(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る電子機器1の斜視図である。
【0010】
電子機器1は、
図1に示すように、当該電子機器1が備える回路基板などの部品を収容するハウジング2を有している。電子機器1は光ディスクDに格納されたプログラムを実行したり、光ディスクDに格納された動画像や音声を再生するエンタテインメント装置である。ハウジング2には、上方に開いた凹部であるディスク収容部2Aが形成されている。ハウジング2は電子機器1が備える部品の上側を覆う上ハウジング2aを有している。ディスク収容部2Aは上ハウジング2aに形成されている。ディスク収容部2Aに光ディスクDが配置される。ディスク収容部2Aの底部には、光ディスクDに光を照射するディスクドライブ3が配置されている。ディスクドライブ3は、光ディスクDの中心に形成された穴に嵌り、光ディスクDを回転させる回転駆動部3aを有している。この例では、回転駆動部3aの回転中心線C1は鉛直方向に沿っている。
【0011】
電子機器1は、その上面に、ディスク収容部2Aを覆うためのスライドカバー10を有している。スライドカバー10は、ディスク収容部2Aを覆う閉位置と、ディスク収容部2Aを露出させる開位置との間で移動可能である(閉位置と開位置は、それぞれ
図1(a)及び(b)に示すスライドカバー10の位置である)。スライドカバー10は、回転駆動部3aの回転中心線C1に対して垂直な方向にスライド可能である。そのため、電子機器1の上側にスライドカバーを開くためのスペースの確保が必要とされない。この例では、スライドカバー10は左右方向にスライド可能である。スライドカバー10は、例えば、ユーザが当該スライドカバー10を直接的に押すことで開位置と閉位置との間でスライドする。また、スライドカバー10は、図示しないボタンの操作により開位置に向けてスライドしてもよい。
【0012】
この例では、電子機器1は、その上面に、フロントパネル4と、リアパネル5とを有している。フロントパネル4は上ハウジング2aの前部の上面に取り付けられている。リアパネル5は、上ハウジング2aの後部の上面に取り付けられている。スライドカバー10はフロントパネル4とリアパネル5との間に配置され、それらの間でスライド可能となっている。
【0013】
図2は上ハウジング2aの要部を示す平面図である。
図2においてリアパネル5は取り外され、スライドカバー10は開位置に配置されている。
図3は上ハウジング2aの裏面を示す図である。
図4は後述するアーム20の動きを示す図である。
【0014】
図3に示すように、電子機器1は、上ハウジング2aの裏面にアーム20を有している。アーム20はその一方の端部に当接部21を有している。この例の当接部21は、アーム20よりも大きな幅(光ディスクDの周方向での幅)を有している。当接部21は制動位置と退避位置との間で移動可能である。
図4に示すように、当接部21は、制動位置において光ディスクDの外縁に接し、光ディスクDの回転を抑える。これらの図では、制動位置にある当接部21が実線で示されている。退避位置は、光ディスクDの外縁から光ディスクDの半径方向に離れた位置、すなわち、
図4において二点差線で示された当接部21の位置である。
図1(b)に示すように、ディスク収容部2Aは、光ディスクDが配置される領域を取り囲む周壁部2bを有している。周壁部2bには穴2cが形成されている。当接部21は、この穴2cの内側を通って制動位置と退避位置との間で移動する。
【0015】
図4に示すように、アーム20は当接部21から離れて位置する軸部29によって支持されている。アーム20は、当接部21が制動位置と退避位置との間で動くように、軸部29を中心に回転可能となっている。
図3に示すように、上ハウジング2aの裏面には、当接部21を退避位置から制動位置に向けて付勢するためのばね(弾性体)31が設けられている。ばね31は、アーム20に形成された後述する第1係合部22に係合し、当接部21が退避位置から制動位置に向けて付勢されるようにアーム20にその弾性力を付与している。
図2に示すように、スライドカバー10は、そのスライド方向(この例では左右方向)に沿った縁、具体的には後縁に、ストッパ部11を有している。ストッパ部11は、スライドカバー10が閉位置にあるときに、アーム20に形成された後述する第2係合部23に係合し、退避位置から制動位置に向かう当接部21の移動を規制する。また、ストッパ部11は、スライドカバー10が開位置にあるときに、より具体的には閉位置から離れたときに、アーム20との係合を解消する。これにより、当接部21の移動規制が解除され、当接部21は制動位置で光ディスクDの回転を抑える。
【0016】
当接部21の制動位置と退避位置との位置関係について詳説する。この例の回転駆動部3aは、光ディスクDを時計回り方向に回転させる(以下において、光ディスクDの回転方向をディスク回転方向(
図4においてR1の示す方向)と称する)。
図4において、直線L1は、光ディスクDの回転中心(すなわち回転駆動部3aの回転中心線)C1と制動位置とを通る直線である。例えば、直線L1は、光ディスクDの回転中心C1と、制動位置にある当接部21と光ディスクDの接点P1と、を通る直線である。接点P1は、例えば、光ディスクDの周方向における当接部21の中心に設定される。
図4に示すように、当接部21の退避位置は、直線L1に対してディスク回転方向R1とは反対の方向にずれている(以下、ディスク回転方向R1とは反対の方向を反ディスク回転方向R2と称する)。
【0017】
当接部21は光ディスクDの外縁に接する面(以下、当接面)21aを有している。退避位置は直線L1に対して反ディスク回転方向R2にずれているため、当接面21a上の任意の点(例えば、
図4においてP2)に注目した場合、当接部21が退避位置にあるときの点P2の位置は、当接部21が制動位置にあるときの点P2の位置よりも反ディスク回転方向R2に位置している。点P2は、当接部21が制動位置から退避位置に向かって移動する過程で、反ディスク回転方向R2且つ光ディスクDの半径方向に斜めに移動する。なお、当接面21aが光ディスクDの外縁に合わせて湾曲している場合、直線L1は当接面21a上の任意の点と光ディスクDの回転中心C1とを通る直線でよい。
【0018】
当接部21が光ディスクDを制動している最中に光ディスクDから受ける力は、当接部21をディスク回転方向R1に動かそうとする力となる。制動位置と退避位置との位置関係を上述のように設定することにより、この力がばね31の弾性力に対する反力となることを抑えることができる。その結果、ばね31の弾性力を増すことなく、光ディスクDについて十分な制動力を得ることが可能となる。
【0019】
上述したように、アーム20は軸部29によって回転可能に支持されている。そのため、当接部21は軸部29を中心にして制動位置と退避位置との間で動き、その軌跡は軸部29を中心とする円上に形成される。当接部21は、制動位置から退避位置に向かう移動を開始する際、この円の接点P1での接線L2に沿った方向に動き出す。そして、この接線L2における光ディスクDの外縁よりも外側の部分である半直線は、直線L1に対して反ディスク回転方向R2に傾斜している。軸部29の位置は接線L2がこのように傾斜するように設定されている。具体的には、軸部29は直線L1に対して反ディスク回転方向R2に位置する。また、軸部29の位置は、接点P1を通り接線L2に対して垂直な直線L3上に設定される。この例では、軸部29の位置は直線L3上であり、且つ、ディスク収容部2Aを避けた上ハウジング2aの裏面の位置に設定されている。
【0020】
上述したように、軸部29は当接部21から離れて位置している。この例では、当接部21はアーム20の一方の端部に設けられ、軸部29はアーム20の他方の端部に設けられている。軸部29は上ハウジング2aの裏面に取り付けられている。
図3に示すように、アーム20は、その両端の間に、第1係合部22を有している。ばね31は第1係合部22に係合し、当接部21が退避位置から制動位置に向けて付勢されるようにアーム20に弾性力を付与している。この例のばね31はトーションばねである。ばね31は軸部29に巻き付けられ、その一方の端部に形成されたアーム31bは上ハウジング2aの裏面に形成されたばね受け2dに固定されている。また、他方の端部に形成されたアーム31aはアーム20の第1係合部22に係合している。
【0021】
図2に示すように、アーム20は、その両端の間に、第2係合部23を有している。スライドカバー10のストッパ部11は、スライドカバー10が閉位置に配置されているときに第2係合部23に係合し、退避位置から制動位置に向かう当接部21の移動を規制する。この例では、
図2に示すように、上ハウジング2aは、第2係合部23に対応する位置に開口2eを有している。第2係合部23は開口2eを通して上方に突出している。スライドカバー10のストッパ部11は、スライドカバー10の後縁からスライドカバー10に沿った方向、換言すると、上ハウジング2aの上面に沿った方向(この例では後方)に突出している。ストッパ部11は、スライドカバー10が閉位置にあるときに第2係合部23に当り、制動位置から退避位置に向かう方向(この例では後方)に、アーム20を押す。なお、ストッパ部11は、スライドカバー10が開位置にあるときに第2係合部23と対向する部分に、斜面11bを有している。これにより、スライドカバー10が開位置から閉位置に向けて移動する際、第2係合部23は斜面11bにあたり、アーム20は円滑に回転する。なお、スライドカバー10のストッパ部11と、上ハウジング2aに形成された開口2eは、上述のリアパネル5によって覆われる。
【0022】
このように、ばね31の弾性力を受ける部分である第1係合部22と、ストッパ部11が当る部分である第2係合部23と、当接部21は共通のアーム20に形成されている。これにより、構造の簡素化を図ることができている。
【0023】
図2に示すように、軸部29から第2係合部23までの距離は、軸部29から第1係合部22までの距離よりも大きい。そのため、光ディスクDに対する制動力を増すために弾性力の大きなばね31を採用した場合であっても、スライドカバー10を比較的小さな力で開位置から閉位置に移動できる。特にこの例のアーム20は、軸部29と当接部21との間で湾曲している。具体的には、アーム20は光ディスクDから離れる方向に膨らむように湾曲している。そのため、第2係合部23の位置の自由度を増すことができている。スライドカバー10を開位置から閉位置に移動する際に要する力、すなわち、ばね31の弾性力に抗してアーム20を動かすのに要する力は、軸部29から第2係合部23までの距離に依存する。第2係合部23の位置の自由度を増すことで、アーム20を動かすのに要する力の調整が容易となっている。この例のアーム20は、軸部29から離れるにしたがって回転駆動部3aの中心線C1からの距離が大きくなる第1アーム部20aと、第1アーム部20aから回転駆動部3aに向かって、換言すると、光ディスクDの外縁に向かって延びる第2アーム部20bとを含んでいる。上述の第2係合部23は第1アーム部20aの端部側に形成され、リアパネル5によって覆われる。
【0024】
以上説明したように、電子機器1では、当接部21の退避位置は、直線L1に対してディスク回転方向とは反対の方向に設定されている。そのため、比較的容易に光ディスクDについて十分な制動力を得ることが可能となる。
【0025】
電子機器1はアーム20を有している。アーム20は、当接部21を有し、且つ当接部21が制動位置と退避位置との間で移動するように当接部21から離れた軸部29を中心に回転可能となっている。ばね31は、当接部21が制動位置に向けて付勢されるようにアーム20に弾性力を付与している。このようなアーム20を利用することにより、簡単な構造の制動機構が実現され得る。
【0026】
軸部29の位置は、当接部21が制動位置から退避位置に向けた移動開始時に反ディスク回転方向R2且つ光ディスクDの半径方向に斜めに動くよう設定されている。これによれば、光ディスクDの回転により当接部21が受ける力が当接部21を退避位置に戻す力となることを、より確実に抑えることができる。
【0027】
スライドカバー10は回転駆動部3aの回転中心線C1に対して垂直な方向である左右方向にスライド可能であり、スライドカバー10の左右方向に沿った縁(この例では後縁)には、ストッパ部11が形成され、ストッパ部11は、スライドカバー10が閉位置にあるときにアーム20に当り当接部21の移動を規制している。この構造によれば、電子機器1の周りに大きなスペースを要することなく、スライドカバー10を開閉できる。
【0028】
なお、本発明は以上説明した電子機器1に限られず、種々の変更が可能である。
【0029】
例えば、本発明は、軸部を中心に開閉可能なカバーを有する電子機器に適用されてもよい。
【0030】
また、第1係合部22、第2係合部23及び当接部21は必ずしも共通のアーム20に形成されなくてもよい。例えば、軸部29から延びる複数のアームが形成され、それぞれに第1係合部22、第2係合部23、当接部21が設けられてもよい。
【0031】
また、電子機器1では、当接部21は、軸部29によって回転可能に支持されたアーム20に設けられている。しかしながら、当接部21は直線移動可能にガイドされた部材に設けられてもよい。
【0032】
また、トーションばねであるばね31に替えて、コイルばねが利用されてもよい。