特許第5996225号(P5996225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996225
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】施解錠装置の錠ケース構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 9/02 20060101AFI20160908BHJP
   E05B 63/08 20060101ALI20160908BHJP
   E05B 65/06 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   E05B9/02
   E05B63/08 B
   E05B65/06 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-67603(P2012-67603)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199748(P2013-199748A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝則
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−190193(JP,A)
【文献】 特開2000−134299(JP,A)
【文献】 特開2007−123347(JP,A)
【文献】 特開平11−182117(JP,A)
【文献】 特開2010−159554(JP,A)
【文献】 登録実用新案第50262(JP,Z2)
【文献】 特開2002−21388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に内設され前面板を貫通して扉木口から進退自在となるデッドボルトが収容されるケース本体と、
前記デッドボルトの貫通する貫通穴が形成されて前記扉木口に固定され、前記前面板とに亘って設けられる係止手段によって前記ケース本体が支持されるフロント裏板と、
前記扉木口に表出する前記フロント裏板を覆い板表面から挿通されるフロント板固定ビスが前記前面板に螺合されて前記フロント裏板を挟んで前記前面板に固定されるフロント板と、
を具備するとともに、
前記係止手段が、
前記フロント裏板に形成され上向きに突出される係止爪と、
前記前面板に形成され穴上縁が前記係止爪に係止する係止穴と、
を具備し、
前記係止穴の内方に設けられ前記穴上縁に係止した前記係止爪に下方から当接して前記ケース本体の上方向への移動を阻止する弾性抜止片と、
を具備することを特徴とする施解錠装置の錠ケース構造。
【請求項2】
請求項1記載の施解錠装置の錠ケース構造であって、
前記フロント裏板と前記ケース本体とが別素材で形成されていることを特徴とする施解錠装置の錠ケース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施解錠装置の錠ケース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
施解錠装置は、扉の木口側から挿入配置され、この扉に内設されるケース本体に、扉木口から進退されるデッドボルトが収容される。ケース本体には、扉の屋内外に設けられる施解錠部材、例えばシリンダ錠やサムターンによって回転操作力が伝えられる。回転操作力が伝わると、施解錠装置は、ケース本体に設けられる施解錠機構が動作し、デッドボルトが進退される。また、所謂電気錠では、ケース本体にさらに電動のモーターが設けられ、モーターの駆動によってもデッドボルトの進退が可能となる。
【0003】
扉木口から進出されるデッドボルトは、建物躯体の枠側に取り付けられるストライクの穴に進入して扉を枠側に施錠する。このため、扉に内設されてデッドボルトが進退されるケース本体は、扉に確実に固定されていなければならない。従来、ケース本体の固定は、ケース本体の前面すなわち扉木口と平行な面に設けたフロント裏板を、扉木口に固定することで行われた(例えば特許文献1参照)。フロント裏板は、板金加工等によりケース本体の前面に一体に形成されたり、別部材を溶接固定したりしてケース本体に設けられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−176653号公報(請求項7、図1、段落0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケース本体にフロント裏板が一体に固定された錠ケースは、ケース本体からフロント裏板の長手方向両側が突出する。施解錠装置の取り付けには、この錠ケースが現場に輸送されるが、ケース本体から大きく突出したフロント裏板は、輸送時の取り扱いが荒いと、変形或いは損傷する虞がある。フロント裏板が変形した錠ケースは、扉木口に平行とならず、取り付け精度が低下した。また、平行でないまま取り付け、さらにフロント板を取り付けた状態では見栄えが著しく低下する虞がある。これに対し、フロント裏板が変形しないように厳重な梱包が行われれば、梱包及び開梱の手間がかかるとともに、緩衝材,包装材のコストが増大した。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、変形し難く、簡素な梱包が可能となる施解錠装置の錠ケース構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の施解錠装置の錠ケース構造は、扉27に内設され前面板21を貫通して扉木口31から進退自在となるデッドボルト19が収容されるケース本体41と、
前記デッドボルト19の貫通する貫通穴45が形成されて前記扉木口31に固定され、前記前面板21とに亘って設けられる係止手段(47,57)によって前記ケース本体41が支持されるフロント裏板33と、
前記扉木口31に表出する前記フロント裏板33を覆い板表面67から挿通されるフロント板固定ビス69が前記前面板21に螺合されて前記フロント裏板33を挟んで前記前面板21に固定されるフロント板61と、
を具備するとともに、
前記係止手段が、
前記フロント裏板33に形成され上向きに突出される係止爪47と、
前記前面板21に形成され穴上縁59が前記係止爪47に係止する係止穴57と、
を具備し、
前記係止穴57の内方に設けられ前記穴上縁59に係止した前記係止爪47に下方から当接して前記ケース本体41の上方向への移動を阻止する弾性抜止片71と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
この施解錠装置の錠ケース構造では、ケース本体41とフロント裏板33とが別体構成となり、取り付け現場までの輸送の際に、ケース本体41とフロント裏板33とが個別に梱包可能となる。これにより、ケース本体41とフロント裏板33とが一体で突出部分のある場合に比べ、簡素な梱包が可能となり、かつ、輸送時にケース本体41の慣性力が作用することや外部から受ける圧力等によるフロント裏板33の変形が生じ難くなる。
【0010】
また、この施解錠装置の錠ケース構造では、フロント裏板33の係止爪47が、ケース本体41の前面板21に形成される係止穴57に挿入され、フロント裏板33に対してケース本体41が下方へ移動されることにより、係止穴57の穴上縁59が係止爪47に係止する。係止爪47の穴上縁59が係止爪47に係止されることにより、重力方向に荷重が作用して、ケース本体41がフロント裏板33に支持される。
【0012】
そして、この施解錠装置の錠ケース構造では、係止穴57には、穴上縁59の下方に弾性抜止片71が配置される。係止穴57に挿入された係止爪47が穴上縁59に向かって移動されると、弾性抜止片71が弾性変形され、係止爪47の通過が許容される。係止爪47が弾性抜止片71を通過すると、弾性変形された弾性抜止片71が復元し、穴上縁59に係止した係止爪47の背部側に当接する。これにより、係止爪47が穴上縁59から離れる方向である下側への移動が規制される。
【0013】
本発明の請求項記載の施解錠装置の錠ケース構造は、請求項1記載の施解錠装置の錠ケース構造であって、
前記フロント裏板33と前記ケース本体41とが別素材で形成されていることを特徴とする。
【0014】
この施解錠装置の錠ケース構造では、例えばケース本体41に鉄素材が用いられた場合、フロント裏板33には、ステンレス素材が使用可能となる。これにより、フロント裏板33の高強度化や薄型化が可能となる。また、非磁性ステンレス鋼が用いられれば、鉄素材に比べ、フロント裏板33を挟んでの磁界の形成が良好となり、磁気センサの感度向上が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1記載の施解錠装置の錠ケース構造によれば、ケース本体とフロント裏板とが別体構成となり、取り付け現場までの輸送の際に、ケース本体とフロント裏板とが個別に梱包可能となり、これにより、ケース本体とフロント裏板とが一体となった突出部分のある構造の場合に比べ、方形状のケース本体と板形状のフロント裏板とでそれぞれ簡素な梱包が可能となり、また、開梱時の煩雑さもなくなり、作業性も向上し、かつ、輸送時にケース本体の慣性力が作用することや外部から受ける圧力等によるフロント裏板の変形が生じ難くなる。
【0016】
また、本発明に係る施解錠装置の錠ケース構造によれば、フロント裏板の係止爪が、ケース本体の前面板に形成される係止穴に挿入され、フロント裏板に対してケース本体が下方へ移動されることにより、係止穴の穴上縁が係止爪に係止するという簡単な構造で、扉木口に固定されるフロント裏板に、ケース本体を支持できる。
【0017】
そして、本発明に係る施解錠装置の錠ケース構造によれば、係止穴に挿入された係止爪が穴上縁に向かって移動されると、弾性抜止片が弾性変形され、係止爪の通過が許容されて、係止爪が弾性抜止片を通過すると、弾性変形された弾性抜止片が復元し、穴上縁に係止した係止爪の背部側に当接することとなって、係止爪が穴上縁から離れる方向である下側への移動が規制されることとなり、ケース本体をフロント裏板に支持した後のケース本体の外れを防止できる。
【0018】
本発明に係る請求項記載の施解錠装置の錠ケース構造によれば、フロント裏板の素材選択自由度を高めることができ、例えばケース本体に鉄素材が用いられた場合、フロント裏板には、ステンレス素材が使用可能となり、これにより、フロント裏板の高強度化や薄型化が可能となる。また、フロント裏板に、非磁性ステンレス鋼が用いられれば、鉄素材に比べ、フロント裏板を挟んでの磁界の形成が良好となり、ケース本体内や建物枠側に設けられる磁気センサの感度向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る施解錠装置の錠ケース構造を表す正面図である。
図2図1に示した錠ケースの分解斜視図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】(a)は係止爪が係止穴に挿入された錠ケースの斜視図、(b)は(a)の要部断面図である。
図5】(a)はフロント裏板がスライドされた錠ケースの斜視図、(b)は(a)の要部断面図である。
図6】(a)はフロント裏板が扉木口に固定される錠ケースの斜視図、(b)は(a)の要部断面図である。
図7】(a)はフロント板が固定される錠ケースの斜視図、(b)は(a)の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る施解錠装置の錠ケース構造を表す正面図、図2図1に示した錠ケースの分解斜視図、図3図2の要部拡大図である。
本実施形態に係る錠ケース構造の適用される施解錠装置は、図1に示す錠ケース11に、図示しない操作部材、例えばシリンダ錠やサムターンが接続される。例えばシリンダ錠の場合、テールピース13がダルマ穴15に係合され、合鍵による施解錠操作力でダルマ17が回転される。錠ケース11は、ダルマ17の回転により内設された図示しない施解錠機構が作動され、デッドボルト19が前面板21の進退開口部23を貫通して進退される。なお、本実施形態では、デッドボルト19にカマデッド25が連動連結され、カマデッド25はデッドボルト19の進退に従動して円弧状の軌跡を描いて錠ケース11から進退される。
【0021】
錠ケース11は、扉27(図6参照)に形成される錠ケース収容部29に、扉木口31から挿入されて取り付けられる。扉木口31には、錠ケース収容部29が開放されている。錠ケース収容部29に挿入される錠ケース11は、フロント裏板33が、扉木口31に平行に当接して取り付けられる。図2に示すように、フロント裏板33は、錠ケース11の前面板21に固定されていて、錠ケース11の上下面よりも上下端が突出する短冊状に形成される。フロント裏板33の上下部には固定用穴35が穿設され、固定用穴35は扉木口31に固定されるケース固定ビス37を挿通する。一対の固定用穴35の間には一対のビス貫通穴39が穿設され、一対のビス貫通穴39はケース本体41の前面板21に設けられる一対のネジ穴43と同一ピッチとなる。一対のビス貫通穴39の間には、ケース本体41のデッドボルト用の進退開口部23と一致する貫通穴45が穿設され、貫通穴45はデッドボルト19を貫通させる。
【0022】
フロント裏板33には、この貫通穴45を挟んで上下に、係止手段を構成する一対の係止爪47が形成される。図3に示すように、係止爪47は、例えば切り起こし加工により形成され、フロント裏板33の背面側へ突出して上向きに起立する。フロント裏板33は、平らな短冊状素板の中央部が背面側から凹む凹状部49として形成され、その結果、凹状部49の周囲の短冊状素板がフランジ部51となる。フロント裏板33は、凹状部49の中にケース本体41の前面板21が納められる。また、フロント裏板33は、フランジ部51が扉木口31に凹設されるフロント板固定凹部53(図6参照)の凹部底面55に固定される。フランジ部51は、凹状部49が形成されることで、剛性が高められている。
【0023】
ケース本体41の前面板21には係止手段である一対の矩形状の係止穴57が形成され、係止穴57は挿入された係止爪47が穴上縁59に係止される。このように、係止手段は、フロント裏板33に形成され上向きに突出される係止爪47と、前面板21に形成され穴上縁59が係止爪47に係止する係止穴57とによって構成される。フロント裏板33は、扉木口31に固定され、前面板21とに亘って設けられる係止手段、すなわち、係止爪47と係止穴57とによってケース本体41が支持される。
【0024】
フロント板固定凹部53に固定されてケース本体41が支持されるフロント裏板33は、扉木口31に表出する。このフロント裏板33は、フロント板61によって覆われる。フロント板61には、デッドボルト19の貫通するデッド用穴63が穿設され、このデッド用穴63を挟む上下には一対のフロント板固定穴65が穿設される。フロント板61は、フロント裏板33を覆い、フロント板61の板表面67からフロント板固定穴65に挿通されるフロント板固定ビス69が前面板21のネジ穴43に螺合される。これにより、フロント板61は、フロント裏板33を挟んでケース本体41の前面板21に固定される。
【0025】
係止穴57の内方には一対の平行な弾性抜止片71が設けられ、弾性抜止片71は下端がケース本体41に固定され、上端が自由端となる。上端の対向面には図3に示す抜止段部73が形成される。一対の弾性抜止片71は、双方の間隙に係止爪47が挿入される。挿入された係止爪47は、弾性抜止片71に沿って上方へスライドされると、抜止段部73に当接される。さらに係止爪47が上方に移動されると、一対の弾性抜止片71は、開脚され、係止爪47が抜止段部73を通過した後、開脚状態が復帰して係止爪47の下方に当接する。これにより、弾性抜止片71は、穴上縁59に係止した係止爪47に下方から当接して、ケース本体41の上方向への移動を阻止する。なお、弾性抜止片71は、一対の係止穴57の一方のみに設けられてもよく、双方に設けられてもよい。
【0026】
本実施形態において、フロント裏板33とケース本体41とは、別素材で形成されている。ケース本体41には鉄素材が用いられ、フロント裏板33にはステンレス鋼が用いられる。フロント裏板33は、上記した凹状部49(図3参照)の形成、例えばプレス成形よりなる形成による剛性の向上とも相俟って、鉄素材の場合では2mmが必要であった厚みが、1.2mmの薄厚で同等の剛性が得られている。
【0027】
次に、上記構成を有する錠ケース構造の作用を説明する。
図4(a)は係止爪47が係止穴57に挿入された錠ケース11の斜視図、(b)は(a)の要部断面図、図5(a)はフロント裏板33がスライドされた錠ケース11の斜視図、(b)は(a)の要部断面図、図6(a)はフロント裏板33が扉木口31に固定される錠ケース11の斜視図、(b)は(a)の要部断面図、図7(a)はフロント板61が固定される錠ケース11の斜視図、(b)は(a)の要部断面図である。
錠ケース11は、ケース本体41と、フロント裏板33と、フロント板61とが別体となって取付現場に輸送される。ケース本体41とフロント裏板33とが別体に構成されることで、取り付け現場までの輸送では、ケース本体41とフロント裏板33とが個別に梱包可能となる。これにより、ケース本体41とフロント裏板33とが一体である場合に比べ、簡素な梱包が可能となり、かつ、輸送時にケース本体41の慣性力等が作用することによるフロント裏板33の変形が生じ難くなる。
【0028】
現場に輸送された錠ケース11は、梱包が解かれ、扉27への取り付け前に、ケース本体41とフロント裏板33とが結合される。図4に示すように、フロント裏板33とケース本体41とは、フロント裏板33の係止爪47が、ケース本体41の係止穴57に挿入される。次いで、図5に示すように、ケース本体41に対してフロント裏板33が上方向へ移動されるように(図中矢印)、フロント裏板33とケース本体41が相対的にスライドされる。
【0029】
フロント裏板33の係止爪47が、ケース本体41の前面板21に形成される係止穴57に挿入され、フロント裏板33に対してケース本体41が下方へ移動、またはケース本体41に対してフロント裏板33が上方へ移動されることにより、係止穴57の穴上縁59が係止爪47に係止する。係止爪47が係止穴57の穴上縁59に係止され、ケース本体41は、重力方向に荷重が作用して、荷重がフロント裏板33に支持される。これにより、簡単な構造で、扉木口31に固定されるフロント裏板33に、ケース本体41を支持できる。
【0030】
係止穴57には、穴上縁59の下方に弾性抜止片71が配置されている。係止穴57に挿入された係止爪47が穴上縁59に向かって移動されると、弾性抜止片71が弾性変形され、係止爪47の通過が許容される。係止爪47が弾性抜止片71を通過すると、弾性変形された弾性抜止片71が復元し、穴上縁59に係止した係止爪47の背部側に当接する。これにより、係止爪47が穴上縁59から離れる方向(下側方向)への移動が規制される。係止爪47の移動が規制されることで、ケース本体41をフロント裏板33に支持した後のケース本体41の外れを防止できる。
【0031】
ケース本体41にフロント裏板33が取り付けられた錠ケース11は、図6に示すように、扉木口31に開放される錠ケース収容部29に挿入される。錠ケース収容部29にケース本体41が挿入された錠ケース11は、フロント裏板33がフロント板固定凹部53に当接される。フロント板固定凹部53に収容されたフロント裏板33は、固定用穴35に挿通されるケース固定ビス37が凹部底面55に固定される。これにより、錠ケース11が扉27に固定される。この状態で、フロント裏板33のビス貫通穴39は、ケース本体41のネジ穴43に一致する。最後に、図7に示すように、フロント裏板33の表面にフロント板61が合わせられ、フロント板61の板表面67からフロント板固定穴65に挿通されたフロント板固定ビス69がビス貫通穴39を貫通してケース本体41のネジ穴43に螺着される。これにより、扉27に対する錠ケース11の取り付けが完了する。
【0032】
取り付けの完了した錠ケース構造では、ケース本体41、フロント裏板33、フロント板61がフロント板固定ビス69によって共締めされる。
【0033】
本実施形態において、ケース本体41には鉄素材が用いられ、フロント裏板33にはステンレス素材が使用されている。これにより、フロント裏板33の素材選択自由度を高めることができ、フロント裏板33の高強度化や薄厚化が可能となる。また、フロント裏板33に非磁性ステンレス鋼が用いられていることにより、鉄素材に比べ、フロント裏板33を挟んでの磁界の形成が良好となる。非磁性ステンレス鋼は、ニッケルの含有量を高め、オーステナイト相を安定化させることにより、冷間加工後もマルテンサイトを殆ど誘起させない状態で維持させて得られる。非磁性ステンレス鋼が用いられた錠ケース11は、電気錠に使用された場合、扉27を開閉支持する建物等の枠側に設けられる磁石の磁界を検出するためのケース本体41に設けられる磁気センサの感度向上が可能となる。
【0034】
枠側に設けられる閉扉信号用の磁石は、安価なフェライトマグネットの使用されることが望ましい。このためには磁界信号をより拾い易くする必要がある。本実施形態の錠ケース構造では、フロント裏板33の素材が非磁性ステンレス鋼となり、同時に、凹状部49による剛性の向上により1.2mm程度の薄厚化が実現されている。これは、従来の鉄素材2mm厚のフロント裏板33や、1.6mm厚のフロント裏板33と同等以上の強度の差異が見込まれる。このようにして、錠ケース構造では、フロント裏板33の素材選択、剛構造によって磁界信号の検出性能を高め、安価なフェライトマグネットの使用を実現させている。
【0035】
従って、本実施形態に係る施解錠装置の錠ケース構造によれば、ケース本体41とフロント裏板33とを別体構造としたことで、外力によるフロント裏板33の変形を生じ難くし、梱包を簡素にできる。
【符号の説明】
【0036】
19…デッドボルト
21…前面板
27…扉
31…扉木口
33…フロント裏板
41…ケース本体
45…貫通穴
47…係止手段(係止爪)
57…係止手段(係止穴)
59…穴上縁
61…フロント板
67…板表面
69…フロント板固定ビス
71…弾性抜止片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7