(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲート端子と前記コンデンサとの間に一端が接続され、他端が前記第1のゲートに接続される第1の抵抗素子を、さらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体装置。
前記ゲート端子に接続される第2のアノードと、前記第1のゲートに接続される第2のカソードを有し、前記ゲート端子と前記第1のゲートとの間に、前記第1の抵抗素子と並列に設けられる第2のダイオードを、さらに備えることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
前記ゲート端子と、前記コンデンサおよび前記第1のゲートとの間に設けられる第2の抵抗素子を、さらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
前記第1のソースに接続される第3のアノードと、前記第1のドレインおよび前記第2のソースに接続される第3のカソードを有し、順方向降下電圧が、前記ノーマリーオフトランジスタの寄生ボディダイオードの順方向降下電圧よりも低いショットキーバリアダイオードを、さらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
前記第1のソースに接続される第4のアノードと、前記第1のドレインおよび前記第2のソースに接続される第4のカソードを有し、ツェナー電圧が前記ノーマリーオントランジスタの前記第2のソースと前記第2のゲート間の耐圧よりも低く、前記ツェナー電圧が前記ノーマリーオフトランジスタのアバランシェ降伏電圧よりも低いツェナーダイオードを、さらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項8いずれか一項記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0011】
また、本明細書中、半導体装置とは、ディスクリート半導体等の複数の素子が組み合わされたパワーモジュール、または、ディスクリート半導体等の複数の素子にこれらの素子を駆動する駆動回路や自己保護機能を組み込んだインテリジェントパワーモジュール、あるいは、パワーモジュールやインテリジェントパワーモジュールを備えたシステム全体を包含する概念である。
【0012】
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ソース端子と、ドレイン端子と、ゲート端子を備える。そして、ソース端子に接続される第1のソース、第1のドレイン、ゲート端子に接続される第1のゲートを有するノーマリーオフトランジスタと、第1のドレインに接続される第2のソース、ドレイン端子に接続される第2のドレイン、第2のゲートを有するノーマリーオントランジスタと、ゲート端子と第2のゲート間に設けられるコンデンサと、コンデンサと第2のゲート間に接続される第1のアノードと、第1のソースに接続される第1のカソードを有する第1のダイオードと、を備える。
【0013】
図1は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、例えば、定格電圧が600Vや1200Vのパワーモジュールである。
【0014】
本実施形態の半導体装置は、ノーマリーオフトランジスタ10と、ノーマリーオントランジスタ20が直列接続されてパワーモジュールを構成する。ノーマリーオフトランジスタ10は、例えば、Si(シリコン)の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。また、ノーマリーオントランジスタ20は、例えば、GaN(窒化ガリウム)系のHEMTである。ノーマリーオントランジスタ20は、ゲート絶縁膜を備える。
【0015】
なお、ノーマリーオフトランジスタ10は、図示しない寄生ボディダイオードを備えている。
【0016】
ノーマリーオフトランジスタ10は、ノーマリーオントランジスタ20に比較して、素子耐圧が低い。ノーマリーオフトランジスタ10の素子耐圧は、例えば、10〜30Vである。また、ノーマリーオントランジスタ20の素子耐圧は、例えば、600〜1200Vである。
【0017】
半導体装置は、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備える。そして、ノーマリーオントランジスタ10は、ソース端子100に接続される第1のソース11と、第1のドレイン12、ゲート端子300に接続される第1のゲート13を有する。また、ノーマリーオントランジスタ20は、第1のドレイン12に接続される第2のソース21、ドレイン端子200に接続される第2のドレイン22、第2のゲート23を有する。
【0018】
半導体装置は、ゲート端子300と第2のゲート23間に設けられるコンデンサ40を備える。また、コンデンサ40と第2のゲート23間に接続される第1のアノード31と、第1のソース11に接続される第1のカソード32を有する第1のダイオード30を備える。第1のダイオード30は、例えば、PiNダイオードまたはショットキーバリアダイオードである。
【0019】
本実施形態の半導体装置は、上記構成により、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備えるノーマリーオフトランジスタとして機能する。以下、本実施形態の半導体装置の動作について説明する。
【0020】
まず、オン状態においては、ソース端子100には0V、ドレイン端子200には正の電圧、例えば、オン抵抗とドレイン電流の積が印加される。そして、ゲート端子300には正の電圧、例えば、10Vが印加される。
【0021】
この時、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のゲート13には、正の電圧が印加される。このため、ノーマリーオフトランジスタ10はオンする。
【0022】
一方、ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23は、第1のダイオード30を介してソース端子100にクランプされている。したがって、第2のゲート23は0V近傍の正の電圧、より正確には第1のダイオード30の順方向降下電圧(Vf)となる。第2のソース21は、ノーマリーオフトランジスタ10がオンしていることにより、0V近傍の電位となる。このため、ノーマリーオントランジスタ20もオンすることになる。よって、ソース端子100とドレイン端子200間に、オン電流が流れることになる。
【0023】
次に、半導体装置がオン状態からオフ状態となる場合を考える。この場合、ソース端子100とドレイン端子200の印加電圧は変化せず、ゲート端子300の印加電圧が正の電圧から0V、例えば、10Vから0Vに降下する。
【0024】
まず、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のゲート13には、0Vが印加される。このため、ノーマリーオフトランジスタ10はオフする。
【0025】
一方、ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23は、コンデンサ40が存在することから、ゲート端子300の振幅分だけ、電位が低下する。例えば、第1のダイオード30の順方向降下電圧(Vf)からゲート端子300の振幅分、例えば、10V低下し、(Vf−10)Vの負電位となる。そして、第2のゲート23がノーマリーオントランジスタ20の閾値以下となることにより、ノーマリーオントランジスタ20はオフする。よって、ソース端子100とドレイン端子200間の電流が遮断される。
【0026】
本実施形態の半導体装置は、以上のように、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備えるノーマリーオフトランジスタとして機能する。
【0027】
なお、本実施形態の半導体装置では、オン状態からオフ状態に移行する際に、ノーマリーオフトランジスタ10よりもノーマリーオントランジスタ20が先にオフするように構成される。ノーマリーオントランジスタ20が先にオフすることにより、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20との間、すなわち、第1のドレイン12および第2のソース21(以下、接続部とも称する)に過電圧が生じることが抑制される。
【0028】
なぜなら、ノーマリーオントランジスタ20が先にオフすることで、例え接続部の電位が過渡電流により上昇したとしても、オンしているノーマリーオフトランジスタ10により、ソース端子100に電荷を逃すことができるからである。
【0029】
図2は、比較形態の半導体装置の回路図である。比較形態の半導体装置は、ノーマリーオフトランジスタ10と、ノーマリーオントランジスタ20がカスコード接続された回路構成である。ノーマリーオフトランジスタ10と、ノーマリーオントランジスタ20は実施形態と同様のトランジスタである。
【0030】
この半導体装置は、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備える。そして、ノーマリーオントランジスタ10は、ソース端子100に接続される第1のソース11と、第1のドレイン12、ゲート端子300に接続される第1のゲート13を有する。また、ノーマリーオントランジスタ20は、第1のドレイン12に接続される第2のソース21、ドレイン端子200に接続される第2のドレイン22、ソース端子100に接続される第2のゲート23を有する。
【0031】
比較形態の半導体装置も、上記構成により、ソース端子100と、ドレイン端子200と、ゲート端子300を備えるノーマリーオフトランジスタとして機能する。
【0032】
比較形態の回路構成では、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20の接続部、すなわち、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のドレイン12、または、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21に、デバイス動作中に過電圧が生じるおそれがある。過電圧は、例えば、半導体装置がオン状態からオフ状態に移行する際に過渡電流が発生し、ソース端子100とドレイン端子200との間に印加されている高電圧が、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20の寄生容量の比で分圧されることによって生じ得る。
【0033】
比較形態の場合には、オン状態からオフ状態に移行する時、まず、ノーマリーオフトランジスタ10がオフした後、接続部の電圧が上昇し、0Vにクランプされている第2のゲート23と第2のソース21間の電位差が閾値に達した時にノーマリーオントランジスタ20がオフする。したがって、接続部の電位が過渡電流により上昇すると、電荷を逃がす経路がないため接続部の過電圧が生じることになる。
【0034】
過電圧が生じると、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と、第2のゲート23との間に高電圧が印加される。この過電圧が、ゲート絶縁膜の耐圧以上となると、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流が増大する、あるいは、破壊されるおそれがある。ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流が増大する、あるいは、ゲート絶縁膜が破壊されると半導体装置が動作不良となる。このため、半導体装置の信頼性が低下する。
【0035】
また、ゲート絶縁膜に問題が生じない場合であっても、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と、第2のゲート23との間に高電圧が印加されることで、第2のソース21側に電荷がトラップされる。これにより、電流コラプスが生じるおそれがある。電流コラプスが生じるとオン電流が低下するため動作不良となる。したがって、半導体装置の信頼性がやはり低下する。
【0036】
本実施形態では、上述のように、例え接続部の電位が過渡電流により上昇したとしても、オンしているノーマリーオフトランジスタ10により、ソース端子100に電荷を逃すことができる。このため、接続部の過電圧が原理的に生じない。したがって、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流の増大、ゲート絶縁膜の破壊が防止される。また、電流コラプスも防止される。よって、半導体装置の信頼性が向上する。
【0037】
図3は、本実施形態の半導体装置の効果を示す図である。本実施形態と比較形態の回路で、オン−オフ動作を繰り返した際の接続部の電圧変化をシミュレーションした結果である。
【0038】
実線が実施形態の場合、点線が比較形態の場合である。比較形態ではオフ時に接続部に高い過電圧が生じるのに対し、実施形態では過電圧が効果的に抑制されていることがわかる。
【0039】
もっとも、本実施形態では、半導体装置のオフ状態において、ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23には直接電圧が印加されていない。したがって、ゲートリーク電流やダイオード30のリーク電流等により、第2のゲート23の電圧が、負電圧から徐々に0Vに向けて上昇するおそれがある。
【0040】
第2のゲート23の電圧が上昇すると、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と第2のドレイン間のリーク電流も上昇する。ノーマリーオフトランジスタ10はオフのままであるため、第2のソース21(第1のドレイン12、接続部)の電圧が上昇する。そうすると、第2のソース21と第2のゲート間の電位差が大きくなり、ノーマリーオントランジスタ20がオフして、第2のソース21と第2のドレイン間のリーク電流が遮断される。よって、半導体装置のオフ状態が保たれることになる。
【0041】
本実施形態において、ノーマリーオフトランジスタ10のゲート電極材料のシート抵抗よりも、ノーマリーオントランジスタ20のシート抵抗が低いことが望ましい。オン状態からオフ状態に移行する際に、ノーマリーオフトランジスタ10よりもノーマリーオントランジスタ20が先にオフする構成とすることが容易だからである。
【0042】
また、オフ状態からオン状態に移行する際に、ノーマリーオントランジスタ20よりもノーマリーオフトランジスタ10が先にオンする構成とすることが望ましい。仮に、ノーマリーオントランジスタ20が先にオンすると、第1のドレイン12(第2のソース21、接続部)に高電圧がかかり、ノーマリーオフトランジスタ10の特性が劣化するおそれがあるからである。
【0043】
また、コンデンサ40の容量は、ノーマリーオントランジスタ20の入力容量の10倍以上100倍以下であることが望ましい。ノーマリーオントランジスタ20の第2のゲート23に印加される負電圧は、コンデンサ40の容量とノーマリーオントランジスタ20の入力容量の比によって決まる。このため、コンデンサ40の容量が大きい方が望ましい。
【0044】
コンデンサ40の容量が、ノーマリーオントランジスタ20の入力容量の10倍以上あれば、ゲート端子300に印加される振幅のうち9割以上を印加することが可能である。また、100倍を超えるとコンデンサが大きくなりすぎるため半導体装置のサイズの増大が懸念される。
【0045】
なお、ノーマリーオントランジスタ20の入力容量とは、第2のゲート23と、第2のソース21および第2のドレイン22間の容量である。入力容量は、第2のソース21と第2のドレイン22とのバイアスが0V、かつ、ピンチオフ状態の値とする。
【0046】
また、本実施形態では、比較形態と異なり、特にオンからオフへのスイッチング速度は、スイチング速度の速いGaN系HEMTのノーマリーオントランジスタ20で規定される。したがって、スイチング速度の速い半導体装置が実現可能である。
【0047】
また、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧を、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧よりも低くすることが望ましい。これにより、ノーマリーオフトランジスタのオフ時の第1のソースと第1のドレイン間の耐圧を、ノーマリーオントランジスタの第2のソースと第2のゲート間の耐圧よりも低くする。
【0048】
そうすると、例えば、サージ等により接続部に過電圧が生じた場合であっても、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏が生じることにより、接続部の電荷を逃がすことができる。したがって、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と、第2のゲート23との間に印加される電圧を、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧より低くすることが可能となる。したがって、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流の増大、ゲート絶縁膜の破壊が防止される。また、電流コラプスも防止される。よって、半導体装置の信頼性が向上する。
【0049】
なお、一般に、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧は30Vを超える。したがって、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧は30V以下であることが望ましい。
【0050】
また、アバランシェ降伏電圧は、ノーマリーオントランジスタ20の閾値(Vth)の絶対値よりも十分高いことが望ましい。ノーマリーオントランジスタ20を確実にオフできるようにするためである。この観点からノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧は、ノーマリーオントランジスタ20の閾値(Vth)の絶対値+5V以上あることが望ましい。仮に、Vth=−10Vの場合、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧は、15V以上であることが望ましい。
【0051】
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、複数の第1のダイオードが直列接続される以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0052】
図4は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、2個の第1のダイオード30が直列接続されている。
【0053】
本実施形態によれば、半導体装置のオン状態では、第1のダイオード30の順方向降下電圧(Vf)×2の電圧が第2のゲート23に印加されることになる。したがって、ノーマリーオントランジスタ20のオーバードライブが可能となりオン電流を増加させることが可能である。
【0054】
また、半導体装置のオン状態で、ノーマリーオフトランジスタ10のドレイン電流×オン抵抗分、第2のソース21の電圧が持ち上がったとしても、第1のダイオード30の順方向降下電圧(Vf)×2の電圧が第2のゲート23に印加されることで、導通損失を抑制することが可能となる。
【0055】
なお、ここでは2個の第1のダイオード30を直列接続する場合を例に説明したが、直列接続される第1のダイオード30の数は、3個以上であってもかまわない。n(nは2以上の整数)個の場合、第1のダイオード30の順方向降下電圧(Vf)×nの電圧が第2のゲート23に印加されることになる。
【0056】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、オン電流の増大、または、導通損失の低減を実現することが可能となる。
【0057】
(第3の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ゲート端子とコンデンサとの間に一端が接続され、他端が第1のゲートに接続される第1の抵抗素子を、さらに備えること以外は第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0058】
図5は、本実施形態の半導体装置の回路図である。
【0059】
本実施形態の半導体装置は、ゲート端子300とコンデンサ40との間に一端が接続され、他端が第1のゲート13に接続される第1の抵抗素子50を備えている。
【0060】
接続部の過電圧抑制の観点から、オン状態からオフ状態に移行する際に、ノーマリーオフトランジスタ10よりもノーマリーオントランジスタ20が先にオフする。第1の抵抗素子50を設けることにより、ノーマリーオフトランジスタ10のオフタイミングと、ノーマリーオントランジスタ20のオフタイミングを所望の時間だけ遅延させることができる。
【0061】
第1の抵抗素子50の抵抗は、1Ω以上100Ω以下であることが望ましい。この範囲を下回ると有意な遅延時間とならないおそれがある。この範囲を上回ると遅延時間が長くなりすぎ、半導体装置のスイッチング速度が低下するため望ましくない。
【0062】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20のオフタイミングを調整することで、安定した動作が可能となる。
【0063】
(第4の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ゲート端子に接続される第2のアノードと、第1のゲートに接続される第2のカソードを有し、ゲート端子と第1のゲートとの間に、第1の抵抗素子と並列に設けられる第2のダイオードを、さらに備えること以外は第3の実施形態と同様である。したがって、第1および第3の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0064】
図6は、本実施形態の半導体装置の回路図である。
【0065】
本実施形態の半導体装置は、ゲート端子300と第1のゲート13との間に、第2のダイオード60が、第1の抵抗素子50と並列に設けられる。第2のダイオード60の第2のアノード61はゲート端子300に接続され、第2のカソード62は、第1のゲート13に接続される。第2のダイオード60は、例えば、PiNダイオードまたはショットキーバリアダイオードである。
【0066】
オフ状態からオン状態に移行する際に、ノーマリーオントランジスタ20よりもノーマリーオフトランジスタ10が先にオンすることが望ましい。仮に、ノーマリーオントランジスタ20が先にオンすると、第1のドレイン12(第2のソース21、接続部)に高電圧がかかり、ノーマリーオフトランジスタ10の特性が劣化するおそれがあるからである。
【0067】
本実施形態によれば、オフ状態からオン状態に移行する際には、電流が第2のダイオード60を流れる。このため、第1の抵抗素子50の影響を受けないため、第1のゲート13が速やかに充電できる。したがって、ノーマリーオフトランジスタ10のオンタイミングが、第2のダイオード60がない場合に比べて早くなる。よって、オフ状態からオン状態に移行する際に、ノーマリーオントランジスタ20よりもノーマリーオフトランジスタ10を確実に先にオンさせることが可能となる。
【0068】
本実施形態によれば、第3の実施形態の効果に加え、ノーマリーオフトランジスタ10に対する保護が強化され、さらに信頼性が向上する。
【0069】
(第5の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ゲート端子と、コンデンサおよび第1のゲートとの間に設けられる第2の抵抗素子を、さらに備えること以外は第4の実施形態と同様である。したがって、第4の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0070】
図7は、本実施形態の半導体装置の回路図である。
【0071】
本実施形態の半導体装置は、ゲート端子300と、コンデンサ40および第1のゲート13との間に設けられる第2の抵抗素子70を備えている。
【0072】
パワーエレクトロニクスの回路設計においては、ノイズ対策のためにトランジスタの動作速度の調整が求められる場合がある。本実施形態では、第2の抵抗素子70を設けることで、ゲート端子300に印加されるゲート電圧の、第1のゲート13、第2のゲート23への伝搬を遅延させることができる。したがって、半導体装置の動作速度(スイッチング速度)を調整することが可能となる。
【0073】
なお、ここでは、第1の抵抗素子50や第2のダイオード60を備える回路を例に説明したが、第1の抵抗素子50や第2のダイオード60のない回路構成とすることも可能である。
【0074】
本実施形態によれば、第4の実施形態の効果に加え、半導体装置の動作速度(スイッチング速度)を調整することが可能となる。
【0075】
(第6の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、コンデンサと第2のゲートとの間に設けられる第3の抵抗素子を、さらに備えること以外は第4の実施形態と同様である。したがって、第4の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0076】
図8は、本実施形態の半導体装置の回路図である。
【0077】
本実施形態の半導体装置は、コンデンサ40と第2のゲート23との間に、第3の抵抗素子55を備えている。
【0078】
上述のように、パワーエレクトロニクスの回路設計においては、ノイズ対策のためにトランジスタの動作速度の調整が求められる場合がある。本実施形態では、第3の抵抗素子55を設けることで、ゲート端子300に印加されるゲート電圧の第2のゲート23への伝搬を遅延させることができる。ゲート電圧の第1のゲート13への伝搬は、第1の抵抗素子50の抵抗で独立に調整することが可能である。したがって、半導体装置の動作速度(スイッチング速度)を調整することが可能となる。
【0079】
本実施形態によれば、第4の実施形態の効果に加え、半導体装置の動作速度(スイッチング速度)を調整することが可能となる。
【0080】
(第7の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1のソースに接続される第3のアノードと、第1のドレインおよび第2のソースに接続される第3のカソードを有し、順方向降下電圧が、ノーマリーオフトランジスタの寄生ボディダイオードの順方向降下電圧よりも低いショットキーバリアダイオードを、さらに備えること以外は第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0081】
図9は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、ノーマリーオフトランジスタ10に対して並列にショットキーバリアダイオード80が設けられる。
【0082】
ショットキーバリアダイオード80は、第3のアノード81と第3のカソード82とを備える。そして、第3のアノード81は第1のソース11に接続される。また、第3のカソード82は、第1のドレイン12および第2のソース21に接続される。
【0083】
ショットキーバリアダイオード80の順方向降下電圧(Vf)は、ノーマリーオフトランジスタの寄生ボディダイオード(図示せず)の順方向降下電圧(Vf)よりも低い。
【0084】
ショットキーバリアダイオード80を設けない場合には、ソース端子100がドレイン端子200に対し正の電圧となる還流モード時に、電流はノーマリーオフトランジスタ10の寄生ボディダイオードを流れる。本実施形態では、ノーマリーオフトランジスタ10の寄生ボディダイオードの順方向降下電圧(Vf)よりも低い順方向降下電圧(Vf)を有するショットキーバリアダイオード80を設ける。これにより、還流モード時に電流はショットキーバリアダイオード80を流れる。
【0085】
ショットキーバリアダイオードは、PiNダイオードと異なり多数キャリアのみを用いて動作する。したがって、PiNダイオードと比較してリカバリー特性に優れる。よって、本実施形態では、第1の実施形態の効果に加え、還流モード時のリカバリー特性を向上させることが可能となる。また、順方向降下電圧(Vf)が小さいため、還流モード時の導通損失やスイッチング損失も低減することが可能である。また、ショットキーバリアダイオード80の寄生容量により、接続部でのサージ等による過電圧の印加が抑制される。また、ショットキーバリアダイオード80のリーク電流によって、接続部から電荷を逃すことできるため、接続部の過電圧の印加が抑制される。したがって、さらに信頼性の向上した半導体装置が実現される。また、ショットキーバリアダイオード80のリーク電流によって、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のドレイン12の電圧上昇も抑制される。よって、安定した動作も実現される。
【0086】
なお、ショットキーバリアダイオードは、アバランシェ保証がないため、ショットキーバリアダイオード80の耐圧は、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧よりも高いことが望ましい。
【0087】
(第8の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1のソースに接続される第4のアノードと、第1のドレインおよび第2のソースに接続される第4のカソードを有し、ツェナー電圧がノーマリーオントランジスタの第2のソースと第2のゲート間の耐圧よりも低く、ツェナー電圧がノーマリーオフトランジスタのアバランシェ降伏電圧よりも低いツェナーダイオードを、さらに備えること以外は第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0088】
図10は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、ノーマリーオフトランジスタ10に対して並列にツェナーダイオード85が設けられる。
【0089】
ツェナーダイオード85は、第4のアノード86と第4のカソード87を有する。第4のアノード86は、第1のソース11に接続される。また、第4のカソード87は、第1のドレイン12および第2のソース21に接続される。
【0090】
ツェナーダイオード85のツェナー電圧が、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧よりも低くなるよう設定される。また、ツェナー電圧は、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜の耐圧より低く設定される。これにより、ノーマリーオフトランジスタ10のオフ時の第1のソース11と第1のドレイン12間の耐圧が、ノーマリーオントランジスタ20の第2のソース21と第2のゲート23間の耐圧よりも低くなる。
【0091】
本実施形態の半導体装置では、ノーマリーオフトランジスタ10とノーマリーオントランジスタ20の接続部にサージ等による過電圧が生じた場合、過電圧がツェナー電圧に達した時点で、電荷がツェナーダイオード85に逃がされ、ソース端子100へと抜ける。したがって、接続部の電圧上昇が抑制され、ノーマリーオントランジスタ20のゲート絶縁膜のリーク電流の増大、ゲート絶縁膜の破壊が防止される。また、電流コラプスも防止される。よって、半導体装置の信頼性が向上する。
【0092】
ツェナーダイオード85のツェナー電圧は、ノーマリーオフトランジスタ10のアバランシェ降伏電圧よりも精度よく制御できる。したがって、本実施形態の半導体装置では、ツェナーダイオード85を用いることにより、さらに安定して接続部の過電圧を抑制することが可能となる。また、ノーマリーオフトランジスタ10の第1のドレイン12にノイズ等の予期せぬ高電圧が印加された場合であっても、ツェナーダイオード85により電荷を逃がすことができるため、ノーマリーオフトランジスタ10の保護にも寄与する。
【0093】
(第9の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1、第3、第4、第5、第7、第8の実施形態の構成をすべて備える。したがって、第1、第3、第4、第5、第7、第8の実施形態と重複する内容の記載は省略する。
【0094】
図11は、本実施形態の半導体装置の回路図である。本実施形態の半導体装置は、第1、第3、第4、第5、第7、第8の実施形態の構成をすべて備えることにより、これらの実施形態の効果を組み合わせた効果が実現される。
【0095】
(第10の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、基板、ソースのリード線、ドレインのリード線、ゲートのリード線を備える。基板上に、ノーマリーオフトランジスタ、ノーマリーオントランジスタ、コンデンサ、第1のダイオードが実装され、ソースのリード線側からドレインのリード線側に向けて、ノーマリーオフトランジスタ、ノーマリーオントランジスタの順に配置され、ソースのリード線と、第1のソースおよび第1のカソードが接続され、ドレインのリード線と、第2のドレインが接続される。
【0096】
本実施形態は、第9の実施形態の回路構成をパワーモジュールとして具体化した形態である。以下、第9の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0097】
図12は、本実施形態の半導体装置の上面模式図である。
【0098】
本実施形態の半導体装置は、基板90、ソースのリード線91、ドレインのリード線92、ゲートのリード線93、を備える。ソースのリード線91がソース端子100、ドレインのリード線92がドレイン端子200、ゲートのリード線93がゲート端子300に対応する。
【0099】
基板90の少なくとも表面には、例えば、金属の導電体95が存在する。基板90上に、ノーマリーオフトランジスタ10、ノーマリーオントランジスタ20、ツェナーダイオード85、ショットキーバリアダイオード80が実装される。ノーマリーオフトランジスタ10、ノーマリーオントランジスタ20、ツェナーダイオード85、ショットキーバリアダイオード80は、例えば、半導体チップであり、例えば、導電性ペーストやハンダにより基板の導電体95上に実装される。
【0100】
また、基板90上に、コンデンサ40、第1のダイオード30、第1の抵抗素子50、第2の抵抗素子70、第2のダイオード60が、ハンダを介して導電体95に実装されている。
【0101】
そして、ソースのリード線91側からドレインのリード線92側に向けて、ショットキーバリアダイオード80、ツェナーダイオード85、ノーマリーオントランジスタ20の順に配置される。また、基板90のソースのリード線91側からドレインのリード線92側に向けて、ノーマリーオフトランジスタ10、ノーマリーオントランジスタ20の順に配置される。
【0102】
そして、ソースのリード線91と、第3のアノード81および第1のソース11が接続され、ドレインのリード線92と、第2のドレイン22が接続される。各接続は、例えば、ワイヤボンディングにより行われる。ワイヤボンディングには、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の材料が用いられる。
【0103】
本実施形態によれば、ソースのリード線91側からドレインのリード線92側に向けて、ノーマリーオフトランジスタ10、ノーマリーオントランジスタ20の順に配置される。これにより、半導体装置のオン電流が流れる経路を短くすることができる。この配置によりオン電流の経路の寄生インダクタンスが極力排除され、導通損失が低減される。
【0104】
また、ソースのリード線91側からドレインのリード線92側に向けて、ショットキーバリアダイオード80、ノーマリーオントランジスタ20の順に配置することにより、還流モード時にソースのリード線91→ショットキーバリアダイオード80→ノーマリーオントランジスタ20→ドレインのリード線92の経路で流れる電流の経路を短くすることができる。したがって、還流モード時の導通損失を低減することが可能となる。
【0105】
また、ショットキーバリアダイオードはリーク電流の温度依存性が大きい。そして、本実施形態の半導体装置における最大の発熱源はGaN系HEMTのノーマリーオントランジスタ20である。したがって、ショットキーバリアダイオード80とノーマリーオントランジスタ20の間に、ツェナーダイオード85を置く配置により、ショットキーバリアダイオード80とノーマリーオントランジスタ20の距離を離すことができる。したがって、ショットキーバリアダイオード80の特性変動を抑制することが可能となる。
【0106】
また、接続部のサージ等の過電圧を抑制するツェナーダイオード85は、ノーマリーオフトランジスタ10に隣接して設けられ、第1のソース11と第1のアノード86とを直接ボンディングする。これにより、接続部から電荷を逃がす経路が短くなり、効率良く過電圧の印加を抑制できる。
【0107】
以上、本実施形態によれば、第9の実施形態の効果に加え、各デバイスを適切に配置、接続することにより、特性に優れた半導体装置を実現できる。
【0108】
なお、ここでは、第1、第3、第4、第5、第7、第8の実施形態の構成をすべて備える場合を例に説明したが、第3、第4、第5、第7、第8の実施形態から、必要な構成を選択して、パッケージ化することが可能である。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換えまたは変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。