(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明を実施したプラズマ処理装置10は、複数枚の被処理物に対してプラズマ処理を行う。この例では被処理物として、板状の被処理物である基板11(
図2参照)の上面と下面とを被処理面としてプラズマ洗浄する。基板11は、その上面に複数の半導体素子を実装したものである。プラズマ洗浄では、半導体素子の電極、その電極とワイヤボンディングで接続される基板の接続部をクリーニングする。また、はんだボール(電極)を形成するための基板11の下面もクリーニングする。
【0020】
なお、被処理物としては、上記のように半導体素子を実装した基板11に限らず、リードフレームなどでもよい。また、後述するように間隔をあけて積層した状態でホルダーに保持できるものであれば、基板等に電子部品を実装したものや凹凸があっても板状といえる被処理物や、立体的な形状の被処理物に対してプラズマ処理をすることができる。さらに、この例では、プラズマ処理として基板の接続面、半導体素子の電極に付着した樹脂等を除去するプラズマ洗浄について説明するが、プラズマ処理は、デスミア、デスカム、エッチング、表面改質などでもよい。
【0021】
プラズマ処理装置10は、プラズマ処理を行う処理ユニット12と、処理を制御する制御ユニット13を有する。処理ユニット12は、内部に処理室14を形成する真空槽15、処理室14内に配された電極や、真空ポンプ16,ガス供給装置17、高周波電源18等などで構成される。真空槽15は、箱状であり、真空槽15の側面及び上面となる蓋部15aと、底面部15bとからなる。これら蓋部15a,底面部15bは、例えばステンレス製である。蓋部15aは、上下方向に移動自在であり、下方に移動することによって底面部15bとともに閉じた空間としての処理室14を形成する(
図4参照)。
【0022】
真空ポンプ16は、処理室14の排気を行う。この排気により処理室14を例えば1〜100Paの真空度にする。また、真空ポンプ16は、プラズマ洗浄中においても、処理室14からの排気を継続して行い、所定の真空度を維持する。ガス供給装置17は、処理室14に導入するプロセスガス、例えばアルゴンガスを供給する。プロセスガスは、プラズマ処理の内容や処理対象によって適宜に選択することができ、アルゴンガスの他に窒素ガス、酸素ガス,水素ガス、四フッ化炭素(CF
4)ガス等や、それらの混合ガスを用いてもよい。高周波電源18は、高周波電圧を出力し、それを後述する電極に印加することでプラズマを発生させる。高周波電圧の周波数は、プラズマ処理の内容や処理対象によって適宜決定されるものであり、通常は例えば3kHz〜300MHzの範囲が用いられる。
【0023】
制御ユニット13は、処理ユニット12を制御する制御回路などで構成される。また、この制御ユニット13には、蓋部15aを上下方向に移動させる昇降機構19を備えている。この昇降機構19により蓋部15aは、
図3に示すように、プラズマ洗浄を行うために処理室14を形成する閉鎖状態と、
図4に示すように、下降位置から上昇して処理室14を開放した開放状態との間で移動する。蓋部15aを開放状態とすることにより、基板11の処理室14への搬入・搬出を行うことができる。
【0024】
図2に示すように、プラズマ洗浄すべき基板11は、ホルダー21に保持した状態で処理室14内にセットされる。ホルダー21は、複数の基板11を間隔をあけて積層した状態で保持するものである。このホルダー21は、平行な一対の側板22、平行な天板23と底板24を有する断面が矩形の角筒形状であり、両端部が基板11を出し入れするための開口25となっている。なお、各開口25に開閉自在な蓋を設け、プラズマ洗浄中にその蓋で開口25を閉じてもよい。このようにすることで、開口25を通したプラズマの流れや流れの乱れの発生を阻止し、プラズマ洗浄の均一性を向上させることができる。この例では、後述する第1流路制御板が各開口25を塞ぐ蓋として機能する。
【0025】
各側板22の内面には、それぞれ複数本の保持溝26が適当な間隔で水平に設けられている。一方の側板22に設けられる各保持溝26のそれぞれに対向して、他方の側板22の保持溝26が設けられている。各側板22の相対する保持溝26に基板11の両側縁を差し込むことにより、基板11は、上面を上に向けた姿勢でホルダー21内に水平に保持される。各保持溝26にそれぞれ基板11を差し込むことにより、ホルダー21内に複数枚の基板11が上下方向に所定の間隔をあけて積層された状態に保持される。なお、下面を上に向けた姿勢で保持してもよい。
【0026】
各側板22には、水平方向に伸びた側面開口27が各保持溝26の上側及び下側にそれぞれ配されるように複数設けられ、積層された基板11の間の部分が開口となっている。側面開口27を通して、ホルダー21内の積層された基板11の間にプラズマを導入する。側面開口27から導入されるプラズマを均一かつ十分とするために、側面開口27から基板11の任意の部分までの距離を短くするのがよい。すなわち、対向する一対の側面開口27の間隔を短くすることが好ましい。このため、ホルダー21は、基板11の長辺の縁部を保持溝26で保持するようにしてある。
【0027】
基板のスルーホールやビアホールの壁面に付着する樹脂残渣を除去するデスミアの場合、基板に設けたスルーホールやビアホールの側面及び底面などの壁面が処理面となる。この場合には、スルーホール等の開口が形成された基板の上面または下面がプラズマを一次的に供給すべき面となり、その一次的に供給すべき面の開口からスルーホール等の内部にプラズマを供給すればよい。
【0028】
なお、上記ホルダー21の構成は一例であり、例えばパイプなどを用いたフレーム構造のホルダー21を利用してもよい。この場合、ホルダー21の側面に側板を設けず開口のままとして、それをホルダー内にプラズマを導入する側面開口とすることができる。また、
図2では、7枚の基板11を保持するホルダー21を描いてあるが、実際には20枚程度を保持する。ホルダー21に保持される基板11の枚数は適宜に設定でき、1枚でも任意の複数枚でもよい。さらに、この例では上下方向に基板11を積層しているが、例えば左右方向に基板11を積層してもよい。
【0029】
図3,4に示すように、処理室14内には、載置台29、ガス導入部30、電極ユニット31、第1,第2流路制御板32,33などが配される。これらのうちガス導入部30、電極ユニット31、第1,第2流路制御板32,33は、蓋部15aに取付けられており、蓋部15aと一体に上下方向に移動する。
【0030】
載置台29は、底面部15bの略中央に配され、絶縁性の脚部36を挟んで底面部15bに固定されており、真空槽15とは電気的に絶縁されている。脚部36に用いられる絶縁性の材料としては、例えばテフロン(登録商標)が用いられている。なお、後述する他の絶縁性の部材についても同様である。
【0031】
載置台29には、上述のホルダー21がセットされる。ホルダー21は、ガス導入部30に一方の側板22を向けた姿勢で載置台29上に置かれる。この例では、ホルダー21を処理室14内に固定していない。このため未処理の複数枚の基板11をホルダー21に保持したまま載置台29上にセットし、プラズマ洗浄後では処理済みの複数枚の基板11をホルダー21に保持したまま一括して載置台29から移動させて処理室14の外に取り出すことができる。このホルダー21のセット、取り出しはロボットアーム(図示省略)によって行われるが、手動で行ってもよい。
【0032】
なお、ホルダー21を処理室14内に固定した構成とすることもできる。この場合には、プラズマ洗浄毎に、処理室14に配置されたホルダー21から処理済みの基板11を1枚ずつ取り出し、また未処理の基板11を1枚ずつそのホルダー21に差し入れる。
【0033】
ガス導入部30は、箱形状であり、載置台29上にホルダー21の側板22が対面する蓋部15aの1つの側面に取付けられている。このガス導入部30は、その中空部にガス供給パイプ37を介してガス供給装置17からのプロセスガスが供給される。また、処理室14の中央を向いたガス導入部30の面、すなわちホルダ−21の側板22に対向する面30aには、微小な例えば直径が1mm程度の複数の導入口38が形成されている。なお、ガス導入部30は、絶縁板30bを挟んで蓋部15aに取付けられており、真空槽15とは電気的に絶縁されている。
【0034】
各導入口38は、それぞれ中空部に供給されたプロセスガスをホルダー21の側面(側板22)に向けて水平に放出する。これにより、基板11の積層方向と直交する向きであり、また基板11と平行な放出方向でプロセスガスを処理室14内に導入する。複数の導入口38は、面30a上における側板22に対応する領域に均一に分布している。これにより、ホルダー21の側面の全面にプロセスガスが向かうようにシャワー状にプロセスガスを放出して、ホルダー21の側面開口27からその内部にプラズマを均一に供給する。なお、導入口38が分布する領域は、側板22に対向する範囲よりも広くても狭くてもよいが、同等の範囲であることが好ましい。
【0035】
電極ユニット31は、プロセスガスを励起してプラズマを発生させる。この電極ユニット31は、1列の電極列31aを構成する各々複数本の第1及び第2電極41,42と、一対の電極保持板43a,43bを備えている。各電極41,42は、導電性を有する金属製、例えばアルミ製であって、断面が円柱の棒状(円柱形状)に形成されている。また、電極保持板43a,43bは、例えばアルミ製である。
【0036】
第1及び第2電極41,42は、いずれも絶縁部材44(
図5参照)を介して上端が電極保持板43aに下端が電極保持板43bに取付けられ、互いに略平行、かつ所定の間隔で離間させた格子状(連子)に配列されて電極列31aを形成している。この電極列31aでは、第1電極41と第2電極42とが交互に並べられている。
【0037】
上記のように構成される電極列31aは、ホルダー21と導入口38との間で、プロセスガスの放出方向と直交する面内に第1及び第2電極41,42が配される。すなわち、各電極41,42がプロセスガスの放出方向と直交する方向に並べた状態に配置される。この例では各電極41,42を上下方向に長尺に、すなわち各電極41,42の軸方向を上下方向としているが、各電極41,42の軸方向が水平方向となるようにしてもよい。
【0038】
上記のように電極列31aを配置することによって、ホルダー21の側板22に対面させて配置した第1及び第2電極41,42の間に導入口38から導入されるプロセスガスを供給し、効率的にプラズマを発生させ、また発生したプラズマを効率的にホルダー21に供給する。また、放出方向と直交する面内に第1及び第2電極41,42を配することにより、プラズマ発生領域とホルダー21の側面との距離を均等にして、ホルダー21内でのプラズマ密度を均一にしている。
【0039】
さらに、ホルダー21の側面開口27からその内部にプラズマを均一に導入するために、ホルダー21の側面が各電極41,42の配列している範囲に対面している。より厳密には、各電極41,42の配列範囲内でプラズマが発生する領域にホルダー21が側面を対向されている。
【0040】
図5に示すように、電極ユニット31は、絶縁材料で作成されたスペーサ45を介して電極保持板43aを蓋部15aの天井面にネジ止めすることによって処理室14内に取り付けられている。また、各電極41,42は、上述のように絶縁部材44を介して電極保持板43a,43bに取り付けられている。絶縁部材44は、略円柱形状であり、上部にフランジ44aが、中心に孔44bがそれぞれ形成されている。絶縁部材44は、電極保持板43aの開口に通されてフランジ44aを電極保持板43aの上面に係合した状態に組み付けられる。電極41,42は、その上端部が孔44bに通したネジ46に螺合されることで、絶縁部材44の下端面に上端面を密着させた状態とされて電極保持板43aに固定される。各電極41,42の下端についても、同様に絶縁部材44を介して電極保持板43bに固定される。
【0041】
ネジを緩めることにより蓋部15aから電極ユニット31を取り外し、また各電極41,42を電極保持板43a,43bから取り外して、各電極41,42のクリーニングや交換を行うことができる。ネジ46は、導電性を有するものが用いられており、上側のネジ46のうちの第1電極41と螺合するものは、蓋部15aの内部の配線で高周波電源18に接続され、第2電極42に螺合するものは接地される。これにより、第1電極41に高周波電圧が印加され、第2電極42が接地される。
【0042】
図3,4に示されるように、ホルダー21を挟んでガス導入部30と反対側の蓋部15aの側面に、すなわちガス導入部30に対向する位置に排気口47が設けられている。排気口47には、真空ポンプ16が接続されており、この排気口47から処理室14内からプラズマを含むプロセスガスの排気を行う。排気口47に対向し、かつ排気口47からホルダー側に適当な距離で離れた位置に第2流路制御板33が配されている。第2流路制御板33は、ホルダー21側から見たときに排気口47を覆い隠すように、排気口47の口径よりも大きな板状に形成されている。第2流路制御板33は、ホルダー21から排気口47に向かうプラズマの流路を遮るようにプラズマの排気流路を制御する。これにより、処理室14内において均一なプラズマの流れ形成する。
【0043】
なお、排気口47の位置は、この他にも真空槽15の底面部15bや天井面など適宜に決めることができるが、排気口47は、ホルダー21を挟んで導入口38とは反対側の処理室14の領域に配するのがよい。したがって、処理室14内においてホルダー21を挟んで導入口38側とは反対の領域側を囲む真空槽15の底面部15b,天井面や各側面等に排気口47を設けるのがよい。また、第2流路制御板33の有無は、真空下でのプラズマの流れに対する影響は、あまり大きくない。このため、例えば第2流路制御板33を省略してもよい。
【0044】
図6に示すように、第1流路制御板32は、ホルダー21とほぼ同じ大きさに切り欠かれた収容部32aを有し、ガス導入部30側から見て略コ字状に形成されている。この第1流路制御板32は、
図6に示されるように、蓋部15aが開放状態のときには、載置台29の上方に移動して、載置台29上からホルダ−21の移動、及び載置台29上へのホルダー21のセットを許容する。
【0045】
図7に示すように、第1流路制御板32は、蓋部15aが閉鎖状態のときには、収容部32a内にホルダー21を収容してこのホルダー21の周囲に配される。これにより、ホルダー21と真空槽15の内面との間を塞ぎ、ホルダー21の周囲を通って、処理室14の導入口38側の領域から排気口47側の領域にプラズマが流れることを抑制し、ホルダー21内部にプラズマを効率的に供給する。脚部36は、第1流路制御板32と同様に流路を制御する機能を有し、載置台29と底面部15aとの間を塞ぎ、これらの間にプラズマが流れないようにする。なお、第1流路制御板32,第2流路制御板33は、脚部36と同様に絶縁性の材料で作製されている。
【0046】
図8に示すように、蓋部15a及び底面部15bは接地されている。前述のように、第1電極41は、高周波電源18が接続されて高周波電圧が印加される。第2電極42は、接地されている。ホルダー21,載置台29は、例えば金属製であるが、上述のように脚部36及び第1流路制御板32を絶縁性とすることによって、電気的には高周波電源18に接続されておらず、また接地もされない。また、ガス導入部30についても、前述のように真空槽15とは絶縁されており、高周波電源18に接続されておらず、また接地もされない。
【0047】
次に上記構成の作用について説明する。まず、処理室14内が大気圧になっていることを確認してから昇降機構19を作動し、蓋部15aを上昇させて開放状態にする。次に図示しないロボットアームにより、複数の基板11を保持したホルダー21を載置台29の上に所定の向きでセットする。
【0048】
ロボットアームの退避後に、昇降機構19により蓋部15aを下降し、閉鎖状態にする。続いて真空ポンプ16が作動されて、処理室14内が所定の真空度となるまで排気される。所定の真空度に達すると、ガス供給装置17からのプロセスガスの供給が開始されるとともに、高周波電源18により第1電極41に高周波電圧が印加される。プロセスガスは、各導入口38のそれぞれから処理室14内に導入される。そして、このプロセスガスが、第1電極41に対する高周波電圧の印加により第1電極41と第2電極42と間に生じる電界で励起されてプラズマが発生する。
【0049】
発生したプラズマがホルダー21の内部に供給されると、そのプラズマ中のラジカルやイオンにより、半導体素子の電極の表面を含む基板11の上面及び下面に付着している汚染物質が除去される。このときに、プロセスガスは、各導入口38からホルダー21に向けて放出され、処理室14内はホルダー21を挟んで各導入口38と反対側の排気口47で排気されている。このため、マクロ的に見ればプロセスガスから生成されるプラズマがホルダー21に向けて流れる。また、第1流路制御板32,脚部36により、プラズマのほとんどがホルダ−21内を通る。
【0050】
さらに、側板22に対応する領域に均一に分布させた複数の導入口38からプロセスガスをシャワー状に放出するとともに、プラズマの発生領域にホルダー21の側面が全面的に対面するようにしているため、ホルダー21の側面開口27からホルダー21の内部にプラズマが均一に供給される。しかも、第2流路制御板33の作用で排気口47からの排気によるプラズマのホルダー21内への導入ムラも抑制されている。したがって、各基板11の上面及び下面は、十分なプラズマが均一に供給されて、均一かつ十分に洗浄される。
【0051】
上記のようにして各基板11に対してプラズマ洗浄を行った後、プロセスガスの供給、排気、及び高周波電圧の印加を停止する。この後、処理室14内を大気圧に戻してから昇降
機構19を作動させ、蓋部15aを開放状態にしてから、載置台29上からホルダー21を取り出す。
【0052】
上記実施形態では、第1電極と第2電極とを交互に配列した1列の電極列であるが、第1電極と第2電極の配列、電極列の配置などは種々のものを採用することができる。
図9は、電極ユニット51を2列の電極列51aから構成したものである。各電極列51aは、最初の実施形態と同様に、プロセスガスの放出方向と直交する面内に第1電極41と第2電極42とを交互に並べて格子状(連子)に配列したものであり、2列の電極列51aは、プロセスガスの放出方向に所定の間隔をあけて配してある。
【0053】
なお、
図9に示す例では、電極列51aは2列であるが3列以上であってもよい。また、
図10に示すように、ホルダー21を挟んで導入口38側と排気口47側との処理室14の各領域に電極ユニット51をそれぞれ設けてもよい。
図10に示す例では、導入口38側と排気口47側のいずれの電極ユニット51も2列ずつ電極列51aを設けているが、導入口38側と排気口47側に電極列を1列ずつ設けてもよく、それぞれ3列以上設けてもよい。さらには、導入口38側と排気口47側の列数や電極数が異なってもよい。
【0054】
図11は、電極列を同じ種類の複数本の電極で構成し、電極の種類の異なる電極列を互いに離間させて配した例を示すものである。
図11に示す例では、電極ユニット52は、プロセスガスの放出方向と直交する面内に複数の第1電極41を並べて格子状に配列した電極列52aと複数の第2電極42を並べて格子状に配列した電極列52bとからなる。電極列52aと電極列52bは、プロセスガスの放出方向に所定の間隔で離間させてある。この例では、第1電極41と第2電極42とは、互いにプロセスガスの放出方向に離間して配されるが同様な効果が得られる。
【0055】
図11の例では、処理室14のホルダー21を挟んで導入口38側と排気口47側との各領域にそれぞれ電極ユニット52を設けている。導入口38側及び排気口47側の各電極ユニット52では、いずれも電極列52aが電極列52bよりもホルダー21に近い位置に配されており、ホルダー21を挟んで対称的な電極配置となっている。なお、
図11の例とは逆に電極列52bが電極列52aよりもホルダー21に近い位置に配されるようにしてもよい。また、このような電極列52a,52bからなる電極ユニット52を
導入口38側だけに設けてもよい。
【0056】
なお、
図10や
図11に示される例のように、導入口38側と排気口47側とに電極列をそれぞれ設ける場合には、導入口38側の電極と排気口47側の電極との間がプラズマ発生領域とならないように、電極の配列や位置、電極列の位置等を決めるべきである。このような観点から、ホルダー21を挟んで対称的な電極配置とすることは好ましい態様である。
【0057】
図12は、隣接した電極列間で電極の配列をずらした電極ユニットの列を示すものである。この例では、電極ユニット53として、プロセスガスの放出方向と直交する面内に第1電極41と第2電極42とを交互に並べて格子状に配列した2列の電極列53a,53bを設けるとともに、各電極列53a,53bの第1,第2電極41,42の配列を1本分ずらしている。これにより、同一の電極列中で第1,第2電極41,42が互いに離間して配されてとともに、隣接した電極列間の第1,第2電極41,42がプロセスガスの放出方向に互いに離間して配されている。なお、隣接した電極列間で電極の配列をずらした電極列を3列以上設けてもよい。
【0058】
図13は、電極の種類が異なる隣接した電極列間で電極位置を配列方向にずらした電極ユニットの例を示している。この例の電極ユニット56では、プロセスガスの放出方向と直交する面内に複数の第1電極41を並べて格子状に配列した電極列56aと複数の第2電極42を並べて格子状に配列した電極列56bとをプロセスガスの放出方向に所定間隔で並べるとともに、電極列56a,56bの電極の位置を電極の配列方向にずらして配してある。電極列56a,56bは、同じピッチで電極が配列されているが、そのピッチの半分だけ電極の位置がずらされている。
【0059】
なお、
図13の例では、第1電極41の電極列56aを第2電極42の電極列56bよりもホルダー21に近い位置に配置しているが、これとは逆に、第2電極42の電極列を第1電極42の電極列よりもホルダー21に近い位置に配置してもよい。また、隣接した電極列間で電極の種類が異なり、さらに電極位置を配列方向にずらした電極列を3列以上設けてもよい。
【0060】
図12,
図13に示されるような電極列の配列の場合にも、処理室14のホルダー21を挟んで導入口38側と排気口47側との各領域にそれぞれ電極ユニットを設けてもよい。
【0061】
上記各実施形態では、第1,第2電極の形状を円柱形状としたが、形状はこれに限らず例えば
図14に示す第1,第2電極61,62のように角柱形状や、
図15に示す第1,第2電極63,64のように板状のものでもよい。また、電極を筒形状としてもよい。
【0062】
図16は、筒形状の電極の中空な内部に熱媒体を流すことにより電極の温度を制御する例を示すものである。電極65は上端が開口し、下端が閉じた筒形状となっている。この電極65を第1,第2電極として真空槽15に取付けたときに、その中空部の中心に供給管66が挿入される。供給管66は、温度制御部67から熱媒体としての冷却水が供給される。
【0063】
供給管66を通して電極65の中空部の先端にまで冷却水が送られ、その冷却水が供給管66と電極65の内壁との間を通って電極65は上端にまで流れる。電極65は上端に達した冷却水は、図示しない排水パイプを通して温度制御部67に送られる。温度制御部67は、このようにして戻ってくる冷却水の温度に基づいて電極65の温度が所定の範囲に維持し高温にならないように冷却水の温度や流量を調整する。これにより、電極65の高温になることによる基板などの被処理物への影響を低減することができる。
【0064】
図17に示すように、第1電極41同士、第2電極42同士で、それらを上端または下端で順次につないで、それぞれに冷却水を流すように構成してもよい。また、2本の電極の一端、例えば下端を接続して、一方の電極の上端から冷却水を流し入れ、他方の電極の上端から冷却水を排出してもよい。熱媒体の絶縁性が担保できる場合は、第1電極と第2電極とを絶縁性のパイプで接続して、熱媒体を通してもよい。さらに、電極の一端から冷却水を流し入れ、その電極の他端から排出させてもよい。
【0065】
図18は、各電極として格子形状の電極板を用いた例を示すものである。この例では、第1,第2電極板71,72は、いずれも導電性の板部材に多数の矩形状の開口を形成することにより格子状にしてある。第1,第2電極板71,72は、プロセスガスの放出方向に互いに離間して配されるとともに、ホルダー21と導入口との間に、いずれもプロセスガスの放出方向と直交する面内に配される。このようにしても同様な効果が得られる。第1,第2電極板71,72に形成する開口は矩形に限らず円形、三角形など様々な形にすることができる。また、規則的に開口を形成する必要はなくランダムでもよい。さらには、第1,第2電極板が網目状であってもよい。
【0066】
また、
図1に示すプラズマ処理装置では、真空槽の蓋部を上方に移動させて処理室を開放することにより、ホルダーのセットや取り出しを行う構成であるが、ホルダーのセットや
取り出すための構成は、各電極の取り付け構造などに応じて適宜変更できる。
図19の例では、真空槽75を本体部75aと、この本体部75aから引き出される引き出し部75bとに分けている。本体部75aに、第1,第2流路制御板32,33、第2流路制御板33、排気口47、排気口47側の電極ユニット50を設け、引き出し部75bに載置台29、ガス導入部30、ガス導入口側の電極ユニット50を設けている。ホルダー21のセットや取り出しを行う場合には、本体部75aから引き出し部75bを引き出して行う。なお、電極ユニット50に代えて、他の電極の配列・配置の電極ユニットを設けてもよい。
【0067】
上記各実施形態では、ガス導入部を箱状としたが、ガス導入部は、均一にプロセスガスを放出できるものであればよい。例えば、
図20に示すガス導入部80は、環状管81と複数の放出管82とで構成したものである。環状管81は、端部がないように中空管を環状に形成したものである。
環状管81は、供給部83にガス供給パイプ37が接続されており、プロセスガスが供給部83を通して
環状管81の内部に供給される。各放出管82は、直線状の中空管に複数の導入口38を形成したものである。複数の導入口38は軸方向に並べて列状に形成してある。放出管82は、環状管81の内側で、その両端が
環状管81に接続されている。これにより、
環状管81から放出管82の内部にプロセスガスを供給し、各導入口38から放出する。環状管81に対する放出管82の両端の接続位置は、供給部83と異なる位置としてある。
【0068】
上記のようにガス導入部80を構成することにより、均一な各放出管82のそれぞれに均一な圧力でプロスガスを供給し、各導入口38から放出されるプロセスガスの放出量を均一にしている。そして、これにより、電極ユニット内で発生するプラズマが均一になるようにしている。
【0069】
上記各実施形態では、第1電極が高周波電圧が印加されるアノード電極、第2電極が接地されたカソード電極となっているが、
図21に一例を示すように、カソード電極としての第2電極42を接地しない構成としてもよい。
【実施例】
【0070】
本発明の効果を確認するために、各電極41,42が
図10のように配列され、その他構成は、第1実施形態の構成と同じプラズマ処理装置10でプラズマ処理を行った。また、比較のために、
図22に示す構成の従来のプラズマ処理装置90で同様の表面処理を行った。なお、プラズマ処理では、プロセスガスとして、アルゴンガスを用い、真空度を10Paとした。
【0071】
プラズマ処理装置90は、真空槽91内に高周波電圧が印加される一対の電極板92の間にホルダーを配置し、真空槽91自体を接地電極としたものである。このプラズマ処理装置90では、プラズマ処理装置10のものと同じホルダ−21を用い、側板22が電極板92に対面するように配した。プロセスガスは、ホルダ−21の開口25に対向する位置から真空槽91内に導入し、それと反対側から排気を行った。
【0072】
[プラズマ洗浄1]
約10cm×20cmの銅板を被処理物としてホルダー21にセットし、プラズマ処理装置10、及びプラズマ処理装置90で、それぞれ1分間処理を行った。処理後、銅板の表面の接触角度を測定した。
【0073】
本発明のプラズマ処理装置10で処理した銅板の表面は、その全面にわたって均一な値の接触角度が得られ、しかも接触角度が低い値となった。この結果より、プラズマ処理装置10では、ホルダー21の内には、プラズマが均一に今供給されていることが分かった。
【0074】
他方、従来のプラズマ処理装置90で処理した銅板は、その表面の接触角度が不均一であり、周辺部と中央部とで差が生じた。周辺部では、低い値の接触角度となったが、中央部では高い値の接触角度となった。この結果から従来のプラズマ処理装置90では、ホルダー21内でのプラズマの供給量にムラがあり、銅板の表面に対するプラズマ処理が不均一となることが分かった。
【0075】
[プラズマ洗浄2]
約10cm×20cmの基板の表面に複数のICチップを搭載したものを被処理物としてホルダー21にセットし、プラズマ処理装置10、及びプラズマ処理装置90で、それぞれ1分間処理を行った。処理後、ICチップの電極と基板の接続面とを金線で接続するワイヤボンディングを実施した。ワイヤボンディングの後に、ICチップの電極と金線との接続信頼性を評価した。接続信頼性は、ICチップの電極と金線との溶着強度(接合強度)をせん断力として測定し、その測定結果に基づいて評価した。せん断力の測定には、ボンドテスター4000Plus(デイジ・ジャパン株式会社製)を用いた。
【0076】
本発明のプラズマ処理装置10では、基板の表面の周辺部に搭載されたICチップ、基板の表面の中央部に搭載されたICチップのいずれについても、電極と金線の溶着強度が大きく、ワイヤボンディングの接続信頼性が高いという結果になった。
【0077】
従来のプラズマ処理装置90で処理したものは、基板の表面の周辺部に搭載されたICチップ、基板の表面の中央部に搭載されたICチップのいずれについても、電極と金線の溶着強度が小さく、ワイヤボンディングの接続信頼性が低いという結果になった。プラズマ処理装置90による処理時間を2分とした場合も同様な結果となった。
【0078】
以上より、本発明のプラズマ処理装置10は、短時間でホルダー21内に十分なプラズマが供給されて、基板の表面が全面的に十分な洗浄性が得られることが確認された。
【0079】
[プラズマエッチング]
i線レジストを表面に形成した9個のウエハチップをマトリクス状に基板の表面に配置したものを被処理物として、ホルダー21にセットして、プラズマ処理装置10、及びプラズマ処理装置90で、プラズマによるエッチングを実施した。基板のサイズは約10cm×20cmである。また、ホルダー21には、上下方向に離間させてウエハチップを積層配置した基板を複数枚保持させた。エッチングは、電極41,42の温度上昇を考慮して、断続的に5回行った。各1回の処理時間は2分間とし、1回の処理ごとに30分間の冷却期間を設けた。評価では、エリプソメータを用いてエッチング前後のi線レジストの膜厚を測定し、エッチングレートの均一性を評価した。
【0080】
プラズマ処理装置10で処理したものは、表面中央部でも周辺部とほぼ同等のエッチングレートが得られていた。また、積層配置された各基板について同様なものとなった。この結果より、プラズマ処理装置10では、ホルダ−21内の全体にプラズマが均一に供給されて、均一に処理されていることが確認された。
【0081】
他方、従来のプラズマ処理装置90で処理したものは、基板の表面に配置されたウエハチップのうちの表面中央部に配されたウエハチップのi線レジストに対するエッチングレートが周辺部のものに対して低い結果となった。この結果は、積層配置された各基板について同様なものとなった。