設等における高齢者に対して、より適切な色彩心理を判定することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る塗り絵色彩心理診断システムにおいては、塗り絵者がネガティブな色彩心理を有する場合(塗り絵者の心理が穏やかな状態にないことを示す場合)、塗り絵者に次に推奨するための推奨塗り絵として、複数種類ある「塗り絵A」(意匠物品の塗り絵図柄)及び「塗り絵B」(風景画の塗り絵図柄)の中から、「塗り絵B」が推奨される。「塗り絵B」は、例えば、風景画などの自然由来の素材図柄を用いた塗り絵であるため、塗り絵を通じて色が与えるリラクゼーション効果を塗り絵者に期待することが可能である。介護スタッフは自身に色彩心理に関する知識がなくとも、システムに従って色彩心理診断結果に基づく推奨塗り絵を塗り絵者に推奨すればよい。
【0102】
また、本実施形態に係る「塗り絵A」及び「塗り絵B」は、様々な図柄が描かれており、複数種類の、様々な図柄が描かれている塗り絵である。このため、レクレーションやリハビリの一環として、毎回異なる図柄の塗り絵を用いて、継続的に実施することが可能である。
【0103】
即ち、本実施形態によれば、塗り絵を通じて、塗り絵者に対する適切な色彩心理を診断するとともに、診断結果を心理ケアに役立てる塗り絵色彩心理診断システム等を提供することが可能である。
【0104】
なお、本発明の好適な実施の形態により、特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【解決手段】本発明に係る塗り絵色彩心理診断システムは、第1塗り絵の画像を読み取る塗り絵読取手段と、第1塗り絵から色彩情報を取得する画像解析手段と、塗り絵者の個人情報を取得する個人情報取得手段と、色彩情報と個人情報とに基づいて、塗り絵者の色彩心理を判定する色彩心理判定手段と、色彩心理に応じて、塗り絵者に推奨する塗り絵を選択する塗り絵選択手段と、判定された色彩心理と、選択された塗り絵を出力する出力手段とを有し、第1塗り絵に描かれた図柄は、意匠物品の図柄であり、第2塗り絵に描かれた図柄は、風景画の図柄であり、塗り絵選択手段は、色彩心理がネガティブな心理を含む場合、第2塗り絵の中から塗り絵を選択する。