【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、
ワイヤの形態で金属供給材料を供給するとともに、
母材上の堆積領域を加熱する1つのプラズマトランスファーアークと、供給ワイヤを加熱するとともに溶融する1つのプラズマトランスファーアークとの2つのガストランスファーアークを用いることにより、
堆積速度を上昇させることができる、という理解に基づく。
【0019】
したがって、第1の態様において、本発明は、
立体自由形状造形法によって金属材料の3次元物体を製造する方法であって、前記物体は保持基材上の前記金属材料の連続した堆積物を合わせて溶融することによって作製され、
該方法は、
前記物体が作製される金属材料と同様の金属材料から作製される保持基材を用いることと、
各連続した堆積物を、
i)第1のプラズマトランスファーアーク(PTA)を用いて、前記金属材料が堆積することになる位置において母材を予熱し該母材に溶融池を形成し、
ii)ワイヤの形態で堆積することになる前記金属材料を、前記溶融池の上方の位置に供給し、
iii)溶融金属材料が前記溶融池内に滴下するように、第2のプラズマトランスファーアーク(PTA)を用いて前記ワイヤを加熱溶融し、
iv)前記溶融金属材料の連続した堆積物が固化して前記3次元物体を形成するように所定のパターンで、前記第1のPTA及び前記第2のPTAの位置に対して前記保持基材を移動させる、
ことによって得ることと、
を含むことを特徴とする、金属材料の3次元物体を製造する方法に関する。
【0020】
第2の態様において、本発明は、立体自由形状造形法によって金属材料の3次元物体を製造する装置であって、
該装置は、
前記金属材料のワイヤを供給するワイヤ供給器が組み込まれた溶接トーチと、
前記溶接トーチに対して保持基材を位置決めし移動させるシステムと、
形成されることになる前記物体のコンピューター支援設計(CAD)モデルを読み、該CADモデルを用いて、前記保持基材を位置決めし移動させるように前記システムの位置及び移動を調節し、前記保持基材上の前記金属材料の連続した堆積物を溶融することにより、物理的物体が構築されるように、ワイヤ供給器が組み込まれた前記溶接トーチを動作させることができる制御システムと、
を具備し、
前記保持基材は、作製されることになる前記物体と同様の金属材料から作製され、
前記溶接トーチは、
i)前記母材に電気的に接続された第1のプラズマトランスファーアーク(PTA)トーチと、
ii)前記金属材料の供給ワイヤに電気的に接続された第2のプラズマトランスファーアーク(PTA)トーチと、
を備え、
前記制御システムは、前記金属材料が堆積することになる位置で前記母材に溶融池を形成し維持するように、前記第1のPTAトーチを別個に動作させ調節することができ、
前記制御システムは、溶融金属材料が前記溶融池内に滴下するような位置で前記金属材料供給材料を溶融するように、前記ワイヤ供給器及び前記第2のPTAトーチを別個に動作させ調節することができる
ことを特徴とする、金属材料の3次元物体を製造する装置に関する。
【0021】
本明細書において用いられる「同様の金属材料」という用語は、金属材料が基準金属材料と同じ金属又は金属合金からなることを意味する。
【0022】
本明細書において用いられる「母材」という用語は、第1のPTAトーチからの熱に対するターゲット材であり、溶融池が形成されることになるものを意味する。これは、金属材料の第1の層を堆積させるときの保持基材となる。金属材料の1つ又は複数の層が保持基材の上に堆積すると、母材は、金属材料の新たな層を堆積させることになる堆積した金属材料の上部層となる。
【0023】
本明細書において交換可能に用いられる「プラズマトランスファーアークトーチ」又は「PTAトーチ」という用語は、電気アーク放電によりプラズマへの不活性ガスの流れを加熱し励起し、その後、電気アークを含むプラズマガスの流れをオリフィス(ノズル)を通して移送し、オリフィスから延出しアークの強力な熱をターゲット領域に伝達する抑制されたプルームを形成することができる、任意の装置を意味する。
電極及びターゲット領域は、PTAトーチの電極がカソードになり、ターゲット領域がアノードになるように、直流電源に電気的に接続される。これにより、電気アークを含むプラズマプルームが、PTAトーチから供給されている熱流束の面積の広がり及び大きさの優れた制御により、ターゲット領域の小さい表面積に非常に集中した熱流を送達していることが確実になる。
プラズマトランスファーアークには、ゆらぎがほとんどなく、カソードとアノードとの間の長さのずれに対して優れた耐性で、安定し一貫したアークを提供するという利点がある。したがって、PTAトーチは、母材に溶融池を形成することと、金属ワイヤ供給材料を加熱し溶融することとの両方に適している。
PTAトーチは、有利には、タングステン製の電極と銅製のノズルとを有することができる。しかしながら、本発明は、PTAトーチのいかなる特定の選択又はタイプにも拘束されない。PTAトーチとして機能することができる任意の既知の又は考えられる装置を適用することができる。
【0024】
母材を予熱し溶融池を形成する別個に制御された第1のPTAトーチと、金属材料の供給ワイヤを溶融する別個に第2のPTAトーチとを使用することにより、基材への熱供給とは無関係に金属ワイヤの供給材料への熱供給を増大させることが可能になり、それにより、スパッターを発生させる「溶射アーク」を生成する危険なしに、供給材料内への熱流速を増大させることが可能になるという利点がもたらされる。
したがって、基材を同時に過熱することなく、かつスパッター又は過剰な溶融池の形成の危険なしに(したがって堆積材料の固化の厳密でない制御の危険なしに)、溶融金属供給材料の堆積速度を上昇させることができる。
この特徴は、
第1のPTAトーチの電極が負極性になり母材が正極性になって、第1のPTAトーチの電極と母材との間のアーク放電により電荷が移送される電気回路を規定するように、直流電源を接続することにより、かつ
第2のPTAトーチの電極を直流電源の負極に接続し金属材料の供給ワイヤを正極に接続して、第2のPTAトーチの電極と金属材料の供給ワイヤとの間のアーク放電により電荷が移送される電気回路を形成することにより、
得られる。
【0025】
第1のPTAトーチ及び第2のPTAトーチは、有利には、別個の電源と、それぞれのトーチに対する電源を調節する手段とを有することができる。
電力を調節する手段は、有利には、母材の堆積領域の温度を監視する手段と、アークの幅及び位置を調節する手段、すなわち磁気アーク偏向手段等の手段とを含むことができる。
また、母材に溶融池を形成するように用いられる第1のPTAトーチは、有利には、広いアークを形成する、すなわち、ガスタングステンアーク溶接トーチ(GTAWトーチ、文献ではTIGトーチとも示される)によって形成されるようなアークを形成することにより、母材の表面のより広い面積に溶融池を形成することができる。
【0026】
本明細書において交換可能に使用される「コンピューター支援設計モデル」又は「CADモデル」という用語は、
本発明の第2の態様による装置の制御システムにおいて用いることができる、形成されることになる物体の任意の既知又は考えられる仮想3次元表現であって、
保持基材の位置及び移動を調節するように、かつ、
物理的物体が、物体の仮想3次元モデルに従って物理的物体を構築する際に結果として得られるパターンで保持基材の上の金属材料の連続した堆積物を溶融することによって製造されるように、ワイヤ供給器が組み込まれた溶接トーチを動作させるように用いることができる、
仮想3次元表現を意味する。
これは、例えば、まず仮想3次元モデルを一組の仮想平行層に分割し、その後、平行層の各々を一組の仮想準一次元切片に分割することにより、3次元モデルの仮想ベクトル化積層モデルを形成することで得ることができる。
そして、物理的物体は、物体の仮想ベクトル化積層モデルの第1の層に従うパターンで、金属材料供給材料の一連の準一次元切片を支持基材の上に堆積させ溶融させるように、制御システムを関与させることによって形成することができる。
そして、物体の仮想ベクトル化積層モデルの第2の層に従うパターンで、先に堆積した層の上に溶接可能材料の一連の準一次元切片を堆積させ溶融させることにより、物体の第2の層に対するシーケンスを繰り返す。
物体全体が形成されるまで、物体の仮想ベクトル化積層モデルの各連続した層に対して、層ごとに堆積及び溶融プロセスを繰り返し続ける。
しかしながら、本発明は、本発明による装置の制御システムを実行するいかなる特定のCADモデル及び/又はコンピューターソフトウェアにも拘束されず、本発明は、いかなる特定のタイプの制御システムにも拘束されない。
1つの第1のPTAトーチに対して溶融池を形成するように、かつ第2のPTAトーチに対して溶融池内への金属材料の供給ワイヤを溶融するように別個に動作させるように制御システムが調整される限り、立体自由形状造形法によって金属3次元物体を構築することができる任意の既知又は考えられる制御システム(CADモデル、コンピューターソフトウェア、コンピューターハードウェア及びアクチュエーター等)を用いることができる。
【0027】
有利には、金属材料の供給ワイヤの供給速度(ワイヤ速度)及び位置決めは、母材の溶融池の上方の意図された位置に達したときにワイヤが連続して加熱され溶融されていることを確実にするために、第2のPTAトーチへの電源の影響に従って制御され調節されることができる。
これは、従来のガスメタルアーク溶接トーチ(GMAWトーチ、MIGトーチとも示される)を、MIGトーチにアークを形成することなくワイヤ供給器として使用することによって得ることができる。
ワイヤ供給器のこの実施形態には、ワイヤを第2のPTAトーチのDC電源に電気的に接続することができるとともに、ワイヤを非常に正確に位置決めすることもできるという利点がある。
金属材料の供給ワイヤは、任意の実際的に実施可能な寸法、すなわち1.0mm、1.6mm、2.4mm等のような寸法を有することができる。
【0028】
本明細書において用いられる「金属材料」という用語は、3次元物体を形成するようにワイヤに成形しかつ自由形状造形プロセスで用いることができる、任意の既知若しくは考えられる金属又は金属合金を意味する。好適な材料の例としては、限定されないが、チタン及びチタン合金、すなわちTi−6Al−4V合金等が挙げられる。
【0029】
第1のPTAトーチ及び第2のPTAトーチに対して与えられる影響は、いずれの金属材料が適用されているか、供給ワイヤの寸法、母材の耐熱性、堆積速度等によって決まる。
したがって、本発明は、いかなる特定の電源の枠にも拘束されず、第1のPTAトーチ及び第2のPTAトーチの機能動作をもたらす任意の実際に機能する電位差及び電流を用いることができる。当業者は、試行錯誤試験によってこれらのパラメーターを見つけることができるであろう。
本出願人が行った実験により、等級5チタン合金製の直径1.6mmのワイヤを用いることにより、第1のPTAトーチに約150Aが供給され第2のPTAトーチに約250Aが供給されるとき、3.7kg/時から3.8kg/時の堆積速度で、従来のチタン体と同様の機械特性の3次元物体を製造することができることが分かった。
効果的に保護された雰囲気、すなわち特許文献3に開示されている反応チャンバー等において、本発明の第1の態様及び第2の態様によりSFFF堆積を行うことにより、最大10kg/時の堆積速度を得ることができると考えられる。
これは、ワイヤ径2.4mm、等級5チタンを用いて本出願人が行った別の実験によって確認されており、第1のPTAトーチに約250Aの電流を供給し第2のPTAトーチに約300Aの電流を供給したときに9.7kg/時の堆積速度をもたらした。
【0030】
代替形態として、本発明は、溶融池におけるデンドライト結晶成長の発生傾向を克服するために溶融池において熱パルスを生成する手段も備えることができる。この特徴により、改善された粒構造に起因して機械特性が強化された金属物体を形成することができる。
熱パルス化は、
脈動する(pulsating)DC電位を送達する第3のDC発電機を用い、
DC発電機の負極を第2のPTAトーチの電極に接続するとともに、正極を母材に接続して、第2のPTAトーチの電極と母材との間の脈動するアーク放電によって電荷が移送される電気回路を形成する
ことによって得ることができる。
第2のPTAトーチの電極と母材との間のアーク放電は、印加される脈動するDC電位に従ってオンオフされ、したがって、母材の溶融池内への脈動する熱流束を形成する。パルス化の周波数は、1Hzから数kHz以上例えば10kHzの範囲とすることができる。