(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996716
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】針ガードを有するカテーテル装置
(51)【国際特許分類】
A61M 39/06 20060101AFI20160908BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
A61M39/06 110
A61M25/06 500
A61M25/06 512
A61M39/06 122
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-95142(P2015-95142)
(22)【出願日】2015年5月7日
(62)【分割の表示】特願2012-519929(P2012-519929)の分割
【原出願日】2010年7月14日
(65)【公開番号】特開2015-180260(P2015-180260A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年6月5日
(31)【優先権主張番号】202009009602.5
(32)【優先日】2009年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591002131
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・メルズンゲン・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN MELSUNGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ウォーア
【審査官】
鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−522658(JP,A)
【文献】
再公表特許第2005/004973(JP,A1)
【文献】
特許第5782437(JP,B2)
【文献】
米国特許第5755709(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1240916(EP,A1)
【文献】
特開平11−4894(JP,A)
【文献】
特開平10−15075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/06
A61M 25/06
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル(4)であって、弁部材(7)が配置されているカテーテルハブ(2)に取り付けられたカテーテル(4)と、
針(9)であって、針ハブ(11)に固定され、前記弁部材(7)を貫通し、準備完了位置で前記カテーテル(4)のカテーテル先端(4a)の先端側に向けて伸びる針先端(9a)を有する、針(9)と、
筒状のレセプタクル(8)であって、前記針ハブ(11)が前記筒状のレセプタクル(8)の内部で移動可能にガイドされ且つばね(13)によって近位方向に付勢された、筒状のレセプタクル(8)と、
前記カテーテルハブ(2)の内側に移動可能に配置された弁作動部材(10)を備えており、
前記針ハブ(11)は、手動操作されるロック部材(12)によって、前記ばね(13)の力に抗して、前記筒状のレセプタクル(8)内で、前記準備完了位置に解放可能に保持されており、
前記弁部材(7)は、前記準備完了位置で、前記針(9)によって広げられて弾性ラグ(7b)を形成する少なくとも3つのスリットを有し、
前記弁作動部材(10)は、前記弁部材(7)に当接して前記弁部材(7)を開く円錐台状の当接部分(10a)を有する、カテーテル装置。
【請求項2】
前記ロック部材(12)は、前記ばね(13)を解放して前記ばね(13)を伸ばすことができるように、前記筒状のレセプタクル(8)の長軸に直交する方向の圧力によって解放可能である、請求項1のカテーテル装置。
【請求項3】
前記筒状のレセプタクル(8)とは別の部材として形成されて前記カテーテルハブ(2)内に突出する突出ボス部(8a)を有する、請求項1のカテーテル装置。
【請求項4】
前記突出ボス部(8a)は前記ロック部材(12)とは別の部材である、請求項3のカテーテル装置。
【請求項5】
前記カテーテルハブ(2)は、近位ハブ部材(5)に取り付けられた遠位ハブ部材(3)を有する、請求項1のカテーテル装置。
【請求項6】
前記ロック部材(12)は、前記筒状のレセプタクル(8)の末端に配置されている、請求項2のカテーテル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルから後退した針が筒状のレセプタクルの内部の保護位置に至るカテーテル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1がこの種のカテーテル装置を記載しており、この場合では、準備完了位置において、針用の筒状のレセプタクルが遠位端の突起を介してカテーテルハブと係合している。針ハブがレセプタクルの内部で変位可能であり、この針ハブには、準備完了位置ではばねが作用しており、ロック部材によってレセプタクルの遠位位置に保持されている。カテーテルが患者に挿入された後、レセプタクルが針と一緒にカテーテルハブから引き抜かれ、その場合、針ハブのロックが手動式ロック部材によって解除され、そのため、針ハブがばねによってレセプタクルの近位位置に移動し、この位置において針の先端がレセプタクルの内部の保護位置に位置付けられ、その遠位側には針が通る貫通穴のみが設けられている。
【0003】
特許文献2から、カテーテルハブ内に弁部材を設けることが知られており、準備完了位置において針がこの弁部材を貫通し、針がカテーテルハブから後退した後でこの弁部材がカテーテルハブを自動的に閉じるため、カテーテルハブから漏血する可能性がない。カテーテルハブ内に変位可能に取り付けられた弁作動部材によって、弁部材は、シリンジ又は静脈ラインがカテーテルハブ内に挿入されることで弁作動部材が開位置に変位すると再び開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第922466号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1240916号
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、レセプタクル内に後退することができる針がカテーテル装置に設けられ、このカテーテル装置のカテーテルハブ内に弁部材が配置され、この弁部材は、針が取り外された後でカテーテルハブを閉じ、シリンジ又は静脈ラインが挿入されると開位置に至ることができる。
【0006】
本発明の更なる目的、利点、特徴点及び可能な用途は、図面の参照とともに実施形態の以下の記載から明らかとなる。これにより、記載されかつ/又は概略的に図示される特徴点は全て、それら自体であれ、任意の有意な組合せにおいてであれ、また、特許請求の範囲内のそれらの概要及び特許請求の範囲の再度の参照(back-referencing)とは関係なく、本発明の主題を形成する。
【0007】
本発明の例示的な実施形態を、図面を参照しながら以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】準備完了位置において針が内部に挿入されているカテーテル装置の縦断面図である。
【
図2】針が後退して取り外されているカテーテル装置を示す図である。
【
図3】カテーテルハブ内に挿入されているシリンジを示す図である。
【
図4】摺動性を維持する針部分が準備完了位置にある一実施形態を示す図である。
【
図5】針の後退中の、
図4の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、図示の実施形態において2つの部分で構成されているカテーテルハブ2を有するカテーテル挿入装置1を示す。カテーテルハブの遠位ハブ部材3が保持部分3aを有しており、この保持部分3a内にカテーテル4が漏斗状スリーブ3bによって圧入される。ハブ部材3の近位端は遠位端に比して拡径を有しており、ハブ部材5に対する接合部分を形成しており、このハブ部材5の遠位端がハブ部材3の近位端と係合し、このハブ部材5はその近位端にルアーねじ6が設けられている。2つのハブ部材3及び5間には、逆流防止弁が弁体7の形態で挿入されており、弁体7はその位置に2つのハブ部材3及び5によって固定されている。カテーテルハブ2は一体品として構成することもでき、その場合、弁体7が内部に圧入されることができる。
【0010】
図1による準備完了位置では、ノーズ状の軸方向突出ボス8aを有するレセプタクル8がカテーテルハブ2に挿入されており、このボス8aにおいて中空針9が針ハブ11に固定されている。図示の実施形態では、ボス8aは別個の部片であり、このボス8aによって組立てが容易となる。ボス8aをレセプタクル8に成形すること及び近位壁8cをキャップ又は別個の部片として構成することも可能であり、これによって組立てが容易となる。針9は、針の先端9aが露出するように弁体7及びカテーテル4を貫通している。ボス8a及び弁体7間には、弁作動部材10が近位ハブ部材5内に変位可能に配置されており、この弁作動部材10は弁体7を開くように働く円錐台状の当接部分10aを有する。近位側には、押し部分10bが当接部分10aに取り付けられている。
【0011】
図2に表されている分離位置が示すように、中空針9がカテーテルハブ2から後退すると、弁体7はその弾性により中空針9のための貫通穴を閉じ、そのため、カテーテル4から漏血する可能性がない。シリコン弁体に、例えば真ん中から始まって短い部分にわたって半径方向に延びる3つのスリットを設け、中空針により広げることができる弾性ラグ7bをそれらスリット間に形成する。弁の他の実施形態も可能であり、その場合、異なる数のスリットも設けることもできる。
【0012】
図3は、シリンジ14であって、カテーテルハブ2内に挿入されているとともに、弁作動部材10が
図3の開位置に変位するよう、レセプタクル8のボス8aよりも長くなるように構成された遠位突出ルアーテーパー14aを有している、シリンジ14を示す。
【0013】
針ハブ11は筒状のレセプタクル8内で変位可能にガイドされ、針ハブ11を近位方向に付勢するばね13の力に抗してロック部材12によって
図1の準備完了位置に保持される。ロック部材12がレセプタクル8に対して横断方向の圧力によって解除された後、針ハブ11はばね13によってレセプタクル内で近位方向に変位する。
【0014】
図4及び
図5は、接続を解除するロック部材12が針ハブ11とレセプタクル8との間に設けられていない実施形態を示す。ばね付勢された針ハブ11が、弁部材7と針の外周との間の摩擦力によってのみ、また、場合によってはカテーテルの先端4aと針9との間の摩擦力によって
図4に示す準備完了位置に保持され、この摩擦力は、ばね13の力よりも大きいものであるように設計されている。このため、針の外周の長手方向部分9cに、摩擦を高めるコーティング又は表面処理を施して、弁部材7と針の外周との間に対応する摩擦力を生じさせることもできる。
【0015】
これに対して付加的に又は代替的に、弁部材7は、例えば針の外周に当接しているラグ7bを長くすること及び弁部材の対応する表面処理によって、針の外周と弁部材7との間の摩擦力がレセプタクル8内の針ハブ11に近位方向に作用するばね13の力よりも大きい所要の強度を有するように設計することができる。
【0016】
図4及び
図5の針9の遠位端部分9bには、針の外周と弁部材7との間及びカテーテルの先端4aと針9との間の摩擦を低減させるようにコーティング又は表面処理が施されており、そのため、針9がカテーテルハブ5から後退すると(
図5)、針9の非コーティングエリア9cと弁部材7との間及びコーティングエリア9bと弁部材7との間に摩擦低減が生じ、この摩擦低減によってばね13が解放される。針9のうち滑性コーティング又は対応する表面処理が施されている部分9bが弁部材7に達するとすぐに、ばね13の力が針の外周のこの部分9bと弁部材7との間の摩擦力よりも大きくなり、そのため、ばね13に対する保持効果が相殺され、ばねが解放される。
【0017】
針はまた、その全長にわたって均一な表面状況を有することができ、その場合、針がカテーテル4の先が細くなった先端4aを通って後退して針9とカテーテルの先端4aとの間に更なる摩擦力がもはや存在しなくなった後、ばね13が針ハブを変位させるだけで針ハブがレセプタクル8に戻る。通常のカテーテル4の遠位端部分4aは、針の外径よりも若干小さい直径を有する。カテーテル4の残りのエリアには、針の外径よりも大きい内径が与えられる。
【0018】
更なる実施形態によれば、摩擦部材(図示せず)をカテーテルハブ内に好ましくは遠位方向における弁部材7の前に配置して、摩擦部材が針の外周に作用している限り針の外周に所定の摩擦力をかけることができる。針9が摩擦部材によってもはや作用されなくなるほど後方に後退すると、ばね13のための保持力をもたらす摩擦力が低減し、そのため、ばね13が針ハブ11をレセプタクル8の近位の保護位置に移動させる。
【0019】
そのような摩擦部材は、低摩擦部分9bの実施形態に加えて又は針の摩擦低減部分9bの代わりに、カテーテルハブ2内に設けることができる。
【0020】
そのような摩擦部材は例えば、半径方向に作用するばねが作用するとともに針9の外周に押し当たる摩擦部材とすることができる。摩擦部材(単数又は複数)を弁部材7のラグ7bに、好ましくはその遠位側に取り付けることも可能であり、そのため、シリンジ14が挿入されたときに(
図3を参照のこと)、弁部材7が弁作動部材10によって開くと、針の外周に当接している摩擦部材がカテーテルハブの通路断面から外れる。
【0021】
弁作動部材10がカテーテルハブ2内に設けられておらず、代わりに弁部材7が例えばシリンジ14によって加えられる正圧又は負圧によって開位置に移動する実施形態も可能である。
【0022】
さらに、レセプタクル8を、該レセプタクル8の外部のその準備完了位置に摩擦力によってのみ保持される針ハブ11に関連して異なる様式で構成することができる。
図1では、8bは、針ハブ11がばね13によって近位の保護位置へ迅速に移動する際に空気が逃げるベント開口を指し示している。参照符号8cはキャップを指し示している。例として、針ハブ11にも摩擦部分を設けることができ、この摩擦部分によって、
図4の準備完了位置において、保持力がカテーテルハブにおける摩擦力に関連して維持され、カテーテルハブにおける摩擦力がなくなるとすぐに、ばね13の力がレセプタクル8内の針ハブ11の摩擦力を超え、針ハブを保護位置に移動させる。
【0023】
図5には、ユーザーがカテーテルハブ2を片手で保持し、また、レセプタクル8をもう片方の手でカテーテルハブ2から或る距離のところに保持している場合にのみ生じることができる、カテーテルハブ2とレセプタクル8との間の距離が表されている。レセプタクル8がカテーテルハブ2から或る距離のところに保持されていなければ、ばね13がレセプタクル8をカテーテルハブの近位端に対して付勢する。このことは、針がカテーテルハブ2から部分的にしか後退していない間は針部分9cが覆われるという、ユーザーにとっての利点を有し、例えば、カテーテルハブ2は粘着テープにより患者に固定される。この後、レセプタクル8は、カテーテルハブ2における摩擦力がなくなることによりばね13が解放されて針をレセプタクル8内に後退させるまで、
図5に表されている位置を超えて後退することができる。