(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2シール部材は、前記圧縮機の吸気側と常に連通する空間と、前記シリンダの内部空間とを気密に隔離することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の極低温冷凍機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0012】
図1は、本発明のある実施形態である極低温冷凍機を示す断面図である。本実施形態では、極低温冷凍機してギフォード・マクマホン(GM)型冷凍機を例に挙げて説明するがこれに限定されるものではない。
【0013】
図1に示すGM型冷凍機は、ガス圧縮機1とコールドヘッド2とを有する。コールドヘッド2は、ハウジング23とシリンダ部10とを有する。
【0014】
ガス圧縮機1は、排出配管1bが接続された吸気口から作動ガスを吸い込み、これを圧縮した後に吐出口に接続された供給配管1aに高圧の作動ガスを供給する。作動ガスとしては、ヘリウムガスを用いることができる。
【0015】
本実施形態は、極低温冷凍機として2段式のGM型冷凍機を示している。2段式のGM型冷凍機は、第1段目シリンダ10aと第2段目シリンダ10bの二つのシリンダを含むシリンダ部10を有している。
【0016】
第1段目シリンダ10aの内部には、第1段目ディスプレーサ3aが挿入される。また、第2段目シリンダ10bの内部には、第2段目ディスプレーサ3bが挿入される。
【0017】
第1段目ディスプレーサ3aと第2段目ディスプレーサ3bは、相互に連結されている。第1段目ディスプレーサ3aは第1段目シリンダ10aの内部で、また第2段目ディスプレーサ3bは第2段目シリンダ10bの内部でシリンダの軸方向(図中、矢印Z1,Z2で示す方向)に往復移動可能な構成とされている。なお、本実施形態では、シリンダの軸方向を単に「軸方向」という用語を使用することがある。便宜上、軸方向に関して膨張空間又は冷却ステージに相対的に近いことを「下」、相対的に遠いことを「上」と呼ぶことがある。つまり、低温側端部から相対的に遠いことを「上」、相対的に近いことを「下」と呼ぶことがある。なお、こうした表現はGM型冷凍機が取り付けられたときの配置とは関係しない。例えば、GM型冷凍機は鉛直方向に膨張空間を上向きにして取り付けられてもよい。
【0018】
この各ディスプレーサ3a,3bの内部には、ガス流路5a,5bが形成されている。蓄冷材4a,4bは、このガス流路5a,5bの内部に充填されている。作動ガスは、ガス流路5a,5bを蓄冷材4a,4bと熱交換しながら通過する
また、上部に位置する第1段目ディスプレーサ3aは、上方(Z1方向)に向けて延出する下部駆動軸33bに連結されている。この下部駆動軸33bは、後述するスコッチヨーク機構22の一部である。
【0019】
第1段目膨張室11aは、第1段目シリンダ10aの低温側端部に形成されている。具体的には、第1段目膨張室11aは、第1段目ディスプレーサ3aの低温側端部と第1段目シリンダ10aの底面との間に形成されている。
【0020】
また、第1段目シリンダ10aの
高温側端部(
図1に矢印Z1で示す方向側の端部)には、ディスプレーサ3a,3bの移動を許容するための空間である上部室13が形成されている。上部室13は、ディスプレーサ3a,3bの内部にガスを流出入するための流路の一部を兼ねても良い。
【0021】
更に第2段目膨張室11bは、第2段目シリンダ10bの
低温側端部に形成されている。具体的には、第2段目膨張室11bは、第2段目シリンダ10bの低温側端部と第2段目シリンダ10bの底面との間に形成されている。
【0022】
上部室13と第1段目膨張室11aは、ガス流路L1、第1段目ガス流路5a、及びガス流路L2を介して接続されている。ガス流路L1は、第1段目ディスプレーサ3aの上部に形成されている。またガス流路L2は、第1段目ディスプレーサ3aの下部に形成されている。
【0023】
また、第1段目膨張室11aと第2段目膨張室11bは、ガス流路L3、第2段目ガス流路5b、ガス流路L4を介して接続されている。ガス流路L3は第2段目ディスプレーサ3bの上部に形成されており、ガス流路L4は第2段目ディスプレーサ3bの下部に形成されている。
【0024】
第1段目冷却ステージ6は、第1段目シリンダ10aの外周面で、第1段目膨張室11aと対向する位置に取り付けられている。また第2段目冷却ステージ7は、第2段目シリンダ10bの外周面で、第2段目膨張室11bと対向する位置に取り付けられている。
【0025】
前記の第1段目及び第2段目ディスプレーサ3a,3bは、スコッチヨーク機構22により駆動される。
【0026】
図2は、スコッチヨーク機構22を拡大して示している。
【0027】
スコッチヨーク機構22は、ハウジング23に形成された駆動機構収容室24内に設けられている。このスコッチヨーク機構22は、クランク14とスコッチヨーク32を有している。駆動機構収容室24は、排出配管1bを介して圧縮機の吸気口に連通する。そのため、駆動機構収容室24は、常に圧縮機の吸気口と同程度の低圧に維持される。
【0028】
クランク14は、モータ15の回転軸(以下、駆動回転軸15aという)に固定される。このクランク14は、駆動回転軸15aの取り付け位置から偏心した位置に偏心ピン14aを有している。従って、クランク14を駆動回転軸15aに取り付けると、偏心ピン14aは駆動回転軸15aに対して偏心する。
【0029】
スコッチヨーク32は、上部駆動軸33a、下部駆動軸33b、ヨーク板36、及びころ軸受37等を有している。
【0030】
上部駆動軸33aは、ヨーク板36の上部中央位置から上方(Z1方向)に延出するよう設けられている。この上部駆動軸33aは、ハウジング23内に設けられた軸受17aに支承されている。上部駆動軸の上方には、駆動軸の移動を許容するための空間が設けられる。この空間は、後述するアシスト室41(アシスト部48)としても機能する。言い換えると、上部駆動軸33aの上端部の所定範囲はアシスト室41内に挿入されている。
【0031】
また下部駆動軸33bは、ヨーク板36の下部中央位置から下方(Z2方向)に延出するよう設けられている。この下部駆動軸33bは、ハウジング23内に設けられた軸受17bに支承されている。
【0032】
よってスコッチヨーク32は、各駆動軸33a,33bが軸受17a,17bに支持されることにより、ハウジング23内で上下方向(図中矢印Z1,Z2方向)に往復移動する。
【0033】
また、ヨーク板36は、横長窓39を有している。この横長窓39は、上部駆動軸33a,33bの延出する方向及び駆動回転軸15aの両方に対して直交する方向(
図2中、矢印X1,X2方向)に延在している。
【0034】
ころ軸受37は、横長窓39内に回転可能に配設されている。また、ころ軸受37の中心位置には、偏心ピン14aと係合する係合孔38が形成されている。
【0035】
従って、モータ15を駆動し駆動回転軸15aを回転させると、偏心ピン14aは円を描くように回転する。このため、スコッチヨーク32は、駆動回転軸15aの回転に伴い図中矢印Z1,Z2方向に往復移動する。この際、ころ軸受37は、横長窓39内を図中矢印X1,X2方向に往復移動する。
【0036】
スコッチヨーク32の下部に配設された下部駆動軸33bは、第1段目ディスプレーサ3aに連結されている。よって、スコッチヨーク32が図中矢印Z1,Z2方向に往復移動することにより、第1段目ディスプレーサ3a及びこれに接続された第2段目ディスプレーサ3bは第1段目及び第2段目シリンダ10a,10b内で矢印Z1,Z2方向に往復移動する。
【0037】
前記のように、スコッチヨーク機構22は、モータ15により駆動される。よって、各ディスプレーサ3a,3bに負荷が印加されるとスコッチヨーク機構22を介してモータ15への負荷トルクとして印加される。
【0038】
ハウジング23は、上部駆動軸33aと対応する位置にアシスト部48を有している。このアシスト部48は、内部にアシスト室41が形成されている。
【0039】
このアシスト室41は、上部駆動軸33aの上端部とハウジング23との間に形成される空間である。上部駆動軸33aの上部所定範囲は、このアシスト室41内で図中矢印Z1,Z2方向に移動可能な構成とされている。
【0040】
上部シール35aは、駆動機構収容室24とアシスト室41とを気密に隔離するものである。上部シール35aは、ハウジングと上部駆動軸33aとの間に配置され、上部駆動軸33aを支持する。上部シール35aとしては、例えばスリッパーシールやクリアランスシールなどを用いることができる。なお、軸受17aと上部シール35aとを一体としてもよい。
【0041】
また、上部駆動軸33aは、上部シール35aを貫通して、駆動機構収容室24からアシスト室41に至るように延在する。このように、上部シール35aは、上部駆動軸33aの移動を許容し、かつ駆動機構収容室24とアシスト室41との間の気密性を維持する構成とされている。
【0042】
アシスト室41は、分岐配管40を介してガス圧縮機1の供給配管1aに接続されている。よって、アシスト室41は、ガス圧縮機1から高圧の作動ガスが供給される。
【0043】
なお、
図1に示す例では、ハウジング23の外部に配設された分岐配管40を介してガス圧縮機1から作動ガスをアシスト室41に供給する例を示している。
【0044】
しかしながらハウジング23内に供給配管を形成し、この供給配管を用いてガス圧縮機1からロータリバルブRVに供給された高圧の作動ガスをアシスト室41に供給することとしてもよい。
次に
図1に戻り、バルブ機構について説明する。
【0045】
バルブ機構は、ガス圧縮機1から上部室13に至る作動ガスの流れ経路途中に設けられている。このバルブ機構は、ガス圧縮機1から吐出された高圧の作動ガスを上部室13を介して膨張空間内に導く供給用バルブ(V1)と、作動ガスを上部室13を介して膨張空間からガス圧縮機1に還流させる排気用バルブ(V2)とを有している。
【0046】
本実施形態では、バルブ機構としてロータリバルブRVを用いた例を示している。
しかしながら、バルブ機構はこれに限定されるものではなく、例えばスプールバルブ機構、また電子制御される電磁弁を用いたバルブ機構等を用いることも可能である。
【0047】
ロータリバルブRVは、ステータバルブ8とロータバルブ9とを有する。
【0048】
ロータバルブ9は、ハウジング23内に回転可能に支持されている。これに対してステータバルブ8は、ピン19によりハウジング23に回転しないように固定されている。
【0049】
ロータバルブ9は、スコッチヨーク機構22の偏心ピン14aが接続されている。よって、モータ15の回転に伴い偏心ピン14aが回転すると、ロータバルブ9はステータバルブ8に対して回転する。
【0050】
またハウジング23は、ガス流路21を有している。このガス流路21は、一端が上部室13に接続されると共に、他端がロータリバルブRVに接続している。
【0051】
ロータバルブ9の回転に伴い供給用バルブV1が開くと、ガス圧縮機1から高圧の作動ガスがガス流路21を通り上部室13に供給される。一方、ロータバルブ9の回転に伴い排気用バルブV2が開くと、寒冷を発生する。そして、寒冷を発生して低圧となった作動ガスは、上部室13からガス流路21を通りガス圧縮機1に還流する。
【0052】
上部室13への作動ガスの供給(吸気)動作と、上部室13からの作動ガスの回収(排気)動作は、モータ15によりロータバルブ9が回転することにより繰り返し実施される。作動ガスの吸排気の繰り返し動作と、ディスプレーサ3a,3bの往復駆動は、共にクランク14の回転に同期している。
【0053】
そこで、作動ガスの供給と回収の繰り返しの位相と、各ディスプレーサ3a,3bの往復駆動の位相とを適当に調節することにより、第1段目及び第2段目膨張室11a,11b内で作動ガスが膨張して寒冷が発生する。
【0054】
次に、スコッチヨーク機構22に設けられた上部駆動軸33a及び下部駆動軸33bの構成に注目すると共に、アシスト室41を設けたことによりスコッチヨーク機構22に作用するアシスト力について説明する。
【0055】
なお以下の説明では、
図1に示したGM冷凍機の基本構成を示した
図3を用いて説明するものとする。
図3に示すGM冷凍機は、図示及び説明の便宜を図るために1段式のGM冷凍機を示しており、またロータリバルブRVも供給用バルブV1及び排気用バルブV2を簡略化して図示している。また
図3においては、クランク14,偏心ピン14a,モータ15,及びころ軸受37等の図示は省略している。
【0056】
図3は、シリンダ部10内でディスプレーサ3が移動し、膨張室11の容積が最大になった状態を示している。この状態からディスプレーサ3を下動(矢印Z2方向に移動)させる場合、供給用バルブV1を閉じると共に、排気用バルブV2を開く。これにより、膨張室11内の作動ガスは、ディスプレーサ3内に配設された蓄冷材4内を通り、その後にガス流路21及びロータリバルブRV(排気用バルブV2)等を通りガス圧縮機1の吸気口に流入する。
【0057】
蓄冷材4は、冷却効率を高めるためにディスプレーサ3内に高密度に配設されている。よって、作動ガスが蓄冷材4内を通過する際の圧力損失は大きくなる。この圧力損失によりディスプレーサ3に印加される荷重は、下部駆動軸33bを介してスコッチヨーク機構22に伝達され、このスコッチヨーク機構22を駆動するモータ15にモータ負荷トルクとして印加される。
【0058】
このようにモータ15には、作動ガスが蓄冷材4内を通過する際の圧力損失により一時的に大きなモータ負荷トルクが印加される。そして、所定値以上のモータ負荷トルクが印加された場合、モータ15にスリップが発生し、正常な冷凍機のサイクル運転を行うのが不可能となる可能性があることは前述した通りである。
【0059】
これに対して本実施形態に係るGM冷凍機は、ハウジング23にアシスト室41が形成されている。また上部駆動軸33aは、このアシスト室41内にディスプレーサ3の移動方向(図中矢印Z1,Z2方向)に移動可能に挿入されている。
【0060】
またアシスト室41には、分岐配管40が接続されている。分岐配管40は、ガス圧縮機1と供給用バルブV1とを接続する供給配管1aを分岐させた配管である。よって、ガス圧縮機1で生成された高圧の作動ガスは、分岐配管40を介してアシスト室41に供給される。
【0061】
しかしながら、アシスト室41と駆動機構収容室24は、上部シール35aによりシールされ気密に画成された構成となっている。また上部シール35aにより、アシスト室41から駆動機構収容室24への高圧の作動ガスのリークが抑制されている。
【0062】
従って、高圧の作動ガスがガス圧縮機1からアシスト室41に供給されると、駆動機構収容室24との圧力差により、上部駆動軸33aには下方向の荷重が付勢される。
前記のように上部駆動軸33aは、スコッチヨーク機構22を介してディスプレーサ3に接続されている。よって、アシスト室41に供給された作動ガスの圧力により、ディスプレーサ3は下方向に向けて(膨張室11の容積が小さくなる方向に向けて)移動付勢される。
【0063】
即ち、アシスト室41に供給された作動ガスの圧力は、スコッチヨーク機構22によりディスプレーサ3が下方向に向けて移動付勢する際、これをアシストするアシスト力として作用する。このアシスト力を適正なタイミングで印加することにより、モータ15に印加されるモータ負荷トルクは低減される。
【0064】
このように本実施形態に係るGM冷凍機は、アシスト室41に供給された作動ガスによりモータ負荷トルクが低減される。このため、蓄冷材4内を流れる作動ガスによる圧力損失が大きい場合であっても、モータ15に一時的に大きな負荷トルクが発生することを防止することができる。
【0065】
ここで、上部シール35aを通過する上部駆動軸33aの直径(図中、A1で示す)と、下部シール35bを通過する下部駆動軸33bの直径(図中、B1で示す)に注目する。
【0066】
本実施形態では、上部シール35aを通過する上部駆動軸33aの直径A1と、下部シール35bを通過する下部駆動軸33bの直径B1を異ならせている(A1≠B1)。
図3に示す例では、上部駆動軸33aの直径A1を下部駆動軸33bの直径B1に対して大きく設定している(A1>B1)。
【0067】
次に、このように上部駆動軸33aと下部駆動軸33bの直径(断面積)を異ならせた場合において、スコッチヨーク32に作用する力について考察する。
【0068】
いま、ガス圧縮機1から高圧の作動ガスが供給されたときのアシスト室41の圧力をアシスト空間圧力Pとし、駆動機構収容室24の圧力をハウジング室圧力P
Lとし、シリンダ部10内の圧力をシリンダ内圧力P
Rとする。また、上部駆動軸33aの上部シール35aを通過する領域の断面積を上部断面積S
Uとし、下部駆動軸33bの下部シール35bを通過する領域の断面積を下部断面積S
Lとする。
【0069】
そして、スコッチヨーク32に作用するアシスト力をFとすると、このアシスト力Fは次のように示される。なお、下方向(Z2方向
)を正とす
る。
【0070】
F=(P−P
L)×S
U−(P
R−P
L)×S
L…(1)
ここで、アシスト空間圧力P、ハウジング室圧力P
L、及びシリンダ内圧力P
Rは、GM冷凍機の運転条件や冷凍性能、耐圧仕様等により概ね定まってしまい、変更することは容易ではない。これに対し、上部駆動軸33aの上部断面積S
U及び下部駆動軸33bの下部断面積S
Lは、GM冷凍機の運転条件や冷凍性能等に拘らず比較的容易に変更することが可能である。
【0071】
よって、上部断面積S
Uと下部断面積S
Lを適宜設定することにより、各圧力を変更することなくアシスト力Fを調整することが可能となる。
【0072】
即ち、(1)式におけるアシスト空間圧力P、駆動機構収容室圧力P
L、及びシリンダ内圧力P
Rは前記のようにGM冷凍機の運転条件により決まる値である。
【0073】
また(1)式より、上部断面積SUを下部断面積SLに対して大きくすることにより、アシスト力Fは増大することが分かる。これに対して上部駆動軸33aの直径A2を下部駆動軸33bの直径B2に対して小さく設定した場合(
A2<B2)には、(1)式よりアシスト力Fは減少することが分かる。
【0074】
このように、上部駆動軸33aと下部駆動軸33bの直径(断面積)を異ならせることにより、スコッチヨーク32に印加されるアシスト力Fを調整することができる。また、上部駆動軸33a及び下部駆動軸33bの直径(断面積)は、GM冷凍機に要求される冷凍能力に拘わらず設定することが可能である。
【0075】
これに対し、モータ15に一時的に大きな負荷トルクが発生する主原因となる蓄冷材4内を流れる作動ガスによる圧力損失の大きさは、GM冷凍機の冷凍能力等により変化する。具体的には、ディスプレーサ3a,3b及び
ガス流路5a,5bの径、GM冷凍機が一段形式か或いは多段形式であるか、またディスプレーサ3a,3bに充填される蓄冷材4a,4bの種類や充填密度等により変化する。
【0076】
よって、モータ15への一時的に大きな負荷トルクを抑制するにはアシスト力をGM冷凍機の冷凍能力等に適合するよう最適化することが望ましい。
【0077】
本実施形態に係るGM冷凍機は、上部駆動軸33aと下部駆動軸33bの直径(断面積)を異ならせることにより、スコッチヨーク32に印加されるアシスト力Fを最適化している。よって、本実施形態に係るGM冷凍機によれば、モータ15に一時的に大きな負荷トルクが発生することを有効に防止することができる。
【0078】
次に変形例について
図4を用いて説明する。前述の実施形態では、分岐配管40を介してアシスト室41をガス圧縮機1の供給配管1aに接続していた。それに対して本変形例に係るGM冷凍機は、分岐配管40に代えて、アシスト配管70を有する。その他の構成については、変形例は上述の実施形態と同様である。以下の説明では同様の箇所については冗長を避けるため説明を適宜省略する。
【0079】
アシスト配管70は、ロータリバルブRVとアシスト室41とを連通する。そして、ロータリバルブの回転に伴い、アシスト室41はガス圧縮機1の吐出口と吸気口とに選択的に連通される。
【0080】
アシスト室41への作動ガスの供給と回収の繰り返しの位相は、各ディスプレーサ3a,3bの往復駆動の位相と適当に調節されるものである。例えば、供給用バルブV1が開くときには、アシスト室41はガス圧縮機1の吸気口に接続される。
【0081】
このとき、アシスト力Fは負の値になるため、ディスプレーサの移動を補助する方向に働く。そして、排気用バルブV2が開くときには、アシスト室41はガス圧縮機1の吐出口に接続される。このとき、アシスト力Fは正の値になるため、ディスプレーサの移動を補助する方向に働く。
【0082】
図5は、横軸を冷凍機運転角度にとり、冷凍機運転の1サイクル中におけるGM冷凍機のモータ15に印加されるモータ負荷トルクの一例を示している。
【0083】
図5に矢印Aで示すのは比較例としてのモータ負荷トルクを示しており、上部駆動軸33aと下部駆動軸33bの直径(断面積)が等しい場合のモータ負荷トルクである(以下、モータ負荷トルクAという)。
【0084】
また
図5に矢印Bで示すのは、
図4に示したGM冷凍機のモータ負荷トルクを示している。つまり、上部駆動軸33aの直径(A1)を下部駆動軸33bの直径(B1)に対して大きくした場合のモータ負荷トルクを示している(以下、モータ負荷トルクBという)。
【0085】
なお、
図5において横軸は冷凍機運転角度(クランク角度)を示しており、縦軸はモータ負荷トルクを示している。また運転角度は、膨張室11の容積が最も大きいときの角度を0°としている。なお、特性を求めた各GM冷凍機としては、上部駆動軸33aと下部駆動軸33bの構成を除き、他の構成は同一のものを用い、膨張空間が鉛直方向上向きになるように設置して運転した。
【0086】
先ず、矢印Bで示すモータ負荷トルクBに注目する。モータ負荷トルクBは、上部駆動軸33aの直径A1が下部駆動軸33bの直径B1に対して大きい(A1>B1)場合の負荷トルク特性である。
【0087】
運転角度が0°から約180°の範囲では、モータ負荷トルクBはモータ負荷トルクA(上部駆動軸33aと下部駆動軸33bの直径が等しい負荷トルク特性)に比べ、その値が小さくなっている。
【0088】
これは、運転角度が0°から約180°の範囲は、
図3に示す膨張室11の容積が最も大きいときからディスプレーサ3が下動する範囲である。このとき、ガス流路5内を流れる作動ガスによる圧力は上方向(
図3に矢印Z1で示す方向)に作用する。
【0089】
これに対し、上部駆動軸33aの直径A1が下部駆動軸33bの直径B1に対して大きい(A1>B1)場合は、前記のようにアシスト室41に供給された作動ガスの圧力によるアシスト力Fは下方向((
図3に矢印Z2で示す方向)に作用する。よって、モータ15はアシスト力Fによりアシストされ、モータ15に印加されるモータ負荷トルクBは、モータ負荷トルクAに比べて低減される。逆に、運転角度が180°から約360°の範囲では、アシスト力Fは上方向に作用する。このように、上部駆動軸33aの断面積を下部駆動軸33bの断面積よりも大きくすることで、冷凍機運転1サイクル中においてモータ
負荷トルクが一時的に上昇する運転角度が0°から約180°の範囲でのモータ
負荷トルクを低減することができる。
【0090】
次に、他の実施形態について
図6を用いて説明する。
【0091】
図1では、上部シール35aを通過する上部駆動軸33aの断面積S
Uを下部シール35bを通過する下部駆動軸33bの断面積S
Lよりも大きく設定している。
【0092】
これに対して、本実施形態では、上部シール35を通過する上部駆動軸33aの断面積S
Uを下部シール35bを通過する下部駆動軸33bの断面積S
Lよりも小さく設定している。そして、アシスト室41はアシスト配管80を介してガス圧縮機1の吸気口に接続される。
【0093】
なお、その他の構成については、変形例は上述の実施形態と同様である。以下の説明では同様の箇所については冗長を避けるため説明を適宜省略する
図7は、横軸を冷凍機運転角度にとり、冷凍機運転1サイクル中におけるGM冷凍機のモータ15に印加されるモータ負荷トルクの一例を示している。
【0094】
図7に矢印Cで示すのは比較例としてのモータ負荷トルクを示しており、上部駆動軸33aと下部駆動軸33bの直径(断面積)が等しい場合のモータ負荷トルクである(以下、モータ負荷トルクCという)。
【0095】
また
図7に矢印Dで示すのは、
図6に示したGM冷凍機のモータ負荷トルクを示している。具体的には、下部駆動軸33bの直径(B1)を上部駆動軸33aの直径(A1)に対して大きくした場合のモータ負荷トルクを示している(以下、モータ負荷トルクDという)。
【0096】
なお、
図7において横軸は冷凍機運転角度(クランク角度)を示しており、縦軸はモータ負荷トルクを示している。また運転角度は、膨張室11の容積が最も大きいときの角度を0°としている。なお、特性を求めた各GM冷凍機としては、上部駆動軸33aと下部駆動軸33bの構成を除き、他の構成は同一のものを用い、膨張空間が鉛直方向下向きになるように設置して運転した。
【0097】
図7から明らかなように、上部駆動軸33aの断面積を下部駆動軸33bの断面積よりも小さくすることで、冷凍機運転1サイクル中においてモータ
負荷トルクが一時的に上昇する運転角度が180°から約360°の範囲でのモータ
負荷トルクを低減することができる。
【0098】
このように、上部駆動軸33aの断面積と下部駆動軸33bの断面積を冷凍機に応じて異ならせることにより、構造の大型化を伴うことなくディスプレーサの駆動に必要なトルクを低減させることが可能になる。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は前記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。