特許第5996469号(P5996469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996469
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/36 20060101AFI20160908BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20160908BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20160908BHJP
   B41J 3/60 20060101ALI20160908BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20160908BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20160908BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20160908BHJP
   B41J 13/076 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   B41J2/36 D
   B41J2/32 Z
   B41M5/26 101Z
   B41J3/60
   B41J2/325 A
   B41J21/00 Z
   B65H5/06 B
   B41J13/076
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-70509(P2013-70509)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193544(P2014-193544A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 豊
(72)【発明者】
【氏名】山崎 武志
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−125987(JP,A)
【文献】 特開2012−166345(JP,A)
【文献】 特開2010−228417(JP,A)
【文献】 特開2011−046155(JP,A)
【文献】 特開2008−207447(JP,A)
【文献】 特開2012−56139(JP,A)
【文献】 実開平5−44949(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/36
B41J 2/325
B41J 2/32
B41J 3/60
B41J 13/076
B41J 21/00
B41M 5/382
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して昇華転写方式の記録動作をおこなう記録手段と、
外周方向に突出した突起を有し前記記録媒体の一方の面に当接する突起ローラを用いて、前記記録手段による記録動作の対象となる記録媒体を、当該記録手段による記録位置に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される記録媒体の一方の面において前記突起に接触した第1の領域以外の第2の領域に記録される各画素のうち、前記突起ローラにおける前記突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素について、当該所定の画素の濃度を補正した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成する擬似記録画像データ生成手段と、
前記擬似記録画像データに基づいて前記記録手段を制御する記録制御手段と、
を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記擬似記録画像データ生成手段は、前記所定の画素の濃度を、当該所定の画素の周囲の画素の濃度よりも低くすることにより当該所定の画素の濃度を補正することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記擬似記録画像データ生成手段は、前記所定の画素の濃度を、元の画像データにおける前記所定の画素の濃度よりも所定の割合で低くすることにより前記擬似記録画像データを生成することを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記突起ローラは、当該突起ローラに当接することにより前記記録媒体の一方の面に生じる突起痕の大きさが、前記第2の領域との境界に近い位置ほど小さくなるように設けられた突起を有し、
前記擬似記録画像データ生成手段は、前記第1の領域に記録される各画素のうち、前記突起ローラにおける前記突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素について、前記第2の領域との境界に遠い位置における前記所定の画素ほど、当該境界から近い位置における前記所定の画素よりも濃度補正量または径の少なくとも一方を小さくした擬似画素を含み、前記第2の領域に記録される各画素のうち、前記突起ローラにおける前記突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素については、前記第1の領域の前記所定の画素において、境界部の画素と同等の濃度補正量、径の疑似画素を含む擬似記録画像データを生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項5】
前記記録手段によって前記記録媒体の他方の面に記録動作がおこなわれた後の記録媒体を前記記録位置に対して前記一方の面に表裏を反転する反転手段を備え、
前記搬送手段は、さらに、前記反転手段により反転した記録媒体を前記記録位置に搬送し、
前記擬似記録画像データ生成手段は、前記反転手段による反転後に前記一方の面に対しておこなう記録動作にかかる前記擬似記録画像データを生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項6】
前記記録手段は、前記記録媒体の他方の面に記録動作をおこなう第1の記録手段と、前記一方の面に記録動作をおこなう第2の記録手段と、を備え、
前記擬似記録画像データ生成手段は、前記第1の記録手段による記録動作がおこなわれた後の前記第2の記録手段による記録動作にかかる前記擬似記録画像データを生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項7】
前記擬似記録画像データ生成手段は、さらに、前記他方の面に記録される各画素のうち、前記突起ローラにおける前記突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素の濃度を補正した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成することを特徴とする請求項5または6に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体の両面への記録が可能なプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部装置から画像の記録指示を受け付け、当該画像を構成する各画素を、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色に分解し、分解した各色の画像を重ねあわせる記録動作をおこなうプリンタがあった。このようなプリンタにおいては、各色の画像の記録位置がずれないように、外周方向に突出した突起を有するグリップローラと、当該グリップローラに対向するピンチローラとから構成されるローラ対によって記録媒体を挟持することにより、各色の画像の記録位置のずれを防止するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0003】
このようなプリンタにおいて、両面に対する記録動作をおこなう場合、記録媒体をグリップローラとピンチローラとによって挟持すると、両面記録をおこなった記録物の表面または裏面の記録面にグリップローラの突起の痕がついてしまう。記録対象とする記録媒体における記録層に対して、インクリボンが備えるインク層に含有される昇華性染料(昇華性色素)を転写することによる、いわゆる昇華転写方式の記録動作をおこなうプリンタの場合、突起痕がついていると昇華性染料(昇華性色素)が良好に転写できず、記録品質が低下してしまう。
【0004】
この対策として、従来、インクを熱転写した記録面にオーバーコート層を熱転写するプリンタにおいて、オーバーコート前においては記録面にグリップローラが強く押圧され、オーバーコート後においては記録面にグリップローラが強く押圧されないように、グリップローラとピンチローラとの間の押圧力を調整するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【0005】
また、従来、インクを熱転写した記録面にオーバーコート層を熱転写するプリンタにおいて、オーバーコート層を熱転写する際には表面が平滑なフィードローラによって記録媒体を搬送することにより、オーバーコート層が熱転写された記録面にグリップローラの突起が接触しないようにした技術があった(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
【0006】
また、従来、記録媒体の片面に対して記録動作をおこなうプリントヘッドと、当該記録媒体の裏面に対して記録動作をおこなうプリントヘッドとを備えたプリンタにおいて、記録媒体に対してグリップローラと同側に配置されたプリントヘッドとグリップローラとのパスライン上の距離を記録媒体のプリント長よりも長くすることによって、記録面にグリップローラが接触しないようにした技術があった(たとえば、下記特許文献4を参照。)。
【0007】
また、従来、少なくとも記録媒体の印画済み領域におけるグリップローラの突起に対応する範囲を押圧しながら加熱し、該当する範囲の記録媒体に設けられた受容層を軟化させた状態で押圧することにより、突起痕を平滑化するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−15886号公報
【特許文献2】特開2011−46157号公報
【特許文献3】特開2011−46156号公報
【特許文献4】特開2011−46155号公報
【特許文献5】特開2008−207447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献2や特許文献3に記載された従来の技術は、突起痕が目立ちにくくなるものの、グリップローラの突起部に当接した記録領域には突起痕が残っているため、同一の記録面における記録位置によって記録品質に差異が生じるという問題があった。
【0010】
また、上述した特許文献4に記載された従来の技術は、記録媒体を搬送する経路長が長くなるため、プリンタが大型化するという問題があった。また、特許文献5に記載された従来の技術は、記録媒体を押圧しながら加熱する機構を設けるため、構造が複雑化し、プリンタが大型化するという問題があった。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができるプリンタを提供することを目的とする。
【0012】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、構造を複雑化したり大型化したりすることなく、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるプリンタは、記録媒体に対して昇華転写方式の記録動作をおこなう記録手段と、外周方向に突出した突起を有し前記記録媒体の一方の面に当接する突起ローラを用いて、前記記録手段による記録動作の対象となる記録媒体を、当該記録手段による記録位置に搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される記録媒体の一方の面において前記突起に接触した第1の領域以外の第2の領域に記録される各画素のうち、前記突起ローラにおける前記突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素について、当該所定の画素の濃度を補正した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成する擬似記録画像データ生成手段と、前記擬似記録画像データに基づいて前記記録手段を制御する記録制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるプリンタは、上記の発明において、前記擬似記録画像データ生成手段が、前記所定の画素の濃度を、当該所定の画素の周囲の画素の濃度よりも低くすることにより当該所定の画素の濃度を補正することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるプリンタは、上記の発明において、前記擬似記録画像データ生成手段が、前記所定の画素の濃度を、元の画像データにおける前記所定の画素の濃度よりも所定の割合で低くすることにより前記擬似記録画像データを生成することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかるプリンタは、上記の発明において、前記突起ローラが、当該突起ローラに当接することにより前記記録媒体の一方の面に生じる突起痕の大きさが、前記第2の領域との境界に近い位置ほど小さくなるように設けられた突起を有し、前記擬似記録画像データ生成手段が、前記第1の領域に記録される各画素のうち、前記突起ローラにおける前記突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素について、前記第2の領域との境界に遠い位置における前記所定の画素ほど、当該境界から近い位置における前記所定の画素よりも濃度補正量または径の少なくとも一方を小さくした擬似画素を含み、前記第2の領域に記録される各画素のうち、前記突起ローラにおける前記突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素については、前記第1の領域の前記所定の画素において、境界部の画素と同等の濃度補正量、径の疑似画素を含む擬似記録画像データを生成することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかるプリンタは、上記の発明において、前記記録手段によって前記記録媒体の他方の面に記録動作がおこなわれた後の記録媒体を前記記録位置に対して前記一方の面に表裏を反転する反転手段を備え、前記搬送手段が、さらに、前記反転手段により反転した記録媒体を前記記録位置に搬送し、前記擬似記録画像データ生成手段が、前記反転手段による反転後に前記一方の面に対しておこなう記録動作にかかる前記擬似記録画像データを生成することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかるプリンタは、上記の発明において、前記記録手段が、前記記録媒体の他方の面に記録動作をおこなう第1の記録手段と、前記一方の面に記録動作をおこなう第2の記録手段と、を備え、前記擬似記録画像データ生成手段が、前記第1の記録手段による記録動作がおこなわれた後の前記第2の記録手段による記録動作にかかる前記擬似記録画像データを生成することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかるプリンタは、上記の発明において、前記擬似記録画像データ生成手段が、さらに、前記他方の面に記録される各画素のうち、前記突起ローラにおける前記突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素の濃度を補正した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明にかかるプリンタによれば、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができるという効果を奏する。
【0021】
また、この発明にかかるプリンタによれば、構造を複雑化したり大型化したりすることなく、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明にかかる実施の形態のプリンタの外観を示す説明図である。
図2図1のA−A断面図(その1)である。
図3図1のA−A断面図(その2)である。
図4図1のA−A断面図(その3)である。
図5図1のA−A断面図(その4)である。
図6】この発明にかかる実施の形態のプリンタのハードウエア構成を示す説明図である。
図7】擬似画素のイメージの一例を示す説明図である。
図8-1】突起痕のイメージの一例を示す説明図である。
図8-2】擬似画素のイメージの別の一例を示す説明図である。
図8-3】擬似画素と突起痕との関係の一例を示す説明図である。
図9】記録媒体の他方の面における擬似画素のイメージの一例を示す説明図である。
図10】この発明にかかる実施の形態のプリンタの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるプリンタの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
まず、この発明にかかる実施の形態のプリンタの外観について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態のプリンタの外観を示す説明図である。図1において、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、略箱形の外観をなす。プリンタ100は、プリンタユニット(記録ユニット)101と給紙・用紙反転ユニット(反転ユニット)102とを備えている。
【0025】
プリンタ100は、たとえば、台などの上面に設置して使用する。プリンタ100を設置した状態において、プリンタユニット101は給紙・用紙反転ユニット102の上側に配置され、給紙・用紙反転ユニット102はプリンタユニット101の下側に配置される。プリンタユニット101と、給紙・用紙反転ユニット102と、は分離可能とされている。
【0026】
プリンタユニット101と給紙・用紙反転ユニット102との連結部には、プリンタユニット101および給紙・用紙反転ユニット102の位置決めのための形状(図示を省略する)が設けられている。これにより、プリンタユニット101と給紙・用紙反転ユニット102とを分離可能に構成した場合にも、プリンタユニット101と給紙・用紙反転ユニット102との位置関係を精度よくかつ容易に確保することができる。プリンタ100(プリンタユニット101)の筐体101aには、プリンタ100の状態を報知する各種の状態報知ランプ103が設けられている。
【0027】
プリンタユニット101は、記録対象となる記録媒体(印画紙)に対する記録動作をおこなう。給紙・用紙反転ユニット102は、プリンタユニット101における記録位置に対して、記録対象となる記録媒体の表裏を反転し、表裏を反転した記録媒体をプリンタユニット101に供給する。プリンタユニット101は、表裏を反転した記録媒体に対する記録動作をおこなうことにより、記録媒体に対する両面記録をおこなうことができる。
【0028】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、記録対象とする記録媒体における記録層に対して、インクリボンが備えるインク層に含有される熱拡散性色素(昇華性色素)を転写することによる、いわゆる昇華転写方式の記録動作をおこなう。このような昇華転写方式の記録動作をおこなうプリンタは、たとえば、昇華型プリンタ(Dye−sublimation printer)などと称される。
【0029】
昇華型プリンタであるプリンタ100は、記録層を備えた記録媒体(図8−1〜図8−3、図9を参照)を記録対象とする。記録媒体が備える記録層は、紙などによって形成される基材の表面に設けられる。記録層は、基材に塗布、あるいは貼り合わされる断熱層と、当該断熱層に積層される受容層と、によって構成されている。受容層は、インクリボンが備えるインク層に含有される熱拡散性色素(昇華性色素)の転写を受け付ける。
【0030】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、記録媒体の片面に対する記録動作(片面記録)をおこなう場合は片面記録に適した記録媒体を用い、記録媒体の両面に対する記録動作(両面記録)をおこなう場合は両面記録に適した記録媒体を用いる。具体的には、片面記録に適した記録媒体は、当該記録媒体の基材の片面にのみ記録層が設けられている。また、具体的には、両面記録に適した記録媒体は、当該記録媒体の基材の両面に、それぞれ記録層が設けられている。
【0031】
昇華型プリンタは、記録媒体に転写するインクの濃度を、記録するドットごとに調整することができる。このため、昇華型プリンタは、階調表現に優れている。優れた階調表現ができることから、昇華型プリンタは、写真印刷用途にも耐えうる画質を得ることができる。このため、昇華型プリンタは、近年、DTP(DeskTop Publishing:卓上出版)用途にも用いられている。
【0032】
昇華転写方式の記録動作に用いられるインクリボンは、長尺状の基材と、当該基材の一面側に設けられたインク層を備えている。インク層は、昇華性染料インク(昇華性染料(昇華性色素)を含有するインク、すなわち昇華インク)によって形成されている。インクリボンについては、説明を後述する。
【0033】
プリンタ100は、プリンタユニット101に設けられた片面印刷物排出口104や、給紙・用紙反転ユニット102に設けられた両面印刷物排出口105を備えている。プリンタ100は、プリンタユニット101において記録をおこなった記録物を、片面印刷物排出口104や両面印刷物排出口105を介して筐体101aの外に排出する。
【0034】
この実施の形態においては、片面印刷物排出口104を介して記録物が排出される位置によって第1の記録媒体排出位置を実現することができる。また、この実施の形態においては、両面印刷物排出口105を介して記録物が排出される位置によって第2の記録媒体排出位置を実現することができる。片面記録がおこなわれた記録物は、片面印刷物排出口104を介して筐体101aの外に排出され、片面印刷物排出口104の近くに用意された、図示されない排紙トレイ上に載置される。両面記録がおこなわれた記録物は、両面印刷物排出口105を介して筐体101aの外に排出され、排紙トレイ106上に載置(積層)される。
【0035】
(プリンタ100の内部構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100の内部構成について説明する。図2図3図4および図5は、図1のA−A断面図である。図2図3図4および図5において、プリンタユニット101は、図示を省略する制御基板を備えている。制御基板は、プリンタ100の各部を駆動制御するマイクロコンピュータを備えている(図6を参照)。
【0036】
また、プリンタユニット101は、第1の記録媒体保持部(記録媒体保持部)201を備えている。第1の記録媒体保持部201は、基材の片面に記録層が設けられた、片面記録に適した記録媒体Pを保持する。第1の記録媒体保持部201が保持する記録媒体Pは、長尺状をなし、長さ方向に沿ってロール状に巻回されている。第1の記録媒体保持部201は、巻回された状態の長尺状の記録媒体Pを、外周側から引き出し可能に保持する。以下、第1の記録媒体保持部201が保持する記録媒体Pを、適宜「ロール紙」とし、符号P1を付して説明する。
【0037】
具体的には、第1の記録媒体保持部201は、ロール紙P1の巻き取り中心となる巻き取り芯を、当該巻き取り芯が回転可能な状態で保持する。これによって、第1の記録媒体保持部201は、ロール紙P1の外周側の端部を、第1の記録媒体保持部201から引き出し可能な状態で保持することができる。
【0038】
プリンタユニット101は、第1の記録媒体搬送経路202を備えている。第1の記録媒体搬送経路202は、第1の記録媒体排出位置につながる片面印刷物排出口104と第1の記録媒体保持部201との間に形成されており、第1の記録媒体保持部201から片面印刷物排出口104に至る。
【0039】
第1の記録媒体保持部201と第1の記録媒体搬送経路202との境界位置の近傍には、第1の用紙センサ203が設けられている。第1の用紙センサ203は、第1の記録媒体保持部201から第1の記録媒体搬送経路202に引き出される記録媒体P(ロール紙P1)の有無に応じて出力値が変化する。具体的には、第1の用紙センサ203は、たとえば、マイクロスイッチやフォトセンサによって実現することができる。
【0040】
プリンタユニット101は、記録部(記録手段)204を備えている。記録部204は、サーマルヘッド205とプラテン206とを備えている。サーマルヘッド205とプラテン206とは、第1の記録媒体搬送経路202を間にして対向配置されている。サーマルヘッド205は、プラテン206に接触する位置とプラテン206から離間する位置とに移動可能に設けられている。
【0041】
サーマルヘッド205は、記録媒体Pの幅方向(図2における紙面表裏方向)に沿ってライン状に配列された複数の発熱素子(発熱抵抗体)や、当該発熱素子を駆動するドライバIC(図6を参照)などを備えている。ドライバICは、図示を省略する電源から、サーマルヘッド205における各発熱素子に接続された電極配線に選択的に通電することによって、通電された電極配線に対応する発熱素子を発熱させる。サーマルヘッド205は、発熱素子において発生した熱をインクリボン207に伝達し、当該インクリボン207に設けられた昇華性染料インクを記録媒体に昇華転写することによって、記録媒体に対する記録動作をおこなう。
【0042】
プラテン206は、記録媒体の幅方向を軸心方向とする円筒形状をなし、軸心周りに回転可能に設けられている。プラテン206は、接触する記録媒体の動きに合わせて、受動的に回転しながら、記録媒体を挟んで対向するサーマルヘッド205が記録媒体にかける圧力を受け止める。
【0043】
また、記録部204は、リボンユニット208を備えている。リボンユニット208は、インクリボン207を保持する一対のローラ209、210を備えている。一対のローラ209、210は、巻き取りローラ209と供給ローラ210とによって構成される。巻き取りローラ209は、回転可能に設けられており、図2における時計回り方向に回転することにより、供給ローラ210が保持するインクリボン207を、当該リボンの一端側から巻き上げる。供給ローラ210は、巻回された長尺状のインクリボン207を、当該インクリボン207の外周側から繰り出し可能に保持する。供給ローラ210は、巻き取りローラ209が回転することによるインクリボン207の巻き上げにともなって、図2における時計回り方向に回転し、インクリボン207を外周側から繰り出す。
【0044】
一対のローラ209、210は、サーマルヘッド205とプラテン206との間において、インクリボン207が張り渡されるようにして当該インクリボン207を保持する。一対のローラ209、210は、サーマルヘッド205とプラテン206との間において、インクリボン207におけるインク層がプラテン206に対向する状態で、当該インクリボン207を保持する。
【0045】
プリンタユニット101において、第1の記録媒体保持部201と第1の記録媒体搬送経路202との接続位置には、フラップ211が設けられている。フラップ211は、片面印刷時にはロール紙P1を第1の記録媒体保持部201から第1の記録媒体搬送経路202へガイドするとともに、両面記録時には片面印刷物排出口104からサーマルヘッド205側に向かって搬送される両面印刷(両面記録)用の記録媒体であるカット紙P2が第1の記録媒体保持部201に進入しないように、当該記録媒体Pの搬送位置をガイドする。
【0046】
プリンタユニット101において、片面印刷物排出口104の近傍には、第1のカッタ機構(第1の切断手段)212が設けられている。第1のカッタ機構212は、位置が固定された固定刃と、固定刃と接触しており、第1の記録媒体搬送経路202を分断する位置に設けられた可動刃と、を備えている(符号を省略する)。可動刃は、外周部分に刃を備えた円板形状をなし、固定刃に沿って記録媒体の幅方向に移動(往復移動)可能に設けられている。可動刃は、記録媒体の切断を待機している場合などの非動作時は、記録媒体の通過に支障のない位置に位置付けられる。
【0047】
第1のカッタ機構212は、可動刃駆動用のモータなどの駆動源や、当該可動刃駆動用のモータが発生させた駆動力を可動刃に伝達する動力伝達機構(図示を省略する)などを備えている。第1のカッタ機構212は、記録媒体Pにおける切断位置(すなわち切断対象とする位置)が、第1の記録媒体搬送経路202において可動刃が当該第1の記録媒体搬送経路202を横断するように移動(往復移動)する位置(すなわち第1のカッタ機構212による切断位置)まで搬送された状態で、可動刃駆動用のモータが発生させた駆動力によって可動刃を記録媒体Pの幅方向に移動させることによって記録媒体Pを切断する。
【0048】
また、プリンタユニット101は、グリップローラ213とピンチローラ214とを備えている。グリップローラ213は、外周方向に突出した突起を有する。グリップローラ213は、記録媒体Pに対して、当該記録媒体Pの一方の面に当接する。グリップローラ213は、記録部204による記録動作中の記録媒体Pの記録面の裏面側から当該記録媒体Pに当接する。ピンチローラ214は、第1の記録媒体搬送経路202を間にしてグリップローラ213に対向配置されている。
【0049】
グリップローラ213とピンチローラ214とは、第1の記録媒体搬送経路202を搬送される記録媒体Pを挟持する。グリップローラ213およびピンチローラ214が記録媒体を挟持して搬送できる力(グリップ力)を、記録媒体が記録部や用紙搬送経路から受ける負荷よりも十分大きく確保することにより、グリップローラ213と、記録媒体Pがスリップすることを防止できる。
【0050】
グリップローラ213とピンチローラ214で、記録媒体Pを挟持した状態で、グリップローラ213を回転させることにより、サーマルヘッド205およびプラテン206による記録位置に対する当該記録媒体Pの位置を制御できる。この実施の形態においては、グリップローラ213およびピンチローラ214によって位置制御手段を実現することができる。
【0051】
また、プリンタユニット101において、片面印刷物排出口104の近傍であって、プリンタ100を設置した状態において第1のカッタ機構212の下方となる位置には、第1の余白片収容部215が設けられている。第1の余白片収容部215は、プリンタ100を設置した状態における上方に開口部を備え、当該開口部を介して第1のカッタ機構212が動作することにより発生した余白片を収容する。
【0052】
第1の余白片収容部215は、プリンタユニット101の筐体101aに対して着脱可能に設けられている。プリンタ100の利用者は、プリンタユニット101の筐体101aから第1の余白片収容部215を取り外すことにより、第1のカッタ機構212が動作することにより発生した余白片を容易に廃棄することができる。
【0053】
給紙・用紙反転ユニット102は、プリンタユニット101に設けられた電源から電力の供給を受けて動作する。給紙・用紙反転ユニット102は、第2の記録媒体保持部216を備えている。第2の記録媒体保持部216は、基材の両面に記録層が設けられた、両面記録に適した記録媒体Pを保持する。第2の記録媒体保持部216は、シート状の記録媒体Pを、それぞれの記録媒体Pを積層した状態で保持する。以下、第2の記録媒体保持部216が保持する記録媒体を、適宜「カット紙」とし、符号P2を付して説明する。
【0054】
給紙・用紙反転ユニット102は、第2の記録媒体搬送経路217を備えている。第2の記録媒体搬送経路217は、プリンタユニット101における第1の記録媒体搬送経路202と第2の記録媒体保持部216との間に形成され、第2の記録媒体保持部216から第1の記録媒体搬送経路202に至る。また、給紙・用紙反転ユニット102は、第2の記録媒体搬送経路217中にある記録媒体Pを、第2の記録媒体保持部216から第1の記録媒体搬送経路202に向かう方向に搬送する用紙搬送ローラ218A、218Cを備えている。
【0055】
給紙・用紙反転ユニット102は、シート供給機構(シート供給手段)219を備えている。シート供給機構219は、第2の記録媒体保持部216が保持するシート状の記録媒体P(カット紙P2)を、一枚ずつに捌いて第2の記録媒体搬送経路217に供給する。シート供給機構219は、用紙切り出しローラ220と用紙分離部(摩擦シート)221とを備えている。
【0056】
用紙切り出しローラ220は、第2の記録媒体保持部216が保持する記録媒体P(カット紙P2)のうち、最上位に積層されている記録媒体P(以下、適宜「最上位紙」という)に当接する。用紙切り出しローラ220は、たとえば、シリコンゴムを用いて形成することができる。また、シート供給機構219は、第2の記録媒体保持部216が保持する記録媒体の量(枚数)にかかわらず、用紙切り出しローラ220が常時最上位紙に当接するように、当該用紙切り出しローラ220を付勢する付勢機構222を備えている。
【0057】
この実施の形態において、用紙切り出しローラ220、用紙搬送ローラ218A、および用紙分離部(摩擦シート)221は、表面が平滑ではなく、表面が凹凸形状をなしている。あるいは、用紙切り出しローラ220、用紙搬送ローラ218A、および用紙分離部(摩擦シート)221は、表面が平滑ではなく、凹部あるいは凸部が設けられていてもよい。具体的に、用紙切り出しローラ220、用紙搬送ローラ218A、および用紙分離部(摩擦シート)221は、表面に、たとえば、エンボス加工、像肌加工などを施すことにより表面が平滑でなくなるようにすることができる。
【0058】
第2の記録媒体保持部216が保持する記録媒体P(カット紙P2)を第2の記録媒体搬送経路217に供給する際には、最上位紙に用紙切り出しローラ220を当接させた状態で、当該用紙切り出しローラ220の軸を中心として、図2における反時計回り方向に回転させる。これにより、用紙切り出しローラ220と最上位紙との間の摩擦力によって、最上位紙が当該最上位紙の図2における紙面右側の端部から第2の記録媒体搬送経路217に移動する。
【0059】
このとき、最上位紙である記録媒体P(カット紙P2)と当該最上位紙よりも下側に積層されている記録媒体P(カット紙P2)との摩擦、当該下側に積層されている記録媒体P(カット紙P2)どうしの摩擦などによって、複数枚の記録媒体P(カット紙P2)が同時に、第2の記録媒体搬送経路217に向かって移動しようとする。第2の記録媒体保持部216において、図2における紙面右側には、用紙分離部(摩擦シート)221が設けられているため、用紙切り出しローラ220の回転によって第2の記録媒体搬送経路217に向かって移動しようとする複数枚の記録媒体P(カット紙P2)は、いずれも、用紙分離部(摩擦シート)221に当接する。そして、第2の記録媒体搬送経路217に向かって移動しようとする複数枚の記録媒体P(カット紙P2)に対して、当該移動を規制する規制力が作用し、これらの複数枚の記録媒体P(カット紙P2)の移動が停止する。
【0060】
用紙切り出しローラ220を形成する材料あるいは用紙切り出しローラ220の表面形状は、第2の記録媒体保持部216が保持する記録媒体P(カット紙P2)と用紙切り出しローラ220との間に作用する摩擦力が、記録媒体P(カット紙P2)の端部と用紙分離部(摩擦シート)221との間に作用する摩擦力よりも大きくなるように調整されている。また、用紙分離部(摩擦シート)221を形成する材料あるいは用紙分離部(摩擦シート)221の表面形状は、記録媒体P(カット紙P2)の端部と用紙分離部(摩擦シート)221との間に作用する摩擦力は、記録媒体P(カット紙P2)どうしの間に作用する摩擦力よりも大きくなるように調整されている。
【0061】
これにより、シート供給機構219は、用紙切り出しローラ220の回転によって第2の記録媒体搬送経路217に向かって移動しようとする複数枚の記録媒体P(カット紙P2)のうち、用紙切り出しローラ220が直に接触している最上位紙のみを、第2の記録媒体保持部216から第2の記録媒体搬送経路217に供給することができる。
【0062】
第2の記録媒体保持部216と第2の記録媒体搬送経路217との境界位置の近傍には、第2の用紙センサ223が設けられている。第2の用紙センサ223は、第2の記録媒体保持部216から第2の記録媒体搬送経路217に供給された記録媒体Pの有無に応じて出力値が変化する。具体的には、第2の用紙センサ223は、たとえば、第1の用紙センサ203と同様に、マイクロスイッチやフォトセンサによって実現することができる。
【0063】
給紙・用紙反転ユニット102は、第3の記録媒体搬送経路224を備えている。第3の記録媒体搬送経路224は、一部が第2の記録媒体搬送経路217と重複している。第3の記録媒体搬送経路224は、両端が第1の記録媒体搬送経路202に連続した、ループ形状をなしている。また、給紙・用紙反転ユニット102は、第1の記録媒体搬送経路202から第3の記録媒体搬送経路224に排出された記録媒体Pを、当該第3の記録媒体搬送経路224を経由して、再び第1の記録媒体搬送経路202に供給する方向に搬送する用紙搬送ローラ218Bを備えている。
【0064】
第3の記録媒体搬送経路224がループ形状をなしているため、第1の記録媒体搬送経路202から第3の記録媒体搬送経路224に排出された記録媒体Pは、用紙搬送ローラ218B、および218Cによって当該第3の記録媒体搬送経路224中を搬送されることにより、再び第1の記録媒体搬送経路202に供給される。第3の記録媒体搬送経路224中を搬送される記録媒体Pは、当該第3の記録媒体搬送経路224中を搬送されることにより、記録部204の記録位置(サーマルヘッド205の発熱素子に対向する位置)に対して、表裏を反転した状態で、再び第1の記録媒体搬送経路202に供給される。この発明にかかる実施の形態のプリンタ100においては、第3の記録媒体搬送経路224および当該第3の記録媒体搬送経路224において記録媒体Pを搬送する用紙搬送ローラ218B、218Cおよび当該用紙搬送ローラ218B、218Cに駆動力を付与する機構などによって、反転手段を実現することができる。
【0065】
上記の用紙搬送ローラのうち、記録動作中に記録媒体Pが到達する位置に存在する用紙搬送ローラ218Bは、記録動作中は記録媒体Pに触れない位置に退避可能に設けられている。具体的には、用紙搬送ローラ218Bとモータとの間の輪列に連動してローラ位置が搖動するような機構(いずれも図示を省略する)を設けることにより、用紙搬送ローラ218Bに駆動力を付与するモータが記録媒体Pの搬送方向に回転した場合に、用紙搬送ローラ218Bのうち受動的に回転するローラ(押圧ローラ)が記録媒体Pに押し付けられるように動作し、モータが逆方向へ回転すると記録媒体Pから受動ローラが離れるように動く構成とすることによって実現することができる。
【0066】
また、用紙切り出しローラ220の駆動と、用紙搬送ローラ218A、218B、218Cの駆動は、動力となるモータとそれぞれのローラに到達するまでの輪列の中に、反対方向に回転した場合は空転することにより、駆動を遮断するワンウェイクラッチを挿入すれば、モータの回転方向を切り換えることにより、一つのモータでおこなうことができるが、その場合、モータと用紙切り出しローラ220との間の輪列には、適当な量のガタ(遊び)を設けることが好ましい。これによって、記録媒体P(カット紙P2)の表裏を反転した後に、用紙搬送ローラ218Bが退避する位置まで当該用紙搬送ローラ218Bに対応するモータを逆転させても、第2の記録媒体保持部216が保持する記録媒体P(カット紙P2)が切り出されないように構成することができる。
【0067】
給紙・用紙反転ユニット102が備える用紙搬送ローラ218のうち、表裏を反転された記録媒体Pが通過する位置に設けられた用紙搬送ローラ218Cは、クリーニングローラを兼ねている。クリーニングローラを兼ねる用紙搬送ローラ218Cは、記録媒体Pを搬送するとともに、再びプリンタユニット101に供給された際に記録動作がおこなわれる面(裏面)を清掃する。
【0068】
第3の記録媒体搬送経路224において、第2の記録媒体搬送経路217と重複している部分には、フラップ225が設けられている。フラップ225は、第1の記録媒体搬送経路202から第3の記録媒体搬送経路224に排出された記録媒体Pの、第3の記録媒体搬送経路224における搬送位置を案内する。フラップ225は、記録媒体Pを第1の記録媒体搬送経路202から第3の記録媒体搬送経路224に排出する場合と、記録媒体Pを第3の記録媒体搬送経路224から第1の記録媒体搬送経路202に供給する場合とで、それぞれ異なる位置に位置付けられる(図2および図4を参照)。
【0069】
具体的には、フラップ225は、記録媒体を第1の記録媒体搬送経路202から第3の記録媒体搬送経路224に排出する場合は、図2に示した位置に位置付けられる。また、具体的には、フラップ225は、記録媒体を第3の記録媒体搬送経路224から第1の記録媒体搬送経路202に供給する場合は、図4に示した位置に位置付けられる。
【0070】
給紙・用紙反転ユニット102は、第4の記録媒体搬送経路226を備えている。第4の記録媒体搬送経路226は、第2の記録媒体排出位置につながる両面印刷物排出口105と、第1の記録媒体搬送経路202における給紙・用紙反転ユニット102側の端部との間に形成され、第1の記録媒体搬送経路202から両面印刷物排出口105に至る。また、給紙・用紙反転ユニット102は、第1の記録媒体搬送経路202から第4の記録媒体搬送経路226中に排出された記録媒体Pを、第1の記録媒体搬送経路202から両面印刷物排出口105に向かう方向に搬送する用紙搬送ローラ218D、218Eを備えている。
【0071】
第1の記録媒体搬送経路202から第4の記録媒体搬送経路226に排出された記録媒体Pは、グリップローラ213とピンチローラ214とによって把持された状態で、用紙搬送ローラ218D、218Eの搬送力を受けることによって、両面印刷物排出口105を介して給紙・用紙反転ユニット102の外に向かう方向に搬送される。この実施の形態においては、用紙搬送ローラ218D、218E、グリップローラ213およびピンチローラ214などによって、第1の記録媒体搬送経路202から第4の記録媒体搬送経路226中に排出された記録媒体Pを、両面印刷物排出口105を介して給紙・用紙反転ユニット102の外(第2の記録媒体排出位置)まで搬送する記録媒体排出手段を実現することができる。
【0072】
第3の記録媒体搬送経路224において、第2の記録媒体搬送経路217と重複している部分であって、第4の記録媒体搬送経路226との境界位置には、フラップ227が設けられている。フラップ227は、プリンタユニット101から第1の記録媒体搬送経路202を介して給紙・用紙反転ユニット102へ排出された記録媒体の搬送位置を案内する。フラップ227は、プリンタユニット101から第1の記録媒体搬送経路202を介して給紙・用紙反転ユニット102へ排出された記録媒体Pが第4の記録媒体搬送経路226に進入することを防止する位置(図2図3図4を参照)と、当該記録媒体Pを第4の記録媒体搬送経路226に案内する位置(図5を参照)と、のいずれか一方に選択的に位置付けられる。
【0073】
また、給紙・用紙反転ユニット102において、両面印刷物排出口105の近傍には、第2のカッタ機構(第2の切断手段)228が設けられている。第2のカッタ機構228は、当該第2のカッタ機構228による切断位置と、プリンタユニット101が備えるグリップローラ213などの用紙搬送ローラ218との距離が、プリンタ100において、記録媒体P(カット紙P2)に記録可能な最小の記録物の長さより短くなる位置に設けられている。
【0074】
第2のカッタ機構228は、第1のカッタ機構212と同様の構成をなし、位置が固定された固定刃と、第2の記録媒体搬送経路217を間にして固定刃に対向する位置に設けられた可動刃と、を備えている(いずれも符号を省略する)。第2のカッタ機構228は、第1のカッタ機構212と同様の構成をなすため、説明を省略する。
【0075】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100において、フラップ227は、第4の記録媒体搬送経路226に設けられた用紙搬送ローラ218D、および用紙搬送ローラ218Eの駆動をおこなうモータの駆動力によって動作する。このフラップ227を駆動するモータは、第4の記録媒体搬送経路226に設けられた用紙搬送ローラ218D、218Eの駆動とフラップ227の駆動とを兼用する。
【0076】
具体的には、フラップ227が回動する支点となる支点軸上に歯車を設け、当該歯車を、図示を省略するクラッチ機構(トルクリミッタ)により排出側の用紙搬送ローラ218D、218Eを駆動する輪列と結合する。フラップ227は、第4の記録媒体搬送経路226において記録媒体Pを排出する方向へ用紙搬送ローラ218D、218Eを回転させるようモータを駆動すると、記録媒体Pを両面印刷物排出口105から排出する方向へ導く方向へ動くように構成されている(図5の位置)。また、フラップ227は、第4の記録媒体搬送経路226において記録媒体Pを排出する方向とは逆方向へ用紙搬送ローラ218D、218Eを回転させるようモータを駆動すると、第3の記録媒体搬送経路224側へ導く方向へ動くように構成されている(図2の位置)。用紙搬送ローラ218Fは、第1の記録媒体保持部201が保持する記録媒体P(ロール紙P1)を第1の記録媒体保持部201から第1の記録媒体搬送経路202中に引き出す際に所定方向に回転される。
【0077】
また、給紙・用紙反転ユニット102において、両面印刷物排出口105の近傍であって、プリンタ100を設置した状態において第2のカッタ機構228の下方となる位置には、第2の余白片収容部229が設けられている。第2の余白片収容部229は、プリンタ100を設置した状態における上方に開口部を備え、当該開口部を介して第2のカッタ機構228が動作することにより発生した余白片を収容する。
【0078】
第2の余白片収容部229は、給紙・用紙反転ユニット102の筐体101aに対して着脱可能に設けられている。プリンタ100の利用者は、給紙・用紙反転ユニット102の筐体101aから第2の余白片収容部229を取り外すことにより、第2のカッタ機構228が動作することにより発生した余白片を容易に廃棄することができる。
【0079】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100においては、第2の記録媒体保持部216が保持するシート状の記録媒体P(カット紙P2)を第2の記録媒体搬送経路217に供給する動作(切り出し動作)と、第2の記録媒体搬送経路217に供給した(切り出した)記録媒体P(カット紙P2)を給紙・用紙反転ユニット102からプリンタユニット101へ搬送する動作と、を1つのモータでおこなうように構成してもよい。
【0080】
具体的には、たとえば、第2の記録媒体搬送経路217に記録媒体P(カット紙P2)を供給する(切り出す)用紙切り出しローラ220、および、給紙・用紙反転ユニット102からプリンタユニット101へ搬送する用紙搬送ローラ218A、218B、218Cまでの各々の輪列中にワンウェイクラッチを設け、用紙切り出しローラ220を駆動しているときには、用紙搬送ローラ218A、218B、218Cまでの輪列中のワンウェイクラッチが空転して駆動力が伝達されず、用紙搬送ローラ218A、218B、218Cを駆動しているときには、用紙切り出しローラ220までの輪列中のワンウェイクラッチが空転して駆動力が伝達されないような構成によって実現することができる。
【0081】
これにより、シート供給機構219を駆動するモータの回転方向により、第2の記録媒体搬送経路217および第3の記録媒体搬送経路224において、記録媒体P(カット紙P2)を切り出す、あるいは、切り出す動作はおこなわないで、記録媒体P(カット紙P2)を搬送するなどの複数の動作を1つのモータによって選択的におこなうことができる。
【0082】
(プリンタ100のハードウエア構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100のハードウエア構成について説明する。図6は、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100のハードウエア構成を示す説明図である。図6において、プリンタ100は、マイクロコンピュータ601と、通信I/F(インターフェイス)602と、ドライバIC603と、モータドライバ604と、状態報知ランプ103と、第1の用紙センサ203および第2の用紙センサ223と、を備えている。マイクロコンピュータ601、通信I/F602、ドライバIC603、モータドライバ604、状態報知ランプ103、第1の用紙センサ203および第2の用紙センサ223の各部は、バス605によって接続されている。
【0083】
マイクロコンピュータ601は、プリンタ100が備える各部を駆動制御する。マイクロコンピュータ601は、たとえば、CPU、ROMやRAMなどのメモリ、入出力回路やタイマー回路などの各種回路を実装した基板によって実現することができる。この実施の形態のプリンタ100においては、マイクロコンピュータ601によって、当該プリンタユニット101が備える各部および給紙・用紙反転ユニット102が備える各部を駆動制御する制御手段を実現することができる。
【0084】
マイクロコンピュータ601は、メモリに記憶された各種データや通信I/F602を介して外部装置から受信した各種データに基づいて、当該メモリに記憶された各種の制御プログラムをCPUにおいて実行することによってプリンタ100が備える各部を駆動制御する。マイクロコンピュータ601において、CPUは、たとえば、記録命令情報に基づく印刷にかかるイメージデータを展開する際のワークエリアとしてRAMを使用する。
【0085】
通信I/F602は、図示を省略する外部装置に接続されている。通信I/F602は、ネットワークと内部とのインターフェイスをつかさどり、コンピュータ装置におけるデータの入出力を制御する。外部装置は、たとえば、プリンタ100に対する記録命令情報を生成し、生成した記録命令情報をプリンタ100に対して出力する。記録命令情報は、たとえば、記録媒体Pに記録する画像などに関する情報や、当該情報の記録を指示するコマンドなどを含む。外部装置は、具体的には、デジタルカメラで撮影した画像をプリント出力するサービスを提供するDPE(Development,Printing,Enlargement)店(写真の「現像・焼き付け・引き伸ばし」業務をおこなう店)などに設置されたパーソナルコンピュータによって実現することができる。
【0086】
上記のマイクロコンピュータ601は、通信I/F602を介して、外部装置から出力された記録命令情報の入力を受け付けた場合、当該記録命令情報に基づいて擬似記録画像データ(図7を参照)を生成する。この実施の形態のプリンタ100においては、マイクロコンピュータ601によって、擬似記録画像データ生成手段を実現することができる。
【0087】
ドライバIC603は、マイクロコンピュータ601によって駆動制御される。ドライバIC603は、マイクロコンピュータ601によって駆動制御されることにより、サーマルヘッド205における複数の発熱素子のそれぞれに対応する電極配線に対して選択的に通電する。これにより、各発熱素子を選択的に発熱させることができる。サーマルヘッド205の発熱素子において発生した熱をインクリボン207を介して記録媒体Pの記録層に伝達することによって、当該インクリボン207に設けられた昇華性染料インクを記録媒体Pに昇華転写し、記録媒体Pに対する記録動作をおこなうことができる。
【0088】
モータドライバ604は、マイクロコンピュータ601によって駆動制御される。モータドライバ604は、マイクロコンピュータ601によって駆動制御されることにより、グリップローラ213用のモータ、用紙搬送ローラ218A、218B、218C用のモータ、用紙搬送ローラ218D、218E用のモータ、用紙切り出しローラ220用のモータ、可動刃駆動用のモータおよびサーマルヘッド205を移動させるためのモータなどの各種モータ600を駆動制御する。
【0089】
グリップローラ213用のモータや用紙搬送ローラ218A、218B、218C用のモータ、用紙搬送ローラ218D、218E用のモータ、および用紙切り出しローラ220用のモータは、たとえば、ステッピングモータなどによって実現することができる。可動刃駆動用のモータは、たとえば、DCモータなどによって実現することができる。モータドライバ604は、グリップローラ213用のモータ、用紙搬送ローラ218用のモータおよび可動刃駆動用のモータなどのモータごとに設けることができる。
【0090】
モータドライバ604は、マイクロコンピュータ601からの制御信号に基づいて該当するモータを駆動制御し、各種モータ600の励磁シーケンスや印加する電流の方向を切り換える。各種モータ600は、それぞれ、モータドライバ604によって駆動制御されることにより、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、回転駆動力を発生する。また、各種モータ600の回転方向は、モータドライバ604による励磁シーケンスや印加する電流の方向の切り換えに応じて切り換わる。
【0091】
状態報知ランプ103は、マイクロコンピュータ601によって駆動制御され、プリンタ100の状態に応じて点灯したり消灯したりする。状態報知ランプ103は、たとえば、LEDによって実現することができる。状態報知ランプ103は、たとえば、プリンタ100への電源の供給状態、プリンタ100におけるエラー発生の有無、記録媒体Pの有無などの報知内容に応じて点灯したり消灯したりする。
【0092】
状態報知ランプ103は、たとえば、報知内容ごとに複数設けることができる。あるいは、状態報知ランプ103は、たとえば、報知内容ごとに発光色を異ならせてもよい。あるいは、状態報知ランプ103は、たとえば、報知内容ごとに点滅させたり点灯させたりして、報知内容ごとに点灯パターンを異ならせてもよい。
【0093】
第1の用紙センサ203および第2の用紙センサ223の出力値は、マイクロコンピュータ601に入力される。第1の用紙センサ203および第2の用紙センサ223の出力値は、常時マイクロコンピュータ601に入力されるものであってもよく、出力値に変化があった場合にマイクロコンピュータ601に入力されるものであってもよい。
【0094】
(グリップローラ213における突起の配列密度)
つぎに、グリップローラ213における突起の配列密度について説明する。グリップローラ213は、外周面に突起を有することにより、記録媒体Pの一方の面に対して確実にグリップし、記録媒体Pの搬送に際して高い搬送精度を確保することができる。一方で、グリップローラ213が外周面に突起を有することにより、記録媒体Pの一方の面においては、搬送に際して当該突起に接触した部分が凹む。凹んだ部分は、インクリボンに密着しづらく、インクが良好に転写されない傾向にある。このため、記録媒体Pの一方の面において、グリップローラ213に当接した後に記録動作をおこなった記録面(記録媒体Pの一方の面)には、インクが良好に転写されない部分が白く抜けた部分(突起痕)が発生する。
【0095】
グリップローラ213における突起のピッチを疎にすると、白く抜けた部分(突起痕)による記録画像全体における平均濃度低下は少なくなるが、突起痕一つ一つの白い点が目立つようになる。グリップローラ213における突起のピッチを密にすると、一つ一つの白点は目立ちにくくなる(人間の感覚として気にならなくなる)が、白く抜けた部分(突起痕)のある領域が多くなるため、記録画像全体においては、白く抜けた部分(突起痕)のない領域に比べて濃度が低下したことが目立つようになる。また、グリップローラ213における突起のピッチを密にしすぎると、濃度低下量が大きくなることに加えて、記録媒体Pを搬送する搬送力が低下し、色ごとに記録位置がずれてしまうなどのトラブルの原因となる。
【0096】
このため、この実施の形態のプリンタ100が備えるグリップローラ213は、グリップローラ213に接触した記録媒体Pの一方の面における突起痕のピッチが、8〜22箇所/mm2程度となるような配列密度で突起が設けられていることが好ましい。ただし、グリップローラ213における突起の配列密度は、8〜22箇所/mm2の範囲に限定されるものではない。グリップローラ213における突起の配列密度は、記録対象とする記録媒体Pの種類(表面の平滑性、厚さ、堅さなど)に応じて適宜設定することができる。
【0097】
(擬似画素のイメージの一例)
つぎに、マイクロコンピュータ601が生成する擬似記録画像データについて説明する。図7は、擬似画素のイメージの一例を示す説明図である。図7においては、擬似記録画像データにしたがって記録動作をおこなった場合の記録面(記録媒体Pの一方の面)における擬似画素のイメージを示している。
【0098】
図7において、擬似記録画像データは、グリップローラ213によって搬送される記録媒体Pの一方の面においてグリップローラ213の突起に接触した第1の領域701以外の第2の領域702に記録される各画素のうち、グリップローラ213における突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素の濃度を補正した擬似画素(第2の領域702におけるドットを参照)を含む。擬似記録画像データは、第2の領域702のみに擬似画素を含む。
【0099】
第1の領域701は、符号701aで示す幅で、記録媒体Pの搬送方向に連続する領域に相当する。第2の領域702は、符号702aで示す幅で、記録媒体Pの搬送方向に連続する領域に相当する。幅701aは、グリップローラ213において突起が設けられている領域の幅213aによって定められる。幅702aは、グリップローラ213において突起が設けられている領域の間の幅によって定められる。図7において、符号703は、第1の領域701と第2の領域702との境界を示している。
【0100】
たとえば、グリップローラ213において、記録媒体Pの一方の面における突起痕のピッチが8〜22箇所/mm2程度となるような配列密度で突起が設けられている場合、第1の領域701においては、突起の配列密度と一致する8〜22箇所/mm2程度のピッチで突起痕が生じる。このようなグリップローラ213を用いる場合、マイクロコンピュータ601は、第2の領域702において8〜22箇所/mm2程度のピッチ、あるいは更に密なピッチで擬似画素が記録されるような擬似記録画像データを生成する。
【0101】
画素は、画像を構成する最小単位であって、それぞれが色情報を保持している。色情報は、各画素におけるレッド(R)、グリーン(G)およびブルー(B)の各色の濃度を示す情報であって、各色の濃度のバランスによって各画素の色を表現する。マイクロコンピュータ601は、外部装置から受け付けた記録命令情報によって示される画像を構成する各画素の色情報を、RGBカラーからCMY(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))カラーに変換する。
【0102】
擬似画素は、外部装置から受け付けた記録命令情報によって示される画像における所定の画素の濃度(本来の濃度)を補正することによって生成することができる。マイクロコンピュータ601は、第2の領域702における所定の画素の濃度を、当該所定の画素の周囲の画素の濃度よりも低くすることにより当該所定の画素の濃度を補正した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成する。
【0103】
具体的には、マイクロコンピュータ601は、擬似記録画像データにおける所定の画素の濃度を、外部装置から受け付けた記録命令情報によって示される画像における所定の画素の濃度(本来の濃度)よりも所定の割合で低くすることにより補正をおこない、擬似記録画像データを生成することができる。
【0104】
マイクロコンピュータ601は、たとえば、擬似画素におけるC、M、Yのすべての色の濃度を低くすることによって擬似記録画像データを生成する。また、マイクロコンピュータ601は、たとえば、擬似画素におけるC、M、Yの中のいずれか1色あるいは2色の濃度を低くすることによって擬似記録画像データを生成してもよい。
【0105】
擬似画素におけるC、M、Yのすべての色、あるいは、C、M、Yの中のいずれか2色の濃度を低くする場合、本来の濃度に対して同じ割合で濃度を低くする。また、擬似画素におけるC、M、Yのすべての色、あるいは、C、M、Yの中のいずれか2色の濃度を低くする場合、色ごとにそれぞれ異なる割合で濃度を低くしてもよい。さらに、疑似画素における濃度は、元画像の濃度に対し同じ割合で低くするのではなく、突起痕が目立ちやすい画像濃度に対しては濃度を低くする割合を大きくし、突起痕が目立ちにくい画像濃度に対しては濃度度低くする割合を小さくしてもよい。
【0106】
(擬似画素のイメージの別の一例)
つぎに、擬似画素のイメージの別の一例について説明する。図8−2は、擬似画素のイメージの別の一例を示す説明図である。図8−2においては、図7に示した擬似画素とは異なるパターンの擬似画素を含む擬似記録画像データにしたがって記録動作をおこなった場合の記録面(記録媒体Pの一方の面)における擬似画素のイメージを示している。
【0107】
図8−2に示すように、マイクロコンピュータ601は、第2の領域702に記録される各画素のうち、グリップローラ213における突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素について、所定の割合で濃度を低くし、更に、第1の領域701に記録される各画素のうち、グリップローラ213における突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素について、第2の領域702との境界703に近い位置における所定の画素ほど、当該境界703から遠い位置における所定の画素よりも濃度補正量を大きく(濃度を低く、透明度を低く)し、境界703に近い位置における疑似画素の濃度補正量を、第2の領域における疑似画素の濃度補正量に近い値に設定した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成してもよい。
【0108】
この場合、マイクロコンピュータ601は、第1の領域701において、境界703に近い位置における擬似画素の元の画像データにおける所定の画素の濃度に対する濃度低下量を、当該境界703から遠い位置における擬似画素の元の画像データにおける所定の画素の濃度に対する濃度低下量よりも高くする。
【0109】
また、この場合、マイクロコンピュータ601は、第1の領域701における各擬似画素のうち、境界703にもっとも近い位置における擬似画素の濃度低下量を、第2の領域702における疑似画素の濃度低下量と同等とする。
【0110】
図8−1は、突起痕のイメージの一例を示す説明図である。図8−2に示したパターンの擬似画素を含む擬似記録画像データにしたがって記録動作をおこなう場合、グリップローラ213に記録媒体Pを押しあてるピンチローラ214の圧力や、グリップローラ213の突起の大きさを調整することにより、図8−1に示すように、突起痕のある領域(第1の領域701)のうち、記録媒体Pの両端ほど突起痕の大きさが大きく、突起痕が生じない第2の領域702との境界703に近いほど突起痕の大きさが小さくなるように設定することが好ましい。このように設定することにより、第1の領域701における記録物の濃度は、突起痕によって、記録媒体Pの両端ほど低く、境界703に近いほど高くなる(ように見える)ように徐々に変化する。
【0111】
この場合、具体的には、たとえば、ピンチローラ214がグリップローラ213に記録媒体Pを押しあてる圧力が、記録媒体Pの両端ほど大きくし、第2の領域702との境界703に近いほど小さくなるように調整する。あるいは、この場合、具体的には、たとえば、記録媒体Pの両端ほど大きく、第2の領域702との境界703に近いほど小さくなるように、グリップローラ213の突起の大きさを調整してもよい。
【0112】
第1の領域701におけるグリップローラ213による突起痕の大きさが一定であると、突起痕のある領域(第1の領域701)と突起痕の無い領域(第2の領域702)との境界703で記録物の濃度(記録媒体Pの一方の面における記録画像の濃度)が急激に変化する。突起痕による濃度低下は、このような記録物の急激な濃度変化が生じている位置において目立ちやすくなる。
【0113】
上記のように、突起痕のある領域(第1の領域701)のうち、記録媒体Pの両端ほど突起痕の大きさが大きく、突起痕が生じない第2の領域702との境界703に近いほど突起痕の大きさが小さくなるように、ピンチローラ214の圧力やグリップローラ213の突起の大きさを調整することにより、突起痕により生じる記録物の濃度変化をなだらかにすることができる。
【0114】
このような状況において、図8−2に示したパターンの擬似画素を含む擬似記録画像データにしたがって記録動作をおこなうことにより、第1の領域701において、記録媒体Pの両端ほど低く境界703に近いほど高くなる(ように見える)ように記録物の濃度を徐々に変化させる突起痕(図8−1を参照)に対し、境界703に近い位置ほど当該境界703から遠い位置よりも濃度を小さく(低く)した擬似画素が記録された画像が重ね合わされる。
【0115】
図8−3は、擬似画素と突起痕との関係の一例を示す説明図である。図8−3に示したように、突起痕のある領域(第1の領域701)に、突起痕による濃度低下に応じた濃度に設定された疑似画素が配置された領域を重複させることにより、境界703をより目立ちにくくすることが可能となる。これにより、グリップローラ213による記録媒体Pの搬送力を低下させることなく、突起痕による記録物の濃度低下、特に境界部の濃度差を目立ちにくくすることができる。
【0116】
マイクロコンピュータ601は、外部装置から、記録媒体P(記録媒体Pの一方の面)の両面に対する記録動作の実行を指示する記録命令情報を受け付けた場合、記録位置に対して表裏を反転した後におこなう記録動作にかかる擬似記録画像データを生成する。これにより、グリップローラ213に当接した後に記録動作をおこなった記録面(記録媒体Pの一方の面)における突起痕を目立ちにくくすることができる。
【0117】
マイクロコンピュータ601は、外部装置から、記録媒体Pの両面に対する記録動作の実行を指示する記録命令情報を受け付けた場合、記録媒体Pの片面(記録位置に対して表裏を反転する前の記録媒体P、すなわち、記録媒体Pの他方の面)に記録される各画素のうち、グリップローラ213における突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素の濃度を補正した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成し、当該擬似記録画像データに基づいて記録媒体Pの片面(記録媒体Pの他方の面)に対する記録動作をおこなってもよい(図9を参照)。
【0118】
(擬似画素のイメージの一例)
つぎに、記録媒体Pの表面(記録位置に対して表裏を反転する前の記録媒体Pにおける記録面、他方の面)に対する記録動作にかかる擬似記録画像データについて説明する。図9は、記録媒体Pの他方の面における擬似画素のイメージの一例を示す説明図である。図9においては、記録媒体Pの他方の面(記録位置に対して表裏を反転する前の記録媒体Pにおける記録面)に対する記録動作にかかる擬似記録画像データにしたがって記録動作をおこなった場合の記録面における擬似画素のイメージを示している。
【0119】
図9に示すように、マイクロコンピュータ601は、記録媒体Pの他方の面にかかる擬似記録画像データとして、記録媒体Pの一方の面(記録位置に対して表裏を反転した後の記録媒体P)に生じる突起痕と同等のパターンの擬似画素を含む擬似記録画像データを生成する。マイクロコンピュータ601は、記録媒体Pの片面全体に擬似画素を含む擬似記録画像データを生成する。
【0120】
具体的には、この実施の形態のグリップローラ213を用いる場合、マイクロコンピュータ601は、記録媒体Pの他方の面全体において8〜22箇所/mm2程度、あるいはそれより密なピッチで擬似画素が記録されるような擬似記録画像データを生成する。マイクロコンピュータ601は、外部装置から受け付けた記録命令情報に、記録媒体Pの両面(記録媒体Pの一方の面および他方の面)に対する記録動作の実行にかかる指示が含まれている場合に、記録媒体Pの他方の面にかかる擬似記録画像データを生成する。
【0121】
また、マイクロコンピュータ601は、外部装置から受け付けた記録命令情報に、記録媒体Pの他方の面に対する記録動作にかかる擬似記録画像データを生成する指示が含まれる場合に、当該擬似記録画像データを生成し、記録媒体Pの他方の面に対して当該擬似記録画像データにしたがった記録動作をおこなってもよい。これにより、プリンタ100の利用者が任意に画質を設定することができる。
【0122】
マイクロコンピュータ601は、外部装置から受け付けた記録命令情報に、記録媒体Pの両面に対する記録動作の実行にかかる指示が含まれているか否かにかかわらず、記録命令情報を受け付けた場合は、記録媒体Pの他方の面にかかる擬似記録画像データを生成し、記録媒体Pの他方の面に対して当該擬似記録画像データにしたがった記録動作をおこなってもよい。これにより、たとえば、これらの従来の技術を用いて両面に記録動作をおこなった記録媒体Pを冊子状にした場合に、見開きページなどにおいて、グリップローラ213に当接した記録面(記録媒体Pの一方の面)と当接していない記録面(記録媒体Pの他方の面)との差異を目立ちにくくすることができる。
【0123】
(プリンタ100の処理手順)
つぎに、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100の処理手順について説明する。図10は、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100の処理手順を示すフローチャートである。
【0124】
図10のフローチャートにおいて、まず、外部装置から出力された記録命令情報を受け付けるまで待機する(ステップS1001:No)。ステップS1001において、外部装置から出力された記録命令情報を受け付けた場合(ステップS1001:Yes)、受け付けた記録命令情報に基づいて、擬似記録画像データを生成する(ステップS1002)。
【0125】
ステップS1002においては、たとえば、記録媒体Pの他方の面に対する記録動作にかかる擬似記録画像データと、記録媒体Pの一方の面に対する記録動作にかかる擬似記録画像データと、を生成する。記録媒体Pの一方の面に対する記録動作にかかる擬似記録画像データは、図7に示したパターンの擬似画素を含む擬似記録画像データであってもよく、図7に示したパターンの擬似画素を含む擬似記録画像データであってもよい。擬似画素のパターンは、ステップS1001:Yesにおいて受け付けた記録命令情報に含まれる情報に基づいて決定されるものであってもよく、プリンタ100においてあらかじめ設定されていてもよい。
【0126】
また、ステップS1002においては、たとえば、ステップS1001:Yesにおいて受け付けた記録命令情報に含まれる情報に基づいて、記録媒体Pの他方の面に対する記録動作にかかる擬似記録画像データを生成することができる。格別な指定がない場合に、記録媒体Pの他方の面に対する記録動作にかかる擬似記録画像データを生成するか否かは、プリンタ100においてあらかじめ設定されていてもよい。
【0127】
また、ステップS1002においては、ステップS1001:Yesにおいて受け付けた記録命令情報が、記録媒体Pの他方の面のみに対する記録動作の実行を指示する情報である場合、記録媒体Pの他方の面に対する記録動作にかかる擬似記録画像データを生成する。この場合も、格別な指定がない場合に、記録媒体Pの他方の面に対する記録動作にかかる擬似記録画像データを生成するか否かは、プリンタ100においてあらかじめ設定されていてもよい。
【0128】
そして、ステップS1002において生成した擬似記録画像データにしたがってドライバIC603やモータドライバ604を駆動制御して(ステップS1003)、記録媒体Pに対する記録動作をおこない、一連の処理を終了する。
【0129】
上述した実施の形態においては、この発明にかかるプリンタとして、サーマルヘッド205とプラテン206とによって構成される記録部204を一つのみ備えるプリンタ100について説明したが、これに限るものではない。この発明にかかるプリンタは、複数の記録部を備えていてもよい。
【0130】
具体的には、記録媒体Pの片面(先に記録動作がおこなわれる面、表面、記録媒体Pの他方の面)に対向する位置に設けられる第1の記録部(第1の記録手段)と、記録媒体Pの裏面(後から記録動作がおこなわれる面、裏面、記録媒体Pの一方の面)に対向する位置に設けられる第2の記録部(第2の記録手段)と、を備えたプリンタによって、この発明にかかるプリンタを実現してもよい。
【0131】
この場合、第1の記録部および第2の記録部は、それぞれ、プリントヘッドと当該プリントヘッドに対向するプラテンとを備えて構成される。第1の記録部および第2の記録部を備えたプリンタは、第1の記録部によって記録媒体Pの他方の面に対する記録動作をおこない、第2の記録部によって記録媒体Pの一方の面に対して記録動作をおこなう。
【0132】
このようなプリンタにおいては、第1の記録部によって他方の面に記録動作がおこなわれた記録媒体Pに対する記録動作、すなわち、第2の記録部がおこなう記録動作にかかる擬似記録画像データを生成し、当該擬似記録画像データに基づいて第2の記録部を駆動する。また、このようなプリンタにおいて、さらに、第1の記録部によっておこなう記録動作にかかる擬似記録画像データを生成し、当該擬似記録画像データに基づいて第1の記録部を駆動してもよい。
【0133】
上述した実施の形態においては、グリップローラ213における突起が記録媒体Pに対して均等に当接する場合を想定して説明したが、これに限るものではない。グリップローラ213に当接するピンチローラ214の当接力(押圧力)の大きさの分布を、グリップローラ213の軸芯方向における位置ごとに調整するようにしてもよい。
【0134】
この場合、グリップローラ213に当接するピンチローラ214の当接力(押圧力)は、突起痕一つ一つの大きさ(直径)が第2の領域(非グリップ領域)702に近いほど小さくなるように設定する(図8−1を参照)。また、当接力の分布を一定とし、グリップローラの突起の大きさを、第2の領域に近いほど小さく設定してもよいし、当接力の分布と突起のサイズの分布の双方を変化させてもよい。
【0135】
具体的には、たとえば、グリップローラ213に当接するピンチローラ214の、グリップローラ213に対する当接力を、グリップローラ213における突起が設けられている部分では強くする。さらには、グリップローラ213における突起が設けられている部分のうち、境界703に近いほど、当接力(押圧力)が小さくなるように設定する。
【0136】
この場合、さらに、グリップローラ213に当接するピンチローラ214の、グリップローラ213に対する当接力(押圧力)に応じて擬似画素の濃度を調整する。このように、グリップローラ213に当接するピンチローラ214の、グリップローラ213に対する当接力(押圧力)に応じて、各擬似画素の濃度(透明度)を調整することにより、境界703を目立ちにくくすることができる。さらに、擬似画素を記録した領域と突起痕が生じた領域とを重複させ、疑似画像側も突起痕の大きさに応じた濃度補正量に分布させることで、擬似画素と突起痕との境界部分が目立ち、画質が低下することを抑制することができる。
【0137】
上述した実施の形態のプリンタ100においては、プリンタ100が備えるマイクロコンピュータ601によって疑似記録画像データを生成する例について説明したが、疑似記録画像データはプリンタ100が備えるマイクロコンピュータ601によって生成するものに限らない。プリンタ100が備えるマイクロコンピュータ601に代えて、プリンタドライバなどに疑似記録画像データを生成する機能をもたせることによって、プリンタ100以外の外部装置において疑似記録画像データを生成ようにしてもよい。
【0138】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、記録媒体Pに対して昇華転写方式の記録動作をおこなう記録部204と、外周方向に突出した突起を有し記録媒体Pの一方の面に当接し、記録部204による記録動作の対象となる記録媒体Pを、当該記録部204による記録位置に搬送するグリップローラ213と、を備える。そして、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、グリップローラ213によって搬送される記録媒体Pにおいて突起に接触した第1の領域701以外の第2の領域702に記録される各画素のうち、グリップローラ213における突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素の濃度を補正した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成し、生成した擬似記録画像データに基づいて記録部204を制御するようにしたことを特徴としている。
【0139】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、記録媒体Pの他方の面に対する記録動作に際してグリップローラ213の突起と接触することによって、第1の領域701に突起痕が生じた記録媒体Pの一方の面に対して記録動作をおこなう場合、突起痕が生じていない第2の領域702に記録される各画素のうちの所定の画素の濃度を補正することによる擬似画素を含む画像を記録することができる。
【0140】
これにより、グリップローラ213における突起のパターンにしたがったパターンで、第1の領域701に生じた突起痕を模して補正した擬似画素を含む画像を、第2の領域702に記録することができる。これによって、第1の領域701において白く抜けた部分(突起痕)が発生した状態と同様の状態を、第2の領域702において再現することができ、第1の領域701に生じた突起痕や、第1の領域701と第2の領域702との境界703を目立ちにくくすることができる。そして、これによって、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができる。
【0141】
また、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、所定の画素の濃度を、当該所定の画素の周囲の画素の濃度よりも低くすることにより当該所定の画素の濃度を補正することを特徴としている。
【0142】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、所定の画素の周囲の画素の濃度よりも低くすることによる擬似画素を含む画像を記録することができる。これにより、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、グリップローラ213における突起のパターンにしたがったパターンで、第1の領域701に生じた突起痕を模した色の薄い擬似画素を含む画像を、第2の領域702に記録することができる。
【0143】
そして、これにより、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、第1の領域701に生じた突起痕や、第1の領域701と第2の領域702との境界703を容易かつ確実に目立ちにくくすることができ、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができる。
【0144】
また、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、所定の画素の濃度を、元の画像データにおける所定の画素の濃度よりも所定の割合で低くすることにより擬似記録画像データを生成することを特徴としている。
【0145】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、各画素を特徴付ける色相、彩度、濃度(明度)に関する情報のうち、濃度に関する情報を調整することによって、所定の画素の濃度を、当該所定の画素の周囲の画素の濃度よりも低くすることができる。これにより、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、擬似画素を含む擬似記録画像データを生成するためにプリンタ100にかかる処理負担の増加を抑制しつつ、第1の領域に生じた突起痕や、第1の領域701と第2の領域702との境界703を目立ちにくくすることができる。
【0146】
また、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100においては、第1の領域701において、第2の領域702との境界703に近い位置ほど、当該境界から遠い位置よりも濃度補正量の大きい擬似画素を含む擬似記録画像データを生成するようにしてもよい。より具体的には、さらに、グリップローラ213に当接することにより記録媒体Pの一方の面に生じる突起痕の大きさが、境界703に近い位置ほど小さくなるように突起が設けられた(あるいはピンチローラ214の圧力を調整した)グリップローラ213を用いるとともに、第1の領域701に記録される各画素のうち、第2の領域702との境界703に遠い位置の画素ほど、当該境界703から近い位置の画素よりも濃度補正量または径の少なくとも一方を小さくした擬似画素を含む擬似記録画像データを生成し、第2の領域では、第1の領域における境界部の疑似画素と同等の濃度補正量である疑似記録画像データを生成するようにしてもよい。この場合、第1の領域701と第2の領域702との境界703をより目立ちにくくするとともに、第2の領域に極力高精細な画像を記録することができる。これにより、より品質の高い記録物を得ることができる。
【0147】
また、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、記録部204によって他方の面に記録動作がおこなわれた記録媒体Pの表裏を記録位置に対して反転する反転手段としての機構を備え、グリップローラ213が、さらに、反転した後の記録媒体Pを記録位置に搬送する。そして、反転後にグリップローラ213によって搬送され、他方の面に記録動作がおこなわれた記録媒体Pに対する記録動作にかかる擬似記録画像データを生成し、生成した擬似記録画像データに基づいて記録媒体Pの一方の面に対する記録動作をおこなうようにしたことを特徴としている。
【0148】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、一つの記録部204によって記録媒体Pの両面に記録動作をおこなうことができる。これにより、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができるプリンタ100の小型化を図ることができる。
【0149】
また、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、さらに、記録媒体Pの他方の面に記録される各画素のうち、グリップローラ213における突起の配列パターンに応じて決定された所定の画素の濃度を補正した擬似画素を含む擬似記録画像データを生成し、生成した擬似記録画像データに基づいて記録媒体Pの他方の面に対する記録動作をおこなうようにしたことを特徴としている。
【0150】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、記録媒体Pの一方の面における第1の領域701に生じた突起痕を模した擬似画素を含む画像を、当該一方の面における第2の領域702に加えて、記録媒体Pの他方の面(表面)全面に亘って記録することができる。これにより、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、記録媒体Pの他方の面(表面)と一方の面(裏面)とで、記録された画像の品質(画質)にばらつきが生じることを抑制し、他方の面(表面)に記録した画像と一方の面(裏面)に記録した画像とを並べて比較した場合の違和感などを生じにくくすることができる。
【0151】
たとえば、フォトブックなどと称される冊子のように、両面に画像を記録した記録媒体Pの一辺を綴じることによって形成した冊子においては、突起痕が生じない記録面(片面)と突起痕が生じた一方の面(裏面)とが並べて視認される場合がある。このような状況において、突起痕が生じない他方の面(表面)の全面に擬似画素を記録することにより、冊子における見開きのように、突起痕が生じない他方の面(表面)と突起痕が生じた一方の面(裏面)とが並べて視認される場合にも、記録媒体Pの違いによる記録品質の差異を目立ちにくくすることができ、両面の記録動作に際して一定した記録品質を確保することができる。
【0152】
この発明にかかるプリンタは、記録媒体Pの他方の面(表面)に記録動作をおこなう第1の記録部と、当該第1の記録部による記録面の裏面である一方の面(裏面)に記録動作をおこなう第2の記録部と、を備えたプリンタに適用し、当該プリンタにおいて、第1の記録部によって片面に記録動作がおこなわれた後の第2の記録部による記録動作にかかる擬似記録画像データを生成し、当該擬似記録画像データに基づいて、記録媒体Pの一方の面(裏面)にかかる記録動作をおこなうようにしてもよい。
【0153】
このようなプリンタによれば、記録媒体Pを反転する機構を備えていないプリンタにおいても、グリップローラ213における突起のパターンにしたがったパターンで、第1の領域701に生じた突起痕を模して補正した擬似画素を含む画像を、第2の領域702に記録することができる。
【0154】
これによって、第1の領域701において白く抜けた部分(突起痕)が発生した状態と同様の状態を、第2の領域702において再現することができ、第1の領域701に生じた突起痕や、第1の領域701と第2の領域702との境界703を目立ちにくくすることができる。そして、これによって、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができる。
【0155】
また、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、昇華転写方式により記録媒体Pの両面に記録動作をおこなう機構を備える既存のプリンタにおけるプリンタドライバなどのプログラムを変更するだけで、同一の記録面において一定した記録品質を確保することができる。これにより、ハードウエア構成を追加したり変更したりすることなく容易に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
以上のように、この発明にかかるプリンタは、記録媒体の両面への記録が可能なプリンタに有用であり、特に、昇華転写方式による記録動作をおこなうことによって記録媒体の両面への記録が可能なプリンタに適している。
【符号の説明】
【0157】
100 プリンタ
204 記録部
205 サーマルヘッド
206 プラテン
213 グリップローラ
214 ピンチローラ
701 第1の領域
702 第2の領域
703 境界
P 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10