(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体による流体騒音を抑制する遮音装置であって、一端に前記流体を流入させる流体流入部を有し、他端に前記流体を流出させる流体流出部を有する筒形本体を備え、この筒形本体にオリフィス孔を有する2つのオリフィス装置が設けられおり、
2つのオリフィス装置は、相互間距離が筒形本体の内径の5倍〜11倍の長さに相当する長さとなるように配置されているとともに、
筒形本体の内径の断面積に対する2つのオリフィス装置におけるオリフィス孔の開口面積の比率である開口比はいずれも0.2〜0.5であることを特徴とする遮音装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、流体による流体騒音を抑制する遮音装置であって、一端に前記流体を流入させる流体流入部を有し、他端に前記流体を流出させる流体流出部を有する筒形本体を備え、この筒形本体に、オリフィス孔を有するオリフィス装置を設けてなるものである。筒形本体に設けるオリフィス装置は1つでもよいが、2つ設けることが好ましい。
【0013】
本発明におけるオリフィス装置は、筒形本体内を流れる流体の流量を絞り込むことができ、オリフィス装置における開口比を調整できるような構成のものであればよく、例えば、
図3、
図4に示すようなオリフィス板状体として構成したものであっても、或いは
図13、
図14に示すようなオリフィス管状体として構成したものであってもよい。また、特に図示しないがバルブのような弁構造体として構成したものでもよい。ここで、オリフィス装置における開口比とは、筒形本体2の内径の断面積に対するオリフィス孔の開口面積の比率をいう。
【0014】
以下、オリフィス装置をオリフィス板状体として構成した場合の本発明の実施形態を示す。
図1は、オリフィス装置としてのオリフィス板状体を筒形本体に設けた本発明遮音装置の実施形態を示すもので、本発明の遮音装置1は断面円形のパイプ形状からなる筒形本体2を備え、この筒形本体2の内部に所定間隔を置いて2つのオリフィス板状体3a、3bを配置してなるものである。オリフィス板状体3a、3bは、所定厚みを有する円盤形状体として形成されると共に円盤形状体の中心部に円形の孔部を穿設してなるものであり、この円形の孔部がそれぞれオリフィス孔4a、4bとして構成される。2つのオリフィス板状体3a、3bは、筒形本体2内の流路にそれぞれオリフィス孔4a、4bが臨むようにして所定間隔を置いて配置されている。
【0015】
オリフィス孔4a、4bは、大径部R
1と小径部R
2とを有し、大径部R
1から小径部R
2にかけて順次孔径が小さくなるように設けられている。オリフィス孔4a、4bの形状はこのようなテーパー状の孔形状に限定されず、均一な孔径の形状のものでもよい。
【0016】
筒形本体2は、長手方向の両端部が開口しており、一端は、管体内部を流動する流体を流入させる流体流入部5として構成され、他端は前記流体を流出させる流体流出部6として構成されている。オリフィス板状体3a、3bは
図1、
図5に示すように、それらの外周縁が、筒形本体2の内周面に密に接触するようにして該筒形本体2の内部に嵌合されている。オリフィス板状体3a、3bを筒形本体2の内部に嵌合固定する手段としては、オリフィス板状体3a、3bの外周縁即ち嵌合面に接着剤を施して、該外周縁を筒形本体2の内周面に接着固定してもよく、或いはオリフィス板状体3a、3bと筒形本体2内周面との嵌め合い公差を小さく設計し、オリフィス板状体3a、3bの筒形本体2内周面に対する大きな接触圧により、オリフィス板状体3a、3bを筒形本体2内部に嵌合固定するようにしてもよい。
【0017】
また、オリフィス板状体3a、3bの取り付け構造の他の実施形態として、
図2に示すように、分割した筒形本体2の相互当接面間にオリフィス板状体3a、3bを介在して接合するようにしてもよい。即ち、筒形本体2を所定の長さ寸法に3分割し、筒形本体2を構成する3つの部品を用意する。第1の筒形本体部品2aと第2の筒形本体部品2bとの相互当接面間に、オリフィス板状体3aを介在し、このオリフィス板状体3aを2つの対向開口面に当接して固定する。同様に、第2の筒形本体部品2bと第3の筒形本体部品2cとの相互当接面間に、オリフィス板状体3bを介在し、このオリフィス板状体3bを2つの対向開口面に当接して固定する。この場合、オリフィス板状体3a、3bの固定手段としては、接着剤により前記相互当接面間に接着固定してもよく、或いは固定治具を用いて固定するようにしてもよい。
【0018】
図2に示した分割タイプの筒形本体2において、この筒形本体2は、2つのオリフィス板状体3a、3bの相互間距離Lに相当する長さを有する第2の筒形本体部品2bを備えている。従って、この実施形態によれば、所定のオリフィス板状体相互間距離Lに相当する筒形本体部品2bを予め作成しておけば、この筒形本体部品2bの左右両端位置にオリフィス板状体3a、3bをそれぞれ取り付けるという簡単な作業を行なうだけで、所定のオリフィス板状体相互間距離Lを備えた遮音装置を容易に製作することができる利点がある。
【0019】
また、3つの筒形本体部品2a、2b、2cを相互に取り付け、取り外し可能に構成すれば、上記距離Lを変動する場合にそれを容易に行なうことができる。即ち、上記距離Lに相当する長さのいくつか異なる複数種類の筒形本体部品2bを予め製作して用意しておけば、流体の種類や流速の大小によって上記距離Lを変動する場合に、第2の筒形本体部品2bだけを交換すればよく、第1の筒形本体部品2aや第3の筒形本体部品2cまでも交換する必要はない。即ち、遮音装置として機能させるためには、上記距離Lを調整できればよく、第1の筒形本体部品2aや第3の筒形本体部品2cの長さまでも変動させる必要はない。そのため、上記距離Lを変動する場合の作業が容易となる。従って、上記実施態様によれば、上記距離Lの異なる複数種類の遮音装置(完成品としての遮音装置)を予め製作し用意しておく必要がなくなり、経済的にも有利である。
【0020】
オリフィス板状体3a、3bのオリフィス孔4a、4bが、
図3、
図4に示すテーパー状の孔形状の場合において、オリフィス板状体3a、3bを筒形本体2に取り付けるに当り、オリフィス孔4a、4bの小径部R
2が筒形本体2の流体流入部5側に対向し、大径部R
1が筒形本体2の流体流出部6側に対向するように取り付ける。
【0021】
遮音装置1は、流体流入部5とオリフィス板状体3aとの間に第1の領域Xを、オリフィス板状体3aとオリフィス板状体3bとの間に第2の領域Yを、オリフィス板状体3bと流体流出部6との間に第3の領域Zをそれぞれ形成している。
【0022】
筒形本体2の外径(外周部における直径)は、5mm以上が好ましく、また筒形本体2の内径(内空部8の直径)は4mm以上が好ましい。筒形本体2の外径寸法および内径寸法は、これが取り付けられる管体の内径寸法により適宜決定できる。
【0023】
オリフィス板状体3a、3bの肉厚は1mm〜10mmが好ましい。また、オリフィス孔4a、4bの孔形状が、
図3、
図4に示すテーパー状の孔形状の場合、或いは図示しない均一径の孔形状の場合のいずれの場合においても、オリフィス孔4a、4bの孔径は、オリフィス板状体3a、3bにおける所定の開口比を満足する寸法であればよく特に限定されない。
【0024】
オリフィス板状体3a、3bにおける開口比は、筒形本体2の内径の断面積に対するオリフィス孔4a、4bのそれぞれの開口面積の比として求められる。上記開口比は、0.2〜0.5が好ましい。上記開口比が0.2未満では、流体の使用目的によってはその使用目的に必要な流速が得られず好ましくない。開口比が0.5を超えると、音圧に対して流体速度が大きくなるため遮音効果が減少し、好ましくない。
【0025】
また開口比が0.5を超えると、領域Yを、領域Xとは音響インピーダンスの異なった
領域として確保することが困難となり、そのため所望の遮音効果を発揮することができなくなる。ここにおいて、オリフィス板状体3a、3bが、大径部R
1と小径部R
2を有するテーパー形状のオリフィス孔4a、4bを備えたものである場合、オリフィス板状体3a、3bにおける開口比とは、筒形本体2の内径の断面積に対する小径部R
2の開口面積の比率をいう。
【0026】
筒形本体2に取り付けられる2つのオリフィス板状体3a、3bにおいて、それらの開口比は共に同一のものであることが好ましいが、他の実施形態として両者の開口比は異なっていてもよく、この場合でも同様に遮音効果を得ることができる。
【0027】
オリフィス板状体3aとオリフィス板状体3bとの間の距離Lは、本発明の遮音効果を発揮する上で重要な要素となる。本発明において、オリフィス板状体3aとオリフィス板状体3bとの間の距離Lとは、
図1に示すように、オリフィス板状体3aにおける領域Y形成面7aと、オリフィス板状体3bにおける領域Y形成面7bとの間の距離をいう。ここで、オリフィス板状体3aにおける領域Y形成面7aとは、オリフィス板状体3aの表裏両面のうち、領域Yに臨んでいる面(即ち、領域Y側の面)をいい、またオリフィス板状体3bにおける領域Y形成面7bとは、オリフィス板状体3bの表裏両面のうち、領域Yに臨んでいる面(即ち、領域Y側の面)をいう。
【0028】
図2に示すような、3つの筒形本体部品2a、2b、2cから構成される筒形本体2の場合も同様に、オリフィス板状体3aの領域Y形成面7aと、オリフィス板状体3bの領域Y形成面7bとの間の距離が上記オリフィス板状体相互間距離Lとなるが、この場合は、上記したように、上記距離Lは第2の筒形本体部品2bを構成するパイプの長さに相当する。
【0029】
本発明において上記オリフィス板状体相互間距離Lは、筒形本体2の内径(筒形本体2の内空部8の直径)の5倍〜11倍の長さに相当する長さが好ましく、5.4倍〜10.9倍の長さに相当する長さがより好ましい。前記距離Lが筒形本体2の内径の5倍未満の長さでは、第2の領域Yにおける音響インピーダンスの変化が小さく、遮音効果も小さいものとなる。また、前記距離Lの好ましい上限値を筒形本体2の内径の11倍としたのは、前記距離Lを筒形本体2の内径の11倍を超える長さに構成しても、11倍の長さに構成した場合に比べて遮音効果が増大しないからである。
【0030】
上記した如く、オリフィス板状体相互間距離Lは、筒形本体2の内径の5倍〜11倍の長さに相当する長さが好ましいのであり、従って、例えば筒形本体2の内径が30mmである場合、オリフィス板状体相互間距離Lは、150mm〜330mmが好ましいということになる。
【0031】
オリフィス板状体3a、3bの材質は、金属、プラスチックなどが用いられ、また、筒形本体2の材質も同様に、金属、プラスチックなどが用いられる。
【0032】
上記の如く構成される本発明遮音装置1は、入口から出口にかけて流体を流す長尺なホースなどの管体に取り付けて用いられる。このような管体の例示としては、エアーブラスト装置のショット噴射用のホース、燃焼ガスを排気する排気管、エアコンのダクトなどが挙げられる。管体は耐圧性の材料からなり、このような材料として、金属、プラスチック、ゴム、ゴム引き布、その他耐圧ホース材料として通常用いられているものなどが挙げられる。本発明において、流体とは、主に空気、ガスなどの気体を指すが、気体に一部、固体や液体が混在していてもよい。
【0033】
図6には、ホースなどの管体9に遮音装置1を取り付けた状態の略図が示されている。遮音装置1を管体9に取り付けるに当り、
図6に示すように、管体9の端面開口部に遮音装置1の一端部(即ち、流体流入部5を有する端部)を差し込んで取り付けてもよく、或いは特に図示しないが、管体9の内空部に遮音装置1の全部を挿入して、管体9内に遮音装置1を取り付けるようにしてもよい。
【0034】
また、
図7に示すように、管体9の端面開口部に遮音装置1の一端部である流体流入部5を有する端部(流体流入部5側の端部)を当接して端部同士を突き合わせ、両者の突合せ部を連結治具10を用いて連結固定するようにしてもよい。
【0035】
上記の如く、管体9に遮音装置1を取り付けることにより、管体9内部の流体流路11と遮音装置1の筒形本体内空部8とが連通し、管体9内を流れる流体は遮音装置1の流体流入部5より遮音装置1内に入り込む。
【0036】
図6において、流動する流体による流体騒音を伴った流体が管体9から遮音装置1へ流入すると、まず最初に流体は第1の領域Xに入り込む。第1の領域Xに入り込んだ流体は、同領域X内を流動し、オリフィス板状体3aのオリフィス孔4aを通って第2の領域Yに入り込む。
【0037】
流体が第2の領域Yに入り込む際、オリフィス孔4aを通ることによって流量が絞り込まれるので、圧力損失が生じ、第2の領域Yにおける圧力は低下する。それにより、第2の領域Yにおいて音響インピーダンスが変化する。このように、第1の領域Xと第2の領域Yとで異なった音響インピーダンスが生じる。その結果、音響インピーダンスが異なる第1の領域Xと第2の領域Yとの境界面で音波の一部が反射するため、遮音作用が起こり流体騒音を抑制することができる。
【0038】
上記したように、オリフィス板状体3a、3bにおける開口比は0.2〜0.5が好ましく、また、オリフィス板状体3a、3bの相互間距離Lは筒形本体の内径の5倍〜11倍の長さに相当する長さが好ましい。この範囲内において、開口比を一定にした場合、上記距離Lを大きくすると遮音効果が大きくなる傾向がみられ、また上記距離Lを一定にした場合、開口比を小さくすると遮音効果が大きくなる傾向がみられる。流体の種類、流速、管体内圧などの種々の条件に応じて、オリフィス板状体における開口比とオリフィス板状体相互間距離Lという2つの要素の組み合わせが適宜決定される。
【0039】
本発明において、オリフィス装置としてのオリフィス板状体は2つ設けることに限定されず、オリフィス板状体を1つ設ける態様も本発明に含まれる。オリフィス板状体を1つ設ける場合、例えば、オリフィス板状体の下流部の管路の体積を変えることにより、オリフィス板状体が1つであっても、音響インピーダンスの異なる領域を隣接して形成することができ、それにより遮音作用を生じさせることが可能となる。
【0040】
以下、オリフィス板状体からなるオリフィス装置を設けてなる実施形態における本発明の実施例について説明する。
(実施例1、比較例1)
図8に示すように、遮音装置1を耐圧ホース12に連結治具10により連結し、遮音装置1の流体流出部6側に全圧ピトー管13を設置し、この全圧ピトー管13に圧力計14を連結した。また先端にマイク15を備えた騒音計16を全圧ピトー管13と並列して設置した。遮音装置1としては、筒形本体2の内径d(内空部8の直径)が27.6mmのものを用い、この遮音装置1に取り付ける2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比を0.5に設定した。2つのオリフィス板状体は
図2に示すような取り付け構造で、2つのオリフィス板状体の相互間距離Lが90mm(L/d:3.3倍)となるように筒形本体2に取り付けた。ここで、L/dは、筒形本体2の内径dに対するオリフィス板状体相互間距離Lの倍率をいう。即ち、L/d:3.3倍とは、オリフィス板状体相互間距離L(90mm)は、筒形本体2の内径d(27.6mm)の3.3倍に相当する長さであることを意味する。尚、L/dの数値は、小数点2桁目を四捨五入した数値を採用している(以下の記述においても同様)。
【0041】
コンプレッサーにより室温下において圧縮空気を耐圧ホース12内に供給し、耐圧ホース12内に供給された圧縮空気を遮音装置1内に導き、この遮音装置1内において2つのオリフィス孔4a、4bを通過させて、遮音装置1の流体流出部6より圧縮空気を流出させ、流体流出部6より流出する圧縮空気の圧力を全圧ピトー管13に連結した圧力計14により測定し、測定された圧力に基づき計算により流速を求めた。この圧力と流速の関係から、空気流速を9m/秒に設定した場合の空気圧力を求め、この空気圧力で圧縮空気を耐圧ホース12を介して遮音装置1に供給した。このようにして空気流速9m/秒の条件で空気を流動した時の音圧を測定したところ、82.1dBであった(実施例1)。
【0042】
次いで、2つのオリフィス板状体における開口比を以下のように変動させて、上記と同一の条件で空気を流動した時の音圧を測定した(実施例1)。
・2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比が0.4であるもの
・2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比が0.3であるもの
・2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比が0.2であるもの
結果を表1に示す。また、比較のため、遮音装置1からオリフィス板状体を取り外して、オリフィス板状体なしの状態で上記と同一の条件にて空気を流動した時の音圧を測定した(比較例1)。結果を表1に示す。
【0043】
次に、2つのオリフィス板状体の相互間距離Lを120mm(L/d:4.3倍)(筒形本体2の内径の4.3倍に相当する長さ)とした点を除いて、上記と同一の条件で空気を流動した時の音圧を測定した。この場合も以下のようにオリフィス板状体における開口比を変動させて測定した(実施例1)。
・2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比が0.5であるもの
・2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比が0.4であるもの
・2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比が0.3であるもの
・2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比が0.2であるもの
結果を表1に示す。また、比較のため、遮音装置1からオリフィス板状体を取り外して、オリフィス板状体なしの状態で上記と同一の条件にて空気を流動した時の音圧を測定した(比較例1)。結果を表1に示す。
【0044】
更に、上記と同様の方法、手順により、2つのオリフィス板状体の相互間距離Lを150mm(L/d:5.4倍)(筒形本体2の内径の5.4倍に相当する長さ)、180mm(L/d:6.5倍)(筒形本体2の内径の6.5倍に相当する長さ)、210mm(L/d:7.6倍)(筒形本体2の内径の7.6倍に相当する長さ)、240mm(L/d:8.7倍)(筒形本体2の内径の8.7倍に相当する長さ)、270mm(L/d:9.8倍)(筒形本体2の内径の9.8倍に相当する長さ)、300mm(L/d:10.9倍)(筒形本体2の内径の10.9倍に相当する長さ)と変動させたときの音圧を測定した(実施例1)。同様に、比較のためオリフィス板状体なしの状態で音圧を測定した(比較例1)。結果を表1に示す。また、表1のデータを基に作成したグラフを
図9に示す。
【0046】
(実施例2、比較例2)
空気流速を13m/秒に設定した点を除いて実施例1と同様の方法、手順により、空気流動時の音圧を測定した。即ち、空気流速13m/秒の条件で空気を流動し、2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比を0.5、0.4、0.3、0.2と変動させ、また、2つのオリフィス板状体の相互間距離Lを90mm(L/d:3.3倍)、120mm(L/d:4.3倍)、150mm(L/d:5.4倍)、180mm(L/d:6.5倍)、210mm(L/d:7.6倍)、240mm(L/d:8.7倍)、270mm(L/d:9.8倍)、300mm(L/d:10.9倍)と変動させたときのそれぞれの音圧を測定した(実施例2)。比較のためオリフィス板状体なしの状態で同様に、音圧を測定した(比較例2)。結果を表2に示す。また、表2のデータを基に作成したグラフを
図10に示す。
【0048】
(実施例3、比較例3)
空気流速を16m/秒に設定した点を除いて実施例1と同様の方法、手順により、空気流動時の音圧を測定した。即ち、空気流速16m/秒の条件で空気を流動し、2つのオリフィス板状体における開口比を同一のものとし、それらの開口比を0.5、0.4、0.3、0.2と変動させ、また、2つのオリフィス板状体の相互間距離Lを90mm(L/d:3.3倍)、120mm(L/d:4.3倍)、150mm(L/d:5.4倍)、180mm(L/d:6.5倍)、210mm(L/d:7.6倍)、240mm(L/d:8.7倍)、270mm(L/d:9.8倍)、300mm(L/d:10.9倍)と変動させたときのそれぞれの音圧を測定した(実施例3)。比較のためオリフィス板状体なしの状態で同様に、音圧を測定した(比較例3)。結果を表3に示す。また、表3のデータを基に作成したグラフを
図11に示す。
【0050】
(実施例4、5および比較例4、5)
空気流速を29m/秒としたこと、遮音装置1として筒形本体2の内径dが16.1mmのものを用いたことおよび2つのオリフィス板状体の開口比をいずれも0.2としたことを除いて実施例1と同様の方法、手順により、空気流動時の音圧を測定した。即ち、空気流速29m/秒の条件で空気を流動し、2つのオリフィス板状体の開口比をいずれも0.2と設定し、この条件で空気流動時の音圧を測定した。この場合、オリフィス板状体相互間距離Lを53mm(L/d:3.3倍)、69mm(L/d:4.3倍)、87mm(L/d:5.4倍)、105mm(L/d:6.5倍)、122mm(L/d:7.6倍)、140mm(L/d:8.7倍)、158mm(L/d:9.8倍)、175mm(L/d:10.9倍)と変動させたときのそれぞれの音圧を測定した(実施例4)。更に、比較のためオリフィス板状体なしの状態で空気流速を29m/秒としたときの音圧を同様に測定した(比較例4)。実施例4および比較例4の結果を表4に示す。
【0051】
また、空気流速を41m/秒に変え、上記と同様の方法により、音圧を測定した(実施例5)。更に、比較のためオリフィス板状体なしの状態で空気流速を41m/秒としたときの音圧を同様に測定した(比較例5)。実施例5および比較例5の結果を表5に示す。表4、表5は、表1〜表3と同様の趣旨で、オリフィス板状体相互間距離Lと音圧との対応関係を示すものであるが、表4、表5においては、オリフィス板状体相互間距離Lを長さ(mm)の単位として表示する代わりに、内径dに対する距離Lの倍率(L/d)として表示してある。
【0052】
また表4および表5のデータを基に作成したグラフを
図12に示す。この
図12のグラフにおいても、横軸のオリフィス板状体相互間距離Lを長さ(mm)の単位として表示する代わりに、内径dに対する距離Lの倍率(L/d)として表示してある。
【0055】
上記表1〜表5およびそれらのデータに基づき作成したグラフ(
図9〜
図12)によれば、本発明の各実施例はいずれも比較例に比べて音圧を確実に低減できる効果があることが判る。このことから、本発明遮音装置は2つのオリフィス板状体を配置することによって、流体騒音を有効に抑制できることが明らかである。
【0056】
更に上記表1〜表5および
図9〜
図12のグラフによれば、2つのオリフィス板状体の相互間距離が、筒形本体の内径の5倍〜11倍の長さに相当する長さである場合、騒音抑制効果が大きく、また、2つのオリフィス板状体の開口比がいずれも0.2〜0.5である場合に同様に騒音抑制効果が大きいことが判明した。
【0057】
本発明は、筒形本体に2つのオリフィス装置を配置することにより所定の騒音抑制効果が得られるが、上記実施例における測定結果によれば、2つのオリフィス装置の相互間距離が、筒形本体の内径の5倍〜11倍の長さに相当する長さであること、および2つのオリフィス装置の開口比がいずれも0.2〜0.5であること、という2つの条件が付加されると、更に一段と優れた騒音抑制効果が発揮されることが判る。
【0058】
次に、オリフィス装置をオリフィス管状体として構成した本発明の他の実施形態について説明する。
図13において、20a、20bはオリフィス管状体で、該オリフィス管状体20a、20bは、ベンチュリー管のような絞り部を内部通路に設けた構造を有するオリフィス孔21を備えている。オリフィス孔21は、水平方向の管状通路を有する水平孔部22と、この水平孔部22を挟んで該水平孔部22の一方の端部と連通する第1の傾斜孔部23と、水平孔部22の他方の端部と連通する第2の傾斜孔部24とから構成される。水平孔部22は水平方向に同一内径を有する孔部であり、また第1傾斜孔部23は水平孔部22との連通部からオリフィス管状体20a、20bの一方の端部25に向かう方向に沿って内径が大きくなるように傾斜孔構造に形成された孔部であり、更に、また第2傾斜孔部24は水平孔部22との連通部からオリフィス管状体20a、20bの他方の端部26に向かう方向に沿って内径が大きくなるように傾斜孔構造に形成された孔部である。
【0059】
水平孔部22の水平方向における長さ寸法aとして例えば、1mm〜100mmが好ましい。第1傾斜孔部23は、第2傾斜孔部24よりも水平方向における長さ寸法が大きく形成される。図中、27は、オリフィス管状体20a、20bの一方の端部25側に形成された孔部、28は、オリフィス管状体20a、20bの他方の端部26側に形成された孔部である。
【0060】
上記の如く構成されるオリフィス管状体20a、20bは筒形本体2に取り付けられるが、この取付方法は前記実施形態におけるオリフィス板状体3a、3bを筒形本体2に取り付ける場合と同様である。即ち、オリフィス管状体20a、20bは筒形本体2の内空部に嵌入し固定することができる。この固定方法としては、接着により固定してもよく或いは大きな接触圧により前記内空部に密に嵌合することにより固定してもよい。また、前記実施形態における
図2に示すように、3つの部品に分割した筒形本体2を用い、筒形本体部品の相互当接面間にオリフィス管状体20a、20bを介在して取り付け固定するようにしてもよい。
【0061】
上記の分割した筒形本体2を用いて、これにオリフィス管状体20a、20bを取り付ける場合の実施態様につき以下説明する。
図15に示すように、筒形本体2は、3つの筒形本体部品2a、2b、2cからなり、第1の筒形本体部品2aと第2の筒形本体部品2bとの相互当接面間に、オリフィス管状体20aを介在し、このオリフィス管状体20aを第1と第2の筒形本体部品2aと2bの対向開口面に当接して固定する。同様に、第2の筒形本体部品2bと第3の筒形本体部品2cとの相互当接面間に、もう1つのオリフィス管状体20bを介在し、このオリフィス管状体20bを第2と第3の筒形本体部品2bと2cの対向開口面に当接して固定する。この場合、オリフィス管状体20aにおける第2の傾斜孔部24が、筒形本体部品2bの開口端(
図15において左側開口端)に対向するように設けられ、またオリフィス管状体20bにおける第1の傾斜孔部23が、筒形本体部品2bの開口端(
図15において右側開口端)に対向するように設けられる。そして、オリフィス管状体20aにおける第1の傾斜孔部23が、筒形本体部品2aの開口端に対向するように設けられ、またオリフィス管状体20bにおける第2の傾斜孔部24が、筒形本体部品2cの開口端に対向するように設けられる。オリフィス管状体20a、20bの、筒形本体部品2a、2b、2cへの固定手段としては、接着剤により前記相互当接面間に接着固定してもよく、或いは固定治具を用いて固定するようにしてもよい。
【0062】
上記の如くして
図15に示すような本発明の遮音装置1が構成される。29は流体流入部、30は流体流出部である。筒形本体2の外径及び内径は、オリフィス板状体3a、3bを用いる前記実施形態におけると同様、外径5mm以上、内径4mm以上が好ましい。第2の筒形本体部品2bは、2つのオリフィス管状体20a、20bの相互間距離Fに相当する長さを有している。オリフィス管状体20a、20bにおける開口比は、筒形本体2の内径の断面積に対する水平孔部22の開口面積の比として求められる。前記開口比は、オリフィス板状体3a、3bを用いる前記実施形態におけると同様、0.2〜0.5が好ましい。
【0063】
オリフィス管状体20a、20bの相互間距離Fは、オリフィス板状体3a、3bを用いる前記実施形態におけると同様、筒形本体2の内径の5倍〜11倍の長さに相当する長さが好ましく、5.4倍〜10.9倍の長さに相当する長さがより好ましい。
【0064】
上記の如く構成される本発明遮音装置1は、オリフィス板状体3a、3bを用いる前記実施形態におけると同様、エアーブラスト装置のショット噴射用のホースなどの流体騒音が発生する管体に取り付けて用いられる。管体への取り付けは、前記実施形態におけると同様、管体の端面開口部に遮音装置1の一端部を差し込んで取り付ける態様、管体の内空部に遮音装置1の全部を挿入して取り付ける態様及び管体の端面開口部に遮音装置1の流体流入部29側の端部を当接して管体と遮音装置1の端部同士を突き合わせて連結治具を用いて連結固定する態様がある。
【0065】
この実施形態における本発明遮音装置1は、管体内を流体が高速で流れている場合においても、流体騒音を確実に抑制できる作用を発揮する。オリフィス板状体3a、3bを設けてなる前記実施形態の遮音装置1は、ある程度の流速の流体に対する騒音抑制効果は確実に発揮するものであるが、流体が例えば流速50m/秒以上の高速で流れている場合においては、流体騒音の抑制は十分ではない。これは、遮音装置1の筒形本体2内を流体が高速で流れている場合には、流れが筒形本体2の内壁面形状に追従しなくなり、そのため流れの剥離が起こり、これが騒音発生源となるため、流体騒音の抑制を十分に行うことができないものと考えられる。
【0066】
本実施形態の遮音装置1におけるオリフィス管状体20a、20bは、
図13に示すように、オリフィス孔21を、水平孔部22と、その両端に連続して設けた第1の傾斜孔部23と第2の傾斜孔部24とから構成しているため、流体と上記内壁面との付着力が大きくなり、軸方向速度における慣性力が、上記内壁面との付着力を上回ることがないため、流れの剥離が起こらず、従って、高速流であっても十分に流体騒音の抑制を行うことができる。
【0067】
図15に示す実施形態においては、オリフィス管状体20aにおける第2の傾斜孔部24が筒形本体部品2bの開口端(
図15において左側開口端)に対向するように設けられ、またオリフィス管状体20bにおける第1の傾斜孔部23が筒形本体部品2bの開口端(
図15において右側開口端)に対向するように設けられたが、他の実施形態として
図16に示すように、オリフィス管状体20bの取り付け姿勢を180°転換し、オリフィス管状体20bにおける第2の傾斜孔部24が筒形本体部品2bの開口端(
図16において右側開口端)に対向するように設けてもよい。
【0068】
オリフィス管状体の別の実施形態として、
図14に示す構造のものであってもよい。同図に示すオリフィス管状体31におけるオリフィス孔32は、前記実施態様における水平孔部22に相当する孔部を有さず、第1の傾斜孔部33の内方側開口端と、第2の傾斜孔部34の内方側開口端とを相互に当接して連接した孔形状となっている連接孔部35を有している。このように、オリフィス孔32は、連接孔部35と、第1傾斜孔部33と、第2傾斜孔部34とから構成される。
【0069】
第1傾斜孔部33は連接孔部35との連接部からオリフィス管状体31の一方の端部36に向かう方向に沿って内径が大きくなるように傾斜孔構造に形成された孔部であり、また第2傾斜孔部34は連接孔部35との連接部からオリフィス管状体31の他方の端部37に向かう方向に沿って内径が大きくなるように傾斜孔構造に形成された孔部である。
【0070】
第1傾斜孔部33は、第2傾斜孔部34よりも水平方向における長さ寸法が大きく形成される。図中、38は、オリフィス管状体31の一方の端部36側に形成された孔部、39は、オリフィス管状体31の他方の端部37側に形成された孔部である。オリフィス管状体31における開口比は、筒形本体2の内径の断面積に対する連接孔部35の開口面積の比として求められる。前記開口比は、オリフィス板状体3a、3bを用いる前記実施形態におけると同様、0.2〜0.5が好ましい。
【0071】
流体が高速で流れる場合の流体騒音の抑制を確実に行うためには、
図13に示すオリフィス管状体20a、20bにおいて、第1の傾斜孔部23における傾斜角度αは、5°〜30°が好ましく、第2の傾斜孔部24における傾斜角度βはαに対応し、5°〜30°が好ましい。また、同様に高速流体の流体騒音の抑制を確実に行うために、
図14に示すオリフィス管状体31において、第1の傾斜孔部33における傾斜角度γ及び第2の傾斜孔部34における傾斜角度δは、いずれも前記と同様、5°〜30°が好ましい。上記した傾斜孔部23、24及び傾斜孔部33、34におけるそれぞれの傾斜角度α、β及びγ、δがいずれも5°未満では、実機として不必要に長い構造となってしまうため好ましくない。またそれらの傾斜角度α、β及びγ、δがいずれも30°を超えると、流れの剥離が起きて騒音発生の虞があり、流体騒音の抑制を十分に行なうことができないため好ましくない。
【0072】
本発明は上記したオリフィス管状体20a(20b)と31とを組み合わせて遮音装置1を構成することもでき、その実施形態の一例を
図17に示す。この実施形態は、
図15に示す実施形態におけるオリフィス管状体20bに替えてオリフィス管状体31を筒形本体2に取り付けた構成を備えている。この場合、オリフィス管状体31における第1の傾斜孔部33が筒形本体部品2bの開口端(
図17において右側開口端)に対向するように設けられている。
【0073】
以下、オリフィス管状体からなるオリフィス装置を設けてなる実施形態における本発明の実施例について説明する。
(実施例6)
図15に示す遮音装置1を用い、この遮音装置1を
図8に示すように耐圧ホース12に
連結し、圧縮空気を耐圧ホース12内に供給した。流体流入部29側のオリフィス管状体20aにおける開口比を0.5とし、流体流出部30側のオリフィス管状体20bにおける開口比を0.3とし、オリフィス管状体相互間距離Fを300mmとし、空気流速を50.2m/秒とし、実施例1と同様の測定方法にて、耐圧ホース12に空気を流動した時の音圧を測定した。測定結果は、音圧83.8dBであった。
【0074】
(実施例7)
空気流速を64.8m/秒とした点を除いて、実施例6と同様の方法、条件にて音圧を測定した。測定結果は、音圧89.8dBであった。
【0075】
(実施例8)
実施例6における遮音装置1に代えて
図16に示す遮音装置1を用い、流体流入部29側のオリフィス管状体20aにおける開口比を0.5とし、流体流出部30側のオリフィス管状体20bにおける開口比を0.3とし、オリフィス管状体相互間距離Fを300mmとし、空気流速を50.2m/秒とし、実施例1と同様の測定方法にて、耐圧ホース12に空気を流動した時の音圧を測定した。測定結果は、音圧89.2dBであった。
【0076】
(実施例9)
空気流速を64.8m/秒とした点を除いて、実施例8と同様の方法、条件にて音圧を測定した。測定結果は、音圧97.2dBであった。
【0077】
(実施例10)
実施例6における遮音装置1に代えて
図17に示す遮音装置1を用い、流体流入部29
側のオリフィス管状体20aにおける開口比を0.5とし、流体流出部30側のオリフィス管状体31における開口比を0.3とし、オリフィス管状体相互間距離Fを300mmとし、空気流速を50.2m/秒とし、実施例1と同様の測定方法にて、耐圧ホース12に空気を流動した時の音圧を測定した。測定結果は、音圧80.6dBであった。
【0078】
(実施例11)
空気流速を64.8m/秒とした点を除いて、実施例10と同様の方法、条件にて音圧を測定した。測定結果は、音圧83.7dBであった。
【0079】
(実施例12)
オリフィス管状体31における開口比を0.5とした点を除いて、実施例10と同様な遮音装置1を用い、実施例10と同様の方法、条件にて音圧を測定した。測定結果は、音圧81.2dBであった。
【0080】
(実施例13)
空気流速を64.8m/秒とした点を除いて、実施例12と同様の方法、条件にて音圧を測定した。測定結果は、音圧89.8dBであった。
【0081】
(実験例1)
オリフィス板状体3a、3bからなるオリフィス装置を有する
図2に示す遮音装置1を
用い、この遮音装置1を
図8に示すように耐圧ホース12に連結し、圧縮空気を耐圧ホース12内に供給した。空気流速を50.2m/秒とした点を除いて、実施例1と同様の方法、条件にて耐圧ホース12に空気を流動した時の音圧を測定した。測定結果は、音圧90.0dBであった。
【0082】
上記した実施例6〜実施例13及び実験例1によれば、空気流速が50m/秒以上という高速流体を耐圧ホース12内に流動した場合、オリフィス板状体3a、3bからなるオリフィス装置を備える遮音装置(
図2に示す遮音装置)においては、流体騒音の抑制作用は十分ではないが、オリフィス管状体20a、20bからなるオリフィス装置或いはオリフィス管状体20a、31からなるオリフィス装置を備える遮音装置(
図15〜
図17に示す遮音装置)においては、流体騒音を十分に抑制できることが判明した。