【文献】
ITU-R Recommendation ITU-R M.1652-1(05/2011),2011年 5月,URL,https://www.itu.int/dms_pubrec/itu-r/rec/m/R-REC-M.1652-1-201105-I!!PDF-E.pdf
【文献】
Liwen Chu(STMicroelectronics),Fair Quiet for DFS, IEEE 802.11-11/1388r0,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/11/11-11-1388-00-00ac-fair-quiet-for-dfs.ppt>,2011年10月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
データを供給する入力機器に接続又は内蔵されている無線通信機器であって、上記データを出力する出力機器に接続又は内蔵されている他の無線通信機器と共に、当該無線通信機器と上記他の無線通信機器との間で、非レーダ帯域に含まれる第1の利用候補チャンネル群と、レーダ帯域に含まれる第2の利用候補チャンネル群とを用いて上記データを伝送する無線システムを構成する無線通信機器において、
上記第1の利用候補チャンネル群を利用候補チャンネル群として設定するか、又は、上記第1の利用候補チャンネル群および上記第2の利用候補チャンネル群の両方を利用チャンネル群として設定するかを、ユーザ操作に応じて選択する利用候補チャンネル群選択手段と、
上記利用候補チャンネル群選択手段の選択結果に基づいて利用チャンネル群を設定する利用候補チャンネル群設定手段と、
上記利用候補チャンネル群が第1の利用候補チャンネル群である際には、所定の時間より短いレイテンシを設定し、上記利用候補チャンネル群が第1の利用候補チャンネル群および第2の利用候補チャンネル群である際には、上記所定の時間より長いレイテンシを設定するレイテンシ設定手段と、
を備え、
上記利用候補チャンネル群選択手段は、上記入力機器から供給される上記データが、上記出力機器に出力した該データに基づいてユーザが入力を行うものである場合、上記第1の利用候補チャンネル群を利用候補チャンネル群として設定することを選択すること、
を特徴とする無線通信機器。
非レーダ帯域である第1の周波数帯域に含まれる第1の利用候補チャンネル群と、レーダ帯域である第2の周波数帯域に含まれる第2の利用候補チャンネル群とを用いて、データを供給する入力機器に有線接続されている第1の無線通信機器と、データを出力する出力機器に有線接続されている第2の無線通信機器との間においてデータを伝送する無線システムであって、
上記第1の無線通信機器は、
上記第1の利用候補チャンネル群を利用候補チャンネル群として設定するか、又は、上記第1の利用候補チャンネル群および上記第2の利用候補チャンネル群の両方を利用チャンネル群として設定するかを、ユーザ操作に応じて選択する利用候補チャンネル群選択手段と、
上記利用候補チャンネル群選択手段の選択結果に基づいて利用候補チャンネル群を設定する利用候補チャンネル群設定手段と、
上記利用候補チャンネル群が第1の利用候補チャンネル群である際には、所定の時間より短いレイテンシを設定し、上記利用候補チャンネル群が第1の利用候補チャンネル群および第2の利用候補チャンネル群を選択する際には、所定の時間より長いレイテンシを設定するレイテンシ設定手段と、
を備え、
上記利用候補チャンネル群選択手段は、上記入力機器から供給される上記データが、上記出力機器に出力した該データに基づいてユーザが入力を行うものである場合、上記第1の利用候補チャンネル群を利用候補チャンネル群として設定することを選択すること、
を特徴とする無線システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態1>
本発明の一実施形態に係る無線通信機器10は、他の無線通信機器と共に無線システムを構成する。当該無線システムは、所定の周波数帯の電波を用いて、無線通信機器10から他の無線通信機器へデータを伝送する。したがって、無線通信機器10のことを送信機と表現してもよいし、他の無線通信機器のことを受信機と表現してもよい。なお、当該データは主に映像コンテンツを表すデータであるが、当該データは映像コンテンツを表すデータに限定されるものではない。なお、上記所定の周波数帯の電波については後述する。
【0022】
上記無線システムを構成する一方の機器である無線通信機器10には、伝送するデータを供給する入力機器が有線接続されている。当該入力機器は、その種別を特に限定される
ものではない。例えば、HD(Hard Disk)レコーダー、BD(Blu-ray Disk:登録商標)プ
レイヤー、ゲーム機器、PC、スマートフォン、タブレット端末などを入力機器として無線通信機器10に接続することが可能である。無線通信機器10と、入力機器とを接続する方法は特に限定されるものではなく、従来より知られている方法によって接続することが可能である。例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface:登録商標)に準拠するインターフェースおよびケーブルを利用することによって、無線通信機器10と入力機器とを接続することが可能である。
【0023】
上記無線システムを構成する他方の機器である他の無線通信機器には、無線通信機器10から伝送されるデータを出力する出力機器が接続されている。当該出力機器は、少なくとも液晶表示パネルに代表される表示部を備えており、上記データが表す映像コンテンツなどを表示する。他の無線通信機器と、出力機器とを接続する方法は特に限定されるものではなく、例えばHDMIに準拠するインターフェースおよびケーブルを利用することによって互いに接続することが可能である。
【0024】
このように上記無線システムは、入力機器と出力機器との間において、無線接続を介してデータを伝送する。したがって、上記無線システムは、入力機器および出力機器を配置する際の自由度を大きく向上させることが可能である。
【0025】
(5GHz周波数帯)
上記無線システムにおいて特徴的な無線通信機器10について説明する前に、上記無線システムがデータを伝送するために利用する所定の電波について説明する。データを伝送する無線LANシステムが利用可能な電波の周波数帯は、2.4GHz帯および5GHz帯の2種類である。この利用可能な電波の周波数帯は、IEEE802.11a、b、gおよびnの各規格によって定められている。
【0026】
5GHz帯の電波は、2.4GHz帯の電波と比較すると電波干渉を受けにくいという特徴を有する。したがって、上記無線システムが2.4GHz帯ではなく5GHz帯の電波を利用することによって、高速かつ安定してデータを無線伝送することが容易になる。
【0027】
現在、データを無線伝送する際に利用可能な5GHz帯の周波数帯域は次の通りである。
・W52:5.15GHz〜5.25GHzの周波数帯域
・W53:5.25GHz〜5.35GHzの周波数帯域
・W56:5.47GHz〜5.725GHzの周波数帯域
本実施形態において、W52、W53およびW56のことを利用候補チャンネル群と表現する。W52、W53およびW56の各利用候補チャンネル群は、それぞれ複数のチャンネルを含んでいる。上記無線システムおよび無線通信機器10は、W52、W53およびW56の各利用候補チャンネル群が含むチャンネルのうち、いずれかのチャンネルを利用してデータを伝送する。
【0028】
5GHz帯の電波は、上述のように電波干渉を受けにくいという特徴を有している一方、レーダとして利用される周波数帯域と重複しているという特徴も有している。具体的にはW52、W53およびW56の各利用候補チャンネル群のうち、W53およびW56は、レーダとして利用される周波数帯域と重複する利用候補チャンネル群である。本実施形態において、レーダとして利用されない周波数帯域のことを非レーダ帯域と表現し、レーダとして利用される周波数帯域のことをレーダ帯域と表現する。また、非レーダ帯域に含まれるW52は第1の利用候補チャンネル群に対応し、レーダ帯域に含まれるW53およびW56は第2の利用候補チャンネル群に対応する。
【0029】
レーダが利用しているチャンネルと、無線システムおよび無線通信機器が利用しているチャンネルとが干渉するなどしてレーダに悪影響を与えることを防ぐために、5GHz帯を利用してデータを伝送する無線システムおよび無線通信機器は、DFS機能をサポートすることが求められる。このDFS機能とは、無線システムが利用するチャンネルと干渉する可能性のあるレーダ波が存在しているか否かを検出し、当該チャンネルが検出された場合には、無線システムおよび無線通信機器が利用するチャンネルを自動的に変更する機能である。
【0030】
なお、本実施形態においてレーダ帯域に含まれる利用候補チャンネル群として、W53およびW56を利用しているが、レーダ帯域に含まれる利用候補チャンネル群は、W53およびW56のいずれか一方であってもよい。
【0031】
(無線通信機器10)
次に、上記無線システムにおいて特徴的な無線通信機器10について、
図1〜3を参照しながら説明する。
図1は、無線通信機器10の概略を示すブロック図である。
図1に示すように、無線通信機器10は、利用候補チャンネル群選択部11、利用候補チャンネル群設定部12、レイテンシ設定部13、記憶部14、アンテナ15、レーダ波検出部16、通信チャンネル選択部17、通信部18、フレーム処理部19、変調部20、利用候補チャンネル群確認部21、および、レイテンシ確認部22を備えている。
【0032】
(利用候補チャンネル群選択部11)
利用候補チャンネル群選択手段である利用候補チャンネル群選択部11は、複数あるチャンネル群のうちいずれのチャンネル群を利用候補チャンネル群として選択するかをユーザが決定するためのスイッチである。
図2に示すように、ユーザは利用候補チャンネル群選択部11を操作することによって、利用候補チャンネル群として非レーダ帯域であるW52のみを選択するか、レーダ帯域を含むW52、W53およびW56を選択するかを決定する。以下において、W52、W53およびW56のことをW52+W53+W56とも表現する。
【0033】
図2の(a)は、ユーザが利用候補チャンネル群としてW52のみを選択する操作を行った場合の利用候補チャンネル群選択部11を示している。一方、
図2の(b)は、ユーザが利用候補チャンネル群としてW52+W53+W56を選択する操作を行った場合の利用候補チャンネル群選択部11を示している。
【0034】
なお、利用候補チャンネル群選択部11は、無線通信機器10が備える物理的なスイッチによって実現されていてもよいし、無線通信機器10が備える表示部上に表示される画像を用いてソフトウェア的に実現されるスイッチであってもよい。このように、利用候補チャンネル群選択部11を実現するスイッチの態様は特に限定されるものではなく、従来から知られている様々なスイッチを利用候補チャンネル群選択部11として利用することが可能である。
【0035】
(レイテンシ)
次に、本実施形態における特徴的なパラメータであるレイテンシについて説明する。本実施形態においてレイテンシとは、送信機(無線通信機器10)が備えるエンコーダ(
図1には図示せず)に、あるフレームを表すデータが入力された時点から、受信機(他の無線通信機器)が備えるデコーダが当該フレームを表すデータを出力した時点までの遅延時間のことを意味する。
【0036】
この最低限のレイテンシは、以下に示すそれぞれの時間を加算することによって導出可能である。
・エンコード、デコード、フレーム処理、変調など、送信機および受信機において、データを無線伝送するために必要なデータ処理を実行するために要する時間
・データを無線伝送する際に要する時間(電波干渉、伝送エラーに伴うデータの再送などによって刻々と変化する)
・DFS機能をサポートするために、送信機がデータを送信しない時間(無信号期間)
上述のデータ処理に要する時間、および、無線伝送に要する時間は、利用候補チャンネル群が、レーダ帯域のチャンネルを含んでいるか否かにかかわらず生じる遅延時間である。それに対して、DFS機能をサポートするために送信機がデータを送信しない無信号期間は、利用候補チャンネル群がレーダ帯域のチャンネルを含んでいる場合にのみ生じる遅延時間である。したがって、利用候補チャンネル群が、レーダ帯域のチャンネルを含んでいる場合と、含んでいない場合とを比較すると、レーダ帯域のチャンネルを含んでいる場合の方が、無信号期間の時間だけレイテンシが長くなる。
【0037】
利用候補チャンネル群が、レーダ帯域のチャンネルを含んでいる場合の方がレイテンシが長くなることについて、
図3を参照しながら説明する。
図3の(a)は、送信機がDFS機能を実行する場合において、送信機が備えるエンコーダに入力されるデータと、受信機が備えるデコーダが出力するデータとを示す概略図である。
図3の(b)は、送信機がDFS機能を実行しない場合において、送信機が備えるエンコーダに入力されるデータと、受信機が備えるデコードが出力するデータとを示す概略図である。
【0038】
DFS機能を実行する場合、送信機は定期的にレーダ波を検出するために無信号期間を設けることが好ましい。しがたって、送信機は連続してデータを送信することができない。DFS機能をサポートしない場合、送信機は無信号期間を設ける必要がないので、連続してデータを送信することができる。
【0039】
以上のことより、出力するデータが表す映像において、映像および音声が乱れるなどの不具合を生じさせないためには、あらかじめ想定される最長遅延時間よりも長い時間をレイテンシとして設定した上で、受信機は、遅延時間が常に設定したレイテンシになるようにデータを出力することが好ましい。遅延時間が、設定したレイテンシになるように制御する方法は特に限定されるものではなく、従来から知られている技術を利用可能である。例えば、送信機および受信機はそれぞれバッファメモリを備えていてもよい。当該構成によれば、遅延時間が設定したレイテンシより短い場合であっても、受信機は、出力するデータをバッファリングすることが可能であり、したがって遅延時間がレイテンシになるようにデータを出力することが可能である。また、当該構成によれば、受信機が備えるバッファメモリの容量が一杯になった場合でも、送信機が備えるバッファメモリにデータを一時的に記録しておくことが可能である。
【0040】
(好ましいレイテンシとリアルタイム性)
上述のようにレイテンシをあらかじめ想定される最長遅延時間よりも長くすることによって、電波状況などに応じて無線転送に伴う遅延時間が極端に長くなった場合でも、出力するデータに不具合を生じさせることなくデータを伝送することが可能である。
【0041】
しかし、データが表すコンテンツによっては、レイテンシを長くすることによってユーザが違和感を抱く虞がある。このようなコンテンツの一例として、ゲームが挙げられる。ユーザがゲームを楽しむ場合、ユーザは、出力機器が出力する映像を見ながらコントローラを操作する。したがって、ゲーム機が出力している映像と、出力機器が出力している映像との間に長い時間差が生じることは好ましくない。すなわち、ゲーム機が出力する映像を表すデータを無線伝送する場合には、レイテンシができる限り短いことが好ましい。
【0042】
本実施形態において、ゲームのように入力機器が出力する映像と、出力機器が出力する
映像との間に時間差が生じることが好ましくないコンテンツのことを、リアルタイム性が重要なコンテンツと表現する。
【0043】
一方、入力機器がHDレコーダー、BDプレーヤーなどである場合は、ユーザは出力機器が出力する映像コンテンツを視聴するだけであって、当該映像に基づいてなんらかの操作を行うわけではない。本実施形態において、このようにユーザが視聴するだけの映像コンテンツのことを、リアルタイム性が重要でないコンテンツと表現する。リアルタイム性が重要でないコンテンツを表すデータを無線伝送する場合は、データを出力する際の安定性が重要となるので、レイテンシをあらかじめ想定される最長遅延時間よりも長く設定することが好ましい。
【0044】
(レイテンシと利用候補チャンネル群)
上述の通り、DFS機能を実行しない場合の方が、DFS機能を実行する場合よりも、無信号期間の長さだけ遅延時間が短くなる。すなわち、DFS機能をサポートしない場合のレイテンシは、DFS機能をサポートしない場合のレイテンシよりも短くてよい。したがって、リアルタイム性が重要なコンテンツを表すデータを伝送する場合には、非レーダ帯域の利用候補チャンネル群であるW52のみを利用することが好ましい。利用候補チャンネル群としてW52のみを利用することによって、DFS機能を実行する必要がなく、短いレイテンシを用いてデータを伝送することが可能になる。
【0045】
一方、リアルタイム性が重要でないコンテンツを表すデータを伝送する場合には、W52に加えてレーダ帯域に含まれるチャンネル群であるW53およびW56も利用候補チャンネル群とすることが好ましい。データを伝送する際に、利用候補チャンネル群が含むチャンネル数が多いほど、電波干渉などが生じていない電波状態のよいチャンネルを選択できる可能性が高くなるからである。
【0046】
以上のことから発明者らは、レイテンシと利用候補チャンネル群とを選択する際の指針として、以下の指針を得た。
・リアルタイム性が重要なコンテンツを送信する際には、短いレイテンシを用いるとともに、非レーダ帯域に含まれるW52のみを利用候補チャンネル群として利用する。
・リアルタイム性が重要でないコンテンツを送信する際には、長いレイテンシを用いるとともに、W52に加えてレーダ帯域に含まれるW53およびW56を利用候補チャンネル群として利用する。
【0047】
無線通信機器10は、当該指針に沿って利用候補チャンネル群とレイテンシとを選択する。
【0048】
(利用候補チャンネル群設定部12)
利用候補チャンネル群設定手段である利用候補チャンネル群設定部12は、利用候補チャンネル群選択部11の選択結果に基づいて利用候補チャンネル群を設定する。そのうえで、利用候補チャンネル群がW52、または、W52+W53+W56のいずれであるかをレイテンシ設定部13に出力するとともに、記憶部14に記憶させる。
【0049】
(レイテンシ設定部13)
レイテンシ設定手段であるレイテンシ設定部13は、利用候補チャンネル群設定部12から供給される利用候補チャンネル群を表す情報に基づいて、レイテンシを長いレイテンシ、および、短いレイテンシのいずれか一方に設定する。本実施形態において長いレイテンシとは、
図3の(a)に示すDFS機能をサポートする場合における最低限のレイテンシより長い時間のレイテンシであることを意味する。一方、短いレイテンシとは、DFS機能をサポートする場合における最低限のレイテンシより短い時間のレイテンシであって
、かつ、
図3の(b)に示すDFS機能をサポートしない場合における最低限のレイテンシより長い時間のレイテンシであることを意味する。
【0050】
レイテンシ設定部13は、利用候補チャンネル群設定部12から供給される利用候補チャンネル群がW52であれば短いレイテンシを設定し、利用候補チャンネル群設定部12から供給される利用候補チャンネル群がW52+W53+W56であれば長いレイテンシを設定する(
図2参照)。
【0051】
上記の構成によれば、利用候補チャンネル群が、レーダ帯域を含むW52+W53+W56である際に、レイテンシ設定部13は長いレイテンシを設定する。したがって、無線通信機器10は、レーダ波を検出するために十分な無信号期間を確保することが可能である。すなわち、無線通信機器10は、利用候補チャンネル群がレーダ帯域のチャンネル群を含む際に、確実にDFS機能をサポートすることが可能である。
【0052】
また、利用候補チャンネル群が、非レーダ帯域であるW52のみであれば、レイテンシ設定部13は短いレイテンシを設定する。無線通信機器10がリアルタイム性が重要なコンテンツを表すデータを伝送する際には、短いレイテンシを用いて伝送することが可能なので、ユーザは、データを無線伝送することに伴う違和感を感じにくくなる。
【0053】
(アンテナ15)
アンテナ15は、DFS機能をサポートするために、無線通信機器10の近隣にレーダが存在していないか否かを検出するために、W53およびW56に含まれる複数のチャンネルの電波を受信する。さらに、アンテナ15は、受信した電波を電気信号に変換したうえで、レーダ波検出部16に当該電気信号を供給する。また、アンテナ15は、無線伝送するデータを表す電子信号を通信部18から受け取り、電波に変換して送信する。このことについては後述する。
【0054】
なお、無線通信機器10が備えるアンテナ15は1つに限られるものではない。すなわち、無線通信機器10は、少なくとも1つのアンテナ15を備えていればよい。
【0055】
(レーダ波検出部16)
レーダ波検出部16は、アンテナ15から供給される電気信号を解析し、当該電気信号が含んでいるレーダ波を検出する。当該電気信号からレーダ波を検出した場合には、レーダ波検出部16は、検出したレーダ波のチャンネルを通信チャンネル選択部17に供給する。一方、検出したレーダ波がなければ、レーダ波検出部16は、レーダ波を検出しなかったことを表す情報を通信チャンネル選択部17に供給してもよい。
【0056】
なお、レーダ波検出部16がレーダ波を検出する必要があるのは、利用候補チャンネル群設定部12において、利用候補チャンネル群としてレーダ帯域を含むW52+W53+W56が選択されている場合である。したがって、レーダ波検出部16は、記憶部14を参照して、利用候補チャンネル群がW52+W53+W56である場合のみレーダ波を検出する構成であってもよい。
【0057】
(通信チャンネル選択部17)
通信チャンネル選択部17は、記憶部14を参照して利用候補チャンネル群を表す情報を取得する。また、通信チャンネル選択部17は、レーダ波検出部16が検出したレーダ波のチャンネルを表す情報を、レーダ波検出部16から取得する。そのうえで、通信チャンネル選択部17は、取得した利用候補チャンネル群および検出されたレーダ波のチャンネルに基づいて、利用候補チャンネル群が含むチャンネルから通信チャンネルを選択する。
【0058】
より具体的には、記憶部14に記録されている利用候補チャンネル群がW52であれば、通信チャンネル選択部17は、W52が含む複数のチャンネルの中から1つの通信チャンネルを選択する。この際、DFS機能を実行する必要はないので、通信チャンネル選択部17は、レーダ波検出部16から供給されるレーダ波に関する情報を参照しなくてもよい。
【0059】
一方、記憶部14に記録されている利用候補チャンネル群がW52+W53+W56であれば、通信チャンネル選択部17は、W52+W53+W56が含む複数のチャンネルのうち、レーダ波検出部16によってレーダ波が検出されたチャンネルを除くチャンネルから1つの通信チャンネルを選択する。
【0060】
なお、レーダ波検出部16が検出するレーダ波の数およびチャンネルは、時間とともに変化する可能性がある。ある時点においてレーダ波を検出されていなかったチャンネルを、通信チャンネル選択部17が通信チャンネルとして選択していても、その後の別の時点では、当該チャンネルにおいてレーダ波が検出されることもあり得る。その場合、通信チャンネル選択部17は、上記別の時点でレーダ波が検出されていないチャンネルを新たな通信チャンネルとして選択する。したがって、無線通信機器10は、確実にDFS機能をサポートすることが可能である。
【0061】
また、レーダ波検出部16がレーダ波を検出していない際には、通信チャンネル選択部17は、W52、W53およびW56が含む複数のチャンネルから1つの通信チャンネルを選択すればよい。
【0062】
なお、無線通信機器10が複数のアンテナ15を備えている際には、通信チャンネル選択部17は、無線通信機器10が備えるアンテナ15の数と同数のチャンネルを通信チャンネルとして選択してもよい。
【0063】
通信チャンネル選択部17は、このようにして選択した通信チャンネルを、通信部18に供給する。
【0064】
(フレーム処理部19および変調部20)
入力機器から供給されるデータは、
図1に図示しないエンコーダにてエンコードされた後に、無線伝送するために好ましいデータ処理を、フレーム処理部19および変調部20において適宜施される。そして、当該データは通信部18に供給される。フレーム処理部19および変調部20がエンコードされたデータに施すデータ処理は、従来から知られているデータ処理を適用することが可能である。
【0065】
(通信部18)
通信部18は、通信チャンネル選択部17が選択した通信チャンネルを取得する。また、通信部18は、変調部20から伝送するデータを表す電気信号を取得する。当該電気信号は、変調部20によって、上記通信チャンネルに対応する周波数に変調されている。DFS機能によって、通信チャンネル選択部17が通信チャンネルを異なるチャンネルに変更した際に、通信部18は、通信チャンネルが変更されたことを変調部20に通知する構成であってもよい。変調部20は、通信部18からの当該通知にしたがって、新しい通信チャンネルに対応する周波数に、データを表す電気信号を変調する構成であってもよい。
【0066】
通信部18は、当該電気信号をアンテナ15に供給する。アンテナ15は、当該電気信号を電波に変換して送信する。
【0067】
(確認部)
図1に示すように、無線通信機器10は、利用候補チャンネル群確認部21およびレイテンシ確認部22を備えている。利用候補チャンネル群確認部21は、記憶部14を参照し、利用候補チャンネル群が、W52に設定されているのか、W52+W53+W56に設定されているのかを表示する。設定されている利用候補チャンネル群が、W52および、W52+W53+W56のいずれかであるかを表示する方法は特に限定されるものではない。たとえば、LEDの点灯をW52に対応付け、LEDの点滅をW52+W53+W56に対応付けてもよい。別の方法としては、無線通信機器10が
図1には図示しない表示部を備えており、その表示部に利用候補チャンネル群がいずれであるのかを表示してもよい。
【0068】
利用候補チャンネル群確認部21と同様に、レイテンシ確認部22は、記憶部14を参照し、レイテンシが長いレイテンシに設定されているのか、短いレイテンシに設定されているのかを表示する。設定されているレイテンシが、長いレイテンシおよび短いレイテンシのいずれかであることを表示する方法は解くに限定されるものではない。
【0069】
上記の構成によれば、ユーザは、無線通信機器10の状態を容易かつ的確に把握可能である。
【0070】
(利用候補チャンネル群およびレイテンシの変更)
無線通信機器10を連続して使用していると、利用候補チャンネル群およびレイテンシのいずれか一方が変更される可能性がある。無線通信機器10において、利用候補チャンネル群とレイテンシとそれぞれ対応している。したがって、利用候補チャンネル群およびレイテンシのいずれか一方に変化が認められた際には、その変化に伴って他方も変更することが好ましい。ここでは、無線通信機器10における利用候補チャンネル群およびレイテンシを設定する際の流れを、
図4を参照しながら説明する。
【0071】
ステップS100:通信チャンネル選択部17は、記憶部14を参照する際に利用候補チャンネル群およびレイテンシのいずれか一方に変化があるか否かを判別する。利用候補チャンネル群およびレイテンシのいずれにも変化がなければ(NO)、当該処理は終了する。
【0072】
ステップS102:S100において変化があれば(YES)、通信チャンネル選択部17は、利用候補チャンネル群の設定に変化があるか否かを判別する。
【0073】
ステップS104:S102において利用候補チャンネル群に変化があれば(YES)、通信チャンネル選択部17は、変更された利用候補チャンネル群がレーダ帯域に含まれるチャンネル群であるか否かを判別する。
【0074】
ステップS106:変更された利用候補チャンネル群がレーダ帯域に含まれるチャンネル群であれば、通信チャンネル選択部17は、長いレイテンシを設定するようにレイテンシ設定部13を制御する。
【0075】
ステップS108:変更された利用候補チャンネル群がレーダ帯域に含まれないチャンネル群であれば、通信チャンネル選択部17は、短いレイテンシを設定するようにレイテンシ設定部13を制御する。
【0076】
ステップS110:S102において利用候補チャンネル群に変化がなければ(NO)、通信チャンネル選択部17は、レイテンシの設定に変化があるか否かを判別する。レイテンシの設定に変化がなければ(NO)、当該処理は終了する。
【0077】
ステップS112:S110においてレイテンシの設定に変化があれば(YES)、通信チャンネル選択部17は、レイテンシが長いレイテンシに設定されたか否かを確認する。
【0078】
ステップS114:変更されたレイテンシが長いレイテンシであれば、通信チャンネル選択部17は、利用候補チャンネル群を、レーダ帯域に含まれるチャンネル群に設定するように利用候補チャンネル群設定部12を制御する。
ステップS116:変更されたレイテンシが長いレイテンシでなければ、通信チャンネル選択部17は、利用候補チャンネル群を、レーダ帯域に含まれないチャンネル群に設定するように利用候補チャンネル群設定部12を制御する。
【0079】
(他の無線通信機器)
無線通信機器10とともに無線システムを構成する他の無線通信機器は、無線通信機器10が備えるアンテナから伝送される電波を受信する受信機である。他の無線通信機器は、受信した電波をデータを表す電気信号に変換した後に、当該データに対して変調処理、フレーム処理などの必要な処理を施す。
【0080】
その上で、他の無線通信機器が備えるデコーダは、上記データをデコードする。デコードされた上記データは、他の無線通信機器に接続されている出力機器に出力される。当該出力機器は、表示部を備えており、上記データが表す映像を当該表示部に表示する。
【0081】
<実施の形態2>
本発明の一実施形態に係る無線通信機器30について、
図5を参照しながら説明する。上述の実施形態において説明した部材に関しては、同様の部材番号を付し、その説明を省略する。
【0082】
無線通信機器10が利用候補チャンネル群選択部11を備えているのに対して、無線通信機器30は入力機器判別手段である入力機器判別部31を備えている。入力機器判別部は、無線通信機器30に接続されている入力機器の種別を判別する。入力機器がHDMI接続によって無線通信機器30に接続されているのであれば、無線通信機器30はCEC(Consumer Electronics Control)コマンドを利用することによって、入力機器の論理アドレスを取得することが可能である。
【0083】
入力機器判別部31は、このように入力機器の種別を取得し、この種別に基づいて入力機器にとってリアルタイム性が重要であるか否かを判別する。そして、入力機器判別部31は、当該判別結果を利用候補チャンネル群設定部12に供給する。
【0084】
利用候補チャンネル群設定部12は、入力機器判別部31の判別結果に基づいて、入力機器にとってリアルタイム性が重要である際には、利用候補チャンネル群としてW52を設定し、入力機器にとってリアルタイム性が重要でない際には、利用候補チャンネル群としてW52+W53+W56を設定する。
【0085】
上記の構成によれば、ユーザが自ら利用候補チャンネル群を選択する必要がなくなり、無線通信機器30はユーザの使い勝手を向上させることが可能である。
【0086】
<実施の形態3>
本発明の一実施形態に係る無線通信機器40について、
図6を参照しながら説明する。上述の実施形態において説明した部材に関しては、同様の部材番号を付し、その説明を省略する。
【0087】
無線通信機器40は、コンテンツ属性判別手段であるコンテンツ属性判別部41を備えている。コンテンツ属性判別部41は、入力機器から供給されるデータの属性に基づいて、当該データが表すコンテンツにとってリアルタイム性が重量であるか否かを判別する。そして、コンテンツ属性判別部41は、当該判別結果を利用候補チャンネル群設定部12に供給する。
【0088】
コンテンツ属性判別部41は、例えばコンテンツを表すデータの拡張しなど、データの属性を表す情報に基づいてリアルタイム性が重量であるか否かを判別してもよい。また、無線通信機器40は
図5に図示しないエンコーダを備えている。コンテンツ属性判別部41は、エンコーダがデータをエンコードする際に発生する動きベクトルに基づいてリアルタイム性が重量であるか否かを判別してもよい。
【0089】
そして、入力機器判別部41は、上記判別結果を利用候補チャンネル群設定部12に供給する。利用候補チャンネル群設定部12は、入力機器判別部41の判別結果に基づいて、入力機器にとってリアルタイム性が重要である際には、利用候補チャンネル群としてW52を設定し、入力機器にとってリアルタイム性が重要でない際には、利用候補チャンネル群としてW52+W53+W56を設定する。
【0090】
上記の構成によれば、ユーザが自ら利用候補チャンネル群を選択する必要がなくなり、無線通信機器40はユーザの使い勝手を向上させることが可能である。
【0091】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。