特許第5996558号(P5996558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996558
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】CSF−1Rに対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20160908BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20160908BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160908BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160908BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20160908BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160908BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160908BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20160908BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20160908BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   C07K16/46
   C12N15/00 A
   C12N5/10
   A61K39/00
   A61P35/00
   A61P29/00
   A61K31/7088
   !C12P21/08
【請求項の数】28
【全頁数】84
(21)【出願番号】特願2013-552940(P2013-552940)
(86)(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公表番号】特表2014-506572(P2014-506572A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2012052043
(87)【国際公開番号】WO2012110360
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】13/026,944
(32)【優先日】2011年2月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599082883
【氏名又は名称】トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ、エーゲル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ、ティウドレ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル、ガイス
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ、グレリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン‐バティスト、マルシャン
【審査官】 長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/112245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/28
C07K 16/46
C12N 15/09
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CSF−1Rと特異的に結合する、単離された、組換え型の、または精製された抗体であって、
(i)(a)配列番号42からなる第1の可変領域と、(b)配列番号44からなる第2の可変領域;または、
(ii)(a)配列番号43からなる第1の可変領域と、(b)配列番号45からなる第2の可変領域;または、
(iii)(a)配列番号42からなる第1の可変領域と、(b)配列番号46からなる第2の可変領域
を含んでなる、抗体。
【請求項2】
前記CSF−1Rが、ヒトCSF−1Rである、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(a)配列番号37からなる重鎖と、(b)配列番号39からなる軽鎖とを含んでなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
(a)配列番号38からなる重鎖と、(b)配列番号40からなる軽鎖とを含んでなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
(a)配列番号37からなる重鎖と、(b)配列番号41からなる軽鎖とを含んでなる、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv、抗原結合フラグメントまたはダイアボディーである、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体をコードする、核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項9】
プラスミドまたはウイルス起源である、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
ウイルス起源であり、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、泡沫状ウイルスまたはアデノウイルス随伴ウイルスに由来する、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
前記ポックスウイルスが、ワクシニアウイルスまたはカナリア痘ウイルスである、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
前記ワクシニアウイルスが、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
請求項7に記載の核酸を含んでなる、細胞。
【請求項14】
真核細胞である、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
前記真核細胞が、哺乳動物細胞である、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
前記哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはベビーハムスター(BHK)細胞である、請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体を製造する方法であって、請求項13〜16のいずれか一項に記載の細胞を、前記抗体の発現を可能とする条件下で培養すること、および、前記細胞または前記細胞の周囲の培地から前記抗体を精製することを含んでなる、方法。
【請求項18】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体と、薬学上許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項19】
請求項7に記載の核酸と、薬学上許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項20】
請求項8〜12のいずれか一項に記載のベクターと、薬学上許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項21】
薬剤として使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
薬剤として使用される、請求項7に記載の核酸。
【請求項23】
薬剤として使用される、請求項8〜12のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項24】
薬剤として使用される、請求項18〜20に記載の医薬組成物。
【請求項25】
癌、破骨細胞活性の増強に関連する疾患、炎症性疾患および関節リウマチからなる群から選択される疾患の治療に用いられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
癌、破骨細胞活性の増強に関連する疾患、炎症性疾患および関節リウマチからなる群から選択される疾患の治療に用いられる、請求項7に記載の核酸。
【請求項27】
癌、破骨細胞活性の増強に関連する疾患、炎症性疾患および関節リウマチからなる群から選択される疾患の治療に用いられる、請求項8〜12のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項28】
癌、破骨細胞活性の増強に関連する疾患、炎症性疾患および関節リウマチからなる群から選択される疾患の治療に用いられる、請求項18〜20に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年3月11日出願のPCT/EP2009/001733に基づく米国国内段階出願であり、また、2008年3月14日出願の欧州特許出願第08360005.6の優先権および2008年4月10日出願の米国仮出願第61/043,884号の利益を主張する、2010年9月13日出願の米国特許出願第12/922,441号の一部継続出願である。
【0002】
配列表
本出願はEFS−Webにより提出された配列表を含み、引用することによりその全内容を本明細書の一部とする。2011年3月30日に作成された前記ASCIIコピーのファイル名は13026944.txtであり、56,764バイトのサイズである。
【0003】
説明
CSF−1(コロニー刺激因子−1)は、様々な細胞種によって個々に発現されるサイトカインである。サイトカインは、CSF−1の受容体(CSF−1R)を発現する単核食細胞系譜の細胞に対する分化、増殖および生存因子である(SHERR. Colony-stimulating factor-1 receptor. blood. 1990, vol.75, no.1, p.1-12)。CSF−1Rは、細胞内キナーゼドメインと、5つの免疫グロブリン様サブドメインに組織化されたリガンド結合細胞外領域とを含有するc−fms癌原遺伝子によりコードされているチロシンキナーゼ受容体である。CSF−1に対する応答は、生存、増殖、分化の増大、および機能の可逆的変化をもたらす。c−fms遺伝子はそれ自体、マクロファージ分化マーカーである。c−fmsの発現程度は、リゾチームおよびマクロファージ特異的タンパク質チロシンホスファターゼを含む、他のマクロファージ特異的遺伝子よりも強い(HUME, et al. Regulation of CSF-1 receptor expression. Molecular reproduction and development. 1997, vol.46, no.1, p.46-52)。
【0004】
単核食細胞系譜の細胞の他、CSF−1Rは、多くのヒト腫瘍種によっても発現される。乳癌では、CSF−1Rの発現は、腫瘍サイズの増大および生存の低下に関連している(KLUGER, et al. Macrophage colony-stimulating factor-1 receptor expression is associated with poor outcome in breast cancer by large cohort tissue microarray analysis. Clinical cancer research. 2004, vol.10, no.1, p.173-7; SCHOLL, et al. Anti-colony-stimulating factor-1 antibody staining in primary breast adenocarcinomas correlates with marked inflammatory cell infiltrates and prognosis. Journal of the National Cancer Institute. 1994, vol.86, no.2, p.120-6)。上皮性卵巣癌では、大部分の原発腫瘍および転移がCSF−1Rを強く発現し、転移はCSF−1とCSF−1Rを共発現する場合が多い。CSF−1Rはまた、腫瘍浸潤マクロファージによっても発現される(CHAMBERS, et al. Overexpression of epithelial macrophage colony-stimulating factor (CSF-1) and CSF-1 receptor: a poor prognostic factor in epithelial ovarian cancer, contrasted with a protective effect of stromal CSF-1. Clinical Cancer Research. 1997, vol.3, no.6, p.999-1007)。卵巣癌および子宮内膜癌では、ノーザンブロット分析によれば、腫瘍の大多数がCSF−1とCSF−1Rを共発現するが、CSF−1R発現は正常子宮内膜組織サンプルでは弱く検出されるに過ぎないことが示される(BAIOCCHI, et al. Expression of the macrophage colony-stimulating factor and its receptor in gynecologic malignancies. Cancer. 1991, vol.67, no.4, p.990-6)。子宮頚癌では、CSF−1R発現は、正常子宮内膜に比べて腫瘍間質および腫瘍上皮の双方でアップレギュレートされている(KIRMA, et al. Elevated expression of the oncogene c-fms and its ligand, the macrophage colony-stimulating factor-1, in cervical cancer and the role of transforming growth factor-beta1 in inducing c-fms expression. Cancer res.. 2007, vol.67, no.5, p.1918-26)。腎臓癌では、高レベルのCSF−1Rを発現する腫瘍関連マクロファージの浸潤が腫瘍の進行に関連している(HEMMERLEIN, et al. Expression of acute and late-stage inflammatory antigens, c-fms, CSF-1, and human monocytic serine esterase 1, in tumor-associated macrophages of renal cell carcinomas. Cancer immunology, immunotherapy. 2000, vol.49, no.9, p.485-92)。CSF−1Rは、100%に近い前立腺上皮内新生物または癌サンプルにより発現される(IDE, et al. Expression of colony-stimulating factor 1 receptor during prostate development and prostate cancer progression. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2002, vol.99, no.22,
p.14404-9)。CSF−1R発現はまた、急性骨髄芽球性白血病およびB細胞慢性リンパ球性白血病においても検出されている(RAMBALDI, et al. Expression of the macrophage colony-stimulating factor and c-fms genes in human acute myeloblastic leukemia cells. Journal of Clinical Investigation. 1988, vol.81, no.4, p.1030-5)。
【0005】
免疫組織化学およびin situハイブリダイゼーションによって行われた研究では、浸潤性乳癌細胞におけるCSF−1発現の特異性が示されたが、このような生産は乳管内のまたは非浸潤性の腫瘍細胞には見られない(SCHOLL, et al. Anti-colony-stimulating factor-1 antibody staining in primary breast adenocarcinomas correlates with marked inflammatory cell infiltrates and prognosis. Journal of the National Cancer Institute. 1994, vol.86, no.2, p.120-6; TANG, et al. M-CSF (monocyte colony stimulating factor) and M-CSF receptor expression by breast tumor cells: M-CSF mediated recruitment of tumor infiltrating monocytes?. Journal of cellular biochemistry. 1992, vol.50, no.4, p.350-6)。浸潤性腫瘍細胞によるCSF−1の生産は、患者の血漿中のその濃度の上昇と相関があり、正常被験体の300pg/ml未満に比べて、1000pg/mlを超える場合がある。高い血清濃度は疾患の進行性病期および好ましくない短い予後と相関がある(SCHOLL, et al. Circulating levels of colony-stimulating factor 1 as a prognostic indicator in 82 patients with epithelial ovarian cancer. British journal of cancer. 1994, vol.69, no.2, p.342-6; SCHOLL. Circulating levels of the macrophage colony stimulating factor CSF-1 in primary and metastatic breast cancer patients. A pilot study. Breast cancer research and treatment. 1996, vol.39, no.3, p.275-83)。さらに、CSF−1は腫瘍細胞の移動性および浸潤性を刺激することも示されている(DORSCH, et al. Macrophage colony-stimulating factor gene transfer into tumor cells induces macrophage infiltration but not tumor suppression. European journal of immunology. 1993, vol.23, no.1, p.186-90; WANG, et al. Induction of monocyte migration by recombinant macrophage colony-stimulating factor. Journal of immunology. 1988, vol.141, no.2, p.575-9; FILDERMAN, et al. Macrophage colony-stimulating factor (CSF-1) enhances invasiveness in CSF-1 receptor-positive carcinoma cell lines. Cancer res.. 1992, vol.52, no.13, p.3661-6)。
【0006】
CSF−1はまた、骨髄系の前駆体に走化作用を有し、腫瘍において単球の浸潤を促進する。しかしながら、これらの単球の存在は、免疫系による腫瘍の破壊を見るに十分なものではない(DORSCH, et al. Macrophage colony-stimulating factor gene transfer into tumor cells induces macrophage infiltration but not tumor suppression. European journal of immunology. 1993, vol.23, no.1, p.186-90)。乳房、卵巣または膵臓の腫瘍に苦しむ患者に共通して見られる高血清含量において、CSF−1は、これらの単球の分化を、腫瘍抗原を提示することができ従って腫瘍細胞に対して有効な細胞傷害性免疫応答を誘導することができる樹状細胞ではなくマクロファージへ向けるものと思われる(SCHOLL. Circulating levels of the macrophage colony stimulating factor CSF-1 in primary and metastatic breast cancer patients. A pilot study. Breast cancer research and treatment. 1996, vol.39, no.3, p.275-83; BARON, et al. Modulation of MHC class II transport and lysosome distribution by macrophage-colony stimulating factor in human dendritic cells derived from monocytes. Journal of cell science. 2001, vol.114, no.pt5, p.999-1010)。
【0007】
CSF−1はまた、破骨細胞の増殖および分化にも不可欠である(CECCHINI, et al. Role of CSF-1 in bone and bone marrow development. Molecular reproduction and development. 1997, vol.46, no.1, p.75-83)。破骨細胞は、骨の発達、ホメオスタシスおよび修復の際に無機質化した骨の分解を主要に担う造血系前駆体に由来し、CSF−1Rを発現する多核細胞である。骨粗鬆症、悪性の高カルシウム血症、関節リウマチ、腫瘍転移およびパジェット病などの種々の骨格疾患では、破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を上回り、骨量の減少、骨格の脆弱性および骨折をもたらす(BRUZZANITI, et al. Molecular regulation of osteoclast activity. Reviews in endocrine. 2006, vol.7, no.1-2, p.123-39)。例えば、進行性乳癌患者は頻繁に骨への転移を起こす。骨転移は難治性疼痛、および破骨細胞活性の増大により引き起こされる腫瘍由来の骨欠損(骨溶解)による骨折の高いリスクをもたらす(CICEK, et al. Breast cancer bone metastasis and current small therapeutics. Cancer metastasis reviews. 2006, vol.25, no.4, p.635-44)。骨溶解は高レベルの循環CSF−1と連関していることが示されている(KITAURA, et al. The journal of clinical investigation. M-CSF mediates TNF-induced inflammatory osteolysis. 2005, vol.115, no.12, p.3418-27)。
【0008】
また、CSF−1経路は、炎症性腸疾患などの疾患における腸管炎症の媒介(MARSHALL, et al. Blockade of colony stimulating factor-1 (CSF-I) leads to inhibition of DSS-induced colitis. Inflammatory bowel diseases. 2007, vol.13, no.2, p.219-24)、急性同種移植片拒絶の際のマクロファージ増殖の媒介(JOSE, et al. Blockade of macrophage colony-stimulating factor reduces macrophage proliferation and accumulation in renal allograft rejection. American journal of transplantation. 2003, vol.3, no.3, p.294-300)、および感染マクロファージにおけるHIV−1複製(KUTZA, et al. Macrophage colony-stimulating factor antagonists inhibit replication of HIV-1 in human macrophages. Journal of immunology. 2000, no.164, p.4955-4960)にも関連している。
【0009】
これらの理由から、癌および骨分解の治療のために種々の化合物によるCSF−1活性の阻害が提案された。
【背景技術】
【0010】
WO01/30381は、腫瘍疾患の治療のための薬剤の製造におけるCSF−1活性の阻害剤の使用に関する。CSF−1活性の阻害のために提案される2つのアプローチは、CSF−1活性自体の抑制とCSF−1R活性の抑制である。CSF−1またはその受容体に対する中和抗体は、CSF−1活性の阻害剤として好ましい。
【0011】
WO03/059395には、CSF−1活性を阻害することができる物質と癌治療のための細胞傷害活性を有する物質とを含んでなる組合せ製剤が記載されている。
【0012】
WO2005/068503には、被験体にCSF−1に対する抗体投与することにより、骨溶解、癌転移および癌転移に関連する骨欠損を予防および治療するための方法が開示されている。
【0013】
EP1488792Aは、CSF−1Rチロシンキナーゼ活性を効果的に阻害することにより、分化、増殖またはメディエーターの放出の選択的阻害を示す単環式および/もしくは二環式アリールまたはヘテロアリールキナゾリン化合物の使用に関する。この出願はまた、異常な細胞増殖の阻害を目的とする薬剤の製造のためのこのような化合物の使用に関する。
【0014】
US2005059113は、aCSF−1と特異的に結合する抗体およびその抗原結合部分に関する。この発明はまた、ヒト抗CSF−1抗体およびその抗原結合部分に関する。この出願の発明はまた、ヒト抗CSF−1抗体を含んでなる重鎖および/または軽鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子を用いる遺伝子療法を提供する。
【0015】
Roussel and Sherr, 1989, PNAS, 86, 7924-7927およびAshmun et al., 1989, Blood, 73, 827-837は、ヒト受容体に対するCSF−1の結合を特異的に遮断し、それにより、リガンド依存性増殖を阻害する、ヒトCSF−1受容体に対するモノクローナル抗体(例えば、12−3A3および2−4A5)を開示している。認識されるエピトープは、アミノ酸349番〜512番の間に位置していた。
【0016】
WO2009/026303は、CSF−1と競合することができる、従って、CSF−1がその受容体と結合するのを防ぐことができる、特定の実施形態では、IL−34とCSF−1Rの間の結合を阻害することができる、抗原結合タンパク質を提供する。さらに、WO2009/026303の実験の節は、この発明者らによって開発された抗体が、CSF−1Rの主としてN末端、すなわち、配列番号29のアミノ酸20番〜223番の間に位置する結合エピトープ(WO2009/026303ではIg様ループ1およびIg様ループ2に相当する)であり、Ig様ループ1領域とIg様ループ2領域の双方の存在を必要とすることを示す。
【発明の概要】
【0017】
発明の開示
本発明は、CSF−1Rと、より具体的には、ヒトCSF−1Rと特異的に結合する抗体に関する。
【0018】
出願全体を通して使用される用語「a」および「an」は、文脈がそうではないことを明示しない限り、それらが「少なくとも1つの」、「少なくとも第1の」、「1以上の」または「複数の」示された成分または工程を意味する場合の意味において用いられる。例えば、用語「細胞」には、複数の細胞が含まれ、その混合物が含まれる。
【0019】
用語「および/または」は、本明細書で用いられる場合にはいつも、「および」、「または」、および「前記用語により結ばれている要素の総てまたは任意の他の組合せ」を含む。
【0020】
本明細書において用語「約」または「およそ」は、所与の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0021】
本明細書において、用語「含んでなる」は、パーツのキット、製品、組成物および方法が、示されている成分または工程を含むが、他を排除するものではないことを意味するものとする。「から本質的になる」とは、製品、組成物および方法を定義するために用いられる場合、任意の本質的に重要な他の成分または工程を排除することを意味するものとする。よって、列挙された成分から本質的になる組成物は、微量の混入物および薬学上許容される担体を排除するものではない。「からなる」とは、微量要素とは言えない他の成分または工程を排除することを意味するものとする。
【0022】
本明細書において、用語「特異的に結合する」とは、タンパク質およびその他の生物製品のヘテロな集団の存在下で標的タンパク質の存在の決定因となる結合反応を意味する。よって、示されたアッセイ条件下で、本発明による抗体は、CSF−1Rの少なくとも一部と優先的に結合し、試験サンプル中に存在する他の成分とは有意な量では結合しない。本発明による抗体とCSF−1R標的との特異的結合は、結合親和性が少なくとも10−1、好ましくは10−1、10−1、10−1、10−1、10−1または1010−1であることを意味する。特に有利な実施形態では、結合親和性は少なくとも10−1または1010−1である。
【0023】
本明細書において、用語「CSF−1R」は、ヒトCSF1受容体を意味する。ヒトCSF−1受容体は配列決定されており、そのアミノ酸配列は配列番号29で示される。
【0024】
本明細書において、「抗体」または「Ab」は、最も広い意味で使用される。よって、「抗体」または「Ab」は、天然に存在するものであってもよいし、または従来のハイブリドーマ技術、組換え技術により生産されたモノクローナル抗体(mAb)および/もしくはその機能的フラグメントなどの人工のものであってもよい。本発明の抗体は、完全な免疫グロブリン分子、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、単一特異性抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、動物抗体(例えば、ラクダ抗体)、キメラ抗体、ならびにその一部、フラグメント、領域、ペプチドおよび誘導体(限定されるものではないが、酵素的切断、ペプチド合成または組換え技術などの公知の任意の技術によって提供される)(例えば、軽鎖を欠く免疫グロブリン(例えば、米国特許第6,005,079号参照)、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv、抗体フラグメント、ダイアボディー、Fd、CDR領域、または抗原もしくはエピトープと結合し得る抗体の任意の一部もしくはペプチド配列)の双方を含むものとする。抗体は、分子と特異的に相互作用し、それによりその分子を抗体に結合させることができる場合、その分子と「結合し得る」と言われる。抗体フラグメントまたは一部は完全抗体のFcフラグメントを欠いてもよく、完全抗体よりも、急速に循環から排除され、より低い非特異的組織結合を示し得る。抗体の例は、当技術分野で周知の方法を用い、例えば、パパイン(Fabフラグメントを作製するため)またはペプシン(F(ab’)フラグメントを作製するため(例えば、Wahl et al., 24 J. Nucl. Med. 316-25 (1983)参照)などの酵素を用いたタンパク質分解切断により、完全抗体から作製することができる。抗体の一部は上記方法のいずれによって作製してもよく、または組換え分子の一部を発現させることによって作製してもよい。例えば、組換え抗体のCDR領域を単離し、適当な発現ベクターにサブクローニングすればよい。
【0025】
本明細書において、用語「可変領域」は、結合認識特異性の決定因子を含む軽鎖(VL)または重鎖(VH)の可変領域またはドメインを意味する。可変ドメインは抗原認識に関与し、抗原結合部位を形成する。本明細書において、用語「フレームワーク領域」とは、同じ種の異なる抗体間で少なくとも85%相同な(すなわち、CDR以外の)軽鎖および重鎖可変領域の一部を意味する。本明細書において、用語「相同な」とは、Smith-Watermanアルゴリズム(SMITH, et al. Identification of common molecular subsequences. Journal of Molecular Biology. 1981, no.147, p.195-7)を用いてアラインメントした際におよそ示されたパーセンテージの同一アミノ酸を有する2つのポリペプチドのアミノ酸の比較を意味する。例えば、「85%相同」とは、最適なアラインメントを行った際に85%のアミノ酸同一性を有する2つのポリペプチドのアミノ酸の比較を意味する。重鎖および軽鎖双方の可変領域は、Kabatのデータベース(Kabat et al., 前掲)に定義される、超可変配列の3つのストレッチ、すなわち相補性決定領域(CDR)により隔てられた4つのフレームワークサブ領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)を含んでなるセグメントに分けられ、CDR1はFR1とFR2の間に位置し、CDR2はFR2とFR3の間に位置し、CDR3はFR3とFR4の間に位置する。他者らが称するフレームワーク領域は、これらの特定の部分領域をFR1、FR2、FR3またはFR4で示さずに、単一の天然免疫グロブリン鎖の可変領域内のFRを合わせたものを表す。本明細書においては、単数のFRは、4つの部分領域のうちの1つを表し、複数のFRはフレームワーク領域を構成する4つの部分領域のうちの2以上を表す。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成要素である軽鎖および重鎖のフレームワーク領域を合わせたものであり、これらのCDRを配置し、整列させる働きをする。CDRは、抗原のエピトープに対する結合特異性および親和性を付与する、抗体の結合部位を形成するのに主要な役割を果たす。抗原結合領域を提供するH鎖またはL鎖の可変領域内には、特異性の異なる抗体の間で極めて変動性が高いために「超可変」と呼ばれる小さな配列がある。このような超可変領域はまた、「相補性決定領域」または「CDR」領域とも呼ばれる。これらのCDR領域は、特定の抗原決定基構造の抗体の塩基の特異性を説明する。CDRは可変領域内の不連続のアミノ酸ストレッチを表すが、種によらず、可変重鎖領域および軽鎖領域内のこれらの重要なアミノ酸配列の位置は、可変鎖のアミノ酸配列内でも同様の位置を有することが判明した。総ての抗体の可変重鎖および軽鎖はそれぞれ3つのCDR領域を有し、それぞれは個々の軽(L)鎖および重(H)鎖に関して他のものとは不連続である(L1、L2、L3、H1、H2、H3と呼ばれる)。受け入れられているCDR領域は、Kabat et al, 252 J. Biol. Chem. 6609-16 (1977)により記載されており、CDRループは、直鎖アミノ酸配列を調べている際にこれらのルールを適用することによって同定することができる。CDR−H3ループを定義するためのルールは様々であり得るが(Chapter 4, Antibody Engineering: Methods & Protocols, (Lo, ed. Humana Press, Totowa, NJ, 2004)参照)、いくつかのCDR−H3ループの実際の境界は、円偏光二色性、核磁気共鳴、またはX線結晶学などの実験技術なしには同定し得ない。哺乳動物種では総て、抗体ペプチドは定常(すなわち、保存性の高い)領域と可変領域を含み、後者の中に、CDRと、重鎖または軽鎖の可変領域内でCDR外のアミノ酸配列からなるいわゆる「フレームワーク領域」とが存在する。CDR領域は、Chothia命名法(CHOTHIA and LESK. Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins (1987) J Mol Biol. 1987 Aug 20;196(4):901-17)を用いて定義することもできる。よって、特定の実施形態では、CDRはKabatにより定義されるCDRであり、他の実施形態では、CDRはChothiaにより定義されるCDRである。抗体のCDR領域により認識される抗原決定基に関して、これは「エピトープ」とも呼ばれる。言い換えれば、エピトープは、抗体により認識されて、抗体が結合し得る分子の一部を意味する(対応する抗体結合領域はパラトープと呼ばれ得る)。一般に、エピトープは、分子の、化学的に活性な表面群、例えば、アミノ酸または糖側鎖からなり、特定の三次元構造的特徴ならびに特定の電荷特徴を有する。
【0026】
本明細書において、用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、単一のクローンに由来する抗体を意味する。モノクローナル抗体は、HARLOW. Antibodies: A Laboratory manual. 2nd edition. Cold Spring Harbor: Laboratory press, 1988およびHAMMERLING, et al. Monoclonal Antibodies and T Cell Hybridomas. New York: Elsevier, 1981. p.563-681に開示されているものなどのハイブリドーマ法を用いて作製することができる。
【0027】
本明細書において、用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来するか、またはその配列と密接に適合する可変領域および定常領域を有する抗体を意味する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroではランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発により、またはin vivoでは体細胞突然変異により導入される突然変異)を含み得る。よって、本明細書において、用語「ヒト抗体」は、タンパク質の実質的に総ての部分がヒト生殖細胞系抗体と実質的に類似する抗体を意味する。「実質的に類似する」とは、ヒト生殖細胞系抗体の核酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、いっそうより好ましくは95%相同な核酸配列を有する抗体を意味する。
【0028】
本明細書において、用語「Fab」とは、重鎖および軽鎖の可変領域を含み、かつ、結合活性を示す、抗体分子の領域を意味する。「Fab」は、1本の重鎖と1本の軽鎖の凝集物(一般にFabとして知られる)を含み、上記はいずれも、その凝集物が特定の抗原または抗原ファミリーと選択的に反応し得る限り、共有結合的凝集物であっても非共有結合的凝集物であってもよい。Fabフラグメントは、VLと、VHおよびCH1ドメインを含んでなる第2のポリペプチドとを含んでなるヘテロ二量体である。好ましい実施形態では、抗体はFab’フラグメントである。Fab’フラグメントは、Fab’フラグメントが、抗体「ヒンジ領域」由来の1以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数残基を含むことで、Fabフラグメントと異なる。
【0029】
「F(ab’)」は、抗体のペプシン処理により得られる抗体フラグメント、または組換え技術などの他の技術により得られる同等のタンパク質を意味する。F(ab’)フラグメントは、2つの抗原結合位を有しており抗原を架橋することができる。
【0030】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、非共有結合的に強固に会合した1本の重鎖と1本の軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この構成において各可変ドメインの3つのCDRは相互作用して、VH VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義する。これら6つのCDRが一緒になって、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)であっても、完全結合部位より親和性は低いが、抗原を認識して、それと結合する能力を有する。
【0031】
「単鎖Fv」または「scFv」は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含んでなり、この場合、これらのドメインは単一のポリペプチドに存在する。好ましくは、scFvは、VHドメインおよびVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含んでなり、これにより、scFvに抗原結合に望ましい構造を形成させることができる(LENNARD. Standard protocols for the construction of scFv libraries. Methods in molecular biology. 2002, no.178, p.59-71)。
【0032】
本明細書において、用語「抗体フラグメント」は、CSF−1Rと特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントを意味する。
【0033】
「ダイアボディー」とは、2つの抗原結合部位を有する小抗体フラグメントを意味し、このフラグメントは同じポリペプチド鎖内に軽鎖可変ドメイン(VL)と結合した重鎖可変ドメイン(VH)(VH VL)を含んでなる。同じ鎖のこれら2つのドメインの間で対合を可能とするには短いリンカーを使用することで、これらのドメインは別の鎖の相補的ドメインとの対合を余儀なくされ、2つの抗原結合部位が作出される。ダイアボディーは1つまたは2以上のエピトープと結合し得る。ダイアボディーは、POLJAK. Production and structure of diabodies. Structure. 1994, vol.2, no.12, p.1121-3、HUDSON, et al. High avidity scFv multimers; diabodies and triabodies. Journal of immunological methods. 1999, vol.231, no.1-2, p.177-89およびKIPRIYANOV. Generation of bispecific and tandem diabodies. Methods in molecular biology. 2002, no.178, p.317-31に十分に記載されている。
【0034】
抗体フラグメントの生産のために種々の技術が開発されている。従来、これらのフラグメントは完全抗体のタンパク質分解性消化により誘導されていた。しかしながら、これらのフラグメントは、現在、組換え宿主細胞により直接生産することができる。Fab、FvおよびscFv抗体フラグメントは総て、大腸菌(E. coli)で発現させて大腸菌から分泌させることができ、従って、大量のこれらのフラグメントを生産することができる。抗体フラグメントの生産のための技術は、当業者には明らかである。他の実施形態では、選択される抗体は一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。
【0035】
本明細書において「ドメイン抗体」(dAb)は、抗体の重鎖可変領域(VH)または軽鎖(VL)可変領域のいずれかに相当する、抗体の最小の機能的結合単位からなる。ドメイン抗体は、およそ13kDaの分子量、すなわち、完全抗体の10分の1未満の大きさを有する。
【0036】
本明細書において、「Fd」は、VHおよびCH1ドメインからなる抗体フラグメントを意味する。
【0037】
用語「抗体」または「Ab」はまた、当業者に周知の他の抗体フラグメント、例えば、HOLLIGER, et al. Engineered antibody fragments and the rise of single domains. Nature biotechnology. 2005, vol.23, no.9, p.1126-36およびHOOGENBOOM, et al. Natural and designer binding sites made by phage display technology. Immunology today. 2000, vol.21, no.8, p.371-8に記載されているものも意味する。
【0038】
一実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、
(i)配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、もしくは配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を含んでなる、少なくとも1つのCDR、
または
(ii)配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、または配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を含んでなる、少なくとも1つのCDR
を含んでなる。
【0039】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、少なくとも1つのCDRを含んでなり、前記CDRは、
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列、
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、または
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
の少なくとも5個の連続するアミノ酸を含んでなるCDRの群から互いに独立に選択される。
【0040】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体はCSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、2、3、4または5つ、いっそうより好ましくは、6つのCDRを含んでなり、前記CDRは、
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列、
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、または
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
の少なくとも5個の連続するアミノ酸を含んでなるCDRの群から互いに独立に選択される。
【0041】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、
(i)
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、もしくは
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列
少なくとも5個の連続するアミノ酸を含んでなるCDRの群から互いに独立に選択される2つ、いっそうより好ましくは、3つのCDR、または
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、もしくは
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
の少なくとも5個の連続するアミノ酸を含んでなるCDRの群から互いに独立に選択される、2つ、いっそうより好ましくは、3つのCDR
を含んでなる。
【0042】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、
(i)
・配列番号の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、および
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列
で示されるCDRの群から互いに独立に選択される少なくとも1つのCDR、または
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
で示されるCDRの群から互いに独立に選択される少なくとも1つのCDR
を含んでなる。
【0043】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列、
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
で示されるCDRの群から互いに独立に選択される少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0044】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列、
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
で示されるCDRの群から互いに独立に選択される2、3、4または5つ、いっそうより好ましくは、6つのCDRを含んでなる。
【0045】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、
(i)
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列
で示されるCDRの群から互いに独立に選択される2つ、いっそうより好ましくは、3つのCDR、または
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
で示されるCDRの群から互いに独立に選択される、2つ、いっそうより好ましくは、3つのCDR
を含んでなる。
【0046】
一実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、(i)配列番号11、12もしくは13のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDR、または(ii)配列番号14、15もしくは16のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0047】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号11、12、13、14、15または16のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0048】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号11、12、13、14、15または16のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる2、3、4、5つ、いっそうより好ましくは、6つのCDRを含んでなる。
【0049】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、(i)配列番号11、12もしくは13のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDR、または(ii)配列番号14、15もしくは16のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0050】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号11、12、13、14、15もしくは16のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0051】
好ましい一実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号11、12、13、14、15もしくは16のいずれか1つで示される2、3、4、5つ、いっそうより好ましくは、6つのCDRを含んでなる。
【0052】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、i)配列番号17、18もしくは19のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDR、または(ii)配列番号20、21もしくは22のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0053】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号17、18、19、20、21または22のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0054】
好ましい一実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号17、18、19、20、21または22のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる2、3、4、5つ、いっそうより好ましくは、6つのCDRを含んでなる。
【0055】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、(i)配列番号17、18もしくは19のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDR、または(ii)配列番号20、21もしくは22のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0056】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号17、18、19、20、21または22のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0057】
好ましい一実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号17、18、19、20、21または22のいずれか1つで示される2、3、4、5つ、いっそうより好ましくは、6つのCDRを含んでなる。
【0058】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、(i)配列番号23、24もしくは25のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDR、または(ii)配列番号26、27もしくは28のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0059】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号23、24、25、26、27または28のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0060】
好ましい一実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号23、24、25、26、27または28のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含んでなる2、3、4、5つ、いっそうより好ましくは、6つのCDRを含んでなる。
【0061】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、(i)配列番号23、24もしくは25のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDR、または(ii)配列番号26、27もしくは28のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0062】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号23、24、25、26、27または28のいずれか1つで示される少なくとも1つのCDRを含んでなる。
【0063】
好ましい一実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、配列番号23、24、25、26、27または28のいずれか1つで示される2、3、4、5つ、いっそうより好ましくは、6つのCDRを含んでなる。
【0064】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、および
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列
で示されるCDRを含んでなる。
【0065】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
で示されるCDRを含んでなる。
【0066】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、配列番号11、12および13で示される3つのCDRを含んでなる。
【0067】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、配列番号14、15および16で示される3つのCDRを含んでなる。
【0068】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、配列番号17、18および19で示される3つのCDRを含んでなる。
【0069】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、配列番号20、21および22で示される3つのCDRを含んでなる。
【0070】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、配列番号23、24および25で示される3つのCDRを含んでなる。
【0071】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、ヒトCSF−1Rとより特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、配列番号26、27および28で示される3つのCDRを含んでなる。
【0072】
好ましい実施形態では、前記可変領域は、1つ、より好ましくは2つ、いっそうより好ましくは3つ、明確に好ましくは、4つのフレームワーク領域、より好ましくは、ヒトFRをさらに含んでなる。本明細書において、「ヒトFR」は、天然ヒト抗体のフレームワーク領域と少なくとも75%相同なフレームワーク領域である。
【0073】
好ましい一実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、配列番号6で示されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0074】
より好ましい実施形態では、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は配列番号6で示される通りである。
【0075】
別の好ましい実施形態では、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、配列番号9で示されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0076】
別のより好ましい実施形態では、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、1つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は配列番号9で示される通りである。
【0077】
別の実施形態では、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、2つの可変領域を含んでなり、前記可変領域は、
(i)
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列、および
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列
で示されるCDRを含んでなる可変領域;
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列
で示されるCDRを含んでなる可変領域;
(iii)配列番号11、12および13で示される3つのCDRを含んでなる可変領域;
(iv)配列番号14、15および16で示される3つのCDRを含んでなる可変領域;
(v)配列番号17、18および19で示される3つのCDRを含んでなる可変領域;
(vi)配列番号20、21および22で示される3つのCDRを含んでなる可変領域;
(vii)配列番号23、24および25で示される3つのCDRを含んでなる可変領域;
(viii)配列番号26、27および28で示される3つのCDRを含んでなる可変領域
からなる群から互いに独立に選択される。
【0078】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、
(i)
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる第1の可変領域と、
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる第2の可変領域と
を含んでなる。
【0079】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、
・配列番号11、12および13で示される3つのCDRを含んでなる可変領域、および
・配列番号14、15および16で示される3つのCDRを含んでなる可変領域
を含んでなる。
【0080】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、
・配列番号17、18および19で示される3つのCDRを含んでなる可変領域、および
・配列番号20、21および22で示される3つのCDRを含んでなる可変領域
を含んでなる。
【0081】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、
・配列番号23、24および25で示される3つのCDRを含んでなる可変領域、および
・配列番号26、27および28で示される3つのCDRを含んでなる可変領域
を含んでなる。
【0082】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、
・配列番号6で示される可変領域、および
・配列番号9で示される可変領域
を含んでなる。
【0083】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、
(i)
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる重鎖可変領域と、
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる。
【0084】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、(i)配列番号11、12および13で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、(ii)配列番号14、15および16で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0085】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、(i)配列番号17、18および19で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、(ii)配列番号20、21および22で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0086】
別の実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、(i)配列番号23、24および25で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、(ii)配列番号26、27および28で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0087】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、(i)配列番号6で示される重鎖可変領域と、(ii)配列番号9で示される軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0088】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
(i)
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる可変領域と、
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる可変領域と
を含んでなる。
【0089】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
・配列番号11、12および13で示される3つのCDRを含んでなる可変領域と、
・配列番号14、15および16で示される3つのCDRを含んでなる可変領域と
を含んでなる。
【0090】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
・配列番号17、18および19で示される3つのCDRを含んでなる可変領域と、
・配列番号20、21および22で示される3つのCDRを含んでなる可変領域と
を含んでなる。
【0091】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
・配列番号23、24および25で示される3つのCDRを含んでなる可変領域と、
・配列番号26、27および28で示される3つのCDRを含んでなる可変領域と
を含んでなる。
【0092】
より好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
・配列番号6で示される可変領域と、
・配列番号9で示される可変領域と
を含んでなる。
【0093】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
(i)
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる重鎖可変領域と、
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる。
【0094】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
・配列番号11、12および13で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、
・配列番号14、15および16で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる。
【0095】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
・配列番号17、18および19で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、
・配列番号20、21および22で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる。
【0096】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
・配列番号23、24および25で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、
・配列番号26、27および28で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる。
【0097】
より好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、scFvであり、前記scFvは、
・配列番号6で示される重鎖可変領域と、
・配列番号9で示される軽鎖可変領域と
を含んでなる。
【0098】
いっそうより好ましい実施形態では、配列番号6および9で示されるアミノ酸配列内で少なくとも1つのアミノ酸が置換されている(表1および表2に従う)scFvが提供される。明確に好ましい実施形態では、配列番号6および9で示されるアミノ酸配列内で表1および表2に示されるアミノ酸の総てが置換されている(表1および表2に従う)ヒト抗体が提供される。
【0099】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、配列番号2で示される重鎖を含んでなる。
【0100】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、配列番号4で示される軽鎖を含んでなる。
【0101】
より好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、かつ、配列番号2で示される重鎖と配列番号4で示される軽鎖とを含んでなる。
【0102】
いっそうより好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、CSF−1Rと特異的に結合し、配列番号2で示される2本の重鎖と配列番号4で示される2本の軽鎖とを含んでなる。この特定の抗体は、本願を通してCXIIG6と呼ぶ。
【0103】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、CSF−1Rと特異的に結合し、
(i)
・配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる重鎖可変領域と、
(ii)
・配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列で示されるCDR、
・配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列で示されるCDR、および
・配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列で示されるCDR
を含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる、ヒト抗体に関する。
【0104】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1Rと特異的に結合し、
・配列番号11、12および13で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、
・配列番号14、15および16で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる、ヒト抗体に関する。
【0105】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1Rと特異的に結合し、
・配列番号17、18および19で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、
・配列番号20、21および22で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる、ヒト抗体に関する。
【0106】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1Rと特異的に結合し、
・配列番号23、24および25で示される3つのCDRを含んでなる重鎖可変領域と、
・配列番号26、27および28で示される3つのCDRを含んでなる軽鎖可変領域と
を含んでなる、ヒト抗体に関する。
【0107】
好ましい実施形態によれば、本発明は、CSF−1Rと特異的に結合し、
・配列番号6で示される重鎖可変領域と、
・配列番号9で示される軽鎖可変領域と
を含んでなる、ヒト抗体に関する。
【0108】
より好ましい実施形態では、配列番号6および9で示されるアミノ酸配列内で少なくとも1つのアミノ酸が置換されている(表1および表2に従う)ヒト抗体が提供される。いっそうより好ましい実施形態では、配列番号6および9で示されるアミノ酸配列内で表1および表2に示されるアミノ酸の総てが置換されている(表1および表2に従う)ヒト抗体が提供される。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合する、単離された、組換え型の、または精製された抗体であって、
(a)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号2の45番で始まり54番で終わる配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有し;
CDR2は、配列番号2の66番で始まり87番で終わる配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有し;かつ
CDR3は、配列番号2の117番で始まり126番で終わる配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する)
で定義される第1の可変領域と;
(b)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号4の44番で始まり56番で終わる配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有し;
CDR2は、配列番号4の66番で始まり76番で終わる配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有し;かつ
CDR3は、配列番号4の109番で始まり117番で終わる配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸を有する)
で定義される第2の可変領域と
を含んでなる抗体に関する。
【0112】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1Rと特異的に結合する、単離された、組換え型の、または精製された抗体であって、
(a)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号11、17および23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し;
CDR2は、配列番号12、18および24からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し;かつ
CDR3は、配列番号13、19および25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する)
で定義される第1の可変領域と;
(b)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号14、20および26からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し;
CDR2は、配列番号15、21および27からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し;かつ
CDR3は、配列番号16、22および28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する)
で定義される第2の可変領域と
を含んでなる抗体に関する。
【0113】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合する、単離された、組換え型の、または精製された抗体であって、
下記の(i)、(ii)または(iii):
(i)
(a)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号11で示される通りであり;
CDR2は、配列番号12で示される通りであり;かつ
CDR3は、配列番号13で示される通りである)
で定義される第1の可変領域と;
(b)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号14で示される通りであり;
CDR2は、配列番号15で示される通りであり;かつ
CDR3は、配列番号16で示される通りである)
で定義される第2の可変領域;または
(ii)
(a)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号17で示される通りであり;
CDR2は、配列番号18で示される通りであり;かつ
CDR3は、配列番号19で示される通りである)
で定義される第1の可変領域と;
(b)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号20で示される通りであり;
CDR2は、配列番号21で示される通りであり;かつ
CDR3は、配列番号22で示される通りである)
で定義される第2の可変領域;または
(iii)
(a)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号23で示される通りであり;
CDR2は、配列番号24で示される通りであり;かつ
CDR3は、配列番号25で示される通りである)
で定義される第1の可変領域と;
(b)下式:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
ここで、
CDR1は、配列番号26で示される通りであり;
CDR2は、配列番号27で示される通りであり;かつ
CDR3は、配列番号28で示される通りである)
で定義される第2の可変領域
のうちいずれか1つを含んでなる抗体に関する。
【0114】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合する、単離された、組換え型の、または精製された抗体であって、
・配列番号6のアミノ酸配列を含んでなる第1の可変領域と、
・配列番号9のアミノ酸配列を含んでなる第2の可変領域と
を含んでなる抗体に関する。
【0115】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合する、単離された、組換え型の、または精製された抗体であって、
・配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる第1の可変領域と、
・配列番号4のアミノ酸配列を含んでなる第2の可変領域と
を含んでなる抗体に関する。
【0116】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合する、単離された、組換え型の、または精製された抗体であって、
・配列番号37(図32参照)および配列番号38からなる群から選択される重鎖と、
・配列番号39、配列番号40および配列番号41からなる群から選択される軽鎖と
を含んでなる抗体に関する。
【0117】
別の実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合する、単離された、組換え型の、または精製された抗体であって、
・配列番号42および配列番号43からなる群から選択される第1の可変領域と、
・配列番号44、配列番号45および配列番号46からなる群から選択される第2の可変領域と
を含んでなる抗体に関する。
【0118】
好ましい一実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合し、(a)配列番号37からなる重鎖と、(b)配列番号39からなる軽鎖とを含んでなる、単離された、組換え型の、または精製された抗体に関する。
【0119】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合し、(a)配列番号38からなる重鎖と、(b)配列番号40からなる軽鎖とを含んでなる、単離された、組換え型の、または精製された抗体に関する。
【0120】
有利な一実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合し、(a)配列番号37からなる重鎖と、(b)配列番号41からなる軽鎖とを含んでなる、単離された、組換え型の、または精製された抗体に関する。
【0121】
好ましい一実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合し、(a)配列番号42からなる第1の可変領域と、(b)配列番号44からなる第2の可変領域とを含んでなる、単離された、組換え型の、または精製された抗体に関する。
【0122】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合し、(a)配列番号43からなる第1の可変領域と、(b)配列番号45からなる第2の可変領域とを含んでなる、単離された、組換え型の、または精製された抗体に関する。
【0123】
有利な一実施形態によれば、本発明は、CSF−1R、より好ましくは、ヒトCSF−1Rと特異的に結合し、(a)配列番号42からなる第1の可変領域と、(b)配列番号46からなる第2の可変領域を含んでなる、単離された、組換え型の、または精製された抗体に関する。
【0124】
本発明によれば、抗体、より具体的には、ヒト抗体は、IgG、IgA、IgMまたはIgEなどの異なるアイソタイプのものであってもよい。好ましい実施形態では、本発明によれば、抗体、より具体的には、ヒト抗体はIgGである。
【0125】
関連の実施形態では、ヒト抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の改変型または非改変型の定常領域を含んでなる。好ましい実施形態では、定常領域はヒトIgG1またはIgG4であり、場合により、ある特性を増強または低減するために改変されてよい。
【0126】
IgG1の場合、定常領域、特に、ヒンジ領域またはCH2領域に対する改変は、ADCC活性および/またはCDC活性を含むエフェクター機能を増強または低減し得る。他の実施形態では、IgG2定常領域は、抗体−抗原凝集物の形成を低減するために改変される。IgG4の場合、定常領域、特に、ヒンジ領域に対する改変は、半抗体の形成を低減し得る。
【0127】
抗体の1以上のアミノ酸が変異を受けても、所望の結合親和性が保持される場合がある。これらの変異体は、抗体の少なくとも1つのアミノ酸が違う残基で置換される。別の実施形態によれば、本発明は、CDRに含まれるアミノ酸の少なくとも1つが保存的に置換されている、上記のようなCSF1と特異的に結合する抗体を提供する。保存的置換を表3に示す。
【0128】
【表3】
【0129】
本発明はまた、親和性成熟により本発明の抗体を改変するプロセスに関する。
【0130】
本明細書において、「親和性成熟」は、1以上のCDRに含まれる1以上のアミノ酸の置換であって、そのような置換を持っていない親抗体に比べてCSF−1Rに対する抗体の親和性に改善をもたらす置換を意味する。親和性成熟プロセスは、当技術分野で公知である。例えば、MARKS, et al. By-passing immunization: building high affinity human antibodies by chain shuffling. Biotechnology. 1992, vol.10, no.7, p.779-83; BARBAS, et al. In vitro evolution of a neutralizing human antibody to human immunodeficiency virus type 1 to enhance affinity and broaden strain cross-reactivity. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 1994, vol.91, no.9, p.3809-13; SCHIER. Identification of functional and structural amino-acid residues by parsimonious mutagenesis. Gene. 1996, vol.169, no.2, p.147-55; YELTON. Affinity maturation of the BR96 anti-carcinoma antibody by codon-based mutagenesis. J. immunol.. 1995, vol.155, no.4, p.1994-2004; JACKSON, et al. In vitro antibody maturation. Improvement of a high affinity, neutralizing antibody against IL-1 beta. J. immunol.. 1995, vol.154, no.7, p.3310-9およびHAWKINS, et a
l. Selection of phage antibodies by binding affinity. Mimicking affinity maturation. Journal of molecular biology. 1992, vol.226, no.3, p.889-96参照。
【0131】
本発明はまた、前記のような親和性成熟により得られた、CSF−1Rと特異的に結合する抗体に関する。
【0132】
別の実施形態では、本発明は、前記のような抗体のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、いっそうより好ましくは、少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有する、前記のような抗体の変異体を提供する。
【0133】
別の実施形態では、本発明による抗体は、2以上のエピトープと特異的に結合する。例えば、本発明による抗体は、CSF−1Rの2つの異なるエピトープと結合し得る。あるいは、本発明による抗体は、CSF−1Rおよび別の分子に結合することができる。本明細書において、2以上のエピトープと特異的に結合する抗体は、架橋抗体であってもよい。例えば、一方の抗体はアビジンに結合させ、他方をビオチンに結合させることができる。架橋抗体は、当技術分野で周知の便宜な架橋法のいずれを用いて作製してもよい。抗体フラグメントから二重特異性抗体を作出するための技術はまた、例えば、BRENNAN, et al. Preparation of bispecific antibodies by chemical recombination of monoclonal immunoglobulin G1 fragments. Science. 1985, vol.229, no.4708, p.81-3およびSHALABY, et al. Development of humanized bispecific antibodies reactive with cytotoxic lymphocytes and tumor cells overexpressing the HER2 protooncogene. The Journal of experimental medicine. 1992, vol.175, no.1, p.217-25; KOSTELNY, et al. Formation of a bispecific antibody by the use of leucine zippers. J. immunol.. 1992, vol.148, no.5, p.1547-33にも記載されている。
【0134】
好ましい実施形態によれば、本発明に従い、2以上のエピトープと特異的に結合する抗体は、ダイアボディーである。
【0135】
別の好ましい実施形態によれば、本発明に従い、2以上のエピトープと特異的に結合する抗体は、ZAPATA, et al. Engineering linear F(ab')2 fragments for efficient production in Escherichia coli and enhanced antiproliferative activity. Protein engineering. 1995, vol.8, no.10, p.1057-62に記載されているような直鎖抗体である。
【0136】
好ましい実施形態では、本発明による抗体は、配列番号29のアミノ酸20番〜41番の間(すなわち、ヒトドメインD1のN末端部分)に位置する少なくとも1つのエピトープと特異的に結合する。好ましい実施形態では、本発明による抗体は、配列番号29のアミノ酸20番〜41番の間(すなわち、ヒトドメインD1のN末端部分)に位置する1つのエピトープと結合し、配列番号29のアミノ酸42番〜90番の間、および/またはアミノ酸91番〜104番の間、および/またはアミノ酸105番〜199番の間、および/またはアミノ酸200番〜298番の間に位置するエピトープとは結合しない。好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は、配列番号29のアミノ酸20番〜41番の間(すなわち、ヒトドメインD1のN末端部分)に位置する最小エピトープを認識することができる。有利な実施形態によれば、本発明の抗体は、構築物pTG18016を認識して、それと結合することができる(図19および関連の実施例を参照)。
【0137】
好ましい実施形態では、本発明による抗体は、CSF−1R受容体との結合に関してIL−34リガンドと競合しない。本明細書において、用語「IL−34リガンドと競合しない」とは、IL34リガンドの、その受容体CSF−1Rへの結合に阻害がないことを意味する。
【0138】
好ましい実施形態では、本発明による抗体は、CSF−1R受容体との結合に関してCSF−1リガンドと部分的に競合する。本明細書において、用語「CSF−1リガンドと部分的に競合する」とは、CSF−1リガンドの、その受容体CSF−1Rへの結合の、100%未満、好ましくは50%未満、いっそうより好ましくは20%未満、有利には10%未満の阻害を意味する。この部分的阻害剤はリガンド結合を低下させるだけで、全面的に排除するのではなく、この阻害は部分的阻害と呼ばれる。
【0139】
好ましい実施形態では、本発明による抗体は、CSF1の、その受容体CSF−1Rへの結合を部分的に妨げることができ、前記結合を全面的に阻害できるわけではない。より詳しくは、本発明による抗体は、CSF−1の、CSF−1Rへの結合をおよそ5〜10%低下させることができる。特定の実施形態によれば、前記結合の低下は、CSF−1(配列番号47の1〜444番にわたるアミノ酸配列を有する−図21参照)の、配列番号29のIle 20〜Glu 512にわたるアミノ酸配列を有する受容体CSF−1Rへの結合を測定することにより、本明細書の実験の節に記載の通りに測定される。
【0140】
好ましい実施形態では、本発明による抗体は、CSF1−Rに対する高親和性結合を特徴とする。より詳しくは、本発明による抗体は、1nM未満、好ましくは0.8nM未満、より好ましくは0.6nM未満のKiを有する。このような予期しない高親和性の結果として、本発明の抗体は少量で投与することができ、従って、潜在的副作用を排除することができる。
【0141】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、それが特異的または優先的に結合するポリペプチドまたは細胞、すなわち、CSF1−R発現細胞、より好ましくはCSF1−R発現ヒト細胞、有利にはCSF1−R発現ヒト癌細胞の生物活性を部分的または完全に遮断または阻害するアンタゴニスト抗体である。
【0142】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の抗体は、下記の有利な特性のうちの少なくとも1つを有する:
・In Vitro試験:本発明による抗体は、CSF−1R受容体との結合に関してIL−34リガンドと競合しない;
・In Vitro試験:本発明による抗体は、CSF−1R受容体との結合に関してCSF−1リガンドと部分的に競合する;
・ADCC試験:正常ヒト末梢血単核細胞の存在下で、本発明の抗体は、CSF1−R発現ヒト細胞、特に、CSF1−R発現ヒト癌細胞に対して抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を示す;
・In Vivo試験:本発明の抗体は、CSF1−R発現ヒト癌細胞を持つ非ヒト動物に対して抗腫瘍作用を示す;
・In Vivo試験:本発明の抗体は、CSF1−R発現ヒト癌細胞を持つ、ヒトを含む動物に対して抗腫瘍作用を示す;
・In Vivo試験:本発明の抗体は、AML5細胞のCSF−1依存的増殖を阻害する;
・In Vivo試験:本発明の抗体は、CSF−1RのCSF−1依存的リン酸化を部分的に阻害する;
・In Vivo試験:本発明の抗体は、CSF−1Rに対して直接的な拮抗活性を持たない。
【0143】
本発明による抗体は、グリコシル化されていてもされていなくてもよい。
【0144】
本明細書において、用語「グリコシル化」とは、抗体と共有結合している糖鎖単位の存在を意味する。
【0145】
別の実施形態では、本発明による抗体は、放射線増感剤、受容体および/または細胞傷害性薬剤とコンジュゲートされる。
【0146】
本明細書において、用語「放射線増感剤」とは、放射線療法に対する細胞の感受性を高める分子を意味する。放射線増感剤としては、限定されるものではないが、メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU1069、SR4233、E09、RB6145、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5−ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FUdR)、ヒドロキシ尿素およびシスプラチンが挙げられる。
【0147】
本明細書において、用語「受容体」とは、リガンドと特異的に結合することができる化合物を意味する。本発明の好ましい実施形態によれば、受容体はビオチンである。
【0148】
本明細書において、用語、細胞傷害性薬剤とは、細胞に対して直接毒性があり、それらの再生または成長を妨げる化合物を意味する。好ましい実施形態によれば、本発明の文脈で用いられる細胞傷害性薬剤は、癌治療薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素またはそのフラグメント)、または放射性同位元素からなる群から選択される。
【0149】
別の実施形態では、本発明による抗体は、標識薬剤とコンジュゲートされる。
【0150】
本明細書において、「標識薬剤」とは、検出可能な化合物を意味する。標識薬剤は、それ自体検出可能であってもよく(例えば、放射性同位元素標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物の化学修飾を触媒してもよい。
【0151】
本明細書において、用語「コンジュゲートされる」とは、本発明による抗体と標識薬剤が共有結合的または非共有結合的に結合されることを意味する。
【0152】
「共有結合する」とは、反応性官能基を介したカップリングを意味し、場合により、架橋剤または他の活性化剤の媒介的使用を伴ってもよい(例えば、HERMANSON. Bioconjugate techniques. Academic press, 1996参照)。本発明による抗体および/またはコンジュゲートされる薬剤は、それらのカップリングを可能とするために、例えば、活性化されたカルボニル基上(in situで活性化されたものを含む)またはイミドエステル上での置換によるか、不飽和カルボニル基への付加によるか、飽和炭素原子もしくはヘテロ原子上での還元的アミノ化、求核置換によるか、芳香環上での反応により、修飾してもよい。特に、カップリングは、ホモ二官能性またはヘテロ二官能性架橋試薬を用いて行ってよい。グルタルアルデヒド、コハク酸、およびDMS(スベリイミド酸ジメチル)のようなビス−イミドエステルを含むホモ二官能性架橋剤が、種々の部分に存在し得るアミン基をカップリングするために使用可能である。多くの例がHERMANSON. Bioconjugate techniques. Academic press, 1996. p.118-228に示されており、これらは当業者に周知である。ヘテロ二官能性架橋剤としては、アミン反応性基とスルフヒドリル反応性基、カルボニル反応性基とスルフヒドリル反応性基、およびスルフヒドリル反応性基と光反応性リンカーの双方を有するものが挙げられる。好適なヘテロ二官能性架橋剤は、例えば、HERMANSON. Bioconjugate techniques. Academic press, 1996. p.229-285に記載されている。例としては、例えば、SPDP(N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SMBP(スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート)、SMPT(スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン)、MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、SIAB(N−スクシンイミジル(4ヨードアセチル)アミノベンゾエート)、GMBS(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル)、SIAX(スクシンイミジル−6−ヨードアセチルアミノヘキソネート、SIAC(スクシンイミジル−4−ヨードアセチルアミノメチル)、NPIA(p−ニトロフェニルヨードアセテート)がある。他の例も、糖鎖含有分子(例えば、env糖タンパク質、抗体)とスルフヒドリル反応性基をカップリングするために有用である。例としては、MPBH(4−(4−Nマレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド)およびPDPH(4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシル−ヒドラジド(M2C2Hおよび3−2(2−ピリジルジチオ)プロプリオニルヒドラジド)が挙げられる。
【0153】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸配列に関する。
【0154】
用語「核酸配列」とは、ヌクレオチドの直鎖配列を意味する。これらのヌクレオチドはポリリボヌクレオチドもしくはポリデオキシリボヌクレオチドの直鎖配列のいずれか、または両者の混合物である。本発明においてポリヌクレオチドの例としては、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖DNAおよびRNAの両混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、1以上の改変ヌクレオチドを有してよい。
【0155】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による核酸配列はベクター内に含まれる。
【0156】
ベクターはプラスミドまたはウイルス起源であってよく、適当であれば、トランスフェクション効率および/またはベクターの安定性を高める1以上の物質と組み合わせてもよい。これらの物質は、当業者に入手可能な文献に広く記載されている(例えば、FELGNER, et al. Cationic liposome mediated transfection. Proceedings of the Western Pharmacology Society. 1989, vol.32, p.115-21; HODGSON, et al. Virosomes: cationic liposomes enhance retroviral transduction. Nature biotechnology. 1996, vol.14, no.3, p.339-42; REMY, et al. Gene transfer with a series of lipophilic DNA-binding molecules. Bioconjugate chemistry. 1994, vol.5, no.6, p.647-54参照)。非限定例として、これらの物質はポリマー、脂質、特に、陽イオン脂質、リポソーム、核タンパク質または中性脂質であり得る。これらの物質は、単独でまたは組み合わせて使用可能である。考えられ得る組合せは、組換えプラスミドベクターと陽イオン脂質(DOGS、DC−CHOL、スペルミン−chol、スペルミジン−cholなど)、リゾリン脂質(例えば、ヘキサデシルホスホコリン)および中性脂質(DOPE)との組合せである。
【0157】
好ましい実施形態によれば、本発明において使用可能な陽イオン脂質は、EP901463に記載の陽イオン脂質、より好ましくは、pcTG90である。
【0158】
本発明の文脈で使用可能なプラスミドの選択肢は極めて広い。それらはクローニングベクターおよび/または発現ベクターであり得る。一般には、それらは当業者に公知であり、それらのうちのいくつかは市販されているが、遺伝子操作技術を用いてそれらを構築または改変することもできる。挙げられる例としては、pBR322(Gibco BRL)、pUC(Gibco BRL)、pBluescript(Stratagene)、pREP4、pCEP4(Invitrogen)またはp Poly (LATHE, et al. Plasmid and bacteriophage vectors for excision of intact inserts. Gene. 1987, vol.57, no.2-3, p.193-201)に由来するプラスミドがある。好ましくは、本発明の文脈で使用されるプラスミドは、生産細胞および/または宿主細胞において複製が開始されるようにする複製起点(例えば、ColE1起点は、大腸菌で生産しようとするプラスミドに関して選択されoriP/EBNA1系は、プラスミドを哺乳動物宿主細胞で自己複製させることが望まれる場合に選択される、LUPTON, et al. Mapping genetic elements of Epstein-Barr virus that facilitate extrachromosomal persistence of Epstein-Barr virus-derived plasmids in human cells. Molecular and cellular biology. 1985, vol.5, no.10, p.2533-42; YATES, et al. Stable replication of plasmids derived from Epstein-Barr virus in various mammalian cells. Nature. 1985, vol.313, no.6005, p.812-5)を含む。プラスミドは、トランスフェクト細胞の選択または同定を可能とする選択遺伝子(栄養要求性突然変異の補足、抗生物質耐性をコードする遺伝子など)をさらに含んでなり得る。本来、プラスミドは、所与の細胞においてその維持および/またはその安定性を改善する付加的要素(プラスミドの、単量体型での維持を促進するcer配列)を含み得る(SUMMERS, et al. Multimerization of high copy number plasmids causes instability: CoIE1 encodes a determinant essential for plasmid monomerization and stability. Cell. 1984, vol.36, no.4, p.1097-103,細胞ゲノムへ組み込むための配列)。
【0159】
ウイルスベクターについては、ポックスウイルス(ワクシニアウイルス、特に、MVA、カナリア痘ウイルスなど)由来、アデノウイルス由来、レトロウイルス由来、ヘルペスウイルス由来、アルファウイルス由来、泡沫状ウイルス由来またはアデノウイルス随伴ウイルス由来のベクターを企図することができる。複製可能または複製欠陥ウイルスベクターを使用することができる。組み込みを起こさないベクターを使用することが有利である。これに関して、アデノウイルスベクター、ならびにポックスウイルス、より好ましくは、ワクシニアウイルスおよびMVA由来のベクターが本発明の実施に特に極めて好適である。
【0160】
好ましい実施形態によれば、本発明によるウイルスベクターは、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)に由来する。MVAベクターおよびそのようなベクターの作製方法は、欧州特許EP83286およびEP206920、ならびにSUTTER, et al. Nonreplicating vaccinia vector efficiently expresses recombinant genes. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.. 1992, vol.89, no.22, p.10847-51に十分に記載されている。より好ましい実施形態によれば、本発明による核酸配列は、MVAベクターの欠失I、II、III、IV、VおよびVI、いっそうより好ましくは、欠失IIIに挿入され得る(MEYER, et al. Mapping of deletions in the genome of the highly attenuated vaccinia virus MVA and their influence on virulence. The Journal of general virology. 1991, vol.72, no.Pt5, p.1031-8; SUTTER, et al. A recombinant vector derived from the host range-restricted and highly attenuated MVA strain of vaccinia virus stimulates protective immunity in mice to influenza virus. Vaccine. 1994, vol.12, no.11, p.1032-40.)。
【0161】
レトロウイルスは、分裂細胞に感染し、ほとんどの場合にはそれに組み込まれる特性を有し、この点で、癌に関する使用に特に適切である。本発明による組換えレトロウイルスは、一般に、レトロウイルスLTRまたは下記のものなどの内部プロモーターの制御下に置かれたLTR配列、キャプシド形成領域および本発明によるヌクレオチド配列を含む。組換えレトロウイルスは、任意の起源(マウス、霊長類、ネコ、ヒトなど)のレトロウイルスに、特に、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)、MVS(マウス肉腫ウイルス)またはフレンドマウスレトロウイルス(Fb29)に由来してもよい。それは、ウイルス粒子を構築するために必要とされるウイルスポリペプチドgag、polおよび/またはenvをトランスで供給し得るキャプシド形成細胞株で増殖される。このような細胞株は文献に記載されている(PA317、Psi CRIP GP+Am−12など)。本発明によるレトロウイルスベクターは、特にLTR(プロモーター領域を真核生物プロモーターで置換)またはキャプシド形成領域(異種キャプシド形成領域、例えばVL3Oタイプで置換)に、修飾を含み得る(米国特許第5747323号参照)。
【0162】
ベクターが宿主生物または環境内で増殖することを避けるために、複製に必須であり、かつ、E1、E2、E4およびL1−L5領域から選択される、少なくとも1つの領域の全部または一部を欠いたアデノウイルスベクターを用いることも好ましい。E1領域の欠損が好ましい。しかしながら、それは、欠陥のある必須機能が相補細胞株および/またはヘルパーウイルスによりトランスで補足される程度に、特にE2、E4および/またはL1−L5領域の全部または一部に影響を及ぼす他の修飾/欠損と組み合わせてもよい。この点において、最新の第2世代ベクターを用いることが可能である(例えば、国際出願WO94/28152およびWO97/04119参照)。例として、E1領域およびE4転写単位の主要部分の欠損が極めて特に有利である。クローニング能力を高める目的で、アデノウイルスベクターは非必須E3領域の全部または一部をさらに欠くことができる。別法によれば、キャプシド形成に必須な配列、すなわち5’および3’ITR(逆方向末端反復配列)とキャプシド形成領域を保有する最小アデノウイルスベクターを用いることも可能である。様々なアデノウイルスベクターおよびそれらを作製する技術が知られている(例えば、GRAHAM, et al. Methods in molecular biology. Edited by MURREY. The human press inc, 1991. p.109-128参照)。
【0163】
さらに、本発明によるアデノウイルスベクターの起源は、種および血清型の双方の観点から様々であり得る。該ベクターはヒトもしくは動物(イヌ、トリ、ウシ、マウス、ヒツジ、ブタ、サルなど)源のアデノウイルスのゲノムに由来するか、または少なくとも2種の異なる起源のアデノウイルスゲノムフラグメントを含んでなるハイブリッドに由来する。イヌ起源のCAV−1またはCAV−2アデノウイルス、トリ起源のDAVアデノウイルスまたはウシ起源のBad3型アデノウイルスが特に挙げられる(ZAKHARCHUK, et al. Physical mapping and homology studies of egg drop syndrome (EDS-76) adenovirus DNA. Archives of virology. 1993, vol.128, no.1-2, p.171-6; SPIBEY, et al. Molecular cloning and restriction endonuclease mapping of two strains of canine adenovirus type 2. The Journal of general virology. 1989, vol.70, no.Pt 1, p.165-72; JOUVENNE, et al. Cloning, physical mapping and cross-hybridization of the canine adenovirus types 1 and 2 genomes. Gene. 1987, vol.60, no.1, p.21-8; MITTAL, et al. Development of a bovine adenovirus type 3-based expression vector. The Journal of general virology. 1995, vol.76, no.Pt 1 , p.93-102)。しかしながら、血清型Cアデノウイルス、特に2または5型血清型Cアデノウイルスに由来するヒト起源のアデノウイルスベクターが好ましい。
【0164】
本明細書において、用語「複製可能」は、トランス補足の不在下でも宿主細胞で複製し得るウイルスベクターを意味する。
【0165】
本発明の好ましい態様によれば、複製適格ベクターは複製適格アデノウイルスベクターである。これらの複製適格アデノウイルスベクターは当業者に周知である。これらの中では、ONYX−015ウイルスの場合のように(BISCHOFF, et al. An adenovirus mutant that replicates selectively in p53-deficient human tumor cells. Science. 1996, vol.274, no.5286, p.373-6; He HEISE, et al. An adenovirus E1A mutant that demonstrates potent and selective systemic anti-tumoral efficacy. Nature Medicine. 2000, vol.6, no.10, p.1134-9; WO 94/18992)、55kD P53阻害剤をコードするE1b領域に欠損があるアデノウイルスベクターが特に好ましい。従って、このウイルスは、p53欠陥新生物細胞に選択的に感染してそれを死滅させるために使用可能である。当業者ならば、確立された技術に従い、アデノウイルス5または他のウイルスでp53阻害剤遺伝子を変異させ、破壊することもできる。E1A Rb結合領域に欠損があるアデノウイルスベクターも本発明で使用可能である。例えば、E1A領域に24塩基対の欠損を有する変異型アデノウイルスであるデルタ24ウイルス(FUEYO, et al. A mutant oncolytic adenovirus targeting the Rb pathway produces anti-glioma effect in vivo. Oncogene. 2000, vol.19, no.1, p.2-12)。デルタ24はRb結合領域に欠損を有し、Rbと結合しない。従って、この変異型ウイルスの複製は、正常細胞においてはRbにより阻害される。しかしながら、Rbが不活化されて、細胞が新生物化すると、デルタ24はもはや阻害されない。その代わりに、変異型ウイルスは効率的に複製し、Rb欠陥細胞を溶解させる。
【0166】
本発明によるアデノウイルスベクターは、in vitroにおいて大腸菌(Escherichia coli)で、ライゲーションもしくは相同組換え(例えば、国際出願WO96/17070参照)あるいはまた補足細胞株における組換えにより作製することができる。
【0167】
本発明の好ましい実施形態によれば、ベクターは、本発明による抗体の発現に必須なエレメントをさらに含んでなる。
【0168】
発現に必要なエレメントは、核酸配列のRNAへの転写およびmRNAのポリペプチドへの翻訳を可能とする総てのエレメントからなる。これらのエレメントは、調節可能または構成的であり得るプロモーターを特に含んでなる。本来、このプロモーターは選択されたベクターおよび宿主細胞に適している。挙げられる例は、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)、MT(メタロチオネイン;MCIVOR Human purine nucleoside phosphorylase and adenosine deaminase: gene transfer into cultured cells and murine hematopoietic stem cells by using recombinant amphotropic retroviruses. Molecular and cellular biology. 1987, vol.7, no.2, p.838-46)、α−1抗トリプシン、CFTR、界面活性剤、免疫グロブリン、アクチン(TABIN, et al. Adaptation of a retrovirus as a eukaryotic vector transmitting the herpes simplex virus thymidine kinase gene. Molecular and cellular biology. 1982, vol.2, no.4, p.426-36)およびSRα(TAKEBE, et al. SR alpha promoter: an efficient and versatile mammalian cDNA expression system composed of the simian virus 40 early promoter and the R-U5 segment of human T-cell leukemia virus type 1 long terminal repeat. Molecular and cellular biology. 1988, vol.8, no.1, p.466-72)遺伝子の真核生物のプロモーター、SV40ウイルス(シミアンウイルス)の初期プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)のLTR、HSV−l TKプロモーター、CMVウイルス(サイトメガロウイルス)の初期プロモーター、ワクシニアウイルスのp7.5K pH5R、pK1L、p28およびp11プロモーター、p11K7.5などのキメラプロモーター、ならびにE1AおよびMLPアデノウイルスプロモーターである。このプロモーターはまた、腫瘍または癌細胞における発現を刺激するプロモーターでもあり得る。特に、乳癌および前立腺癌において過剰発現されるMUC−1遺伝子のプロモーター(CHEN, et al. Breast cancer selective gene expression and therapy mediated by recombinant adenoviruses containing the DF3/MUC1 promoter. The Journal of clinical investigation. 1995, vol.96, no.6, p.2775-82)、結腸癌において過剰発現されるCEA(癌胎児性抗原を表す)遺伝子のプロモーター(SCHREWE, et al. Cloning of the complete gene for carcinoembryonic antigen: analysis of its promoter indicates a region conveying cell type-specific expression. Molecular and cellular biology. 1990, vol.10, no.6, p.2738-48)、黒色腫において過剰発現されるチロシナーゼ遺伝子のプロモーター(VILE, et al. Use of tissue-specific expression of the herpes simplex virus thymidine kinase gene to inhibit growth of established murine melanomas following direct intratumoral injection of DNA. Cancer res.. 1993, vol.53, no.17, p.3860-4)、乳癌および膵臓癌において過剰発現されるERBB−2遺伝子のプロモーター(HARRIS, et al. Gene therapy for cancer using tumor-specific prodrug activation. Gene therapy. 1994, vol.1, no.3, p.170-5)、肝臓癌において過剰発現されるα−フェトタンパク質遺伝子のプロモーター(KANAI, et al. In vivo gene therapy for alpha-fetoprotein-producing hepatocellular carcinoma by adenovirus-mediated transfer of cytosine deaminase gene. Cancer res.. 1997, vol.57, no.3, p.461-5)が挙げられる。サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターが、極めて特に好ましい。
【0169】
しかしながら、ワクシニアウイルス由来の(例えば、MVAベクター)を用いる場合には、チミジンキナーゼ7.5K遺伝子のプロモーターおよびpH5Rプロモーターが特に好ましい。
【0170】
必要なエレメントとにはさらに、本発明による核酸配列の発現または宿主細胞におけるその維持を改善する付加的エレメントが含まれる。イントロン配列、分泌シグナル配列、核局在配列、IRES型の翻訳の再開始のための内部部位、転写終結ポリA配列、三分節リーダーおよび複製起点が特に挙げられる。これらのエレメントは当業者に公知である。分泌シグナル配列の中でも、配列番号5および/または8で示されるポリペプチドをコードする配列が特に好ましい。
【0171】
本発明による組換えベクターはまた、1以上の付加的な対象遺伝子を含んでなってよく、これらの遺伝子は同じ調節エレメントの制御下の置くこともできるし(ポリシストロニックカセット)、または独立したエレメントとすることもできる。特に挙げられる遺伝子は、インターロイキンIL−2、IL−4、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、ケモカイン(CCL19、CCL20、CCL21、CXCL−14など)、インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)、並びに自然免疫および血管新生に作用する因子(例えば、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤を表すPAl−1)をコードする遺伝子である。特定の一実施形態では、本発明による組換えベクターは、IL−2をコードする対象遺伝子を含んでなる。
【0172】
本発明はまた、本発明の核酸配列を含んでなる細胞に関する。好ましい実施形態では、本発明の細胞は、真核細胞、より好ましくは哺乳動物細胞である。発現用宿主として利用可能な哺乳動物細胞は、当技術分野で周知であり、限定されるものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞および他の多くのものなどの不死化細胞株が挙げられる。さらなる好適な真核細胞としては、酵母および他の真菌がある。
【0173】
本発明はまた、本発明の細胞を、その抗体の発現を可能とする条件下で培養すること、およびその細胞またはその細胞の周囲の培地から抗体を精製することを含んでなる、本発明の抗体を生産する方法に関する。
【0174】
別の実施形態では、本発明は、本発明の抗体、核酸配列またはベクターと薬学上許容される担体とを含んでなる医薬組成物に関する。好ましい実施形態では、該医薬組成物は対象化合物をさらに含んでなる。
【0175】
薬学上許容される担体は好ましくは、等張性、低張または弱低張であり、例えばスクロース溶液など、比較低いイオン強度を有する。さらに、このような担体は、任意の溶媒、または非発熱原性無菌水などの水性もしくは部分的に水性の液体を含んでもよい。さらに、該医薬組成物のpHは、in vivo使用の要件を満たすために調製および緩衝される。該医薬組成物はまた、薬学上許容される希釈剤、アジュバントまたは賦形剤、ならびに可溶化剤、安定剤および保存剤を含んでもよい。注射投与には、水性または非水性等張性溶液中の処方物が好ましい。それは単回用量で、または液体もしくは使用時に適当な希釈剤で再構成することができる乾燥形態(粉末および凍結乾燥品など)で多回用量として提供してもよい。
【0176】
本発明はまた、(i)本発明による医薬組成物、抗体、核酸配列またはベクターと、(ii)対象化合物とを含んでなるパーツキットに関する。
【0177】
本明細書において、用語「対象化合物」とは、治療化合物、好ましくは、癌治療薬または骨量減少の治療に有用な化合物に関する。
【0178】
好ましい実施形態によれば、癌治療薬は、アブラキサン(Abraxane)(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子処方物(Paclitaxel Albumin-stabilized Nanoparticle Formulation))、アドリアマイシン(Adriamycin)(塩酸ドキソルビシン)、アドルシル(Adrucil)(フルオロウラシル)、アルダラ(Aldara)(イミキモド(Imiquimod))、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、アリムタ(Alimta)(ペメトレキセド二ナトリウム(Pemetrexed Disodium))、アミノレブリン酸、アナストロゾール(Anastrozole)、アプレピタント(Aprepitant)、アリミデックス(Arimidex)(アナストロゾール(Anastrozole))、アロマシン(Aromasin)(エキセメスタン(Exemestane))、アラノン(Arranon)(ネララビン(Nelarabine))、三酸化ヒ素、アバスチン(Avastin)(ベバシズマブ(Bevacizumab))、アザシチジン(Azacitidine)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ベキサロテン(Bexarotene)、ボルテゾミブ(Bortezomib)、キャンパス(Campath)(アレムツズマブ(Alemtuzumab))、カンプトサール(Camptosar)(塩酸イリノテカン)、カペシタビン(Capecitabine)、カルボプラチン(Carboplatin)、セツキシマブ(Cetuximab)、シスプラチン(Cisplatin)、クラフェン(Clafen)(シクロホスファミド)、クロファラビン(Clofarabine)、クロファレックス(Clofarex)(クロファラビン(Clofarabine))、クロラール(Clolar)(クロファラビン)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、シタラビン(Cytarabine)、シトサール(Cytosar)−U(シタラビン)、サイトキサン(Cytoxan)(シクロホスファミド)、ダコゲン(Dacogen)(デシタビン(Decitabine))、ダサチニブ(Dasatinib)、デシタビン(Decitabine)、デポシト(DepoCyt)(リポソーム化シタラビン)、デポフォーム(DepoFoam)(リポソーム化シタラビン)、塩酸デクスラゾキサン(Dexrazoxane Hydrochloride)、ドセタキセル(Docetaxel)、ドキシル(Doxil)(塩酸ドキソルビシンリポソーム)、塩酸ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシンリポソーム、Dox−SL(塩酸ドキソルビシンリポソーム)、エフデックス(Efudex)(フルオロウラシル)、エレンス(Ellence)(塩酸エピルビシン(Epirubicin Hydrochloride))、エロキサチン(Eloxatin)(オキサリプラチン(Oxaliplatin)、エメンド(Emend)(アプレピタント(Aprepitant))、塩酸エピルビシン(Epirubicin Hydrochloride)、エルビタックス(Erbitux)(セツキシマブ)、塩酸エルロチニブ(Erlotinib Hydrochloride)、エバセット(Evacet)(塩酸ドキソルビシンリポソーム)、エビスタ(Evista)(塩酸ラロキシフェン(Raloxifene Hydrochloride))、エキセメスタン(Exemestane)、ファスロデックス(Faslodex)(フルベストラント(Fulvestrant))、フェマーラ(Femara)(レトロゾール(Letrozole))、フルオロプレックス(Fluoroplex)(フルオロウラシル)、フルオロウラシル、フルベストラント(Fulvestrant)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、塩酸ゲムシタビン(Gemcitabine Hydrochloride)、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(Gemtuzumab Ozogamicin)、ジェムザール(Gemzar)(塩酸ゲムシタビン)、グリベック(Gleevec)(メシル酸イマチニブ(Imatinib Mesylate))、ハーセプチン(Herceptin)(トラスツズマブ(Trastuzumab))、ハイカムチン(Hycamtin)(塩酸トポテカン(Topotecan Hydrochloride))、メシル酸イマチニブ、イミキモド、イレッサ(Iiressa)(ゲフィチニブ(Gefitinib))、塩酸イリノテカン(Irinotecan Hydrochloride)、イキサベピロン(Ixabepilone)、イクセンプラ(Ixempra)(イキサベピロン(Ixabepilone))、ケオキシフェン(Keoxifene)(塩酸ラロキシフェン(Raloxifene Hydrochloride))、ケピバンス(Kepivance)(パリフェルミン(Palifermin))、二トシル酸ラパチニブ(Lapatinib Ditosylate)、レナリドマイド(Lenalidomide)、レトロゾール(Letrozole)、レブラン(Levulan)(アミノレブリン酸(Aminolevulinic Acid))、リポドックス(LipoDox)(塩酸ドキソルビシンリポソーム)、リポソーム化シタラビン、メタゾラストン(Methazolastone)(テモゾロミド(Temozolomide))、メトトレキサート(Methotrexate)、ミロサール(Mylosar)(アザシチジン(Azacitidine))、マイロターグ(Mylotarg)(ゲムツズマブ・オゾガマイシン(Gemtuzumab Ozogamicin))、ナノ粒子パクリタキセル(Nanoparticle Paclitaxel)(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子処方物)、ネララビン(Nelarabine)、ネオサール(Neosar)(シクロホスファミド(Cyclophosphamide))、ネクサバール(Nexavar)(トシル酸ソラフェニブ(Sorafenib Tosylate))、ニロチニブ(Nilotinib)、ノルバデックス(Nolvadex)(クエン酸タモキシフェン(Tamoxifen Citrate))、オンキャスパー(Oncaspar)(ペガスパルガーゼ(Pegaspargase))、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子処方物、パリフェルミン(Palifermin)、パニツムマブ(Panitumumab)、パラプラット(Paraplat)(カルボプラチン(Carboplatin))、パラプラチン(Paraplatin)(カルボプラチン(Carboplatin))、ペガスパルガーゼ(Pegaspargase)、ペメトレキセド二ナトリウム(Pemetrexed Disodium)、プラチノール(Platinol)−AQ(シスプラチン)、プラチノール(Platinol)(シスプラチン)、塩酸ラロキシフェン(Raloxifene Hydrochloride)、レブリミド(Revlimid)(レナリドマイド(Lenalidomide))、リツキサン(Rituxan)(リツキシマブ(Rituximab))、リツキシマブ、スクレロゾール胸腔内エアゾール(Sclerosol Intrapleural Aerosol)(タルク)、トシル酸ソラフェニブ(Sorafenib Tosylate)、スプリセル(Sprycel)(ダサチニブ)、無菌タルク粉末(タルク)、ステリタルク(Steritalc)(タルク)、リンゴ酸スニチニブ(Sunitinib Malate)、スーテント(Sutent)(リンゴ酸スニチニブ)、サイノビル(Synovir)(サリドマイド(Thalidomide))、タルク、クエン酸タモキシフェン(Tamoxifen Citrate)、タラビン(Tarabine)PFS(シタラビン(Cytarabine))、タルセバ(Tarceva)(酸塩エルロチニブ(Erlotinib Hydrochloride))、ターグレチン(Targretin)(ベキサロテン(Bexarotene))、タシグナ(Tasigna)(ニロチニブ(Nilotinib))、タキソール(Taxol)(パクリタキセル(Paclitaxel))、タキソテール(Taxotere)(ドセタキセル(Docetaxel))、テモダール(Temodar)(テモゾロミド(Temozolomide))、テモゾロミド)、テムシロリムス(Temozolomide)、サロミド(Thalomid)(サリドマイド(Thalidomide))、サリドマイド、トテクト(Totect)(塩酸デクスラゾキサン(Dexrazoxane Hydrochloride))、塩酸トポテカン(Topotecan Hydrochloride)、トリセル(Torisel)(テムシロリムス(Temsirolimus))、トラスツズマブ(Trastuzumab)、トリセノックス(Trisenox)(三酸化ヒ素)、タイケルブ(Tykerb)(二トシル酸ラパチニブ(Lapatinib))、ベクチビックス(Vectibix)(パニツムマブ(Panitumumab))、ベルケード(Velcade)(ボルテゾミブ(Bortezomib))、ビダザ(Vidaza)(アザシチジン(Azacitidine))、ボリノスタット(Vorinostat)、ゼローダ(Xeloda)(カペシタビン(Capecitabine))、ザインカード(Zinecard)(塩酸デクスラゾキサン(Dexrazoxane Hydrochloride))、ゾレンドロン酸(Zoledronic Acid)、ゾリンザ(Zolinza)(ボリノスタット(Vorinostat))およびゾメタ(Zometa)(ゾレンドロン酸(Zoledronic Acid))からなる群から選択される。
【0179】
本発明の好ましい実施形態によれば、骨量の減少の治療に有用な化合物は、ビホスホネート、選択性エストロゲン受容体調節薬(SERM)、副甲状腺ホルモン(PTH)(例えば、テリパラチド(フォルテオ(Forteo))、ラネル酸ストロンチウム、デノスマブもしくはカルシトニン、またはそれらの組合せである。より好ましい実施形態によれば、ビホスホネートは、アレンドロネート(フォサマックス(Fosamax)、フォサマックスプラスD)、エチドロネート(ダイドロネル(Didronel))、イバンドロネート(ボニバ(Boniva))、パミドロネート(アレジア(Aredia))、リセドロネート(アクトネル(Actonel)、アクトネルW/カルシウム)、チルドロネート(スケリド(Skelid))、およびゾレンドロン酸(リクラスト(Reclast)、ゾメタ(Zometa))からなる群から選択される。より好ましい実施形態によれば、SERMは、ラロキシフェン(エビスタ(Evista))、バゼドキシフェン/プレマリン(アプレラル(Aprelal))およびタモキシフェンからなる群から選択される。
【0180】
別の実施形態によれば、本発明は、破骨細胞活性の増強に関連する疾患の治療のための本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの使用に関する。このような疾患には、限定されるものではないが、内分泌障害(高コルチゾール症、性腺機能低下症、原発性もしくは続発性副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症)、高カルシウム血症、欠乏状態(くる病/骨軟化症、壊血病、栄養失調)、慢性疾患(吸収不良症候群、慢性腎不全(腎性骨異栄養症)、慢性肝疾患(肝性骨異栄養症)、薬物(グルココルチコイド(グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症)、アンドロゲン欠乏治療、アロマターゼ阻害療法、ヘパリン、アルコール)、および遺伝病(骨形成不全症、ホモシスチン尿症)、骨粗鬆症、大理石骨病、関節炎および関節リウマチに関連する骨の炎症、歯周病、線維性形成異常および/またはパジェット病が含まれる。
【0181】
別の実施形態によれば、本発明は、炎症および/または自己免疫に関連する疾患の治療のための、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの使用に関する。このよう疾患は、限定されるものではないが、血清反応陰性脊椎関節症(乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群、炎症性腸疾患に関連する脊椎関節症)、人工関節弛緩、結合組織疾患(若年性関節リウマチ、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡(SLE)および狼瘡腎炎、硬皮症、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎)、炎症性腸疾患(例えば、クローン病;潰瘍性大腸炎)、ウィップル病、肉芽腫性回結腸炎に関連する関節炎、炎症性皮膚症状(自己免疫性水疱性類天疱瘡、自己免疫性尋常性天疱瘡、湿疹、皮膚炎)、炎症性肺疾患(肺胞炎、肺線維症、類肉腫症(sarcoidoisis)、喘息、気管支炎、閉塞性細気管支炎)、炎症性腎疾患(糸球体腎炎、腎臓同種移植片拒絶、腎尿細管炎症)、アテローム性動脈硬化症、全身性血管炎(側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、結節性多発性動脈炎、川崎病、ウェゲナー肉芽腫、チャーグ・ストラウス症候群、顕微鏡的多発性血管炎、壊死性糸球体腎炎、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、本態性クリオグロブリン血症性血管炎およびその他の小血管血管炎、ベーチェット病)、マクロファージ活性化疾患(マクロファージ活性化症候群(MAS)、成人発症型スティル病、血球貪食症候群)、リウマチ性多発性筋痛、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、ギラン−バレー症候群、アジソン病および/またはレイノー現象、グッドパスチャー症候群を含んでなる。
【0182】
別の実施形態によれば、本発明は、癌の治療のための、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの使用に関する。
【0183】
本明細書において、用語「癌」は、限定されるものではないが、腺癌、腺傍細胞腺癌、副腎皮質細胞癌、肺胞細胞癌、未分化癌、類基底細胞癌、基底細胞癌、細気管支癌、肺癌(bronchogenic carcinoma)、腎腺癌(renaladinol carcinoma)、胎児性癌、アノメトロイド癌(anometroid carcinoma)、線維層板肝細胞癌、濾胞性癌、巨細胞癌、肝細胞癌、表皮内癌、上皮内癌、軟膜癌(leptomaningio carcinoma)、髄様癌、黒色性癌、髄膜癌、子宮間膜癌(mesometonephric carcinoma)、燕麦細胞癌、扁平上皮細胞癌腫、汗腺癌、移行上皮癌、管状細胞癌、エナメル芽細胞肉腫、砂上石灰化を伴う髄膜腫、ブドウ状肉腫、子宮内膜間質肉腫、ユーイング肉腫、線維束状肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球肉腫、免疫芽球肉腫、傍骨性骨肉腫、カピセス肉腫(coppices sarcoma)、白血球性肉腫(白血病)、リンパ性肉腫(リンパ肉腫)、髄様肉腫、骨髄性肉腫(顆粒球性肉腫)、オースチオゲンシ肉腫(austiogenci sarcoma)、骨膜肉腫、細網細胞肉腫(組織球性リンパ腫)、円形細胞肉腫、紡錘細胞肉腫、滑膜肉腫、毛細管拡張性聴原性肉腫、バーキットリンパ腫、NPDL、NML、NH、および、びまん性リンパ腫を意味する。好ましい実施形態によれば、本発明の方法は骨に対する転移癌の治療を対象とし、その転移癌は乳癌、肺癌、腎臓癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、血液細胞悪性腫瘍(白血病およびリンパ腫を含む)、頭頚部癌、胃腸管癌(食道癌、胃癌、結腸癌、腸管癌、結腸直腸癌、直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、胆管または胆嚢の癌を含む)、女性生殖管の悪性腫瘍(卵巣癌、子宮内膜癌、膣癌および子宮頚癌を含む)、膀胱癌、脳癌(神経芽腫を含む)、肉腫、骨肉腫ならびに皮膚癌(悪性黒色腫または扁平上皮細胞癌を含む)である。
【0184】
本発明はさらに、癌治療薬による化学療法治療を受けている癌患者の治療を改善する方法であって、該患者を上記で開示されたような方法で同時処置することを含んでなる方法に関する。
【0185】
本発明はさらに、細胞傷害剤または放射線療法の細胞傷害有効性を改善する方法であって、そのような治療を必要とする患者を上記で開示されたような方法で同時処置することを含んでなる方法に関する。
【0186】
本発明はさらに、ビホスホネート、選択性エストロゲン受容体調節薬(SERM)、副甲状腺ホルモン(PTH)(例えば、テリパラチド(フォルテオ(Forteo))、ラネル酸ストロンチウム、デノスマブもしくはカルシトニン、またはそれらの組合せによる治療を受けている、破骨細胞活性の増強に関連する疾患を有する患者の治療を改善するための方法であって、該患者を上記で開示されたような方法で同時処置することを含んでなる方法に関する。
【0187】
別の実施形態では、本発明の抗体の使用は、転移癌に罹患している患者において骨に対する転移癌を予防または治療するための薬剤の製造において意図される。関連の実施形態では、転移癌は乳癌、肺癌、腎臓癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、血液細胞悪性腫瘍(白血病およびリンパ腫を含む)、頭頚部癌、胃腸管癌(食道癌、胃癌、結腸癌、腸管癌、結腸直腸癌、直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、胆管または胆嚢の癌を含む)、女性生殖管の悪性腫瘍(卵巣癌、子宮内膜癌、膣癌および子宮頚癌を含む)、膀胱癌、脳癌(神経芽腫を含む)、肉腫、骨肉腫、または皮膚癌(悪性黒色腫もしくは扁平上皮細胞癌を含む)である。
【0188】
別の実施形態によれば、本発明は、薬剤の製造における、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの使用に関する。
【0189】
別の実施形態によれば、本発明は、癌を有する患者を治療するための薬剤の製造における、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの使用に関する。
【0190】
別の実施形態によれば、本発明は、破骨細胞活性の増強に関連する疾患を有する患者を治療するための薬剤の製造における、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの使用に関する。
【0191】
別の実施形態によれば、本発明は、炎症性疾患、より具体的には、炎症性腸疾患を有する患者を治療するための薬剤の製造における、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの使用に関する。
【0192】
別の実施形態によれば、本発明は、関節リウマチに罹患している患者を治療するための薬剤の製造における、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの使用に関する。
【0193】
本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットの投与は、当業者に公知の任意の手段によって達成し得る。好ましい投与経路としては、限定されるものではないが、皮内、皮下、経口、非経口、筋肉内、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、眼、膣および直腸がある。好ましい実施形態によれば、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットは全身送達される。
【0194】
投与は単回用量または一定時間をおいた後に1回または数回繰り返される用量で行うことができる。望ましくは、本発明の抗体、核酸配列、ベクター、医薬組成物またはパーツキットは、1週間間隔で1〜10回投与される。
【0195】
一般的な指針として、該抗体の好適な用量は約2mg/kg〜30mg/kg、0.1mg/kg〜30mg/kgまたは0.1mg/kg〜10mg/kg体重である。本発明のベクターの好適な用量は、MVAベクターでは、約10〜1010pfu(プラーク形成単位)、望ましくは約10〜10pfuで様々であり、アデノウイルス系ベクターでは、約10〜1013iu(感染単位)、望ましくは約10〜1012iuで様々である。ベクタープラスミドに基づく組成物は10μg〜20mgの間、有利には100μg〜2mgの間の用量で投与し得る。
【0196】
本発明の使用または方法が癌の治療のためである場合、本発明の方法または使用は1以上の慣例の治療法(例えば、放射線照射、化学療法および/または外科術)と組み合わせて行うことができる。複数の治療アプローチの使用は患者により広い介入基盤を提供する。一実施形態では、本発明の方法は外科的介入の前または後に行うことができる。別の実施形態では、それは放射線療法(例えば、γ線照射)の前または後に行うことができる。当業者ならば、使用可能な適当な放射線療法プロトコールおよびパラメーターを容易に処方することができる(例えば、PEREZ. Principles and practice of radiation oncology. 2nd edition. LIPPINCOTT, 1992参照)。
【図面の簡単な説明】
【0197】
図1】CSF−1RでトランスフェクションしたNIH/3T3細胞の、mAb CXIIG6による特異的染色を示す。
図2】mAb CXIIG6の存在下での、細胞表面CSF−1Rに対するCSF−1の結合の阻害を示す。
図3】mAb CXIIG6による可溶性ヒトCSF−1Rの特異的遮断を示す(「ctrl」は対照を意味し、「neg SN」は陰性対照ハイブリドーマ上清を意味する)。
図4】mAb CXIIG6の存在下での、ヒト破骨細胞分化およびマトリクスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)分泌の阻害を示す(「対照」は対照を意味し、「CXIIG6 SN」はCXIIG6ハイブリドーマ上清を意味し、「neg SN」は陰性対照ハイブリドーマ上清を意味する)。
図5】mAb CXIIG6は、CSF−1Rと相同性を有する他のチロシンキナーゼ受容体と交差反応性がないことを示す(「SN」はハイブリドーマ上清を示す)。
図6】CXIIG6重鎖の核酸配列(配列番号1)および推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す。ヌクレオチド配列に付加されているクローニングのための制限部位を含むプライマー配列を下線で示す。制限部位は下線の斜体で示す。Vドメインのアミノ酸配列は太字で強調されている。
図7】CXIIG6軽鎖の核酸配列(配列番号3)および推定アミノ酸配列(配列番号4)を示す。ヌクレオチド配列に付加されているクローニングのための制限部位を含むプライマー配列を下線で示す。制限部位は下線の斜体で示す。Vドメインのアミノ酸配列は太字で強調されている。
図8】プラスミド構築物pTG17753を示す。
図9】プラスミド構築物pTG17727を示す。
図10】プラスミド構築物pOptiVEC(商標)を示す。
図11】プラスミド構築物pTG17895を示す。
図12】プラスミド構築物pTG17812を示す。
図13】プラスミド構築物pTG17868を示す。
図14】プラスミド構築物pTG17869を示す。
図15】ヒト化CXIIG6軽鎖変異体を示す。
図16】ヒト化CXIIG6 IgG1重鎖変異体を示す。
図17】組換えマウスCXIIG6およびキメラCXIIG6 IgG1による可溶性ヒトCSF−1Rの特異的遮断を示す。
図18】組換えマウスCXIIG6およびキメラCXIIG6 IgG1の存在下での、ヒト破骨細胞分化およびマトリクスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)分泌の阻害。
図19】市販の抗CSF−1R抗体のエピトープに対して本発明のモノクローナル抗体のエピトープをマッピングするために用いたCSF−1Rの種々の構築物を示す。ヒト配列を白いバーで表し、マウス配列を網掛けバーで表す。名称に×の入った抗体は、構築物と結合しないことを示す。
図20】エピトープのマッピングに用いたCSF−1Rの種々の構築物のIg様ドメインの限界を示す。
図21】EL4−CSF−1Rに対する125I−H27K15抗体と非標識H27K15抗体の競合曲線。
図22】EL4−CSF−1Rに対する125I−H27K15抗体と種々の抗体の競合曲線。
図23】ポストインキュベーション競合曲線:CSF−1/mAb。
図24】プレインキュベーション競合曲線:mAb/CSF−1。
図25】同時インキュベーション競合曲線:mAB+CSF−1。
図26】同時インキュベーション競合曲線:mAB+CSF−1R。
図27】mAB変異体の交差反応性の欠如。
図28】可溶性CSF−1Rの遮断。3つのhCXIIG6変異体とchCXIIG6は、可溶性ヒトCD115を遮断し、M−NFS−60細胞のCSF−1依存性増殖を回復させる。結果は4反復ウェルの平均+/−SEMで表す。ND50値を、GraphPadPrism 5パラメーターロジスティック方程式を用いて計算した。
図29図29A/B/C/D:AML3細胞のCSF−1依存性増殖の阻害。図29Aでは、AML5細胞を抗ヒトCD115 mAN 3291(左のパネル)かchCXIIG6(右のパネル)のいずれかで染色した。各パネルで、左のヒストグラムは、同位元素対照(それぞれマウスIgGおよびリツキシマブ)で染色したAML5細胞に相当する。図29Bは、AML5細胞の増殖がCSF−1により用量依存的に刺激されることを示す。図29Cは、hCXIIG6変異体およびchCXIIG6がAML5細胞のCSF−1依存的増殖を阻害することを示し、3回の独立した実験からの結果を示す。図29Dは、図29Cに示される結果からGraphPad Prismにより計算したEC50およびR二乗値を含む。
図30図30A/B:EL4−CSF−R標的細胞に対するADCC活性。30Aでは、エフェクター細胞として血液ドナー番号1からのPBMCを使用して、E:T比25でのEL4−CD115標的細胞に対するH27K5、H27K15およびH19K12の細胞傷害活性を評価した。30Bでは、ドナー番号2からのPBMCを、図30Aと同様のアッセイにて、示されたE:T比で試験した。アスタリスク()はリツキシマブと比較した場合のp<0.05を示し、シータの記号(Φ)はchCXIIG6と比較した場合のp<0.05を示す。
図31図31A/B:BeWo絨毛癌腫瘍モデルにおける治療効果。
図32】配列番号37〜配列番号47の配列表。
【実施例】
【0198】
CSF−1RでトランスフェクトしたNIH/3T3細胞の、mAb CXIIG6による特異的染色
B4−800−5細胞株は、NIH/3T3細胞を、全長ヒトCSF−1Rをコードする発現プラスミドで安定的にトランスフェクトすることにより作出した。B4−800−5細胞上での細胞表面CSF−1R発現を、アイソタイプ対照と比較し、抗ヒトCSF−1R mAb 61701(マウスIgG、R&D Systems)または2−4A5−4(ラットIgG1,k、GeneTex)を用いた間接免疫染色により確認した(図1、上のパネルおよび中央のパネル)。ハイブリドーマCXIIG6または陰性対照ハイブリドーマからの培養上清をB4−800−5細胞または親NIH/3T3細胞の免疫染色に用いた(図1、下のパネル)。
【0199】
フローサイトメトリー分析によれば、ハイブリドーマCXIIG6からの培養上清は選択的にB4−800−5細胞を染色することが示され、細胞表面CSF−1Rに対するmAbの特異性が証明された。
【0200】
細胞表面CSF−1Rに対するCSF−1の結合の部分的阻害
3×10のTHP−1細胞(ヒトCSF−1R陽性単球性白血病細胞株)を、ハイブリドーマ培養上清、ナイーブまたは抗CSF−1R免疫マウスからの血清(1:1000希釈)、mAb抗CSF−1R 2−4A5−4(GeneTex)もしくは対照ラットIgG(10μg/ml)のいずれかの存在下、または試薬無しで、4℃にて30分間インキュベートした。冷PBSで2回洗浄した後、細胞を1μg/mlのビオチン化組換えヒトCSF−1とともに30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、さらに4℃にて30分間、10μg/mlストレプトアビジン−Alexa Fluor488(Invitrogen)とともにインキュベートした。PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、細胞染色をフローサイトメトリーにより分析した。
【0201】
対照サンプルと比較した場合の蛍光強度の低下は、細胞表面CSF−1Rに対するCSF−1の結合の阻害を反映する。CSF−1R免疫マウスからの血清はTHP−1細胞に対するCSF−1の結合を遮断する(図2)。陰性対照ハイブリドーマ上清または無関連のmAbは効果を示さず、ハイブリドーマCXIIG6からの培養上清は、THP−1細胞に対するCSF−1の結合を少なくとも部分的に阻害すると思われる(図2の右下のパネル)。
【0202】
mAb CXIIG6結合部位の最初の位置決定
CSF−1R上の、mAb CXIIG6の結合部位を特定するため、CSF−1Rの細胞外領域の、5つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Met1〜Glu512、R&D Systems)か、3つのみのN末端免疫グロブリン様ドメイン(Met1〜Ser290)のいずれか(双方ともC末端でヒトIgGのFc領域と融合)を含んでなる可溶型のヒトCSF−1Rを用いてウエスタンブロットを行った。ヒトIgG Fcと融合された可溶型のEGFR(R&D Systems)を陰性対照として用いた。
【0203】
各可溶性受容体100ngを未変性状態で電気泳動に付した後、ニトロセルロースシートに転写し、ハイブリドーマ上清、ウサギpAb c−fms/CSF−1R H300(Santa Cruz Biotechnology)、マウスmAb 61701(R&D Systems)またはナイーブマウスもしくはCSF−1R免疫マウスからの血清のいずれかでプロービングした。
【0204】
可溶型のCSF−1Rは双方とも、pAb c−fms/CSF−1R H300、mAb 61701または免疫マウスからの血清でブロービングした際にブロードバンドとして検出された。ナイーブマウス血清または陰性対照ハイブリドーマ上清では検出可能なシグナルは見られなかった。CXIIG6ハイブリドーマ上清はCSF−1R1−290:FcならびにCSF−1R1−512:Fcを認識したが、EGFR:Fcは認識せず、このことはCXIIG6がヒトCSF−1Rの3つのN末端免疫グロブリン様ドメイン内(残基1〜290の間)にあるエピトープと特異的に結合することを示唆する。
【0205】
mAb CXIIG6による可溶性ヒトCSF−1Rの特異的遮断
CSF−1依存性マウス骨髄性白血病M−NFS−60細胞株(番号CRL−1838、ATCC)を用いて、ヒトおよびマウスCSF−1Rに対するCXIIG6ハイブリドーマ上清の遮断活性を評価した。5ngの可溶性ヒトCSF−1R(CSF−1R1−512:Fc、R&D Systems製)を、白色96ウェルマイクロプレートにて、ハイブリドーマ上清、mAb 61701(R&D Systems)またはマウスアイソタイプ対照mAbのいずれかの希釈系とともにプレインキュベートした。次に、これらの培養ウェルに、CSF−1の不在下で一晩培養した10E4 M−NFS−60細胞を、0.1ngのヒトCSF−1とともに最終アッセイ容量100μlとして加えた。培養物を37℃で48時間インキュベートし、細胞増殖ELISA(Roche)を用い、BrdUの組み込みにより増殖を定量した。
【0206】
可溶性ヒトCSF−1Rは、陰性対照IgGを含む、または含まない陰性ハイブリドーマ上清の存在下で示される場合と同様に、ヒトCSF−1により媒介されるM−NFS−60細胞の増殖を完全に阻害した(図3;3ウェルの平均+/−SEM)。これに対し、CXIIG6ハイブリドーマ上清および陽性対照mAb 61701は双方とも、用量依存的に細胞増殖を回復させることができ、それらが可溶性ヒトCSF−1Rを中和することができたことを示す。
【0207】
このアッセイにおいて、低希釈率のCXIIG6ハイブリドーマ上清の存在下でのM−NFS−60細胞の活発な増殖は、mAb CXIIG6がM−NFS−60細胞によって発現されたマウスCSF−1Rを遮断することができなかったことを示した。さらに、可溶性CSF−1Rの不在下で行ったマウスCSF−1で補助したM−NFS−60増殖アッセイでは、mAb AFS98抗マウスCSF−1R(eBioscience)で処理すると、細胞増殖に劇的な濃度依存的低下が起こった(データは示されていない)。CXIIG6ハイブリドーマ上清は、陰性対照抗体および陰性ハイブリドーマ上清と同様に、細胞増殖の低下を引き起こさなかった。これらの結果は、mAb CXIIG6が特異的にヒトCSF−1Rを標的とすることを証明する。
【0208】
ヒト破骨細胞分化およびマトリクスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)分泌の阻害
破骨細胞は、健常な血液ドナーからのPBMCのエルトリエーションによって得られたヒト単球から作製した。簡単にいえば、単球を96ウェルプレートに2×10E4細胞/ウェルで播種し、ハイブリドーマ培養上清、mAbs抗ヒトCSF−1R 61701(R&D Systems)または2−4A5−4(GeneTex)、mAb抗ヒトCSF−1 26730(R&D Systems)、マウスもしくはラットアイソタイプ対照、またはナイーブおよびCSF−1R免疫マウスからの血清のいずれかをハイブリドーマ培養培地で希釈したもので45分間処理した。これらの培養ウェルに完全a−MEM培地をヒトCSF−1およびRANKL(PeproTech、それぞれ25および40ng/ml)とともに、または伴わずに加えた。ハイブリドーマ上清、mAbまたは/およびサイトカインを含む、もしくは含まない培地を9日間、3日ごとに補充した。9日目に馴化培養上清を採取し、ELISAアッセイ(R&D Systems)を用い、全ヒトMMP−9をアッセイした。破骨細胞の形成は、Sigma−Aldrichからの白血球酸性ホスファターゼキットを用い、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)の染色により評価した。
【0209】
CSF−1+RANKLは、単球の破骨細胞(大きな多核TRAP陽性細胞として定義される)への分化を誘導したが、サイトカインの不在下ではTRAP陽性破骨細胞は見られなかった。0.5μg/mlの抗CSF−1 mAb 26730を加えると、MMP−9分泌の欠如により示されるように、破骨細胞分化が完全に排除された。同濃度の抗CSF−1R mAb 61701または2−4A5−4および免疫マウス血清(1:1000希釈)は、破骨細胞の形成を部分的に阻害したに過ぎなかった(図4;サイトカイン有り(+)または無し(−);3ウェルの平均+/−SEM;:2ウェルの平均)。1:20または1:100希釈のCXIIG6ハイブリドーマ培養上清で処理すると、2つの陰性対照ハイブリドーマ上清(A、B)に比べ、MMP−9生産のレベルが有意に減少した。これらの結果は、mAb CXIIG6が、細胞表面CSF−1Rの機能を遮断することにより、ヒト単球から破骨細胞への分化を阻害することを証明する。
【0210】
CSF−1RのCSF−1依存性リン酸化の阻害
ヒトCSF−1Rを発現するプラスミドでNIH/3T3細胞を安定的にトランスフェクトすることにより得られたB4−800−5細胞株を用いて、CSF−1依存性CSF−1Rリン酸化に対するCXIIG6ハイブリドーマ上清の効果を検討した。細胞を2×10E5細胞/60mmペトリ皿で播種し、48〜72時間培養した。37℃で1時間血清飢餓状態にした後、細胞を37℃で1時間、CXIIG6ハイブリドーマ上清、mAb 2−4A5−4(NeoMarkers)またはアイソタイプ対照mAb(陰性ハイブリドーマ上清で希釈)のいずれかを含有する培養培地で処理し、次に、37℃で5分間、100ng/mlのhCSF−1で刺激するか、または刺激せずにおいた。次に、細胞層を溶解させ、全タンパク質を抽出した。10μgのタンパク質を、ウエスタンブロットを、ウサギpAb c−fms/CSF−1R H300またはウサギpAb p−c−fms/CSF−1R(Tyr708)−R(Santa Cruz Biotechnology)のいずれかで、その後、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンHRPでプロービングすることにより分析した。
【0211】
CSF−1の不在下では、CXIIG6ハイブリドーマ上清でもmAb 2−4A5−4でも、708番でリン酸化されたCSF−1Rに特異的な抗体で見られたような受容体のリン酸化は誘導されず、mAb CXIIG6単独では促進作用を示さないことが示された。CSF−1で刺激すると、CSF−1RはTyr708でリン酸化され、アイソタイプ対照処理細胞では非刺激細胞に比べてCSF−1Rの量が減少したが、これは受容体の分解を反映する(データは示されていない)。CXIIG6ハイブリドーマ上清またはmAb 2−4A5−4で前処理しても、CSF−1Rの消失は高まらなかった。CSF−1Rのリン酸化は、CXIIG6ハイブリドーマ上清またはmAb 2−4A5−4で処理した後に低下した。これらの結果は、mAb CXIIG6がCSF−1RのCSF−1依存性リン酸化を遮断することができることを示す。
【0212】
mAb CXIIG6の交差反応性
チロシンキナーゼ受容体のIII型サブファミリーに属し、細胞外Ig様ドメインにおいてCSF−1Rと相同性を示す一連の精製可溶性受容体:可溶性VEGFR−1、VEGFR−2、Flt−3およびPDGFRβ(4つは総てFc融合タンパク質として発現される)に対してELISAによりmAb CXIIG6の交差反応性を試験するとともに、PDGFRαおよびSCFR(c−kit)をR&D Systemsから入手し、ELISAプレートを被覆するのに用いた。チロシンキナーゼ受容体のEGFRサブファミリーからの可溶性EGFR(R&D Systems)を陰性対照として用いた。
【0213】
ハイブリドーマCXIIG6(CXIIG6 SN)または陰性対照ハイブリドーマ、または抗CSF−1RマウスIgG 61701(R&D Systems)から培養上清を、抗体濃度500ng/mlで被覆したELISAプレート上でインキュベートした。ELISAプレートを洗浄した後、結合した抗体を、ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIg(Sigma)を用いて明らかにし、OD(450−540nm)を測定した。図5に示されている結果は、mAb 61701同様、CXIIG6はCSF−1Rと強く結合したが、他のいずれのチロシンキナーゼ受容体にも特異的シグナルは検出されなかった。このことは、試験した種々のIII型チロシンキナーゼ受容体のうち、CXIIG6がCSF−1Rに特異的であることを示す。
【0214】
mAb CXIIG6用の発現ベクターの構築
DG44哺乳動物細胞株においてmAb CXIIG6を生産するために、CXIIG6重鎖および軽鎖をコードする遺伝子のクローニングにOptiCHO(商標)抗体発現キット(Invitrogen、カタログ番号12762−019)を用いた。OptiCHO(商標)抗体発現キットは、(1)CMVプロモーターの下流に目的遺伝子のクローニングを可能とする二シストロン性プラスミドpOptiVEC(商標)ベクター(目的遺伝子の転写は、内部リボソームエントリー部位(IRES)によりジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)要求性選択マーカーから隔てられ、同じmRNAで目的遺伝子と選択マーカーの転写が可能となる);(2)CMVプロモーターの下流に目的遺伝子のクローニングを可能とするpcDNA(商標)3.3ベクター(このpcDNA(商標)3.3はジェネティシン(登録商標)を用いて選択が可能なネオマイシン耐性遺伝子を含む)を含む。このpOptiVEC(商標)およびpcDNA(商標)3.3ベクターは、目的遺伝子のmRNAの3’末端の適切なプロセシングを命令するTKポリA配列を含む。
【0215】
特異的プライマー(表4参照)を合成し、全CXIIG6重鎖および軽鎖遺伝子のPCR増幅およびクローニングに用いた(それぞれ配列番号1および配列番号3;それぞれ図6および図7参照)。逆方向プライマーは効率的な真核生物の翻訳のためのKozakコンセンサス配列を含んだ(KOZAK M. An analysis of 5'-noncoding sequences from 699 vertebrate messenger RNAs. Nucleic Acids Res. 1987, 15(20):8125-8148)。
【0216】
【表4】
CXIIG6重鎖を、プラスミドpTG17753(図8)を鋳型とし、OTG18929およびOTG18930を用いてPCR増幅し、ベクターpOptiVEC(商標)−TOPO(登録商標)(pOptiVEC(商標)−TOPO(登録商標)TAクローニング(登録商標)キット、Invitrogen、カタログ番号12744−017−01)およびpcDNA(商標)3.3−TOPO(登録商標)ベクター(pcDNA(商標)3.3−TOPO(商標)TAクローニング(登録商標)キット、Invitrogen、カタログ番号K8300−01)にクローニングし、それぞれpTG17786およびpTG17789を得た。
【0217】
CXIIG6軽鎖を、プラスミドpTG17727(図9)を鋳型とし、OTG18931およびOTG18932を用いてPCR増幅し、ベクターpOptiVEC(商標)−TOPO(登録商標)(pOptiVEC(商標)−TOPO(登録商標)TAクローニング(登録商標)キット、Invitrogen、カタログ番号12744−017−01)およびpcDNA(商標)3.3−TOPO(登録商標)ベクター(pcDNA(商標)3.3−TOPO(登録商標)TAクローニング(登録商標)キット、Invitrogen、カタログ番号K8300−01)にクローニングし、それぞれpTG17788およびpTG17787を得た。
【0218】
CMVプロモーターならびにpTG17786、pTG17787、pTG17788およびpTG17789のTKポリAシグナルを含む全発現カセットのヌクレオチド配列を決定したところ、それらの理論的配列との一致が見られた。
【0219】
mAb CXIIG6からのキメラ抗体の作製
mAb CXIIG6の可変ドメインをヒト定常領域と組み合わせた。
【0220】
キメラ軽鎖(キメラCXIIG6 Igκ鎖と呼ぶ)を作製するため、CXIIG6 VKドメイン(配列番号3から)をコードする配列とヒトIGKC領域(GenBank受託番号:J00241)をコードする配列を連結することにより理論的配列を設計した。このXbal NotI DNAフラグメントは、5’末端にマウス型(上記のpTG17787およびpTG17788の場合)において用いたものと同じ非翻訳配列(Kozak配列を含む)を保持していた。このキメラCXIIG6軽鎖配列に、CHOでの発現のためにコドンの最適化を行い、合成オリゴヌクレオチドから構築し、GeneArt AGを介してpOptiVEC(商標)(図10)にサブクローニングした。得られたキメラCXIIG6軽鎖(可変領域および定常領域)の、コドンを最適化した核酸配列は配列番号34に示す通りである。得られたプラスミドをpTG17895と呼んだ(図11)。
【0221】
キメラ重鎖IgG1およびIgG4(それぞれキメラCXIIG6 IgG1鎖およびキメラCXIIG6 IgG4鎖と呼ぶ)を作製するため、CXIIG6 VHドメイン(配列番号1から)をコードする配列とヒトIGHG1C領域(GenBank受託番号:J00228)またはヒトIGHG4C領域(GenBank受託番号:K01316)のいずれかをコードする配列を連結することにより理論的配列を設計した。これらのXbaI NotI DNAフラグメントは、5’末端にマウス型(上記のpTG17787およびpTG17788の場合)において用いたものと同じ非翻訳配列(Kozak配列を含む)を保持していた。次に、キメラCXIIG6重鎖に、CHOでの発現のためにコドンの最適化を行い、合成し、GeneArt AGによりXbaI NotIを介してpTG17812(図12)にクローニングした。得られたキメラCXIIG6 IgG1重鎖(可変領域および定常領域)の、コドンを最適化した核酸配列は配列番号35に示す通りであり、得られたプラスミドをpTG17868と呼んだ(図13)。得られたキメラCXIIG6 IgG4重鎖(可変領域および定常領域)の、コドンを最適化した核酸配列は配列番号36に示す通りであり、得られたプラスミドをpTG17869と呼んだ(図14)。
【0222】
mAb CXIIG6からのヒト化抗体の作製
ヒト化軽鎖変異体を作製するため、配列番号9で示されるような軽鎖可変領域内で表2に従うアミノ酸置換を行った。
【0223】
DNA配列は、CXIIG6 VKドメイン(配列番号3から)の置換を有する改変配列とヒトIGKC領域(GenBank受託番号:J00241)をコードする配列を連結することにより設計した。このXbaI NotI DNAフラグメントは、5’末端にマウス型(上記のpTG17787およびpTG17788の場合)において用いたものと同じ非翻訳配列(Kozak配列を含む)を保持していた。次に、このヒト化CXIIG6軽鎖配列を、CHOでの発現のためにコドンを最適化し、合成オリゴヌクレオチドから構築し、GeneArt AGによりXbaI NotIを介してpOptiVEC(商標)(図10)にクローニングした。得られたヒト化CXIIG6軽鎖変異体およびプラスミドを図15に一覧化する。
【0224】
ヒト化重鎖変異体を作製するため、配列番号6で示されるような重鎖可変領域内で表1に従うアミノ酸置換を行った。
【0225】
DNA配列は、CXIIG6 VHドメイン(配列番号1から)の置換を有する改変配列とヒトIGHG1C領域(GenBank受託番号:J00228)をコードする配列を連結することにより設計した。このXbaI ApaI DNAフラグメントは、5’末端にマウス型(上記のpTG17786およびpTG17789の場合)において用いたものと同じ非翻訳配列(Kozak配列を含む)を保持していた。次に、このDNA配列を、CHOでの発現のためにコドンを最適化し、合成し、GeneArt AGによりXbaI ApaIを介してpTG17812(図12)にクローニングした。得られたヒト化CXIIG6 IgG1重鎖変異体およびプラスミドを図16に一覧化する。
【0226】
組換えマウスCXIIG6およびキメラCXIIG6 IgG1のin vitro阻害活性
精製組換えマウスCXIIG6(従前に記載の通り)およびそのキメラIgG1変異体(従前に記載されているようなキメラCXIIG6 IgG1)が可溶性ヒトCSF−1Rを遮断することができたかどうかを判定するため、M−NFS−60細胞増殖および破骨細胞分化モデル(従前に記載の通り)で用量応答試験を行った。Rockland(Rockland,010−0141)からの精製ポリクローナルマウスIgG2aおよび本出願者が作製したキメラIgG1を対照抗体として並行して試験した。細胞を、SPRバイオセンサーアッセイにおいて抗原結合により測定される、ある濃度範囲の活性抗CSF−1R抗体に曝すことにより遮断効果を評価した。mAb CXIIG6とそれらの個々の対照mAbとの比較は、同量の全抗体をロードすることによって行った(Fc結合によるSPRバイオセンサーアッセイ)。
【0227】
M−NFS−60バイオアッセイ:M−NFS−60バイオアッセイでは、細胞を、50ng/mlのヒト可溶性CSF−1Rおよび1ng/mlのヒトCSF−1の存在下、0.23ng/ml〜0.5μg/mlの活性mAb CXIIG6(組換えマウスCXIIG6;キメラCXIIG6 IgG1)または相当濃度の対照mAbで48時間処理した。図17に示される結果は、M−NFS−60細胞の増殖が、両mAb CXIIG6(組換えマウスCXIIG6;キメラCXIIG6 IgG1)の濃度の上昇に応答して増大したことを示し、それらが可溶性CSF−1RとCSF−1の結合(3ウェルの平均+/−SEM)に拮抗作用を示すことを証明する。キメラCXIIG6 IgG1は、細胞増殖の回復において組換えマウスCXIIG6と同等の効果があった。対照マウスIgG2aおよびキメラIgG1は、それらそれぞれの濃度範囲で、可溶性CSF−1RによるCSF−1の中和に効果が無かった。これらの結果は、精製組換えマウスCXIIG6およびキメラCXIIG6 IgG1が可溶性ヒトCSF−1Rを阻害することを示す。
【0228】
破骨細胞バイオアッセイ:破骨細胞バイオアッセイでは、エルトリエーションしたヒト単球を、25ng/mlのCSF−1(ImmunoTools)および40ng/mlのRANKLの存在下、0.85ng/ml〜0.62μg/mlの活性mAb CXIIG6(組換えマウスCXIIG6;キメラCXIIG6 IgG1)とともに8日間インキュベートした。培地および総ての添加薬剤を4日目と6日目に補充し、6〜8日間馴化した培養培地にて全MMP−9を測定した。図18に示されている結果は、対照抗体と比較して、組換えマウスCXIIG6およびそのキメラ変異体(キメラCXIIG6 IgG1)がそれぞれ、破骨細胞分化と並行するMMP−9生産を有意に低下させたことを示し、増殖の遅延が起こったことを示唆している(図18;3ウェルの平均+/−SEM)。
【0229】
これらの結果はさらに、精製組換えマウスCXIIG6およびキメラCXIIG6 IgG1が細胞表面CSF−1Rの機能を阻害することを示す。
【0230】
本発明の抗体と市販の抗体とのエピトープマッピング
これらの実験は、本発明の抗体のエピトープの位置を決定するため、より詳しくは、本発明の抗体が市販のいくつかの抗CSF−1R抗体と同じエピトープと結合するか異なるエピトープと結合するかを判定するために設計されたものである。
【0231】
本発明のキメラCXIIG6(chCXIIG6)、mAb 3291(マウスIgG1、クローン61701、R&D Systems MAB3291)およびmAb JF14(マウスIgG1、Santa Cruz sc−80174)はヒトCSF−1Rに結合するが、マウスCSF−1Rには結合しない。モノクローナル抗体3291およびJF14は、ヒトCSF−1RのN末端部分に対して作製されたものであったことから選択された。CSF−1R上にmAb結合部位をマッピングするために、ヒトCSF−1Rの末端切断型突然変異体およびヒトとマウスD1−D3 CSF−1R間のキメラをヒスチジンタグと融合させたものを構築物した(詳細は図19および20参照)。これらの構築物を、CHO細胞を用い、分泌タンパク質として発現させた。構築物の発現は、検出に抗Hisタグ抗体を用いる免疫ブロット分析により確認した。抗Hisタグ抗体をコーティングしたウェル中でCHO培養上清をインキュベートすることにより、総ての構築物をELISAプレートに補足した。抗体を、ビオチン−NHS(Sigma ref B3295−10MG)を用いてビオチン化した。ビオチン化抗体を各ウェルに加え、ストレプトアビジン−HRPで結合を検出した。ビオチン化リツキシマブ(Du et al., 2007, J. Biol. Chem. 282 (20), 15073-15080, NCBI Access Numbers 2OSL_H & 2OSL_L)を陰性アイソタイプ対照として用いた(CSF−1Rと結合しない)。結果を表19にまとめる。
【0232】
結果:予測されたように、リツキシマブは供試したいずれの構築物にも結合しない。キメラCXIIG6、mAb 3291およびmAb JF14は、ヒトCSF−1Rの単離されたドメイン1(D1)に結合することができる(構築物pTG18038;図19)。さらに、ヒトD1をマウスD1で置換すると、これら3つのmAbの結合が完全に無効となる(構築物pTG18003参照;図19)。構築物pTG18015およびpTG18000をヒトおよびマウスD1サブドメインと組み合わせて用いて得られた結果は、mAb 3291およびJF14の結合はヒトCSF−1R D1ドメインのN末端と中央部分の双方を必要とし、本発明のモノクローナル抗体の結合はヒトドメインD1のN末端部分のみを必要とすることを示す(構築物pTG18016参照;図19)。
【0233】
これらのデータは、本発明のモノクローナル抗体のエピトープが、モノクローナル抗体3291およびJF14とは異なるエピトープ上でヒトCSF−1Rと結合することを示す。興味深いことに、ヒトおよびマウスCSF−1RのN末端はI20A、V27G、K33EおよびA36E(最初のメチオニンが残基1である)の4残基だけが異なる。
【0234】
モノクローナル抗体H19K12、H27K5およびH27K1
ヒトCSF−1R機能に対して遮断活性を有するマウスIgG2aを産生するハイブリドーマCXIIG6の作製は上記に記載されている。CXIIG6 IgG2aの重鎖および軽鎖をクローニングし、配列を決定した(図6および7参照)。mAb CXIIG6の可変ドメインVHおよびVLとヒトIgG定常領域を組み合わせてモノクローナル抗体のキメラ型(chCXIIG6)を構築した(上記参照)。ヒト抗体配列との相同性を高め、モノクローナル抗体の潜在的免疫原性を減じるために、VHおよびVLドメイン中に突然変異を導入することにより、ヒト化変異体を作製した(図15および16参照)。
【0235】
262型の本発明のヒト化モノクローナル抗体をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で一時的に発現させ、それらのCSF−1R結合能を試験した。この第1のスクリーニングのうち、31のヒト化CXIIG6変異体(hCXIIG6)を、(i)ヒトCSF−1Rに対する親和性、(ii)ヒト生殖細胞系配列とのより高い相同性(好ましくは、前記相同性は少なくとも76%、より好ましくは少なくとも85%である)および(iii)最小のin silico免疫原性に基づいて選択した。水晶発振子マイクロバランス(Attana)技術を用いた親和性試験は、選択された総てのhCXIIG6変異体が組換えヒトCSF−1Rに対して親mAb chCXIIG6と同等の、10−9〜10−10Mの範囲の親和性を有することを示した。30のヒト化変異体のうちCSF−1Rに対する高い親和性、最大のヒト相同性および最小のin silico免疫原性を特徴とする3つがさらなる検討のために選択された:H19K12、H27K5およびH27K15。
【0236】
本発明のモノクローナル抗体H27K15の生化学的特徴
A - H27K15抗体のヨウ素−125による放射性標識
材料
本発明のモノクローナル抗体H27K15は、2.1mg/mL濃度の水溶液(PBS pH7.5)として提供した。
【0237】
ヨウ素−125放射性核種をPerkin Elmerから10−5N水酸化ナトリウム中のヨウ化ナトリウムとして購入した(比活性:643.8GBq/mg−放射性核種純度:99.95%)。
【0238】
クロラミン−T(N−クロロ−p−トルエンスルホンアミド、PM:227.6g.mol−1)、メタ重亜硫酸ナトリウム(PM=190.1g.mol−1)、ウシ血清アルブミン(BSA)およびトリクロロ酢酸はSigmaから購入した。
【0239】
リン酸緩衝生理食塩水0.1M、pH7.2は、本発明者らの研究室で調製した。
【0240】
方法
100μgの抗体に、1.2mCiのNa125I溶液(44.4MBq)および7.6μLの新しく調製したクロラミン−T溶液(リン酸バッファー中1mg/mL)を加えた。室温で2分後に、12.7μLのメタ重亜硫酸ナトリウム(リン酸バッファー中1mg/mL)を加えることにより反応を停止させた。
【0241】
組み込まれなかったヨウ素−125を、溶出バッファー(リン酸バッファー0.1M pH7.2/0.5%BSA)で予め飽和させたSephadex G−25カラム(PD−10、Pharmacia)でのゲル濾過により除去した。このカラムを0.5mLの40のアリコートとして溶出させた。各画分の放射活性をヨウ素−125放射性核種に関して較正された自動ガンマカウンター(ヨウ素−125放射性核種較正済みのWallace Wizard 2470自動ガンマカウンター−Perkin Elmer)で測定し、目的の放射性ヨウ化産物を含有する画分をプールした。
【0242】
放射性標識化合物の放射化学的純度は、Gelman Sciencesプレコートシリカゲルプレートにて、10%TCAを溶離剤として用いて行うITLC分析により評価した。
【0243】
結果および放射性標識抗体溶液の特徴
精製前に、ITLCで決定された放射化学的収量は97.8%であった。
【0244】
放射性標識抗体溶液の特徴を以下にまとめる。
【0245】
【表5】
【0246】
放射性標識抗体の純度および完全性を還元条件および非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により評価した。10〜250kDaの10の分子量マーカーからなる広域分子量標準(Biorad Laboratories)を用いてゲルを較正した。ゲルをクーマシーブルーで染色した。第2段階で、ゲルを乾燥させ、PhosphorImager 445 SI(Amersham Biosciences)を用い、オートラジオグラフィー用スクリーンに露光した。データ解析にはImageJソフトウエア(Molecular Dynamics)を用いた。
【0247】
クーマシーブルー染色後とオートラジオグラフィーの後に得られた電気泳動プロフィールは同じである。非還元条件下では、150kDaに完全なIgG分子に相当する1つの主要バンドが見られた。還元条件下では、それぞれ抗体の重鎖および軽鎖に相当する50kDaおよび25kDaのバンドが検出された。これらの電気泳動結果から、クロラミン−T法は抗体の完全性に影響を及ぼさないことが確認される。
【0248】
B - EL4−CSF−1R細胞に対する放射性標識H27K15抗体の結合アッセイ
b1 125I−H27K15の親和性結合の測定
結合親和性の尺度として平衡解離定数(KD)を用いた。125I−H27K15抗体のKDは、一定数の細胞に漸増濃度の放射性標識抗体を加える飽和アッセイにより測定した。
【0249】
材料
0.5%BSAを含有するPBS中の放射性標識抗体の溶液
【表6】
【0250】
100倍モル過剰の非標識抗体を含む放射性標識抗体の溶液(非特異的結合):45μg/mLの非標識抗体および0.45μg/mLの放射性標識抗体を含有する溶液を調製した後、PBS/BSA0.5%で4倍希釈系を作製した。
【0251】
細胞:0.5%BSAを含有するPBS中、40×10細胞/mLのEL4−CSF−1R細胞懸濁液を調製した。
【0252】
方法
EL4−CSF−1R細胞を、最終容量150μL中、漸増濃度の放射性標識抗体とともに、振盪しながら氷上で1時間インキュベートした(50μL PBS/BSA0.5%中2×10細胞)。
【0253】
非特異的結合は、過剰量の非標識抗体(100倍モーラー過剰)を同時にインキュベートすることにより測定した。
【0254】
インキュベーション後、反応混合物を、200μLのジブチルフタレートオイルクッション上にのせ、マイクロ遠心管内にて12000rpmで3分間遠心分離した。遠心管を液体窒素中で凍結させ、ヨウ素−125放射性核種較正済みのWallace Wizard 2470自動ガンマカウンター(効率:63%)を用いた放射活性の測定のために、細胞ペレットを含有する遠心管の先端を切り取った。
【0255】
非特異的結合は、100倍モーラー過剰の非標識抗体を含有する、4点濃度の放射性標識抗体の結合放射活性を測定することにより決定した。結合画分と遊離画分をプロットしたグラフを作成し、直線の傾きを求めるために線形回帰を用いた。特異的結合は、過剰量の非標識抗体の不在下で見られた結合(総結合)から過剰量の非標識抗体の存在下で見られた結合(非特異的結合)を差し引いたものと定義される。
【0256】
結果
EL4−CSF−1R細胞に対するヒト化125I−H27K15抗体の親和性定数および細胞当たりの最大結合部位はPrismソフトウエアにより求めた。
【0257】
EL4−CSF−1R細胞に対する125I−H27K15抗体の結合特性を以下にまとめる。
【0258】
【表7】
【0259】
b2 非標識H27K15の阻害定数の測定
この試験の目的は、免疫反応性のある放射性標識抗体の親和性が非標識抗体と同じかどうかを調べることであった。一定の濃度の放射性標識抗体と非標識抗体の連続希釈系を用いて放射性標識解離結合アッセイを行った。
【0260】
材料
【表8】
【0261】
非標識抗体の溶液:450nM(67.5μg/mL)の溶液を調製した後、PBS/BSA0.5%で2.5倍希釈系を作製した。濃度範囲:450nM〜7.56pM。
【0262】
細胞:0.5%BSAを含有するPBS中、40×10細胞/mLのEL4−CSF−1R細胞懸濁液を調製した。
【0263】
方法:細胞を、非標識抗体の不在下(総結合:対照ウェル)および50μL中、様々な濃度(上述)の非標識抗体の存在下で、1.5nM放射性標識抗体50μLとともに、振盪しながら氷上で1時間インキュベートした(50μL PBS/BSA0.5%中、2×10細胞)。
【0264】
インキュベーション後、反応混合物を、200μLのジブチルフタレートオイルクッション上にのせ、マイクロ遠心管内にて12000rpmで3分間遠心分離した。遠心管を液体窒素中で凍結させ、ガンマカウンターを用いた放射活性の測定のために、細胞ペレットを含有する遠心管の先端を切り取った。
【0265】
放射性標識抗体の相対的結合のパーセンテージは下記のように計算した。
【数1】
(対照ウェルは、非標識抗体が存在しないウェルである)
【0266】
結果
これらの結合データを図21に示す。
【0267】
競合曲線から得られるIC50値はPrismソフトウエアにより決定し、チェン・プルソフ(Cheng-Prusoff)式(Biochem. Pharmacol., 22, 3099-3108, 1973):
【数2】
([L]は、アッセイに用いた放射性標識抗体の濃度であり、
IC50は、放射性標識抗体の50%阻害を達成するのに必要な非標識抗体の濃度である)
を用いて絶対阻害定数Kiに変換した。
IC50値および阻害定数を以下にまとめる。
【0268】
【表9】
b3 125I−H27K15と種々の抗体の間の競合試験
【0269】
材料
0.5%BSAを含有するPBS中、放射性標識H27K15抗体の溶液:上記の通り
非標識抗体の溶液
種々の抗体を次のように表で示す。
【0270】
【表10】
【0271】
各抗体について、450nMの溶液(67.5μg/mL)を調製した後、PBS/BSA0.5%で2.5倍希釈系を作製した。濃度範囲:450nM〜7.56pM。
【0272】
細胞:0.5%BSAを含有するPBS中、40×10細胞/mLのEL4−CSF−1R細胞懸濁液を調製した。
【0273】
方法
細胞を、非標識競合物の不在下(総結合:対照ウェル)および50μL中、様々な濃度(上述)の非標識競合物の存在下で、1.5nM 125I−H27K15抗体50μLとともに、振盪しながら氷上で1時間インキュベートした(50μL PBS/BSA0.5%中、2×10細胞)。
【0274】
インキュベーション後、反応混合物を、200μLのジブチルフタレートオイルクッション上にのせ、マイクロ遠心管内にて12000rpmで3分間遠心分離した。遠心管を液体窒素中で凍結させ、ガンマカウンターを用いた放射活性の測定のために、細胞ペレットを含有する遠心管の先端を切り取った。
【0275】
放射性標識抗体の相対的結合のパーセンテージは下記のように計算した。
【数3】
(対照ウェルは、競合物の存在しないウェルである)
【0276】
結果
これらの結合データを図22に示す。
【0277】
競合曲線から得られるIC50値はPrismソフトウエアにより決定し、チェン・プルソフ式:
【数4】
([L]は、アッセイに用いた125I−H27K15抗体の濃度であり、
IC50は、125I−H27K15抗体の50%阻害を達成するのに必要な競合物の濃度であり、
は、125I−H27K15抗体の親和性定数である)
を用いて絶対阻害定数Kiに変換した。
【0278】
各競合物について、IC50値およびKi定数を以下にまとめる。
【0279】
【表11】
【0280】
本発明のモノクローナル抗体(H27K15、chCXIIG6、H19K12およびH27K5)の親和性は、0.5〜0.8nMで全く同等のKi値である。
【0281】
市販のモノクローナル抗体3291およびJF14のKi値は1nMより高い。結論として、これらの抗体は、CSF−1R抗原に対して、本発明のモノクローナル抗体よりも低い親和性を有する。
【0282】
C - D1−D5 ヒトCSF−1Rに対するヒトCSF−1の競合的結合アッセイ
CSF−1(1−444)を、ビオチン−NHS(Sigma ref. B3295−10MG)を用いてビオチン化した。ビオチン化CSF−1(0.012μg/mlを100μl/ウェル)を、FC−D1−D5 ヒトCSF−1R(1μg/mLを100μL/ウェル)(R&D systems ref. 329−MR−100)をコーティングしたウェルに加え、結合した分子を、ストレプトアビジン−HRPを用いて検出した。競合実験のために、漸増量のモノクローナル抗体(0.030μg/ml〜200μg/mlを100μl/ウェル)をビオチン化CSF−1とプレインキュベート、同時インキュベートまたはポストインキュベートした。
【0283】
本発明者らは、その受容体との結合に関してCSF−1と競合することが知られていてことから、陽性対照として市販のモノクローナル抗体3291(R&D Systems ref. MAB3291)、本発明の1つのモノクローナル抗体H27K15、モノクローナル抗体X(WO2009/026303)、および陰性対照としてリツキシマブを試験した。
【0284】
プレインキュベーションの場合には、モノクローナル抗体を、ビオチン化CSF−1を加える1時間前に、コーティングされたヒトCSF−1Rとともにインキュベートした。
【0285】
ポストインキュベーションの場合には、ビオチン化CSF−1を、モノクローナル抗体を加える1時間前に、コーティングされたヒトCSF−1Rとともにインキュベートした。
【0286】
同時インキュベーションの場合には、ビオチン化CSF−1とモノクローナル抗体を、コーティングされたヒトCSF−1Rとともにインキュベートした。
【0287】
結果:3291抗体とH27K15抗体は双方とも、CSF−1と同じ結合部位に結合することが知られる陽性対照抗体Xにより認識されるもの(すなわち、Ig様ドメイン2〜3)とは異なるエピトープ(すなわち、Ig様ドメイン1)を認識することがこれまでに示された(上記参照)。ここで、本発明者らは、陽性対照とは対照的に、3291抗体およびH27K15抗体の双方が、抗体用量が高くても(すなわち、IC50の約100倍)、CSF−1結合の部分的競合物であることを示す。総ての状況で(プレインキュベーション、同時インキュベーションまたはポストインキュベーション)、飽和用量において、H27K15は、CSF−1Rに対するCSF−1の結合をおよそ10〜20%低下させることができる(図23、24および25参照)が、抗体3291は、同じ結合を実験状況に応じておよそ30〜40%低下させることができる。
【0288】
従って、本発明のモノクローナルは、その受容体CSF−1Rに対するCSF1の結合を部分的に妨げることができる。
【0289】
このことを以下の実験で確認した。
【0290】
ELISAマイクロプレートを、0.1μg(すなわち、1μg/mlを100μL)のヒトCSF1 1−444(Geneart−配列番号47、図32参照)でコーティングした。0.125μg/mLのFc−D1−D5 ヒトCSF−1(R&D systems ref 329−MR−100)100μLを、漸増濃度の抗体下で同時インキュベートした。CSF1に結合したFc−D1−D5 ヒトCSF−1Rを、抗IgG−Fc−ヒト−HRP(Bethyl A80−204P)を用いて検出した。検出に用いた抗体はヒトFcに結合することから、抗体H27K15の代わりにマウス抗体CXIIG6を競合に用いた。競合物mAb X(WO2009/026303)は、ヒトCSF−1と同じ部位でヒトCSF−1Rと結合することが知られていることから、陽性対照として用いた。ラットIgG2aを陰性対照として用いた(hCD115と結合しない無関係のアイソタイプ抗体)。
【0291】
結果:WO2009/026303に示されているmAb Xは、競合抗体に関して予測されるようにFc−D1−D5 ヒトCSF−1Rに対するCSF1(1−444)の結合を全面的に阻害する。3291およびmCXIIG6の双方は、抗体用量が高くても(すなわち、100μg/mL)、CSF1に対するFc−D1−D5 ヒトCSF−1Rの結合を部分的に低下させるに過ぎない。mCXIIG6および3291はFc−hCD115に対するCSF1の結合をそれぞれおよそ5〜10%および10〜20%低下させる(図26参照)。これらの結果は、Fc−D1−D5 ヒトCSF−1Rに対するCSF1の結合の、H27K15またはmAb 3291による部分的阻害を示す上記の結果と一致している。
【0292】
図26は、ヒトCSF1に対する組換えヒトFc−ヒトD1−D5 CD115の結合の、種々のmAbによる部分的低下を示す(同時インキュベーション実験)。ヒトCSF1 (0.1μg/mL)を96ウェルプレートにコーティングし、組換えFc−D1−D5 ヒトCSF−1R(0.125μg/mL)と漸増濃度のmAbの混合物(同時インキュベーション実験)で1時間45分インキュベートした。hCSF−1に結合するCD115は、HRPとコンジュゲートした抗ヒトFc−IgGを用いて検出した。
【0293】
D - 125I−H27K15と、CSF−1R受容体の1つの天然リガンドとして知られるIL−34との間の競合試験
材料
0.5%BSA 125I−H27K15を含有するPBS中、放射性標識抗体の溶液(上記の通り)。
【0294】
リガンドの溶液:組換えヒトIL−34(26.1kDa)は、R&D Systemsから0.422mg/mLの濃度で購入した。450nM溶液を調製した後、PBS/BSA0.5%で2.5倍希釈系を作製した。濃度範囲:450nM〜7.56pM。
【0295】
細胞:0.5%BSAを含有するPBS中、40×10細胞/mLのEL4−CSF−1R細胞懸濁液を調製した。
【0296】
方法
天然リガンドを用いたこの競合試験では2つの異なるプロトコールを実施した。
【0297】
第1のプロトコールでは、細胞を、非標識競合物の不在下(総結合:対照ウェル)および50μL中、様々な濃度(上述)の非標識競合物の存在下で、1.5nM 125I−H27K15抗体50μLとともに、振盪しながら氷上で1時間インキュベートした(50μL PBS/BSA0.5%中、2×10)。
【0298】
第2のプロトコールは、放射性標識H27K15抗体の添加前に氷上で30分間、漸増濃度のリガンドとともにEL4−CSF−1R細胞をインキュベートするというものであった。その後、振盪しながら氷上で1時間、2回目のインキュベーションも行った。
【0299】
これら2種類の実験では、反応混合物を、200μLのジブチルフタレートオイルクッション上にのせ、マイクロ遠心管内にて12000rpmで3分間遠心分離した。遠心管を液体窒素中で凍結させ、ガンマカウンターを用いた放射活性の測定のために、細胞ペレットを含有する遠心管の先端を切り取った。
【0300】
放射性標識抗体の相対的結合のパーセンテージは下記のように計算した。
【数5】
(対照ウェルは、競合物の存在しないウェルである)
【0301】
結果125I−H27K15抗体結合の解離は見られなかった。結論として、H27K15抗体およびIL−34リガンドは、CSF−1R抗原の異なるエピトープを認識する。
【0302】
さらに、125I−IL−34とヒト化H27K15抗体との間の競合結合試験を行ったところ、125I−IL−34結合は、H27K15抗体の濃度を上昇させても解離せず、本明細書において、本発明の抗体はCSF−1R受容体との結合に関してIL−34と競合しないことを示す。
【0303】
hCXIIG6変異体H27K5、H27K15およびH19K12の生物学的特徴
A.モノクローナル抗体の発現および精製
キメラCXIIG6、hCXIIG6変異体H19K12、H27K5、H27K15およびリツキシマブを、接着性CHO−K1もしくはCHO−DG44細胞の一時的トランスフェクションか、または安定なCHO−DG44トランスフェクタントのポリクローナルプールのいずれかにより発現させた。
【0304】
B.他のチロシンキナーゼ受容体の中でもCSF−1Rに対するH27K5、H27K15およびH19K12の特異性
方法
マイクロタイタープレート(Maxisorp、Nunc)を、各ウェル当たり300ngの、R&D Systemsか購入した下記可溶性受容体:CSF−1R20−512−F(カタログ番号329−MR/CF)、(EGFR)2−Fc−6xhis(カタログ番号1129−ER)、Flt−3−Fc−6xhis(カタログ番号368−ST/CF)、PDGFRβ−Fc−6xhis(カタログ番号385−PR/CF)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)2−Fc−6xhis(カタログ番号357−KD/CF)、VEGFR1−Fc−6xhis(カタログ番号321−FL−050)、ヒトSCFR(カタログ番号332−SR/CF)およびPDGFRαECD(カタログ番号322−PR/CF)でコーティングした。50μlのH27K5、H27K15、H19K12 mAbまたはリツキシマブ(PBS中500ng/ml)のいずれかをウェルに加え、プレートを37℃で1時間インキュベートした。ウェルの効率的なコーティングを制御するため、受容体−ヒトFc融合タンパク質Flt−3−Fc−、PDGFRβ−Fc、VEGFR2−Fc、VEGFR1−Fcをコーティングしたウェルとともに抗ヒトIgG(ヤギ抗ヒトIgG、Sigmaカタログ番号I3382)もインキュベートし、PDGFRα−およびSCFRコーティングウェルは、それぞれ抗PDGF−Rα(マウスIgG1、R&Dsystemsカタログ番号MAB322)および抗SCF−RヤギIgG(R&DSystemsカタログ番号AF332)とともにインキュベートした。抗体結合は、ヒトIgκ軽鎖(Bethyl Laboratories、カタログ番号A80−115P)、ヤギIgG(Santa Cruzカタログ番号sc2033)またはマウスIg(Sigmaカタログ番号A0412)のいずれかに対するセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートAbで検出した。テトラメチルベンジジン(Sigma、カタログ番号T8665)(0.05M酢酸ナトリウム、0.05Mクエン酸、H 1/7000中、0.1mg/ml)で可視化した後、分光光度計(Berthold、Tristar LB941)を用いて450nmで吸光度を測定し、540nmでの吸光度を差し引くことにより補正した。
【0305】
結果
chCXIIG6と同様に、これらのヒト化変異体の中に他の受容体ECDのいずれかと免疫反応性を示したものはなかったが、それらは不死化CSF−1R ECDとは強く結合した(図27)。この結果は、ヒト化が他のチロシンキナーゼ受容体の中でもCSF−1Rに対するmAb H19K12、H27K5およびH27K15の特異性を変化させなかったことを示す。
【0306】
C.hCXIIG6変異体のCSF−1R遮断活性
C.1 M−NFS−60細胞増殖アッセイで試験した可溶性CSF−1R−Fcの遮断
方法
M−NFS−60細胞を、CSF−1を含まない完全RPMI−1640培地で2回洗浄し、CSF−1欠乏とするために同じ培地中で一晩インキュベートした。可溶性ヒトCSF−1Rの中和に関してアッセイするために、5ngのヒトCSF−1R20−512−Fcを、完全RPMI−1640培地中、抗体(H27K5、H27K15、H19K12 mAb、chCXIIG6またはリツキシマブ)の連続希釈液の入った白色96ウェルマイクロプレート(ViewPlateTM−96、Packard)中で30分間インキュベートした。次に、これらの培養ウェルに、104個のCSF−1欠乏細胞を、0.1ngのヒトCSF−1とともに最終アッセイ容量100μlで加えた。細胞を37℃で48時間インキュベートし、Rocheからの細胞増殖ELISA(カタログ番号11647223001)を製造者のプロトコールに従って用いて、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)の組み込みを2時間行った後に増殖を定量した。ODを分光光度計(Berthold Tristar LB941)で測定した。
【0307】
結果
マウス骨髄性白血病細胞株M−NFS−60はその増殖がCSF−1に依存し、マウスmAb CXIIG6CSF−1R遮断活性を証明するためにこれまでに使用されてきた。このアッセイでは、M−NFS−60細胞をヒトCSF−1およびヒト可溶性ホモ二量体ジスルフィド結合CSF−1R20−512−Fcとともに培養する。可溶性CSF−1RによるCSF−1の捕捉が細胞増殖の阻害をもたらす。ヒトCSF−1Rを中和する抗体を加えると、可溶性CSF−1RによるCSF−1の捕捉が妨げられ、細胞増殖が回復する。陰性対照リツキシマブの存在下では、可溶性CSF−1Rは、CSF−1により媒介されるM−NFS−60細胞の増殖を完全に阻害した(図28)。H19K12、H27K5およびH27K15は、chCXIIG6と同様に、可溶性CSF−1R20−512−Fcの用量依存的中和をもたらし、細胞増殖を回復させた。GraphPad Prismソフトウエアで5パラメーターロジスティック方程式を用いて計算したND50(最大CSF−1R遮断効果の50%を与える中和用量)は、供試した3つのhCXIIG6変異体で同等であり(それぞれH19K12、H27K5およびH27K15に関して29.8、30.7および29.1ng/ml)、親mAb chCXIIG6(18.1ng/ml)のND50と有意に異なるとは思われなかった。
【0308】
C.2 AML5細胞アッセイで試験した細胞表面CSF−1Rの遮断
方法
AML5細胞の免疫細胞化学およびフローサイトメトリー分析
AML5細胞(OCI−AML5、DSMZカタログ番号ACC−247)を免疫細胞化学およびフローサイトメトリーにより分析した。5×10細胞を100μlのPBS中、抗ヒトCSF−1R mAb 3291(マウスIgG1、クローン61701、10μg/ml)(R&D Systemsカタログ番号MAB3291)、マウスIgG1アイソタイプ対照(R&D Systemsカタログ番号MAB002、10μg/ml)、chCXIIG6(10μg/ml)またはリツキシマブのいずれかとともに氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を氷上で30〜45分間、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗マウスIg(BD Pharmingenカタログ番号550589)またはフルオレセインイソチオシアネートコンジュゲート抗ヒトIgG F(ab’)2(Milliporeカタログ番号AQ112F)のいずれかで標識した。
【0309】
AML5細胞増殖に対するCSF−1の効果
AML5細胞を、平底(実験1および2、TPPカタログ番号92096)または丸底(実験3、Falconカタログ番号3077)いずれかの96ウェルプレートにて、2.5 E4細胞/100μl/ウェルで播種した。各ウェルに、ヒトCSF−1を含有する100μlの培地を加えた。細胞を48時間培養し、Rocheからの細胞増殖ELISA(カタログ番号11647223001)を製造者のプロトコールに従って用いて、BrdUの組み込みを4時間行った後にそれらの増殖を測定した。ODは分光光度計(Berthold、Tristar LB941)で測定した。4反復ウェルから平均OD+/−semを計算し、GraphPad Prismを用いてlog[CSF−1](ng/ml)に対してプロットし、3パラメーター方程式を用いて非線形回帰曲の当てはめを行った。
【0310】
AML5細胞増殖に対するhCXIIG6変異体の効果
細胞を培養し、上記のように96ウェルプレートに播種した。段階的量のchCXIIG6、H27K15、H27K5、H19K12または陰性対照リツキシマブを50μl培地中に加えた。37℃で30分のインキュベーションの後、40ng/ml hCSF−1を含有する50μlの培地を各ウェルに加えた。各実験は、それぞれ各2反復のmAb濃度を含んでなる4つの同じ96ウェルプレートで行った。細胞を48時間培養し、上記のようにBrdUの組み込みを4時間行った後に、それらの増殖を測定した。各プレートからの結果をまずGraphPad Prismを用いて分析し、5パラメーター方程式を用いて非線形回帰曲線の当てはめを行った。4つの供試mAbのうち少なくとも3つに関してGraphPad Prismに当てはまる結果を示すプレートを平均+/−semの計算のために選択した。このようにして、実験1および2は4つのプレートのうち2つからの結果に基づいて分析し(平均は4反復のOD値から計算)、実験3は4つのプレートのうち3つからの結果に基づいて分析した(平均は6つのOD値から計算)。EC50およびR二乗は、各供試mAbについてGraphPad Prismにより計算した。
【0311】
結果
コロニー刺激因子−1は、ヒト急性骨髄性白血病細胞株OCI−AML5(AML5)の増殖を刺激することが報告されている(Drexler HG, Zaborski M, Quentmeier H., 2007. Cytokine response profile of human myeloid factor-dependent leukaemia cell lines. Leukemia 11:701-8)。AML5細胞を免疫細胞化学およびフローサイトメトリーにより分析した。市販の抗hCSF−1R マウスIgG1 3291での染色(マウスIgG1アイソタイプ対照と比較)およびchCXIIG6での染色(リツキシマブと比較)は陽性であり、AML5細胞が表面CSF−1Rを発現したことを示す(図29A)。
【0312】
CSF−1R遮断の効果を研究するためのモデルを設定するために、まず、AML5細胞増殖に用量依存的増加を誘導したことを確認することが必要であった。図28Bは、 AML5は外因性CSF−1の不在下で増殖可能であるが、培養培地に増殖因子を添加すると細胞増殖が用量依存的に高まることを示す。従って、AML5細胞は、それらの増殖のためにCSF−1に厳格に依存するわけではないが、CSF−1反応性である。
【0313】
次に、最大に近い増殖を誘導する濃度である10ng/mlのCSF−1で培養したAML5細胞に対するhCXIIG6変異体およびchCXIIG6の効果を試験した(図29B)。図29Cは、3回の独立した実験からの結果を示す。ヒト化変異体H27K5、H27K15およびH19K12ならびにchCXIIG6は、AML5細胞増殖に用量依存的低下を誘導した。実験間で変動が見られ、変動は、特に実験1では(図29D)、各mAbのEC50の違いとGraphPad Prismを用いて計算されたどちらかといえば低いR二乗により反映される。従って、このアッセイでは、hCXIIG6変異体に、それらのEC50に従って信頼のできるランク付けを行うことはできなった。3つのhCXIIG6変異体は総て、AML5細胞のCSF−1依存的増殖の阻害において等しく有効であると思われた。
【0314】
C.3 CSF−1Rシグナル伝達に対する非促進効果およびCSF−1依存的リン酸化に対する阻害効果
方法
B4−800−5は、マウスNIH/3T3細胞を、ヒトCSF−1Rをコードする発現プラスミドpTG17366で安定的にトランスフェクトすることにより得られた組換え細胞株である。B4−800−5細胞は、60mmペトリ皿当たり2×10細胞で播種し、72時間培養した。細胞は、1%FCSを含有する1mlのDMEM培地にて、実験1時間前に37℃で培養することにより血清飢餓状態とした。
【0315】
架橋の不在下でCSF−1R遮断または抗体の効果を試験するために、細胞を、mAb chCXIIG6、H19K12、H27K5、H27K15またはヒトIgG1アイソタイプ対照リツキシマブを含有する1mlのDMEM−1%FCSで、37℃にて1時間処理した。この細胞培養物に100ng/mlのhCSF−1(ImmunoToolsカタログ番号11343115)を37℃で5分間加えるか、または細胞を刺激せずにおいた。
【0316】
抗体架橋実験では、細胞を、mAb chCXIIG6、H19K12、H27K5、H27K15、ヒトIgGアイソタイプ対照リツキシマブ、組換えマウスIgG2 CXIIG6またはマウスIgG2アイソタイプ対照(R&D Systemsカタログ番号MAB003)を含有する1mlのDMEM−1%FCSで、氷上で1時間処理した。細胞を氷冷PBSで洗浄した。20μg/mlのポリクローナルヤギ抗マウスIgG(R&D Systemsカタログ番号AF007)、20μg/mlのポリクローナルヤギ抗ヒトIgG FcHRP(Jacksonカタログ番号109−035−098)または100ng/mlのhCSF−1をこれらの細胞に37℃で10分間加えるか、または細胞を処理せずにおいた。培地を除去し、ペトリ皿に抽出バッファー(62mM Tris、10%グリセロール、2%SDS、100mM DTT、pH6.8)を加えることにより細胞層を溶解させた。細胞抽出液を、それぞれチロシン708リン酸化CSF−1R、総CSF−1Rおよびβ−アクチンの検出のために以下の抗体:ポリクローナルウサギ抗ホスホ−CSF−1RTyr708(Santa Cruz Biotechnologyカタログ番号sc−33358−R)、ポリクローナルウサギ抗CSF−1R(H300、Santa Cruz Biotechnologyカタログ番号sc−13949、1/200希釈)およびモノクローナルマウス抗β−アクチン(Sigma−Aldrichカタログ番号A2228、1/2000希釈)でプロービングしたウエスタンブロットで分析した。ウサギおよびマウス一次抗体はそれぞれポリクローナルヤギ抗ウサギまたはウサギ抗マウスIgHRP(DakoCytomationカタログ番号P0448、P0260)で検出した。
【0317】
結果
本発明者らは、チロシン708のCSF−1依存的リン酸化に対するhCXIIG6変異体H19K12、H27K5およびH27K15、ならびにchCXIIG6の効果と、それらの促進効果の欠如を検討した。CSF−1の不在下で、どのmAbも、0.1、1または10μg/mlのいずれかで試験した場合、チロシン708でリン酸化されたCSF−1Rに特異的な抗体を用いた場合に見られるような受容体のリン酸化を誘導しなかった。このことは、キメラ型またはヒト化型のいずれのCXIIG6−mAb誘導体も総て、B4−800−5細胞に単独で適用された場合に促進効果を示さないことを示した。
【0318】
CSF−1刺激の際、全長CSF−1Rに相当する約150kDaのバンドはリン酸化され、リツキシマブアイソタイプ対照とともに、または抗体を伴わずに培養した細胞において全細胞CSF−1Rは低下した。より低分子量の他の3つのバンドは抗ホスホ−CSF−1RTyr708抗体で検出された。B4−800−5細胞をCSF−1による刺激の前に37℃にてchCXIIG6またはhCXIIG6変異体とともにインキュベートした場合、抗ホスホ−CSF−1RTyr708 mAbにより認識された4バンドの強度は、リツキシマブ処理細胞で見られたものに比べて低かった。150kDaバンドの強度の低下は、同様の条件でハイブリドーマ由来CXIIG6でこれまでに得られたものに匹敵した。2つのより下方のバンドの強度の低下は、より劇的であると思われた。CSF−1R Tyr708リン酸化に対するchCXIIG6およびhCXIIG6変異体の阻害効果は、0.1、1および10μg/mlで見られた。
【0319】
処置患者mAbにおけるhCXIIG6に対する体液性応答(ヒト抗ヒト抗体応答)の潜在的発生を予想するために、本発明者らは次に、CSF−1R受容体リン酸化に対する二次抗IgG AbによるmAb架橋の効果を検討した。マウスCXIIG6の架橋は、これまでにハイブリドーマ由来CXIIG6で見られたような、抗ホスホ−CSF−1RTyr708抗体で検出される150kDaの微弱なバンドだけを生成し、総CSF−1Rの若干のダウンレギュレーションが検出可能であったが、これはおそらくCSF−1Rの弱い活性化を反映している。架橋時に、hCXIIG6変異体およびchCXIIG6もまた、低強度で150kDaバンドを生成した。150kDaリン酸化CSF−1Rバンドの強度は、100ng/mlのCSF−1で刺激した後に見られたものに比べて極めて弱かった。抗CSF−1R mAb誘導体、chCXIIG6またはhCXIIG6変異体のいずれでも、架橋後に抗CSF−1RTyr708抗体により、CSF−1により誘導されたより低MWのバンドは検出されなかった。
【0320】
これらの実験は、chCXIIG6同様に、hCXIIG6変異体H19K12、H27K5およびH27K15がCSF−1RのCSF−1依存的リン酸化を部分的に阻害し得ること、およびCSF−1Rに対して直接的な促進活性を持たないことを示す。細胞表面上のmAbの架橋は、CSF−1Rリン酸化に対して最小限の効果を持っているに過ぎない。
【0321】
D−EL4−CSF−1R標的細胞に対する細胞傷害性
方法
マウスリンパ腫由来T細胞株EL4(ATCCカタログ番号TIB−39)を、ヒト全長CSF−1Rをコードするレンチウイルスベクターで安定的にトランスフェクトすることにより、EL4−CSF−1R組換え細胞株を作出した。表面CSF−1R発現は、mAb CXIIG6(マウスIgG2a)または3291での免疫染色およびフローサイトメトリー分析により確認した(データは示されていない)。
【0322】
EL4−CSF−1R細胞をDMEM完全培地で洗浄し、同じ培地に再懸濁させ、96ウェルプレートに50μl中、2×10細胞/ウェルで播種した。細胞を氷上で45〜60分間、培養培地で希釈した50μlの抗体でオプソニン化した。次に、50μlのヒト末梢血単核細胞(PBMC)を種々のエフェクター:標的(E:T)比で加えた。ヒト化CXIIG6変異体、chCXIIG6および陰性対照リツキシマブを10ng/ml、0.3および10μg/mlで試験した。150μlの培養培地、標的細胞またはPBMC単独を含有する対照ウェルを平衡して実施し、(i)培養培地(CM)バックグラウンド、(ii)培養培地+溶解溶液バックグラウンド、(iii)標的細胞自然放出(SR)、(iv)各PBMC濃度でのエフェクター細胞自然放出、および(v)溶解溶液の存在下での標的細胞最大放出(MR)を測定した。プレートを250xgで4分間遠心分離し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、15μlの10倍溶解溶液(Promegaカタログ番号G182A)を、培養培地または標的細胞単独を含有する対照ウェルに加え、プレートを37℃で45分間さらにインキュベートした。CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promegaカタログ番号G1780)を製造者の説明書に従って用い、培養上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を定量した。Berthold Technologies製のTriStar LB 941リーダーおよびMikroWin 2000ソフトウエアを用い、490nmで吸光度を記録した。
【0323】
平均CMバックグラウンドを、実験値、標的SR値およびエフェクターSR値から差し引いた。平均CM+溶解溶液バックグラウンドを、標的MR値から差し引いた。統計学的分析は、GraphPad Prismソフトウエアにてノンパラメトリック・マン・ホイットニー片側t検定(chCXIIG6または各hCXIIG6変異体をリツキシマブと比較する場合)または両側t検定(各hCXIIG6変異体をchCXIIG6と比較する場合)を用い、平均CMおよびSR対照を差し引いた後のOD値を用いて行った。溶解%は下式を用いて計算した。
【数6】
【0324】
結果
chCXIIG6およびhCXIIG6変異体(ヒトIgG)のADCC活性を、種々の血液ドナーからのPBMCを用い、標的EL4−CSF−1R細胞で試験した。
【0325】
ドナー番号1からのエフェクター細胞を、E:T比 25:1で用いた(図30A)。この実験では、mAbの不在下で10%を超える直接溶解が見られたが、これはPBMC中に含まれるNK細胞の活性を反映したものであり得る。陰性対照のリツキシマブで得られた値も同等の範囲であった。EL4−CSF−1R細胞はリツキシマブと結合しなかったことがフローサイトメトリー分析により確認された(データは示されていない)。10ng/mlのmAbで、特異的溶解(リツキシマブの存在下で見られる非特異的溶解を超える溶解)は抗CSF−1R mAbでは見られなかった。0.3μg/mlのmAbでは、chCXIIG6は20%を超える細胞傷害性を誘導した。3つのhCXIIG6変異体による溶解は同じ桁であった。高いmAb濃度(10μg/ml)では、3つのhCXIIG6変異体は総て、35%近い細胞傷害性をもたらしたが、chCXIIG6による溶解は依然として20%を下回った。
【0326】
別の実験を、ドナー番号2からのエフェクター細胞をE:T比 25:1、50:1または100:1で用いて行った(図30B)。第1の実験とは対照的に、直接溶解は検出されなかった。バックグラウンド細胞傷害性は、試験した総てのE:T比でリツキシマブを用いた場合の10%より低かった。結果は、これまでの実験からの結果とよく相関しており、低いmAb濃度(10ng/ml)では特異的溶解は見られなかったが、0.3および10μg/mlのchCXIIG6および3つのhCXIIG6変異体は、EL4−CSF−1R細胞の有意な特異的溶解を誘導した。これらのmAb濃度および総ての試験E:T比のいずれでも、標的細胞の溶解はこの場合にも、chCXIIG6の場合よりもH27K5、H27K15およびH19K12の場合に高かった(p=0.02)。
【0327】
これらの結果は、chCXIIG6およびhCXIIG6変異体が、表面CSF−1Rを発現する標的細胞を死滅させる能力を有することを証明する。
【0328】
BeWo腫瘍モデルにおけるキメラおよびヒト化抗CSF−1R mAbの治療効果
chCXIIG6およびhCXIIG6変異体はヒトCSF−1Rに特異的であり、かつ、そのマウス同族体を認識せず、それらのin vivo効果は、ヒトCSF−1R陽性腫瘍を用いたマウスモデルでしか検討できない。しかしながら、ヒトCSF−1の不在下では、ヒトCSF−1Rは不活性のままであり、その機能の遮断を調べることができない。さらに、治療利益をもたらすと予想されるCSF−1R陽性宿主細胞(腫瘍関連マクロファージ、破骨細胞)の遮断は、このモデル系では実現不可能である。ヒトCSF−1R陽性BeWo腫瘍を用いた下記の実験では、腫瘍細胞に対するmAbの細胞傷害効果だけが治療効力をもたらし得る。
【0329】
BeWoヒト絨毛癌細胞は表面CSF−1Rを発現する
in vitroで培養したBeWo細胞をmAb H27K15(リードヒト化抗CSF−1R)で免疫染色し、共焦顕微鏡で蛍光を分析した。陰性対照のリツキシマブと比較した場合の、H27K15で見られた特異的染色は、BeWo細胞がそれらの表面にヒトCSF−1Rを発現することを示す。BeWo細胞は、培養上清のELISA滴定により判定した場合、CSF−1を分泌しない(結果は示されていない)。
【0330】
NMR1ヌードマウスに皮下移植したBeWo細胞に由来する固形腫瘍を、免疫組織化学による分析のためのOCTに含めた。凍結組織切片をマウス型のCXIIG6またはアイソタイプ対照で染色した。腫瘍の全域に強い特異的染色が見られたが、これはin vivoにおいてBeWo腫瘍細胞でhCSF−1Rの細胞表面および細胞質双方の発現を表している。
【0331】
実験1:BeWo絨毛癌腫瘍モデルにおけるキメラCXIIG6の治療効果
400万個のBeWo細胞をNMR1ヌードマウスの側腹部に皮下移植した。マウス11匹の群をキメラCXIIG6の3回の注射(chCXIIG6、PBS中50mg/kg、IP、1、3および7日目に投与)で処置し、別の11匹の群は、同じ方法に基づきリツキシマブアイソタイプ対照で処置した。腫瘍成長の阻害(図31A)およびマウス生存期間の延長(図31B)がchCXIIG6処置マウスで見られたが、このことはヒトCSF−1R陽性BeWo腫瘍をこのmAbで標的化することが治療効果を有することを示す。
【0332】
実験2:BeWo絨毛癌腫瘍モデルにおけるキメラCXIIG6およびヒト化H27K15の治療効果
下記の2つの改変を加えて上記のプロトコールを繰り返した。
【0333】
・chCXIIG6またはヒト化H27K15 mAbを試験し(マウス10匹/群)、アイソタイプ対照リツキシマブと比較した。
【0334】
・mAbを、1週間ではなく3週間、週に3回注射した。
【0335】
chCXIIG6またはH27K15処置を延長しても、第1の実験に比べて腫瘍成長阻害またはマウス生存に関する改善は見られなかった。しかしながら、両mAbともリツキシマブアイソタイプ対照群に比べて腫瘍成長を阻害した。H27K15の場合、腫瘍体積の減少は、マン・ホイットニー検定を用いたところ、14日目に統計学的に有意であり、その後の時点(17日目および21日目)でも有意に近かった。chCXIIG6では、腫瘍体積の減少は統計学的に有意に近かった。
【0336】
参照文献
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図1
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図30-1】
図30-2】
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]