(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996525
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】ワッシャ製造のための方法およびプラントならびにワッシャ
(51)【国際特許分類】
F16B 43/00 20060101AFI20160908BHJP
F16B 39/24 20060101ALI20160908BHJP
C23C 18/32 20060101ALI20160908BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
F16B43/00 B
F16B39/24 B
C23C18/32
C23C18/31 A
【請求項の数】19
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-506112(P2013-506112)
(86)(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公表番号】特表2013-530352(P2013-530352A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】SE2011050463
(87)【国際公開番号】WO2011133090
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年4月1日
(31)【優先権主張番号】1050390-2
(32)【優先日】2010年4月20日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】509058427
【氏名又は名称】ノード−ロック・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クット・ペルソン
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−035314(JP,U)
【文献】
特開平06−323325(JP,A)
【文献】
特開2000−205226(JP,A)
【文献】
特開平01−266309(JP,A)
【文献】
特開平10−233121(JP,A)
【文献】
特開平03−240942(JP,A)
【文献】
特開平10−302755(JP,A)
【文献】
特開平04−304386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
C23C 18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト止めジョイントにおいてロックを行うための金属製ワッシャを製造するための方法であって、
前記ワッシャが、環状の形状を有するものとされ、
前記ワッシャの一方の面に、径方向に延在するカムのパターンが設けられ、
前記ワッシャの他方の面に、径方向に延在する歯のパターンが設けられ、
前記ワッシャのうちの、前記歯のパターンが設けられた少なくとも1つの面が、ロック操作時に前記歯のパターンに対して相互作用することとなる材料の硬さを超える硬さを有した表面を備えるものとされ、
この方法においては、
−複数のワッシャ(1)からなるバッチを、腐食耐性を有した外表面層(7)によってコーティングし、この場合、前記外表面層(7)の硬さを、ロック操作時に前記歯(3)のパターンに対して相互作用することとなる材料(6)の硬さを超えるものとし、
前記外表面層を、ニッケル/リン合金とするとともに、このニッケル/リン合金からなる層を、アモルファス構造を備えたものとすることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記外表面層を、2〜14重量%のリンを含有した、あるいは、6〜9重量%のリンを含有した、ニッケル/リン合金とすることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
前記外表面層を、無電解ニッケルメッキプロセスによって、あるいは、バレルメッキプロセスによって、成膜することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、
−クリーニング操作(440)において、前記ワッシャの表面をクリーニングし、その後、
−純粋なニッケルからなる層(310)を電解的に成膜し、その後、前記ニッケル合金からなる前記外表面層(7)を形成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、
−外表面層(7)を、10〜50μmという厚さで成膜することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
−前記ワッシャの前記外表面層を、400℃で1時間にわたって、あるいは、200〜300℃で最大12時間にわたって、熱処理することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、
前記外表面層を、1000HVという硬さが得られるまで、熱処理することを特徴とする方法。
【請求項8】
ボルト止めジョイントにおいてロックを行うための金属製ワッシャを製造するための方法であって、
前記ワッシャが、環状の形状を有するものとされ、
前記ワッシャの一方の面に、径方向に延在するカムのパターンが設けられ、
前記ワッシャの他方の面に、径方向に延在する歯のパターンが設けられ、
前記ワッシャのうちの、前記歯のパターンが設けられた少なくとも1つの面が、ロック操作時に前記歯のパターンに対して相互作用することとなる材料の硬さを超える硬さを有した表面を備えるものとされ、
この方法においては、
−複数のワッシャ(1)からなるバッチを、腐食耐性を有した外表面層(7)によってコーティングし、この場合、前記外表面層(7)の硬さを、ロック操作時に前記歯(3)のパターンに対して相互作用することとなる材料(6)の硬さを超えるものとし、
−窒化チタンTiNと、炭窒化チタンTiCNと、窒化クロムCrNと、窒化チタンアルミニウムTiAlNと、の中の少なくとも1つの化合物からなる前記外表面層(7)を、物理的気相蒸着プロセスによって成膜することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、
前記外表面層を、0.5〜50μmという厚さを有したものとすることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法において、
−前記ワッシャを、スチール製のワッシャとして、あるいは、ステンレススチール製のワッシャとして、あるいは、耐酸性ステンレススチール製のワッシャとして、形成することを特徴とする方法。
【請求項11】
ボルト止めジョイントにおいてロックを行うための金属製ワッシャであって、
前記ワッシャが、フラットな環状の形状を有するものとされ、
前記ワッシャが、中央穴を有しており、
前記ワッシャの一方の面に、径方向に延在するカムのパターンが設けられ、
前記ワッシャの他方の面に、径方向に延在する歯のパターンが設けられ、
前記ワッシャのうちの、前記歯のパターンが設けられた少なくとも1つの面が、ロック操作時に前記歯のパターンに対して相互作用することとなる材料の硬さに少なくとも対応する硬さを有した表面を備えるものとされ、
このようなワッシャにおいて、
前記ワッシャ(1)が、腐食耐性を有した外表面層(7)によってコーティングされ、 前記外表面層(7)の硬さが、ロック操作時に前記歯(3)のパターンに対して相互作用することとなる材料(6)の硬さを超えるものとされ、
前記外表面層が、ニッケル/リン合金とされるとともに、このニッケル/リン合金からなる層が、アモルファス構造を備えたものとされることを特徴とするワッシャ。
【請求項12】
請求項11記載のワッシャにおいて、
電解的に成膜された純粋なニッケルからなる下地コーティング層(310)が、前記ニッケル合金からなる前記外表面層(7)の下地として設けられていることを特徴とするワッシャ。
【請求項13】
請求項11または12記載のワッシャにおいて、
前記ニッケル/リン合金が、2〜14重量%のリンを含有した、あるいは、6〜9重量%のリンを含有したものとされることを特徴とするワッシャ。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載のワッシャにおいて、
前記外表面層が、10〜50μmという厚さとされていることを特徴とするワッシャ。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載のワッシャにおいて、
前記外表面層が、1000HVという硬さであることを特徴とするワッシャ。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか1項に記載のワッシャにおいて、
前記金属製ワッシャが、スチール製のワッシャとして、あるいは、ステンレススチール製のワッシャとして、あるいは、耐酸性ステンレススチール製のワッシャとして、形成されていることを特徴とするワッシャ。
【請求項17】
ボルト止めジョイントにおいてロックを行うための金属製ワッシャであって、
前記ワッシャが、フラットな環状の形状を有するものとされ、
前記ワッシャが、中央穴を有しており、
前記ワッシャの一方の面に、径方向に延在するカムのパターンが設けられ、
前記ワッシャの他方の面に、径方向に延在する歯のパターンが設けられ、
前記ワッシャのうちの、前記歯のパターンが設けられた少なくとも1つの面が、ロック操作時に前記歯のパターンに対して相互作用することとなる材料の硬さに少なくとも対応する硬さを有した表面を備えるものとされ、
このようなワッシャにおいて、
前記ワッシャ(1)が、腐食耐性を有した外表面層(7)によってコーティングされ、 前記外表面層(7)の硬さが、ロック操作時に前記歯(3)のパターンに対して相互作用することとなる材料(6)の硬さを超えるものとされ、
前記外表面層が、窒化チタンTiNと、炭窒化チタンTiCNと、窒化クロムCrNと、窒化チタンアルミニウムTiAlNと、の中の少なくとも1つの化合物から形成されていることを特徴とするワッシャ。
【請求項18】
請求項17記載のワッシャにおいて、
前記外表面層が、0.5〜50μmという厚さを有したものとされていることを特徴とするワッシャ。
【請求項19】
請求項17または18記載のワッシャにおいて、
前記金属製ワッシャが、スチール製のワッシャとして、あるいは、ステンレススチール製のワッシャとして、あるいは、耐酸性ステンレススチール製のワッシャとして、形成されていることを特徴とするワッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序部分に記載されているようなロックのためのワッシャの製造方法に関するものである。
【0002】
本発明は、また、請求項24の序部分に記載されているようなプラントに関するものである。
【0003】
本発明は、さらに、請求項13の序部分に記載されているようなロックのためのワッシャに関するものである。
【背景技術】
【0004】
上記タイプの金属製ワッシャが、従来より公知である。このタイプのワッシャは、対で使用することが意図されており、一面には、互いに対向するカムのパターンが設けられ、他の面には、歯のパターンが設けられている。歯のパターンは、外向きに回転され、ワークピース表面内に、あるいは、ボルトヘッド内に、あるいは、ボルト止めジョイントのナット内に、グリップする。これを達成するために、ワッシャの歯は、ワークピースおよびボルトヘッド/ナットよりも硬いものでなければならない。これにより、それぞれの表面内における侵入度合いは、歯と、ワークピースまたはボルトヘッド/ナットと、の間の接触における摩擦が、それぞれのカム表面どうしの間の摩擦を超えることを確保し得るよう、十分に深いものとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】本明細書においては、関連する特許文献を記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ある種の実施形態においては、金属製ワッシャは、スチールから形成される。例えば、ステンレススチールから形成される。例えば、耐酸性のステンレススチールから形成される。ワッシャを冷間形成することにより、硬度は、歪み硬化によって増大する。しかしながら、この場合には、硬度は、関連するボルト止めジョイント内において使用されているボルトおよびナットの冷間形成によって得られるのとほぼ同じ程度にまで増大する。したがって、ワッシャの硬度は、さらに良好な摩擦を確保し得るよう、増大させなければならない。
【0007】
硬いワッシャ表面を得るための冷間形成に加えて、バッチ的製造に適した他の公知の方法は、カーボンおよび水素という雰囲気内における熱処理という態様での硬化である。しかしながら、この方法は、高価であり、表面のステンレス特性が粗末である。
【0008】
本発明の目的は、硬いワッシャ表面を有した金属製ワッシャのバッチ的形成を行うための方法であって、同時に、上述した公知方法の欠点を回避し得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的および他の目的は、請求項1,24,13に記載された特徴点を有したそれぞれ方法、プラント、ワッシャ、によって得られる。
【0010】
後述するように、さらなる利点は、従属請求項において特定された特徴点によって得られる。
【0011】
本発明においては、ワッシャは、腐食耐性を有した外表面層であるとともに、ロック操作時に歯のパターンに対して相互作用することとなる材料の硬さを超える硬さを有した外表面層によって、コーティングされる。
【0012】
「コーティングされる」または「コーティングされた」という用語は、腐食耐性を有した外表面層が、ワッシャの外表面上に成膜されることを意図している。
【0013】
本発明は、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことにより、より明瞭に理解されるであろう。添付図面においては、同様の部材には、同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に基づく例えばワッシャといったようなロックのためのワッシャを使用したボルト止めジョイントの一実施形態を示す概略的な横断面図である。
【
図2】本発明によるワッシャの一実施形態を示す斜視図であって、面は、歯のパターンを有している。
【
図3】本発明によるワッシャの一部を示す径方向の断面図である。
【
図4】本発明による方法の一実施形態を示すブロック図である。
【
図5】本発明によるプラントの一実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実質的に上記において特定されたタイプの金属製ワッシャ1は、既に公知であり、ロックの目的のための、例えばボトル止めジョイントのためにあるいは対応固定部材のために、設けられている。
図1に概略的に示すように、歯3のパターンが設けられた面2は、2つのワッシャ1からなる対において外向きに回転される。歯は、ボルトヘッド4’のあるいは例えばナットといったような対応部材の底面4に対して、および、例えばワークピース6の表面5に対して、グリップする。
【0016】
本発明の好ましい実施形態においては、ワッシャは、例えばステンレススチールといったようなスチールから形成される。時によっては、特に好ましい実施形態は、耐酸性のステンレススチールからなるワッシャである。
【0017】
本発明においては、ワッシャには、外表面層7が設けられる。外表面層7は、
図1に示すように、好ましくは、歯のワッシャパターンに対して相互作用する材料よりも硬いものであることを意図したものである。これにより、歯のワッシャパターンは、その材料の中にグリップすることが意図されている。
【0018】
本発明の一見地においては、外表面層7は、ニッケル合金から形成されている。
【0019】
図3に示すように、電解的に成膜された純粋ニッケルからなる層310が、一実施形態においては、ニッケル合金製の外表面層7の下に設けられている。よって、層310は、外表面層のための下地コーティングとして機能する。
【0020】
好ましい実施形態においては、外表面層7は、ニッケル/リン合金とされている。好ましくは、ニッケル/リン合金は、およそ2〜14重量%のリンを含有しており、より詳細には、およそ6〜9重量%のリンを含有している。残部は、ニッケルと、ニッケルリン合金の場合の通常の不純物と、である。
【0021】
好ましくは、外表面層7は、いわゆる無電解ニッケルメッキプロセスによって、好ましくはいわゆるバレルメッキプロセスによって、成膜される。それらプロセス自体は、公知のものであり、外表面層は、ワッシャ上において自己触媒的に還元される。ワッシャに関するバレルメッキプロセスにおいては、複数のワッシャからなるバッチが、バレルのバス内に含浸され、これにより、所望の表面層が得られる。
【0022】
好ましい実施形態においては、外表面層7は、およそ10〜50μmという厚さとされる。
【0023】
さらに、好ましい実施形態においては、ニッケル/リン合金からなる外表面層7は、約400℃で1時間にわたって、あるいは、約200〜300℃で最大で12時間にわたって、好ましくは不活性雰囲気下において、熱処理される。本発明の一実施形態においては、好ましくは、約1000HVという硬度にまで熱処理される。
【0024】
本発明の一見地においては、ワッシャの製造方法が提供される。本発明による方法は、ボルト止めジョイントにおいてロックを行うためのスチールワッシャのバッチ的製造である。
図2のワッシャは、フラットな環状の形状とされており、中央穴8を有しており、一方の面9には、径方向に延在するカム10のパターンが形成されており、他方の面2には、径方向に延在する歯3のパターンが形成されている。本発明による方法においては、硬いワッシャ表面層を準備し、この表面層の硬さは、ロック動作において歯3のワッシャパターンに対して相互作用することとなる例えばボトルヘッドやナットやあるいはワークピースといったような表面材料の硬さを超えることが意図されている。
【0025】
図4においては、本発明による方法の各ステップが図示されている。
【0026】
すなわち、第1ステップ410においては、スチールワッシャ1が製造される。
【0027】
第2ステップ420は、好ましいステップではあるけれども、常に必要ではないステップである。第2ステップ420においては、ワッシャは、クリーニングされる。これにより、コーティングに適した清浄表面が得られる。
【0028】
第3ステップ430も、また、好ましいステップではあるけれども、常に必要ではないステップである。第3ステップ430においては、純粋なニッケルからなる層310が、外表面層7のための下地コーティングとして、電解的に成膜される。
【0029】
第4ステップ440においては、複数のワッシャ1からなるバッチに対して、外表面層7が設けられる。好ましい実施形態においては、外表面層は、上述したように、ニッケル/リン合金を備えている。好ましくは、無電解ニッケルメッキプロセスが使用されて、外表面層7が成膜される。好ましくは、バレルメッキプロセスが行われる。
【0030】
第5ステップ450は、好ましいステップではあるけれども、常に必要ではないステップである。第5ステップ450においては、ワッシャの外表面層7が、約400℃で約1時間にわたって、あるいは、200〜300℃で最大約12時間にわたって、好ましくは不活性雰囲気下において、熱処理される。好ましくは、外表面層7は、約1000HVにまで熱処理される。
【0031】
好ましい実施形態においては、ワッシャは、ステンレススチールから形成され、特に好ましくは、耐酸性のステンレススチールから形成される。
【0032】
本発明による方法の一見地においては、プラントが、ボルト止めジョイントにおいてロックを行うためのワッシャを製造するために設けられる。ワッシャは、上述したタイプのものとされる。そのようなプラントの一実施形態が、
図5に示されている。
【0033】
すなわち、プラントは、例えば実質的に
図4に示すタイプのものといったような、スチール製ワッシャを製造するための手段510を備えている。好ましくは、プラントは、さらに、製造されたワッシャをクリーニングするための手段520と、好ましくは、下地コーティングとしてワッシャ上に純粋ニッケルからなる層310を電解的に成膜するための手段530と、を備えている。さらに、プラントは、複数のワッシャからなるバッチに対して、ニッケル合金製の外表面層7を成膜するための手段540を備えている。好ましい実施形態においては、外表面層7は、ニッケル/リン合金からなるものである。外表面層の成膜に際しては、無電解ニッケルメッキプロセスが使用され、好ましくは、バレルメッキプロセスが使用される。さらに、プラントは、好ましくは、ワッシャの熱処理を行うための手段550と、熱処理されたワッシャを制御しつつ冷却するための手段560と、を備えている。
【0034】
本発明の他の見地においては、スチール製ワッシャのバッチに設けられる外表面層は、物理的気相蒸着プロセスすなわちPVDプロセスによって、成膜される。外表面層は、窒化チタンTiNと、炭窒化チタンTiCNと、窒化クロムCrNと、窒化チタンアルミニウムTiAlNと、の中の少なくとも1つの化合物から形成される。
【0035】
このタイプの外表面層は、ワッシャのバッチの歯面のワッシャパターンに関して、所望の硬さと、所望のステンレス特性と、の双方を提供する。外表面層の厚さは、好ましくは、およそ0.5〜50μmとされる。
【0036】
本発明のこの見地においては、本発明による方法は、上述したステップ410,420,430に対応したステップを備え、ステップ430は、PVDプロセスを備えたステップとされる。
【0037】
さらに、本発明のこの見地においては、本発明によるプラントは、上述した手段510,520,540に対して実質的に対応した手段を備え、手段540は、複数のワッシャからなるバッチに対して外表面層を成膜するためのPVDプロセス行うための手段を備えている。
【0038】
本発明による、ワッシャ、ならびに、方法、プラントの機能は、重要なものであり、必要な程度は、上記の説明により、明瞭である。
【0039】
すなわち、本発明により、外表面層を備えた金属製ワッシャを製造することができ、ワッシャは、とりわけ、ワッシャの歯面のパターンのための硬さを提供し、硬さは、必要であれば、例えばボトルヘッドやナットといったような、歯がグリップすることを意図した材料の硬さを超えるものである。
【0040】
ニッケル/リン合金層は、アモルファス構造、または、ある程度のアモルファス構造を備えており、所望の硬さと、優秀なステンレス特性と、耐酸特性と、を提供する。
【0041】
ニッケル/リン合金は、バッチ的な成膜に、例えばバレルメッキプロセスに、極めて適している。これにより、低コストでの製造を行うことができる。
【0042】
ニッケル/リン合金は、また、所望の硬さとなるまで、熱処理を行うことができる。
【0043】
さらに、本発明におけるニッケル合金は、とりわけアモルファス構造に基づき、優秀なステンレス特性を提供する。
【0044】
クリーニングを行う実施形態、および、純粋なニッケルからなる下地コーティングを電解成膜する実施形態は、外表面層に対しての良好な結合を提供する。
【0045】
PVDプロセスを使用した実施形態は、所望の硬さと所望の腐食耐性とを有したワッシャ外表面層を提供する。通常は、クリーニング操作が、本発明のPVDプロセス態様の一部として、行われるべきである。
【0046】
上記においては、本発明について、様々な実施例や様々な好ましい実施形態に関連して説明した。
【0047】
当然のことながら、さらなる実施形態や、細部の追加や、細部の変更は、本発明の基本的なアイデアを逸脱することなく、想定することができる。
【0048】
よって、本発明は、また、いわゆる摩擦ロックワッシャに対しても、応用可能である。
【0049】
よって、本発明は、例示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内において変更することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ワッシャ
3 歯
6 材料
7 外表面層