(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来の構成では、以下の問題が生じる。すなわち、補正候補を表示するための専用キーを設ける構成では、ユーザがその専用キーを押下する操作が必要となるとともに、上記専用キーを表示させる表示領域を確保する必要がある。小型の携帯端末では表示可能な領域が限られているため、入力文字列の補正が必要ではないときにも上記専用キーの表示領域を確保しておくことは、表示可能な領域を有効利用するという観点から好ましくない。
【0009】
また、上記専用キーを用いずに、常に入力文字列の変換候補に加えて補正候補を表示する構成では、候補となる文字が多くなり、ユーザが所望の候補を選択する妨げとなる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、入力文字列の補正候補またはその変換候補を効率的に表示することができる文字入力装置および当該文字入力装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る文字入力装置は、上記の課題を解決するために、少なくとも1つの文字を含む入力文字列の入力を受け付け、当該入力文字列の変換候補を決定する文字入力装置であって、
上記入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定するための指標値を算出する指標値算出手段と、
上記指標値算出手段が算出した指標値に基づいて、上記入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定する誤入力判定手段と、
上記入力文字列が誤入力された文字列であると仮定した場合の当該入力文字列に対応する正しい入力文字列である補正文字列の候補を決定することが可能な補正文字列決定手段と、
上記誤入力判定手段が、上記入力文字列に誤りが含まれていると判定した場合に、上記補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補を表示部に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、補正文字列決定手段は、入力文字列が誤入力された文字列であると仮定した場合の当該入力文字列に対応する正しい入力文字列である補正文字列の候補を決定することができる。
【0013】
また、指標値算出手段は、入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定するための指標値を算出し、この指標値に基づいて、誤入力判定手段は、入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定する。表示制御手段は、入力文字列に誤りが含まれていると判定された場合に、補正文字列決定手段が決定した補正文字列の候補、または当該補正文字列の候補の変換候補(漢字等へ変換可能な候補)を表示部に表示させる。
【0014】
それゆえ、入力文字列が誤入力された場合にのみ、補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補を表示部に表示させることができ、これら候補を効率良く表示することができる。
【0015】
また、上記文字入力装置は、変換対象となる文字列の変換候補を決定する変換候補決定手段をさらに備え、上記指標値算出手段は、上記指標値として、上記変換候補決定手段が決定した変換候補の数を算出し、
上記誤入力判定手段は、上記指標値算出手段が算出した変換候補の数が所定の閾値よりも少ない場合に、上記入力文字列に誤りが含まれていると判定することが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、変換候補決定手段は、変換対象となる文字列の変換候補を決定する。変換対象となる文字列には、ユーザが入力した入力文字列および補正文字列決定手段が決定した補正文字列が含まれ得る。また、入力文字列が誤入力された文字列であるかどうかを判定するための指標値として、変換候補決定手段が決定した変換候補の数が利用される。そして、当該変換候補の数が所定の閾値よりも少ない場合に、入力文字列に誤りが含まれていると判定される。
【0017】
入力文字列が誤入力された文字列である場合には、当該入力文字列の変換候補の数は少なくなる傾向にあることに本発明の発明者らは気付いた。この変換候補の数と所定の閾値とを比較することにより、入力文字列が誤入力された文字列であるかどうかを判定することができる。
【0018】
また、上記文字入力装置は、上記所定の閾値をユーザからの指示に従って変更する閾値変更手段をさらに備えることが好ましい。
【0019】
所定の閾値の設定によって、入力文字列が誤入力された文字列であると判定される確率が変化する。上記所定の閾値を高く設定すれば、入力文字列が誤入力された文字列であると判定される確率が高まる。
【0020】
上記の構成によれば、閾値変更手段によって、変換候補の数と比較される所定の閾値をユーザが任意に変更することができ、自分の入力精度に合わせた補正を行わせることができる。
【0021】
また、上記文字入力装置は、上記表示部として、上記入力文字列の入力を受け付けるタッチパネルをさらに備えることが好ましい。
【0022】
タッチパネル方式の文字入力システムにおいては、従来方式のハードキーによる入力と比較して、入力ミスが発生する可能性が高い。それゆえ、本発明は、入力装置としてタッチパネルを備えた文字入力装置に好適に適用することができる。
【0023】
また、上記文字入力装置を動作させる制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための制御プログラム、および制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0024】
また、上記文字入力装置を備える電子機器も本発明の技術的範囲に含まれる。この構成により、補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補を効率良く表示する電子機器を実現できる。
【0025】
本発明に係る制御方法は、上記の課題を解決するために、少なくとも1つの文字を含む入力文字列の入力を受け付け、当該入力文字列の変換候補を決定する文字入力装置の制御方法であって、
上記入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定するための指標値を算出する指標値算出工程と、
上記指標値算出工程において算出された指標値に基づいて、上記入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定する誤入力判定工程と、
上記入力文字列に誤りが含まれていると上記誤入力判定工程において判定された場合に、当該入力文字列に対応する正しい入力文字列である補正文字列の候補を決定する補正文字列決定工程と、
上記補正文字列決定工程において決定された上記補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補を表示部に表示させる表示制御工程とを含むことを特徴としている。
【0026】
上記の構成によれば、入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定するための指標値に基づいて、入力文字列に誤りが含まれているかどうかが判定される。入力文字列に誤りが含まれていると判定された場合に、当該入力文字列に対応する正しい入力文字列である補正文字列の候補が決定される。そして、決定された補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補が表示部に表示される。
【0027】
それゆえ、入力文字列が誤入力された場合にのみ、補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補を表示部に表示させることができ、これら候補を効率良く表示することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明に係る文字入力装置は、入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定するための指標値を算出する指標値算出手段と、上記指標値算出手段が算出した指標値に基づいて、上記入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定する誤入力判定手段と、上記入力文字列が誤入力された文字列であると仮定した場合の当該入力文字列に対応する正しい入力文字列である補正文字列の候補を決定することが可能な補正文字列決定手段と、上記誤入力判定手段が、上記入力文字列に誤りが含まれていると判定した場合に、上記補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補を表示部に表示させる表示制御手段とを備える構成である。
【0029】
以上のように、本発明に係る制御方法は、入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定するための指標値を算出する指標値算出工程と、上記指標値算出工程において算出された指標値に基づいて、上記入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定する誤入力判定工程と、上記入力文字列に誤りが含まれていると上記誤入力判定工程において判定された場合に、当該入力文字列に対応する正しい入力文字列である補正文字列の候補を決定する補正文字列決定工程と、上記補正文字列決定工程において決定された上記補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補を表示部に表示させる表示制御工程とを含む構成である。
【0030】
それゆえ、入力文字列が誤入力された場合にのみ、補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の変換候補を表示させることができ、これら候補を効率良く表示することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の一形態について
図1〜
図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の文字変換装置を、タッチパネル式の携帯通信端末であるスマートフォン1に適用した例について説明する。なお、本発明は、文字入力機能を備える電子機器全般に適用可能であり、特に、PHS(Personal Handy phone System)、携帯電話、携帯型のパーソナルコンピュータ、ハンディーターミナルなどのような、携帯型の電子機器に好適に適用可能である。
【0033】
(スマートフォン1の構成)
まず、本実施形態に係る携帯電話機の要部構成について、
図1に基づいて説明する。
図1は、スマートフォン(文字入力装置)1の要部構成の一例を示すブロック図である。スマートフォン1は、少なくとも1つの文字を含む入力文字列の入力を受け付け、当該入力文字列の変換候補を決定する文字入力装置としての機能を有している。入力文字列とは、ユーザがスマートフォン1に入力した文字列であり、便宜上、1文字のみを入力し、変換する場合も含めて入力文字列という表現を用いることとする。また、特に断らない限り、入力文字列とは、変換される前の文字列を意味する。
【0034】
図1に示すように、スマートフォン1は、タッチパネル(表示部)2、主制御部3および記憶部10を備えている。これらの部材が筐体内部に格納されている。なお、スマートフォン1は、通信装置、マイクおよびスピーカなど、電話機に必要な装置を備えているが、これらについては、発明の特徴点と直接関係がないため図示していない。
【0035】
(タッチパネル2)
タッチパネル2は、スマートフォン1のユーザの入力操作、特に入力文字列の入力を受け付けて、該入力操作に応じた入力信号を主制御部3に伝達する入力部として機能する。タッチパネル2に表示された複数の入力キー(ソフトキー)23(
図2参照)をユーザがタッチすることにより文字列の入力操作が行われる。また、タッチパネル2は、主制御部3の制御に従って、入力文字列およびその変換候補を表示する表示部としても機能する。
【0036】
タッチパネル2の表示画面において、ユーザがタッチした位置を検出する方法は、特に限定されず、指の圧力を検出してもよいし、表示画面に接した指先を撮像した画像を解析することによりタッチ位置を検出してもよい。
【0037】
なお、スマートフォン1は、入力部と表示部とを別々に備えていてもよい。この場合、入力部は、例えば、キーボード(ハードキー)等によって入力操作を受け付けるものであってもよい。また、表示部は、画像を表示する機能を備えているものであればよく、例えばLCD(Liquid Crystal Display)表示装置、EL(Electro Luminescence)表示装置等で構成することもできる。
【0038】
(主制御部3の構成)
主制御部3は、スマートフォン1の動作を統括して制御する。主制御部3は、
図1に示すように、タッチパネル制御部(表示制御手段)4、エディタ部5、文字変換制御部(閾値変更手段)6、仮名漢字変換部(指標値算出手段、変換候補決定手段)7、閾値判定部(誤入力判定手段)8および入力文字補正部(補正文字列決定手段)9を備えている。
【0039】
なお、主制御部3には、これらのブロック以外にも、スマートフォンとしての機能(例えば通話やメール等)を実現するための各種ブロックが含まれているが、ここでは説明を省略する。
【0040】
(タッチパネル制御部4)
タッチパネル制御部4は、タッチパネル2から出力される、ユーザの文字入力情報(入力文字列を示す情報)を受け付けるとともに、文字変換制御部6の命令に従い、タッチパネル2に変換候補等を表示させる表示制御(表示出力)を行う。特に、タッチパネル制御部4は、閾値判定部8が、入力文字列に誤りが含まれていると判定した場合に、後述する補正文字列の候補または当該補正文字列の候補の漢字等への変換候補をタッチパネル2に表示させる。
【0041】
(エディタ部5)
エディタ部5は、スマートフォン1に文字を入力するときに、入力した文字等の削除、挿入等の編集を行う。スマートフォン1で動作するメールソフトやテキストメモソフト等が備えるエディタをエディタ部5として適用することもできる。なお、スマートフォン1に入力可能な文字には、仮名(片仮名、平仮名、漢字を含む)、英字、数字、記号、絵文字等が含まれる。
【0042】
(文字変換制御部6)
文字変換制御部6は、文字入力を行うときの処理全般を統括して制御する。具体的には、文字変換制御部6は、タッチパネル2に対して文字列を入力する操作が行われると、タッチパネル2に対してその文字列を確定させる操作が行われるまでの間、入力された文字列を確定前の文字列として管理する。
【0043】
また、文字変換制御部6は、入力文字列をタッチパネル2に表示すると共に、仮名漢字変換部7に送り、上記入力文字列を単語として完成させるための変換候補(入力文字変換候補)を仮名漢字変換部7から受け取る。そして、文字変換制御部6は、タッチパネル制御部4を介して、受け取った変換候補をタッチパネル2に表示させる。仮名漢字変換部7が決定した変換候補の全てを一度に表示する必要は必ずしもなく、変換候補が1つずつ表示されてもよい。
【0044】
なお、入力文字列を複数の文節に分けることができる場合には、各文節を漢字等に変換した変換候補が仮名漢字変換部7から送られ、文字変換制御部6は、受信した各文節の変換候補を順番に表示させる。
【0045】
この他、文字変換制御部6は、文字列の入力を確定する確定操作がタッチパネル2に対して行われたことを検知したときに、エディタ部5に指示して、確定後の文字列をタッチパネル2に表示させる等の処理を行う。
【0046】
(仮名漢字変換部7)
仮名漢字変換部7は、変換対象となる文字列の変換候補を決定する仮名漢字変換エンジンである。変換対象となる文字列とは、ユーザが入力した入力文字列および入力文字補正部9が決定した補正候補の文字列である。具体的には、仮名漢字変換部7は、変換対象の文字列の変換候補を、記憶部10に格納された仮名漢字辞書11およびユーザ辞書12から抽出し、抽出した変換候補を文字変換制御部6へ出力する。
【0047】
なお、スマートフォン1が有する文字変換機能は、平仮名を漢字に変換するものに限定されず、平仮名をカタカナ、アルファベット、数字、絵文字または記号に変換するものであってもよく、変換前の文字および変換後の文字(記号)の種類は限定されない。
【0048】
仮名漢字変換部7が利用する辞書の種類および数は、特に限定されず、ユーザ辞書12を利用する必要は必ずしもない。また、変換候補を決定する方法も特に限定されず、入力文字列と完全に一致する音(読み)を有する文字列および記号を変換候補として決定してもよいし、入力文字列の音と一致する音を有する文字(または文字列)をその先頭部分に含む文字列や、入力文字列の音と一致する音をその記号の音の先頭部分に含む記号を変換候補として決定してもよい。
【0049】
また、仮名漢字変換部7は、抽出した変換候補の数(変換候補数)を算出し、閾値判定部8へ出力する。この変換候補数は、入力文字列に誤りが含まれているかどうか(誤入力されたかどうか)を判定するための指標値として利用される。なお、変換候補数を算出する機能ブロックを仮名漢字変換部7とは別に設けてもよい。
【0050】
(閾値判定部8)
閾値判定部8は、閾値判定部8は、仮名漢字変換部7が算出した指標値である変換候補数に基づいて、入力文字列に誤りが含まれているかどうかを判定する。具体的には、閾値判定部8は、仮名漢字変換部7が算出した変換候補数と、記憶部10に格納されている閾値情報14が示す閾値とを比較し、上記変換候補数が所定の閾値よりも少ない場合に、入力文字列に誤りが含まれていると判定する。
【0051】
(入力文字補正部9)
入力文字補正部9は、入力文字列に誤りが含まれていると閾値判定部8が判定した場合に、記憶部10に格納されている補正用ルール13に従い、当該入力文字列に対応する正しい入力文字列である補正文字列の候補(補正候補)を決定する。
【0052】
補正用ルール13には、入力文字列を補正するための規則が示されている。当該規則として、例えば、入力文字列に含まれている文字(例えば、「は」)と、当該文字に濁点または半濁点を付けた文字(例えば、「ば」、「ぱ」)とを区別しないという規則が考えられる。また、入力文字列に含まれている文字(例えば、「い」)と、当該文字を入力する操作と類似した操作によって入力される文字(例えば、「あ」、「う」)とを区別しないという規則も考えられる。
【0053】
補正用ルール13が示す規則は、上述の例に限定されず、当業者によって適宜設定されればよい。
【0054】
また、誤って入力される可能性のある文字列と、当該文字列の補正候補とを対応付けて予め記憶部10に登録しておいてもよい。この構成では、登録されている文字列と一致または類似する文字列が入力された場合に、入力文字補正部9は、当該文字列と予め対応付けられている補正候補を変換候補表示領域22に表示する補正候補として決定する。
【0055】
なお、入力文字補正部9は、閾値判定部8による判定結果に関わらず、入力文字列が入力された時点で、入力文字列が誤入力された文字列であると仮定した場合の当該入力文字列に対応する補正文字列の候補を決定してもよい。しかし、入力文字列に誤りが含まれていないと閾値判定部8が判定した場合には、補正候補の変換候補は表示されないため、補正候補を決定したことが無駄になる。そのため、入力文字列に誤りが含まれていると閾値判定部8が判定した場合にのみ入力文字列の補正候補を決定することが好ましい。
【0056】
(記憶部10)
記憶部10は、主制御部3が実行する(1)各部の制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)アプリケーションプログラム、および、(4)これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記録するものである。この記憶部10は、ハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。
【0057】
図1に示すように、記憶部10には、特に、仮名漢字辞書11、ユーザ辞書12、補正用ルール13および閾値情報14が格納されている。
【0058】
仮名漢字辞書11は、漢字等(漢字、片仮名、英字、絵文字等)とその読みとを対応付けたデータベースである。上述のように、仮名漢字変換部7は、仮名漢字辞書11を用いて確定前の文字を漢字等に変換する候補を抽出する。
【0059】
ユーザ辞書12は、スマートフォン1のユーザが、文字列と、その文字列の音(読み)とを対応付けて登録するデータベースであり、ユーザ辞書12からも変換候補が抽出される。ユーザ辞書12には、ユーザが、使用頻度が高いと判断して登録した単語が含まれている。
【0060】
補正用ルール13は、上述したように、入力文字列を補正するための規則を示す情報である。
【0061】
閾値情報14は、閾値判定部8が用いる閾値を示す情報である。
【0062】
なお、スマートフォン1は、主制御部3が上述の処理を実行する過程でデータを一時的に保持するための作業領域として使用される一次記憶部(不図示)も備えている。この一次記憶部は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置によって構成される。仮名漢字変換部7が決定した変換候補や入力文字補正部9が決定した補正候補は、この一次記憶部に一時的に記録される。
【0063】
(スマートフォン1における文字入力方法)
続いて、スマートフォン1で文字入力を行う方法について、
図2に基づいて説明する。
図2は、スマートフォン1のタッチパネル2に、文字入力を行うときの画面(文字入力画面)が表示されている状態の一例を示す図である。
【0064】
図2に示すように、文字入力画面では、タッチパネル2には、文字入力領域21、変換候補表示領域22、複数の文字入力キー23、スクロールキー24、変換キー25、確定キー26が表示される。
【0065】
文字入力領域21は、ユーザが文字入力キー23を用いて入力した文字(入力文字列)が表示される領域であり、変換候補表示領域22は入力文字列の変換候補が表示される領域である。変換候補表示領域22に複数段で変換候補が表示される場合には、スクロールキー24を用いて、表示される変換候補を変更できる。
【0066】
図2に示すように、ユーザが「あおい」という文字列を入力した場合に、仮名漢字変換部7が「あおい」の変換候補として仮名漢字変換部7が17個の変換候補を決定したとする。閾値情報14が示す閾値が15の場合には、閾値判定部8は、入力ミスはないと判定し、その結果、「あおい」の変換候補が変換候補表示領域22に表示される。
図2に示す例では、「あおい」の変換候補として、「青い」、「葵」、「青色」、「葵祭」、「青井」、「青色吐息」が変換候補表示領域22に示されている。
【0067】
変換キー25は、入力文字列をそのまま仮名漢字変換させるためのキーである。文字列が入力されたときには、ユーザが変換キー25をタッチせずとも、自動的に変換候補(予測変換候補)が変換候補表示領域22に表示される。このとき、変換キー25をタッチすることにより、入力文字列をそのまま変換するための通常変換候補が変換候補表示領域22に表示される。例えば、「あい」という未確定の入力文字列に対して、通常変換候補として、”愛”、”会い”、”合い”というように、「あい」そのものの変換候補のみが出力される。
【0068】
確定キー26は、入力文字列またはその変換後の文字列を確定させるためのキーである。ユーザは、変換候補表示領域22に表示された変換候補から所望の変換候補を選択して確定キー26をタッチすることによって、当該変換候補の入力を確定することができる。
【0069】
各文字入力キー23には、仮名および数字が対応付けられており、仮名入力モードと数字入力モードを切り替えることによって、同じ文字入力キー23を用いて仮名または数字の何れかを入力することができるようになっている。仮名および数字に加えて英字が入力できるようになっていてもよい。
【0070】
また、仮名入力モードでは、各文字入力キー23が複数の文字に対応するようになっている。例えば、「あ」と表示された文字入力キー23は、「あ」「い」「う」「え」「お」「ぁ」「ぃ」「ぅ」「ぇ」「ぉ」の10文字に対応しており、該キーをタッチする度に文字入力領域21に表示される文字が切り替わるようになっている。そして、文字入力領域21に表示された文字は、確定キー26をタッチすることによって確定される。
【0071】
なお、入力が確定した文字も文字入力領域21に表示されるが、入力確定前の文字の表示態様と入力確定済の文字の表示態様とは、異なるように表示が行われる。これによって、ユーザは、文字入力領域21に表示されている文字が、入力確定前であるか否かを容易に認識することができる。
【0072】
(補正文字列の変換候補の表示例)
図3は、誤った文字列が入力された場合に、補正文字列の変換候補が表示されているタッチパネル2の表示画面の一例を示す図である。
図3に示すように、ユーザが「あおあ」という文字列を入力した場合に、仮名漢字変換部7が「あおあ」の変換候補として仮名漢字変換部7が3個の変換候補を決定したとする。閾値情報14が示す閾値が15の場合には、閾値判定部8は、入力ミスが発生していると判定する。
【0073】
その場合、入力文字補正部9は、「あおあ」の補正候補である「おおい」、「おあい」、「おうえ(ん)」、「ああい(う)」、「あおい」を決定し、これらの補正候補が漢字に変換された「多い」、「お会い」、「応援」、「青い」、および補正候補を平仮名のまま含む「ああいう」が変換候補表示領域22に表示される。
【0074】
ユーザは、変換候補表示領域22における個々の変換候補が表示されている領域をタッチすることで、当該変換候補を選択することができる。
【0075】
このように、スマートフォン1では、入力文字列が誤入力された文字列であるかどうかを判定するための指標値として、入力文字列の変換候補の数を用い、当該変換候補の数が所定の閾値よりも少ない場合に、入力文字列に誤りが含まれていると判定する。そして、入力文字列に誤りが含まれていると判定された場合にのみ、入力文字列の補正候補の変換候補が変換候補表示領域22に自動的に表示される。
【0076】
それゆえ、入力文字列に誤りが含まれているかどうかを、簡単な処理で適切に判定することができる。また、入力文字列に誤りが含まれている可能性が高い場合にのみ、補正候補またはその変換候補を表示することにより、従来の補正キーを常に表示する構成と比較して、タッチパネル2の画面を有効利用することができる。また、補正が必要な場合に、従来の補正キーをユーザが押下する手間を省くことができる。
【0077】
また、正しい入力が行われている場合には、不要な補正候補が表示される可能性を低減できるため、ユーザが変換候補を選択しやすくなる。
【0078】
なお、入力文字列に誤りが含まれていると閾値判定部8が判定した場合に、入力文字補正部9が決定した補正候補(平仮名またはカタカナ)が変換候補表示領域22に自動的に表示されてもよい。この構成では、表示された補正候補をユーザが選択する指示を受け付けた後に、選択された補正候補が仮名漢字変換部7によって漢字等に変換される。
【0079】
(文字入力および変換候処理の流れ)
次に、スマートフォン1で文字入力を行うときに実行される文字入力および変換処理の一例について、
図4に基づいて説明する。
図4は、スマートフォン1における文字入力および変換処理の一例を示すフローチャートである。なお、この処理は、スマートフォン1で文字入力を行うとき(例えばスマートフォン1において、文字入力を行うエディタ等が起動したとき)に実行される。
【0080】
ユーザが文字入力キー23をタッチすると、ユーザがタッチしたタッチパネル2の表示領域を示す入力情報が文字変換制御部6へ出力される(S1)。
【0081】
文字変換制御部6は、入力情報から、どの文字が入力されたのかを判定し、エディタ部5に指示して、入力された文字をタッチパネル2の文字入力領域21に表示させる(S2)。この段階では、文字の確定は行われていない。
【0082】
また、文字変換制御部6は、入力された入力文字列を仮名漢字変換部7に送る。
【0083】
これを受け取った仮名漢字変換部7は、受け取った入力文字列に対応する変換後の文字列(または補正候補の音に対応する音を有する記号)を、仮名漢字辞書11およびユーザ辞書12から抽出する(S3)。抽出された文字または記号を入力文字変換候補と称する。仮名漢字変換部7は、抽出した入力文字変換候補を文字変換制御部6へ出力する。
【0084】
また、仮名漢字変換部7は、抽出した入力文字変換候補の数(変換候補数と称する)を算出し、算出した変換候補数を閾値判定部8に送る(指標値算出工程)。
【0085】
変換候補数を受け取ると、閾値判定部8は、記憶部10に格納されている閾値情報14が示す閾値と、受け取った変換候補数とを比較し、変換候補数が閾値以上の場合には(S4にてNO)、ユーザは入力ミスをしていないと判定し、その旨を示す正入力判定情報を文字変換制御部6へ出力する(誤入力判定工程)。
【0086】
この正入力判定情報を受け取ると、文字変換制御部6は、仮名漢字変換部7が抽出した入力文字変換候補の一覧を、タッチパネル制御部4を介して変換候補表示領域22に表示する(S5)。
【0087】
一方、変換候補数が閾値より小さい場合には(S4にてYES)、閾値判定部8は、ユーザは入力ミスをしていると判定し、その旨を示す誤入力判定情報を文字変換制御部6および入力文字補正部9へ出力する(誤入力判定工程)。
【0088】
この誤入力判定情報を受け取ると、入力文字補正部9は、記憶部10に格納されている補正用ルール13を参照し、入力文字列の補正候補を特定する(S6)(補正文字列決定工程)。そして、入力文字補正部9は、特定した補正候補を仮名漢字変換部7へ出力する。
【0089】
補正候補を受け取ると、仮名漢字変換部7は、当該補正候補に対応する変換後の文字列(または補正候補の音に対応する音を有する記号)を仮名漢字辞書11およびユーザ辞書12から抽出する(S7)。抽出された文字列または記号を補正文字変換候補と称する。仮名漢字変換部7は、抽出した補正文字変換候補を文字変換制御部6へ出力する。
【0090】
補正文字変換候補を受け取ると、文字変換制御部6は、文字変換制御部6は、仮名漢字変換部7が抽出した入力文字変換候補および補正文字変換候補の一覧を、タッチパネル制御部4を介して変換候補表示領域22に表示する(S8)(表示制御工程)。
【0091】
そして、文字変換制御部6は、表示された変換候補がユーザによって選択されるのを待ち受ける。表示された複数の変換候補のひとつを指定する入力を受け付けると(S9)、文字変換制御部6は、エディタ部5を介して、文字入力領域21に表示された入力文字列を、ユーザが指定した変換後の文字列に変換する(S10)。
【0092】
(閾値の設定変更方法)
閾値情報14をユーザが変更できる構成にしてもよい。
図5は、閾値情報14をユーザが変更するための入力画面の一例を示す図である。
図5に示すように、入力ミス補正の設定を行う画面において、自動補正の頻度を設定するためのボタン31にタッチすることにより、自動補正の頻度を設定するための設定バー32が表示される。この設定バー32の先端部33をタッチし、スライドさせることにより、閾値情報14に示される閾値を変更することができる。
【0093】
上記閾値は、例えば、1から30まで30段階で変更することができる。デフォルト状態では、上記閾値は、16に設定されている。この設定はあくまで一例であり、上記閾値の設定および変更方法は、特に限定されない。
【0094】
閾値情報14が示す閾値の変更は、ユーザからの指示に従って、例えば、文字変換制御部6が行えばよい。この場合、文字変換制御部6は、上記閾値をユーザからの指示に従って変更する閾値変更手段として機能する。
【0095】
このように、入力文字列の補正の頻度をユーザが任意に変更できる構成とすることにより、ユーザの文字入力の精度に応じて、適切な補正の頻度を設定することができる。
【0096】
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0097】
また、上述したスマートフォン1の各ブロック、特に主制御部3は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0098】
すなわち、スマートフォン1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるスマートフォン1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記スマートフォン1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0099】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0100】
また、スマートフォン1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(high data rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。