(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した第1の画像の画像データと、前記第1の画像の撮像時刻以前に、前記被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した第2の画像の画像データとを記憶した画像データ記憶手段と、
前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第1及び第2の画像の画像データに基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像とを比較した経時比較画像を生成する経時比較画像生成手段と、
前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第1の画像の画像データに基づいて、前記第1の画像と前記第1の画像の左右を反転させた画像との差分画像である第1の左右差分処理像を生成する左右差分処理像生成手段と、
前記経時比較画像の画素値に応じた表示態様の前記経時比較画像と、前記第1の左右差分処理像の画素値に応じた表示態様の前記第1の左右差分処理像とを表示装置に重ねて表示させる表示制御手段と、を備える画像処理装置。
被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した第1の画像の画像データと、前記第1の画像より前の時刻に、前記被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した第2の画像の画像データとを記憶した画像データ記憶手段を有する画像処理装置が、
前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第1及び第2の画像の画像データに基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像とを比較した経時比較画像を生成するステップと、
前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第1の画像の画像データに基づいて、前記第1の画像と前記第1の画像の左右を反転させた画像との差分画像である第1の左右差分処理像を生成するステップと、
前記経時比較画像の画素値に応じた表示態様の前記経時比較画像と、前記第1の左右差分処理像の画素値に応じた表示態様の前記第1の左右差分処理像とを表示装置に重ねて表示させるステップと、を行う画像処理方法。
被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した第1の画像の画像データと、前記第1の画像より前の時刻に、前記被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した第2の画像の画像データとを記憶した画像データ記憶手段を有する画像処理装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第1及び第2の画像の画像データに基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像とを比較した経時比較画像を生成するステップと、
前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第1の画像の画像データに基づいて、前記第1の画像と前記第1の画像の左右を反転させた画像との差分画像である第1の左右差分処理像を生成するステップと、
前記経時比較画像の画素値に応じた表示態様の前記経時比較画像と、前記第1の左右差分処理像の画素値に応じた表示態様の前記第1の左右差分処理像とを表示装置に重ねて表示させるステップと、を前記画像処理装置に実行させるコンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、過去画像と現在画像との間で放射性薬剤の集積に差(変化)があったか否かを把握することができる。つまり、現在画像で過去画像にはなかった新たな集積が発生したり、または過去画像にあった集積が消失したりしたこと、あるいは現在画像での集積が過去と比べて増加または減少した部位を見つけることができる。しかしながら、この技術では、異常集積であっても過去と現在で差がない部分を検出できないことや、差分として検出された箇所も、それが異常によるものか生理的、あるいは非特異的なものであるのか、あるいは(体位などの)技術的な変化なのかを判定することはできない。
【0008】
放射性薬剤は、生理的・非特異的な集積は左右対称に発生しやすいという特徴がある。被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した画像に対して非特許文献1の技術を適用すれば、放射性薬剤の集積の左右差を評価することでその集積が異常であるかどうかを判断することができる。しかしながら、この技術では、胸骨、椎体など正中近くの領域で均一に集積している箇所を検知することは困難である。さらに、特許文献1の技術と同様に、差分として検出された箇所も、それが異常によるものか生理的・非特異的・(体位などの)技術的な変化なのかを判断することができない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した画像を解析し、その画像を精度高く評価できるように読影者に情報提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの実施態様に従う画像処理装置は、被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した第1の画像の画像データと、前記第1の画像の撮像時刻以前に、前記被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した第2の画像の画像データとを記憶した画像データ記憶手段と、前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第1及び第2の画像の画像データに基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像とを比較した経時比較画像を生成する経時比較画像生成手段と、前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第1の画像の画像データに基づいて、前記第1の画像と前記第1の画像の左右を反転させた画像との差分画像である第1の左右差分処理像を生成する左右差分処理像生成手段と、前記経時比較画像を前記経時比較画像の画素値に応じた表示態様で表示装置に表示させるとともに、前記第1の左右差分処理像を前記第1の左右差分処理像の画素値に応じた表示態様で前記表示装置に表示させる表示制御手段と、を備える。
【0011】
好適な実施形態では、前記表示制御手段は、前記経時比較画像と前記第1の左右差分処理像とを重ねて表示させてもよい。
【0012】
好適な実施形態では、前記表示制御手段は、前記経時比較画像及び前記第1の左右差分処理像の一方の画像について、画素値の絶対値が第1の閾値以上の領域を、前記画素値に応じて階調表示させるとともに、他方の画像について、画素値の絶対値が第2の閾値以上の領域の輪郭を表示させてもよい。
【0013】
好適な実施形態では、前記表示制御手段は、前記経時比較画像の画素値の絶対値が第1の閾値以上の領域を第1の色で表示させ、前記第1の左右差分処理像の画素値の絶対値が第2の閾値以上の領域を第2の色で表示させ、前記経時比較画像の画素値の絶対値が第1の閾値以上であり、かつ、前記第1の左右差分処理像の画素値の絶対値が第2の閾値以上の領域を第3の色で表示させてもよい。
【0014】
好適な実施形態では、前記左右差分処理像生成手段は、前記画像データ記憶手段に記憶されている前記第2の画像の画像データに基づいて、前記第2の画像と前記第2の画像の左右を反転させた画像との差分画像である第2の左右差分処理像をさらに生成し、前記表示制御手段は、さらに、前記第2の左右差分処理像を前記第2の左右差分処理像の画素値に応じた表示態様で前記表示装置に表示させてもよい。
【0015】
好適な実施形態では、前記表示装置に表示されているときに、前記経時比較画像及び前記第1の左右差分処理像で互いに対応する位置にそれぞれROIを設定するROI設定手段と、前記経時比較画像及び前記第1の左右差分処理像のそれぞれのROI内の画素値に基づいて診断支援情報を生成する診断支援情報生成手段と、をさらに備えてもよい。
【0016】
好適な実施形態では、前記表示装置に表示されているときに、前記経時比較画像、前記第1の左右差分処理像及び第2の左右差分処理像で互いに対応する位置にそれぞれROIを設定するROI設定手段と、前記経時比較画像、前記第1の左右差分処理像及び第2の左右差分処理像のそれぞれのROI内の画素値に基づいて診断支援情報を生成する診断支援情報生成手段と、をさらに備えてもよい。
【0017】
好適な実施形態では、前記経時比較画像は、前記第1の画像と前記第2の画像との差分画像でよい。
【0018】
好適な実施形態では、前記経時比較画像は、前記第1の画像と前記第2の画像との対応する画素の画素値の経時変化率を示す画像でよい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る画像処理装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の構成を示す。同図に示すように、画像処理装置1は、画像処理装置本体10と、キーボード、タッチパネル、ポインティングデバイスなどの入力装置4と、液晶ディスプレイなどの表示装置5とを有する。画像処理装置本体10は、例えば汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する画像処理装置本体10内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0022】
画像処理装置本体10は、現在画像データ記憶部11と、過去画像データ記憶部13と、経時比較画像生成部15と、左右差分処理像生成部17と、経時比較画像データ記憶部19と、左右差分処理像データ記憶部21と、表示制御部23と、画像解析部25とを備える。
【0023】
現在画像データ記憶部11及び過去画像データ記憶部13は、被験者の体内の放射性薬剤の分布状態を撮像した画像を記憶する。現在画像データ記憶部11に記憶される画像データとしては、最近(例えば、解析を行う日から1ヶ月以内に)撮像された画像(以下、現在画像と称する)の画像データ(以下、現在画像データと称する)を対象としてもよい。過去画像データ記憶部13に記憶される画像データは、同一被験者について、現在画像よりも前の時刻(例えば、数ヶ月から数年前)に撮像された画像(以下、過去画像と称する)の画像データ(以下、過去画像データと称する)である。
【0024】
本実施形態では、現在画像データ記憶部11及び過去画像データ記憶部13に保存されるのは骨シンチグラムである。現在画像データ記憶部11及び過去画像データ記憶部13には、骨シンチグラムのうち、体正面から撮像した正面画像、体背面から撮像した背面画像、及び被験者を左右の斜め前面から撮った左右斜位像のいずれか1種類以上を含む。左右斜位像は、胸部などの骨構造の重なりを避けるために有効な画像である。
【0025】
経時比較画像データ記憶部19は、経時比較画像生成部15によって生成された経時比較画像の画像データを記憶する。
【0026】
左右差分処理像データ記憶部21は、左右差分処理像生成部17によって生成された左右差分処理像の画像データを記憶する。
【0027】
経時比較画像生成部15は、現在画像と過去画像とを比較した経時比較画像を生成する。経時比較画像は、例えば、現在画像と過去画像の差分画像である経時差分画像、または現在画像と過去画像の対応する画素の画素値の変化率を示す画像である経時変化率画像でよい。経時比較画像生成部15は、現在画像及び過去画像の正面画像、背面画像及び左右斜位像のいずれか一つ以上について経時差分画像及び経時変化率画像のいずれか一方または双方を生成しても良い。
【0028】
図2は、現在画像と過去画像との差分画像である経時差分画像の生成手順を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートに従って、経時差分画像の生成手順を説明する。
【0029】
経時比較画像生成部15は、現在画像データ記憶部11から解析対象の被験者の現在画像の画像データを読み出す(S101)。経時比較画像生成部15は、さらに、過去画像データ記憶部13から同一被験者の過去画像の画像データを読み出す(S103)。
【0030】
経時比較画像生成部15は、現在画像と過去画像のカウント値(画素値)のレベルを調整する正規化を行う(S105)。そして、経時比較画像生成部15は、正規化された現在画像と過去画像の位置合わせを行うとともに、過去画像をワーピングにより変形して現在画像に形状を合わせる(S107)。この後、経時比較画像生成部15は、形状及び位置合わせがされた状態で、それぞれ対応する画素について、現在画像の画素値から過去画像の画素値を引いた差分を求め、経時差分画像を生成する(S109)。生成された経時差分画像の画像データが経時比較画像データ記憶部19に保存される。
【0031】
なお、経時差分画像の生成は周知な手法を用いることができる。経時差分画像のさらに詳細な生成手法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0032】
図3は、現在画像と過去画像の対応する画素の画素値の経時変化率を示す経時変化率画像の生成手順を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートに従って、経時変化率画像の生成手順を説明する。
【0033】
経時比較画像生成部15は、経時差分画像のときと同様に、現在画像データ記憶部11から解析対象の被験者の現在画像の画像データ(S121)、過去画像データ記憶部13から同一被験者の過去画像の画像データを読み出す(S123)。経時比較画像生成部15は、さらに、経時差分画像のときと同様に、現在画像と過去画像のカウント値(画素値)のレベルを調整する正規化を行い(S125)、正規化された現在画像と過去画像の位置合わせを行うとともに、過去画像をワーピングにより変形して現在画像に形状を合わせる(S127)。
【0034】
この後、経時比較画像生成部15は、形状及び位置合わせがされた状態で、それぞれ対応する画素について、過去画像の画素値に対する現在画像の画素値の経時変化率(増加率または減少率)を画素ごとに算出し、それぞれの経時変化率の値を画素値に有する経時変化率画像を生成する(S129)。生成された経時変化率画像の画像データが経時比較画像データ記憶部19に保存される。ここで、画素ごとの経時変化率は、例えば以下の式で算出しても良い。
画素ごとの経時変化率=(現在画像の画素値―過去画像の画素値)/過去画像の画素値
【0035】
なお、以下の実施形態では、経時比較画像として経時差分画像を用いる場合について説明をするが、経時差分画像の代わりに経時変化率画像を用いることもできる。経時変化率画像に対しては、経時差分画像に対する処理と同等の処理を適用することができる。
【0036】
図1に戻ると、左右差分処理像生成部17は、現在画像と現在画像の左右を反転させた画像との差分画像である左右差分処理像(現在)を生成する。また、左右差分処理像生成部17は、過去画像と過去画像の左右を反転させた画像との差分画像である左右差分処理像(過去)を生成する。左右差分処理像生成部17は、正面画像、背面画像及び左右斜位像の一つ以上について左右差分処理像を生成しても良い。左右斜位像の左右差分処理像は、右斜位像の反転画像と左斜位像の差分画像でもよし、左斜位像の反転画像と右斜位像の差分画像であってもよい。
図4は、現在画像の左右差分処理像の生成手順を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートに従って、現在画像の左右差分処理像の生成手順を説明する。
【0037】
左右差分処理像生成部17は、現在画像データ記憶部11から解析対象の被験者の現在画像の画像データを読み出す(S201)。左右差分処理像生成部17は、読み出した現在画像の傾きを補正し(S203)、左右反転画像を生成する(S205)。そして、左右差分処理像生成部17は、現在画像と左右反転画像の位置合わせを行うとともに、左右反転画像をワーピングにより変形して現在画像の形状を合わせる(S207)。この後、左右差分処理像生成部17は、形状及び位置合わせがされた状態で、それぞれ対応する画素について、現在画像の画素値から左右反転画像の画素値を引いた差分を求め、左右差分処理像を生成する(S209)。生成された左右差分処理像の画像データが21に保存される。
【0038】
左右差分処理像生成部17は、過去画像の左右差分処理像も、上記の現在画像の左右差分処理像の生成手順と同じ手順で生成することができる。
【0039】
なお、左右差分処理像の生成は周知な手法を用いることができる。左右差分処理像のさらに詳細な生成手法は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0040】
図1に戻ると、表示制御部23は、表示装置5に様々な画像または画面を表示させる。例えば、表示制御部23は、
図5に示すような経時比較画像表示画面100を表示装置5に表示させる。経時比較画像表示画面100は、同図に示すように、正面画像の過去画像111、現在画像112及び経時差分画像113を並べた正面画像表示領域110と、背面画像の過去画像121、現在画像122及び経時差分画像123を並べた背面画像表示領域120とを有する。経時比較画像表示画面100には、さらに、左右斜位像について、過去画像、現在画像及び経時差分画像を表示させても良い。
【0041】
また、表示制御部23は、
図6に示すような左右差分処理像表示画面200を表示装置5に表示させる。左右差分処理像表示画面200は、同図に示すように、正面画像の現在画像211と現在の左右差分処理像212とを並べた正面画像表示領域210と、背面画像の現在画像221と現在の左右差分処理像222とを並べた背面画像表示領域220とを有する。表示制御部23は、過去画像と過去の左右差分処理像についても同様に表示装置5に表示させることができる。さらには、左右差分処理像表示画面200に、左右斜位像について、過去画像とその左右差分処理像、及び現在画像とその左右差分処理像のいずれか一方または双方を表示させても良い。
【0042】
なお、本実施形態の画像処理装置1は、読影者が経時比較画像表示画面100または左右差分処理像表示画面200を目視で見て、異常集積とみなした箇所をカウントするためのナンバリングをする機能、あるいは、経時差分画像及び左右差分処理像については、所定の閾値以上の画素値の位置を異常集積箇所として自動カウントする機能を有していても良い。
【0043】
表示制御部23は、経時差分画像を経時差分画像の画素値に応じた表示態様で表示装置5に表示させるとともに、左右差分処理像を左右差分処理像の画素値に応じた表示態様で前記表示装置5に表示させる。
【0044】
表示制御部23は、経時差分画像及び左右差分処理像のいずれの場合でも、画素値の絶対値が所定の閾値以上の画素について、他の画素とは異なる表示を行ってもよい。この閾値は、例えばオペレータが入力装置4から入力することで指定できるようにしても良い。これにより、過去と現在、あるいは左右を比較して変化(異常)がある領域が容易に検出できるようになる。絶対値が所定の閾値以上の画素に限定するのは、多少のノイズが存在することを考慮したためである。
【0045】
表示制御部23は、経時差分画像及び左右差分処理像の画素値が正の領域と負の領域とを異なる表示態様で表示させてもよい。経時差分画像では、画素値が正(過去より増加)の領域と負(過去より減少)の領域とでは意味が異なるからである。
【0046】
表示制御部23は、経時差分画像と左右差分処理像とを重ねて表示装置5に表示させてもよい。あるいは、表示制御部23は、経時差分画像と現在画像、左右差分処理像と現在画像、及び経時差分画像と左右差分処理像と現在画像を重ねて表示装置5に表示させてもよい。表示制御部23は、これらの画像を重ねるために、経時差分画像生成部15及び左右差分処理像生成部17で行ったのと同様に、形状及び位置合わせを行っても良い。
【0047】
表示制御部23は、経時差分画像と左右差分処理像とを重ねて表示させる際、経時差分画像及び左右差分処理像の一方の画像について画素値の絶対値が第1の閾値以上の着目領域を画素値に応じて階調表示させてもよい。同時に、表示制御部23は、他方(階調表示させた画像でない方)の画像について、画素値の絶対値が第2の閾値以上の着目領域の輪郭を表示させてもよい。
【0048】
あるいは、表示制御部23は、経時差分画像と左右差分処理像とを重ねて表示させる際、経時差分画像の画素値の絶対値が第1の閾値以上の着目領域を第1の色で表示させてもよい。同時に、表示制御部23は、左右差分処理像の画素値の絶対値が第2の閾値以上の着目領域を第2の色で表示させてもよい。そして、表示制御部23は、経時差分画像の画素値の絶対値が第1の閾値以上であり、かつ、前記第1の左右差分処理像の画素値の絶対値が第2の閾値以上の領域、つまり着目領域同士が重なっている重複領域を第3の色で表示させてもよい。
【0049】
着目領域の階調表示及び輪郭表示、ならびに色表示について、
図7−
図9を用いてさらに詳細に説明する。
図7では、経時差分画像300の一部を示す画像と、左右差分処理像400の一部を示す画像と、これらを重ねた合成画像500を模式的に示している。経時差分画像300と左右差分処理像400は、互いに対応する領域である。経時差分画像300には、着目領域310があり、左右差分処理像400には着目領域410がある。合成画像500では、着目領域310と着目領域410とが重なる重複領域510がある。このような合成画像500の表示態様を
図8及び
図9に示す。
【0050】
図8に示す表示態様の場合、合成画像500において、着目領域310が画素値に応じた階調表示がなされている。一方、着目領域410はその輪郭のみが表示されている。これにより、重なっている領域510で、着目領域310と着目領域410がそれぞれどう分布しているかを正確に把握することができる。尚、同図の表示とは反対に、着目領域310を輪郭表示にし、着目領域410を階調表示にしても良い。
【0051】
また、
図9に示す別の表示態様では、合成画像500において、着目領域310でありかつ着目領域410と重ならない領域311と、着目領域410であり着目領域310と重ならない領域411と、重複領域510とが、それぞれ異なる色で着色されている。この場合にも、着目領域311,411及び重複領域510を容易に判別することができる。
【0052】
このように、経時差分画像及び左右差分処理像を対比させて表示することにより、経時差分画像または左右差分処理像単独では判別できないことも、読影者が一瞥するだけで判別可能となる。例えば、経時差分画像で着目領域がない場合は、異常集積がそもそも存在しない場合と、異常集積があるもののそれが変化なく継続する場合のいずれかが疑われる。このとき、左右差分処理像を参照することで、両者を判別することが可能となる。さらには、経時差分画像に着目領域が存在し、その符号が正(過去に対して現在が増加)であれば、溶骨性転移の消失、新規の造骨性転移の発生、造骨性転移の異常集積の亢進または溶骨性転移の異常集積の退縮のいずれかが疑われる。このとき、現在画像の左右差分処理像を参照すれば、
溶骨性転移の消失とその他を区別することができる。さらに、過去の左右差分処理像も合わせて参照すれば、新規の造骨性転移とそれ以外を区別することも可能となる。
【0053】
画像処理装置1は、以下に説明するように、上記のような情報を診断支援情報として提供する機能をさらに備えていても良い。
【0054】
画像解析部25は、経時差分画像及び左右差分処理像へのROIの設定を受け付けて、ROIに基づいて画像を解析する。例えば、画像解析部25は、経時差分画像と左右差分処理像の対応する領域に設定されたROI内の画素値に基づいて、診断支援情報を決定する。
【0055】
まず、ROIの設定方法について説明する。
【0056】
表示制御部23は、
図10のように、経時差分画像610と左右差分処理像620とを並べて表示するとともに、診断支援情報を表示する領域630を有する診断支援画面600を表示装置5に表示させても良い。ここで、左右差分処理像620は現在の左右差分処理像または過去の左右差分処理像のいずれでも良い。経時差分画像610及び左右差分処理像620上でオペレータが指定した位置にROI651、652が設定される。例えば、オペレータが4を用いて経時差分画像610上でROI651を設定すると、左右差分処理像620上で対応する位置にROI652が自動的に設定される。同様に、オペレータが4を用いて左右差分処理像620上でROI652を設定すると、経時差分画像610上で対応する位置にROI651が自動的に設定される。なお、診断支援画面600では、経時差分画像610と左右差分処理像620は重ねて表示しても良い。
【0057】
ROIが設定されると、画像解析部25は、ROI651及びROI652内の画素値を評価し、その評価と対応する診断支援情報を生成する。例えば、画像解析部25は、ROI651及びROI652内の画素のうち、画素値の絶対値が所定の閾値以上の着目領域の有無及び着目領域があるときはその符号が正/負いずれであるかを判定する評価を行う。この評価の結果、例えば、ROI651、652ともに着目領域が存在しなければ、診断支援情報は「異常なし」でよいし、ROI651,652ともに着目領域が存在し、かつ、ROI651内の着目領域の符号が正(過去に対して現在が増加)であれば、診断支援情報は「新規の造骨性転移の発生、既存の造骨性転移の亢進、または既存の溶骨性転移の退縮の可能性あり」などでよい。
【0058】
表示制御部23は、さらに、
図11のように、経時差分画像710と現在の左右差分処理像720と過去の左右差分処理像730とを並べて表示するとともに、診断支援情報を表示する領域740を有する診断支援画面700を表示装置5に表示させても良い。このときも、診断支援画面600の場合と同様の処理を3枚の画像710,720,730に対して行っても良い。つまり、オペレータの指示に従い、経時差分画像710及び左右差分処理像720、730上のそれぞれ対応する位置にROI751、752、753が設定される。なお、診断支援画面700では、経時差分画像710、左右差分処理像720、730をすべて重ねて表示しても良いし、いずれか2枚の画像を重ねて表示しても良い。
【0059】
ROIが設定されると、画像解析部25は、ROI751、752及び753内の画素値を評価し、その評価と対応する診断支援情報を生成する。例えば、ROI751,752及び753のすべてに画素値の絶対値が閾値以上の着目領域が存在し、かつ、ROI751内の着目領域の符号が正(過去に対して現在が増加)であれば、診断支援情報表示領域740に表示させる診断支援情報は「既存の造骨性転移の亢進、または既存の溶骨性転移の退縮の可能性あり」などでよい。
【0060】
このほかに、画像解析部25は、ROI内の画素値の平均値を算出したり、あるいはROI内の画素値の最大値を検出したり、最大値と最小値との差分値を算出したりしても良い。表示制御部23は、このROI内の画素値の平均値、最大値または差分値を表示装置5に表示させたり、各画像上でぞれぞれの画素を他の画素と異なる色で着色して表示させたりしてもよい。
【0061】
図12は、診断支援情報出力のための処理手順を示すフローチャートである。ここでは、診断支援画面600を用いる場合を例に説明するが、診断支援画面700を用いても同様である。
【0062】
表示制御部23が経時差分画像データ記憶部19及び左右差分処理像データ記憶部21からそれぞれ経時差分画像及び左右差分処理像の画像データを取得して、診断支援画面600を表示装置5に表示させる(S301)。
【0063】
表示装置5に診断支援画面600が表示されているとき、オペレータがその表示画面上でROI651,652を設定する(S303)。
【0064】
画像解析部25は、ROI651内の画素の画素値を評価する(S305)。つまり、画像解析部25は、ROI651内に画素値が所定値以上である着目領域が存在するか否か、及び着目領域があるときはその符号を判定する。
【0065】
画像解析部25は、ROI652内の画素の画素値も同様に評価する(S307)。
【0066】
そして、画像解析部25は、ステップS305及びS307の評価結果に基づいて、診断支援情報を生成する。生成された診断支援情報は、表示制御部23が診断支援情報表示領域630に表示させる(S309)。
【0067】
これにより、画像の読影者に対して、定量的なデータに基づく診断支援情報を提供することができる。
【0068】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。例えば、上述の実施形態では骨シンチグラムを対象としているが、これ以外にもCT、MRI、SPECT、PET、X線(レントゲン)などの画像を対象としても良い。また、対象とする部位は、胸部の他に脳(頭部)、肺、上肢、下肢、目、鼻、歯など左右で対称性を有する臓器であっても良い。