特許第5996508号(P5996508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996508
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20160908BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20160908BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   C02F1/46 101C
   C02F1/76 AZAB
   C02F1/76 Z
   C02F1/50 531P
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 520P
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 550H
   C02F1/50 560F
   C02F1/50 560H
   C02F1/50 560Z
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-218427(P2013-218427)
(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-80734(P2015-80734A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100182176
【弁理士】
【氏名又は名称】武村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 安佐美
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−060691(JP,A)
【文献】 特開昭58−84100(JP,A)
【文献】 特開昭49−025555(JP,A)
【文献】 特開2004−351354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46、50、72−78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を含む排水を電解処理する排水処理装置であって、
前記排水から分離された固形物を含む汚泥水を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された汚泥水に含まれる固形物を前記排水から固形物が分離された分離水に混合して前記分離水の固形物濃度を調整する調整部と、
前記調整部によって固形物濃度が調整された分離水を電解処理する電解処理槽と、を備える排水処理装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記貯留槽に貯留された汚泥水を送出する送出部と、前記送出部によって送出された汚泥水と前記分離水を混合する混合槽と、前記混合槽で混合されて生成された固形物を含む分離水を前記電解処理槽に供給する供給ラインと、前記混合槽における固形物濃度を検出する検出器と、前記検出器による検出結果に基づいて前記送出部により送出される汚泥水の量を制御する制御部と、を有する、請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記混合槽には攪拌機が配設されている、請求項2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記貯留槽に貯留された汚泥水を前記電解処理槽に送出する送出部と、前記電解処理槽における固形物濃度を検出する検出器と、前記検出器による検出結果に基づいて前記送出部により送出される汚泥水の量を制御する制御部と、を有する、請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記電解処理槽には攪拌機が配設されている、請求項4に記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記排水処理装置は、前記貯留槽に貯留された汚泥水から水分を脱水する脱水機と、前記脱水機により前記汚泥水から水分が脱水されて生成された固形物を貯留する脱水ケーキ槽と、を更に有し、
前記調整部は、前記貯留槽に貯留された汚泥水を前記電解処理槽に送出する第1送出部と、前記脱水ケーキ槽に貯留された固形物を前記電解処理槽に送出する第2送出部と、前記電解処理槽における固形物濃度を検出する検出器と、前記検出器による検出結果に基づいて前記第1送出部により送出される汚泥水の量及び/又は前記第2送出部により送出される固形物の量を制御する制御部と、を有する、請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記排水処理装置は、前記貯留槽に貯留された汚泥水から水分を脱水する脱水機と、前記脱水機により前記汚泥水から水分が脱水されて生成された固形物を貯留する脱水ケーキ槽と、を更に有し、前記電解処理槽は、前記脱水機により汚泥水から分離された水分を電解処理するようになっており、
前記調整部は、前記貯留槽に貯留された汚泥水を前記電解処理槽に送出する第1送出部と、前記脱水ケーキ槽に貯留された固形物を前記電解処理槽に送出する第2送出部と、前記電解処理槽における固形物濃度を検出する検出器と、前記検出器による検出結果に基づいて前記第1送出部により送出される汚泥水の量及び/又は前記第2送出部により送出される固形物の量を制御する制御部と、を有する、請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記排水処理装置は、前記電解処理槽で電解処理された処理水を前記排水に循環する循環ラインを有する、請求項7に記載の排水処理装置。
【請求項9】
前記排水処理装置は、前記電解処理槽で電解処理された処理水と前記分離水と次亜塩素酸とを用いて脱色減菌処理を行う処理槽を更に有する、請求項7または8に記載の排水処理装置。
【請求項10】
固形物を含む排水を電解処理する排水処理方法であって、
前記排水から分離された固形物を含む汚泥水を貯留する貯留工程と、
貯留された汚泥水に含まれる固形物を前記排水から固形物が分離された分離水に混合して前記分離水の固形物濃度を調整する調整工程と、
固形物濃度が調整された分離水を電解処理する電解処理工程と、からなる排水処理方法。
【請求項11】
前記調整工程において、前記分離水の固形物濃度を検出し、その検出結果に基づいて前記分離水と混合される汚泥水の量を制御することで、前記分離水の固形物濃度を調整する、請求項10に記載の排水処理方法。
【請求項12】
前記排水処理方法は、前記貯留工程において貯留された汚泥水から水分を脱水する脱水工程と、前記脱水工程において前記汚泥水から水分が脱水されて生成された固形物を貯留する汚泥貯留工程と、を更に含み、
前記調整工程において、前記分離水の固形物濃度を検出し、その検出結果に基づいて前記分離水と混合される前記貯留工程にて貯留された汚泥水の量及び/又は前記汚泥貯留工程にて貯留された固形物の量を制御することで、前記分離水の固形物濃度を調整する、請求項10に記載の排水処理方法。
【請求項13】
前記電解処理工程において、前記脱水工程で汚泥水から分離された水分を電解処理する、請求項12に記載の排水処理方法。
【請求項14】
前記排水処理方法は、前記電解処理工程で電解処理された処理水を前記排水に循環する循環工程を更に含む、請求項13に記載の排水処理方法。
【請求項15】
前記排水処理方法は、前記電解処理工程で電解処理された処理水と前記分離水と次亜塩素酸とを用いて脱色減菌処理を行う処理工程を更に含む、請求項13または14に記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水処理装置及び排水処理方法に関し、特に、固形物を含む着色排水を処理するのに適した排水処理装置及び排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場等から排出される有機性排水(有機物を含む排水)の処理方法として、例えば凝集沈殿法や活性汚泥法、あるいはそれらを組み合わせた方法が知られている。凝集沈殿法は、排水に薬剤を投入し、排水中に含まれる汚泥を凝集させて沈殿させる方法である。また、活性汚泥法は、好気性微生物を利用し、曝気槽中で有機物を生物分解する方法である。
【0003】
ところで、上記した凝集沈殿法や活性汚泥法による処理方法は、例えば、排水に応じた薬剤の選定が難しいといった問題や処理時間が長いといった問題、設備全体が大型化するといった問題がある。そこで、近年では、排水処理に要する時間を短縮したり設備全体を小型化するために、有機性排水中に電極を挿入してその排水中に電流を流すことにより、電極表面で直接的にあるいは酸化剤を生成して間接的に有機物を分解する電解法による処理方法が提案されている。
【0004】
このような電解法による従来の処理方法として、特許文献1には、COD成分、BOD成分、油分、重金属を含む排水を電解処理槽に供給して汚泥の発生を抑制しながら電解処理するようにした排水処理方法において、電気分解によって生成され、かつ排水によって消費される成分の量を測定し、この測定結果に基づいて電解密度や電解処理槽に供給される排水の量を増減させる方法が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示される従来の排水処理装置及び排水処理方法によれば、排水中の残留塩素量等に基づいて電流密度を増減させることによって汚濁負荷の大きい排水を安定して処理することができ、PAC(ポリ塩化アルミニウム)や凝集助剤等のように環境負荷の大きい薬品を使用しないで汚泥量を低減することができる。また、排水中の残留塩素量等が多い場合には電解処理槽への排水の供給量を増加させ、排水中の残留塩素量等が少ない場合には電解処理槽への排水の供給量を減少させることによって、汚濁負荷の大きい排水を安定して処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−212816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される従来の排水処理装置及び排水処理方法においては、排水中の有機物等の固形物量が変動した際に電解処理槽における固形物濃度も変動し、当該電解処理槽で安定的に有機物処理や色度低減を行うことができないといった問題や、電解処理槽で使用する電極等への固形物の付着量が変動してその維持管理が煩雑となるといった問題がある。また、濾過処理もしくは分離処理によって排水から分離された固形物(SS(suspended solids:懸濁物質)ともいう。)は産業廃棄物として処理する必要があるが、産廃処理量を可能な限り減少させたいといった要望もある。
【0008】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、排水中の固形物量が変動した場合であっても電解処理槽で安定的に有機物処理や色度低減を行うことができ、電解処理槽で使用する電極等の維持管理を簡素化できるとともに、産廃処理量を効果的に低減することができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化力の強い次亜塩素酸等を生成し得る電極を用いた電解処理では、電解処理槽における固形物濃度(特にCOD(Chemical oxygen demand:化学的酸素要求量)濃度)が僅かに増加した場合であっても、電極等の劣化を抑制しながら排水に含まれる固形物(特にCOD成分)を十分に酸化分解し得るという本発明者等による実験から得られた知見に基づくものである。
【0010】
すなわち、前記目的を達成すべく、本発明の排水処理装置は、固形物を含む排水を電解処理する排水処理装置であって、前記排水から分離された固形物を含む汚泥水を貯留する貯留槽と、前記貯留槽に貯留された汚泥水に含まれる固形物を前記排水から固形物が分離された分離水に混合して前記分離水の固形物濃度を調整する調整部と、前記調整部によって固形物濃度が調整された分離水を電解処理する電解処理槽と、を備えているものである。
【0011】
排水から固形物が分離された分離水の固形物濃度は、排水中の固形物量が変動した際に変動する可能性があるものの、上記する態様によれば、貯留槽に貯留された汚泥水に含まれる固形物を排水から固形物が分離された分離水に混合して前記分離水の固形物濃度を調整部により調整し、固形物濃度が調整された分離水を電解処理槽で電解処理することで、排水中の固形物量が変動した場合であっても電解処理で使用する分離水の固形物濃度を調整することができ、その電解処理槽で安定的に有機物処理や色度低減を行うことができ、電解処理槽で使用する電極等の維持管理を簡素化することができる。また、分離水の固形物濃度を調整するに当たり、貯留槽に貯留された汚泥水に含まれる固形物を分離水に混合することで、貯留槽中の固形物を有効利用しながら産廃処理量を効果的に低減することができる。
【0012】
ここで、排水に含まれる固形物は、電解処理槽で使用される電極で生成される次亜塩素酸等で分解される、COD成分、BOD(Biochemicaloxygen demand:生物学的酸素要求量)成分、油分等を含むものである。電解処理槽で使用される電極としては、不溶解性の導電体であれば特に限定されるものではないが、例えば、チタン(Ti)等の基板に白金(Pt)、イリジウム(Ir)、Ta(タンタル)、Ru(ルテニウム)の単体、もしくはそれらの酸化物等の合金からなる貴金属被覆が形成された電極などが挙げられる。また、電極として貴金属被覆が形成された電極を採用する場合、その貴金属被覆の形成方法としては、例えば焼付け法、メッキ法、クラッド法などを適用することができる。当該電極に通電すると、電気分解により、負極側では水酸化物が生成され、正極側では排水中の塩化物イオン(Cl)から塩素(Cl)が生成される。そして、このように生成された塩素(Cl)から活性酸素(O)や次亜塩素酸(HClO)が生成され、その活性酸素(O)や次亜塩素酸(HClO)によって、COD成分、BOD成分、油分等の固形物を含む分解水が酸化分解されることとなる。
【0013】
また、上記する排水処理装置の好ましい態様は、前記調整部が、前記貯留槽に貯留された汚泥水を送出する送出部と、前記送出部によって送出された汚泥水と前記分離水を混合する混合槽と、前記混合槽で混合されて生成された固形物を含む分離水を前記電解処理槽に供給する供給ラインと、前記混合槽における固形物濃度を検出する検出器と、前記検出器による検出結果に基づいて前記送出部により送出される汚泥水の量を制御する制御部と、を有しているものである。
【0014】
上記する態様によれば、混合槽における固形物濃度を検出し、その検出結果に基づいて混合槽に送出される汚泥水の量を制御しながら、当該混合槽で貯留槽に貯留された汚泥水と分離水を予め混合し、混合槽で混合されて生成された固形物を含む分離水を電解処理槽に供給することで、例えば電解処理槽における固形物濃度を適切に維持することができるため、当該電解処理槽で継続的に電解処理を行うことができる。
【0015】
また、上記する排水処理装置の好ましい態様は、前記調整部が、前記貯留槽に貯留された汚泥水を前記電解処理槽に送出する送出部と、前記電解処理槽における固形物濃度を検出する検出器と、前記検出器による検出結果に基づいて前記送出部により送出される汚泥水の量を制御する制御部と、を有しているものである。
【0016】
上記する態様によれば、電解処理槽における固形物濃度を検出し、その検出結果に基づいて電解処理槽に直接的に送出される汚泥水の量を制御しながら、当該電解処理槽で貯留槽に貯留された汚泥水と分離水を混合しかつ固形物を含む分離水を電解処理することで、貯留槽から電解処理槽へ汚泥水が直接的に供給されるため、当該排水処理装置全体を小型化かつ簡素化することができる。
【0017】
なお、貯留槽に貯留された汚泥水と分離水を混合するに当たり、積極的に汚泥水と分離水を撹拌するために、例えばプロペラ等からなる撹拌機を混合槽や電解処理槽に配設してもよい。
【0018】
また、本発明の排水処理方法は、固形物を含む排水を電解処理する排水処理方法であって、前記排水から分離された固形物を含む汚泥水を貯留する貯留工程と、貯留された汚泥水に含まれる固形物を前記排水から固形物が分離された分離水に混合して前記分離水の固形物濃度を調整する調整工程と、固形物濃度が調整された分離水を電解処理する電解処理工程と、からなる方法である。
【0019】
上記する方法によれば、貯留工程で貯留された汚泥水に含まれる固形物を排水から固形物が分離された分離水に混合して前記分離水の固形物濃度を調整し、固形物濃度が調整されたその分離水を電解処理することで、排水中の固形物量が変動した場合であっても電解処理で使用する分離水の固形物濃度を調整することができ、その電解処理工程で安定的に有機物処理や色度低減を行うことができ、電解処理工程で使用する電極等の維持管理を簡素化することができる。また、分離水の固形物濃度を調整するに当たり、貯留工程で貯留された汚泥水に含まれる固形物を分離水に混合することで、排水中の固形物を有効利用しながら産廃処理量を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、本発明の排水処理装置及び排水処理方法によれば、排水中に含まれる固形物を前記排水から固形物が分離された分離水に混合して電解処理を行う際の分離水の固形物濃度を調整することにより、排水中の固形物量が変動した場合であっても電解処理槽で安定的に有機物処理や色度低減を行うことができ、電解処理槽で使用する電極等の維持管理を簡素化できるとともに、産廃処理量を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による排水処理装置の実施の形態1の基本構成を示す全体構成図。
図2】本発明による排水処理装置の実施の形態2の基本構成を示す全体構成図。
図3】本発明による排水処理装置の実施の形態3の基本構成を示す全体構成図。
図4】本発明による排水処理装置の実施の形態4の基本構成を示す全体構成図。
図5】実施例による検査用試料の電解処理前および電解処理後の溶存CODと全量CODを示す図。
図6】実施例による検査用試料の電解処理前および電解処理後の色度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、例えば下水処理、畜産排水処理、水産食品加工排水処理、洗浄排水処理、工場排水処理、湖水浄化処理等といった、COD成分、BOD成分、油分等の固形物を含む排水の処理に有効に適用し得る。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、本発明による排水処理装置の実施の形態1の基本構成を示したものである。図示するように、本実施の形態1の排水処理装置1は、主に、原水槽2と、分離装置3と、貯留槽4と、混合槽5と、電解処理槽6と、送水ポンプ(送出部)7と、制御部8と、を備えている。
【0024】
原水槽2は、例えば工場や家庭等から排出される、COD成分、BOD成分、油分等の固形物を含む排水を貯留するためのものであり、原水槽2に貯留された排水はラインL1を介して定期的に分離装置3へ供給される。
【0025】
分離装置3は、例えば脱水機やフィルタ、自然静置槽等から構成され、原水槽2から供給された排水を、相対的に大量の固形物を含む汚泥水と相対的に少量の固形物を含む分離水とに分離するためのものである。分離装置3によって排水から分離された固形物を含む汚泥水は、ラインL2を介して貯留槽4に供給され、分離装置3によって排水から分離された分離水は、ラインL3を介して混合槽5へ供給される。貯留槽4に貯留された汚泥水は、後述する制御部8によって駆動制御される送水ポンプ7によりラインL4を介して混合槽5へ送出される。なお、貯留槽4に送水ポンプ7により混合槽5へ送出されない汚泥水がある場合、その汚泥水は不図示のラインを介して産廃処理場等へ搬出されることとなる。
【0026】
混合槽5は、ラインL3を介して分離装置3から供給される分離水とラインL4を介して貯留槽4から供給される汚泥水を混合して所定の固形物濃度の分離水を生成するものである。なお、混合槽5には、分離水と汚泥水とを積極的に撹拌するために、例えばプロペラ等からなる撹拌機5aが配設されている。この混合槽5で生成された所定の固形物濃度の分離水は、ライン(供給ライン)L5を介して定期的に所定量が電解処理槽6へ供給される。
【0027】
電解処理槽6は正極電極6a及び負極電極6bを有しており、混合槽5から供給される固形物を含む分離水を電解処理するものである。ここで、電解処理槽6で使用される電極6a、6bとしては、例えば、チタン(Ti)等の基板に白金(Pt)、イリジウム(Ir)、Ta(タンタル)、Ru(ルテニウム)の単体、もしくはそれらの酸化物等の合金からなる貴金属被覆が形成された電極などが挙げられる。この電極6a、6bに所定の電流で所定の時間だけ通電すると、電気分解により、負極電極6bでは水酸化物が生成され、正極電極6aでは以下の式(1)のように排水中の塩化物イオン(Cl)から塩素(Cl)が生成される。そして、このように生成された塩素(Cl)から以下の式(2)、(3)のように活性酸素(O)や次亜塩素酸(HClO)が生成され、その活性酸素(O)や次亜塩素酸(HClO)によって、COD成分、BOD成分、油分等が酸化分解されることとなる。
【0028】
[化1]
2Cl→Cl+2e ・・・(1)
Cl+HO→1/2O+2HCl ・・・(2)
Cl+HO→HCl+HClO ・・・(3)
【0029】
そして、電解処理槽6で電解処理された処理水は、ラインL6を介して海洋や河川、下水道等に放流される。
【0030】
制御部8は、上記したように電解処理槽6における分離水の固形物濃度、すなわち混合槽5において分離水と汚泥水を混合して生成した分離水の固形物濃度を所定の濃度に維持するためのものである。混合槽5、処理水を放流するためのラインL6にはそれぞれ、固形物濃度や色度を検出するための検出器S1、S2が配設され、制御部8は、各検出器S1、S2で検出される検出結果を受信し、その検出結果に基づいて貯留槽4から混合槽5へ供給する汚泥水の量を演算する。制御部8は、その演算結果を送水ポンプ7に送信して当該送水ポンプ7(例えば送水ポンプ7の送出圧や送出時間等)を制御することで、所定量の汚泥水が貯留槽4から混合槽5へ供給され、混合槽5で所定の固形物濃度を有する分離水が生成されることとなる。
【0031】
より具体的には、使用者等による実験等に基づいて電解処理槽6で電解処理し得る分離水の固形物濃度(濃度閾値)が予め規定されており、制御部8は、検出器S1で検出される検出結果が予め規定された濃度閾値よりも低い場合に、貯留槽4から混合槽5へ所定量の汚泥水を供給することで、混合槽5、すなわち電解処理槽6で所定の固形物濃度(濃度閾値)を有する分離水が生成されることとなる。
【0032】
分離装置3によって排水から固形物が分離された分離水の固形物濃度は、原水槽2中の固形物量が変動した際に変動する可能性がある。しかしながら、本実施の形態1の排水処理装置1によれば、送水ポンプ7と混合槽5とラインL5と検出器S1と制御部8とからなる調整部により、貯留槽4に貯留された汚泥水に含まれる固形物を排水から固形物が分離された分離水に混合してその分離水の固形物濃度を調整し、固形物濃度が調整された分離水を連続的に電解処理槽6で電解処理することで、例えば原水槽2における排水中の固形物量が変動した場合であっても、電解処理で使用する分離水の固形物濃度を調整することができ、その電解処理槽6で安定的に有機物処理や色度低減を行うことができ、電解処理槽6で使用する電極6a、6b等の維持管理を簡素化することができる。また、分離水の固形物濃度を調整するに当たり、貯留槽4に貯留された汚泥水に含まれる固形物を分離水に混合することで、貯留槽4中の固形物を有効利用しながらその産廃処理量を効果的に低減することができる。
【0033】
また、本実施の形態1の排水処理装置1によれば、分離装置3によって排水から分離された分離水と貯留槽4に貯留された汚泥水とを混合槽5へ供給し、その混合槽5で予め所定の固形物濃度を有する分離水を生成することで、電解処理槽6における固形物濃度を適切に維持することができ、当該電解処理槽6で電解処理を継続的もしくは連続的に行うことができる。
【0034】
[実施の形態2]
図2は、本発明による排水処理装置の実施の形態2の基本構成を示したものである。図2に示す実施の形態2の排水処理装置1Aは、上記する実施の形態1の排水処理装置1に対して混合槽を省略した点が相違しており、その他の構成は実施の形態1の排水処理装置1と同様である。したがって、実施の形態1の排水処理装置1と同様の構成について、同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0035】
図示するように、本実施の形態2の排水処理装置1Aは、主に、原水槽2Aと、分離装置3Aと、貯留槽4Aと、電解処理槽6Aと、送水ポンプ(送出部)7Aと、制御部8Aと、を備えている。
【0036】
本実施の形態2の排水処理装置1Aでは、分離装置3Aによって排水から分離された固形物を含む汚泥水は、ラインL2Aを介して貯留槽4Aに供給され、分離装置3Aによって排水から分離された分離水は、ラインL3Aを介して電解処理槽6Aへ直接供給される。貯留槽4Aに貯留された汚泥水は、後述する制御部8Aによって駆動制御される送水ポンプ7AによりラインL4Aを介して電解処理槽6Aへ送出される。なお、貯留槽4Aに送水ポンプ7Aにより電解処理槽6Aへ送出されない汚泥水がある場合、その汚泥水は不図示のラインを介して産廃処理場等へ搬出されることとなる。
【0037】
電解処理槽6Aでは、ラインL3Aを介して分離装置3Aから供給される分離水とラインL4Aを介して貯留槽4Aから供給される汚泥水を混合して所定の固形物濃度の分離水を生成する。その際、電解処理槽6Aに配設された撹拌機5aAによって、分離水と汚泥水とを積極的に撹拌してもよい。このように所定の固形物濃度の分離水を生成した後、電解処理槽6Aでは、電極6aA、6bAに所定の電流で所定の時間だけ通電して固形物を含む分離水を電解処理する。そして、電解処理槽6Aで電解処理された処理水は、ラインL6Aを介して海洋や河川、下水道等に放流される。なお、電解処理槽6Aでの分離水の電解処理が終了し、処理水がラインL6Aを介して放流されると、再び分離装置3Aによって排水から分離された分離水がラインL3Aを介して電解処理槽6Aへ供給され、貯留槽4Aに貯留された汚泥水がラインL4Aを介して電解処理槽6Aへ送出され、電解処理槽6Aで所定の固形物濃度の分離水が生成されて電解処理が施される。
【0038】
制御部8Aは、上記したように電解処理槽6Aにおける分離水の固形物濃度を所定の濃度に維持するためのものである。電解処理槽6A、処理水を放流するためのラインL6Aにはそれぞれ、固形物濃度や色度を検出するための検出器S1A、S2Aが配設され、制御部8Aは、各検出器S1A、S2Aで検出される検出結果を受信し、その検出結果に基づいて貯留槽4Aから電解処理槽6Aへ供給する汚泥水の量を演算する。制御部8Aは、その演算結果を送水ポンプ7Aに送信して当該送水ポンプ7A(例えば送水ポンプ7Aの送出圧や送出時間等)を制御することによって、所定量の汚泥水が貯留槽4Aから電解処理槽6Aへ供給され、当該電解処理槽6Aで所定の固形物濃度を有する分離水が生成されることとなる。
【0039】
このように、本実施の形態2の排水処理装置1Aによれば、送水ポンプ7Aと検出器S1Aと制御部8Aとからなる調整部により、貯留槽4Aに貯留された汚泥水に含まれる固形物を排水から固形物が分離された分離水に混合してその分離水の固形物濃度を調整し、固形物濃度が調整された分離水を電解処理槽6Aで電解処理することで、実施の形態1の排水処理装置1と同様、電解処理槽6Aで安定的に有機物処理や色度低減を行うことができ、電解処理槽6Aで使用する電極6aA、6bA等の維持管理を簡素化することができるとともに、固形物の産廃処理量を効果的に低減することができる。
【0040】
また、本実施の形態2の排水処理装置1Aによれば、分離装置3Aによって排水から分離された分離水と貯留槽4Aに貯留された汚泥水とを電解処理槽6Aへ直接供給し、電解処理槽6Aで分離水と汚泥水を混合して所定の固形物濃度を有する分離水を生成することで、当該排水処理装置1A全体を小型化かつ簡素化することができる。
【0041】
[実施の形態3]
図3は、本発明による排水処理装置の実施の形態3の基本構成を示したものであり、より実際の設備に即した実施の形態を示したものである。図3に示す実施の形態3の排水処理装置1Bは、上記する実施の形態2の排水処理装置1Aに対して主に貯留槽に貯留された汚泥水を更に脱水して利用する点が相違しており、その他の構成は実施の形態2の排水処理装置1Aと同様である。したがって、実施の形態2の排水処理装置1Aと同様の構成について、同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0042】
図示するように、本実施の形態3の排水処理装置1Bは、主に、原水槽2Bと、分離装置3Bと、貯留槽4Bと、電解処理槽6Bと、送水ポンプ(第1送出部)7Bと、制御部8Bと、を備えるとともに、脱水機9Bと、脱水ケーキ槽10Bと、搬送装置(第2送出部)11Bと、を備えている。
【0043】
本実施の形態3の排水処理装置1Bでは、分離装置3Bは、生物処理槽3aBと加圧浮上槽3bBから構成されており、ラインL1Bを介して原水槽2Bから供給された排水は、生物処理槽3aBで生物処理(有機物やアンモニア態(アンモニア窒素系)を生物学的に分解処理)が施され、生物処理後の排水は、加圧浮上槽3bBで加圧浮上処理が施される。分離装置3Bによって排水から分離された汚泥水(相対的に大量の固形物を含む)は、ラインL2Bを介して貯留槽4Bに供給され、分離装置3Bによって排水から分離された分離水(相対的に少量の固形物を含む)は、ラインL3Bを介して電解処理槽6Bへ供給される。貯留槽4Bに貯留された汚泥水の一部は、後述する制御部8Bによって駆動制御される送水ポンプ7BによりラインL4Bを介して電解処理槽6Bへ送出される。また、貯留槽4Bに貯留された汚泥水の残部は、ラインL7Bを介して脱水機9Bへ供給される。
【0044】
脱水機9Bは、貯留槽4Bから供給された汚泥水を、水分と固形物(「脱水ケーキ」ともいう。)とに分離するためのものである。なお、その水分には少量の固形物が含まれていてもよい。脱水機9Bによって脱水分離された水分は、ラインL8Bを介して原水槽2Bに循環され、脱水機9Bによって脱水分離された固形物は、ラインL9Bを介して脱水ケーキ槽10Bへ搬送される。また、脱水ケーキ槽10Bに貯留された固形物の一部(固形物A)は、後述する制御部8Bによって駆動制御される搬送装置11BによりラインL11Bを介して電解処理槽6Bへ送出され、脱水ケーキ槽10Bに貯留された固形物の残部(固形物B)は、ラインL10Bを介して産廃処理場等へ搬出されることとなる。
【0045】
電解処理槽6Bでは、ラインL3Bを介して分離装置3Bから供給される分離水とラインL4Bを介して貯留槽4Bから供給される汚泥水とラインL11Bを介して脱水ケーキ槽10Bから搬送される固形物(固形物A)を混合して所定の固形物濃度の分離水を生成する。その際、電解処理槽6Bに配設された撹拌機5aBによって、分離水と汚泥水と固形物とを積極的に撹拌することができる。このように所定の固形物濃度の分離水を生成した後、電解処理槽6Bでは、電極6aB、6bBに所定の電流で所定の時間だけ通電して固形物を含む分離水を電解処理する。そして、電解処理槽6Bで電解処理された処理水は、ラインL6Bを介して海洋や河川、下水道等に放流される。なお、電解処理槽6Bでの分離水の電解処理が終了し、処理水がラインL6Bを介して放流されると、再び分離装置3Bによって排水から分離された分離水がラインL3Bを介して電解処理槽6Bへ供給され、貯留槽4Bに貯留された汚泥水がラインL4Bを介して電解処理槽6Bへ送出され、脱水ケーキ槽10Bに貯留された固形物がラインL11Bを介して電解処理槽6Bへ送出され、電解処理槽6Bで所定の固形物濃度の分離水が生成されて電解処理が施される。
【0046】
制御部8Bは、上記したように電解処理槽6Bにおける分離水の固形物濃度を所定の濃度に維持するためのものである。電解処理槽6B、処理水を放流するためのラインL6B、分離装置3Bと電解処理槽6Bを繋ぐラインL3B、貯留槽4Bにはそれぞれ、固形物濃度や色度を検出するための検出器S1B〜S4Bが配設され、制御部8Bは、各検出器S1B〜S4Bで検出される検出結果を受信し、その検出結果に基づいて貯留槽4Bから電解処理槽6Bへ供給する汚泥水の量や脱水ケーキ槽10Bから電解処理槽6Bへ搬送する固形物の量を演算する。制御部8Bは、その演算結果を送水ポンプ7Bや搬送装置11Bに送信し、当該送水ポンプ7B(例えば送水ポンプ7Bの送出圧や送出時間等)や搬送装置11B(例えば搬送装置11Bの搬送容量や搬送時間等)を制御することによって、所定量の汚泥水が貯留槽4Bから電解処理槽6Bへ供給されるとともに所定量の固形物が脱水ケーキ槽10Bから電解処理槽6Bへ供給され、当該電解処理槽6Bで所定の固形物濃度を有する分離水が生成されることとなる。
【0047】
このように、本実施の形態3の排水処理装置1Bによれば、貯留槽4Bに貯留された汚泥水に含まれる固形物と貯留槽4Bに貯留された汚泥水の一部を脱水して生成した固形物とを排水から固形物が分離された分離水に混合してその分離水の固形物濃度を調整し、固形物濃度が調整された分離水を電解処理槽6Bで電解処理することで、実施の形態2の排水処理装置1Aと同様、電解処理槽6Bで安定的に有機物処理や色度低減を行うことができ、電解処理槽6Bで使用する電極6aB、6bB等の維持管理を簡素化することができるとともに、固形物の産廃処理量(固形物Bの量)を効果的に低減することができる。
【0048】
また、本実施の形態3の排水処理装置1Bによれば、電解処理槽6Bでの電解処理に用いる分離水の固形物濃度を調整する際に、貯留槽4Bに貯留された汚泥水の一部を脱水して生成した固形物を利用することで、固形物の産廃処理量(固形物Bの量)をより効果的に低減することができる。
【0049】
[実施の形態4]
図4は、本発明による排水処理装置の実施の形態4の基本構成を示したものである。図4に示す実施の形態4の排水処理装置1Cは、上記する実施の形態3の排水処理装置1Bに対して主に貯留槽に貯留された汚泥水の一部を脱水して生成した水分を電解処理する点が相違しており、その他の構成は実施の形態3の排水処理装置1Bと同様である。したがって、実施の形態3の排水処理装置1Bと同様の構成について、同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0050】
図示するように、本実施の形態4の排水処理装置1Cは、主に、原水槽2Cと、分離装置3Cと、貯留槽4Cと、電解処理槽6Cと、送水ポンプ(第1送出部)7Cと、制御部8Cと、を備えるとともに、脱水機9Cと、脱水ケーキ槽10Cと、搬送装置(第2送出部)11Cと、処理槽12Cと、を備えている。
【0051】
本実施の形態4の排水処理装置1Cでは、ラインL1Cを介して原水槽2Cから分離装置3Cへ供給された排水は、生物処理槽3aCで生物処理(有機物やアンモニア態(アンモニア窒素系)を生物学的に分解処理)が施され、生物処理後の排水は、加圧浮上槽3bCで加圧浮上処理が施される。分離装置3Cによって排水から分離された汚泥水(相対的に大量の固形物を含む)は、ラインL2Cを介して貯留槽4Cに供給され、分離装置3Cによって排水から分離された分離水(相対的に少量の固形物を含む)は、ラインL3Cを介して後述する処理槽12Cへ供給される。貯留槽4Cに貯留された汚泥水の一部は、後述する制御部8Cによって駆動制御される送水ポンプ7CによりラインL4Cを介して電解処理槽6Cへ送出される。また、貯留槽4Cに貯留された汚泥水の残部は、ラインL7Cを介して脱水機9Cへ供給される。
【0052】
そして、脱水機9Cによって脱水分離された水分は、ラインL8Cを介して電解処理槽6Cに供給され、脱水機9Cによって脱水分離された固形物(「脱水ケーキ」ともいう。)は、ラインL9Cを介して脱水ケーキ槽10Cへ搬送される。また、脱水ケーキ槽10Cに貯留された固形物の一部(固形物A)は、後述する制御部8Cによって駆動制御される搬送装置11CによりラインL11Cを介して電解処理槽6Cへ送出され、脱水ケーキ槽10Cに貯留された固形物の残部(固形物B)は、ラインL10Cを介して産廃処理場等へ搬出されることとなる。
【0053】
電解処理槽6Cでは、ラインL8Cを介して脱水機9Cから供給される水分とラインL4Cを介して貯留槽4Cから供給される汚泥水とラインL11Cを介して脱水ケーキ槽10Cから搬送される固形物(固形物A)を混合して所定の固形物濃度の分離水を生成する。その際、電解処理槽6Cに配設された撹拌機5aCによって、水分と汚泥水と固形物とを積極的に撹拌することができる。このように所定の固形物濃度の水分(分離水)を生成した後、電解処理槽6Cでは、電極6aC、6bCに所定の電流で所定の時間だけ通電して固形物を含む水分を電解処理する。そして、電解処理槽6Cで電解処理された処理水は、ライン(循環ライン)L6Cを介してその一部が原水槽2Cを循環されるとともに、その一部が処理槽12Cへ供給される。なお、電解処理槽6Cでの水分の電解処理が終了し、処理水がラインL6Cを介して送出されると、再び貯留槽4Cに貯留された汚泥水がラインL4Cを介して電解処理槽6Cへ送出され、脱水機9Cによって分離された水分がラインL8Cを介して電解処理槽6Cへ供給され、脱水ケーキ槽10Cに貯留された固形物がラインL11Cを介して電解処理槽6Cへ送出され、電解処理槽6Cで所定の固形物濃度の水分が生成されて電解処理が施される。
【0054】
処理槽12Cは、ラインL3Cを介して分離装置3Cから供給される分離水とラインL6Cを介して電解処理槽6Cから供給される処理水とに次亜塩素酸を添加して脱色減菌処理を行うものであり、当該処理槽12Cで脱色減菌処理された処理水は、ラインL12Cを介して海洋や河川、下水道等に放流される。
【0055】
制御部8Cは、上記したように電解処理槽6Cにおける分離水の固形物濃度を所定の濃度に維持するためのものである。電解処理槽6C、処理水を放流するためのラインL12C、分離装置3Cと処理槽12Cを繋ぐラインL3C、貯留槽4Cにはそれぞれ、固形物濃度や色度を検出するための検出器S1C〜S4Cが配設され、制御部8Cは、各検出器S1C〜S4Cで検出される検出結果を受信し、その検出結果に基づいて貯留槽4Cから電解処理槽6Cへ供給する汚泥水の量や脱水ケーキ槽10Cから電解処理槽6Cへ搬送する固形物の量を演算する。制御部8Cは、その演算結果を送水ポンプ7Cや搬送装置11Cに送信し、当該送水ポンプ7C(例えば送水ポンプ7Cの送出圧や送出時間等)や搬送装置11C(例えば搬送装置11Cの搬送容量や搬送時間等)を制御することによって、所定量の汚泥水が貯留槽4Cから電解処理槽6Cへ供給されるとともに所定量の固形物が脱水ケーキ槽10Cから電解処理槽6Cへ供給され、当該電解処理槽6Cで所定の固形物濃度を有する分離水が生成されることとなる。
【0056】
このように、本実施の形態4の排水処理装置1Cによれば、貯留槽4Cに貯留された汚泥水に含まれる固形物と貯留槽4Cに貯留された汚泥水の一部を脱水して生成した固形物とを汚泥水の一部を脱水して生成した水分(分離水)に混合してその水分の固形物濃度を調整し、固形物濃度が調整された水分を電解処理槽6Cで電解処理することで、実施の形態3の排水処理装置1Bと同様、電解処理槽6Cで安定的に有機物処理や色度低減を行うことができ、電解処理槽6Cで使用する電極6aC、6bC等の維持管理を簡素化することができるとともに、固形物の産廃処理量(固形物Bの量)を効果的に低減することができる。
【0057】
なお、上記した実施の形態3、4の排水処理装置1B、1Cでは、貯留槽と電解処理槽を繋ぐラインや脱水ケーキ槽と電解処理槽を繋ぐラインにそれぞれ送水ポンプや搬送装置を配設し、制御部によって送水ポンプと搬送装置の双方を駆動制御して電解処理槽における固形物濃度を調整する形態について説明したが、例えば、送水ポンプと搬送装置の一方のみを用いてもよいし、制御部によって送水ポンプと搬送装置の一方のみを駆動制御してもよい。
【0058】
また、上記した実施の形態3、4の排水処理装置1B、1Cでは、電解処理槽での固形物濃度や色度等を精緻に制御するために、分離装置3Bと電解処理槽6Bを繋ぐラインL3Bや貯留槽4Bに検出器S3B、S4Bを配設したり、分離装置3Cと処理槽12Cを繋ぐラインL3Cや貯留槽4Cに検出器S3C、S4Cを配設する形態について説明した。一方で、電解処理槽6B、6Cにおける固形物濃度や色度は検出器S1B、S1Cにより検出し得ることから、排水処理装置1B、1Cの構成を簡素化するために、上記した検出器S3B、S4Bや検出器S3C、S4Cは省略してもよい。
【0059】
<実施例による検査用試料のCODの減少率と色度を測定した実験とその結果>
本発明者等は、固形物量(固形物濃度、特にCOD濃度)が変動した場合であっても、次亜塩素酸等を生成し得る電極を用いた電解処理では排水中の固形物(特にCOD成分)を十分に酸化分解し得ることを確認するために、固形物量が異なる複数の検査用試料(実施例1〜3、比較例)を調製し、それぞれの検査用試料に対してCODの減少率測定と色度測定を実施した。
【0060】
<検査用試料の調製方法>
まず、検査用試料の調製方法を概説すると、ある固形物濃度を有する懸濁状態の排水(以下、原水という)を500ml用意し、その原水を5分間静置した後の上澄み液を200ml採取して比較例による検査用試料を調製した。また、原水を500ml用意し、その原水のうち200mlを採取して実施例1による検査用試料を調製した。また、原水を1100ml用意し、その原水を5分間静置した後の上澄み液900mlを沈殿物が浮遊しないように取り除いて実施例2による検査用試料を調製した。また、原水を2600ml用意し、その原水を5分間静置した後の上澄み液2400mlを沈殿物が浮遊しないように取り除いて実施例3による検査用試料を調製した。
【0061】
<COD成分の減少率と色度の測定方法>
次に、固形物由来のCODの減少率の測定方法を概説すると、電解処理前に各検査用試料の溶存COD(P1とする)と全量COD(P2とする)を測定し、各検査用試料に対して1Aの電流で5分間通電して電解処理を行った後、各検査用試料の溶存COD(R1とする)と全量COD(R2とする)を再び測定し、以下の式(4)に基づいて固形物由来のCODの減少率を算出した。なお、溶存CODとは、各検査用試料の溶液中に溶存しているCOD成分の濃度、全量CODとは、各検査用試料の溶液中に溶存しているCOD成分と固形物由来のCOD成分の総和の濃度である。
【0062】
[数1]
1−(R2−R1)/(P2−P1) ・・・(4)
【0063】
また、各検査用試料の色度は、ポータブル水質計WA1(日本電色工業株式会社製)を使用して測定した。
【0064】
<検査用試料のCODの減少率と色度を測定した実験結果>
図5は、実施例1〜3、比較例による検査用試料の電解処理前および電解処理後の溶存CODと全量COD(特にCODcr(二クロム酸カリウムによる化学的酸素要求量))を示したものである。また、以下の表1は、実施例1〜3、比較例による検査用試料のCODの減少率を示したものである。また、図6は、実施例1〜3、比較例による検査用試料の電解処理前および電解処理後の色度を示したものである。なお、図5、表1および図6では、各検査用試料の固形物量を、実施例1による検査用試料の固形物量に対する割合で示している。
【0065】
【表1】
【0066】
図5および表1で示すように、電解処理で使用する溶液にある程度の固形物(COD成分)が含まれていたとしても、電解処理層での電解処理により固形物由来のCODを十分に低減できることが確認された。また、図6で示すように、電解処理で使用する溶液にある程度の固形物が含まれていたとしても、電解処理槽での電解処理により色度を上澄み液(比較例)と同等に低減し得ることが確認された。
【0067】
この実験結果より、電解処理槽における固形物量(固形物濃度、特にCOD濃度)が増加した場合であっても、次亜塩素酸等を生成し得る電極を用いた電解処理により、電極等の劣化を抑制しながら排水に含まれる固形物を十分に酸化分解し得ることが実証された。
【符号の説明】
【0068】
1、1A、1B、1C…排水処理装置
2、2A、2B、2C…原水槽
3、3A、3B、3C…分離装置
4、4A、4B、4C…貯留槽
5…混合槽
6、6A、6B、6C…電解処理槽
7、7A、7B、7C…送水ポンプ(送出部、第1送出部)
8、8A、8B、8C…制御部
9B、9C…脱水機
10B、10C…脱水ケーキ槽
11B、11C…搬送装置(第2送出部)
12C…処理槽
S1、S2、S1A、S2A、S1B〜S4B、S1C〜S4C…検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6