特許第5996522号(P5996522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996522
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】箱状装置用配線取り付け装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   G01N17/00
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-266734(P2013-266734)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-121517(P2015-121517A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121120
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男
(72)【発明者】
【氏名】梶本 薫
(72)【発明者】
【氏名】金澤 修一
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−058716(JP,A)
【文献】 特開2005−142472(JP,A)
【文献】 実公昭45−000292(JP,Y1)
【文献】 特開2000−000326(JP,A)
【文献】 特開平03−221895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 − 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状装置の配線用孔に内外に延びる配線を取り付けるための配線取り付け装置であって、
前記配線が内部を貫通可能であり、かつ、前記配線用孔の中に挿入可能な筒状部材と、
前記筒状部材の外周面と前記配線用孔の内周面との間において長手方向に並んで設けられ、前記箱状装置の内外を前記配線用孔の前記長手方向の複数箇所でシールするための押圧力を発生するための複数の環状部と、
前記箱状装置の外側面に設けられ、前記配線用孔を覆うことで外側密閉空間を形成する外側端子台と、
前記箱状装置の内側面に設けられ、前記配線用孔を覆うことで内側密閉空間を形成する内側端子台と、
を備えた箱状装置用配線取り付け装置。
【請求項2】
前記複数の環状部は、前記筒状部材の外周面に取り付けられている、請求項1に記載の箱状装置用配線取り付け装置。
【請求項3】
前記複数の環状部は、前記配線用孔の内周面に弾性変形した状態で当接する、請求項2に記載の箱状装置用配線取り付け装置。
【請求項4】
前記筒状部材及び前記複数の環状部の外周側に配置され、前記複数の環状部からの押圧力によって弾性変形することで前記配線用孔の内周面に前記長手方向の複数箇所で当接可能な筒状弾性部材をさらに備える、請求項2に記載の箱状装置用配線取り付け装置。
【請求項5】
前記筒状弾性部材は、前記複数の環状部に対応する位置に形成され、前記配線用孔の内周面に当接可能な複数の環状突起を有している、請求項4に記載の箱状装置用配線取り付け装置。
【請求項6】
前記複数の環状部は、前記配線用孔の内周面若しくは前記筒状部材の外周面又は両方に弾性変形した状態で当接する、請求項1に記載の箱状装置用配線取り付け装置。
【請求項7】
前記筒状部材の外周面と前記配線用孔の内周面との間に配置され、前記複数の環状部を有する第2筒状弾性部材をさらに備えている、請求項1又は6に記載の箱状装置用配線取り付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば環境試験装置及び培養器のような箱状部材に、その内外に延びる配線を取り付ける装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置は、一般に、電気電子、自動車、材料に関連する産業において部品及び製品の信頼性を試験するのに用いられる。環境試験装置の一部には、電子部品、電子回路を搭載したボード等に対して温度及び/又は湿度が及ぼす影響を調べるものが知られている。
環境試験装置は、筐体と、加熱ヒータと、冷却器と、加湿器と、ファンとを有している。筐体は、断熱性を有し内部に試験室を有する。加熱ヒータは、試験室内の空気を加熱する。冷却器は、試験室内の空気を冷却する。加湿器は、試験室内の空気を加湿する。ファンは、試験室内の空気を循環させる。このような環境試験装置では、試験室の内部の温度及び/又は湿度が所定の値に維持された状態で、試験対象物に対して試験が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−56284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような環境試験装置の筐体には、配線用孔が設けられている。配線用孔は、試験室内の試験対象物等に対して通電したり、信号を送受信したりするための配線が挿通される孔である。配線が配線用孔に挿通される理由は、気密状態において、通電して装置を作動させたり、部品の導通を計測したりするためである。
一方、環境試験装置においては、槽内温度を所定温度に維持するために、試験室の内部空間とその外部とは気密状態に保たれている必要がある。そこで、上記の配線用孔をシールするシール機能付き配線取り付け構造が用いられる。従来の配線取り付け構造は、例えば、配線用孔の両端に気密状態で嵌入された塞栓と、塞栓の周囲を塞ぐシーラントとによって構成されている。
【0005】
しかし、上記の配線取り付け構造では、下記の問題が生じ得る。
第1に、シーラントの施工は、定量的な管理が難しい(つまり作業者によってばらつきがある)ので、気密が不完全になったり、逆に気密性を高めるために大量のシーラントを用いたりしていることがあるが、どちらも好ましくない。特に、配線がテフロン(登録商標)の場合は、シールの密着度が低いため、シール処理が困難であった。
第2に、配線用孔に対する塞栓の嵌入及びシーラントの施工が配線用孔ごとに必要になり、そのため配線取り付け及びシール施工の工数が多くなってしまう。
本発明の課題は、箱状装置用配線取り付け装置において、簡単な構造及び工程によって気密状態を確実に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一見地に係る箱状装置用配線取り付け装置は、箱状装置の配線用孔に内外に延びる配線を取り付けるための配線取り付け装置であって、筒状部材と、複数の環状部とを備えている。
筒状部材は、配線が内部を貫通可能であり、かつ、配線用孔の中に挿入可能である。
複数の環状部は、筒状部材の外周面と配線用孔の内周面との間において長手方向に並んで設けられ、箱状装置の内外を配線用孔の長手方向の複数箇所でシールするための押圧力を発生するための部材である。
【0007】
この装置では、筒状部材が配線用孔に配置されると、複数の環状部が箱状装置の内外を配線用孔の長手方向の複数箇所でシールするための押圧力を発生する。その結果、配線用孔の複数箇所でシールが行われ、箱状装置の気密状態が維持される。
特に、環状部が複数設けられているので、複数の環状部間に密閉された空間を確実に確保でき、配線用孔における気密性を高めることができる。
このように筒状部材及び複数の環状部を配線用孔内に配置するだけでシールを行うことできるので、簡単な構造及び工程によって気密状態を確実に確保できる。
なお、複数の環状部は、互いに連結されていても分離されていてもよい。さらには、複数の環状部は、筒状部材に固定されていてもよく、配線用孔に固定されていてもよく、又は両者のいずれにも固定されていなくてもよい。さらには、複数の環状部は、配線用孔又は筒状部材に直接当接して配線用孔をシールしてもよいし、他の部材に押圧力を付与することで間接的に配線用孔をシールしてもよい。
【0008】
複数の環状部は、筒状部材の外周面に取り付けられていてもよい。
この装置では、筒状部材を配線用孔に挿入するだけで、配線用孔の複数箇所でシールを行うことができる。また、筒状部材を配線用孔から抜き出すだけで配線用孔のシールを解除できる。つまり、シール構造の脱着・交換が容易になり、作業性が向上する。
【0009】
複数の環状部は、配線用孔の内周面に弾性変形した状態で当接してもよい。
【0010】
取り付け装置は、筒状弾性部材をさらに備えていてもよい。筒状弾性部材は、筒状部材及び複数の環状部の外周側に配置され、複数の環状部からの押圧力によって弾性変形することで配線用孔の内周面に長手方向の複数箇所で当接可能である。
この装置では、筒状弾性部材を用いることで、異なる内径の配線用孔に対して、同じ径の筒状部材を用いて配線用孔のシールを行うことができる。
【0011】
筒状弾性部材は、複数の環状部に対応する位置に形成され、配線用孔の内周面に当接可能な複数の環状突起を有していてもよい。
この装置では、筒状弾性部材が複数の環状突起を有しているので、複数の環状突起間に気密空間を確実に確保でき、配線用孔における気密性を高めることができる。
【0012】
取り付け装置は、筒状部材の外周面と配線用孔の内周面との間に配置され、複数の環状部を有する第2筒状弾性部材をさらに備えていてもよい。
この装置では、複数の環状部を有する第2筒状弾性部材を備えているので、筒状部材及び第2筒状弾性部材を配線用孔内に配置するだけで、シールを行うことできる。つまり、簡単な構造及び工程によって、気密状態を確実に確保できる。第2筒状弾性部材は、筒状部材に固定されていてもよく、配線用孔に固定されていてもよく、又は両者のいずれにも固定されていなくてもよい。
【0013】
複数の環状部は、配線用孔の内周面若しくは筒状部材の外周面又は両方に弾性変形した状態で当接してもよい。
【0014】
取り付け装置は、箱状装置の外側面に設けられ、配線用孔の外側端を覆うことで外側密閉空間を形成する外側端子台をさらに備えていてもよい。
この装置では、外側端子台によって配線用孔の外側端側に外側密閉空間を形成して、気密性を高めている。また、外側端子台によって、配線用孔の外側で発生した結露水を受けることができる。
【0015】
取り付け装置は、箱状装置の内側面に設けられ、配線用孔の内側端を覆うことで内側密閉空間を形成する内側端子台をさらに備えていてもよい。
この装置では、内側端子台によって配線用孔の内側端側に内側密閉空間を形成して、気密性を高めている。また、内側端子台によって、配線用孔の内側で発生した結露水を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の環境試験装置の正面扉部材を開いて右斜方向から観察した斜視図。
図2】環境試験装置を左斜方向から観察した斜視図。
図3】端子台ユニットの分解斜視図。
図4】配線用孔及び配線取り付け装置の断面図。
図5】配線取り付け装置の筒状部材の側面図。
図6】第2実施形態における配線用孔及び配線取り付け装置の断面図。
図7】第2実施形態における筒状弾性部材の斜視図。
図8】第3実施形態における配線用孔及び配線取り付け装置の断面図。
図9】第4実施形態における配線用孔及び配線取り付け装置の断面図。
図10】第5実施形態における配線用孔及び配線取り付け装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
(1)環境試験装置の全体構成
図1及び図2を用いて、環境試験装置1の外観形状を説明する。図1は、本発明の実施形態の環境試験装置の正面扉部材を開いて右斜方向から観察した斜視図である。図2は、環境試験装置を左斜方向から観察した斜視図である。
【0018】
環境試験装置1は、全体として直方体形状をしている。具体的には、環境試験装置1は、ステンレススチール等で作られた筐体3を有する。筐体3の内側は、図示しない仕切り壁によって、5つの領域に分けられている。具体的には、環境試験装置1の内部は、試験室配置部5、台座部7、操作機器設置部9、電装品配置部11及び配管配置部13に分かれている。
【0019】
台座部7は、試験室配置部5の下に配置されている。試験室配置部5及び台座部7に対して、その向かって右側面に操作機器設置部9と電装品配置部11がある。操作機器設置部9と電装品配置部11は、前後に並んだ位置にあり、操作機器設置部9は正面側、電装品配置部11は奥側に位置している。配管配置部13は、全体の裏面側にある。
【0020】
試験室配置部5は、試験室15を内蔵し、かつその正面側に扉部材17が設けられた内部空間である。即ち試験室配置部5の正面には扉部材17が設けられている。なお、試験室15の周囲の筐体は、図示しないが、内側筐体と、外側筐体と、その間に配置された断熱部材とから構成されている。断熱部材によって、密閉した断熱空間が形成され、そのため試験室15内の温度が外部の温度の影響を受けて変動することが防止されている。
【0021】
台座部7は、試験室15を所定の高さに保持するための構造である。台座部7には、冷却機の圧縮機(図示せず)等や湿度センサに給水するための給水タンク(図示せず)が内蔵されている。
【0022】
操作機器設置部9は、操作盤及び表示画面が取り付けられる部位であり、これらの操作部や表示部は、正面側に露出している。
【0023】
電装品配置部11の内部には、電源回路、制御回路、リレー等の電装品が配置されている。
【0024】
配管配置部13には、図示しない給水配管及び冷凍配管が配置されている。
【0025】
試験室配置部5は、図示しないが、試験室15と連通する空気流路を有しており、そこに冷却機の蒸発器と、加熱ヒータ、加湿装置及び送風機を配置している。また、空気流路の出口側に、温度センサと湿度センサが設けられている。環境試験装置1では、前記した空気流路内の部材と、温度センサ及び湿度センサによって空気調和装置が構成され、試験室15内に所望の温度・湿度環境を作る。なお、上記の試験室配置部5の構造は公知の技術である。
【0026】
(2)試験室の概要
環境試験は、前記した試験室15に被試験物(図示せず)を置き、被試験物を特定の環境にさらしてその変化を観察することで行われる。環境試験では、試験中における被試験物の変化の進行具合を観察するため、被試験物にセンサが取り付けられる場合がある。具体的には、外形の変化を観察するためのストレインゲージが取り付けられたり、抵抗変化を測定するための電極が被試験物に取り付けられたりする。あるいは、被試験物の表面温度を測定するために温度センサが被試験物に取り付けられる。
【0027】
一方、試験室15内の環境は過酷であることが多く且つ狭いことから、テスターや、記録計、パソコンといった測定機器は、試験室15の外に配置しなければならないことが多い。そのため、試験室15の内外を信号線及び電力線を含む配線で結ぶ必要が出てくる。そこで、環境試験装置1では、試験室15に内外を連通する配線用孔33(後述)が設けられ、配線用孔33を介して配線35(後述)が挿通される。
【0028】
(3)端子台ユニット
(3−1)端子台ユニットの概要
図3図5を用いて、端子台ユニット31を説明する。図3は、端子台ユニットユニットの分解斜視図である。図4は、配線用孔及び配線取り付け装置の断面図である。図5は、配線取り付け装置の筒状部材の側面図である。
【0029】
端子台ユニット31は、試験室の内外において前述の配線を実現するための装置であって、環境試験装置1の配線用孔33(図4)に内外に延びる配線35を取り付けるための配線取り付け装置45(後述)を含んでいる。
【0030】
環境試験装置1の配線用孔33は、この実施形態では、図4に示すように、筐体3の左側壁部37に設けられている。配線用孔33は、左側壁部37内を延びて貫通しており、試験室15の内部空間と筐体3の外部とを連通している。配線用孔33は、孔の形状が円形であり、内周面は断面において直線状に延びている(つまり、内周面に凹凸は形成されていない)。配線用孔33の寸法は、例えば、直径25mm、長さ70mmである。
【0031】
端子台ユニット31は、配線用孔33に着脱自在であり、試験室15の内外にそれぞれ端子台を実現する装置である。端子台ユニット31は、主に、内側端子台41と、外側端子台43と、配線取り付け装置45とを備えている。
【0032】
内側端子台41は、試験室15内に複数の配線用端子を実現するための部材である。内側端子台41は、筐体3の内側面に設けられ、配線用孔33の内側端を覆うことで内側密閉空間51を形成する。内側端子台41は、本体47と、カバー49とを有している。本体47は、一面が開いた箱状の部材であり、例えば樹脂製である。カバー49は、本体47にはめ込まれることによって、本体47と共に内側密閉空間51を形成している。カバー49は、例えば樹脂製である。カバー49の外側面には複数の端子53が突出した状態で配置されている。これら端子53が、試験室15内のセンサ又は被試験物(図示せず)に接続される。なお、端子及び配線の種類は特に限定されず、バナナプラグ端子、ネジ固定式の端子、通電用端子・配線、熱電対コネクタ・配線等を選択できる。
以上に述べたように、試験室15の内側に複数の端子53が露出した内側端子台41を設けているので、試験室15内の配線作業が容易になる。
【0033】
外側端子台43は、試験室15外に複数の配線用端子を実現するための部材である。外側端子台43は、筐体3の外側面に設けられ、配線用孔33の外側端を覆うことで外側密閉空間57を形成する。外側端子台43は、カバー55を有している。カバー55は、一面が開いた箱状の部材であり、例えば樹脂製である。カバー55は、左側壁部37の外壁面に装着されることによって、左側壁部37と共に外側密閉空間57を形成している。カバー55の外側面には複数の端子59が突出した状態で配置されている。これら端子59が、試験室15外のテスター、記録計、パソコンなどの測定機器や通電用電源等(図示せず)に接続される。なお、端子及び配線の種類は特に限定されず、バナナプラグ端子、ネジ固定式の端子、通電用端子・配線、熱電対コネクタ・配線等を選択できる。
なお、内側端子台及び外側端子台はそれぞれ壁部との間に密閉空間を形成する形状を有していたが、密閉空間を形成しない形状であってもよい。例えば、内側端子台及び外側端子台はそれぞれが壁部に密着する平板形状であってもよい。
【0034】
(3−2)配線取り付け装置
配線取り付け装置45は、簡単な構造及び工程によって確実に気密状態を確保しつつ、配線35を配線用孔33(図4)に取り付けることを可能にする装置である。つまり、配線取り付け装置45は、気密シール装置である。配線取り付け装置45は、主に、筒状部材61と、複数の環状部63とを有している。筒状部材61は、この実施形態では、内側端子台41の本体47の主面の上部に形成され、カバー49とは反対側に延びている。筒状部材61は、配線35が内部を貫通可能であり、かつ、配線用孔33の中に挿入可能である。そのため、筒状部材61の外径は配線用孔33の内径より小さい。筒状部材61は、図4に示すように、配線用孔33内を貫通しており(つまり、配線用孔33内で配線用孔33の長手方向に延びており)、先端が左側壁部37の外側面から突出している。筒状部材61の先端は先端ネジ部61aとなっている。
【0035】
複数の環状部63は、環境試験装置1の内外を配線用孔33の長手方向の複数箇所でシールするための押圧力を発生する部材であり、筒状部材61の外周面において長手方向に間隔を空けて設けられている。具体的には、環状部63は、断面円形の環状パッキン(Oリング)であり、筒状部材61の外周面に形成された溝に装着されている。複数の環状部63は、Oリング用の一般的なゴム部材からなるがこれに限られない。複数の環状部63は、筒状部材61の外周面に装着されかつ配線用孔33の外にある状態において、外径が配線用孔33の内径より大きい。したがって、図4に示すように、筒状部材61が配線用孔33に配置された状態において、複数の環状部63が、配線用孔33の内周面に当接する。複数の環状部63が、環境試験装置1(具体的には、試験室15)の内外を配線用孔33の長手方向の複数箇所でシールするための押圧力を発生している。その結果、配線用孔33の複数箇所でシールが行われ、環境試験装置1(具体的には、試験室15)の気密状態が維持される。特に、環状部63が複数設けられているので、複数の環状部63間に密閉された空間を確実に確保でき、配線用孔33における気密性を高めることができる。特にこの実施形態では、3個の環状パッキンが設けられているので、両側の環状パッキンによって内側と外側がそれぞれ遮断されている。さらに、中央の環状パッキンによって、両側の環状パッキン間の空間において対流による熱伝導が生じにくくなっている。ただし、環状部の数は複数であればよく、2個でもよいし、4個以上でもよい。
また、環状パッキンの断面形状は円形でなくてもよく、角リング、Dリング、Xリングが用いられてもよい。また、環状パッキンの断面が先端に向かって細くなる形状の場合は、先端が配線用孔33の内周面に当接して倒れた形状となってシールを行う。
【0036】
このように筒状部材61及び複数の環状部63を配線用孔33内に配置するだけでシールを行うことできるので、簡単な構造及び工程によって気密状態を確実に確保できる。
【0037】
左側壁部37の外側面には、ベースプレート65が装着されている。ベースプレート65には、筒状部材61の先端ネジ部61aが貫通する孔65aが形成されている。筒状部材61の先端ネジ部61aには、ワッシャ67とナット69が装着されている。これにより、筒状部材61が配線用孔33において移動不能となるように固定されている。
【0038】
次に、配線35を説明する。配線35は、筒状部材61内を延びており、さらに筒状部材61の両側に延びている。配線35の一方の端部は、内側端子台41の端子53にそれぞれ接続されている。さらに、配線35の他方の端部は、外側端子台43の内部に配置されたコネクタ71に接続されている。コネクタ71は、外側端子台43の端子59に接続された配線73に接続されたコネクタ75に接続されている。
なお、筒状部材61の先端ネジ部61aにおいては、シール部材77が配置され、筒状部材61の先端側をシールしている。
【0039】
この実施形態では、複数の環状部63が筒状部材61の外周面に取り付けられているので、筒状部材61を配線用孔33に挿入するだけで、配線用孔33の複数箇所でシールを行うことができる。また、筒状部材61を配線用孔33から抜き出すだけで配線用孔33のシールを解除できる。つまり、シール構造の脱着・交換が容易になり、作業性が向上する。
特に、本実施形態では、従来のゴム栓の挿入及びシーラント施工する場合の多くの作業が不要となる。言い換えると、本実施形態では、端子台ユニット31の主な部品をそれぞれ一動作で配線用孔33に脱着可能であるので、交換作業が容易になる。
【0040】
(3−3)端子台ユニットの装着
この実施形態において、端子台ユニット31の装着は以下のように行われる。最初に、内側端子台41を用意し、配線35が通った筒状部材61を配線用孔33に装着する。さらに、ベースプレート65に筒状部材61を通し、ナット69を筒状部材61の先端ネジ部61aに装着する。この状態でシール部材77によるシールを施し、さらに配線35の先端にコネクタ71を装着する。
【0041】
さらに、コネクタ75及び配線73が取り付けられた外側端子台43を用意し、コネクタ71とコネクタ75を連結し、最後に外側端子台43を左側壁部37に固定する。
以上に述べたように、端子台ユニット31の装着は容易になっており、しかも高いシール機能を実現している。
【0042】
さらに、この装置では、内側端子台41及び外側端子台43及びによって配線用孔33の両側に内側密閉空間51及び外側密閉空間57をそれぞれ形成することで、気密性を高めている。したがって、試験室15の内外において結露又は霜付きが生じにくくなっている。さらに、外側端子台43及び内側端子台41によって、配線用孔33の両側で発生した結露水を受けることができる。結露水は、ドレン排出用のホース(図示せず)を経由して外部に排出される。そのため左側壁部37の外部及び内部を濡らすことはない。
なお、端子台ユニット31の取り外しは、前記動作の反対の手順で行えばよい。
【0043】
2.第2実施形態
第1実施形態では複数の環状部は、配線用孔に直接当接して配線用孔をシールしているが、他の部材に押圧力を付与することで間接的に配線用孔をシールしてもよい。
図6及び図7を用いて、環状部が他の部材に押圧力を付与することで間接的に配線用孔をシールする実施形態を説明する。図6は、第2実施形態における配線用孔及び配線取り付け装置の断面図である。図7は、第2実施形態における筒状弾性部材の斜視図である。
【0044】
この実施形態では、筒状部材61の外径は前記実施形態と同じであり、配線用孔33の内径は前記実施形態より大きい。この実施形態の配線用孔33の内径は、例えば、50mmである。
【0045】
図6及び図7に示すように、配線取り付け装置45は、前述の実施形態の構造に加えて、筒状弾性部材81をアダプタとして有している。筒状弾性部材81は、筒状部材61及び複数の環状部63の外周側に配置され、複数の環状部63からの挿入圧力によって弾性変形することで配線用孔33の内周面に長手方向の複数箇所で当接可能である。筒状弾性部材81は、例えば、シリコーンゴム製であるが、他のゴム等の弾性部材であってもよい。筒状弾性部材81の内周面の断面は、自由状態において直線状である(つまり、内周面に凹凸はない)。筒状弾性部材81の内径は、自由状態において、複数の環状部63の外径よりも小さい。したがって、筒状部材61及び筒状弾性部材81が配線用孔33に配置された状態で、複数の環状部63は筒状弾性部材81に対して押圧力を付与している。
【0046】
筒状弾性部材81は、複数の環状突起81aを外周面に有しており、複数の環状突起81aが配線用孔33の内周面に当接している。環状突起81aは、複数の環状部63に対応する位置に形成されている。したがって、複数の環状突起81aは、複数の環状部63によって押されて外側に突出し、それにより配線用孔33の内周面に弾性変形しながら密着している。なお、環状突起81aの外径は、自由状態において、配線用孔33の内径よりも大きいか又は同程度である。
【0047】
この装置では、筒状弾性部材81が複数の環状突起81aを有しているので、複数の環状突起81a間に気密空間を確実に確保でき、配線用孔33における気密性を高めることができる。
なお、筒状弾性部材には、自由状態において複数の環状部が形成されておらず(内周面、外周面ともにストレートであり)、筒状部材61に装着したときに複数の環状部63によって複数の環状部が形成されてもよい。また、筒状弾性部材には、複数の環状部63に対応する複数の環状溝が形成されていてもよい。環状突起は複数の環状部63に対応する位置に形成されていなくてもよい。
以上に述べたように、筒状弾性部材81を用いることで、異なる内径の配線用孔33に対して、同じ径の筒状部材61を用いて配線用孔33のシールを行うことができる。
その他の効果も第1実施形態と同じである。
【0048】
3.第3実施形態
第1実施形態では、複数の環状部は、互いに分離されていたが、互いに連結されていてもよい。図8を用いて、複数の環状部が互いに連結された実施形態を説明する。図8は、第3実施形態における配線用孔及び配線取り付け装置の断面図である。
【0049】
図8に示すように、筒状部材61の外周面には、第2筒状弾性部材83が設けられている。第2筒状弾性部材83は、複数の環状部83aを有している。複数の環状部83aの外径は、筒状部材61に装着された状態において、配線用孔33の内径より大きい。したがって、複数の環状部83aは、配線用孔33の内周面に弾性変形した状態で密着している。
この装置では、第2筒状弾性部材83が複数の環状部83aを有しているので、複数の環状部83a間に気密空間を確実に確保でき、配線用孔33における気密性を高めることができる。
その他の効果も第1実施形態と同じである。
【0050】
4.第4実施形態
第1〜第3実施形態では複数の環状部は筒状部材の外周面に装着されていたが、複数の環状部は配線用孔の内周面に装着されていてもよい。
図9を用いて、そのような実施形態を説明する。図9は、第4実施形態における配線用孔及び配線取り付け装置の断面図である。
【0051】
図9に示すように、配線用孔33の内周面には、第2筒状弾性部材85が装着されている。第2筒状弾性部材85は、複数の第1環状部85aを外周面に有し、複数の第2環状部85bを内周面に有している。複数の第1環状部85aと複数の第2環状部85bは長手方向の同じ位置に対応して配置されている。複数の第1環状部85aの外径は、自由状態では、配線用孔33の内径より大きい。したがって、複数の第1環状部85aは、配線用孔33内では、配線用孔33の内周面に弾性変形した状態で密着している。複数の第2環状部85bの内径は、第2筒状弾性部材85が配線用孔33に装着された状態において、筒状部材61の外径より小さい。したがって、複数の第2環状部85bは筒状部材61の外周面に弾性変形した状態で密着している。
この場合も、筒状部材61を配線用孔33内に挿入するだけで、第2筒状弾性部材85の複数の第2環状部85bが筒状部材61の外周面に当接することで、シールが行われる。
この装置では、第2筒状弾性部材85が複数の第1環状部85a及び複数の第2環状部85bを有しているので、それら環状部間に気密空間を確実に確保でき、その結果、配線用孔33における気密性を高めることができる。
その他の効果も第1実施形態と同じである。
【0052】
5.第5実施形態
複数の環状部が配線用孔の内周面に装着されている実施形態をさらに説明する。
そのような実施形態を、図10を用いて説明する。図10は、第5実施形態における配線用孔及び配線取り付け装置の断面図である。
【0053】
図10に示すように、配線用孔33の内周面には、第2筒状弾性部材87が装着されている。第2筒状弾性部材87は、外周面が断面において直線状であり(つまり、外周面には凹凸が形成されておらず)、配線用孔33の内周面に対して全面的に当接している。第2筒状弾性部材87は、長手方向に間隔を空けて配置された複数の環状部87aを内周面に有している。複数の環状部87aの内径は、配線用孔33に装着された状態において、筒状部材61の外径より小さい。したがって、複数の環状部87aは、筒状部材61の外周面に弾性変形した状態で密着している。
この場合も、筒状部材61を配線用孔33内に挿入するだけでシールが行われる。
この装置では、第2筒状弾性部材87が複数の環状部87aを有しているので、複数の環状部87a間に気密空間を確実に確保でき、配線用孔33における気密性を高めることができる。
なお、上記の場合では、複数の環状部は第2筒状弾性部材として一体的に形成されているが、一体的に形成されていなくてもよい。例えば、筒状弾性部材と、その内周面に配置された複数の環状部としての複数のOリングとによって、第2筒状弾性部材が実現されてもよい。
その他の効果も第1実施形態と同じである。
【0054】
6.実施形態の共通事項
上記第1〜第5実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
配線取り付け装置(例えば、配線取り付け装置45)は、箱状装置(例えば、環境試験装置1)の配線用孔(例えば、配線用孔33)に内外に延びる配線(例えば、配線35)を取り付けるための装置である。配線取り付け装置は、筒状部材(例えば、筒状部材61)と、複数の環状部(例えば、複数の環状部63、複数の環状部83a、複数の第1環状部85a、複数の第2環状部85b、複数の環状部87a)とを備えている。
筒状部材は、配線が内部を貫通可能であり、かつ、配線用孔の中に挿入可能である(例えば、図3及び図4を参照)。
複数の環状部は、筒状部材の外周面と配線用孔の内周面との間において長手方向に並んで設けられ、箱状装置の内外を配線用孔の長手方向の複数箇所でシールするための押圧力を発生するための部材である(例えば、図4図6図8図9図10を参照)。
【0055】
この装置では、筒状部材が配線用孔に配置されると、複数の環状部が箱状装置の内外を配線用孔の長手方向の複数箇所でシールするための押圧力を発生する。その結果、配線用孔の複数箇所でシールが行われ、箱状装置の気密状態が維持される。
特に、環状部が複数設けられているので、複数の環状部間に密閉された空間を確実に確保でき、配線用孔における気密性を高めることができる。
このように筒状部材及び複数の環状部を配線用孔内に配置するだけでシールを行うことできるので、簡単な構造及び工程によって気密状態を確実に確保できる。
【0056】
上記のように,配線孔に装着される筒状部材と環状部とによってシール構造が実現されているので、他の構造及び部材は適宜変更及び省略可能である。例えば、内側端子台41及び外側端子台43は本実施形態と同じ構造である必要はなく、また必要に応じて一方又は両方が省略されてもよい。
【0057】
7.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば環境試験装置及び培養器のような箱状部材の内外を延びる配線を取り付ける装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 :環境試験装置
3 :筐体
5 :試験室配置部
15 :試験室
31 :端子台ユニット
33 :配線用孔
35 :配線
37 :左側壁部
41 :内側端子台
43 :外側端子台
45 :配線取り付け装置
47 :本体
49 :カバー
51 :内側密閉空間
53 :端子
55 :カバー
57 :外側密閉空間
59 :端子
61 :筒状部材
63 :環状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10