(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記除去工程は、前記内周面から前記主体金具の内側に向かう前記内周面に垂直な方向に沿った前記溶接ダレの高さが0.05mm以下になるまで前記溶接ダレを除去する工程である、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のスパークプラグの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の技術では、接地電極を主体金具に接合する強度の確保と、主体金具の内周面に対する損傷の防止とを図る観点から、主体金具の内側への溶接ダレのはみ出し量の更なる低減に十分に対応できないという課題があった。特に、スパークプラグを小型化する場合、火花リークに及ぼす溶接ダレの影響が顕著になるため、溶接ダレのはみ出し量の更なる低減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、
軸線方向に延びた棒状の中心電極と、
軸孔を有する筒状を成し、前記中心電極を前記軸孔に保持する絶縁体と、
端面と内周面とを有する筒状を成し、前記絶縁体の先端側と前記内周面との間に間隙を形成する主体金具と、
前記端面に溶接された接地電極と
を備えるスパークプラグを製造する、スパークプラグの製造方法であって、
前記接地電極を前記端面に溶接する溶接工程と、
線状部材の基端部を固定した工具を回転させながら、前記溶接工程によって前記主体金具の内側に形成された溶接ダレに対して、前記線状部材の先端部を接触させることによって、前記溶接ダレを除去する除去工程と
を備え、
前記線状部材は、セラミックファイバ同士を線状に結合させた部材であり、
前記工具は、複数の線状部材の基端部を固定した工具であり、
前記除去工程は、前記工具を回転させながら、前記複数の線状部材における先端部を前記溶接ダレに接触させることによって、前記溶接ダレを除去する工程である、スパークプラグの製造方法である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、軸線方向に延びた棒状の中心電極と;軸孔を有する筒状を成し、前記中心電極を前記軸孔に保持する絶縁体と;端面と内周面とを有する筒状を成し、前記絶縁体の先端側と前記内周面との間に間隙を形成する主体金具と;前記端面に溶接された接地電極とを備えるスパークプラグを製造する、スパークプラグの製造方法が提供される。このスパークプラグの製造方法は、前記接地電極を前記端面に溶接する溶接工程と;線状部材の基端部を固定した工具を回転させながら、前記溶接工程によって前記主体金具の内側に形成された溶接ダレに対して、前記線状部材の先端部を接触させることによって、前記溶接ダレを除去する除去工程とを備える。この形態によれば、回転による遠心力で外側に撓ませた線状部材の先端部で溶接ダレを削るため、主体金具の内側にはみ出た溶接ダレを効果的に除去できる。
【0008】
(2)上記形態のスパークプラグの製造方法において、前記線状部材は、セラミックファイバ同士を線状に結合させた部材であり、前記工具は、複数の線状部材の基端部を固定した工具であり、前記除去工程は、前記工具を回転させながら、前記複数の線状部材における先端部を前記溶接ダレに接触させることによって、前記溶接ダレを除去する工程であってもよい。この形態によれば、複数の線状部材によって溶接ダレを削るため、主体金具の内側にはみ出た溶接ダレをいっそう効果的に除去できる。
【0009】
(3)上記形態のスパークプラグの製造方法において、前記除去工程は、貫通孔を有する治具を前記主体金具の前記端面側に設ける工程と;前記貫通孔の内側で、前記工具を回転させながら前記工具を前記軸線方向に移動させることによって、前記溶接ダレに対して前記先端部を接触させる工程とを含んでもよい。この形態によれば、軸線方向に工具を円滑に移動させることができる。したがって、除去工程の作業性を向上させることができる。
【0010】
(4)上記形態のスパークプラグの製造方法において、前記内周面における前記主体金具の内径D1と、前記貫通孔における前記治具の内径D2との関係は、D1<D2を満たしてもよい。この形態によれば、主体金具の内側にはみ出た溶接ダレを十分に除去できる。
【0011】
(5)上記形態のスパークプラグの製造方法において、前記内径D1と前記内径D2との関係は、D1+0.1mm≦D2≦D1+0.3mmを満たしてもよい。この形態によれば、主体金具の内側にはみ出た溶接ダレを十分に除去しつつ、工具の損傷を防止できる。
【0012】
(6)上記形態のスパークプラグの製造方法において、前記除去工程は、前記主体金具における前記端面の反対側から前記内周面に前記線状部材を挿入する工程と;前記反対側から前記内周面に前記線状部材を挿入した状態で、前記工具を回転させながら前記溶接ダレに対して前記先端部を接触させる工程とを含んでもよい。この形態によれば、主体金具の端面側に治具を設けることなく、軸線方向に工具を円滑に移動させることができる。そのため、除去工程の作業性を向上させることができる。
【0013】
(7)上記形態のスパークプラグの製造方法において、前記主体金具は、前記内周面より前記反対側に位置する棚部を有し、前記棚部における前記主体金具の内径は、前記内周面における前記主体金具の内径より小さく、前記除去工程は、更に、前記溶接ダレを除去した後、前記工具を回転させながら前記先端部を前記内周面から前記反対側へと移動させることによって、前記棚部に前記先端部を接触させる工程を含んでもよい。この形態によれば、溶接ダレを除去した後に工具を主体金具から取り出す作業に併せて、主体金具の棚部を加工できる。
【0014】
(8)上記形態のスパークプラグの製造方法において、前記除去工程は、前記内周面に垂直な方向に沿った前記溶接ダレの高さが0.05mm以下になるまで前記溶接ダレを除去する工程であってもよい。この形態によれば、溶接ダレに起因する火花リークの発生を十分に抑制可能なスパークプラグを製造できる。
【0015】
(9)上記形態のスパークプラグの製造方法において、更に、前記主体金具の外周に呼び径M10以下の雄ネジを形成する工程を備えてもよい。この形態によれば、呼び径M10以下のスパークプラグにおける主体金具の内側にはみ出た溶接ダレを効果的に除去できる。
【0016】
本発明は、スパークプラグおよびその製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、接地電極が溶接された主体金具、スパークプラグを備える内燃機関、スパークプラグの製造装置などの形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態
A1.スパークプラグの構成
図1は、スパークプラグ10の部分断面を示す説明図である。
図1には、スパークプラグ10の軸心である軸線CA1を境界として、紙面右側にスパークプラグ10の外観形状を図示し、紙面左側にスパークプラグ10の断面形状を図示した。本実施形態の説明では、スパークプラグ10における
図1の紙面下側を「先端側」といい、
図1の紙面上側を「後端側」という。
【0019】
スパークプラグ10は、中心電極100と、絶縁体200と、主体金具300と、接地電極400とを備える。本実施形態では、スパークプラグ10の軸線CA1は、中心電極100、絶縁体200および主体金具300の各部材における軸心でもある。
【0020】
スパークプラグ10は、中心電極100と接地電極400との間に形成された間隙SGを先端側に有する。スパークプラグ10の間隙SGは、火花ギャップとも呼ばれる。スパークプラグ10は、間隙SGが形成された先端側を燃焼室920の内壁910から突出させた状態で内燃機関90に取り付け可能に構成されている。スパークプラグ10を内燃機関90に取り付けた状態で2万〜3万ボルトの高電圧を中心電極100に印加した場合、間隙SGに火花放電が発生する。間隙SGに発生した火花放電は、燃焼室920における混合気に対する着火を実現する。
【0021】
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸は、後述する他の図におけるXYZ軸に対応する。
図1のXYZ軸におけるX軸は、Y軸およびZ軸に直交する軸である。X軸に沿ったX軸方向のうち、+X軸方向は、
図1の紙面奥から紙面手前に向かう方向であり、−X軸方向は、+X軸方向に対する逆方向である。
図1のXYZ軸におけるY軸は、X軸およびZ軸に直交する軸である。Y軸に沿ったY軸方向のうち、+Y軸方向は、
図1の紙面右から紙面左に向かう方向であり、−Y軸方向は、+Y軸方向に対する逆方向である。
図1のXYZ軸におけるZ軸は、X軸およびY軸に直交する軸である。Z軸に沿ったZ軸方向(軸線方向)のうち、+Z軸方向は、スパークプラグ10の後端側から先端側に向かう方向であり、−Z軸方向は、+Z軸方向に対する逆方向である。
【0022】
スパークプラグ10の中心電極100は、導電性を有する電極である。中心電極100は、軸線CA1を中心に延びた棒状を成す。本実施形態では、中心電極100の材質は、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル合金(例えば、インコネル600(「INCONEL」は登録商標))である。中心電極100の外側面は、絶縁体200によって外部から電気的に絶縁されている。中心電極100の先端側は、絶縁体200の先端側から突出している。中心電極100の後端側は、絶縁体200の後端側へと電気的に接続されている。本実施形態では、中心電極100の後端側は、シール体160、セラミック抵抗170、シール体180および端子金具190を介して、絶縁体200の後端側へと電気的に接続されている。
【0023】
スパークプラグ10の接地電極400は、導電性を有する電極である。接地電極400は、主体金具300から+Z軸方向に延びた後に軸線CA1に向けて屈曲した形状を成す。接地電極400の後端側は、主体金具300に溶接されている。接地電極400の先端側は、中心電極100との間に間隙SGを形成する。本実施形態では、接地電極400の材質は、中心電極100と同様に、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル合金である。
【0024】
スパークプラグ10の絶縁体200は、電気絶縁性を有する碍子である。絶縁体200は、軸線CA1を中心に延びた筒状を成す。本実施形態では、絶縁体200は、絶縁性セラミックス材料(例えば、アルミナ)を焼成することによって作製される。
【0025】
絶縁体200は、軸線CA1を中心に延びた貫通孔である軸孔290を有する。絶縁体200の軸孔290には、絶縁体200の先端側から突出させた状態で、中心電極100が軸線CA1上に保持されている。絶縁体200の外側には、先端側から後端側に向けて順に、第1筒状部210と、第2筒状部220と、第3筒状部250と、第4筒状部270とが形成されている。
【0026】
絶縁体200の第1筒状部210は、先端側に向けて先細りになった円筒状の部位であり、第1筒状部210の先端側は、主体金具300の先端側から突出している。絶縁体200の第2筒状部220は、第1筒状部210よりも大きな径を有する円筒状の部位である。絶縁体200の第3筒状部250は、第2筒状部220および第4筒状部270よりも外周方向に張り出した円筒状の部位である。絶縁体200の第4筒状部270は、第3筒状部250から後端側をなす円筒状の部位であり、第4筒状部270の後端側は、主体金具300の後端側から突出している。
【0027】
スパークプラグ10の主体金具300は、導電性を有する金属体である。主体金具300は、軸線CA1を中心に延びた筒状を成す。本実施形態では、主体金具300の材質は、炭素鋼であり、主体金具300の表面には、ニッケルめっきが施されている。他の実施形態では、主体金具300の表面には、亜鉛めっきが施されていてもよいし、めっきが施されていなくてもよい。
【0028】
主体金具300は、中心電極100から電気的に絶縁された状態で絶縁体200の外側面にカシメによって固定されている。主体金具300の外側には、先端側から後端側に向けて順に、端面310と、ネジ部320と、胴部340と、溝部350と、工具係合部360と、カシメ蓋380とが形成されている。
【0029】
主体金具300の端面310は、主体金具300の先端側を構成する面である。本実施形態では、端面310は、X軸およびY軸に沿った平面であって、+Z軸方向を向いた平面である。本実施形態では、端面310は、中空円状の平面である。端面310には、接地電極400が溶接されている。端面310の中央からは、中心電極100と共に絶縁体200が+Z軸方向に向けて突出している。他の実施形態では、端面310は、主体金具300の内側に向けて傾斜した面であってもよいし、主体金具300の外側に向けて傾斜した面であってもよい。他の実施形態では、端面310は、曲面であってもよいし、段差を構成する複数の面であってもよい。
【0030】
主体金具300のネジ部320は、ネジ山が外側面に形成されている円筒状の部位である。本実施形態では、スパークプラグ10は、主体金具300のネジ部320を内燃機関90のネジ孔930に螺合させることによって内燃機関90に取り付け可能に構成されている。本実施形態では、ネジ部320の呼び径は、M10である。他の実施形態では、ネジ部320の呼び径は、M10より小さくても良いし(例えば、M8)、M10より大きくても良い(例えば、M12、M14)。
【0031】
主体金具300の胴部340は、溝部350よりも外周方向に張り出した鍔状の部位である。スパークプラグ10を内燃機関90に取り付けた場合、胴部340と内燃機関90との間でガスケット500が圧縮される。
【0032】
主体金具300の溝部350は、カシメによって主体金具300を絶縁体200に固定する際に外周方向に膨出した円筒状の部位である。溝部350は、胴部340と工具係合部360との間に位置する。
【0033】
主体金具300の工具係合部360は、溝部350よりも外周方向へ多角形状に張り出した鍔状の部位である。工具係合部360は、スパークプラグ10を内燃機関90に取り付けるための工具(図示しない)に係合する形状を成す。本実施形態では、工具係合部360の外形は、六角形状である。
【0034】
主体金具300のカシメ蓋380は、主体金具300の後端側を絶縁体200に向けて屈曲した部位である。カシメ蓋380は、カシメによって主体金具300を絶縁体200に固定する際に成形される。
【0035】
主体金具300における工具係合部360およびカシメ蓋380の内側には、後端側にリング部材610が、先端側にリング部材620が、それぞれ絶縁体200との間に配置されている。リング部材610とリング部材620との間には、電気絶縁性を有する粉末650が充填されている。
【0036】
主体金具300の内側には、主体金具300の先端側から突出させた状態で絶縁体200が保持されている。主体金具300の内側には、先端側から後端側に向けて順に、内周面392と、棚部394と、内周面396とが形成されている。
【0037】
主体金具300の内周面392は、主体金具300の内側のうち棚部394よりも先端側に位置する部位ある。主体金具300の棚部394は、内周面392および内周面396よりも内側に向けて隆起した環状の部位である。主体金具300の内周面396は、主体金具300の内側のうち棚部394よりも後端側に位置する部位である。
【0038】
図2は、スパークプラグ10の先端側を拡大して示す説明図である。
図3は、主体金具300に接地電極400が溶接された部分断面を更に拡大して示す説明図である。
【0039】
本実施形態では、端面310の外周側には、面取り部312が形成されている。本実施形態では、面取り部312は、角面である。他の実施形態では、面取り部312は、丸面であってもよい。他の実施形態では、面取り部312がなくてもよい。
【0040】
本実施形態では、端面310の内周側には、面取り部319が形成されている。本実施形態では、面取り部319は、角面である。他の実施形態では、面取り部319は、丸面であってもよい。他の実施形態では、面取り部319がなくてもよい。
【0041】
主体金具300の内周面392は、絶縁体200の第1筒状部210との間に間隙IGを形成する。間隙IGは、内周面392に火花放電が発生する火花リーク(横飛火)の発生を防止する。
【0042】
主体金具300の端面310に溶接された接地電極400の周囲には、端面310に接地電極400を溶接する際に形成された溶接ダレ700が存在する。接地電極400を溶接する際に形成された溶接ダレ700のうち、主体金具300の径方向内側に位置する部分の少なくとも一部は除去されている。本実施形態では、溶接ダレ700は、主体金具300の内周面392を避けて存在する。他の実施形態では、溶接ダレ700は、内周面392から完全に除去されずに、内周面392に残存していてもよい。本実施形態では、溶接ダレ700は、内周面392および面取り部319を避けて存在する。他の実施形態では、溶接ダレ700は、面取り部319から完全に除去されずに、面取り部319に残存していてもよい。
【0043】
溶接ダレ700は、主体金具300の径方向内側に向けて露出した断面740を有する。断面740は、端面310に接地電極400を溶接した後に内周面392から溶接ダレ700を除去する際に形成される。本実施形態では、断面740は、Z軸に沿った面である。断面740は、主体金具300の表面に繋がる断面であり、本実施形態では、面取り部319に繋がる。他の実施形態では、面取り部319がない場合、断面740は、内周面392に繋がる断面であってもよい。
【0044】
A2.スパークプラグの製造方法
図4は、スパークプラグ10の製造方法を示す工程図である。スパークプラグ10の製造者は、スパークプラグ10を製造する際、製造途中の主体金具300である主体金具300Pを作製する(工程P132)。本実施形態では、製造者は、プレス加工および切削加工によって主体金具300Pを作製する。主体金具300Pは、少なくとも端面310および内周面392が成形された筒状を成す。本実施形態では、主体金具300Pには、ネジ部320が成形されていない。本実施形態では、主体金具300Pには、面取り部312および面取り部319が形成されている。
【0045】
主体金具300Pを作製した後(工程P132)、製造者は、溶接工程(工程P134)を実施する。溶接工程(工程P134)は、製造途中の接地電極400である接地電極400Pを主体金具300Pの端面310に溶接する工程である。本実施形態では、溶接工程(工程P134)において、接地電極400Pは、屈曲しておらず、真っ直ぐに延びた形状を成す。
【0046】
図5は、接地電極400Pを溶接した主体金具300Pの部分断面を示す説明図である。
図5の部分断面は、
図3の部分断面に対応する部位を示す。本実施形態では、溶接工程(工程P134)において、製造者は、端面310が鉛直方向上向きを向くように主体金具300Pを固定した状態で、端面310に対して接地電極400Pを押し付けながら、端面310と接地電極400Pとを抵抗溶接によって接合する。溶接工程(工程P134)によって、端面310における接地電極400の周囲には、溶接ダレ700が形成される。溶接工程(工程P134)では、端面310から内周面392に至るまで溶接ダレ700が形成される。
【0047】
図4の説明に戻り、溶接工程(工程P134)を実施した後、製造者は、予備除去工程(工程P135)を実施する。予備除去工程(工程P135)は、剪断加工(パンチング)によって主体金具300Pの内側から溶接ダレ700を除去する工程である。本実施形態では、予備除去工程(工程P135)において、製造者は、内周面392より内側に位置する鎖線CLA(
図5を参照)に沿って、主体金具300Pの内側から溶接ダレ700を除去する。他の実施形態では、予備除去工程(工程P135)において、製造者は、剪断加工に加えて、または、剪断加工に代えて、切削加工(例えば、フライス加工、ドリル加工など)によって、主体金具300Pの内側から溶接ダレ700を除去してもよい。
【0048】
予備除去工程(工程P135)を実施した後、製造者は、除去工程(工程P136)を実施する。除去工程(工程P136)は、研削加工によって主体金具300Pの内側から溶接ダレ700を除去する工程である。
【0049】
本実施形態では、除去工程(工程P136)において、製造者は、鎖線CLAよりも内周面392に近い鎖線CLB(
図5を参照)に沿って、主体金具300Pの内側から溶接ダレ700を除去する。本実施形態では、鎖線CLBは、面取り部319および内周面392に沿った形状である。
【0050】
図5の高さHmは、主体金具300Pの内周面392から主体金具300Pの内側に向かう内周面392に垂直な方向に沿った溶接ダレ700の高さである。言い換えると、高さHmは、主体金具300Pの内側にはみ出た溶接ダレ700のはみ出し量である。本実施形態では、除去工程(工程P136)において、製造者は、高さHmが0.05mm以下になるまで溶接ダレ700を除去する。
【0051】
図6は、除去工程(工程P136)を実施する様子を示す説明図である。除去工程(工程P136)では、製造者は、線状部材814を有する工具810を用いて、主体金具300Pの内側から溶接ダレ700を除去する。
【0052】
図7は、工具810の構成を示す説明図である。工具810は、円筒部812と、線状部材814とを備える。工具810の円筒部812は、円筒状を成す金属製の部材であり、線状部材814を保持する。工具810の線状部材814は、セラミックファイバ同士を線状に結合させた部材である。本実施形態では、線状部材814のセラミックファイバの材質は、アルミナ(Al
2O
3)およびシリカ(SiO
2)を主成分として含有する。セラミックファイバ同士を結合させる結合材(バインダ)は、無機質であってもよいし、有機質であってもよい。工具810は、1本以上の線状部材814を備えていればよく、本実施形態では、複数の線状部材814を備える。線状部材814の一方の端部である基端部814bsは、円筒部812に固定された固定端である。線状部材814の他方の端部である先端部814tpは、固定されていない自由端である。
【0053】
図6の説明に戻り、除去工程(工程P136)において、製造者は、治具850に固定された主体金具300Pの軸線CA2を中心とする回転方向DRに工具810を回転させながら、軸線CA2に沿った軸線方向DAに工具810を往復移動させる。これによって、線状部材814の先端部814tpは、回転による遠心力で外側に撓みながら、主体金具300Pの内側に形成された溶接ダレ700に対して接触する。その結果、溶接ダレ700は、線状部材814の先端部814tpによって削られる。
【0054】
本実施形態では、製造者は、主体金具300Pを治具850に固定する際、貫通孔832を有する治具830を主体金具300Pの端面310側に設ける。治具830が主体金具300Pに設けられた状態において、治具830における貫通孔832の軸線は、主体金具300Pの軸線CA2上に位置する。本実施形態では、治具830は、主体金具300Pの端面310に接触する。他の実施形態では、治具830は、主体金具300Pの端面310から離れていてもよい。
【0055】
内周面392における主体金具300Pの内径D1は、貫通孔832における治具830の内径D2より小さい。言い換えると、主体金具300Pの内径D1と治具830の内径D2との関係は、D1<D2を満たす。溶接ダレ700を十分に除去しつつ、工具810の損傷を防止する観点から、内径D1と内径D2との関係は、D1+0.1mm≦D2≦D1+0.3mmを満たすことが好ましい。内径D1,D2の評価については後述する。
【0056】
図8は、治具830の詳細構成を示す説明図である。治具830は、貫通孔832の他、面取り部833と、陥没部834と、切欠部836と、貫通孔838とを有する。治具830の面取り部833は、治具830が主体金具300Pに設けられた状態において端面310とは反対側に位置し、貫通孔832の2つの端部のうち一方の端部を面取りした角面である。治具830の陥没部834は、貫通孔832の2つの端部のうち面取り部833とは反対側に位置する他方の端部の周囲を陥没させた部位であり、主体金具300Pの端面310を受け入れる空間を形成する。治具830の切欠部836は、貫通孔832に沿って切り欠いた部位であり、接地電極400Pおよび溶接ダレ700を受け入れる空間を形成する。治具830の貫通孔838は、治具830を治具850に固定するボルト840を受け入れる。
【0057】
図4の説明に戻り、除去工程(工程P136)を実施した後、製造者は、ネジ切りを実施することによって、主体金具300Pにネジ部320を成形する(工程P138)。その後、製造者は、主体金具300Pに表面加工(めっき)を実施する(工程P139)。これによって、主体金具300が完成する。
【0058】
主体金具300が完成した後(工程P139)、製造者は、主体金具300に他の部材(中心電極100、絶縁体200など)を組み付ける(工程P180)。これによって、スパークプラグ10が完成する。本実施形態では、製造者は、主体金具300に他の部材を組み付ける際に、接地電極400Pに曲げ加工を実施する。
【0059】
A3.スパークプラグの評価
図9は、主体金具300Pの内径D1と治具830の内径D2とを評価した試験の結果を示すグラフである。
図9のグラフでは、横軸に内径D1を基準とする内径D2をとり、縦軸に溶接ダレ700の高さHmをとることによって、内径D1,D2の評価が示されている。
【0060】
図9の評価試験では、試験者は、主体金具300Pの内径D1に対して、異なる内径D2を有する複数の治具を用意し、各治具を用いて除去工程(工程P136)を実施した。除去工程(工程P136)を実施した後、試験者は、主体金具300Pにおける溶接ダレ700の高さHmを測定した。
【0061】
図9の評価試験の結果によれば、内径D1より内径D2が大きい程、溶接ダレ700の高さHmが低くなり、内周面392から溶接ダレ700を効果的に除去できることが分かる。しかしながら、内径D2が内径D1より0.4mm以上大きい場合、工具810の線状部材814に損傷が発生した。その要因は、内径D2が内径D1より大きくなる程、線状部材814が端面310に押し付けられやすくなるためと考えられる。したがって、溶接ダレ700を十分に除去しつつ、工具810の損傷を防止する観点から、内径D1と内径D2との関係は、D1+0.1mm≦D2≦D1+0.3mmを満たすことが好ましい。
【0062】
A4.効果
以上説明した実施形態によれば、除去工程(工程P136)において、回転による遠心力で外側に撓ませた線状部材814の先端部814tpで溶接ダレ700を削るため、主体金具300Pの内側にはみ出た溶接ダレ700を効果的に除去できる。また、複数の線状部材814によって溶接ダレ700を削るため、主体金具300Pの内側にはみ出た溶接ダレ700をいっそう効果的に除去できる。
【0063】
また、治具830の貫通孔832の内側で、工具810を回転させながら工具810を軸線方向DAに移動させることによって、溶接ダレ700に対して線状部材814の先端部814tpを接触させる。そのため、軸線方向DAに工具810を円滑に移動させることができる。したがって、除去工程(工程P136)の作業性を向上させることができる。
【0064】
また、内周面392における主体金具300Pの内径D1と、貫通孔832における治具830の内径D2との関係は、D1<D2を満たすため、主体金具300Pの内側にはみ出た溶接ダレ700を十分に除去できる。
【0065】
また、内径D1と内径D2との関係は、D1+0.1mm≦D2≦D1+0.3mmを満たすため、主体金具300Pの内側にはみ出た溶接ダレ700を十分に除去しつつ、工具810の損傷を防止できる。
【0066】
A5.第1変形例
図10は、第1変形例における接地電極400Pを溶接した主体金具300Pの部分断面を示す説明図である。第1変形例は、除去工程(工程P136)において、面取り部319に平行な鎖線CLBに沿って溶接ダレ700を除去する点を除き、上述の実施形態と同様である。第1変形例によれば、上述の実施形態と同様に、主体金具300Pの内側にはみ出た溶接ダレ700を効果的に除去できる。
【0067】
A6.第2変形例
図11は、第2変形例におけるスパークプラグ10の製造方法を示す工程図である。第2変形例は、上述の除去工程(工程P136)とは工具810の使い方が異なる除去行程(工程P136B)を備える点、工具810を用いて主体金具300Pの棚部394を加工する工程(工程P137B)を備える点を除き、上述の実施形態と同様である。
【0068】
除去行程(工程P136B)では、製造者は、主体金具300Pにおける端面310の反対側から内周面392に、工具810の線状部材814を挿入する。その後、製造者は、内周面392に線状部材814を挿入した状態で、工具810を回転させながら溶接ダレ700に対して線状部材814の先端部814tpを接触させる。その結果、溶接ダレ700は、線状部材814の先端部814tpによって削られる。
【0069】
除去行程(工程P136B)を実施した後、製造者は、工具810を回転させながら線状部材814の先端部814tpを内周面392から端面310の反対側へと移動させることによって、棚部394に線状部材814の先端部814tpを接触させる。その結果、棚部394は、線状部材814の先端部814tpによって削られる。このように棚部394の形状を仕上げた後、製造者は、上述の実施形態と同様に、ネジ部320を成形する工程(工程P138)以降を実施する。
【0070】
以上説明した第2変形例によれば、上述の実施形態と同様に、主体金具300Pの内側にはみ出た溶接ダレ700を効果的に除去できる。また、主体金具300Pの端面310側に治具830を設けることなく、軸線方向DAに工具810を円滑に移動させることができる。そのため、除去工程(工程P136B)の作業性を向上させることができる。また、溶接ダレ700を除去した後(工程P136B)に工具810を主体金具300Pから取り出す作業に併せて、主体金具300Pの棚部394を加工できる。
【0071】
B.他の実施形態
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0072】
例えば、主体金具の内周面392および面取り部319の少なくとも一部は、溶接ダレ700によって構成された部位であってもよい。また、溶接工程(工程P134)を実施した後、予備除去工程(工程P135)を実施することなく、除去工程(工程P136)を行うことによって、内周面392から溶接ダレ700を除去してもよい。