特許第5996209号(P5996209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996209
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/213 20110101AFI20160908BHJP
   B60R 21/217 20110101ALI20160908BHJP
【FI】
   B60R21/213
   B60R21/217
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-39353(P2012-39353)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-173449(P2013-173449A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 智樹
(72)【発明者】
【氏名】南 雄太
(72)【発明者】
【氏名】松岡 美和
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1999/041113(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0106084(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0197317(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/108889(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102007031161(DE,A1)
【文献】 特開2006−117110(JP,A)
【文献】 特開2003−034207(JP,A)
【文献】 特開平10−203288(JP,A)
【文献】 特開2000−142302(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/074451(WO,A1)
【文献】 特開平06−286549(JP,A)
【文献】 特開平09−277896(JP,A)
【文献】 特開2000−272457(JP,A)
【文献】 特開2011−131765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内の車体側壁の方部に車両前後方向に沿って取り付けられるエアバッグ装置であって、
前記エアバッグ装置のエアバッグに設けられ挿通孔を形成した複数の取付片と、
挿通孔を備え取付片の車内側に配置されるプレートを有する取付ブラケットと、
内孔を備え、取付片の挿通孔の内側に配置され、取付片の厚みより大きい所定の厚さを有する環状部材と、
環状部材の内孔、プレートの挿通孔とを連通する軸部を有し、取付ブラケットを車体側壁に取り付けるボルト及びナットと
取付ブラケットのプレートの挿通孔および環状部材の内孔を連通したボルトの軸部に、環状部材におけるプレートの反対側端面に当接した状態で装着される仮止め用の歯付きワッシャとを備え
エアバッグ装置が車体側壁へ取り付けられた状態において、プレートと環状部材におけるプレート反対側端面に当接された歯付きワッシャ間の間隔前記所定の厚さに規制されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアバッグ装置であって、
前記歯付きワッシャは前記環状部材に外嵌する前記取付片の抜け止め規制可能な外形寸法に形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたエアバッグ装置であって、
前記環状部材の内孔及び前記プレートの挿通孔を長孔に形成したことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置であって、
前記環状部材は前記取付ブラケットと一体に形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載されたエアバッグ装置であって、
前記ボルトは前記取付ブラケットと一体に形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載されたエアバッグ装置であって、
前記環状部材は円環部材であることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項7】
車内の車体側壁の方部に車両前後方向に沿って取り付けられるエアバッグ装置であって、
前記エアバッグ装置のエアバッグに設けられ挿通孔を形成した複数の取付片と、
挿通孔を備え取付片の車内側に配置されるプレートを有する取付ブラケットと、
プレートの挿通孔および取付片の挿通孔に連通する軸部と、軸部より大径で軸部に連続して形成されると共にプレートの挿通孔および取付片の挿通孔に挿通され、取付片の厚みより大きい所定の厚さを有する段部と、プレートの挿通孔に対し抜け止めとなるボルト頭部とを備えたボルトと、
ボルトとともに取付ブラケットを車体側壁に取り付けるナットと、
プレートの挿通孔および取付片の挿通孔に挿通したボルトの軸部、段部の軸部側面に当接した状態で装着され仮止め用の歯付きワッシャと、を有し、
エアバッグ装置が車体側壁へ取り付けられた状態において、プレートと段部の軸部側面に当接された歯付きワッシャ間の間隔前記所定の厚さに規制されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項8】
請求項に記載されたエアバッグ装置であって、
前記歯付きワッシャは前記段部に外嵌する前記取付片の抜け止め規制可能な外径寸法に形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項9】
請求項又はに記載されたエアバッグ装置であって、
前記ボルトは前記取付ブラケットと一体に形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項10】
請求項ないしのいずれかに記載されたエアバッグ装置であって、
前記段部は円柱形状であることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側壁に取り付けられ、車内に膨張展開するエアバッグ装置に関し、とくにエアバッグを車体側壁に取り付けるための取付ブラケットを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突などによる緊急停止時に前席や後席の乗員の頭部などを保護するため、車体側壁に沿ってカーテンのように下向きに膨張展開するエアバッグ装置(カーテンエアバッグ装置)が普及してきている。このエアバッグ装置は、従来の、例えば操縦ハンドルやインストルメントパネルに収容したエアバッグ装置に比べて横長であるため、エアバッグの上方に複数の取付片をその横長寸法に合わせてエアバッグから突出して設け、それによって車体側壁(例えばルーフサイドレール)に取り付けられている。
【0003】
ところで、これらの取付片にはエアバッグの膨張展開時に大きな引っ張り力が作用するため、膨張展開時にエアバッグの取付片が取付手段(取付ブラケット)から外れないように、取付片の一端縁を車体側壁(ルーフサイドレールなど)にボルトなどでしっかりと固定する必要がある。また、そのための取付構造を備えたエアバッグ装置が既に提案されている。
【0004】
例えば、エアバッグから突出して設けた取付片を2枚の金属プレートで挟み、その状態で車体側壁に取り付けたエアバッグ装置が知られている(特許文献1参照)。
このエアバッグ装置においては、前記2枚の金属プレートをかしめて金属プレートと取付部(取付片)を一体化し、その上で、取付部と金属プレートに設けた取付孔にボルトを挿通し、さらにボルトをインナパネル(車体側壁)に設けた固定孔及びインナパネルに溶着したナットに螺合させてエアバッグを固定している。
【0005】
また、これとは別に、エアバッグ本体の耳部(取付片)を折り曲げた金属プレートで挟持し、かつ、この金属プレートを車両のルーフサイドフレーム(車体側壁)にボルトで取り付けるエアバッグ装置も知られている(特許文献2参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたエアバッグ装置は、一対の金属プレートでエアバッグの取付部(取付片)を挟み、その状態でボルトを各金属プレート、取付部、インナパネルを挿通してナットに螺合し、これらを一体に締結する構造であるため、ボルトを締めたとき一対の金属プレートに挟まれた取付部がクッションになり、ボルト締結時の底付き感が得られず、そのため、所定のトルクでボルトを締結させることが困難である。また、それだけではなく、一対の金属プレートで取付部を圧縮した状態が長時間経過すると、熱膨張や取付部(取付片)の劣化によりボルトがトルクダウンする虞もある。
特許文献2に記載されたエアバッグ装置においても、折り返された爪が車体側壁によってプレート側に押されて耳部(取付片)を圧縮するので、耳部がクッションとなりボルトの底付き感が得られず、また、特許文献1に記載されたものと同様に経年変化によるトルクダウンが起こる虞もある。
【0007】
他方、これらの問題を解決するものとして、エアバッグの取付片部(取付片)を外側及び内側板部で挟む構成を採りながら、ボルトを締結したとき、取付片部がクッションとして機能するのを防止して、底付き感が得られるようにした取付ブラケットを備えたエアバッグ装置も提案されている(特許文献3参照)。
このエアバッグでは、図6に示すように、取付ブラケット134Aを、内外側板部136A、135Aで構成し、内側板部136Aの取付孔136a周縁の部位を、外側板部135Aの車外側面と略面一になるように形成し、取付ボルト138を、取付片部132の挿通孔132aと、外側板部135Aの取付孔135aとを貫通して車外側に突出させ、インナパネル102に取り付けたナット102bに螺合させている。
【0008】
また、図7に示すものでは、取付ブラケット134Bとして、内側板部136Bの取付孔136aの内径寸法を、外側板部135Bにおける取付孔135aの内径寸法と略同一に設定し、取付ボルト138は、内側板部136Bの取付孔136a周縁に、頭部138aを当接させ、締結軸部138bを、インナパネル(車体側壁)102のナット102bに締結させて、内外側板部136B、135Bとを直接接合している。
【0009】
特許文献3のエアバッグ装置の取付ブラケット134A、134Bは、確かに、取付片部132がクッションとして作用せず、取付ボルト138を締結したとき底付き感が得られ、締結後のトルクダウンも生じないと思われる。
しかし、このエアバッグ装置では、エアバッグの取付片部132をインナパネル102に固定するに当たり、取付片部132の表裏両面から内側板部136A、136Bと外側板部135A、135Bを別々に当てて位置合わせをしなければならない。また、取付片部132と外側・内側板部135A、135B・136A、136Bを予め一体化するには、外側・内側板部135A、135B・136A、136Bに変形予定部を形成し、その変形予定部をかしめて一体化するとされている。しかし、かしめただけでは運搬中などに外れる虞があり、また、エアバッグのインナパネルへの取り付けに際しては取付ボルトを取付片部132と外側・内側板部135A、135B・136A、136Bに挿入する必要があり、取付作業も繁雑にならざるを得ない。
【0010】
そこで、エアバッグの車体への取付作業が容易で、しかも、従来のものと同様にエアバッグの取付片をボルトで締結したときの底付き感が得られ、しかも取付作業を容易に行えるエアバッグ装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−247203号公報
【特許文献2】特開2000−142302号公報
【特許文献3】特開2006−117110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するためなされたものであって、その目的は、車体側壁に取り付けるエアバッグ装置において、ボルトを締結した時の底付け感が得られるものであって、かつ、エアバッグと取付ブラケットを確実に仮止めして、保管や運搬を容易にすると共に、車体側壁への取り付けを容易に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車内の車体側壁の方部に車両前後方向に沿って取り付けられるエアバッグ装置であって、前記エアバッグ装置のエアバッグに設けられ挿通孔を形成した複数の取付片と、挿通孔を備え取付片の車内側に配置されるプレートを有する取付ブラケットと、内孔を備え、取付片の挿通孔の内側に配置され、取付片の厚みより大きい所定の厚さを有する環状部材と、環状部材の内孔、プレートの挿通孔とを連通する軸部を有し、取付ブラケットを車体側壁に取り付けるボルト及びナットと取付ブラケットのプレートの挿通孔および環状部材の内孔を連通したボルトの軸部に、環状部材におけるプレートの反対側端面に当接した状態で装着される仮止め用の歯付きワッシャとを備え、エアバッグ装置が車体側壁へ取り付けられた状態において、プレートと環状部材におけるプレート反対側端面に当接された歯付きワッシャ間の間隔前記所定の厚さに規制されていることを特徴とするエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エアバッグの組み付け時に、ボルトを締結したときの底付け感が得られ、しかも、予めエアバッグと取付ブラケットとがボルトと歯付きワッシャで確実に仮止めされているから、保管や運搬が容易であると共に、車体側壁への取り付けに当たってボルトを取付ブラケットに挿通することを要せず取付作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置における、エアバッグの取付位置を示す車体内部を示す断面図である。
図2】収納状態における本発明の実施形態に係るエアバッグ装置を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置の展開状態におけるエアバッグを模式的に示す正面図である。
図4ABC】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置における取付ブラケットによるエアバッグの取付構造を示し、図4Aはその分解斜視図、図4Bは車内側からみた前記取付構造の斜視図、図4Cは車外側からみた前記取付構造の斜視図である。
図4DE図4Dはその正面図、図4Eは車体側壁に取り付ける前の取付ブラケットの仮止め状態を示す側面図である。
図4FG図4F図4DにおけるA−A線に沿った断面図、図4Gは取付ブラケット及びエアバッグを車体側壁に取り付けた状態を示す断面図である。
図5】本発明の別の実施形態に係るエアバッグ装置における取付ブラケットによるエアバッグの取付構造を示す断面図である。
図6】従来のエアバッグの取付構造を示す断面図である。
図7】従来のエアバッグの他の取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の取付ブラケットによるエアバッグの取付構造を備えたエアバッグ装置の実施形態として、車内の上側に車両前後方向に沿って配置されるエアバッグ装置(カーテンエアバッグ装置)について添付図面を参照して説明する。
図1は、エアバッグ10の取付位置を示す車体内部を示す断面図であり、図2は、非作動時つまり収納状態におけるエアバッグ装置1を示す側面図である。
エアバッグ装置1は、車両の衝突などの衝撃によりインフレータからのガスでエアバッグ10が膨張し、車体側壁から車両前後方向に沿って下方に向けてカーテン状に展開し、搭乗者の主に頭部を保護する。
このエアバッグ装置1では、エアバッグ(又はエアバッグ本体)10の上縁部に沿って取付片11が複数設けられている。これらの取付片11は、図1に示すように、車体の上方部で車体前後方向に沿って後述するブラケット26を介して、車体側壁、例えばルーフサイドレール部(図示せず)に取り付けられている。エアバッグ10は非作動時は、車両下方に膨張展開可能に折り畳まれてトリム内等の収納部に収納されている。
【0017】
収納状態におけるエアバッグ10は、覆うべき車体側壁の窓部の形状等に応じた形状の横長な袋状に形成されている。エアバッグ装置1はその長手方向略中間位置にガス導入部14を有している。
ガス導入部14は、エアバッグ10の上縁から基布を上方に突出させ、その縁部に沿ってエアバッグ10の外縁接合部と連続して接合することで、車両後方側が開口する筒状に形成されている。エアバッグ装置1は、このガス導入部14内に、例えばガスの案内部材や整流部材等を挟んで、筒状をなすシリンダタイプのインフレータ25の一端部(ガス噴出し口)を挿入し、それらをまとめてブラケット26で車体側壁(ルーフサイドレール部)に固定している。
【0018】
図3は、本実施形態のエアバッグ装置1の展開状態におけるエアバッグ10を模式的に示す正面図である。
即ち、エアバッグ10は、図示の状態で、車内の側方窓部を含む車体側壁に沿って、その全体を覆うようにして乗員と車体側壁等との間に膨張展開する。
なお、エアバッグ10は、車両前方側に向かって突出する略三角形状の突片を有し、その前端縁に、車両のフロントピラー部に取り付けられる前部取付杆13が設けられている。
【0019】
エアバッグ10は、例えば同形状をなす乗員側つまり車内側の表側基布20及び、車外側の裏側基布21を重ね合わせて、対向する基布20、21同士を外縁接合部22に沿って接合して形成されており、膨張部30(前部膨張部31及び後部膨張部32)と、各膨張部31、32を連結するエアバッグ10の上縁に沿う連結部33とから成っている。
【0020】
前記ガス導入部14は、本実施形態ではエアバッグ10の前部膨張部31の上方で、前部膨張部31と連通して設けられており、インフレータ25が発生するガスをこのガス導入部14から内部に導入し、さらに膨張部30に流入させる。
【0021】
次に、エアバッグ10を車体へ取り付けるための取付ブラケットによる取付構造について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態に係るエアバッグ装置における、取付ブラケット40によるエアバッグの取付構造を示し、図4Aはその分解斜視図、図4Bは車内側からみた前記取付構造の斜視図、図4Cは車外側からみた前記取付構造の斜視図、図4Dはその正面図、図4Eは車体側壁15に取り付ける前の取付ブラケットの仮止め状態を示す側面図、図4F図4DにおけるA−A線に沿った断面図、図4Gは取付ブラケット及びエアバッグを車体側壁15に取り付けた状態を示す断面図である。
【0022】
本実施形態に係るエアバッグ10の車体側壁15への取付構造は、図4Aに示すように車内側プレート(以下、単にプレートという)41とプレート41に備えられた環状部材44から成る取付ブラケット40と、プレート41の挿通孔41a(図4F、G)と、環状部材44の内孔44aとを貫通するフランジ52a付きのボルト50と、ボルト50にプレート41と反対側から装着される歯付きワッシャ60と、ボルト50に螺合するナット55(図4G)から成っている。
【0023】
プレート41は、例えば図4Aに示すように、円板状の金属製プレートから成り、その中央部には、ボルト50の挿通孔41a(図4F、G)が設けられている。また、プレート41には、上述のようにプレート41の挿通孔41aに連通した内孔44aを有する環状部材44が設けられている。
【0024】
環状部材44は、締結状態(プレート41の挿通孔41aと環状部材44の内孔44a、さらに歯付きワッシャ60の歯付き孔60aに挿通したボルト50を、車体側壁15に固定したナット55(図4G)に締結した状態)で、取付片11のクッション作用の影響を受けない所定の厚さ(ここでは、ボルト50の挿通方向長さを云う)に設定されている。したがって、環状部材44は、取付片11の厚さに関わりなく、後述するプレート41と歯付きワッシャ60間の間隔を前記所定の間隔に規制する。
これにより、締結状態では、取付片11のクッション作用を受けずに底付け感を得ることができる。また、ボルト50の締付トルクを調整することもできる。
【0025】
ここで、環状部材44は、プレート41と一体に成型(形成)したものであっても、或いは別体に形成して例えば溶着などにより一体化するものでもよい。また、環状部材44はプレート41に代えて歯付きワッシャ60に設けてもよく、その形状は、挿通孔11aに挿通された状態で取付片11に対して相対回転可能であることが望ましく、例えば取付片11の挿通孔11aに挿通可能な外径の円環状が好ましいが、これに限定されず楕円状、多角形状、更には角柱状など内孔44aを備えた筒状であれば任意であり、ここではそれらを総称して環状部材という。
なお、プレート41の挿通孔41a、及び環状部材44の内孔44aは、いずれもボルト50が挿通できる大きさであればよいが、複数の取付片11の挿通孔11aの間隔と、対応する車体側壁15に固定された複数のナット55の間隔に寸法誤差がある場合等を考慮して、取り付け易いように例えば長孔であってもよい。
【0026】
ボルト50は任意のものでよいが、ここでは、フランジ52a付きの六角ボルトであって、ボルト50をナット55に締結したときプレート41を抜け止め規制できるよう、プレート41の挿通孔41aの内径よりも大径のテーパー状のフランジ52a(図4E)をそのボルト頭52に備えている。もっともボルト頭52がプレート41の抜け止め規制可能な大きさであれば、フランジ52aの設定は任意である。
歯付きワッシャ60は、平板状で内周部に歯62を備えた内歯型で円盤状をなし、プレート41に設けた環状部材44のプレート41の反対側端面に当接して、プレート11と共に取付片11を抜け止め規制できるよう環状部材44の外径よりも大径(外径)に構成されており、前記取付ブラケット40(の環状部材44)に前記取付片11を装着した状態で、その歯をボルト50のネジ溝に掛止して仮止めする。なお、歯付きワッシャ60は円形に限らず、楕円でも或いは矩形でもよく、形状は任意である。
【0027】
次に、取付ブラケット40とエアバッグ10との仮止めについて説明する。
取付ブラケット40とエアバッグ10の取付片11を仮止めするには、まず、プレート41の挿通孔41a及び環状部材44の内孔44aにボルト50を挿通し、次に、取付片11の挿通孔11aをプレート41の環状部材44に外嵌する。続いて、環状部材44の内孔44aから突出したボルト50の端部から歯付きワッシャ60を、環状部材44のプレート41の反対側端面に当接するまで嵌め込んで装着する(図4B〜F)。なお、この場合、ボルト50は、ボルト頭52のフランジ52aがプレート41に当接するまで挿入しておくことが好ましい。
【0028】
このように、歯付きワッシャ60をボルト50に装着することにより、ボルト50を抜け止め規制して、プレート41と取付片11(したがってエアバッグ10)を仮止めすることができる。
なお、環状部材44がプレート41と別々に形成される場合、必ずしもプレート41と溶着などにより一体化しなくてもよい。この場合は、仮止めの方法は、プレート41の挿通孔41aにボルト50を挿入後、環状部材44の内孔44aにボルト50を通して環状部材44をプレート41の車外側面に装着してから、取付片11の挿通孔11aを環状部材44に外嵌することになり、一体化した場合に比べて操作が少し煩雑になるが、一体化しないことで、溶着などの手間を省くことができるとの利点もある。
また、ボルト50とプレート41とが溶着などにより一体化されていてもよい、この場合は、仮止めの方法は、プレート41に環状部材44が設けられている場合には、取付片11の挿通孔11aを環状部材44に外嵌するまでの手間を省くことができる。
【0029】
次に、仮止めした取付ブラケット40とエアバッグ10の車体側壁15への取り付けについて説明する。
まず、仮止めした取付ブラケット40、及び歯付きワッシャ60から外側に突出したボルト50を、車体側壁15の挿通孔15aに挿通し、車体側壁15の挿通孔15aの車外側に固定したナット55に整合させ、その状態でボルト50のボルト頭52を回転させることによって締結し、取付ブラケット40の車体側壁15への取り付けを完了する(図4G)。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態に係るエアバッグ装置における、取付ブラケットによるエアバッグの取付構造について説明する。
図5は、本実施形態係るエアバッグ装置における、取付ブラケットによるエアバッグの取付構造を示す断面図である。
本取付構造は、第1の実施形態における取付構造におけるボルト50と環状部材44が一体に形成された構造であり、その他の点では第1の実施形態におけるものと同様である。
即ち、ボルト50(1)には、図5に示すように、ボルト頭52(1)に設けられたフランジ52a(1)よりも小径でボルト50(1)の軸部51(1)よりも大径の環状の段部53(1)がフランジ52a(1)のボルト50(1)先端側に一体に形成されている。
ボルト50(1)の段部53(1)は、第1の実施形態の環状部材44と同様に、ボルト50(1)を車体側壁15に固定したナット55に締結した状態で、取付片11の厚みによるクッション作用の影響を受けない所定の厚さ(ここではボルト50(1)の挿通方向長さを云う)に形成されている。また、前記歯付きワッシャ60は前記段部53(1)に外嵌する前記取付片11の抜け止め規制可能な外径寸法に形成されており、フランジ52a(1)自体は既に説明したフランジ52と同様である。
なお、段部53(1)は、取付片11の挿通孔11aに挿通可能な外径の円柱形状が望ましいが、これに限定されず、挿通孔11aに挿通された状態で取付片11に対して相対回転可能であれば楕円状、多角形状、さらには角柱状でもよい。
【0031】
このボルト50(1)を用いてエアバッグ10を仮止めする場合は、ボルト50(1)の段部53(1)をプレート41の挿通孔41aと、取付片11の挿通孔11aに嵌装し、挿通孔11aから突出したボルト50(1)の端部から歯付きワッシャ60を段部53(1)の端面に当接するまで嵌込んで装着する。仮止めした取付ブラケット40とエアバッグ10の車体側壁15への取り付けの手順は、第1の実施形態におけると同様である。
また、ボルト50(1)とプレート41とが溶着などにより一体化されていてもよい、この場合は、仮止めの方法は、ボルト50(1)の段部53(1)をプレート41の挿通孔41aに嵌装する手間を省くことができる。
【0032】
本実施形態においても、エアバッグを車体側壁へ取り付けた時は、段部53(1)はプレート41と段部53(1)の先端側に配置された歯付きワッシャ60間の間隔を前記所定厚さに規制するため、締結状態では、取付片11のクッション作用を受けずに底付け感を得ることができる。また、ボルト50(1)の締付トルクを調整することもできる。
【0033】
以上本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、これらによれば更に以下の作用効果が得られる。
即ち、歯付きワッシャ60で、ボルト50を挿通した状態で取付ブラケット40とエアバッグ10の取付片11とを仮止めできるため、一旦仮止めした取付ブラケット40とエアバッグ10は容易に外れることはない。そのため、前記仮止めと、エアバッグ10の車体側壁15への取り付け作業を分けて実施することができ、取付ブラケット40の車体側壁15への取り付けに先立って前記仮止め作業を行い、取付ブラケット40とエアバッグを仮止めした状態で保管しておくこともできる。
【0034】
また、車体側壁15への取り付けに当たっては、単にボルト50を車体側壁15の挿通孔15aに差し込み、ボルト50のボルト頭52を回すだけの簡易な作業でエアバッグの取り付けを行うことができる。
この場合、ボルトを手で数回転させて、抜け落ちない程度にナットに螺合させることで、取付ブラケット40を簡単に、車体側壁15へ仮止め状態とすることができる。これにより、複数の取付ブラケット40を順次仮止め状態としてから、エアバッグ10全体の取り付け状態を確認の後、工具にて本締めすることができ、作業効率を上げることができる。
【0035】
なお、本出願人は、先にエアバッグ装置に係る発明について既に出願(特願2010−262789)を行っているので、ここで前記発明(先願発明という)と本発明との関係について説明する。
先願発明は、エアバッグの車体への取付作業が容易で、エアバッグの取付片をボルトで締結したときの底付き感が得られ、しかも取付作業を容易に行えることを目的とするものであり、本発明はその先願発明の改良に係るものである。
本発明は、先願発明における取付ブラケットの一方の外プレートの機能を、ワッシャで代替させることで、外プレートを廃する構成とした。
これにより、本発明は、前記先願発明の作用効果に加え、さらに部品点数及び組み付け工数の削減、及びこれに伴うコストダウン及び軽量化が可能となった。
【符号の説明】
【0036】
1・・・エアバッグ装置、10・・・エアバッグ、11・・・取付片、11a・・・挿通孔、14・・・ガス導入部、15・・・車体側壁、15a・・・挿通孔、20・・・表側基布、21・・・裏側基布、25・・・インフレータ、26・・・ブラケット、30・・・膨張部、33・・・連結部、40・・・取付ブラケット、41・・・プレート、41a・・・挿通孔、44・・・環状部材、44a・・・内孔、50、50(1)・・・ボルト、51(1)・・・(ボルトの)軸部、52、52(1)・・・フランジ、53(1)・・・段部、55・・・ナット、60・・・歯付きワッシャ、60a・・・歯付き孔。
図1
図2
図3
図4ABC
図4DE
図4FG
図5
図6
図7