(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端に針先(20a)を有する針体(16)と、前記針体(16)に取り付けられた翼部材(18、18a〜18c)とを有する翼状針(12、12a、12b、12c)と、
延在方向に対して垂直な円形の先端開口部(40)を有し、前記翼状針(12、12a、12b、12c)に対して軸線方向に変位可能であり、前記翼状針(12、12a、12b、12c)に対して相対的に先端方向に移動した際、前記翼部材(18、18a〜18c)が折り畳まれた状態で前記針体(16)を覆うプロテクタ(14)と、を備え、
前記翼部材(18、18a〜18c)は、前記針体(16)に固定された軸部(28)と、前記軸部(28)から互いに反対方向に延出した弾性変形可能な一対のウイング(30a、30b)とを有し、
前記一対のウイング(30a、30b)の各々は、その基端側端縁(36)が、基端方向に向かうに従って前記軸部(28)側に近づくように傾斜しており、
前記プロテクタ(14)内に前記翼部材(18、18a〜18c)が収容される際、前記一対のウイング(30a、30b)は前記翼状針(12、12a、12b、12c)の背面側に折り畳まれることが可能である、
ことを特徴とする翼状針組立体(10)。
【発明の概要】
【0005】
スリットが設けられたプロテクタの場合、スリットと翼の位置を合わせる必要があり、すなわち指向性があり、翼状針の収容操作が面倒である。また、特許第4182756号公報に開示された傾斜した先端側開口部を有する針カバーの場合、翼部の基端側縁部が、傾斜した先端側開口部の両側面部に当たるように、針カバーと翼付き針の向きを調整する必要があり、すなわち指向性があり、翼付き針の収容操作が面倒である。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、プロテクタに翼状針を簡単な操作で収容することができる翼状針組立体を提供することを目的とする。
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る翼状針組立体は、先端に針先を有する針体と、前記針体に取り付けられた翼部材とを有する翼状針と、延在方向に対して垂直な円形の先端開口部を有し、前記翼状針に対して軸線方向に変位可能であり、前記翼状針に対して相対的に先端方向に移動した際、前記翼部材が折り畳まれた状態で前記針体を覆うプロテクタと、を備え、前記翼部材は、前記針体に固定された軸部と、前記軸部から互いに反対方向に延出した弾性変形可能な一対のウイングとを有し、前記一対のウイングの各々は、その基端側端縁が、基端方向に向かうに従って前記軸部側に近づくように傾斜
しており、前記プロテクタ内に前記翼部材が収容される際、前記一対のウイングは前記翼状針の背面側に折り畳まれることが可能であることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、ウイングの基端側端縁が傾斜していることにより、翼状針をプロテクタ内に引き込む初期段階で、傾斜の作用によってウイングの変形(折り畳み)が促進される。従って、ウイングは変形しながらプロテクタ内に引き込まれ、これにより、ウイングが折り畳まれた状態でプロテクタ内に収容される。本発明の場合、プロテクタの先端開口部は、プロテクタの延在方向に対して垂直な円形であるため、翼状針をプロテクタ内に収容する際の、翼状針の軸線回りに関する方向性(指向性)がない。すなわち、プロテクタと翼状針との周方向の相対位置関係に関わらず、翼状針をプロテクタ内に引き込む操作により、確実且つ簡単に翼状針をプロテクタ内に収容することができる。
【0009】
上記の翼状針組立体において、前記ウイングは、外側を構成する外翼部と、根元側を構成し前記外翼部よりも薄肉に形成された薄肉部と、前記外翼部と前記薄肉部との間を構成する段差部とを有し、前記段差部の少なくとも基端は、前記薄肉部側から前記外翼部側に向かって徐々に肉厚となるように傾斜していてもよい。この構成によれば、翼状針をプロテクタ内に引き込む際に、段差部がプロテクタの先端開口部に引っ掛かりにくい。従って、よりスムーズに収容することができる。
【0010】
上記の翼状針組立体において、前記段差部における前記基端側端縁に連なる部分は、弧を描くように形成されていてもよい。この構成によれば、段差部における基端側端縁に連なる部分がプロテクタの先端開口部に引っ掛かりにくい。よって、よりスムーズに収容することができる。
【0011】
上記の翼状針組立体において、前記段差部は、先端方向に向かうに従って前記ウイングの外端側に近づくように前記軸部の軸線に対して傾斜していてもよい。この構成によれば、翼状針をプロテクタ内に引き込む際に、ウイングが折り畳まれやすいため、よりスムーズに収容することができる。
【0012】
上記の翼状針組立体において、前記ウイングは、外側を構成する外翼部と、根元側を構成し前記外翼部よりも薄肉に形成された薄肉部と、前記外翼部と前記薄肉部との間を構成する段差部とを有し、前記段差部は、先端方向に向かうに従って前記ウイングの外端側に近づくように前記軸部の軸線に対して傾斜していてもよい。
【0013】
上記の翼状針組立体において、前記ウイングの外端縁から前記基端側端縁に連なる部分は、弧を描くように形成されていてもよい。この構成によれば、翼状針をプロテクタ内に引き込む際に、ウイングの外端縁から基端側端縁に連なる部分がプロテクタの先端開口部に引っ掛かりにくい。従って、よりスムーズに収容することができる。
【0014】
上記の翼状針組立体において、前記先端開口部の内周縁は、基端側に向かって内径が縮小するように面取りされているとよい。この構成によれば、先端開口部の内周縁が面取りされていることにより、プロテクタ内にウイングをよりスムーズに引き込むことができる。
【0015】
上記の翼状針組立体において、前記プロテクタは、前記先端開口部から基端側に向かって内径が縮小するテーパ部と、前記テーパ部の基端側に連なり内径が一定の平行部とを有するとよい。
【0016】
上記の構成によれば、翼状針をプロテクタ内に収容する際、テーパ部によってウイングをスムーズに折り畳むことができ、水平部では、弾発力により広がろうとするウイングからの反力を受けて翼状針を固定することにより、翼状針がプロテクタに対して先端方向に移動することを阻止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る翼状針組立体10について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る翼状針組立体10の平面図である。
図2は、翼状針組立体10の分解斜視図である。翼状針組立体10は、患者に穿刺される翼状針12と、翼状針12に付帯して設けられ翼状針12の使用後に翼状針12を収容するためのプロテクタ14とを備える。この翼状針組立体10は、採血、輸血、輸液等に際し、翼状針12を患者の皮膚に穿刺した状態で固定して使用される。
【0020】
翼状針12は、針体16と、針体16に対して取り付けられた翼部材18とを備える。針体16は、鋭利な針先20aを有する針本体20と、該針本体20の基端側に固定された多段円筒形状のハブ22とを有し、針アッセンブリとして構成されている。
【0021】
針本体20は、採血、輸血、輸液等の処置を受ける患者の皮膚に穿刺される部分であり、血液等の体液或いは輸液等の流路となる中空部を有する円管状に構成されている。針本体20の先端部には、液体の出入口として機能する開口20bが形成されている。針本体20は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、あるいは硬質樹脂で構成され得る。
【0022】
ハブ22は、針本体20の基端に連結された中空円筒状の部材であり、針本体20を支持するものである。本実施形態において、ハブ22は、先端側を構成する大径部22aと、この大径部22aから基端方向に延び且つ大径部22aよりも外径が小さい小径部22bとを有する。ハブ22は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート等の硬質樹脂により構成され得る。
【0023】
小径部22bの基端部は、翼部材18の基端から突出し、可撓性を有する長尺なチューブ24の一端と接続される。このチューブ24の他端は、図示しない輸血バッグ、採血バッグ、輸液バッグ等の容器に接続される。
【0024】
図1に示すように、翼状針組立体10の使用前において、翼状針12にはキャップ26が装着されている。このキャップ26は、その内部に針本体20を収容可能な中空筒状に構成され、基端側においてハブ22の先端側(大径部22a)と嵌合することで、針本体20を覆った状態で装着される。翼状針組立体10を使用する際は、キャップ26を先端方向に引っ張ることでキャップ26を翼状針12から離脱させ、針本体20を露出させることができる。
【0025】
図1に示すように、翼部材18は、中空状の軸部28と、この軸部28の下部から左右にそれぞれ延出した弾性変形可能な板状の一対のウイング30a、30bとを有する。軸部28には、上述したハブ22の小径部22bが挿入されている。軸部28は、ハブ22に対して回転可能であり、これにより、針体16と翼部材18とは相対的に回転可能となっている。ウイング30a、30bは、可撓性を有し、根元部付近が屈曲又は湾曲することにより、開閉(折り畳み)可能に構成されている。
【0026】
ウイング30a、30bは、外側を構成する外翼部31と、根元側を構成し外翼部31よりも薄肉に形成された薄肉部32と、外翼部31と薄肉部32との間を構成する段差部34とを有する。ウイング30a、30bの根元側に薄肉部32が設けられることにより、ウイング30a、30bは開閉が容易になっている。
図2に示すように、本実施形態では、ウイング30a、30bの根元側の上面が凹むことにより、薄肉部32が形成されている。
【0027】
図3Aに示すように、プロテクタ14に翼状針12を収容する際にウイング30a、30bが折り畳まれ易いように、一対のウイング30a、30bの各々は、その基端側端縁36が、基端方向に向かうに従って軸部28側に近づくように傾斜している。基端側端縁36の、軸線aに垂直な面S1に対する傾斜角度αは、例えば、5〜30°程度であり、好ましくは10〜25°であり、より好ましくは20°である。傾斜角度αが小さすぎると、プロテクタ14に収容する際にウイング30a、30bが折り畳まれにくい。傾斜角度αが大きすぎると、ウイング30a、30bの面積が小さくなり、ウイング30a、30bを把持しにくい。なお、軸線aは、針体16及び軸部28に共通する軸線である。
【0028】
プロテクタ14に翼状針12を引き込む際にウイング30a、30bの外側の部分がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛からないように、ウイング30a、30bの外端縁37から基端側端縁36に連なる部分38は、平面視で緩やかな弧(曲線)を描くように形成されている。弧を描くように形成された部分38の曲率半径は、例えば、1〜10mm程度であり、好ましくは6〜8mm程度である。
【0029】
図3AのIIIB−IIIB線に沿った断面図である
図3Bに示すように、本実施形態において、段差部34は、薄肉部32側から外翼部31側に向かって徐々に肉厚となるように傾斜している。段差部34の傾斜角度βは、例えば、ウイング30a、30bが延在する面S2に対して30〜60°程度であり、好ましくは約45°である。段差部34にこのような傾斜を設けることにより、プロテクタ14に翼状針12を引き込む際に、段差部34がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かることを防止することができる。なお、段差部34における傾斜は、少なくとも段差部34の基端に設けられればよく、段差部34の当該基端以外の部分については、ウイング30a、30bが延在する面S2に対して垂直に立ち上がる段差であってもよい。
【0030】
図3Aに示すように、本実施形態では、段差部34における基端側端縁36に連なる部分(段差部34の基端)は、面取りがなされることにより、平面視で弧を描くように形成されている。この構成により、プロテクタ14に翼状針12を引き込む際に、段差部34の基端がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かることを一層好適に防止することができる。弧を描くように形成された部分の曲率半径は、例えば、0.5〜3mm程度であり、好ましくは1〜2mm程度である。
【0031】
さらに、本実施形態では、プロテクタ14に翼状針12を引き込む際にウイング30a、30bが折り畳まれ易いように、段差部34は、先端方向に向かうに従ってウイング30a、30bの外端側に近づくように軸線aに対して傾斜している。この傾斜角度γは、例えば、1〜20°であり、より好ましくは15°である。なお、傾斜角度γが大き過ぎると、薄肉部32の面積が増えてウイング30a、30bが軟らかくなり過ぎて、患者への穿刺がしづらくなる。
【0032】
翼部材18は、ウイング30a、30bの根元側(薄肉部32)が屈曲して容易に開閉可能な適度の可撓性を有するように柔軟な樹脂材料で構成するとよい。硬質の樹脂材料で構成された軸部28と、軟質の樹脂材料で構成されたウイング30a、30bとを別々に製作し、それらを結合して翼部材18としてもよい。
【0033】
プロテクタ14は、翼状針12に対して軸線a方向に変位可能であり、翼状針12に対して相対的に先端方向に移動した際、針本体20の針先20a及び翼部材18を覆うものである。
図1に示すように、具体的には、プロテクタ14は、中空円筒状の部材であり、その軸線方向(延在方向)に対して垂直な円形の先端開口部40を有する。プロテクタ14の基端壁には、チューブ24が挿通される挿通孔42が設けられ、プロテクタ14は、チューブ24に沿って変位可能となっている。
【0034】
プロテクタ14の全長は、翼状針12の全長よりも長く、ウイング30a、30bが折り畳まれた状態で翼状針12がプロテクタ14内の最も深い位置に収容された状態で、翼状針12の針本体20の針先20aがプロテクタ14の先端開口部40よりも基端側にある。すなわち針先20aが先端開口部40から突出しない。
【0035】
プロテクタ14の構成材料としては、ウイング30a、30bが折り畳まれた状態の翼状針12を内部に収容しウイング30a、30bからの反力を十分に支持できる程度の適度の剛性があれば特に限定されないが、透明又は半透明の材料であると、翼状針12の引き込み位置やウイング30a、30bの折り畳み状態が確認できるため好ましい。そのような透明又は半透明の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0036】
プロテクタ14は、先端開口部40から基端側に向かって内径が縮小するテーパ部44と、テーパ部44の基端側に連なり内径が一定の平行部46とを有する。より具体的には、テーパ部44は、先端開口部40側の第1テーパ部44aと、この第1テーパ部44aよりも緩い傾斜で基端方向に向かって内径が縮小する第2テーパ部44bとを有する。第2テーパ部44bの軸線方向の長さは、第1テーパ部44aのそれよりも長い。
【0037】
図1に示すように、プロテクタ14内にウイング30a、30bを引き込み易いように、本実施形態では、先端開口部40の内周縁40aは、基端側に向かって内径が縮小するように面取りされている。
【0038】
本実施形態に係る翼状針組立体10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0039】
上記のように構成された翼状針組立体10を用いて採血、輸血、輸液等を行うには、先ず、翼状針12からキャップ26を取り外し、針体16を露出させる。次に、一対のウイング30a、30bを指で摘んで閉じた(畳んだ)状態とする。具体的には、両方のウイング30a、30bの薄肉部32を屈曲させて一方のウイング30aと他方のウイング30bを重ね合わせるようにして閉じる。
【0040】
ウイング30a、30bを閉じた状態としたら、次に、閉じられたウイング30a、30bを指で摘んで保持しつつ、針体16を生体に対して穿刺する。針体16を生体に対して穿刺した状態で留置する際には、ウイング30a、30bを開いた状態に戻し、ウイング30a、30bを粘着テープ等により皮膚に固定する。
【0041】
採血、輸血、輸液等が終了したら、粘着テープ等による皮膚に対するウイング30a、30bの固定を解除し、針体16を生体から抜き取る。このようにして、翼状針12の使用が終わったら、翼状針組立体10を廃棄する者等の医療従事者が針体16に不用意に触れることを防止するために、プロテクタ14により針体16を含む翼状針12を覆って収容する「収容操作」を行う。
【0042】
この収容操作では、プロテクタ14を保持しながら、チューブ24を基端側に引っ張ることによって翼状針12をプロテクタ14に対して後退させる(翼状針12に対してプロテクタ14を相対的に先端方向に移動させる)。そうすると、先ず、
図4に示すように、翼状針12のウイング30a、30bの基端側端縁36が、プロテクタ14の先端開口部40に当接する。そしてこの状態からさらにチューブ24を基端方向に引っ張ると、
図5に示すように、ウイング30a、30bが、外翼部31が針先20a側を向くように折り畳まれながら、プロテクタ14に引き込まれ始める。
【0043】
この場合、本実施形態では、ウイング30a、30bの基端側端縁36が、基端側に向かうに従って軸部28側に近づくように傾斜していることにより(
図1、
図3A参照)、ウイング30a、30bの変形が促進されるため、ウイング30a、30bがプロテクタ14内に引き込まれ易い。なお、
図5では、両方のウイング30a、30bが背面側に変形している状態を示しているが、これとは逆に、両方のウイング30a、30bが正面側に変形する場合もある。また、ウイング30a、30bの一方が正面側に変形し、他方が背面側に変形する場合もある。
【0044】
また、本実施形態では、プロテクタ14の先端開口部40の内周縁40aは、基端側に向かって内径が縮小するように面取りされているため(
図1参照)、ウイング30a、30bの基端側端縁36の傾斜と相俟って、ウイング30a、30bがプロテクタ14内に引き込まれ易い。
【0045】
図5のように、ウイング30a、30bが背面側に変形した状態で、プロテクタ14内に引き込まれ始めた場合、ウイング30a、30bに設けられた段差部34は外側に位置することになる。そのため、ウイング30a、30bがプロテクタ14内に引き込まれ始めた後、やがて段差部34(の特に基端)がプロテクタ14の先端開口部40に接触することになる。本実施形態では、段差部34にはウイング30a、30bの面S2に対する傾斜が設けられているため(
図3B参照)、段差部34(の特に基端)が先端開口部40に引っ掛かりにくい。従って、ウイング30a、30bをプロテクタ14内にスムーズに引き込むことができる。
【0046】
また、本実施形態では、段差部34が、先端方向に向かうに従ってウイング30a、30bの外端側に近づくように軸線aに対して傾斜していることにより(
図3A参照)、段差部34が傾斜していない構成と比較して、薄肉部32の面積が大きく確保されている。このため、ウイング30a、30bの薄肉部32での柔軟性が十分に確保されており、ウイング30a、30bが折り畳まれ易く、プロテクタ14内に容易に引き込むことができる。
【0047】
また、段差部34の軸線aに対する傾斜により、この傾斜がない場合と比較して、薄肉部32の先端側の領域が、ウイング30a、30bの外端側寄りまで拡張されている。このため、
図5に示すように、ウイング30a、30bが針先20a側に向かって折り曲げられ易くなり、収容操作時の引き込み抵抗を好適に低減することができる。
【0048】
そして、ウイング30a、30bをさらにプロテクタ14内に引き込むと、今度はウイング30a、30bの外翼部31がプロテクタ14の先端開口部40に接触する。この場合、本実施形態では、ウイング30a、30bの外端縁37から基端側端縁36に連なる部分38(
図3A参照)が弧を描くように形成されているため、ウイング30a、30bの外翼部31がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かりにくい。従って、ウイング30a、30bをプロテクタ14内にスムーズに引き込むことができる。
【0049】
図6に示すように、翼状針12を一杯までプロテクタ14内に引き込むと、ウイング30a、30bはプロテクタ14の平行部46内に位置し、翼状針12の針先20aはプロテクタ14の先端開口部40よりも基端側に位置する状態となる。すなわち、針先20aがプロテクタ14の先端開口部40から突出せず、使用者が針先20aに触れられない状態となる。この場合、ウイング30a、30bは自らの弾発力により平行部46内で外方に突っ張っているため、翼状針12がプロテクタ14に対して先端方向に移動して針先20aがプロテクタ14から再び突出することが好適に抑制される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る翼状針組立体10によれば、ウイング30a、30bの基端側端縁36が傾斜していることにより、翼状針12をプロテクタ14内に引き込む初期段階で、傾斜の作用によってウイング30a、30bの変形(折り畳み)が促進される。従って、ウイング30a、30bは変形しながらプロテクタ14内に引き込まれ、これにより、ウイング30a、30bが折り畳まれた状態でプロテクタ14内に収容される。
【0051】
プロテクタ14の先端開口部40は、軸線aに対して垂直な円形であるため、翼状針12をプロテクタ14内に収容する際の、翼状針12の軸線a回りに関する方向性(指向性)がない。すなわち、プロテクタ14と翼状針12との周方向の相対位置関係に関わらず、翼状針12をプロテクタ14内に引き込む操作により、確実且つ簡単に翼状針12をプロテクタ14内に収容することができる。
【0052】
本実施形態の場合、ウイング30a、30bの外端縁37から基端側端縁36に連なる部分は、弧を描くように形成されているため、翼状針12をプロテクタ14内に引き込む際に、角部がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かりにくい。従って、よりスムーズに収容することができる。
【0053】
本実施形態の場合、外翼部31と薄肉部32との間の段差部34の少なくとも基端は、薄肉部32側から外翼部31側に向かって徐々に肉厚となるように傾斜しているため、翼状針12をプロテクタ14内に引き込む際に、段差部34がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かりにくい。従って、よりスムーズに収容することができる。
【0054】
本実施形態の場合、段差部34における基端側端縁36に連なる部分は、弧を描くように形成されているため、当該部分がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かりにくい。よって、よりスムーズに収容することができる。
【0055】
本実施形態の場合、外翼部31と薄肉部32との間の段差部34は、先端方向に向かうに従ってウイング30a、30bの外端側に近づくように軸線aに対して傾斜しているため、翼状針12をプロテクタ14内に引き込む際に、ウイング30a、30bが折り畳まれやすい。よって、よりスムーズに収容することができる。
【0056】
本実施形態の場合、先端開口部40の内周縁40aは、基端側に向かって内径が縮小するように面取りされているため、プロテクタ14内にウイング30a、30bをよりスムーズに引き込むことができる。
【0057】
本実施形態の場合、プロテクタ14は、先端開口部40から基端側に向かって内径が縮小するテーパ部44と、テーパ部44の基端側に連なり内径が一定の平行部46とを有する。この構成によれば、翼状針12をプロテクタ14内に収容する際、テーパ部44によってウイング30a、30bをスムーズに折り畳むことができ、平行部46では、弾発力により広がろうとするウイング30a、30bからの反力を受けて翼状針12を固定することにより、翼状針12がプロテクタ14に対して先端方向に移動することを抑制することができる。
【0058】
上述した翼状針組立体10において、翼状針12に代えて、
図7A〜
図7Cに示す変形例に係る翼部材18a〜18cを備えた翼状針12a〜12cを採用してもよい。
【0059】
図7Aに示す第1変形例に係る翼部材18aでは、翼部材18と同様に、基端側端縁36に傾斜が設けられている。一方、翼部材18aは、以下の点で、翼部材18と異なる。翼部材18aでは、ウイング30a、30bの外端縁37から基端側端縁36に連なる部分は角張った形状となっている。薄肉部32と外翼部31との間の段差部34aはウイング30a、30bの面S2に対して垂直である。段差部34aにおける基端側端縁36に連なる部分は、角張った形状となっている。段差部34aは、軸部28と平行に延在する。
【0060】
第1変形例に係る翼部材18aを採用した場合でも、ウイング30a、30bの基端側端縁36が、基端方向に向かうに従って軸部28側に近づくように傾斜しているため、翼状針12aをプロテクタ14に引き込む初期段階でのウイング30a、30bの変形を促進でき、プロテクタ14内へのウイング30a、30bの導入をスムーズに行うことができる。従って、プロテクタ14内への翼状針12aの収容操作を容易に行うことができる。
【0061】
図7Bに示す第2変形例に係る翼部材18bでは、翼部材18と同様に、基端側端縁36に傾斜が設けられ、ウイング30a、30bの外端縁37から基端側端縁36に連なる部分38は、弧を描くように形成されている。一方、翼部材18bは、以下の点で、翼部材18と異なる。翼部材18bでは、薄肉部32と外翼部31との間の段差部34aはウイング30a、30bの面S2に対して垂直である。段差部34aにおける基端側端縁36に連なる部分は、角張った形状となっている。段差部34aは、軸部28と平行に延在する。
【0062】
第2変形例に係る翼部材18bを採用した場合でも、ウイング30a、30bの基端側端縁36が、基端方向に向かうに従って軸部28側に近づくように傾斜しているため、翼状針12をプロテクタ14に引き込む初期段階でのウイング30a、30bの変形を促進でき、プロテクタ14内へのウイング30a、30bの導入をスムーズに行うことができる。従って、プロテクタ14内への翼状針12bの収容操作を容易に行うことができる。また、翼状針12bをプロテクタ14内に引き込む際に、ウイング30a、30bの外端縁37から基端側端縁36に連なる部分38がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かりにくい。
【0063】
図7Cに示す第3変形例に係る翼部材18cは、以下の点で、翼部材18と同じである。ウイング30a、30bの基端側端縁36が、基端方向に向かうに従って軸部28側に近づくように傾斜している。ウイング30a、30bの外端縁37から基端側端縁36に連なる部分38は、弧を描くように形成されている。外翼部31と薄肉部32との間の段差部34bは、薄肉部32側から外翼部31側に向かって徐々に肉厚となるように傾斜している。段差部34bにおける基端側端縁36に連なる部分は、弧を描くように形成されている。一方、翼部材18cは、段差部34bが軸部28と平行に延在する点で、翼部材18と異なる。
【0064】
第3変形例に係る翼部材18cを採用した場合でも、ウイング30a、30bの基端側端縁36が、基端方向に向かうに従って軸部28側に近づくように傾斜しているため、翼状針12cをプロテクタ14に引き込む初期段階でのウイング30a、30bの変形を促進でき、プロテクタ14内へのウイング30a、30bの導入をスムーズに行うことができる。従って、プロテクタ14内への翼状針12cの収容操作を容易に行うことができる。また、翼状針12cをプロテクタ14内に引き込む際に、ウイング30a、30bの外端縁37から基端側端縁36に連なる部分38がプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かりにくい。段差部34bにウイング30a、30bの面S2に対する傾斜が設けられているため、段差部34bがプロテクタ14の先端開口部40に引っ掛かりにくい。
【0065】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。