特許第5996475号(P5996475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996475
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】異常工程の推定作業の支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20160908BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   B21C51/00 P
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-76127(P2013-76127)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-203117(P2014-203117A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】藤平 雅信
(72)【発明者】
【氏名】片山 亮
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−252342(JP,A)
【文献】 特開2005−257660(JP,A)
【文献】 特開2012−030260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程からなる製造ラインにおける異常工程を推定する作業をオペレータが行うに際し、前記推定作業を支援する支援システムであって、
前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、前記表示器は、前記製造ラインで製造される製造物に存在する欠陥の原因となった異常工程に関する情報を表示するように構成されていて、
前記製造ラインは製造物として帯板を製造するラインであり、前記欠陥は帯板上に存在する表面キズであるに際しては、前記表面キズのキズ位置をグループ化し、グループ化されたキズ位置に基づいて前記異常工程を推定し、推定された異常工程が前記表示器に表示され、
前記表面キズのキズ位置をグループ化するに際しては、前記表面キズ間の距離を求め、求めた距離が前記設備の仕様から得られた閾値以下である表面キズを、一つのグループにまとめるようにする
ことを特徴とする異常工程の推定作業の支援システム。
【請求項2】
複数の工程からなる製造ラインにおける異常工程を推定する作業をオペレータが行うに際し、前記推定作業を支援する支援システムであって、
前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、
前記表示器は、前記製造ラインで製造される製造物に存在する欠陥の原因となった異常工程に関する情報を表示するように構成されていて、
前記製造ラインは製造物として帯板を製造するラインであり、前記欠陥は帯板上に存在する表面キズであるに際しては、前記表面キズのキズ位置をグループ化し、グループ化されたキズ位置に基づいて前記異常工程を推定し、推定された異常工程が前記表示器に表示され、
前記表面キズのキズ位置をグループ化するに際しては、前記表面キズ間の距離を求め、求めた距離が前記製造物の形状乃至は寸法から得られた閾値以下である表面キズを、一つのグループにまとめるようにする
ことを特徴とする異常工程の推定作業の支援システム。
【請求項3】
前記複数の工程の少なくとも1つには、製造物に存在する欠陥を検出する欠陥検出装置
が備えられており、前記欠陥検出装置からの情報を基に、異常工程に関する情報を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の異常工程の推定作業の支援システム。
【請求項4】
前記製造ラインは製造物として帯板を製造するラインであり、前記欠陥は帯板上に存在する表面キズであるに際しては、
前記表面キズの特徴量を抽出し、抽出された特徴量に基づいて前記異常工程を推定し、推定された異常工程が前記表示器に表示されることを特徴とする請求項1又は2に記載の異常工程の推定作業の支援システム。
【請求項5】
前記表示器には、表面キズの特徴量及び/又はキズ位置が表示されることを特徴とする請求項1又は2に記載の異常工程の推定作業の支援システム。
【請求項6】
前記異常工程が、複数の設備により実現される工程である場合には、
前記複数の設備の中で異常状態にある設備を推定し、前記表示器に推定した設備の情報が表示されることを特徴とする請求項1又は2に記載の異常工程の推定作業の支援システム。
【請求項7】
前記帯板上でのキズ位置のピッチから、前記表面キズの原因となった設備ロールの径を推定し、推定された設備ロールの径から異常状態にある設備を推定することを特徴とする請求項に記載の異常工程の推定作業の支援システム。
【請求項8】
前記設備が圧延機であり、前記設備ロールが圧延ロールであることを特徴とする請求項に記載の異常工程の推定作業の支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被製造物を製造する製造ラインにおける異常工程を推定する作業をオペレータが行うに際し、この推定作業を支援する支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯板や条鋼材などの長尺材は、圧延工程、焼鈍工程、洗浄工程、表面処理工程などの複数の処理工程を経て製造されている。これら処理工程のいずれかには、長尺板の表面に発生したキズを検出する表面検査装置が備えられている。表面検査装置としては、CCDカメラで撮像した画像を画像処理することで、長尺板の表面キズの有無などを検出する画像処理装置が採用されることが多い。
【0003】
このような表面検査装置は、例えば、製造ラインの最終工程として設けられている検査工程や切断工程(スリッタ工程)に備えられており、長尺板に存在する表面キズを確実に検出するようにしている。表面検査装置により、表面キズが検出された長尺板は、キズが存在する部分をスリッタにより切断した上で製品として出荷される。
特許文献1は、画像処理の技術を用いた表面検査装置により、熱間圧延工程で製造された鋼板に存在する表面キズを検査する技術を開示している。
【0004】
すなわち、特許文献1には、熱間圧延ラインのランナウトテーブル上の水冷ゾーン内で鋼板の下面側表面を検査する装置において、前記鋼板の下面側表面に光を照射する光照射装置と、前記鋼板の下面側表面を撮影するビデオカメラと、少なくとも光照射部を透明材で覆った状態で前記光照射装置を収容する第1の防護ボックスと、少なくともレンズ部を透明材で覆った状態で前記ビデオカメラを収容する第2の防護ボックスと、前記第1及び第2の防護ボックス内にそれぞれエアを供給して各防護ボックス内を正圧にするエア供給手段と、前記ビデオカメラによる前記鋼板の下面側表面の撮影位置の上流側で該鋼板に高圧水を吹き付けて該鋼板表面の水を除去する水切り手段とを備えた熱間圧延ラインにおける鋼板の表面検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−277146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、製造ラインを構成する各工程に設置された表面検査装置で、表面キズが見つかった場合、現場のオペレータは、そのキズが発生した工程を推定し、必要であればキズの発生原因となっている工程のメンテナンスを行う。
経験を積んだオペレータであれば、表面検査装置が検出したキズに関するデータを基に、 表面キズが発生した工程を推定することができる。しかしながら、経験の浅いオペレータでは、表面検査装置が出力する検査結果を基に、表面キズの原因となっている工程を推定することは困難である場合が多い。前述した特許文献1は、熱間圧延ラインにおいてビデオカメラによって鋼板表面の鮮明な画像が得られるようにして、検査の手間の軽減や品質保証レベルの向上を図るものとなっているが、オペレータの熟練度に起因する上記問題の回避方法を開示するものとはなっていない。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点を鑑み、帯板や条鋼材などの長尺材に存在する表面キズが発生した工程をオペレータが推定するに際し、このキズ位置の推定作業、探査作業を支援するような支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る異常工程の推定作業の支援システムは、複数の工程からなる製造ラインにおける異常工程を推定する作業をオペレータが行うに際し、前記推定作業を支援する支援システムであって、前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、前記表示器は、前記製造ラインで製造される製造物に存在する欠陥の原因となった異常工程に関
する情報を表示するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記複数の工程の少なくとも1つには、製造物に存在する欠陥を検出する欠陥検出装置が備えられており、前記欠陥検出装置からの情報を基に、異常工程に関する情報を推定するとよい。
好ましくは、前記製造ラインは製造物として帯板を製造するラインであり、前記欠陥は帯板上に存在する表面キズであるに際しては、前記表面キズの特徴量を抽出し、抽出された特徴量に基づいて前記異常工程を推定し、推定された異常工程が前記表示器に表示されるとよい。
【0010】
好ましくは、前記製造ラインは製造物として帯板を製造するラインであり、前記欠陥は帯板上に存在する表面キズであるに際しては、前記表面キズのキズ位置をグループ化し、グループ化されたキズ位置に基づいて前記異常工程を推定し、推定された異常工程が前記表示器に表示されるとよい。
好ましくは、前記表示器には、表面キズの特徴量及び/又はキズ位置が表示されるとよい。
【0011】
好ましくは、前記異常工程が、複数の圧延機により実現される圧延工程である場合には、前記複数の圧延機の中で異常状態にある圧延機を推定し、前記表示器に推定した圧延機の情報が表示されるとよい。
好ましくは、前記異常工程が、複数の設備により実現される工程である場合には、前記複数の設備の中で異常状態にある設備を推定し、前記表示器に推定した設備の情報が表示されるとよい。
【0012】
好ましくは、前記帯板上でのキズ位置のピッチから、前記表面キズの原因となった設備ロールの径を推定し、推定された設備ロールの径から異常状態にある設備を推定するとよい。
好ましくは、前記設備が圧延機であり、前記設備ロールが圧延ロールであるとよい。
好ましくは、前記表面キズのキズ位置をグループ化するに際しては、前記表面キズ間の距離を求め、求めた距離が設備の仕様から得られた閾値以下である表面キズを、一つのグループにまとめるようにするとよい。
【0013】
好ましくは、前記表面キズのキズ位置をグループ化するに際しては、前記表面キズ間の距離を求め、求めた距離が前記製造物の形状乃至は寸法から得られた閾値以下である表面キズを、一つのグループにまとめるようにするとよい。
なお、本発明にかかる異常工程の推定作業の支援システムの最も好ましい形態は、複数の工程からなる製造ラインにおける異常工程を推定する作業をオペレータが行うに際し、前記推定作業を支援する支援システムであって、前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、前記表示器は、前記製造ラインで製造される製造物に存在する欠陥の原因となった異常工程に関する情報を表示するように構成されていて、前記製造ラインは製造物として帯板を製造するラインであり、前記欠陥は帯板上に存在する表面キズであるに際しては、前記表面キズのキズ位置をグループ化し、グループ化されたキズ位置に基づいて前記異常工程を推定し、推定された異常工程が前記表示器に表示され、前記表面キズのキズ位置をグループ化するに際しては、前記表面キズ間の距離を求め、求めた距離が前記設備の仕様から得られた閾値以下である表面キズを、一つのグループにまとめるようにすることを特徴とする。
本発明にかかる異常工程の推定作業の支援システムの最も好ましい他の形態は、複数の工程からなる製造ラインにおける異常工程を推定する作業をオペレータが行うに際し、前記推定作業を支援する支援システムであって、前記支援システムは、オペレータが確認可能な表示器を有し、前記表示器は、前記製造ラインで製造される製造物に存在する欠陥の原因となった異常工程に関する情報を表示するように構成されていて、前記製造ラインは製造物として帯板を製造するラインであり、前記欠陥は帯板上に存在する表面キズであるに際しては、前記表面キズのキズ位置をグループ化し、グループ化されたキズ位置に基づ
いて前記異常工程を推定し、推定された異常工程が前記表示器に表示され、前記表面キズのキズ位置をグループ化するに際しては、前記表面キズ間の距離を求め、求めた距離が前記製造物の形状乃至は寸法から得られた閾値以下である表面キズを、一つのグループにまとめるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異常工程の推定作業の支援システムによれば、帯板や条鋼材などの長尺材に存在する表面キズが発生した工程を、オペレータの経験度合いに左右されることなく、確実に推定乃至は探知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】長尺材の製造ラインを模式的に示した図である。
図2】本発明の異常工程を推定する作業の支援システムを模式的に示した図である。
図3】キズ画像データからの特徴量の抽出を説明するための図である。
図4】キズ分類の手法を説明するための図である。
図5】キズの分布座標を基にしたクラスタリングを説明するための図である。
図6】帯板上でのキズの分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る異常工程を推定する作業の支援システム1(以下、単に支援システムと呼ぶ)を、図を基に説明する。
まずは、支援システム1を説明する前に、本支援システム1が配備される製造ライン2の説明を行う。
図1は、本実施形態の支援システム1が設けられた製造ライン2を示した模式図である。
【0017】
この製造ライン2は、薄鋼鈑などのような帯板を製造するラインの一例である。この図
に示すように、例えば、自動車や家電等の製造に用いられる帯板は、熱延工程3において熱延され、冷延工程4にて所定厚みの薄板に冷間状態で圧延される。また、帯板は、焼鈍工程5にて連続焼鈍を施され、その後、酸洗工程6にて酸洗いされてスケール等が除去され、表面処理工程7にて表面処理され、切断工程8にて、表面キズなどが存在する部分を切断した後に出荷される。切断工程8はスリッタ装置により構成されている。
【0018】
このように、帯板は、熱延工程3、冷延工程4、焼鈍工程5、酸洗工程6、表面処理工程7、切断工程8などの複数の工程に、所定の速度で通板されることによって製造される。
切断工程8を初めとして、各工程のいずれかには、通板される帯板の表面を検査し、表面キズの有無を検出する表面検査装置9が設けられている。図1に示すように、この表面検査装置9は、最下流側に位置する切断工程8に設けられると共に、冷延工程4、表面処理工程7にも表面検査装置9が配備される。
【0019】
なお、本明細書では、帯板上に存在する表面キズ(欠陥)を、単にキズと表記することもある。
表面検査装置9(すなわち、欠陥検出装置)としては、帯板の表面が所定の輝度となるように照明を行う照明手段と、照明手段で照明されている帯板の表面をCCDカメラなどで撮像する撮像手段と、撮像手段で得られた画像に対して画像処理を行うことで、帯板の表面に存在するキズに関するデータ(キズ分類データ、詳細は後述)を算出する画像処理装置12と、を有するような装置が採用される。
【0020】
この画像処理装置12は、撮像手段で撮像した画像を取り込むフレームメモリとこのフレームメモリ上のデータに対して画像処理を行う処理手段とから構成されている。
画像処理装置12は、以下に示すような処理内容(画像処理工程)を有している。
まず、画像処理装置12で行われる画像処理工程は、撮像画像に対して画像処理を行うことで、キズの特徴量を算出する特徴量算出工程20を有している。
【0021】
図3に示すように、特徴量算出工程20は、得られた撮像画像に対して2値化処理、グレースケール化処理などを行うと共にノイズ除去処理を行って、キズ部分のみが浮かび上がるようにする。得られたキズ画像から、キズ特徴量データ、例えば、キズ部分の面積、輝度値(最大輝度値)、キズ部分の縦横比を算出する。
算出されたキズ特徴量データは、画像処理装置12のキズ分類工程21へ送られ、キズ特徴量データを基にして、キズの種別分類が行われる。
【0022】
例えば、図4(a)に示すように、帯板の表面に存在するキズとしては、スジ状のキズ(スジ)、小さな単一のキズ(ポチ)、広い範囲にわたって濃淡が存在するようなキズ(汚れ)、前述したポチと呼ばれる小さなキズが狭い部分に密集して存在するキズ(凝集)などがある。
キズ分類工程21では、表面キズの特徴量データから、帯板上に存在するキズの分類を行う。例えば、縦横比が大きなキズ(縦が横に比べて非常に大きなキズ)は、スジであると判別し、縦横比は略1であって面積がある閾値以下のものはポチであると判断する。キズ分類工程21は、分類したキズの個数もカウントし、図4(b)に示すような、分類されたキズの発生度数グラフも作成するようにしている。このグラフは、後述する表示器11に表示され、オペレータMに提示されるようにしてもよい。
【0023】
以上述べたキズ分類工程21を経ることで、キズ種別データを得ることができる。
さらに、画像処理装置12は、撮像画像に対して画像処理を行うことで、キズの座標位置を算出するキズ座標算出工程22を有している。
キズ座標算出工程22は、撮像手段により得られた撮像画像から、表面キズが存在する画像上の位置を検出し、その画像位置を実空間上の位置へと変換することで、帯板の表面における表面キズの位置を求めるものである。例えば、帯板の先端部の右端側(通板方向を向いて右側)に座標原点が設定され、帯板の幅方向を向く方向にX軸、帯板の先端から後端を向く方向にY軸が設定された座標を考える。キズ座標算出工程22は、この座標軸上でのキズの位置(表面キズの座標)を算出する。
【0024】
キズ座標算出工程22はで算出された表面キズの座標は、クラスタリング工程23へ送
られる。クラスタリング工程23では、キズ座標算出工程22にて得られた表面キズの座標を基に、存在位置が隣接するしているキズを一つのグループとして纏める(グループ化する、言い換えれば、クラスタリングする)ようにしている。具体的には、閾値付き最短距離法を用いて、表面キズをクラスタリングする。
【0025】
図5には、閾値付き最短距離法による表面キズのクラスタリングのやり方が示されている。この図の如く、閾値付き最短距離法によれば、帯板上に分布する表面キズの一つに着目し、当該表面キズと他の表面キズとの距離(帯板上での距離)を算出する。この距離が所定の閾値Rmax(例えば、Rmax=1m)より小さいものを一つの群に属する表面キズと認識する。この処理を、帯板上に存在する全ても表面キズに適用することで、表面キズをグルーピング化したキズグループデータを得ることが可能となる。
【0026】
なお、このクラスタリング工程23で用いる所定の閾値Rmaxとしては、設備の仕様から得られた値を用いるようにすることが好ましい。例えば、設備が圧延機の場合、当該圧延機に備えられた圧延ロールの直径や外周長などが閾値Rmaxとして採用可能である。設備が設備ロールを有さない場合は、設備自体の長さに関する値や帯板(製造物)が設備を通過する速度に対応する値を閾値Rmaxとして採用可能である。
【0027】
また、クラスタリング工程23で用いる所定の閾値Rmaxとして、製造物の形状や寸法に関係する値を採用可能である。例えば、製造物が帯板を巻き取ったコイル材であり、この巻き取ったコイル材の巻回間に異物が入り込み、表面キズが発生した場合を考えてみる。発生した表面キズは、帯板の表面と、コイル材の周長に対応する距離だけ離れた位置の裏面に発生することになる。この2つの表面キズ(帯板の表面のキズと裏面のキズ)は、一つの異物で発生した可能性が大であり、互いに関連していて1つのグループにグループ化されるべき表面キズと考えられる。このような状況でのグループ化を実現すべく、グループ化の閾値Rmaxとして、製造物の形状や寸法、例えば、コイル材の直径や外周長を採用するとよい。また、グループ化される表面キズは、帯板の表面、裏面の両方に存在するものを対象とするとよい。
【0028】
以上求めたキズ種別データとキズグループデータは、ひとまとめにされて、キズ分類データとして画像処理装置12内に記録される。画像処理装置12内に記録されたキズ分類データは、図2に示すように、支援システム1に備えられた上位コンピュータ10へ転送される。
次に、本実施形態の支援システム1の詳細を述べることにする。
【0029】
本実施形態の支援システム1は、前述した特徴量算出工程20、キズ分類工程21、キズ座標算出工程22、クラスタリング工程23を有する画像処理装置12(表面検査装置9)を備えている。さらに、画像処理装置12から得られたキズ分類データを基に、キズの原因となった異常工程を算出する上位コンピュータ10(以降、単にコンピュータ10と表記する)と、異常工程に関する情報を表示可能な表示器11(以降、支援モニタと表記する)を有している。
【0030】
支援モニタ11は、液晶モニタやCRTモニタで構成され、コントロール室内に設置されている。オペレータMは常にこの支援モニタ11を視聴可能な状態となっている。この支援モニタ11はコンピュータ10に接続されていて、このコンピュータ10は、支援モニタ11にて表示する一部又は全部の情報を算出する。
コンピュータ10には、画像処理装置12に記録されたキズ分類データが入力されるようになっており、当該コンピュータ10は、キズ分類データなどを入力値として支援モニタ11で表示するための情報を計算する計算モデル(異常工程推定モデル)を備えている。
【0031】
具体的には、このコンピュータ10は、内部に演算装置を備えると共に記憶装置を備えていて、当該コンピュータ10に対する指示や外部からの信号を取り込むための入力装置や演算結果を表示する出力装置を備えている。
異常工程推定モデルはプログラム化されてハードディスクで構成された記憶装置に記憶されており、この異常工程推定モデルをMPUなどで構成された演算装置により演算する。画像処理装置12内に記録されたキズ分類データからコンピュータ10へのデータの転
送は、USBケーブルで接続することで実現されてもよく、無線LAN等による接続で実現されてもよい。コンピュータ10で演算された結果(異常工程推定モデルの結果)は、記憶装置に記録されると共に、出力装置すなわち支援モニタ11に表示される。
【0032】
コンピュータ10で実行される異常工程推定モデルは、以下の処理工程を有している。
まず、図2に示す如く、異常工程推定モデルは、上工程遡り工程30を有している。この上工程遡り工程30は、表面キズが存在する座標値を、各工程における座標値へと変換する変換工程である。
例えば、帯板の製造ライン2においては、熱延工程3や冷延工程4のような圧延工程が存在する。圧延工程では、圧延材が圧延され板厚が減少すると共に、長手方向の長さが増大するようになる。そのため、例えば、熱延工程3で発生した表面キズの座標位置は、冷延工程4を経ることで圧延材の長さが増長し、表面キズの位置(座標値)が異なるものとなる。係る状況を勘案し、各工程で得られた表面キズの位置は、上工程遡り工程30を経て座標変換され、各工程と表面キズの座標値(キズグループデータ)との関連付けが行われるようになる。
【0033】
上記した処理を行うために、上工程遡り工程30は圧延モデルなどを有しており、圧延材の長手方向の伸び率、伸び量などを算出できるようになっている。
上工程遡り工程30を経て、各工程と関連づけられた表面キズの座標値(キズグループデータ)は、関連設備検索工程31に送られる。関連設備検索工程31は、入力された表面キズの座標値やキズ分類データから、その表面キズの原因となった工程(異常工程)を割り出すものとなっている。
【0034】
図6は、横軸に帯板の幅方向、縦軸に帯板の長手方向をとって、表面キズが存在する位置をプロットした図である。この図中のAに示される表面キズは、帯板の長手方向に一定の距離間隔で存在する。このような表面キズの場合、その原因は通過した上工程の設備に起因するものであると推定し、異常が発生している工程は、熱延工程3乃至は冷延工程4乃至は酸洗工程6であると推定する。この推定結果は、支援モニタ11に表示され、オペレータMに提示される。
【0035】
加えて、異常工程推定モデルは、関連設備検索工程31で抽出された異常工程に関し、通過した設備に配備された設備ロールの内、どの設備ロールがキズの原因であるかを推定するロール検索工程32を有している。
例えば、冷延工程4では、複数の圧延機(複数の設備)がタンデムに配備され、複数の圧延機を帯板が連続的に通過することで圧延が行われる。各圧延機のワークロール(設備ロール)の直径はそれぞれの圧延機で異なる場合が多い。その場合、表面キズの位置座標値を参照することで、キズの発生ピッチを知ることができる。このピッチを基に、キズ発生の原因となるロールの直径を割り出すことが可能である。キズの原因となるワークロール径が割り出された場合、その径のワークロールを備えた圧延機の特定は容易に行われ、係る原因となる圧延機の情報は、表示器11に表示されて、オペレータMに通知することができる。
【0036】
また、図6のBに示すように、表面キズの位置座標データを参照した場合、キズが帯板の長手方向(Y軸方向)の一部分であって、幅方向(X軸方向)に略一列に存在する場合、製造中に帯板が一旦停止し、停止したとき乃至は再圧延開始時に、ワークロールにより帯板にキズが生成された状況が考えられる。このようなキズが判別できた際には、関連設備検索工程31により、「帯板製造中に圧延が一時的に止まった工程」や「帯板製造中に圧延が一時的に止まった圧延機」を推定し、推定結果は、表示器11に表示されオペレータMに通知することができる。
【0037】
以上述べた支援システム1を用いて、異常工程を推定する手法について、以下述べる。
図1に示すような製造ライン2において、帯板を製造している状況を考える。帯板は、熱延工程3、冷延工程4、焼鈍工程5、酸洗工程6、表面処理工程7、切断工程8などの複数の工程に、所定の速度で通板されることによって製造される。製造中は、表面検査装置9によりリアルタイムで表面検査が行われる。
【0038】
表面検査装置9では、特徴量算出工程20が実行されることで、キズ部分の面積、輝度
値、キズ部分の縦横比などのキズ特徴量データが算出される。また、キズ分類工程21が実行されることで、分類されたキズに関する情報、分類されたキズの発生度数情報が算出される。表面検査装置9がコンピュータ10にLAN等により接続されている場合、これらキズ特徴量データ、分類されたキズに関する情報、分類されたキズの発生度数情報(グラフ)などのキズ種別データが支援モニタ11に表示される。
【0039】
さらに、表面検査装置9では、キズ座標算出工程22が実行されることで、表面キズの座標位置が算出され、クラスタリング工程23により、表面キズのグループ化が行われ、キズグループデータが算出される。係るキズグループデータも支援モニタ11に表示される。
帯板の圧延中乃至は圧延後に、支援システム1のコンピュータ10では、表面検査装置9から得られたキズ種別データ(キズ種別データやキズグループデータ)を基に、異常工程推定モデルが実行される。
【0040】
具体的には、上工程遡り工程30及び関連設備検索工程31が行われ、キズ分類データから、その表面キズの原因となった工程(異常工程)が割り出される。推定された異常工程は支援モニタ11に表示される。支援モニタ11を見たオペレータMは、製造ライン2のいずれかの工程に異常が発生していることを知り、この工程のメンテナンスの必要性について、判断を行う。また、支援モニタ11には、表示された異常状況に対応する過去の対応実績も表示されるので、オペレータMは迅速且つ適切な対応をとることができる。
【0041】
関連設備検索工程31の結果、例えば、異常工程が冷延工程4であると推定される場合、ロール検索工程32が実行され、キズ発生の原因となるロールの直径を割り出し、その径のワークロールを備えた圧延機の特定を行う。異常が発生していると推定された圧延機の情報は、支援モニタ11に表示される。支援モニタ11を見たオペレータMは、冷延工程4を構成する圧延機に異常が発生していることを知り、この圧延機のメンテナンスの必要性について、判断を行う。また、支援モニタ11には、表示された異常状況に対応する過去の対応実績も表示されるので、オペレータMは迅速且つ適切な対応をとることができる。
【0042】
以上述べたように、本実施形態の支援システム1を用いることで、帯板や条鋼材などの長尺材Wに存在する表面キズが発生した工程を、オペレータMの経験度合いに左右されることなく、確実に推定乃至は探知することができるようになる。
以上、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0043】
例えば、オペレータMに各種情報を提示する表示器11として、視覚に訴える支援モニタを例示したが、オペレータMに対し音声で情報を伝える機器を表示器11として採用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 支援システム
2 製造ライン
3 熱延工程
4 冷延工程
5 焼鈍工程
6 酸洗工程
7 表面処理工程
8 切断工程
9 表面検査装置
10 上位コンピュータ(コンピュータ)
11 表示器(支援モニタ)
12 画像処理装置
20 特徴量算出工程
21 キズ分類工程
22 キズ座標算出工程
23 クラスタリング工程
30 上工程遡り工程
31 関連設備検索工程
32 ロール検索工程
M オペレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6