特許第5996308号(P5996308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996308
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】ワイヤソー
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   B24B27/06 D
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-154784(P2012-154784)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-14903(P2014-14903A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】中本 弘志
(72)【発明者】
【氏名】河津 知之
(72)【発明者】
【氏名】石塚 智
(72)【発明者】
【氏名】日俣 亮範
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 孝文
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−253612(JP,A)
【文献】 特開2000−271848(JP,A)
【文献】 特開平09−123162(JP,A)
【文献】 特開2006−082173(JP,A)
【文献】 特開2000−326324(JP,A)
【文献】 特開平05−024034(JP,A)
【文献】 特開2011−143510(JP,A)
【文献】 特開2010−023225(JP,A)
【文献】 特開平11−129152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
H01L 21/304
B28D 5/04
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工用ローラ間にワイヤを巻回し、加工用ローラの回転によりワイヤを周回移動させて、そのワイヤによりワークを切断するようにしたワイヤソーにおいて、
板状のワークを起立状態で板厚端面側から切り込むようにワークを加工用ローラ間のワイヤに向かってワーク送り方向に移動可能に案内するワーク案内部と、
このワーク案内部に対応してワーク送り方向の下流側のワーク受け位置に設けられ、前記ワイヤにより切断されたワークを送り姿勢のまま受けるためのワーク受け部と
を備え、
上下方向に張られたワイヤに対しワークを水平方向に送って切断するようにし、ワーク切断位置における上下位置の加工用ローラ間のワイヤが垂直線に対して下方ほど後退方向に傾斜変位するように、その上下位置の加工用ローラの位置関係を設定したことを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
前記加工用ローラは4本であって、それらを四角形の頂点位置に設けたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー。
【請求項3】
少なくともワークを切断する位置の両側に位置する加工用ローラをそれぞれモータによって直接駆動するように構成したことを特徴とする請求項2に記載のワイヤソー。
【請求項4】
各加工用ローラを対向する一対のフレーム間に支持するとともに、各加工用ローラに対応して前記フレーム間には加工用ローラの軸と平行に延びる補強材を架設したことを特徴とする請求項2または3に記載のワイヤソー。
【請求項5】
加工用ローラをその軸方向に積層された脱着交換可能なローラピースによって構成したことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のワイヤソー。
【請求項6】
前記ローラピースと対応する位置に、ローラピースからのワイヤを別のローラピースに案内するためのガイドローラを設けるとともに、そのガイドローラを加工用ローラの軸方向に移動可能にしたことを特徴とする請求項5に記載のワイヤソー。
【請求項7】
前記ガイドローラをその回転軸が加工用ローラの軸方向に対して角度調節されるように傾斜可能にしたことを特徴とする請求項6に記載のワイヤソー。
【請求項8】
上下方向に張られたワイヤに対しワークを水平方向に送って切断するようにし、前記ワーク案内部及びワーク受け部をワーク切断位置の上下に位置する2本の加工用ローラ間のワイヤを挟んでワーク送り方向の上流側及び下流側に並設したことを特徴とする請求項2〜4のうちのいずれか一項に記載のワイヤソー。
【請求項9】
複数の加工用ローラ間にワイヤを巻回し、加工用ローラの回転によりワイヤを周回移動させて、そのワイヤによりワークを切断するようにしたワイヤソーにおいて、
板状のワークを起立状態で板厚端面側から切り込むようにワークを加工用ローラ間のワイヤに向かってワーク送り方向に移動可能に案内するワーク案内部と、
このワーク案内部に対応してワーク送り方向の下流側のワーク受け位置に設けられ、前記ワイヤにより切断されたワークを送り姿勢のまま受けるためのワーク受け部と
を備え、
前記ワーク案内部にはワーク板面の一側面を受けてワークを起立状態に規制するとともに、ワークの案内方向を規定する側部案内面と、その側部案内面に対してワークを弾性的に押圧するワーク案内部材とを設け、側部案内面と隣接するワーク案内部材との間の間隔を調節可能にしたことを特徴とするワイヤソー。
【請求項10】
前記ワーク案内部には、ワークの送り方向の前部側の板厚端面の位置を規制するための規制部を有する規制部材が着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜のうちのいずれか一項に記載のワイヤソー。
【請求項11】
前記ワーク案内部を装置ベース上に着脱可能なパレットによって構成したことを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載のワイヤソー。
【請求項12】
前記パレット上のワークをワイヤ側に送るためにワークを押し出すようにした押し出し装置を設けたことを特徴とする請求項11に記載のワイヤソー。
【請求項13】
前記押し出し装置は、ワークの送り方向の後端に対して接離可能な押し出し体によってワークを押し出すことを特徴とする請求項12に記載のワイヤソー。
【請求項14】
前記パレットには、パレットの傾斜によるワークの滑落を防止するための規制部を有する滑落防止部材が着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1113のうちのいずれか一項に記載のワイヤソー。
【請求項15】
前記ワーク受け部を前記ワーク受け位置から加工用ローラの軸線方向の外側位置に搬出させるための搬出部材を設けたことを特徴とする請求項1〜14のうちのいずれか一項に記載のワイヤソー。
【請求項16】
ワーク案内部とワーク受け部とを覆う装置カバーを設け、その装置カバーのワーク案内部及びワーク受け部の前面を開放するとともに、少なくともワーク案内部の上面を前面と連続して開放し、それらの開放部を開閉可能な扉を設けたことを特徴とする請求項1〜15のうちのいずれか一項に記載のワイヤソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体材料、磁性材料、セラミックス等の脆性材料よりなるワークに対して、ワイヤにより切断加工を施すようにしたワイヤソー、及びそのワイヤソーにおけるワーク加工方法に関するものであって、特にワークが板状をなし、そのワークを板厚端面側からスライス状に切断することに適するワイヤソーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワイヤソーとしては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成が提案されている。この特許文献1,2に記載の従来構成においては、4本または一対の加工用ローラが水平に延びる平行な軸線上に回転可能に支持されている。各加工用ローラの外周には環状溝が形成され、それらの環状溝間にはワイヤが巻回されている。上側一対の加工用ローラ間のワイヤ群に対し送り装置の移動体が接近離間移動可能に昇降自在に配置され、その移動体にはプレートに接着されたワークが保持されている。
【0003】
そして、加工用ローラの回転によりワイヤが周回移動されながら、送り装置の移動体が加工送り方向に移動されることにより、ワークが加工用ローラ間のワイヤに向かって移動されて、ワイヤによりワークがスライス状に切断される。また、ワークの切断後に送り装置の移動体が加工送り方向と反対方向に戻り移動されることにより、切断後のワークがワイヤ群から引抜かれワイヤの周回域内から外側に送り出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−275950号公報
【特許文献2】特開2010−149248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来構成においては、切断後のワークが戻り移動されるため、その切断後のワークがワイヤから引抜くときに加工用ローラ間のワイヤに接触して切断面が傷付くおそれがあるという問題を有していた。
【0006】
特に、ワークが送り方向に長い大きなワークの場合には、スライス状に切断されたワークがワイヤに接触すると、割れるおそれが多分にあった。
また、ワークが板状をなし、そのワークを一端の板厚端面側からスライス状に切断する場合であっても、その他端において片持ち状に支持する必要があって、ワークの送りや姿勢が不安定であり、ワークを所要の厚さに正確にスライス状に切断し、そのままワイヤからワークを損傷させずにスムーズに引き出すことは困難であった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、板状のワークをその板厚端面側から容易かつ正確に切断できるワイヤソーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、ワイヤソーに係る発明では、複数の加工用ローラ間にワイヤを巻回し、加工用ローラの回転によりワイヤを周回移動させて、そのワイヤによりワークを切断するようにしたワイヤソーにおいて、板状のワークを起立状態で板厚端面側から切り込むようにワークを加工用ローラ間のワイヤに向かって送り方向に移動可能に案内するワーク案内部と、このワーク案内部に対応してワーク送り方向の下流側のワーク受け位置に設けられ、前記ワイヤにより切断されたワークを送り姿勢のまま受けるためのワーク受け部とを備え、上下方向に張られたワイヤに対しワークを水平方向に送って切断するようにし、ワーク切断位置における上下位置の加工用ローラ間のワイヤが垂直線に対して下方ほど後退方向に傾斜変位するように、その上下位置の加工用ローラの位置関係を設定したことを特徴としている。
【0009】
また、ワイヤソーに係る発明では、複数の加工用ローラ間にワイヤを巻回し、加工用ローラの回転によりワイヤを周回移動させて、そのワイヤによりワークを切断するようにしたワイヤソーにおいて、板状のワークを起立状態で板厚端面側から切り込むようにワークを加工用ローラ間のワイヤに向かってワーク送り方向に移動可能に案内するワーク案内部と、このワーク案内部に対応してワーク送り方向の下流側のワーク受け位置に設けられ、前記ワイヤにより切断されたワークを送り姿勢のまま受けるためのワーク受け部とを備え、前記ワーク案内部にはワーク板面の一側面を受けてワークを起立状態に規制するとともに、ワークの案内方向を規定する側部案内面と、その側部案内面に対してワークを弾性的に押圧するワーク案内部材とを設け、側部案内面と隣接するワーク案内部材との間の間隔を調節可能にしたことを特徴としている。
【0010】
従って、この発明においては、起立状態のワークがワーク案内部の案内作用により、加工用ローラ間のワイヤに向かって送り移動されて、ワイヤにより板厚端面側から切断加工が施される。そして、切断されたワークがワイヤのワーク送り方向の下流側のワーク受け位置において、ワーク受け部により送り姿勢を維持したまま受け止められる。よって、ワークを送り装置に固定することなく、加工用ローラ間のワイヤに向かって安定して送り移動させることができるとともに、切断後のワークを安定し受け止めることができて、移動体等に対するワークの固定作業や取外し作業を不要にすることができる。
【0011】
また、この発明のワイヤソーにおいては、ワークが送り装置の移動体等に固定されないため、ワークの切断後に送り装置が加工送り方向と反対方向に復帰移動される際に、従来構造とは異なり、切断済みのワークがワイヤの周回域内から加工用ローラ間の切断位置のワイヤを通して戻ることはない。よって、切断済みのワークがワイヤに接触して傷付くことを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、ワークを送り装置に固定することなく、加工用ローラ間のワイヤに向かって送り移動させて切断できるとともに、ワークがワイヤによって傷付くことを防止できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態のワイヤソーの外観構造を正面側から見て示す斜視図。
図2】同ワイヤソーの外観構造を背面側から見て示す斜視図。
図3】ワークの搬入時におけるワイヤソーの外観構造を正面側から見て示す斜視図。
図4】ワークの搬出時におけるワイヤソーの外観構造を正面側から見て示す斜視図。
図5】ワイヤリールの着脱時等におけるワイヤソーの外観構造を背面側から見て示す斜視図。
図6】ワイヤソーの内部構成を拡大して示す概略構成図。
図7】加工用ローラの支持構成を正面側から見て示す斜視図。
図8】同加工用ローラの支持構成を背面側から見て示す斜視図。
図9】加工用ローラの配置構成及び加工用ローラ間のワイヤに加工液を供給するための供給ノズルを示す断面図。
図10】加工用ローラを拡大して示す断面図。
図11図10の加工用ローラにおける1つのローラピースをさらに拡大して示す部分断面図。
図12】加工用ローラに対するワイヤのガイド構成を示す正面図。
図13図12のワイヤのガイド構成の平面図。
図14】同ワイヤのガイド構成の側面図。
図15】同ワイヤのガイド構成におけるガイドローラユニットを示す斜視図。
図16図15のガイドローラユニットにおける1つのガイドローラを拡大して示す斜視図。
図17図6のワイヤソーの内部構成におけるワーク案内部及びワーク受け部を示す斜視図。
図18図17のワーク案内部の支持及び駆動構成を示す斜視図。
図19図17のワーク案内部及びそれに支持されたワークを拡大して示す斜視図。
図20図19のワーク案内部におけるワークの押圧構成を示す部分拡大断面図。
図21】ワイヤによるワークの切断状態を示す部分拡大平面図。
図22図17のワーク受け部の搬出駆動構成を示す斜視図。
図23図22の搬出駆動構成の平面図。
図24】同搬出駆動構成の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明を具体化したワイヤソーの一実施形態を図面に従って説明する。
図1図4に示すように、このワイヤソーの装置フレーム31には装置ベース32が設けられ、その装置ベース32上には装置カバー33が設けられている。装置カバー33の上面前部及び前面には前部開口34が形成されるとともに、装置カバー33の上面後部及び後面には後部開口35が形成されている。前部開口34には複数の断面ほぼ逆L字状の前面扉36が左右方向へテレスコ状に重なる位置と伸長する位置とにスライド可能に設けられるとともに、後部開口35には複数の断面ほぼ逆L字状の後面扉37が左右方向へテレスコ状に重なる位置と伸長する位置とにスライド可能に取り付けられている。なお、この実施形態において右及び左は、図1図6図17図18等における右及び左とする。
【0015】
そして、図3に示すように、装置フレーム31内に後述する未加工のワーク49を搬入する際には、左側の3枚の前面扉36が側端部の前部戸袋38内に重なった状態で収納されて、前部開口34の左側部が開放される。また、図4に示すように、装置フレーム31内から加工済みのワーク49を搬出する際には、左側の3枚の前面扉36が前部戸袋38内に収納されるとともに、右端の1枚の前面扉36が前部開口34の左端位置に配置されて、前部開口34の右側部が開放される。さらに、図5に示すように、後述のワイヤ47の両端側を巻付けた一対の図示しないリールを装置フレーム31内に脱着する場合においては、全ての後面扉37が側端部の後部戸袋39内に収納されて、後部開口35の全体が開放される。
【0016】
図6図8に示すように、前記装置フレーム31における装置ベース32の右側上面には、支持ブラケット41が固定配置されている。この支持ブラケット41は、鉄板よりなる前後一対のフレーム42,43と、両フレーム42,43間に架設された鉄製の角パイプよりなる複数の補強材としての架設材44とを備えている。前側のフレーム42には、加工済みのワーク49を前方へ搬出するための開口421が形成されている。支持ブラケット41のフレーム42,43間には、4本の加工用ローラ45が四角形の頂点位置に配置されるように上下位置及び左右位置で相互間隔をおいて水平方向に平行に延びる軸線を中心に回転可能に支持されている。各加工用ローラ45の外周面には、多数の環状溝46が形成されている。加工用ローラ45の環状溝46間には、ワイヤ47が巻回状態で周回されている。なお、図3図5においては、支持ブラケット41や加工用ローラ45等の内部構造を省略して描かれている。
【0017】
図7及び図8に示すように、前記支持ブラケット41における後側のフレーム43の後面には、各加工用ローラ45を各別に直接回転駆動させるための合計4基のモータ48が支持されている。そして、これらのモータ48により加工用ローラ45がそれぞれ同速度で同方向に回転されて、ワイヤ47が加工用ローラ45間で周回移動される。この状態で、図6に示すように、複数枚の板状のワーク49が左側上下位置の加工用ローラ45間のワイヤ47に向かって右方向に水平に送り移動されて、ワイヤ47によりワーク49がその板厚端面側からスライス状に切断される。この場合、各加工用ローラ45が複数のモータ48により同期して各別に回転駆動されることで、加工用ローラ45間のワイヤ47のテンションがほぼ一定に保たれる。また、ワイヤ47によるワーク49の切断時には、図9に示すように、ワーク49の上方における左側上下位置の加工用ローラ45間のワイヤ47に対して斜め上方の供給ノズル50からスラリ等の加工液が供給される。
【0018】
図9に示すように、前記複数の加工用ローラ45のうちで、左側下方に位置する加工用ローラ45は、左側上方に位置する加工用ローラ45よりも右側方に後退変位して配置されている。これにより、左側上下位置の加工用ローラ45間のワイヤ47が垂直線に対して下方ほど右側に後退方向に変位した傾斜状態に張設配置されている。そして、このワイヤ47によりワーク49の切断が開始される際に、ワーク49の移動方向がワイヤ47に対して傾斜するため、ワイヤ47に対して高いテンションが急激に作用することが抑制されるとともに、このワイヤ47によるワーク49の切断時に、切り屑が走行されるワイヤ47に巻き込まれることなく、落下される。
【0019】
図10及び図11に示すように、前記各加工用ローラ45は、支軸51上にキー52を介して複数の円板状のローラピース53を軸方向において積層状態で脱着交換可能に嵌着して構成されている。ローラピース53は板状のワーク49の位置と厚さと対応するように複数並設され、それらのローラピース53の外周には前記環状溝46が所定ピッチで形成されている。そして、ワーク49の厚さ等に応じ、必要に応じて支軸51上の各ローラピース53を、その幅や環状溝46のピッチの異なったものと脱着交換することができる。
【0020】
図12図14に示すように、前記加工用ローラ45の上方には、右側の上部の加工用ローラ45の一端部と図示しないリールと間のワイヤ経路に位置する第1ワイヤガイド54と、左側の上部の加工用ローラ45の他端部と図示しないリールと間のワイヤ経路に位置する第2ワイヤガイド55がそれぞれ配置されている。
【0021】
加工用ローラ45の右側部において右側上下位置の加工用ローラ45と対応する位置には、上下一対のガイドローラユニット56が配置されている。図10及び図14に示すように、各ガイドローラユニット56には、上下位置の加工用ローラ45間における隣接するローラピース53に対するワイヤ経路上にそれぞれ位置して、ワイヤ47を上下に対応するローラピース53の隣のローラピース53に対して斜めに案内するための複数のガイドローラ57が備えられている。従って、各ローラピース53の環状溝46の数が異なれば、そのローラピース53を周回するワイヤ47の数も異なり、図4から明らかなように、ローラピース53ごとのワイヤ47の巻き幅471も異なる。
【0022】
図12図16に示すように、前記ガイドローラユニット56には、チャンネル材よりなる支持ロッド58が加工用ローラ45の軸線と平行に延びるように配置されている。この支持ロッド58は装置フレーム31に固定されている。支持ロッド58には、複数の支持板59がその基端部に設けられた係合凹部591において支持ロッド58の延長方向へ移動可能に係合支持されている。支持板59の係合凹部591の開放端部には、固定板60が支持ロッド58に対して接近離間する方向へ移動可能に取り付けられている。支持板59の側面には、固定板60を移動操作するための一対の操作レバー61が回動可能に支持されている。そして、支持板59を支持ロッド58上の所定位置に移動させた状態で、両操作レバー61を回動操作することにより、固定板60が支持ロッド58に圧接する位置に移動されて、支持板59が所定位置に固定される。
【0023】
図15及び図16に示すように、前記ガイドローラユニット56における支持板59の先端部には、ワイヤ47をガイドするためのガイド溝592が形成されている。支持板59の側面には、平面形ほぼL字状の支持アーム62が軸支部材63を介して支持板59上のガイド溝592の軸線を中心に回動可能に支持されている。支持アーム62の基部先端及び軸支部材63には、支持板59上のガイド溝592に連なるガイド溝621,631が形成されている。そして、支持アーム62の側部先端には、前記ガイドローラ57が支軸64を介して回転可能に支持されている。
【0024】
図15及び図16に示すように、前記ガイドローラユニット56における支持アーム62の基部には、長孔622がガイド溝592,621,631の軸線を中心にして円弧状に延びるように形成されている。支持板59には、支持アーム62の長孔622を介して固定ネジ65が螺合されている。そして、この固定ネジ65を緩めた状態で、支持アーム62がガイド溝592,621,631の軸線を中心にして回動されることにより、ガイドローラ57の傾斜角度がワーク49の板厚に相当するローラピース53上のワイヤ47の巻回幅に応じて調節される。この状態で、固定ネジ65が締め付けられることにより、支持アーム62が支持板59に対して固定されて、ガイドローラ57が調節した傾斜角度に保持され、前記ローラピース53の配列ピッチの大小等に対応できる。
【0025】
図6図17及び図18に示すように、前記装置フレーム31における装置ベース32の左側上面には、板状のワーク49を左側上下位置の加工用ローラ45間のワイヤ47に向かって水平方向に移動案内するためのワーク案内部としての供給パレット67が設けられている。これにより、ワーク49が長尺の板状であっても、ワークを加工用ローラ間のワイヤに対して上方から供給するようにした従来構成とは異なり、装置フレーム31の高さ寸法を大きく確保することなく、ワーク49をワイヤ47に対して横方向へ容易に送り移動させることができる。
【0026】
すなわち、装置ベース32上に支持テーブル68が固定配置されている。支持テーブル68の上面には、複数枚の板状のワーク49を搭載した供給パレット67を着脱可能に支持するための一対の支持台70が配置されている。各支持台70上には、供給パレット67の底面に形成された図示しない係合孔に係合可能な係合突起71が設けられている。支持テーブル68の上面には、供給パレット67を加工用ローラ45間のワイヤ47と対応する所定位置に位置決めするための複数の位置決め部材72が配置されている。支持テーブル68の後部上面には、ワーク49を配置した供給パレット67の支持台70上への搬入を案内するための一対のガイドロッド73が突設されている。
【0027】
そして、装置フレーム31内に未加工のワーク49を搬入する場合には、図3に示すように、左側の3枚の前面扉36が側端部の前部戸袋38内に収納されて、前部開口34の左側部が開放される。この状態で、複数枚の板状のワーク49を配置した供給パレット67がクレーンにより吊り下げられて、装置フレーム31の前部開口34の左側開放部から内部に搬入される。そして、供給パレット67がガイドロッド73により案内されながら支持台70上に載置されて、位置決め部材72により所定位置に位置決めされるとともに、係合突起71との係合により支持台70上に位置決め状態で移動不能に保持される。
【0028】
図17及び図19図21に示すように、前記供給パレット67は、案内台74を備えている。案内台74の上面には、複数の板状のワーク49を平行状態で右方向に向かってスライド可能に案内するための複数の突条よりなる底部案内面741と、複数のワーク案内部材75を配置するための複数の凹溝状の配置部742とが交互に形成されている。
【0029】
各ワーク49の後端である左端上部には、案内台74上への支持に先立って小片状の切断可能な合成樹脂よりなる捨て材76が取付けられる。この捨て材76は低融点の接着剤を用いて接着される。
【0030】
案内台74の右端上部には、装置フレーム31内への供給パレット67の搬入に先立って、滑落防止部材としてのワーク規制部材77がその両側下端の係合凹部771と案内台74上の係合ピン78との係合により着脱可能に取り付けられる。ワーク規制部材77には、クレーンによる装置フレーム31内への供給パレット67の搬入時に、供給パレット67上のワーク49が右側方へ滑落しないように規制するための規制部77が設けられるとともに、このワーク規制部材77を供給パレット67に対して脱着するためのハンドル77が設けられている。
【0031】
図19及び図20に示すように、前記供給パレット67の各ワーク案内部材75は、案内台74の配置部742上に間隔をおいて配置された案内ブロック79を備えている。この案内ブロック79の一側面には、前記底部案内面741のワーク49の板面の一側面を案内するための側部案内面792が形成されている。案内ブロック79は、2つのくさび状の固定部材743,744のくさび作用によって配置部742内に固定されている。従って、固定部材743,744を取り外すことによって、案内ブロック79を交換できる。案内ブロック79はその厚みが異なるものが複数種類用意されている。なお、図19に示すように、最前部の案内ブロック79は案内台74上に移動不能に固定されている。
【0032】
案内ブロック79の上面には、一対の凹部791が形成されている。案内ブロック79の各凹部791内には、押圧体80がその底面に設けられた係合孔801と凹部791の内底面に突設された係合ピン81との係合により着脱可能に取り付けられている。押圧体80の上面には、押圧体80を案内ブロック79の凹部791に対して着脱するためのループ状のハンドル82が突設されている。
【0033】
前記各押圧体80は、支持ブロック83と、その支持ブロック83内にワーク49の側面と直行する方向へ移動可能に支持された押圧ピン84と、その押圧ピン84をワーク49の側面に向かって押圧付勢するバネ85と、押圧ピン84及びバネ85を支持ブロック83内に収容保持する保持板86とから構成されている。そして、押圧体80の押圧ピン84がバネ85の付勢力によりワーク49の板面の他側面に圧接されて、そのワーク49が押圧ピン84と隣接配置された他の案内ブロック79の側部案内面792との間で案内可能に保持される。そして、ワーク49の板厚が変更された場合、案内ブロック79が厚みの異なるものと交換される。このとき、押圧体80は、ハンドル82持つことにより、新たに使用される案内ブロック79に付け替えられる。
【0034】
図6図17図18及び図21に示すように、前記装置フレーム31の装置ベース32上には、ボールネジ87がワーク49の移動方向に沿って延びる軸線を中心に回転可能に支持されている。装置ベース32上には、ボールネジ87を回転させるためのモータ88が配置されている。ボールネジ87には、移動部材89がナット部891において軸線方向へ相対移動可能に螺合されている。移動部材89の上端には、ワーク49の左端に接着された捨て材76に接合可能な押し出し体90が設けられている。移動部材89と装置ベース32との間には、ボールネジ87及びモータ88の周囲を覆うための可撓性カバー91が設けられている。
【0035】
そして、前記モータ88によりボールネジ87が回転されることによって、移動部材89が図6の右方向に移動され、押し出し体90を介して供給パレット67上の複数のワーク49が同方向に押し出される。これにより、各ワーク49が平行な起立状態で案内台74上の底部案内面741に沿って、加工用ローラ45間のワイヤ47に向かって送り移動され、ワイヤ47により各ワーク49がその一端の板厚端面側からスライス状に切断加工される。この場合、図21に鎖線で示すように、ワーク49の全長を超えて、そのワーク49の左端に接着された捨て材76まで切断が施される。
【0036】
図1図6図17及び図22図24に示すように、前記装置フレーム31における装置ベース32の右側上面には、ワイヤ47のワーク送り方向の下流側のワーク受け位置において、切断されたワーク49を受けるためのワーク受け部93が設けられている。すなわち、ワーク受け部93は、前記供給パレット67に対してワーク切断位置の上下に位置する2本の加工用ローラ45間のワイヤ47を挟んでワーク送り方向の下流側に並設されている。このワーク受け部93においては、装置ベース32上に支持テーブル94が固定配置されている。支持テーブル94の上面には、各一対のガイドレール95及びローラコンベア96がワーク49の移動方向と直交する前後方向へ平行に延びるように敷設されている。装置フレーム31の前方において支持テーブル94と対応する位置には、搬出テーブル97が配置されている。搬出テーブル97の上面には、各一対のガイドレール98及びローラコンベア99が支持テーブル94上のガイドレール95及びローラコンベア96に連なるように敷設されている。
【0037】
前記両ローラコンベア96,99上には、スライス状に切断加工されたワーク49を送り姿勢の起立状態のままで保持するための受けパレット100が両ガイドレール95,98に沿ってワイヤ47の周回域の内部と、その前方外部との間において前後方向へ移動可能に支持されている。支持テーブル94上には、受けパレット100を前後方向に移動させるための搬出部材としてのシリンダ101が配置されている。支持テーブル94の上面後端及び搬出テーブル97の上面前端には、受けパレット100の移動端位置を規制するためのストッパ102が設けられている。そして、シリンダ101により受けパレット100が支持テーブル94上のワイヤ周回域内のワーク受け位置に移動配置された状態で、切断されたワーク49が起立状態のままで受けパレット100上に保持されて、切断済みのワーク49がワイヤ47の周回域内に留め置かれる。その後、シリンダ101により受けパレット100が前方に移動され、切断済みのワーク49がワイヤ47の周回域内から加工用ローラ45の軸線方向の外側位置に移動されて、搬出テーブル97上に配置される。
【0038】
図6図17及び図22図24に示すように、前記ワーク受け部93の受けパレット100は、平板状の保持板103を備えている。保持板103の上面には、ワーク49を起立状態で平行に保持するための複数の小片状の保持片104が、前後方向へワーク49の板厚に相当する間隔をおくとともに左右方向へ間隔をおいて立設配置されている。そして、保持板103上において各保持片104により、切断されたワーク49が起立状態のままで保持される。
【0039】
次に、前記のように構成されたワイヤソーの作用を説明する。
このワイヤソーによりワークを切断加工する場合には、図3に示すように、装置フレーム31の前部開口34の左側部が開放され、複数枚の板状のワーク49を平行な起立状態で搭載するとともに、そのワーク49がワーク規制部材77で位置規制された状態で、供給パレット67が図示しないクレーンにより吊り下げられて、この前部開口34の左側開放部から装置フレーム31内に搬入される。搬入後、ワーク規制部材77は供給パレット67から取り外される。そして、供給パレット67が支持テーブル68の支持台70上に載置されて、位置決め部材72により位置決めされるとともに、係合突起71との係合によりその位置決め状態に移動不能に保持される。ここで、ワーク49は、供給パレット67の底部案内面741状に載置されて、案内ブロック79の押圧ピン84により隣接する案内ブロックの案内面792に対して押圧されている。なお、底部案内面741には複数枚のワーク49を積層状態で載置可能であるが、この場合、底部案内面741の幅が最大の積層厚さとなる。
【0040】
そして、図1に示すように、装置フレーム31の前部開口34が閉じられた後、図7及び図8に示す複数のモータ48により各加工用ローラ45が同期して同方向に回転されて、ワイヤ47が加工用ローラ45間で周回移動される。それとともに、図6に示す供給パレット67において、モータ88によりボールネジ87が回転されて、移動部材89が同図の右方向に移動され、供給パレット67上の複数枚の板状のワーク49が押し出し体90を介して同方向に押し付けられる。これにより、各ワーク49が供給パレット67の案内台74上の底部案内面741及び側部案内面792に沿って、平行状態で左側上下位置の加工用ローラ45間において上下方向に張られたワイヤ47に向かって水平方向に送り移動され、ワイヤ47により板厚端面側からスライス状に切断加工される。なお、この切断に先だって、ワーク49の厚さ,枚数,切断厚さ,供給パレット67上における配置間隔等の諸条件に従って適切な幅,個数,環状溝46のピッチ等を備えたローラピース53により加工用ローラ45が形成される。
【0041】
このように、供給パレット67上から送り移動されてワイヤ47により切断されたワーク49は、図6及び図22図24に示すワーク受け部93において、支持テーブル94上のワーク受け位置に移動配置された受けパレット100上に送り姿勢である起立状態のまま保持される。そして、この状態で切断済みのワーク49が加工用ローラ45の周りのワイヤ47の周回域内に留め置かれる。その後、図4に示すように、装置フレーム31の前部開口34の右側部が開放される。この状態で、シリンダ101により受けパレット100が前方に移動され、切断済みのワーク49がワイヤ47の周回域内から加工用ローラ45の軸線方向の外側位置に移動されて、搬出テーブル97上に搬出される。そして、この切断済みのワーク49は後工程に搬送される。この後工程では、温水等により捨て材76の接着剤が溶解されて、捨て材76がワーク49から除去される。
【0042】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このワイヤソーにおいては、ワーク49を加工用ローラ45間のワイヤ47に向かって起立状態で送り移動されるように案内する供給パレット67が設けられている。ワイヤ47の切断位置のワーク送り方向における下流側のワーク受け位置には、切断されたワーク49を送り姿勢のまま受けるための受けパレット100が設けられている。
【0043】
従って、ワーク49が供給パレット67の案内作用により、加工用ローラ45間のワイヤ47に向かって起立状態で送り移動されて、ワイヤ47により一方の板厚端面側から切断加工される。そして、切断されたワーク49がワイヤ47のワーク送り方向の下流側のワーク受け位置において、送り姿勢のまま受けパレット100により受け止められる。よって、ワーク49を送り装置に固定することなく、加工用ローラ45間のワイヤ47に向かってスライドによって送り移動させることができて、送りのための移動体に対するワーク49の固定作業を不要にすることができる。また、切断後のワーク49を切断送り方向の逆方向に戻す必要がないため、切断後のワーク49がワイヤ47と接触して傷ついたり、切断された薄板が折れたりすることを防止できる。
【0044】
(2) 加工用ローラ45を4本設け、それらを四角形の頂点位置に設けたことにより、装置ベース32上の加工部の高さを低くできて、ワイヤソー全体の高さを低くできる。
(3) 4本の加工用ローラ45がそれぞれモータ48によって直接回転駆動されるため、加工用ローラ45間のワイヤ47全体の張力を均等にすることが可能になる。このため、加工精度を向上できるとともに、ワイヤ47の破断可能性を低くすることができる。
【0045】
(4) 各加工用ローラ45が対向する一対のフレーム42,43間に支持されるとともに、各加工用ローラ45に対応して前記フレーム42,43間に加工用ローラ45の軸と平行に延びる補強のための架設材44が架設されている。従って、加工用ローラ45の支持剛性が向上し、加工精度を向上させることができる。
【0046】
(5) ワーク切断位置における上下位置の加工用ローラ45間のワイヤ47が垂直線に対して下方ほどワーク49から離間する側の後退方向に傾斜変位されている。このため、ワーク49による切断負荷がワイヤ47に対して斜交するため、ワイヤ47の破断可能性を低下できる。また、ワーク切断によって発生した切り屑がワイヤ47から離れるように落下するため、加工効率及び加工精度の向上に有用である。
【0047】
(6) 加工用ローラ45がその軸方向に積層された脱着交換可能な複数のローラピース53によって構成されている。従って、幅の異なるローラピース53や環状溝46の数の異なるローラピース53を用意することにより、ワーク49の厚さや積層枚数の変化等に対応できる。また、いずれかのローラピース53が損傷した場合は、そのローラピース53を交換するのみでよく、加工用ローラ45全体を交換する必要はなくなる。
【0048】
(7) ローラピース53と対応する位置に、ワイヤ47を上下に対応するローラピース53以外のローラピース53に向かって案内するためのガイドローラ57が設けられ、それらのガイドローラ57が加工用ローラ45の軸方向に移動可能になっている。このため、加工用ローラ45の位置においてローラピース53の幅や使用されるローラピース53に数に対応してワイヤの走行経路を設定できる。
【0049】
(8) 前記ガイドローラ57をその回転軸が加工用ローラ45の軸方向に対して角度調節されるように傾斜可能にしたことにより、前記ワイヤの走行経路を無理なく任意に設定できる。従って、加工用ローラ45やガイドローラ57の異常摩耗を防止できる。
【0050】
(9) 未加工ワークを案内するワーク案内部が装置ベース32上に着脱可能な供給パレット67によって構成されている。また、加工済みワークを受けるワーク受け部がローラコンベア96によってワイヤソーから出し入れ可能で、そのローラコンベア96に対して着脱可能な受けパレット100によって構成されている。このため、ワーク49をワイヤソーの外で供給パレット67上に搭載し、その供給パレット67をワイヤソー内に搬入することができる。また、加工済みワーク49を受けパレット100ごとワイヤソー外に搬出できる。従って、ワイヤソー内へのワーク49の搬入及びワイヤソーからの搬出を容易に、かつワーク49が損傷することなく行うことができる。
【0051】
(10) 前記供給パレット67が、ワーク49をスライド可能に案内するためのレール状の底部案内面741を有するように構成されている。このため、ワーク49を供給パレット67の底部案内面741に沿って送り方向に正確にスライドさせることができて、ワーク49を均等な厚さに正確にスライスできる。
【0052】
(11) 前記供給パレット67の案内ブロック79を厚さの異なるものと交換することにより、ワーク案内間隔の幅を調節することが可能になる。このため、送り移動されるワーク49の厚さや積層枚数の変化に容易に対応でき、よって、ワーク49の種類や切断加工枚数の変更等の各種の加工態様に対処できる。
【0053】
(12) 前記ワーク受け部93が、ワーク49を送り姿勢のまま起立状態で保持するための受けパレット100を備えている。このため、ワイヤ47により切断されたワーク49をそのままワイヤ47の切断位置から送り出すことができ、切断されたワーク49の損傷を防止することができる。
【0054】
(13) 前記受けパレット100をワーク受け位置から加工用ローラ45の軸線方向の外側位置に移動させるための搬出部材としてのシリンダ101が設けられている。このため、ワーク49の切断後に、切断済みのワーク49を支持したワーク受け部93をワーク受け位置から加工用ローラ45の軸線方向の外側位置に移動させることができる。よって、切断済みのワーク49を加工用ローラ45間のワイヤ47に干渉することなく、ワイヤ47の周回域内から外側方に送り出すことができて、次工程に容易に搬送できる。
【0055】
(14) 前記供給パレット67及び受けパレット100が上下に位置する2本の加工用ローラ45間におけるワーク切断位置のワーク送り方向の上流側及び下流側に並設されている。このため、ワーク49を供給パレット67上から切断位置を経て受けパレット100上に円滑に送ることができるとともに、ワイヤソーの加工領域の高さを低くできる。
【0056】
(15) 前記供給パレット67には、ワーク49の送り方向の前部側の端面の位置を規制するワーク規制部材77が着脱可能に設けられる。このため、供給パレット67のクレーンによる吊下げ時等において、ワーク49がパレット67上から滑落することを防止できる。また、ワーク49の送り開始位置を位置決めすることができる。
【0057】
(16) 前記供給パレット67上のワーク49がその後端側から押し出し体90等の押し出し装置によってワイヤ47側に送られる。このため、すべてのワーク49を同時に押し出すことができて、高い作業効率を得ることができる。
【0058】
(17) ワイヤソーの装置カバー33に供給パレット67の上面を前面と連続して開放する前部開口34が設けられているため、供給パレット67の搬入及び搬出を支障なく容易に行うことができる。
【0059】
(18) このワイヤソーにおけるワーク加工方法では、ワーク49が加工用ローラ45間のワイヤ47に向かって平行な起立状態で移動されて、そのワイヤ47によって切断され、切断済みのワーク49は送り姿勢を維持したままワイヤ47の周回域内に留め置かれた後、そのワイヤ47の周回域内から加工用ローラ45の軸線方向の外側位置に移動される。
【0060】
このため、切断済みのワーク49を加工用ローラ45間のワイヤ47に干渉することなく、ワイヤ47の周回域内から外側方に送り出すことができて、切断済みのワーク49がワイヤ47との接触により傷付くことを防止することができる。
【0061】
(19) ワーク49の送り方向の後端に捨て材76が接着される。そして、その捨て材76が押し出し体90によって押されてワーク49がワイヤ47に向かって送り移動される。従って、捨て材76の位置まで切断が行われるようすることにより、ワーク49を余すことなく切断できる。また、切断が捨て材76の位置で終了されるようにすることにより、押し出し体90がワイヤ47で傷つくことを防止できる。
【0062】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 加工用ローラ45の本数を2本,3本あるいは5本以上にすること。
【0063】
・ ワーク49が送り方向の前方側における上下の加工用ローラ45間のワイヤ47と、後方側における上下の加工用ローラ45間のワイヤ47との2箇所のワイヤ47を通過するように構成すること。この場合、受けパレット100は加工用ローラ45間のワイヤ周回域の外側に設けられ、ワイヤ周回域の内側には供給パレット67と受けパレット100との間においてワーク49の送りを案内する案内路が設けられる。
【0064】
・ 装置カバー33の前側の上部は、供給パレット67側のみを開放すること。
・ 加工用ローラ45をモータ48によって直接駆動する構成に代えて、モータによって駆動されるチェーンを介して回転されるように構成すること。
【0065】
・ 4本の加工用ローラ45のうち、左側(切断位置側)の2本の加工用ローラ45のみ、あるいはその2本の加工用ローラ45を含む3本の加工用ローラ45をモータによって直接駆動するように構成するとともに、他の加工用ローラ45は、ワイヤ47の周回に追随して従動回転するように構成すること。
【0066】
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握され、請求項に記載されない技術的思想は以下の通りである。
(A) ワイヤによってワークを切断する加工部と、その加工部に対してワークを供給するワーク供給部とを横方向に並設するとともに、その加工部及びワーク供給部を覆う装置カバーを設けたワイヤソーにおいて、
その加工部及びワーク供給部の前面を開放するとともに、少なくともワーク供給部の上面を前面と連続して開放し、それらの開放部を開閉可能な扉を設けたことを特徴とするワイヤソー。
【0067】
(B) 複数の加工用ローラ間にワイヤを周回したワイヤソーにおいて、
各加工用ローラをそれぞれ単独でモータ駆動することを特徴とするワイヤソー。
【符号の説明】
【0068】
31…装置フレーム、32…装置ベース、33…装置カバー、41…支持ブラケット、42…フレーム、43…フレーム、45…加工用ローラ、46…環状溝、47…ワイヤ、48…モータ、49…ワーク、53…ローラピース、56…ガイドローラユニット、57…ガイドローラ、67…供給パレット、74…案内台、741…案内面、75…ワーク案内部材、76…捨て材、87…ボールネジ、88…モータ、89…移動部材、90…押し出し体、93…ワーク受け部、96…ローラコンベア、99…ローラコンベア、100…受けパレット、101…搬出部材としてのシリンダ、792…側部案内面。
図1
図2
図3
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図5
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