特許第5996370号(P5996370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996370
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】車両用電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/14 20060101AFI20160908BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H05K7/14 C
   H05K7/20 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-236815(P2012-236815)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-86671(P2014-86671A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】佐脇 敬法
(72)【発明者】
【氏名】三浦 浩二
【審査官】 久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−235444(JP,A)
【文献】 特開2002−205610(JP,A)
【文献】 特開2001−024352(JP,A)
【文献】 特開2012−089648(JP,A)
【文献】 特開2009−284600(JP,A)
【文献】 特開2009−238831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
H05K 7/14
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端に開口部を備える収容ケースと、
外部機器と接続可能なコネクタと電子部品がそれぞれ実装された第1の回路基板及び第2の回路基板と、
前記第1の回路基板に実装された第1のコネクタと前記第2の回路基板に実装された第2のコネクタとを前記収容ケースから同一の方向に、かつ平行に突出させた電子制御装置において、
前記収容ケースは、内壁に前記第1の回路基板と前記第2の回路基板のそれぞれを位置決めして支持するレールを複数有すると共に、前記レールが形成された側壁と異なる複数の側面であって、かつ対向する2つの側面のそれぞれから前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが重なり合う領域を避けて前記収容ケースの内部に向かって設けられた凹部を有し、
前記第1の回路基板の前記第1のコネクタと前記第2の回路基板の前記第2のコネクタとを近接させ、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを所定の間隔を有して重なるように配置し、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが重なる領域に低背の発熱部品が複数並べて配置されると共に、複数の前記発熱部品の間にバスバーが実装されており、前記バスバーは前記第1のコネクタに向かって延びると共に、前記バスバーの先端部が前記第1のコネクタの直前で折り曲げられていることを特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項2】
前記第2の回路基板は、前記第1のコネクタを避ける切り欠き部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電子制御装置には、収容ケース内に2枚の回路基板が配置され、その各々に外部機器と電気的に接続されるコネクタが1つずつ取り付けられたものがある。2つのコネクタは、収容ケースから同じ方向に突出するように配置されており、各コネクタに外部ハーネスを接続したときに、配線を一箇所に集中できるようになっている。さらに、2枚の回路基板は、大きさが異なるものが使用され、収容ケース内では上下に配置されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、従来の電子制御装置では、2つの回路基板のそれぞれに互いに連結させるための接続用コネクタが1つずつ実装されており、接続用コネクタ同士を結合させることによって、上下に配置された2枚の回路基板の向きや、配置間隔、平行度が保たれるように支持されている。さらに、接続用コネクタは、2つの回路基板を電気的に接続する役割も担っている。
【0003】
電子制御装置を製造するときは、最初に2つの回路基板を接続用コネクタを用いて連結させ、その後に2つの回路基板を収容ケース内に挿入する。収容ケースの内壁の側部には、ガイド溝が刻まれており、ガイド溝にサイズが大きい方の回路基板が係合させられる。サイズが小さい方の回路基板は、収容ケースの前面側の角部にネジで固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−235444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、鞍乗り型車両、例えば自動二輪車や、モペット、ATV(All Terrain Vehicle:全地形型車両)や、スクーターなどでは、四輪自動車に比べて電子制御装置の搭載スペースが狭い。このために、電子制御装置をさらに小型化することが望まれていた。
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、2つの回路基板を有する電子制御装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願によれば、少なくとも一端に開口部を備える収容ケースと、外部機器と接続可能なコネクタと電子部品がそれぞれ実装された第1の回路基板及び第2の回路基板と、前記第1の回路基板に実装された第1のコネクタと前記第2の回路基板に実装された第2のコネクタとを前記収容ケースから同一の方向に、かつ平行に突出させた電子制御装置において、前記収容ケースは、内壁に前記第1の回路基板と前記第2の回路基板のそれぞれを位置決めして支持するレールを複数有すると共に、前記レールが形成された側壁と異なる複数の側面であって、かつ対向する2つの側面のそれぞれから前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが重なり合う領域を避けて前記収容ケースの内部に向かって設けられた凹部を有し、前記第1の回路基板の前記第1のコネクタと前記第2の回路基板の前記第2のコネクタとを近接させ、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを所定の間隔を有して重なるように配置し、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが重なる領域に低背の発熱部品が複数並べて配置されると共に、複数の前記発熱部品の間にバスバーが実装されており、前記バスバーは前記第1のコネクタに向かって延びると共に、前記バスバーの先端部が前記第1のコネクタの直前で折り曲げられていることを特徴とする車両用電子制御装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、前記第2の回路基板は、前記第1のコネクタを避ける切り欠き
部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つの回路基板の間隔を狭くできるので、電子制御装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る車両用電子制御装置を上方からみた斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る車両用電子制御装置を下方からみた斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る車両用電子制御装置であって、図1のA矢視図であり、樹脂を注入する前の状態を示す正面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る車両用電子制御装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について以下に詳細に説明する。
図1に電子制御装置の斜視図を示す。電子制御装置1は、樹脂製の収容ケース2を有する。収容ケース2は、前面に開口部2Aを有し、背面2Bが閉鎖された中空構造を有し、開口部2Aからは、2つのコネクタ3,4が突出している。第1、第2のコネクタ3,4は、収容ケース2から同じ方向に向けて、かつ近接して略平行に配置されており、それぞれが外部の機器に接続される外部ハーネスが結合可能な形状を有する。さらに、収容ケース2の内部空間には、樹脂5が充填されている。
【0013】
また、収容ケース2の上面2Cには、第1の窪み部6が収容ケース2の中心から一方の側面2E側にオフセットさせた位置に形成されている。第1の窪み部6は、収容ケース2の背面2B側から、収容ケース2の前面の開口部2Aの手前まで、側面2Eに略平行に、かつ細長に延びている。さらに、図2に電子制御装置1を下側から見た斜視図を示すように、収容ケース2の下面2Dには、第2の窪み部7が、収容ケース2の中心から他方の側面2F側のオフセットさせた位置に形成されている。第2の窪み部7は、収容ケース2の背面2Bから側面2Eに略平行に、前面の開口部2Aの近傍まで延びている。第2の窪み部7には、複数のリブ8が収容ケース2の側面と略平行に形成されている。第1の窪み部6と第2の窪み部7とは、収容ケース2の中心に対して左右方向に振り分けて1つずつ形成されており、2つの窪み部6,7が干渉することはない。
【0014】
さらに、図3に樹脂5を充填する前の図1のA矢視図を示す。収容ケース2内には、下側に、面積が大きい第1の回路基板10が配置され、上側に面積が相対的に小さい第2の回路基板11が平行に配置されている。2つの回路基板10,11は、上下方向に所定の間隔を持ちつつ、一部が上下方向で重なり合うように配置されている。
【0015】
ここで、収容ケース2の一方の側面2Eの内側壁には、一対のレール21が形成されている。同様に、第2の窪み部7によって形成された内側壁7Aには、一対のレール22が
形成されている。これらレール21,22は、下面2Dから高さが同じになる位置に、かつ収容ケース2の前面の開口部2Aの近傍から背面2Bに至るまで形成されている。さらに、一対のレール21同士、及びレール22同士は、それぞれが第1の回路基板10の側部に係合可能な隙間を有して配置されており、第1の回路基板10をレール21,22に沿って挿入することで、第1の回路基板10を収容ケース2内に位置決めして収容することができる。
【0016】
また、収容ケース2の他方の側面2Fの内側壁には、一対のレール24が収容ケース2の前面の開口部2Aの近傍から背面2Bに至るまで形成されている。さらに、収容ケース2の背面2Bの内側壁には、一対のレール25が形成されている。これらレール24,25は、下面2Dから高さが同じになる位置に形成されている。さらに、一対のレール24同士、及びレール25同士は、それぞれが第2の回路基板11の側部と背面部に係合可能な隙間を有して配置されており、第2の回路基板11をレール24に沿って挿入し、かつレール25に係合させることによって、第2の回路基板11を収容ケース2内に位置決めして収容することができる。
【0017】
そして、収容ケース2の内部には、2つの窪み部6,7を繋ぐように遮熱板15が形成されている。遮熱板15は、第1の回路基板10と第2の回路基板11の間に配置され、2つの回路基板10,11の配置スペースを仕切る間仕切り板としても機能している。
【0018】
図4に示すように、第1の回路基板10は、前面側に第1のコネクタ3が実装されており、その他の領域にはコンデンサや、FET(Field effect transistor)などの電子部品31が実装されている。このような第1の回路基板10の用途としては、例えば、モータなどの駆動回路がある。
【0019】
ここで、第1の回路基板10に実装されている電子部品のうち、電界コンデンサなどの背の高い電子部品32は、第2の回路基板11から離れた位置に実装されている。より詳細には、第1の回路基板10の左側、即ち収容ケース2の側面2F側で、収容ケース2の第1の窪み部6を避ける位置に、背の高い電子部品32が実装されている。一方、第1の回路基板10のその他の領域、特に第1の回路基板11と重なる領域には、背の低い電子部品33が実装されている。背の低い電子部品33としては、例えば、FETや、背の低い抵抗やコンデンサなどのチップ部品、CPU(Central Processing Unit)、IC(Integrated Circuit)などがあげられる。
【0020】
さらに、第1の回路基板10には、背の低い電子部品33に電気的に接続される2本のバスバー35が複数の電子部品33の間、例えば中心を通るように実装されている。バスバー35は、電子部品33で発生した熱を放出するように、複数の背の低い電子部品33の間を通って、第1のコネクタ3に向けて延びている。さらに、バスバー35の先端部分35Aは、外部に熱を放出し易いように、第1のコネクタ3の直前で折り曲げられている。
【0021】
第2の回路基板11は、前方に第2のコネクタ4が実装されており、その他の領域にはコンデンサや、FET(Field effect transistor)、その他の電子部品41が実装されている。第2の回路基板11の用途としては、例えば、燃料噴射装置の駆動回路がある。
【0022】
ここで、第2の回路基板11は、前面側に第1のコネクタ3を避けるように切り欠き部11Aが形成されている。そして、第1の回路基板10に取り付けられている第1のコネクタ3の側部3Aに形成された一対のレール26に支持されている。即ち、第2の回路基板11は、収容ケース2側のレール24,25と、第1のコネクタ3のレール26によって位置決めして支持されている。
【0023】
このために、第1のコネクタ3と第2の回路基板11とは接触するか、公差を許容する間隙(例えば、1mm程度)で配置される。これによって、第1のコネクタ3と第2のコネクタ4は、所定の間隙を有しつつ、近接して配置される。
【0024】
電子制御装置1を製造するときは、最初に、第1の回路基板10に実装した第1のコネクタ3の一対のレール25に、第2の回路基板11の切り欠き部11Aを係合させる。続いて、樹脂成型した収容ケース2内に2つの回路基板10,11を挿入する。各回路基板10,11は、収容ケース2に形成されたレール21〜25にガイドされながら所定の位置に導かれる。各レール21〜24の先端部分には、回路基板10,11を受け入れ易いように不図示のテーパが形成されているので、回路基板10,11を容易に挿入することができる。
【0025】
これによって、第1の回路基板10は、収容ケース2の下面2Dに沿って配置され、第1の窪み部6を避けるように、各電子部品31が配置される。一方、第2の回路基板11は、収容ケース2内で、第2の窪み部7による凸部の上方に主に配置され、一部が第1の回路基板10の上方に重なるように配置される。このとき、第1の回路基板10上の一部の背の低い電子部品33の上方に第2の回路基板11が配置されるが、両者の間には隙間があるので干渉することはない。各回路基板10,11が収容ケース2に収容されたら、樹脂5を収容ケース2内に充填し、隙間を埋めてから硬化させる。
【0026】
以上、説明したように、この実施形態の電子制御装置1では、第1のコネクタ3に第2の回路基板11を近接して配置させたので、2つのコネクタ3,4を同じ方向に近接して配置することができる。これによって、収容ケース2の幅を減少させることが可能になり、電子制御装置1を小型化できる。
【0027】
また、2つの回路基板10,11を上下に重なって配置することによって、収容ケース2の幅を減少できる。さらに、2つの回路基板10,11が重なり合う領域に低背の電子部品33を配置したので、2つの回路基板10,11の間の上下方向の間隔を小さくできる。電子制御装置1の高さを低くできるので、電子制御装置1が小型化される。
【0028】
また、収容ケース2に第1の窪み部6と、第2の窪み部7を形成したので、収容ケース2の内部空間の体積を減少できる。収容ケース2のサイズを小さくすることと、収容ケース2の内部空間の体積を小さくすることによって、樹脂5の量を削減できるので、コストの低減や電子制御装置1の軽量化が図れる。また、樹脂5の量を削減することによって、樹脂5の硬化時間が短くなり、電子制御装置1の製造時間を短縮できる。さらに、窪み部6,7の近傍に配置された電子部品31,41で発生した熱を効率良く外気に放出することができるので、電子部品31,41を冷却し易くなる。
【0029】
また、第2の回路基板11を第1のコネクタ3を避けて延びるように配置したので、第2の回路基板11の実装面積を大きくすることができる。
【0030】
さらに、複数の低背の電子部品33の間にバスバー35を通し、バスバー35を第1のコネクタ3に向けて延ばしたので、電子部品33で発生した熱をバスバー35を通して、第1のコネクタ3に伝達し易くなる。第1のコネクタ3は、収容ケース2の開口部2Aに配置されているので、結果的に電子部品33の熱を外部に放出し易くなる。
【0031】
なお、本発明は、実施の形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 電子制御装置
2 収容ケース
3,4 コネクタ
6 第1の窪み部(凹部)
7 第2の窪み部(凹部)
10 第1の回路基板
11 第2の回路基板
11A 切り欠き部
32 背の高い電子部品
33 背の低い電子部品
35 バスバー
図1
図2
図3
図4