特許第5996543号(P5996543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5996543有機エレクトロルミネッセントデバイス用配合物
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  • 特許5996543-有機エレクトロルミネッセントデバイス用配合物 図000065
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996543
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセントデバイス用配合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20160908BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160908BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20160908BHJP
   C07D 213/53 20060101ALI20160908BHJP
   C07D 251/14 20060101ALI20160908BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C09K11/06 690
   C07D209/86
   C07D213/53
   C07D251/14
   C07D403/04
【請求項の数】7
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2013-533104(P2013-533104)
(86)(22)【出願日】2011年9月15日
(65)【公表番号】特表2014-500612(P2014-500612A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011004645
(87)【国際公開番号】WO2012048779
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年9月12日
(31)【優先権主張番号】102010048497.0
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ルデマン、オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】アネミアン、レミ・マノウク
(72)【発明者】
【氏名】ホイン、スザンネ
(72)【発明者】
【氏名】ハイル、ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】エベルレ、トマス
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−516637(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/069444(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/015306(WO,A1)
【文献】 特開2006−245565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバゾール化合物、電子輸送化合物、三重項エミッター化合物、および少なくとも1種の溶媒からなる配合物であって、前記電子輸送化合物がトリアジン化合物を包含し、前記カルバゾール化合物は、N原子を介して互いに接続された少なくとも2個のカルバゾール基を含有し、トリアジン化合物が式(7)又は(8)の化合物であることを特徴とする配合物
【化1】
式中、使用された記号および添え字には以下が適用される:
Ar2は、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、5〜60個の芳香族環原子を有する一価の芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、各場合において、1以上のラジカルR1により置換されていてもよく;
Ar3は、5〜60個の芳香族環原子を有する二価の芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、1以上のラジカルR1により置換されていてもよく;
1は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、C(=O)Ar1、P(=O)(Ar12、S(=O)Ar1、S(=O)2Ar1、CR2=CR2Ar1、CN、NO2、Si(R23、B(OR22、B(R22、B(N(R222、OSO22、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)(ここで、1つのCH2基又は2以上の隣接していないCH2基は、R2C=CR2、C≡C、Si(R22、Ge(R22、Sn(R22、C=O、C=S、C=Se、C=NR2、P(=O)(R2)、SO、SO2、NR2、O、S、またはCONR2により置きかえられていてもよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN、またはNO2により置きかえられていてもよい)、あるいは5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)、あるいは5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基(これらは、1以上のラジカルR2によって置換されていてもよい)、あるいはこれらの系の組合せであり;ここで2以上の隣接する置換基R1は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよく;
Ar1は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよく;
2は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、H、D、CN、または1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族、および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカル(ここで、さらに、H原子は、Fにより置きかえられていてもよい)であり;ここで、2以上の置換基R2は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよい
【請求項2】
カルバゾール化合物が式(1)の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の配合物。
【化2】
式中、使用された記号および添え字には以下が適用される:
Arは、出現する毎に、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これは、1以上のラジカルRにより置換されていてもよく;
R、R1は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、N(Ar12、CN、NO2、Si(R23、B(OR22、C(=O)Ar1、P(=O)(Ar12、S(=O)Ar1、S(=O)2Ar1、−CR2=CR2(Ar1)、OSO22、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)(ここで、1つのCH2基又は2以上の隣接していないCH2基は、R2C=CR2、C≡C、Si(R22、Ge(R22、Sn(R22、C=O、C=S、C=Se、C=NR2、P(=O)(R2)、SO、SO2、NR2、O、S、またはCONR2により置きかえられていてもよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN、またはNO2により置きかえられていてもよい)、あるいは5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)、あるいは5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基(これらは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)、あるいはこれらの系の組合せであり;ここで2以上の置換基R、R1、またはRとR1は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよく;
Ar1は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよく;
2は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、H、または1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族、および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカル;または5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、1以上のラジカルRにより置換されていてもよい)であり;ここで2以上の置換基R2は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよく;
nは、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、0、1、2、3、または4であり;
pは、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、0、1、2、3、または4であり;
qは、1、2、3、4、または5である。
添え字qが1に等しい場合、これは、Arが二価の基を表すことを意味する。添え字qが1より大きい場合、これは、合計3以上のカルバゾール基が芳香族環系Arに結合されていることを意味する。Arは、q=2については三価の基であり、q>2については対応して多価の基である。添え字qは、好ましくは、=1または2であり、特に好ましくはq=1である。
【請求項3】
三重項エミッター化合物が、式(23)〜(26)の化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配合物。
【化3】
式中、R1は、請求項2に記載のものと同じ意味を有し、使用された他の記号には以下が適用される:
DCyは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、少なくとも1種のドナー原子、好ましくは窒素、カルベンの形態での炭素、またはリンを含有する環状基であり、このドナー原子を介して環状基が金属に結合されており、この環状基は、さらには1以上の置換基R1を担持していてもよく;基DCyとCCyは、共有結合を介して互いに結合されており;
CCyは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、炭素原子を含有する環状基であり、この炭素原子を介して環状基が金属に結合されており、この環状基は、さらには1以上の置換基R1を担持していてもよく;
Aは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、モノアニオン性、二座キレート配位子、好ましくはジケトネート配位子である。
【請求項4】
有機エレクトロルミネッセントデバイスの製造における請求項1〜のいずれか1項以上に記載の配合物の使用。
【請求項5】
カソード、アノード及び少なくとも1つのエレクトロルミネッセント層を具備する有機エレクトロルミネッセントデバイスであって、前記エレクトロルミネッセント層が、カルバゾール化合物、電子輸送化合物、三重項エミッター化合物を含有する混合物を含み、前記電子輸送化合物がトリアジン化合物を包含し、前記カルバゾール化合物が、N原子を介して互いに接続された少なくとも2個のカルバゾール基を含有し、前記エレクトロルミネッセント層が、請求項1〜のいずれか1項に記載の配合物から得られたことを特徴する有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【請求項6】
デバイス中に電子注入層を含まないことを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【請求項7】
エレクトロルミネッセント層が溶液を塗布して形成されたことを特徴とする請求項または請求項に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、特に、カルバゾール化合物、電子輸送化合物、三重項エミッター化合物、および少なくとも1種の溶媒を含む、有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて使用するための配合物に関し、ここで、電子輸送化合物は、ケトン化合物またはトリアジン化合物を包含し、カルバゾール化合物は、N原子を介して互いに接続されている少なくとも2個のカルバゾール基を含有する。本発明はさらに、本発明による混合物を含む有機エレクトロルミネッセントデバイスを対象とする。
【0002】
機能材料として有機半導体が使用される有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)の構造は、例えば、US4539507、US5151629、EP0676461、およびWO98/27136に記載されている。有機エレクトロルミネッセントデバイスの領域において展開されているのは、リン光OLEDである。これらは、蛍光OLEDと比較してより高い達成可能な効率のために大きな利点を有する。
【0003】
しかし、リン光OLEDの場合において、改善の必要性が依然としてある。これは、デバイスの効率および寿命に特に当てはまる。
【0004】
先行技術によれば、電子伝導性材料、とりわけ、ケトン(例えば、WO04/093207による)またはトリアジン誘導体(例えば、DE102008036982による)が、リン光エミッターのマトリックス材料として使用されている。低動作電圧および長寿命が、特に、ケトンで達成されており、これは、このクラスの化合物を非常に興味深いマトリックス材料にしている。しかし、他のマトリックス材料の場合と同様に、特に、デバイスの効率および寿命に関して、これらのマトリックス材料の使用に対する改善の必要性が依然としてある。
【0005】
先行技術では、2種のマトリックス材料の混合物中にドープされたリン光エミッターを含む有機エレクトロルミネッセントデバイスがさらに開示されている。
【0006】
US2007/0252516では、ホール伝導性マトリックス材料と電子伝導性マトリックス材料の混合物を含むリン光有機エレクトロルミネッセントデバイスが開示されている。効率の改善がこれらのOLEDについて開示されている。寿命に対する影響は明白でない。
【0007】
US2007/0099026では、緑色または赤色発光層が、リン光エミッター、およびホール伝導性マトリックス材料と電子伝導性マトリックス材料の混合物を含む、白色発光有機エレクトロルミネッセントデバイスが開示されている。開示されたホール伝導性材料は、とりわけ、トリアリールアミンおよびカルバゾール誘導体である。開示された電子伝導性材料は、とりわけ、アルミニウムおよび亜鉛化合物、オキサジアゾール化合物、ならびにトリアジンまたはトリアゾール化合物である。これらのOLEDについてもさらに改善されることがやはり望ましい。
【0008】
WO2008/127063A2では、カソード、アノード、および中間に、ホスト中に三重項エミッター化合物を含む発光層を有するエレクトロルミネッセントデバイスが開示されている。ここでのホストは、電子輸送共ホストユニットとホール輸送共ホストユニットの混合物である。しかし、このデバイスは、電子注入層を切迫して必要とする。
【0009】
これらの混合物は通常、高真空下で蒸着によって塗布され、これは、一方では、複雑であり、他方では、蒸着プロセスに必要な高温で多数の化合物の分解をもたらす。これは、このようにして作製されるエレクトロルミネッセントデバイスに対して有害作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】デバイスの一般的な構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、本発明が基づく技術的目的は、単純な様式で処理することができ、有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて非常に長い寿命および良好な効率をもたらす配合物の提供である。
【0012】
この目的は、カルバゾール化合物、電子輸送化合物、三重項エミッター化合物、および少なくとも1種の溶媒を含む配合物によって、本発明によって達成され、ここで電子輸送化合物は、ケトン化合物またはトリアジン化合物を包含し、カルバゾール化合物は、N原子を介して互いに接続された少なくとも2個のカルバゾール基を含有する。
【0013】
少なくとも1種の溶媒に加えて、本発明による配合物は、
− 少なくとも1種のカルバゾール化合物、
− 少なくとも1種の電子輸送化合物、および
− 少なくとも1種の三重項エミッター化合物
を含む。
【0014】
本発明による配合物中のカルバゾール化合物の比率は、カルバゾール化合物、電子輸送化合物、および三重項エミッター化合物の混合物に基づいて、好ましくは10〜70重量%の範囲内、特に好ましくは、20〜60重量%の範囲内、非常に特に好ましくは30〜50重量%の範囲内である。
【0015】
本発明による配合物中の電子輸送化合物の比率、したがってケトンおよび/またはトリアジン化合物の比率は、カルバゾール化合物、電子輸送化合物、および三重項エミッター化合物の混合物に基づいて、好ましくは10〜70重量%の範囲内、特に好ましくは、20〜60重量%の範囲内、非常に特に好ましくは30〜50重量%の範囲内である。
【0016】
カルバゾール化合物と電子輸送化合物との重量比は、好ましくは10:1乃至1:10、特に好ましくは7:1乃至1:7、非常に特に好ましくは4:1乃至1:4である。
【0017】
本発明による配合物中の三重項エミッター化合物の比率は、カルバゾール化合物、電子輸送化合物、および三重項エミッター化合物の混合物に基づいて、好ましくは0.01〜50重量%の範囲内、特に好ましくは、0.1〜40重量%の範囲内、非常に特に好ましくは1〜30重量%の範囲内である。
【0018】
本発明による配合物中のカルバゾール化合物、電子輸送化合物、および三重項エミッター化合物の混合物の濃度は、好ましくは1〜100g/lの範囲内、特に好ましくは5〜50g/lの範囲内、非常に特に好ましくは10〜30g/lの範囲内である。
【0019】
カルバゾール基のN原子は、好ましくは芳香族またはヘテロ芳香族環系を介して互いに接続されている。
【0020】
本発明の一態様では、カルバゾール化合物は、好ましくは式(1)の化合物であり、
【化1】
【0021】
式中、使用された記号および添え字には以下が適用される:
Arは、出現する毎に、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これは、1以上のラジカルRにより置換されていてもよく;
R、R1は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、N(Ar12、CN、NO2、Si(R23、B(OR22、C(=O)Ar1、P(=O)(Ar12、S(=O)Ar1、S(=O)2Ar1、−CR2=CR2(Ar1)、OSO22、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)(ここで、1以上の隣接していないCH2基は、R2C=CR2、C≡C、Si(R22、Ge(R22、Sn(R22、C=O、C=S、C=Se、C=NR2、P(=O)(R2)、SO、SO2、NR2、O、S、またはCONR2により置きかえられていてもよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN、またはNO2により置きかえられていてもよい)、あるいは5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)、あるいは5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基(これらは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)、あるいはこれらの系の組合せであり;ここで2以上の置換基R、R1、またはRとR1は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよく;
Ar1は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよく;
2は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、H、または1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族、および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカル;または5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、1以上のラジカルRにより置換されていてもよい)であり;ここで2以上の置換基R2は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよく;
nは、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、0、1、2、3、または4であり;
pは、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、0、1、2、3、または4であり;
qは、1、2、3、4、または5である。
【0022】
添え字qが1に等しい場合、これは、Arが二価の基を表すことを意味する。添え字qが1より大きい場合、これは、合計3以上のカルバゾール基が芳香族環系Arに結合されていることを意味する。Arは、q=2については三価の基であり、q>2については対応して多価の基である。添え字qは、好ましくは、=1または2であり、特に好ましくはq=1である。
【0023】
本発明によって使用されるカルバゾール化合物は、好ましくは120℃超、特に好ましくは140℃超のガラス転移温度Tgを有する。
【0024】
本発明中のカルバゾール基は、マトリックス材料および/またはホール輸送材料として主に役割を果たす。ホール輸送材料は、好ましくは−5.4eV超のHOMOを本願において特徴とする。電子輸送材料は、好ましくは−2.4eV未満のLUMOを本願において特徴とする。HOMOおよびLUMOの位置、ならびにエネルギーギャップは、例の部において詳細に記載されるように求められる。
【0025】
本発明によるアリール基は、6〜60個のC原子を含有し、本発明によるヘテロアリール基は、2〜60個のC原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、ただし、C原子とヘテロ原子の和は、少なくとも5である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。ここで、アリール基またはヘテロアリール基は、単純芳香族環、すなわち、ベンゼン、または単純ヘテロ芳香族環、例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェンなど、または縮合アリールもしくはヘテロアリール基、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリンなどのいずれかを意味すると解釈される。
【0026】
本発明による芳香族環系は、環系中に6〜40個のC原子を含有する。本発明によるヘテロ芳香族環系は、環系中に2〜40個のC原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、ただし、C原子とヘテロ原子の和は、少なくとも5である。ヘテロ原子は、好ましくはN、O、および/またはSから選択される。本発明による芳香族またはヘテロ芳香族環系は、必ずしも唯一のアリールまたはヘテロアリール基を含有するとは限らず、その代わりに、さらに、複数のアリールまたはヘテロアリール基が、非芳香族ユニット(好ましくはH以外の原子の10%未満)、例えば、例えば、sp3混成C、N、またはO原子などによって中断されていてもよい系を意味すると解釈されることが意図されている。したがって、例えば、系、例えば、9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベンなども、2以上のアリール基が、例えば、直鎖もしくは環状アルキル基またはシリル基によって中断されている系と同様に、本発明による芳香族環系であると解釈されることが意図されている。芳香族環系は、好ましくは金属原子をまったく含有しない。
【0027】
本発明の目的に関して、C1〜C40アルキル基であって、さらに、個々のH原子またはCH2基が上述した基により置換されていてもよいC1〜C40アルキル基は、好ましくは、ラジカルメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、およびオクチニルを意味すると解釈される。
【0028】
1〜C40アルコキシ基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、または2−メチルブトキシを意味すると解釈される。
【0029】
5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系は、各場合において、上述したラジカルRにより置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して芳香族またはヘテロ芳香族系に連結されていてもよく、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis−またはtrans−インデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール(phenanthrimidazole)、ピリドイミダゾール(pyridimidazole)、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン(fluorubin)、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、およびベンゾチアジアゾールに由来する基を意味すると解釈される。
【0030】
本発明の好ましい態様では、式(1)の化合物中の添え字nは、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、0または1である。添え字nは、特に好ましくは、=0である。
【0031】
一態様では、式(1)の化合物中の添え字pは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、0、1、または2、特に好ましくは0または1である。添え字pが1に等しい場合、置換基R1は、好ましくはカルバゾールの6−、7−、または8位に結合されており、特に好ましくは6−または7位に結合されている。
【0032】
明確にするために、カルバゾールの位置の番号付けは、以下の式で表される:
【化2】
【0033】
式(1)中の好適な基ArおよびR1は、フェニルおよび/もしくはナフチル基、または2以下の縮合芳香族もしくはヘテロ芳香族環を有するが、より大きい縮合芳香族系を有さないヘテロ芳香族基のみを含有する。したがって、好適な基ArおよびR1は、フェニルおよび/もしくはナフチル基、またはこのタイプの連結系、例えば、ビフェニル、フルオレン、スピロビフルオレンなどから構築される芳香族環系である。
【0034】
特に好適な基Arは、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,3,5−ベンゼン、3,3’−ビフェニル、4,4’−ビフェニル、1,3,5−トリフェニルベンゼン、トリフェニルアミン、2,7−フルオレニレン(これらは、1以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、2,7−スピロビフルオレニレン(これは、1以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、インデノフルオレニレン(これは、1以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、4,4’’’−(1,1’:2’,1’’,2’’,1’’’−クアテルフェニル)、4,4’−(2,2’−ジメチルビフェニル)、4,4’−(1,1’−ビナフチル)、4,4’−スチルベニル、およびジヒドロフェナントレニル(これらは、1以上のラジカルR1により置換されていてもよい)からなる群から選択される。
【0035】
カルバゾール化合物の特に好適な基R1は、同一でも異なっていてもよく、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−カルバゾリル、3−カルバゾリル、9−カルバゾリル、トリフェニルアミン、ナフチルジフェニルアミン、およびジナフチルフェニルアミンからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1以上のラジカルRにより置換されていてもよい。ここで、2つの最後に述べた基は、1−もしくは2位においてナフタレンを介して、またはフェニル基を介して結合されていてもよい。ここで、2−または3−カルバゾリル基は、好ましくは芳香族ラジカルRにより窒素上で置換されている。
【0036】
記号Rが、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、H、N(Ar22、1〜5個のC原子を有する直鎖アルキル基、もしくは3〜5個のC原子を有する分枝アルキル基(ここで、各場合において、1以上の隣接していないCH2基は、−R2C=CR2−もしくは−O−により置きかえられていてもよく、1以上のH原子は、Fにより置きかえられていてもよい)、または6〜16個のC原子を有するアリール基、もしくは2〜16個のC原子を有するヘテロアリール基、もしくはスピロビフルオレン基(これらのそれぞれは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)、またはこれらの系の組合せを表す式(1)の化合物がさらに選好される。特に好適なラジカルRは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、H、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル(ここで、各場合において、1以上のH原子は、Fにより置きかえられていてもよい)、またはフェニル、ナフチル、もしくはスピロビフルオレニル基(これらのそれぞれは、1以上のラジカルRにより置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つの組合せである。溶液から処理される化合物の場合では、最大10個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル鎖も好適である。置換基としての臭素、ボロン酸、またはボロン酸誘導体は、特に、本発明によるさらなる化合物、例えば、ポリマー、オリゴマー、またはデンドリマーを調製するための中間化合物としてこれらの化合物を使用するのに好適である。
【0037】
記号R1が、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、好適な置換基Rに関して定義され、またはArもしくはFを表す式(1)の化合物がさらに選好される。
【0038】
式(1)の特に好適な化合物の例は、以下に表される化合物(1−1)〜(1−91)である。
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
【化3-4】
【化3-5】
【化3-6】
【化3-7】
【化3-8】
【化3-9】
【化3-10】
【化3-11】
【化3-12】
【化3-13】
【0039】
本発明によって使用されるカルバゾール化合物は、例えば、WO2008/086851に詳細に開示されているように、有機化学の標準的方法によって合成することができる。本明細書の内容は、参照により本願に組み込まれている。
【0040】
したがって、2−ニトロビフェニル誘導体を亜リン酸トリアルキルと反応させることによって、対応するカルバゾール誘導体を得ることができることが公知である(M.Tavasliら、Synthesis 2005、1619〜1624)。この反応は、対応するアリール置換2−ニトロビフェニル誘導体(これは、引き続いて亜リン酸トリアルキルと反応させられる)を最初に構築することによって、2−アリール置換カルバゾール誘導体を構築するのに使用することができる。2−アリール置換カルバゾール誘導体を、標準条件下で、Hartwig−Buchwaldカップリングでジブロモ芳香族化合物にカップリングさせることによって、式(1)の化合物を得ることができる。Hartwig−Buchwaldカップリングを実施するための様々な方法および反応条件が有機合成の当業者に公知である。ジブロモ芳香族化合物の代わりに、他の脱離基、例えば、塩素、ヨウ素、トリフレート、トシレート、または一般にスルホネートを含有する対応する化合物を使用することも可能である。三置換芳香族化合物またはさらにより多くの脱離基を含有する化合物を使用すると、添え字qが2以上を表す式(1)の化合物を合成することが対応して可能になる。
【0041】
式(1)の化合物の合成は、以下のスキーム1で表され、ここで、明確にするために、qは、=1と選択し、置換基RまたはR1は、まったく表されていない。
【0042】
スキーム1
【化4】
【0043】
一態様によれば、本発明による配合物は、ケトン化合物、好ましくは芳香族ケトン化合物を含む。本発明の一態様では、ケトン化合物は、好ましくは以下の式(2)の化合物である:
【化5】
【0044】
式中、使用された記号には以下が適用される:
Arは、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、各場合において、1以上の基R1により置換されていてもよく;
1は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、C(=O)Ar1、P(=O)(Ar12、S(=O)Ar1、S(=O)2Ar1、CR2=CR2Ar1、CN、NO2、Si(R23、B(OR22、B(R22、B(N(R222、OSO22、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)(ここで、1以上の隣接していないCH2基は、R2C=CR2、C≡C、Si(R22、Ge(R22、Sn(R22、C=O、C=S、C=Se、C=NR2、P(=O)(R2)、SO、SO2、NR2、O、S、またはCONR2により置きかえられていてもよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN、またはNO2により置きかえられていてもよい)、あるいは5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)、あるいは5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基(これらは、1以上のラジカルR2によって置換されていてもよい)、あるいはこれらの系の組合せであり;ここで2以上の隣接する置換基R1は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよく;
Ar1は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよく;
2は、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、H、D、CN、または1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族、および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカル(ここで、さらに、H原子は、Fにより置きかえられていてもよい)であり;ここで、2以上の置換基R2は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよい。
【0045】
式(2)の適当な化合物は、特に、WO04/093207およびDE102008033943に開示されているケトンである。これらは、参照により本願に組み込まれている。
【0046】
式(2)の化合物は、ただ1つのカルボニル基を含有しなければならないのではなく、複数のこれらの基を含有してもよいことが式(2)の化合物の定義から明白である。
【0047】
式(2)のケトン化合物中の基Arは、好ましくは6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環系であり、すなわち、これは、ヘテロアリール基をまったく含有しない。上記に定義したように、芳香族環系は、必ずしも唯一の芳香族基を含有しなければならないとは限らず、代わりに、2つのアリール基が、非芳香族基によって、例えば、さらなるカルボニル基によって中断されていてもよい。
【0048】
本発明のさらに好適な態様では、ケトン化合物の基Arは、2個以下の縮合環を有する。したがってこれは、好ましくはフェニルおよび/またはナフチル基のみから、特に好ましくはフェニル基のみから構築されるが、いずれのより大きい縮合芳香族系、例えば、アントラセンなども含有しない。
【0049】
ケトン化合物のカルボニル基に結合される好適な基Arは、フェニル、2−、3−または4−トリル、3−または4−o−キシリル、2−または4−m−キシリル、2−p−キシリル、o−、m−、またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−、またはp−フルオロフェニル、ベンゾフェノン、1−、2−、または3−フェニルメタノン、2−、3−、または4−ビフェニル、2−、3−、または4−o−テルフェニル、2−、3−、または4−m−テルフェニル、2−、3−、または4−p−テルフェニル、2’−p−テルフェニル、2’−、4’−、または5’−m−テルフェニル、3’−または4’−o−テルフェニル、p−、m,p−、o,p−、m,m−、o,m−、またはo,o−クアテルフェニル、キンクエフェニル、セキシフェニル、1−、2−、3−、または4−フルオレニル、2−、3−、または4−スピロ−9,9’−ビフルオレニル、1−、2−、3−、または4−(9,10−ジヒドロ)フェナントレニル、1−または2−ナフチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−、または8−キノリニル、1−、3−、4−、5−、6−、7−、または8−イソキノリニル、1−または2−(4−メチルナフチル)、1−または2−(4−フェニルナフチル)、1−、または2−(4−ナフチルナフチル)、1−、2−、または3−(4−ナフチルフェニル)、2−、3−、または4−ピリジル、2−、4−または5−ピリミジニル、2−または3−ピラジニル、3−または4−ピリダジニル、2−(1,3,5−トリアジン)イル−、2−、3−、または4−(フェニルピリジル)、3−、4−、5−、または6−(2,2’−ビピリジル)、2−、4−、5−、または6−(3,3’−ビピリジル)、2−または3−(4,4’−ビピリジル)、およびこれらのラジカルの1以上の組合せである。
【0050】
基Arは、上述したように、1以上のラジカルR1により置換されていてもよい。ケトン化合物のこれらのラジカルR1は、好ましくは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、H、F、C(=O)Ar1、P(=O)(Ar12、S(=O)Ar1、S(=O)2Ar1、1〜4個のC原子を有する直鎖アルキル基、または3〜5個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル基(これらのそれぞれは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)(ここで、1以上のH原子は、Fにより置きかえられていてもよい)、あるいは6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環系(これは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい)、あるいはこれらの系からなる群から選択され;ここで、2以上の隣接する置換基R1は、互いに単環または多環状、脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成していてもよい。
【0051】
配合物は溶液として塗布されるので、最大10個のC原子を有する直鎖、分枝、または環状アルキル基も置換基R1として好適である。ラジカルR1は、特に好ましくは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、H、C(=O)Ar1、または6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環系(これは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよいが、好ましくは無置換である)からなる群から選択される。
【0052】
本発明のさらに好適な態様では、ケトン化合物の基Ar1は、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環系であり、これは、1以上のラジカルR2により置換されていてもよい。Ar1は、特に好ましくは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、6〜12個の芳香族環原子を有する芳香族環系である。
【0053】
5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これらは、さらには、上述した1以上のラジカルR1により置換されていてもよい)により、3、5、3’、5’−位のそれぞれにおいて置換されているベンゾフェノン誘導体が特に選好される。少なくとも1個のスピロビフルオレン基により置換されているケトンがさらに選好される。
【0054】
したがって、好適な芳香族ケトンは、以下の式(3)〜(6)の化合物であり、
【化6】
【0055】
式中、ArおよびR1は、ケトン化合物(式(2))について上述したのと同じ意味を有し、さらに:
Zは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、CR1またはNであり;
nは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、0または1である。
【0056】
上述した式(3)、(5)、および(6)中のArは、好ましくは1〜30個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これらは、1以上のラジカルR1により置換されていてもよい)を表す。上述した基Arが特に選好される。
【0057】
式(2)の好適な化合物の例は、以下に表される化合物(2−1)〜(2−70)である。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【化7-6】
【化7-7】
【化7-8】
【0058】
本発明による配合物中に使用することができる適当なトリアジン誘導体は、特に、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、特に好ましくは3つの芳香族またはヘテロ芳香族環系により置換されている1,3,5−トリアジンである。したがって、以下の式(7)および(8)の化合物が特に選好され、
【化8】
【0059】
式中、
Ar2は、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、5〜60個の芳香族環原子を有する一価の芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、各場合において、1以上のラジカルR1により置換されていてもよく;
Ar3は、5〜60個の芳香族環原子を有する二価の芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、1以上のラジカルR1により置換されていてもよく;
1は、式(2)のケトン化合物に関して上記に示した意味を有する。
【0060】
式(7)および(8)の化合物において、少なくとも1つの基Ar2は、好ましくは以下の式(9)〜(15)の基から選択され、他の基Ar2は、式(7)または(8)について示した意味を有し、
【化9】
【0061】
式中、R1は、上述したのと同じ意味を有し、破線で示される結合は、トリアジンユニットへの連結を表し、さらに:
Xは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、B(R1)、C(R12、Si(R12、C=O、C=NR1、C=C(R12、O、S、S=O、SO2、N(R1)、P(R1)、およびP(=O)R1から選択される二価のブリッジであり;
mは、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、0、1、2、または3であり;
oは、出現する毎に、同一でも異なっていてもよく、0、1、2、3、または4である。
【0062】
トリアジン化合物の特に好適な基Ar2は、以下の式(9a)〜(15a)の基から選択され、
【化10】
【0063】
式中、使用された記号および添え字は、上述したのと同じ意味を有する。ここでXは、好ましくは、同一でも異なっていてもよく、C(R12、N(R1)、O、またはSから選択され、特に好ましくはC(R12である。
【0064】
式(8)の化合物中の好適な基Ar3は、以下の式(16)〜(22)の基から選択され、
【化11】
【0065】
式中、使用された記号および添え字は、トリアジン化合物に関して上述したのと同じ意味を有し、破線で示される結合は、2つのトリアジンユニットへの連結を表す。
【0066】
特に好適な基Ar3は、以下の式(16a)〜(22a)から選択され、
【化12】
【0067】
式中、使用された記号および添え字は、トリアジン化合物に関して上述したのと同じ意味を有する。ここでXは、好ましくは、同一でも異なっていてもよく、C(R12、N(R1)、O、またはSから選択され、特に好ましくはC(R12である。
【0068】
基Ar3が上述した式(16)〜(22)から選択され、Ar2が、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、上述した式(9)〜(15)、またはフェニル、1−もしくは2−ナフチル、オルト−、メタ−、もしくはパラ−ビフェニル(これらのそれぞれは、1以上のラジカルR1により置換されていてもよいが、好ましくは無置換である)から選択される上述した式(8)の化合物がさらに選好される。
【0069】
式(7)のさらなる好適な化合物の例は、以下に表される化合物(7−1)〜(7−65)である。
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【化13-4】
【化13-5】
【0070】
式(8)のさらなる好適な化合物の例は、以下に表される化合物(8−1)〜(8−16)である。
【化14-1】
【化14-2】
【0071】
上記で既に述べたように、本発明による配合物は、三重項エミッター化合物も含む。本発明による三重項エミッター化合物(リン光性化合物)は、室温で、相対的に高いスピン多重度、すなわち、1超のスピン状態の励起状態、特に、励起三重項状態からルミネッセンスを呈する化合物である。本発明によれば、第2および第3遷移金属系列からの遷移金属を含有するすべてのルミネッセンス遷移金属錯体、特に、すべてのルミネッセントイリジウムおよび白金化合物が、リン光性化合物とみなされるべきである。
【0072】
本発明の好適な態様では、三重項エミッター化合物は、赤色リン光性化合物または緑色リン光性化合物である。
【0073】
適当な三重項エミッター化合物(リン光性化合物)は、特に、適当に励起すると、好ましくは可視領域で光を放出し、さらに、20超の原子番号、好ましくは38超かつ84未満の原子番号、特に好ましくは56超かつ80未満の原子番号を有する少なくとも1種の原子を含有する化合物である。使用される三重項エミッター化合物は、好ましくは銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金、またはユウロピウムを含有する化合物、特に、イリジウムまたは白金を含有する化合物である。
【0074】
本発明による特に好適な配合物は、三重項エミッター化合物として式(23)〜(26)の少なくとも1種の化合物を含み、
【化15】
【0075】
式中、R1は、式(2)に関して上述したのと同じ意味を有し、使用された他の記号には以下が適用される:
DCyは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、少なくとも1種のドナー原子、好ましくは窒素、カルベンの形態での炭素、またはリンを含有する環状基であり、このドナー原子を介して環状基が金属に結合されており、この環状基は、さらには1以上の置換基R1を担持していてもよく;基DCyとCCyは、共有結合を介して互いに結合されており;
CCyは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、炭素原子を含有する環状基であり、この炭素原子を介して環状基が金属に結合されており、この環状基は、さらには1以上の置換基R1を担持していてもよく;
Aは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、モノアニオン性、二座キレート配位子、好ましくはジケトネート配位子である。
【0076】
複数のラジカルR1の間で環系が形成されるので、基DCyとCCyの間にブリッジが存在してもよい。さらに、複数のラジカルR1の間で環系が形成されるので、2つもしくは3つの配位子CCy−DCyと、または1つもしくは2つの配位子CCy−DCyと配位子Aとの間にブリッジが存在してもよく、多座または多脚配位子系を与える。
【0077】
上述したエミッターの例は、WO00/70655、WO01/41512、WO02/02714、WO02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、WO04/081017、WO05/033244、WO05/042550、WO05/113563、WO06/008069、WO06/061182、WO06/081973、DE102008015526、DE102008027005、およびDE102009007038によって明らかにされている。一般に、リン光OLEDに関する先行技術によって使用され、有機エレクトロルミネッセンスの分野における当業者に公知であるすべてのリン光性錯体が適しており、当業者は、進歩性を伴うことなくさらなるリン光性化合物を使用することができるであろう。
【0078】
特に、当業者は、どのリン光性錯体がどの発光色で発光するかを知っている。
【0079】
好適なリン光性化合物は、以下の表に示した構造(T−1)〜(T−140)である。
【化16-1】
【化16-2】
【化16-3】
【化16-4】
【化16-5】
【化16-6】
【化16-7】
【化16-8】
【化16-9】
【化16-10】
【化16-11】
【化16-12】
【0080】
本発明による配合物は、少なくとも1種の溶媒をさらに含む。配合物は、溶液から層を生成するのに著しく適している。
【0081】
適当で好適な溶媒は、例えば、トルエン、アニソール、キシレン、安息香酸メチル、ジメチルアニソール、トリメチルベンゼン、テトラリン、ベラトロール(veratrol)、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、およびジクロロベンゼン、ならびにこれらの混合物である。
【0082】
本発明による配合物は、有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED、PLED)の作製、特に、このようなデバイス中のルミネッセンス層に適している。特に、配合物の個々の成分は、均一溶液の形態であり、これは、配合物を層、特に井戸に変換することを可能にする。
【0083】
したがって、本発明はさらに、有機電子デバイス、特に、有機エレクトロルミネッセントデバイスを作製するための本発明による配合物の使用に関する。
【0084】
本発明は、やはりさらに、本発明による配合物を使用して作製される有機電子デバイス、特に、アノード、カソード、および少なくとも1つの発光層を含み、少なくとも1つの発光層が本発明による混合物から得られることを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイスに関する。
【0085】
カソード、アノード、および少なくとも1つの発光層は別として、有機エレクトロルミネッセントデバイスは、さらなる層を含んでもよい。これらは、例えば、各場合において、1以上のホール注入層、ホール輸送層、ホールブロック層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロック層、励起子ブロック層、電荷発生層、および/または有機もしくは無機p/n接合部から選択される。さらに、例えば、デバイス中の荷電平衡を制御する中間層が存在してもよい。特に、このような中間層は、2つの発光層の間の中間層として、特に、蛍光層とリン光層との間の中間層として適切となり得る。さらに、層、特に、電荷輸送層をドープしてもよい。層をドープすることは、電荷輸送を改善するのに有利となり得る。しかし、上述した層のそれぞれは、必ずしも存在しなければならいないとは限らず、層の選択は、使用される化合物に常に依存することに注目されるべきである。このタイプの層を使用することは、当業者に公知であり、当業者は、進歩性を伴うことなく、この目的のためのこのような層について公知である先行技術によってすべての材料を使用することができるであろう。
【0086】
好ましくは異なる発光色を有する1つを超える発光層、例えば2つまたは3つの発光層を使用することがさらに可能である。本発明の特に好適な態様は、白色発光有機エレクトロルミネッセントデバイスに関する。これは、0.28/0.29〜0.45/0.41の範囲内のCIE色座標を有する光を放出することを特徴とする。このタイプの白色発光エレクトロルミネッセントデバイスの一般構造は、例えば、WO05/011013に開示されている。
【0087】
本発明によるエレクトロルミネッセントデバイスのカソードは、好ましくは、低仕事関数を有する金属、異なる金属を含む金属合金または多層構造、例えば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属、またはランタノイド(例えば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Smなど)を含む。多層構造の場合では、相対的に高い仕事関数を有するさらなる金属、例えば、Agなどを、前記金属に加えて使用してもよく、この場合では、金属の組合せ、例えば、Ca/AgまたはBa/Agなどが一般に使用される。金属合金、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と銀を含む合金、特に好ましくはMgとAgの合金が同様に選好される。金属カソードと有機半導体の間に高誘電率を有する材料の薄い中間層を導入することも好適となり得る。この目的に適しているのは、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物であるが、対応する酸化物または炭酸塩(例えば、LiF、Li2O、CsF、Cs2CO3、BaF2、MgO、NaFなど)も適している。この層の層厚は、好ましくは0.5乃至5nmである。
【0088】
本発明によるエレクトロルミネッセントデバイスのアノードは、好ましくは高仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは真空に対して4.5eV超の仕事関数を有する。この目的に適しているのは、一方では、高酸化還元電位を有する金属、例えば、Ag、Pt、またはAuなどである。他方では、金属/金属酸化物電極(例えば、Al/Ni/NiOx、Al/PtOx)も好適となり得る。ここでは、電極のうちの少なくとも1つは、光のカップリングアウトを促進するために透明でなければならない。好適な構造では、透明なアノードが使用される。ここでは、好適なアノード材料は、導電性混合金属酸化物である。インジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)が特に選好される。導電性ドープ有機材料、特に、導電性ドープポリマー、例えば、PEDOTまたはPANIなどがさらに選好される。
【0089】
デバイスは、接点を備えて相応に(用途に応じて)構築され、最後に密閉される。その理由は、このタイプのデバイスの寿命は、水および/または空気の存在下で劇的に短くなるためである。
【0090】
一般に、有機エレクトロルミネッセントデバイスにおける先行技術によって使用されるすべてのさらなる材料を、本発明による混合物を含む発光層と組み合わせて使用することができる。
【0091】
1以上の層が昇華プロセスによって被覆されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイスがさらに選好され、このプロセスでは、材料が、10-5mbar未満の初期圧力、好ましくは10-6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット内で蒸着される。しかし、初期圧力は、さらに低くてもよく、例えば、10-7mbar未満であってもよいことに留意されるべきである。
【0092】
1以上の層がOVPD(有機気相堆積)プロセスによって、またはキャリアガス昇華(carrier-gas sublimation)を活用して被覆されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスが同様に選好され、これらのプロセスまたは昇華では、材料は、10-5mbar乃至1バールの圧力で塗布される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷(organic vapour jet printing))プロセスであり、このプロセスでは、材料は、ノズルを通じて直接塗布され、こうして構築される(例えば、M.S.Arnoldら、Appl.Phys.Lett.2008、92、053301)。
【0093】
1以上の層が例えば、スピンコーティングによって、または所望の印刷プロセス、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、もしくはオフセット印刷、しかし特に好ましくはLITI(光誘起サーマルイメージング(light induced thermal imaging)、熱転写印刷)、もしくはインクジェット印刷などによって溶液から作製されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスが特に選好される。本発明による混合物中に存在するように、可溶性化合物がこの目的のために必要である。
【0094】
有機エレクトロルミネッセントデバイスは、溶液から1以上の層を塗布し、蒸着によって1以上のさらなる層を塗布することによって、ハイブリッド系として作製することもできる。
【0095】
これらのプロセスは、当業者に一般に公知であり、本発明による有機エレクトロルミネッセントデバイスに対して進歩性を伴うことなく、当業者によって適用することができる。
【0096】
本発明による有機エレクトロルミネッセントデバイスは、先行技術に対して以下の意外な利点を有する:
1.本発明による有機エレクトロルミネッセントデバイスは、非常に高い効率を有する。ここでの効率は、先行技術による、ホール輸送マトリックス材料と組み合わせた電子輸送マトリックス材料を使用する場合より良好である。
【0097】
2.本発明による有機エレクトロルミネッセントデバイスは、同時に、改善された寿命を有する。ここでの寿命は、先行技術による、ホール輸送マトリックス材料と組み合わせた電子輸送マトリックス材料を使用する場合より長い。
【0098】
本発明を、以下の例によって、それにより本発明を制限することを望むことなく、より詳細に説明する。当業者は、進歩性を伴うことなく、本発明によるさらなる有機エレクトロルミネッセントデバイスを作製することができるであろう。
【0099】
一般的な方法:
サイクリックボルタンメトリーおよび吸収スペクトルからのHOMO、LUMO、およびエネルギーギャップの決定
本願によれば、HOMOおよびLUMOの値、およびエネルギーギャップは、以下に記載される一般的な方法によって求められる。
【0100】
HOMO値は酸化電位に起因し、これは、室温でサイクリックボルタンメトリー(CV)によって測定される。この目的に使用される測定機器は、Metrohm 663 VAスタンドを伴ったECO Autolabシステムである。作用電極は金電極であり、参照電極はAg/AgClであり、ブリッジ電解質(bridge electrolyte)はKCl(3mol/l)であり、補助電極は白金である。
【0101】
測定のために、最初に、ジクロロメタン中のテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(NH4PF6)の0.11Mの導電性塩溶液を調製し、測定セル中に導入し、5分間脱気する。その後、以下のパラメータを用いて2回の測定サイクルを実施する:
測定技法:CV
初期パージ時間:300秒
クリーニング電位:−1V
クリーニング時間:10秒
析出電位:−0.2V
析出時間:10秒
開始電位:−0.2V
最終電位:1.6V
電圧ステップ:6mV
掃引速度:50mV/秒
その後、試料溶液1ml(ジクロロメタン1ml中の測定される物質10mg)を導電性塩溶液に添加し、混合物を5分間再び脱気する。その後、5回のさらなる測定サイクルを実施し、このうちの最後の3回を記録して評価する。上述したのと同じパラメータを設定する。
【0102】
その後、フェロセン溶液0.1ml(ジクロロメタン1ml中のフェロセン100mg)を溶液に添加し、混合物を1分間脱気し、以下のパラメータを用いて測定サイクルを実施する:
測定技法:CV
初期パージ時間:60秒
クリーニング電位:−1V
クリーニング時間:10秒
析出電位:−0.2V
析出時間:10秒
開始電位:−0.2V
最終電位:1.6V
電圧ステップ:6mV
掃引速度:50mV/秒
評価のために、試料溶液およびフェロセン溶液が添加された溶液について、フォワードカーブから最初に酸化が最大となる電圧の平均をとり、リターンカーブから関連する還元が最大となる電圧の平均をとり(VpおよびVF)、ここで、使用される電圧は、各場合において、フェロセンに対する電圧である。調査される物質のHOMO値EHOMOは、EHOMO=−[e・(VP−VF)+4.8eV]によって与えられ、式中、eは、素電荷を表す。
【0103】
例えば、調査される物質がジクロロメタン中に可溶性でない場合、または物質の分解が測定中に起こる場合、測定方法の適切な改変を個々の場合において実施しなければならないことに留意されるべきである。意味のある測定が、上述した方法を使用してCVによって可能でないはずである場合、HOMOエネルギーは、Riken Keiki Co.Ltd.(http://www.rikenkeiki.com/pages/AC2.htm)製のモデルAC−2光電子分光計による光電子分光法によって求められ、この場合において、得られる値は、CVによって測定される値より一般的に約0.3eV低いことに留意されるべきである。そのとき、本願によるHOMO値は、Riken AC2+0.3eVからの値を意味すると解釈される。
【0104】
さらに、−6eV未満のHOMO値は、説明したCV法を使用しても、説明した光電子分光法を使用しても確実に測定することができない。この場合、HOMO値は、密度関数理論(DFT:density functional theory)によって、量子化学的計算から求められる。これは、方法B3PW91/6−31G(d)を使用して、市販のGaussian 03W(Gaussian Inc.)ソフトウェアを介して実施される。計算値のCV値への規格化は、CVによって測定することができる材料との比較によって達成される。この目的を達成するために、一連の材料のHOMO値がCV法を使用して測定され、また計算される。次いで、計算値は、測定値によって較正され、この較正係数がすべてのさらなる計算に使用される。このようにして、CVによって測定されるはずであるHOMO値に非常によく対応するHOMO値を計算することが可能である。特定の物質についてのHOMO値が上述したCVまたはRiken AC2によって測定することができない場合、したがって、本願によるHOMO値は、上述したように、CVに対して較正されたDFT計算による記述によって得られる値を意味すると解釈される。いくつかの一般的な有機物質について、このようにして計算される値の例は、NPB(HOMO −5.16eV、LUMO −2.28eV);TCTA(HOMO −5.33eV、LUMO −2.20eV);TPBI(HOMO −6.26eV、LUMO −2.48eV)である。これらの値を、計算方法の較正のために使用することができる。
【0105】
エネルギーギャップは、層厚50nmを有する膜で測定される吸収スペクトルの吸収端から求められる。ここで、吸収端は、吸収スペクトルにおける最長波長下降側面(longest-wavelength falling flank)に対して、その最も急峻な点で直線をフィッティングしたときに得られる波長として定義され、この直線が波長軸、すなわち、吸収値=0と交差する箇所での値が求められる。
【0106】
LUMO値は、上述したHOMO値にエネルギーギャップを加えることによって得られる。
【0107】
[実施例]
例1〜45
PLEDの作製
エミッターE1、本発明によるケトンK−1〜K−12、本発明によるトリアジンT−1〜T−4、および本発明によるカルバゾールC−1〜C−6の構造を以下に表す。
【0108】
エミッターE1の構造
【化17】
【0109】
ケトン化合物の構造
【化18-1】
【化18-2】
【0110】
トリアジン化合物の構造
【化19】
【0111】
カルバゾール化合物の構造
【化20】
【0112】
本発明による配合物中に使用される材料は、良好な特性を有する著しくより単純なデバイスをもたらす。このような成分の作製は、ポリマー発光ダイオード(PLED)の作製に基づき、これは、文献で何回か既に記載されている(例えば、WO2004/037887A2において)。本場合では、本発明による化合物は、トルエンまたはクロロベンゼン中に溶解される。ここで述べた例において使用した濃度は、20重量%のエミッター、40重量%の化合物K−1〜K−12または化合物T−1〜T−4、および40重量%の化合物C−1〜C−6である。このような溶液の一般的な固体含量は、16乃至25g/lであり、ここでの場合、デバイスに一般的である80nmの層厚がスピンコーティングによって達成されるはずである。
【0113】
図1は、このタイプのデバイスの一般的な構造を示す。EMLにおいて、マトリックス材料およびエミッターは、非晶質層の形態である。構造化ITO基板およびいわゆる緩衝層としての材料(PEDOT、実際にはPEDOT:PSS)は、市販されている(ITOはとりわけ、Technoprintから、Clevios P水性分散液としてのPEDOT:PPSはH.C.Starckから)。使用される中間層は、ホール注入のために役割を果たす。Merck製HIL−012を使用する。不活性ガス雰囲気下、本場合ではアルゴン下でスピンコーティングによって発光層を塗布し、160℃または180℃で10分間加熱することによって乾燥する。最後に、バリウムおよびアルミニウムを含むカソードを真空蒸着によって塗布する。さらなる層(例えば、HBLおよびETL)を、蒸着によってEMLとカソードの間に塗布することもできる。中間層は、1以上の層によって置きかえられていてもよく、これらは、溶液からEMLを堆積させる後続の処理ステップによって再分離しない条件を満たすだけでよい。溶液処理されるデバイスは、標準的な方法を特徴とする。前記OLEDの例は最適化しなかった。
【0114】
表1は、本発明による化合物C−1〜C−6を含まないデバイスの結果を、本発明による材料K−1〜K−12またはT−1〜T−4を含む混合層によって得られるデバイスの結果と比較するものである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
図1