(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、貫通部閉塞具を充填材受け具に具体化した第1の実施形態を
図1及び
図2に従って説明する。
【0016】
まず、対象物としての中空壁Wについて説明する。
図2(a)に示すように、中空壁Wは前後一対の壁材Waを間隔を空けて立設して形成されている。なお、各壁材Waはそれぞれ2枚の板を貼り合わせて形成されている。そして、一対の壁材Waの間には一定幅の中空部Tが形成されている。各壁材Waには、貫通部としての円孔状の貫通孔Wbが形成されるとともに、両貫通孔Wbは中空壁Wの厚み方向に対向する位置に形成されている。そして、両貫通孔Wbには配線・配管材としての電線管Pが挿通され、電線管Pは中空壁Wの厚み方向に貫通している。
【0017】
次に、貫通孔Wbに配置される充填材受け具10について説明する。
図1(a),(b)に示すように、充填材受け具10は円筒状に形成された受け具本体11を有する。なお、充填材受け具10は、合成樹脂材料により形成されている。
【0018】
受け具本体11の軸方向一端には、受け具本体11とほぼ同等の厚みを有する環状基部13が内側に向けて突設されている。環状基部13の内周縁には、充填材を受ける充填材受け部12が突設されている。充填材受け部12は、複数の受け部(舌片)12aを環状に配置して形成されている。各受け部12aは扇形状の薄板状に形成されるとともに撓み変形可能に形成されている。そして、各受け部12aは撓み変形することにより受け具本体11の内側を開閉可能になっている。また、複数の受け部12aを環状に配置することで、受け部12aの先端側には、電線管Pを挿通可能な挿通部Sが形成されている。
【0019】
各受け部12aは円弧状に延びる基端が環状基部13に連設されている。各受け部12aは、環状基部13に連結されている部分を基端として、その先端部が撓み変形する構造になっている。受け部12aの厚みは、受け具本体11及び環状基部13の厚みよりも薄く形成され、撓み変形し易くしてある。また、
図1(a)に示すように、環状基部13に連設される各受け部12aのうち隣り合う受け部12aは、互いに重合するように配置されている。より詳しくは、隣り合う受け部12aの側辺14(側辺部)同士が互いに重合している。具体的には、受け部12aの両側辺14のうち一方が電線管Pの挿通方向の一側となり、受け部12aの両側辺14のうち他方が他側となるように交互に重合している。
【0020】
環状基部13において、複数の受け部12aの側辺14の延長線上には、貫通孔Wbの開口から充填材受け部12を貫通孔Wbの奥方に送り込むための細幅状の延設部15が立設されている。そして、受け具本体11において、周方向に隣り合う延設部15の間には、四角形状をなす連通孔16が受け具本体11を厚み方向に貫通して形成されている。連通孔16は、長辺方向が受け具本体11の周方向へ延びるように形成されている。
【0021】
受け具本体11の軸方向他端側の外周面には、掛止部としてのフランジ17が突設されている。なお、フランジ17は、延設部15において充填材受け部12と反対側の端部に設けられているとともに、延設部15によって充填材受け部12とフランジ17が連結されている。フランジ17は、受け具本体11の周方向に沿って延びるように、かつ一定の厚みを有するように形成されている。
【0022】
また、フランジ17の直径は、貫通孔Wbの孔径よりも大きく設定されている。このため、充填材受け具10は、受け具本体11が貫通孔Wbに挿入された状態では、フランジ17が貫通孔Wb外縁の壁表面Wcに係止するようになっている。また、受け具本体11の軸方向他端側は開放されており、開口部11aが形成されている。そして、開口部11a側から充填材受け部12を視認した際、隣り合う受け部12aの側辺14同士の重合により、各受け部12aの境の隙間を閉塞している。
【0023】
図2(a)に示すように、受け具本体11の軸方向他端側(フランジ17側)の端縁から受け部12aの内面までの受け具本体11の軸方向に沿った長さをN1とする。また、壁材Waの厚みをMとする。受け具本体11における長さN1は、壁材Waの厚みMより長くなっている。このため、受け具本体11を受け部12a側から貫通孔Wb内に挿入するとともに、フランジ17を壁材Waの壁表面Wcに係止させた状態では、受け部12aは壁材Waの厚み(壁裏面Wd)を越えて中空部Tに位置する。
【0024】
また、受け具本体11の軸方向他端側(フランジ17側)の端縁から連通孔16における軸方向一端側(受け部12a側)の端縁までの受け具本体11の軸方向に沿った長さをN2とする。受け具本体11における長さN2は、壁材Waの厚みMより短くなっている。このため、受け具本体11を受け部12a側から貫通孔Wb内に挿入するとともに、フランジ17を壁材Waの壁表面Wcに係止させた状態では、連通孔16における軸方向一端側は壁材Waの厚み内に位置し、連通孔16全体も壁材Waの厚み内に位置する。
【0025】
次に、
図2(a),(b)に従って、貫通孔Wbの耐火構造について説明する。
図2(a)に示すように、受け具本体11を充填材受け部12側から貫通孔Wbに挿入すると、延設部15によって充填材受け部12が貫通孔Wbの奥方に送り込まれ、フランジ17を残して受け具本体11全体が貫通孔Wbに挿入されることになる。
【0026】
そして、充填材受け具10が各貫通孔Wbに挿入されるとともに、貫通孔Wbの開口縁部には、フランジ17が当接した状態で係止している。受け具本体11の外周面は、貫通孔Wbの内周面に近接している。充填材受け具10内には電線管Pが挿通されるとともに、電線管Pは中空壁Wを厚み方向に貫通している。そして、充填材受け具10は、電線管Pの外周面との間に充填空間Kaを空けて周方向の全体に亘って取り囲んでいる。この充填空間Kaは、充填材受け具10における受け具本体11の内周面と、電線管Pの外周面との間に環状に区画されている。
【0027】
また、電線管Pは、複数の受け部12aの先端側に形成された挿通部Sを貫通しており、複数の受け部12aは、電線管Pに沿って充填空間Ka内へ向けて突出するように変形している。ただし、隣り合う受け部12aの側辺14同士が、互いに重合するように配置されている。
【0028】
これにより、
図2(b)に示すように、各受け部12aが電線管Pの外周に当接し、受け部12aの基端を中心として、各受け部12a同士の間隔が電線管Pに向かうに連れて広がってしまったとする。このような場合であっても、電線管Pを支持した状態で、隣り合う受け部12aの側辺14同士が重合(側辺14の基端から先端にかけて重合した状態)していることで、受け部12a同士の間に隙間ができ難い。つまり、隣り合う受け部12aの側辺14同士の重合により、電線管Pを支持する複数の受け部12aでの剛性が向上する。そして、受け部12aの間を貫通した電線管Pは、変形後の複数の受け部12aによる電線管P外周への当接によって支持される。言い換えると、側辺14の先端側が重合した状態で、電線管Pが受け部12aによって支持される。
【0029】
また、充填空間Kaは、開口部11aによって壁材Waの壁表面Wc側に開放されている。そして、充填空間Kaには開口部11aから熱膨張性耐火充填材20が充填されるとともに、この熱膨張性耐火充填材20によって充填空間Kaが閉塞されている。なお、熱膨張性耐火充填材20は、シーリング材に熱膨張性材を混合してなるものであり、ペースト状をなすものである。また、熱膨張性耐火充填材20は、300℃以上の熱を受けると体積が加熱前の2倍以上に膨張するものである。熱膨張性耐火充填材20は、充填材受け具10の受け具本体11内全体に満たされている。また、熱膨張性耐火充填材20は、各受け部12aを押し退けて中空部Tに到達するまで充填空間Kaには充填されず、受け部12aによって熱膨張性耐火充填材20が充填材受け具10から飛び出ることが防止されている。より詳しくは、隣り合う受け部12aが互いに重合するように配置されていることで、受け部12a同士の隙間を小さく保つことができるので、その隙間から熱膨張性耐火充填材20が飛び出難くなっている。
【0030】
また、フランジ17を壁表面Wcに係止させた状態では、受け部12aは壁材Waの壁裏面Wdを越えて中空部Tに位置する。このため、受け部12aに達するまで充填された熱膨張性耐火充填材20は、壁材Waの厚みを越えて中空部Tに達するまで充填材受け具10内に充填されている。
【0031】
また、充填空間Kaに充填された熱膨張性耐火充填材20の一部は、受け具本体11の連通孔16から受け具本体11の外側に臨み、漏出している。フランジ17を壁材Waの壁表面Wcに係止させた状態では、連通孔16における軸方向一端側は壁材Waの厚み内に位置し、連通孔16全体は壁材Waの厚み内に位置している。このため、連通孔16から漏出した熱膨張性耐火充填材20の一部は、貫通孔Wbの内周面である壁材Waに直接接着している。よって、熱膨張性耐火充填材20の壁材Waへの接着により、充填材受け具10が貫通孔Wb内で壁材Waに固定されている。
【0032】
そして、電線管Pは、両貫通孔Wb側で充填材受け具10によって取り囲まれるとともに、それら充填材受け具10の内周面と電線管Pの外周面との間の充填空間Kaに熱膨張性耐火充填材20が充填されている。電線管Pにおいて、充填材受け具10で挟まれた部位は中空部T内で露出している。
【0033】
次に、
図2(a),(b)に従って、充填材受け具10及び耐火構造の作用について、耐火構造の形成方法とともに記載する。
まず、貫通孔Wbに電線管Pを挿通する。次に、受け具本体11を貫通孔Wbに壁表面Wc側から挿入する。そして、受け具本体11に設けられた複数の受け部12aを電線管Pの外周面に押し当てることにより、各受け部12aを壁表面Wc側に向けて弾性変形させる。さらに、受け具本体11を貫通孔Wbの奥方に押し込むと、フランジ17が貫通孔Wb周縁の壁表面Wcに係止する。すると、それ以上の受け具本体11の貫通孔Wb奥側への挿入が規制される。
【0034】
各受け部12aは、壁表面Wc側に向けて弾性変形されて電線管Pの外周面に密接する。このとき、隣り合う受け部12aの側辺14同士が互いに重合するように配置されている。このため、各受け部12aが電線管Pの外周に当接し、受け部12aの基端を中心として、各受け部12a同士の間隔が電線管Pに向かうに連れて広がってしまったとしても、電線管Pを支持した状態で、隣り合う受け部12aの側辺14同士が重合(側辺14の基端から先端にかけて重合した状態)する。これにより、受け部12a同士の間に隙間ができ難い。よって、電線管Pを支持した状態であっても、隣り合う受け部12a同士の隙間から熱膨張性耐火充填材20の垂れ落ちを抑制することができる。そして、受け部12aの間を貫通した電線管Pを、変形後の複数の受け部12aによる電線管P外周への当接によって支持することができる。また、複数の受け部12aによって、充填空間Kaの貫通孔Wbの奥側が閉鎖されている。
【0035】
続いて、図示しないコーキングガンを使用して、開口部11aから充填空間Kaに熱膨張性耐火充填材20を充填する。充填材受け具10において、中空部T内には受け部12aが配置され、しかも、各受け部12aは電線管Pの外周面に密接している。このため、熱膨張性耐火充填材20は壁材Waの厚み方向で壁表面Wcより中空部T側で受け部12aによって受け止められ、中空部Tに垂れ落ちることなく充填空間Kaのみに熱膨張性耐火充填材20を充填することができる。複数の受け部12aによって熱膨張性耐火充填材20の充填空間が維持され、熱膨張性耐火充填材20が受けられるため、複数の受け部12aが充填材受け部12として機能する。加えて、隣り合う受け部12aが互いに重合するように配置されていることで、受け部12a同士の隙間を小さく保つことができるので、その隙間から熱膨張性耐火充填材20が飛び出難くなっている。
【0036】
また、熱膨張性耐火充填材20の充填中においても、電線管Pは、複数の受け部12aによって支持された状態が維持されるために、熱膨張性耐火充填材20の充填作業が容易である。
【0037】
さらに、充填空間Kaに熱膨張性耐火充填材20を充填していくと、連通孔16から漏出した熱膨張性耐火充填材20が貫通孔Wbの内周面に接着する。このため、熱膨張性耐火充填材20の壁材Waへの接着により各受け具本体11の貫通孔Wbからの移動や抜け出しが防止される。その結果、電線管Pの周囲の充填空間Kaに熱膨張性耐火充填材20が均等に充填される。
【0038】
このように構成された中空壁Wの一方の壁表面Wc側で火災等が発生すると、電線管Pやその他のものの燃焼により煙が発生する。このとき、貫通孔Wbは、熱膨張性耐火充填材20により閉塞されているため、貫通孔Wbが煙の経路となることが防止され、中空部T内や他方の壁表面Wc側へ煙が伝わる不都合がなくなる。
【0039】
さらに、電線管Pが燃焼し、火災等や燃焼により発生した熱により熱膨張性耐火充填材20が加熱される。すると、熱膨張性耐火充填材20が貫通孔Wbの径方向及び軸方向に向けて膨張し、電線管Pを押し潰しながら貫通孔Wbを密封閉鎖する。その結果、電線管Pの外周面と貫通孔Wbの内周面との間が熱、煙の経路となり、中空部T及び他方の壁表面Wc側へ熱、煙が伝わる不都合がなくなる。
【0040】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)挿通された電線管Pを取り囲む複数の受け部12aを薄板状に形成するとともに、隣り合う受け部12aの側辺14同士が互いに重合するように配置した。受け部12aの基端を中心として、各受け部12a同士の間隔が電線管Pに向かうに連れて広がってしまったとしても、電線管Pを支持した状態で、隣り合う受け部12aの側辺14同士が重合していることで、受け部12a同士の間に隙間ができ難い。これにより、電線管Pを支持した状態であっても、隣り合う受け部12a同士の隙間から熱膨張性耐火充填材20の垂れ落ちを抑制したり、隙間から埃が抜け落ちることを抑制したりすることができる。
【0041】
(2)受け部12aの側辺14同士を重合させた状態で電線管Pが支持されるため、複数の受け部12aでの剛性が向上する。このため、電線管Pを支持する受け部12aが撓み難くなり、その受け部12aに支持される電線管Pを撓み難くすることが可能となる。
【0042】
(3)充填材受け部12に延設部15を立設したことで、充填材受け部12が延設部15によって支持されるため、貫通孔Wbの深さ方向において、充填材受け部12を容易に挿入することができるとともに、充填材受け部12の挿入位置を調節することが可能となる。
【0043】
(4)薄板状に形成され、先端側に電線管Pが挿通される挿通部Sを構成するように電線管Pを取り囲む複数の受け部12aを、隣り合う受け部12aの側辺14が互いに重合するように配置した。受け部12aの基端を中心として、各受け部12a同士の間隔が電線管Pに向かうに連れて広がってしまったとしても、電線管Pを支持した状態で、隣り合う受け部12aの側辺14同士が重合していることで、受け部12a同士の間に隙間ができ難い。これにより電線管Pの周囲を塞ぐ受け部12a同士の隙間を小さくすることができる。
【0044】
(5)連通孔16を形成したことで、充填材受け具10を貫通孔Wbに配置したとき、連通孔16が壁材Waの厚み内に位置していることになる。このため、充填材受け具10の充填空間Kaに充填された熱膨張性耐火充填材20を、連通孔16を介して貫通孔Wbの内周面に接着させることができる。よって、充填材受け具10が貫通孔Wbから抜け出ることを防止することができる。しかも、連通孔16から熱膨張性耐火充填材20が中空部Tに垂れ落ちることを防止することができる。
【0045】
(6)フランジ17を形成したことで、フランジ17が貫通孔Wb外縁の壁表面Wcに係止する。このため、充填材受け具10が過剰に貫通孔Wb内に配置されてしまうことを防止することができる。また、フランジ17が貫通孔Wbの外縁の壁表面Wcに係止するので、貫通孔Wb内における充填材受け部12の挿入位置を調整することも可能となる。
【0046】
(7)中空壁Wにおける貫通孔Wbの耐火構造において、貫通孔Wb内に充填材受け具10を配置した。充填材受け具10は、中空部T側に受け部12aを備えている。そして、充填空間Kaに充填された熱膨張性耐火充填材20は、充填材受け具10の受け部12aによって、壁材Waの厚み方向で壁表面Wcより中空部T側で受け止められる。このため、受け部12aによって、中空壁Wの中空部Tに熱膨張性耐火充填材20が垂れ落ちることを防止することができる。また、受け部12aが熱膨張性耐火充填材20を受け止めるため、充填空間Kaに熱膨張性耐火充填材20を充填するとき、熱膨張性耐火充填材20の垂れ落ちを考慮せずに充填作業を行うことができ、熱膨張性耐火充填材20の充填作業を簡単に行うことができる。
【0047】
(8)充填材受け具10を貫通孔Wbに配置したとき、受け部12aは壁材Waの壁裏面Wdを越えて中空部Tに配置される。このため、受け部12aが壁材Waの厚み内に位置する場合と比べると、充填空間Kaへの熱膨張性耐火充填材20の充填量を多くすることができ、耐火機能を高めることができる。さらには、中空壁Wの壁材Waの厚みが薄い場合は、受け部12aを中空部Tに位置させることで必要量の熱膨張性耐火充填材20を確保することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、貫通部閉塞具をケーブルブッシングに具体化した第2の実施形態を図面にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0049】
図3(a)に示すように、ケーブルブッシング30は、環状に形成されている。そして、ケーブルブッシング30には、対象物(例えば、配線ボックスB)に形成された貫通孔Baに取着されるフランジ状の取着部31が、ケーブルブッシング30の外周面全周に亘って形成されている。また、取着部31の内周縁からは略扇形状の薄板状をなす複数の舌片32が延設され、環状に配置されている。舌片32は、舌片32が起立した状態でゴム弾性を有する材料で射出成形され、後工程で寝かした状態(
図3(a)の状態)とされる。舌片32を寝かした状態においては、隣り合う舌片32は、互いに重合するように配置されている。より詳しくは、隣り合う舌片32の側辺32a同士が互いに重合している。また、複数の舌片32を環状に配置することで、ケーブルブッシング30の略中央、すなわち、舌片32の先端側には、電線管Pを挿通可能な挿通部Sが形成されている。
【0050】
そして、
図3(b)に示すように、取着部31に対して配線ボックスBに形成された貫通孔Baの縁部を引っ掛けることで、ケーブルブッシング30が貫通孔Baに取り付けられる。そして、電線管Pが挿通部Sを介してケーブルブッシング30内に挿通されると、舌片32が起立するように撓み変形するも、側辺32aの重合箇所が隣り合う舌片32同士の間を大きく開放することなく塞ぐため、電線管P挿通時における電線管P周りの隙間を小さく保つことが可能となる。さらに、舌片32を撓み変形させた状態であっても、舌片32の側辺32aの重合状態を維持させることで、各舌片32が互いに撓み変形を抑制し合って、電線管Pを挿通部S(ケーブルブッシング30の略中央)に維持させることも可能となる。
【0051】
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1),(2),(4)と同様の記載に加え、以下のような効果を得ることができる。
(9)薄板状に形成され、先端側に電線管Pが挿通される挿通部Sを構成するように電線管Pを取り囲む複数の舌片32を、隣り合う舌片32の側辺32aが互いに重合するように配置した。舌片32の基端を中心として、各舌片32同士の間隔が電線管Pに向かうに連れて広がってしまったとしても、電線管Pを支持した状態で、隣り合う舌片32の側辺32a同士が重合していることで、舌片32同士の間に隙間ができ難い。これにより電線管Pの周囲を塞ぐ舌片32同士の隙間を小さくすることができる。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、挿通部形成体を電気配線用ジョイントボックスに具体化した第3の実施形態を図面にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0053】
図4(a)に示すように、ジョイントボックス40は、有蓋円筒状に形成され、中空箱状に形成されたボックス本体41を有する。ボックス本体41の内部には、結線束Kが収容可能な空間が形成されている。そして、ボックス本体41の開口41aには、略扇形状の薄板状をなす複数の舌片42が、開口周縁から延設されている。舌片42は、開口41aを開放した状態でボックス本体41に一体成形されている。
【0054】
次に、
図4(b)に従って、ジョイントボックス40の組み立て方法について説明する。
ボックス本体41の内部に結線束Kを収容させる場合、まず、開口41aを閉塞するように、舌片42を該舌片42の基端から折り曲げる。この状態では、折り曲げ後の舌片42が、開口41aの略全体を閉塞するとともに、隣り合う舌片42の側辺42a同士は重合した状態となっている。また、複数の舌片42を折り曲げることで、ジョイントボックス40の略中央、すなわち、舌片42の先端側には、結線束Kを挿通可能な挿通部Sが形成されている。
【0055】
そして、
図4(c)に示すように、結線束Kが挿通部Sを介してジョイントボックス40内に挿通されると、結線束Kが舌片42を撓ませながら押し込まれて、ボックス本体41内に収容される。このとき、各舌片42の先端側は、隣り合う舌片42と互いに離れるように撓むものの、結線束Kが押し込まれる前に重合していた箇所が、隣り合う舌片42の間を閉塞するように位置するため、各舌片42間の隙間を小さく保つことが可能となる。
【0056】
上記第3の実施形態によれば、第1の実施形態の(1),(2),(4)と同様の記載に加え、以下のような効果を得ることができる。
(10)薄板状に形成され、先端側に電線管Pが挿通される挿通部Sを構成するように結線束Kを取り囲む複数の舌片42を、隣り合う舌片42の側辺42aが互いに重合するように配置した。舌片42の基端を中心として、各舌片42同士の間隔が結線束Kに向かうに連れて広がってしまったとしても、結線束Kを支持した状態で、隣り合う舌片42の側辺42a同士が重合していることで、舌片42同士の間に隙間ができ難い。これにより結線束Kの周囲を塞ぐ舌片42同士の隙間を小さくすることができる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○第1の実施形態において、充填材受け具は、円筒状に成形されていなくても良い。例えば、
図5に示すように、充填材受け具50は、帯状に形成された合成樹脂材料製の受け具本体51を有している。このため、充填材受け具50は、帯状から環状に屈曲変形可能である。また、受け具本体51の長手方向の一端には、直線状の基部53が形成されている。そして、略三角形状をなす薄板状の受け部52aが、その底辺を基端として基部53の長手方向の一端において、隣り合う受け部52aの対向縁の間に隙間54を空けて複数立設されている。また、基部53において、二片の受け部52aの間に位置する隙間54の延長線上、より詳しくは、受け部52aの並び方向両側であって隣り合う受け部52aを跨がない位置には、空間Xを空けて細幅状の延設部55が立設されている。そして、同一の受け部52aの両端部において隣り合う延設部55の間には、四角形状をなす連通孔56が受け具本体51を厚み方向に貫通して形成されている。さらに、受け具本体51の長手方向の他端に、受け具本体51の長手方向に沿ってフランジ57が突設されている。そして、この充填材受け具50を、長手方向に亘って捲回し、対向する端部間に位置する延設部55同士を合わせると、充填材受け具50が円筒状をなすことになる。なお、円筒状をなした充填材受け具50の受け部52aの大きさは、隣り合う各受け部52aの側辺52b同士が互いに重合するような大きさに設定されている。このように充填材受け具50を帯状に形成したことで、充填材受け具50から必要長を切り出し、切り出し後の充填材受け具50を環状に形成するだけで、貫通孔Wbの孔径に合った充填材受け具50を形成することができるため、貫通孔Wbの孔径に合わせた加工が行い易い。
【0058】
○第3の実施形態において、ボックス本体41と舌片42を別体に成形して組み付けても良い。
○第1の実施形態において、充填材受け具自体を熱膨張性材料で形成しても良い。
【0059】
○第1の実施形態における充填材は、耐火性を有する発泡性材料であっても良い。また、コーキング材であっても良い。
○第1の実施形態では、フランジを形成しなくても良い。また、フランジを受け具本体の周方向において断続的に形成しても良い。
【0060】
○第1の実施形態では、充填材受け具に連通孔を形成し、連通孔を介して熱膨張性耐火充填材20を壁材Waに密着させたが、連通孔は無くても良い。
○第1の実施形態では、延設部を形成しなくても良い。例えば、円形状の充填材受け部を工具などで貫通孔Wb内に押し込むようにして、貫通孔Wb内に充填材受け部を配置させても良い。
【0061】
○第1の実施形態では、円筒状の受け具本体11を二分し、二分した受け具本体を組み付けて形成されるものに具体化しても良い。特に、受け具本体11の外径を縮径変形可能でありながら、原位置に戻ろうとする弾性力によって貫通孔Wbの内面に接触するような材質で受け具本体11を形成することが好ましい。これによれば、貫通孔Wbに電線管Pを挿通した後でも、充填材受け具10を二つの受け具本体11に分割することで、受け具本体11を貫通孔Wbに簡単に挿入することができる。したがって、充填材受け具10を簡単に貫通孔Wbに設けることができる。
【0062】
○第1の実施形態では、充填材受け具10を貫通孔Wbに配置したとき、受け部12aが中空部Tに位置するように充填材受け具10を形成したが、受け部12aは壁材Waの厚み内に位置していても良い。
【0063】
○第1,第2の実施形態では、配線・配管材を電線管Pに具体化したが、配線・配管材はケーブルやその他の管材に具体化しても良い。
○各実施形態における舌片は、元に戻ろうとする復帰力を有する弾性変形可能な舌片としても良い。
【0064】
○各実施形態では、舌片を弾性変形可能な扇形状又は三角形状に形成したが、舌片は弾性変形しないものであっても良く、例えば、舌片は、半円状や台形をなす底板であっても良い。また、舌片の先端側は、挿通する配線・配管材の形状に合わせて切除しても良い。
【0065】
○各実施形態では、全ての舌片が重合していなくても良く、少なくとも二片の舌片が重合していれば良い。
○第1の実施形態では、受け部12aの両側辺14のうち一方が電線管Pの挿通方向の一側になり、受け部12aの両側辺14のうち他方が他側となるように交互に重合しているが、両側辺14がともに一側又は他側となるように各受け部12aを重合させても良い。
【0066】
○第1の実施形態では、電線管Pの挿通状態であっても受け部12aの側辺14は基端から先端にかけて重合しているが、全体が重合しなくても良い。すなわち、電線管Pの挿通前状態において、隣り合う受け部12aの先端同士が互いに重合し合っていれば、電線管Pの挿通前に受け部12aが重合していないものに比べて、先端側の隣り合う受け部12a同士の間の隙間を小さくすることができる。
【0067】
○各実施形態において、隣り合う舌片の重合する箇所は、舌片の側辺部の一部であっても全部であっても良い。例えば、挿通される電線管Pの径が小さく、舌片の基端側から先端側の長さの半分よりも小さい量で撓み変形する場合、舌片の基端側から先端側への延出長の半分から先端側にかけて部分的に重合させる程度で足りることになる。一方、挿通される電線管Pの径が大きく、舌片の基端側から先端側の長さの半分よりも大きい量で撓み変形する場合、特に、舌片の基端側から先端側への延出長の半分から基端側にかけて重合させる必要がある。なお、舌片の側辺部の長さ方向全体を重合させた場合は、様々な径の電線管Pに対応させることが可能となる。
【0068】
○各実施形態において、舌片の側辺部は直線状でなく、曲線状に形成しても良い。また、隣り合う舌片の重合箇所は、側辺部の長さ方向における先端側、基端側、又は中央付近に偏っていても良い。また、側辺部の長さ方向全体に亘って重合していても良い。つまり、挿通する電線管Pの径によって、隙間が生じ易い箇所を重合させておくことが望ましい。特に、舌片の側辺部の長さ方向全体を重合させた場合には、様々な径の電線管Pに対応させることが可能となる。なお、舌片の基端側から先端側への延出長の半分から先端側にかけて部分的に重合していれば、隙間の生じ易い先端側の舌片同士の隙間を小さくすることができる。
【0069】
○第1の実施形態では、充填材受け具の受け部によって充填材受け部を形成したが、これに限らない。例えば、充填材受け具10は用いず、壁材Waの厚み方向における壁表面Wcより中空部T側(例えば、壁材Waの壁裏面)に複数の弾性片を取付けるとともに、これら弾性片によって充填材受け部を形成しても良い。
【0070】
○第1の実施形態では、熱膨張性耐火充填材20を貫通孔Wbの内周面に接着させて充填材受け具10を壁材Waに固定したが、その他の方法で充填材受け具10を壁材Waに固定しても良い。例えば、フランジ17と壁材Waの壁表面Wcとを、粘着テープ又は接着剤によって固着して充填材受け具10を壁材Waに固定してもよい。又はフランジ17の表面から壁材Waの壁表面Wcにかけて難燃性のパテを塗り、このパテ内にフランジ17を埋め込んで充填材受け具10を壁材Waに固定しても良い。
【0071】
○第1の実施形態では、両貫通孔Wbに充填材受け具10を設けて耐火構造を形成したがこれに限らない。
○第1の実施形態では、貫通孔Wbを円孔状に形成したが、貫通孔Wbは四角孔状等の多角孔状であっても良いし、楕円孔状であっても良い。
【0072】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記充填材を外方に臨ませる連通孔を形成すべく、前記充填材受け部には細幅状の前記延設部が複数設けられている。
【0073】
(ロ)前記延設部において、前記充填材受け部と反対側の端部には、前記貫通部の外縁に掛止する環状の掛止部が形成されている。