(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
操作者(12)による模擬操縦機構(16)の操縦操作に基づいて、制御装置(20)がディスプレイ(22)上に二輪車(140)及び走行情景(142)を映像として表示して、前記操作者(12)に前記二輪車(140)の走行を模擬体験させるライディングシミュレーション装置(10)において、
前記二輪車(140)のバンク角を算出するバンク角算出手段(100)を備え、
前記模擬操縦機構(16)は、前記操作者(12)によって操作されたブレーキ指示手段(42、56)のブレーキ量を検出するブレーキ量検出手段(74、76)を有し、
前記制御装置(20)は、前記バンク角算出手段(100)が算出した前記バンク角が所定角以上であって、前記ブレーキ量検出手段(74、76)が検出した前記ブレーキ量が閾値を超えた場合に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断して、表示している前記二輪車(140)をスリップさせ、スリップ中に過大ブレーキの入力が継続した場合に前記二輪車(140)を転倒させる
ことを特徴とするライディングシミュレーション装置(10)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなライディングシミュレーション装置は、危険予知能力の向上を主な目的とし、日常に起こり得る飛び出し等の危険を体験することを主眼としていたため、旋回中でのブレーキ操作に対する二輪車の挙動が表現されていなかった。そのため、旋回中に大きなブレーキ操作をしても、車輪がロックすることがなく、ライディングシミュレーション装置の操作者が初心者のライダーの場合、旋回中に大きなブレーキ操作をした場合の車両の挙動に対して、誤解を与える可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、旋回中に過大なブレーキ操作を行った時の二輪車に対する挙動を教育することができるライディングシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るライディングシミュレーション装置(10)は、以下の特徴を有する。
【0007】
第1の特徴;操作者(12)による模擬操縦機構(16)の操縦操作に基づいて、制御装置(20)がディスプレイ(22)上に二輪車(140)及び走行情景(142)を映像として表示して、前記操作者(12)に前記二輪車(140)の走行を模擬体験させるライディングシミュレーション装置(10)において、前記二輪車(140)のバンク角を算出するバンク角算出手段(100)を備え、前記模擬操縦機構(16)は、前記操作者(12)によって操作されたブレーキ指示手段(42、56)のブレーキ量を検出するブレーキ量検出手段(74、76)を有し、前記制御装置(20)は、前記バンク角算出手段(100)が算出した前記バンク角が所定角以上であって、前記ブレーキ量検出手段(74、76)が検出した前記ブレーキ量が閾値を超えた場合に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断して、表示している
前記二輪車(140)をスリップさせ、スリップ中に過大ブレーキの入力が継続した場合に前記二輪車(140)を転倒させることを特徴とする。
【0008】
第2の特徴;前記ブレーキ指示手段(42、56)は、前輪のブレーキを指示する前輪ブレーキ指示手段(56)と、後輪のブレーキを指示する後輪ブレーキ指示手段(42)とを有し、前記ブレーキ量検出手段(74、76)は、前輪の前記ブレーキ量及び後輪の前記ブレーキ量をそれぞれ検出し、前記制御装置(20)は、前輪の前記ブレーキ量及び後輪の前記ブレーキ量に対して前記閾値をそれぞれ設定し、前輪及び後輪の何れか一方の前記ブレーキ量が前記閾値を超えた場合に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断して、表示している
前記二輪車(140)をスリップさせ、スリップ中に過大ブレーキの入力が継続した場合に前記二輪車(140)を転倒させることを特徴とする。
【0009】
第3の特徴;前記制御装置(20)は、前記ブレーキ量検出手段(74、76)が検出した前記ブレーキ量が所定時間継続して閾値を超えている場合に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断して、表示している
前記二輪車(140)をスリップさせ、スリップ中に過大ブレーキの入力が継続した場合に前記二輪車(140)を転倒させることを特徴とする。
【0010】
第4の特徴;前記制御装置(20)は、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した場合は、
表示している前記二輪車(140)をスリップさせ、前記バンク角算出手段
(100)が算出した前記バンク角に補正値を加えた最終バンク角を算出し、
スリップ中に過大ブレーキの入力が継続し、且つ、該最終バンク角が所定の許容バンク角を超えた場合に、前記二輪車(140)を転倒させることを特徴とする。
【0011】
第5の特徴;前記補正値は、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断してからの経過時間又は前記ブレーキ量検出手段(74、76)が検出した前記ブレーキ量が前記閾値を超えた時からの経過時間に比例して大きくなることを特徴とする。
【0012】
第6の特徴;前記制御装置(20)は、前輪のブレーキ及び後輪のブレーキに対応して係数をそれぞれ設定し、前輪の前記ブレーキ量が前記閾値を超えて、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した場合は、前記経過時間と前輪のブレーキに対応する係数とを乗算して前記補正値を算出し、後輪の前記ブレーキ量が前記閾値を超えて、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した場合は、前記経過時間と後輪のブレーキに対応する係数とを乗算して前記補正値を算出することを特徴と
する。
【0013】
第7の特徴;前記制御装置(20)は、前記最終バンク角が前記許容バンク角を超えるまでは、前記バンク角算出手段(100)が算出した前記バンク角で、表示している前記二輪車(140)を横方向に傾斜させることを特徴とする。
【0014】
第8の特徴;前記制御装置(20)は、前記二輪車(140)の走行速度を算出する車速算出手段(100)を有し、前記バンク角算出手段(100)が算出した前記バンク角、前記車速算出手段(100)が算出した前記走行速度、及び、前記ブレーキ指示手段(42、56)の最大ブレーキ量に基づいて、前記閾値を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴によれば、制御装置は、バンク角算出手段が算出したバンク角が所定角以上であって、ブレーキ量検出手段が検出したブレーキ量が閾値を超えた場合に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断して、表示している
二輪車をスリップさせ、スリップ中に過大ブレーキの入力が継続した場合に二輪車を転倒させるので、
実際の車両に近い挙動を再現することができ、旋回中のブレーキ操作のやり過ぎに対する二輪車の挙動を教育することができる。
【0017】
本発明の第2の特徴によれば、ブレーキ量検出手段は、前輪のブレーキ量及び後輪のブレーキ量をそれぞれ検出し、制御装置は、前輪のブレーキ量及び後輪のブレーキ量に対して閾値をそれぞれ設定し、前輪及び後輪の何れか一方のブレーキ量が閾値を超えた場合に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断して、表示している
二輪車をスリップさせ、スリップ中に過大ブレーキの入力が継続した場合に二輪車を転倒させるので、実際の車両に近い挙動を再現することができる。
【0018】
本発明の第3の特徴によれば、制御装置は、ブレーキ量検出手段が検出したブレーキ量が所定時間継続して閾値を超えている場合に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断して、表示している
二輪車をスリップさせ、スリップ中に過大ブレーキの入力が継続した場合に二輪車を転倒させるので、旋回中に操作者が意識的に大きいブレーキをかけた時に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断することができ、旋回中に過大ブレーキが入力されたか否かの誤判断を防止することができる。
【0019】
本発明の第4の特徴によれば、制御装置は、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した場合は、
表示している二輪車をスリップさせ、バンク角算出手段が算出したバンク角に補正値を加えた最終バンク角を算出し、
スリップ中に過大ブレーキの入力が継続し、且つ、該最終バンク角が所定の許容バンク角を超えた場合に、二輪車を転倒させるので、旋回中のブレーキ操作のやり過ぎに対する二輪車の挙動をより実際の車両に近い挙動で再現することができる。
【0020】
本発明の第5の特徴によれば、補正値は、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断してからの経過時間又はブレーキ量検出手段が検出したブレーキ量が閾値を超えた時からの経過時間に比例して大きくなるので、より実際の車両に近い挙動を再現することができる。
【0021】
本発明の第6の特徴によれば、制御装置は、前輪のブレーキ量が閾値を超えて、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した場合は、経過時間と前輪のブレーキに対応する係数とを乗算して補正値を算出し、後輪のブレーキ量が閾値を超えて、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した場合は、経過時間と後輪のブレーキに対応する係数とを乗算して補正値を算出するので、前輪のブレーキによる補正値と、後輪のブレーキによる補正値とを個別に算出することができ、より実際の車両に近い挙動を再現することができる。
【0022】
本発明の第7の特徴によれば、制御装置は、最終バンク角が許容バンク角を超えるまでは、バンク角算出手段が算出した前記バンク角で、表示している二輪車を横方向に傾斜させるので、最初に表示している二輪車をスリップさせることで、旋回中の過大ブレーキによる車両の挙動を操作者に知らせることができる。
【0023】
本発明の第8の特徴によれば、制御装置は、二輪車の走行速度を算出する車速算出手段を有し、バンク角算出手段が算出したバンク角、車速算出手段が算出した走行速度、及び、ブレーキ指示手段の最大ブレーキ量に基づいて、閾値を設定するので、実際の車両に近い挙動に即して閾値を設定することができ、旋回中に過大ブレーキが入力されたか否かの判断を適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るライディングシミュレーション装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1は、ライディングシミュレーション装置10の全体構成図である。
図1では、ライディングシミュレーション装置10の乗り手等の操作者12による走行の模擬体験(模擬操縦操作)の状態或いは模擬体験終了後の再生状態を示す。この再生状態とは、模擬操縦操作での走行状況を再生する状態のことをいう。
【0028】
ライディングシミュレーション装置10は、椅子14に座っている操作者12が操作する模擬操縦機構16と、この模擬操縦機構16のインターフェース基板18に電気的に接続されるパーソナルコンピュータ(PC)等の制御装置20とから構成されている。制御装置20は、液晶表示装置等のディスプレイ22と、入力装置であるマウス24及びキーボード26と、本体部28とを有する。
【0029】
図2に示すように、模擬操縦機構16は、操作者12が手により把持して、ディスプレイ22上に表示される二輪車の前輪を走向操作するためのハンドル機構32と、このハンドル機構32を所定回転角度自由に保持するフレームボディ34と、このフレームボディ34に対して傾斜自由且つ伸縮自由に設けられる連結シャフト36と、この連結シャフト36の下端部に配設されたステップ38とギアチェンジペダル40とブレーキ指示手段であるリアブレーキペダル42とを有するステップ機構44とを有する。
【0030】
このように構成される模擬操縦機構16は、
図1に示すように、取付機構46によりテーブル48に取り付けられて使用され、この模擬操縦機構16のインターフェース基板18に図示しない電気ケーブルを介して接続される制御装置20は、操作者12からディスプレイ22が見えやすいテーブル48上の所望の位置に配置される。
【0031】
図2において、模擬操縦機構16を構成するハンドル機構32は、ステアリングステム50と、ステアリングステム50に一体的に保持されるステアリングハンドル52と、ステアリングハンドル52に対して取り付けられるクラッチレバー54及びブレーキ指示手段であるフロントブレーキレバー56と、ステアリングハンドル52の端部にそれぞれ装着されるグリップ58及びスロットルグリップ60と、スロットルグリップ60側に配置されるライト切換スイッチ62と、スタータスイッチ64とからなる。
【0032】
ここで、スロットルグリップ60は、二輪車の模擬走行時において、ディスプレイ22上に表示される二輪車を加速させるために使用されるものであり、再生時において、ディスプレイ22上に表示される画像の鳥瞰視点の上下方向の角度(俯角)を調整するために使用される。操作者12が手により手前方向に向かってスロットルグリップ60を回転させることによって得られるスロットル開度thによって、二輪車の加速度度合い、俯角が調整される。
【0033】
また、再生時において、ステアリングハンドル52の回動動作に伴うハンドル角αsは、鳥瞰視点の水平方向の角度(回転角)を調整し、ギアチェンジペダル40を操作することにより、画像の鳥瞰視点の俯角を調整することができる。また、再生時においては、スタータスイッチ64を用いて、通常再生と戻し再生、及び、通常再生と一時停止を切り換えることができる。ライト切換スイッチ62は、再生時には、映像を一時停止させる機能、早送りする機能、通常速度での再生を行う機能の切換スイッチとして使用される。
【0034】
スロットルグリップ60の操作量(スロットル開度th)は、ポテンショメータであるスロットル開度センサ66によって検出され、ステアリングハンドル52のハンドル角αsは、ポテンショメータであるハンドル角センサ68によって検出される。ギアチェンジペダル40の位置は、ギアポジションスイッチ70によって検出され、クラッチレバー54の操作量は、ポテンショメータであるクラッチレバーセンサ72によって検出される。
【0035】
前輪のブレーキを指示するフロントブレーキレバー(前輪ブレーキ指示手段)56の操作量である前輪のブレーキ量Bfは、フロントブレーキセンサ(ブレーキ量検出手段)74によって検出され、後輪のブレーキを指示するリアブレーキペダル(後輪ブレーキ指示手段)42の操作量である後輪のブレーキ量Brは、リアブレーキセンサ(ブレーキ量検出手段)76によって検出される。操作者12が、フロントブレーキレバー56を操作することでディスプレイ22上に表示される二輪車の前輪が制動状態になり、リアブレーキペダル42を操作することでディスプレイ22上に表示される二輪車の後輪が制動状態になる。
【0036】
ライト切換スイッチ62、スタータスイッチ64、スロットル開度センサ66、ハンドル角センサ68、ギアポジションスイッチ70、クラッチレバーセンサ72、フロントブレーキセンサ74、及びリアブレーキセンサ76は、インターフェース基板18に接続されている。
【0037】
なお、模擬操縦機構16のハンドル機構32を構成するギアチェンジペダル40、リアブレーキペダル42、ステアリングハンドル52、クラッチレバー54、フロントブレーキレバー56、及び、スロットルグリップ60に与えられる反力は、図示しないばねの圧縮力或いは引張力により付与されるように構成されている。
【0038】
図3は、ライディングシミュレーション装置10の制御回路のブロック図を示す。インターフェース(I/F)基板18と制御装置20の本体部28のCPU(中央処理装置)100とは、USB(Universal Serial Bus)等のインターフェース(I/F)102を介して接続されている。このCPU100は、タイマー機能を有する。
【0039】
CPU100のバス104には、OS等の制御プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)であるプログラムメモリ106、RAM(Random Access Memory)であるメインメモリ108、模擬体験時における走行情報データ等が走行情報記憶領域110に格納されるとともに、模擬操縦機構16からの信号入力に応じた各種処理を行うライディングシミュレーションプログラムとデータ(風景データ、自車データ、アドバイス文及び走行ルートデータ等)等が格納させるハードディスク112、スピーカ114、及びCPU100の画像処理結果に基づいて鳥瞰画像を作成し、ディスプレイ22に出力するCGI発生装置116が接続されている。
【0040】
スピーカ114は、走行の模擬体験時は、効果音の出力手段として機能し、再生時はアドバイス文を音声で読み上げる音声出力手段として機能する。
【0041】
次に、走行の模擬体験時の概要動作について簡単に説明する。制御装置20の図示しない電源を投入すると、操作者12による模擬操縦操作が実施される。
【0042】
模擬操縦操作時に、操作者12がスロットルグリップ60の操作、ステアリングハンドル52の回動操作、フロントブレーキレバー56の操作、及びリアブレーキペダル42の操作を行うことで、スロットル開度センサ66、ハンドル角センサ68、フロントブレーキセンサ74、及びリアブレーキセンサ76の出力信号がインターフェース基板18を介して制御装置20の本体部28のCPU100に取り込まれる。
【0043】
また、クラッチレバー54の操作、クラッチレバー54の操作に伴うギアチェンジペダル40の操作を行うことで、クラッチレバーセンサ72及びギアポジションスイッチ70の出力信号がインターフェース基板18を介して制御装置20の本体部28のCPU100に取り込まれる。
【0044】
操作者12による種々の操作が行われると、CPU100は、各種センサから取り込んだデータに対応してリアルタイムに自車の走行状態を演算し、
図4に示すように、この走行状態に基づく自車である二輪車140の映像を、走行情景(ビルディングや走行道路、他車両等)142の映像と共にディスプレイ22に表示する。これにより、二輪車140の模擬走行を行うことができる。また、CPU100は、映像表示時に対応する効果音をスピーカ114から出力する。
【0045】
ディスプレイ22には、インストルメントパネル144が表示されており、インストルメントパネル144の中の数字「30」は、表示している二輪車140の走行速度Vを示している。CPU100は、スロットル開度センサ66が検出したスロットル開度th、ギアポジションスイッチ70が検出したギアチェンジペダル40の位置、フロントブレーキセンサ74が検出したブレーキ量(以下、前輪ブレーキ量)Bf、及びリアブレーキセンサ76が検出したブレーキ量(以下、後輪ブレーキ量)Br等に基づいて、模擬的に二輪車140の走行速度Vを算出する(車速算出手段)。
【0046】
次に、二輪車140の模擬走行時におけるCPU100の動作について説明する。
図5は、第1の実施の形態の二輪車140の走行時におけるCPU100の動作を示すフローチャートである。
【0047】
まず、CPU100は、表示している二輪車140のバンク角φが所定角以上であるか(旋回中であるか)否かを判断する(ステップS1)。CPU100は、ハンドル角センサ68が検出した現在のハンドル角αsと、表示している二輪車140の現在の走行速度Vとに基づいて、模擬的に二輪車140のバンク角φを算出することができる(バンク角算出手段)。この該バンク角φに応じて二輪車140が横方向に傾斜して表示される。
【0048】
ステップS1で、現在のバンク角φが所定角以上でないと判断すると、所定角以上となるまでステップS1に留まり、現在のバンク角φが所定角以上であると判断すると、CPU100は、前輪ブレーキ量Bf及び後輪ブレーキ量Br用の閾値Tf、Trをそれぞれ設定する(ステップS2)。
【0049】
閾値Tfは、閾値Tf=前輪の最大ブレーキ量Bf_max×係数a、の関係式を用いて設定され、閾値Trは、閾値Tr=後輪の最大ブレーキ量Br_max×係数a、の関係式を用いて設定される。最大ブレーキ量Bf_maxは、フロントブレーキレバー56の最大操作量であり、最大ブレーキ量Br_maxは、リアブレーキペダル42の最大操作量である。この係数aは、0<係数a≦1.0の関係式を満たし、係数a=1.0−(現在のバンク角φ/最大バンク角)×係数b−現在の走行速度V×係数c、の関係式によって算出される。従って、バンク角φ及び走行速度Vが大きい程、係数aは小さい値となり、閾値Tf、Trは小さい値に設定される。
【0050】
次いで、CPU100は、フロントブレーキセンサ74が検出した現在の前輪ブレーキ量BfがステップS2で設定した閾値Tfを超えたか否かを判断する(ステップS3)。ステップS3で、前輪ブレーキ量Bfが閾値Tfを超えていないと判断すると、CPU100は、リアブレーキセンサ76が検出した現在の後輪ブレーキ量BrがステップS2で設定した閾値Trを超えたか否かを判断する(ステップS4)。
【0051】
ステップS3で、前輪ブレーキ量Bfが閾値Tfを超えたと判断した場合、又は、ステップS4で、後輪ブレーキ量Brが閾値Trを超えたと判断した場合は、CPU100は、タイマーをスタートする(ステップS5)。なお、タイマーが既にスタートしている場合は、ステップS5の動作を省略する。
【0052】
次いで、CPU100は、タイマーによって計時された時間が所定時間T1(例えば、1秒)経過したか、つまり、前輪ブレーキ量Bf又は後輪ブレーキ量Brが閾値Tf又はTrを超えている状態が所定時間T1以上続いたかを判断する(ステップS6)。ステップS6で、所定時間T1が経過していないと判断した場合、ステップS2に戻り、上記した動作を繰り返す。
【0053】
ステップS6で、タイマーによって計時された時間が所定時間T1を過ぎたと判断すると、CPU100は、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断し、ステップS8以降の動作を行う。
【0054】
なお、ステップS4で、後輪ブレーキ量Brが閾値Trを超えていないと判断すると、CPU100は、タイマーをリセットして(ステップS7)、ステップS2に戻り、上記した動作を繰り返す。従って、前輪ブレーキ量Bf又は後輪ブレーキ量Brが閾値Tf、Trを超えている状態が所定時間T1以上続かなければ、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断されることはない。
【0055】
前輪ブレーキ量Bf及び後輪ブレーキ量Brが閾値Tf及びTrを超えていない場合、若しくは、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断されるまでは、CPU100は、操作者12のブレーキ操作に応じて、表示している二輪車140を減速させる動作を行う。
【0056】
旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断すると、CPU100は、表示している二輪車140を横方向にスリップさせ(ステップS8)、その後該二輪車140を転倒させる(ステップS9)。
【0057】
なお、
図5に示す動作においては、ハンドル角センサ68が検出した現在のハンドル角αsと、表示している二輪車140の現在の走行速度Vとに基づいて算出された二輪車140のバンク角φが所定角未満となった場合は、現在の動作を中止してステップS1に戻る。
【0058】
このように、旋回中に過大なブレーキ操作を操作者12が行った場合は、二輪車140を横方向にスリップさせて、転倒させるので、旋回中のブレーキ操作のやり過ぎに対する二輪車140の挙動を適切に教育することができる。
【0059】
また、前輪ブレーキ量Bf及び後輪ブレーキ量Brのうち、何れか一方が閾値Tf又はTrを超えていれば、車両をスリップさせて転倒させるので、実際の車両に近い挙動を再現することができる。
【0060】
また、前輪ブレーキ量Bf又は後輪ブレーキ量Brが所定時間継続して閾値Tf、Trを超えている場合に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断するので、旋回中に操作者12が意識的に大きいブレーキをかけた時に、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断することができ、旋回中に過大ブレーキが入力されたか否かの誤判断を防止することができる。
【0061】
また、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した場合は、二輪車140を横方向にスリップさせてから、該二輪車140を転倒させるので、旋回中のブレーキ操作のやり過ぎに対する二輪車140の挙動を実際の車両に近い挙動で再現することができる。
【0062】
なお、CPU100が、ハンドル角センサ68が検出した現在のハンドル角αsと、表示している二輪車140の現在の走行速度Vとに基づいて、模擬的に二輪車140のバンク角φを求めるようにしたが、模擬操縦機構16を操作者12から見て左右方向に傾斜することができる構造にし、該模擬操縦機構16の傾斜角(バンク角φ)を算出するバンク角算出手段を模擬操縦機構16等に設けるようにしてもよい。
【0063】
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
【0064】
(変形例1)変形例1では、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断すると、二輪車140のスリップ及び転倒のどちらか一方のみを行うようにする。つまり、
図5のステップS6で所定時間T1が経過すると、ステップS8の動作のみを行うようにしてもよいし、ステップS9の動作のみを行うようにしてもよい。
【0065】
(変形例2)変形例2では、前輪ブレーキ量Bf又は後輪ブレーキ量Brが閾値Tf又はTrを超えた時点で、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断し、二輪車140をスリップ及び転倒させるようにする。つまり、
図5のステップS5〜ステップS7の動作は不要となり、ステップS3で、前輪ブレーキ量Bfが閾値Tfを超えると、又は、ステップS4で、後輪ブレーキ量Brが閾値Trを超えると、ステップS8に進む。
【0066】
(変形例3)
図5のステップS8で、表示している二輪車140をスリップさせてから所定時間T1´が経過した後又は経過する前に、前輪ブレーキ量Bf及び後輪ブレーキ量Brが何れも閾値Tf、Trを下回っている場合には、二輪車140の挙動を転倒させることなく、通常の姿勢に戻ってもよい。つまり、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した後、過大ブレーキの入力が所定時間T1´継続した場合は二輪車140をスリップさせる。
【0067】
[第2の実施の形態]
図6は、第2の実施の形態の二輪車140の走行時におけるCPU100の動作を示すフローチャートである。
図6のステップS21〜ステップS27までの動作は、
図5のステップS1〜ステップS7までの動作と同じなので、その説明を省略する。
【0068】
ステップS26で、タイマーによって計時された時間が所定時間T1を過ぎたと判断すると、CPU100は、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断し、ステップS28以降の動作を行う。
【0069】
旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断すると、CPU100は、表示している二輪車140をスリップさせる(ステップS28)。そして、CPU100は、タイマーをリセットして再びタイマーをスタートさせ(ステップS29)、フロントブレーキセンサ74が検出した現在の前輪ブレーキ量Bfが閾値Tfを超えているか否かを判断する(ステップS30)。
【0070】
ステップS30で、前輪ブレーキ量Bfが閾値Tfを超えていないと判断すると、CPU100は、リアブレーキセンサ76が検出した現在の後輪ブレーキ量Brが閾値Trを超えているか否かを判断する(ステップS31)。
【0071】
ステップS31で、後輪ブレーキ量Brが閾値Trを超えていないと判断すると、CPU100は、タイマーをリセットして(ステップS32)、表示中の二輪車140のスリップを停止させる(ステップS33)。
【0072】
一方、ステップS30で、前輪ブレーキ量Bfが閾値Tfを超えていると判断すると、CPU100は、前輪のブレーキに対応するスリップ用疑似バンク角補正値(補正値)θsfを算出する(ステップS34)。このスリップ用疑似バンク角補正値θsfは、スリップ用疑似バンク角補正値θsf=経過時間T2×係数d、の関係式によって求めることができる。この経過時間T2は、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断してからの経過時間であり、タイマーによって計時された時間である。この係数dは、予め決められた値であってもよいし、前輪ブレーキ量Bfや走行速度Vに応じて変動する値であってもよい。このように、スリップ用疑似バンク角補正値θsfは、経過時間T2に比例してその値が大きくなる。
【0073】
次いで、CPU100は、現在のバンク角φと、ステップS34で算出したスリップ用疑似バンク角補正値θsfとに基づいて最終バンク角θbを算出する(ステップS35)。この最終バンク角θbは、最終バンク角θb=現在のバンク角φ+スリップ用疑似バンク角補正値θsf、の関係式によって求めることができる。この最終バンク角θbとは、二輪車140がスリップした時の二輪車140自身の擬似的な傾斜角のことをいう。
【0074】
一方、ステップS31で、後輪ブレーキ量Brが閾値Trを超えていると判断すると、CPU100は、後輪のブレーキに対応するスリップ用疑似バンク角補正値(補正値)θsrを算出する(ステップS36)。このスリップ用疑似バンク角補正値θsrは、スリップ用疑似バンク角補正値θsr=経過時間T2×係数e、の関係式によって求めることができる。この係数eは、予め決められた値であってもよいし、後輪ブレーキ量Brや走行速度Vに応じて変動する値であってもよい。このように、スリップ用疑似バンク角補正値θsrは、経過時間T2に比例してその値が大きくなる。
【0075】
次いで、CPU100は、現在のバンク角φと、ステップS36で算出したスリップ用疑似バンク角補正値θsrとに基づいて最終バンク角θbを算出する(ステップS37)。この最終バンク角θbは、最終バンク角θb=現在のバンク角φ+スリップ用疑似バンク角補正値θsr、の関係式によって求めることができる。
【0076】
ステップS35又はステップS37で、最終バンク角θbを算出すると、CPU100は、ステップS35又はステップS37で算出された最終バンク角θbが許容バンク角θaを超えているか否かを判断する(ステップS38)。
【0077】
ステップS38で、最終バンク角θbが許容バンク角θaを超えていないと判断すると、ステップS30に戻り、上記した動作を繰り返す。一方、ステップS38で、最終バンク角θbが許容バンク角θaを超えたと判断すると、CPU100は、スリップ状態で表示している二輪車140を転倒させて(ステップS39)、動作を終了する。つまり、スリップ用疑似バンク角補正値θsf、θsrを現在のバンク角φに加えることにより、現在のバンク角φが許容バンク角θaを超えていない場合であっても、スリップによる転倒を表現することができる。
【0078】
従って、ステップS30〜ステップS38の動作によって、最終バンク角θbが許容バンク角θaを超えるまでは、現在のバンク角φで横方向に傾斜した二輪車140が表示される。そして、最終バンク角θbが許容バンク角θaを超えたタイミングに到来すると、転倒した二輪車140が表示される。
【0079】
なお、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断した後に、前輪ブレーキ量Bf及び後輪ブレーキ量Brが閾値Tf及びTrを超えていないと判断された期間は、タイマーが一時停止されるので、かかる期間は、最終バンク角θbは変化しない。
【0080】
図6に示す動作においては、ハンドル角センサ68が検出した現在のハンドル角αsと、表示している二輪車140の現在の走行速度Vとに基づいて算出された二輪車140のバンク角φが所定角未満となった場合は、現在の動作を中止してステップS21に戻る。
【0081】
このように、旋回中に過大ブレーキが入力されたと判断すると、過大ブレーキが入力されたと判断してからの経過時間T2と共に最終バンク角θbを大きくしていき、最終バンク角θbが許容バンク角θaを超えると、表示している二輪車140を転倒させるので、より実際の車両に近い挙動を再現することができる。
【0082】
前輪ブレーキ量Bfが閾値Tfを超えた場合のスリップ用疑似バンク角補正値θsfと、後輪ブレーキ量Brが閾値Trを超えた場合のスリップ用疑似バンク角補正値θsrとを個別に求めるので、より実際の車両に近い挙動を再現することができる。
【0083】
模擬的に算出した二輪車140のバンク角φ、走行速度V、及び、フロントブレーキレバー56及びリアブレーキペダル42の最大ブレーキ量Bf_max、Br_maxに基づいて、閾値Tf、Trを設定するので、実際の車両に近い挙動に即した閾値Tf、Trを設定することができ、旋回中に過大ブレーキが入力されたか否かの判断を適切に行うことができる。
【0084】
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲に記載された括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号をつけた要素に限定されて解釈されるものではない。