(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態の概要]
実施形態に係る移動通信システムは、データパスがコアネットワークを経由するセルラ通信と、データパスが前記コアネットワークを経由しない直接的な端末間通信であるD2D通信と、をサポートする。当該移動通信システムは、前記D2D通信における相手端末の発見処理又は前記D2D通信を行うユーザ端末を有する。前記発見処理又は前記D2D通信に用いることが可能な時間・周波数リソースである複数の無線リソースは、前記発見処理又は前記D2D通信に用いられる送信電力と関連付けられた無線リソースからなる。前記ユーザ端末は、前記ユーザ端末が用いる無線リソースに関連付けられた送信電力に基づいて、前記発見処理又は前記D2D通信を行う。これにより、ユーザ端末が用いる無線リソースによって、発見処理又はD2D通信に用いる送信電力が制限されるため、送信電力が適切に制御可能となる。
【0012】
第1及び第2実施形態に係る移動通信システムは、前記ユーザ端末が在圏するセルを管理する基地局をさらに有する。前記基地局は、前記複数の無線リソースと、該複数の無線リソースのそれぞれに関連付けられた前記送信電力とを示す送信電力制御情報を前記ユーザ端末に送信する。前記ユーザ端末は、前記送信電力制御情報に基づいて、前記複数の無線リソースの中から前記発見処理又は前記D2D通信に用いる前記無線リソースを選択する。これにより、基地局は、送信電力制御情報に基づいて、ユーザ端末が選択する送信電力を制御することができる。
【0013】
第1及び第2実施形態において、前記複数の無線リソースのそれぞれに関連付けられた前記送信電力は、前記送信電力の範囲を示す。前記ユーザ端末は、前記送信電力制御情報に基づいて、前記発見処理又はD2D通信に用いる使用送信電力が前記送信電力の範囲に収まるように、前記複数の無線リソースの中から前記無線リソースを選択する。これにより、ユーザ端末は、発見処理又はD2D通信に用いる送信電力に応じて、適切な無線リソースを選択することができる。
【0014】
第1実施形態において、ユーザ端末は、前記使用送信電力を変更する場合、前記無線リソースを再選択する。これにより、ユーザ端末は、適切な送信電力で、発見処理又はD2D通信を行うことができる。
【0015】
第1実施形態において、前記ユーザ端末は、前記送信電力制御情報に基づいて、前記使用送信電力が前記複数の無線リソースのそれぞれに関連づけられた前記送信電力の上限値のいずれよりも大きいと判断した場合、前記セルラ通信を行うことを要求する情報を前記基地局に送信する。これにより、D2D通信の送信電力が干渉を与えるほど大きい場合には、基地局を経由した通信を行うため、干渉の発生を抑制できる。
【0016】
第2実施形態において、前記送信電力制御情報は、前記基地局からの距離を示す情報をさらに含む。前記基地局からの距離に応じて前記送信電力の上限値が大きくなるように、前記複数の無線リソースのそれぞれに関連付けられた前記送信電力と前記基地局からの距離とが関連付けられている。前記ユーザ端末は、前記基地局から前記ユーザ端末までの距離に応じて、前記複数の無線リソースの中から前記無線リソースを選択する。これにより、ユーザ端末は、基地局からの距離に応じて送信電力の上限値が大きくなるように、無線リソースを選択するため、基地局への干渉の影響を考慮して、適切な発見処理又はD2D通信を行うことができる。
【0017】
第2実施形態において、前記基地局からの距離を示す情報は、前記基地局と前記ユーザ端末との間のパスロスを示す情報である。これにより、ユーザ端末は、ユーザ端末と基地局との直接的な距離が分からなくても、適切な発見処理又はD2D通信を行うことができる。
【0018】
第3実施形態において、前記複数の無線リソースは、周波数方向に分けられた複数の周波数帯である。前記複数の周波数帯は、前記送信電力の上限値が所定値より大きい送信電力と関連付けられた高電力周波数帯と、前記送信電力の上限値が前記所定値以下の送信電力と関連付けられた低電力周波数帯とに分けられる。前記低電力周波数帯は、前記セルラ通信にのみ用いられるセルラ周波数帯域と隣接して設けられる。前記高電力周波数帯は、前記セルラ周波数帯域から離れて設けられる。これにより、セルラ通信に用いられる周波数帯域に隣接した(近い)無線リソースを用いてD2D通信を行った場合であっても、D2D通信の送信電力は小さいため、セルラ通信のみに用いられる周波数帯域中の無線リソースを用いてセルラ通信を行っているユーザ端末に与える干渉を低減することができる。
【0019】
その他実施形態において、移動通信システムは、前記ユーザ端末が在圏するセルを管理する基地局と、前記セルに隣接する隣接セルを管理する隣接基地局とをさらに有する。前記複数の無線リソースのうち前記セルの端部で使用可能な無線リソースは、前記隣接セルの端部で使用可能な無線リソースと異なる。これにより、セルにおいてD2D通信を行っているユーザ端末グループと隣接セルにおいてD2D通信を行っているユーザ端末グループとの間で干渉が発生することを抑制できる。
【0020】
実施形態に係る基地局は、データパスがコアネットワークを経由するセルラ通信と、データパスが前記コアネットワークを経由しない直接的な端末間通信であるD2D通信と、をサポートする移動通信システムにおける基地局である。当該基地局は、前記D2D通信における相手端末の発見処理又は前記D2D通信に用いることが可能な時間・周波数リソースである複数の無線リソースと、該複数の無線リソースのそれぞれに関連付けられた送信電力との情報を含む送信電力制御情報をユーザ端末に送信する送信部を有する。
【0021】
実施形態に係るユーザ端末は、データパスがコアネットワークを経由するセルラ通信と、データパスが前記コアネットワークを経由しない直接的な端末間通信であるD2D通信と、をサポートする移動通信システムにおけるユーザ端末である。当該ユーザ端末は、前記D2D通信における相手端末の発見処理又は前記D2D通信を行う制御部を有する。前記発見処理又は前記D2D通信に用いることが可能な時間・周波数リソースである複数の無線リソースは、前記発見処理又は前記D2D通信に用いられる送信電力と関連付けられた無線リソースからなる。前記制御部は、前記ユーザ端末が用いる無線リソースに関連付けられた送信電力に基づいて、前記発見処理又は前記D2D通信を行う。
【0022】
実施形態に係るプロセッサは、データパスがコアネットワークを経由するセルラ通信と、データパスが前記コアネットワークを経由しない直接的な端末間通信であるD2D通信と、をサポートする移動通信システムにおける基地局に備えられるプロセッサである。当該プロセッサは、前記D2D通信における相手端末の発見処理又は前記D2D通信に用いることが可能な時間・周波数リソースである複数の無線リソースと、該複数の無線リソースのそれぞれに関連付けられた送信電力との情報を含む送信電力制御情報をユーザ端末に送信する処理を実行する。
【0023】
実施形態に係るプロセッサは、データパスがコアネットワークを経由するセルラ通信と、データパスが前記コアネットワークを経由しない直接的な端末間通信であるD2D通信と、をサポートする移動通信システムにおけるユーザ端末に備えられるプロセッサである。当該プロセッサは、前記D2D通信における相手端末の発見処理又は前記D2D通信を行う処理を実行する。前記発見処理又は前記D2D通信に用いることが可能な時間・周波数リソースである複数の無線リソースは、前記発見処理又は前記D2D通信に用いられる送信電力と関連付けられた無線リソースからなる。前記ユーザ端末が用いる無線リソースに関連付けられた送信電力に基づいて、前記発見処理又は前記D2D通信を行う処理を実行する。
【0024】
以下、図面を参照して、3GPP規格に準拠して構成されるセルラ移動通信システム(以下、「LTEシステム」)にD2D通信を導入する場合の各実施形態を説明する。
【0025】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態について、説明する。
【0026】
(LTEシステム)
図1は、本実施形態に係るLTEシステムの構成図である。
【0027】
図1に示すように、LTEシステムは、複数のUE(User Equipment)100と、E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)10と、EPC(Evolved Packet Core)20と、を含む。E−UTRAN10及びEPC20は、ネットワークを構成する。
【0028】
UE100は、移動型の無線通信装置であり、接続を確立したセル(サービングセル)との無線通信を行う。UE100はユーザ端末に相当する。
【0029】
E−UTRAN10は、複数のeNB200(evolved Node−B)を含む。eNB200は基地局に相当する。eNB200は、セルを管理しており、セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。
【0030】
なお、「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として使用される他に、UE100との無線通信を行う機能を示す用語としても使用される。
【0031】
eNB200は、例えば、無線リソース管理(RRM)機能と、ユーザデータのルーティング機能と、モビリティ制御及びスケジューリングのための測定制御機能と、を有する。
【0032】
EPC20は、MME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving−Gateway)300と、OAM400(Operation and Maintenance)と、を含む。また、EPC20は、コアネットワークに相当する。
【0033】
MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行うネットワークノードであり、制御局に相当する。S−GWは、ユーザデータの転送制御を行うネットワークノードであり、交換局に相当する。
【0034】
eNB200は、X2インターフェイスを介して相互に接続される。また、eNB200は、S1インターフェイスを介してMME/S−GW300と接続される。
【0035】
OAM400は、オペレータによって管理されるサーバ装置であり、E−UTRAN10の保守及び監視を行う。
【0036】
次に、UE100及びeNB200の構成を説明する。
【0037】
図2は、UE100のブロック図である。
図2に示すように、UE100は、アンテナ101と、無線送受信機110と、ユーザインターフェイス120と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130と、バッテリ140と、メモリ150と、プロセッサ160と、を有する。メモリ150及びプロセッサ160は、制御部を構成する。
【0038】
UE100は、GNSS受信機130を有していなくてもよい。また、メモリ150をプロセッサ160と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサ160’としてもよい。
【0039】
アンテナ101及び無線送受信機110は、無線信号の送受信に用いられる。アンテナ101は、複数のアンテナ素子を含む。無線送受信機110は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号を無線信号に変換してアンテナ101から送信する。また、無線送受信機110は、アンテナ101が受信する無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ160に出力する。
【0040】
ユーザインターフェイス120は、UE100を所持するユーザとのインターフェイスであり、例えば、ディスプレイ、マイク、スピーカ、及び各種ボタンなどを含む。ユーザインターフェイス120は、ユーザからの操作を受け付けて、該操作の内容を示す信号をプロセッサ160に出力する。
【0041】
GNSS受信機130は、UE100の地理的な位置を示す位置情報を得るために、GNSS信号を受信して、受信した信号をプロセッサ160に出力する。
【0042】
バッテリ140は、UE100の各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
【0043】
メモリ150は、プロセッサ160によって実行されるプログラムと、プロセッサ160による処理に使用される情報と、を記憶する。
【0044】
プロセッサ160は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ150に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、を含む。プロセッサ160は、さらに、音声・映像信号の符号化・復号を行うコーデックを含んでもよい。プロセッサ160は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0045】
図3は、eNB200のブロック図である。
図3に示すように、eNB200は、アンテナ201と、無線送受信機210と、ネットワークインターフェイス220と、メモリ230と、プロセッサ240と、を有する。メモリ230及びプロセッサ240は、制御部を構成する。なお、メモリ230をプロセッサ240と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサ240’としてもよい。
【0046】
アンテナ201及び無線送受信機210は、無線信号の送受信に用いられる。アンテナ201は、複数のアンテナ素子を含む。無線送受信機210は、プロセッサ240が出力するベースバンド信号を無線信号に変換してアンテナ201から送信する。また、無線送受信機210は、アンテナ201が受信する無線信号をベースバンド信号に変換してプロセッサ240に出力する。
【0047】
ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイスを介して隣接eNB200と接続され、S1インターフェイスを介してMME/S−GW300と接続される。ネットワークインターフェイス220は、X2インターフェイス上で行う通信及びS1インターフェイス上で行う通信に用いられる。
【0048】
メモリ230は、プロセッサ240によって実行されるプログラムと、プロセッサ240による処理に使用される情報と、を記憶する。
【0049】
プロセッサ240は、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号などを行うベースバンドプロセッサと、メモリ230に記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行うCPUと、を含む。プロセッサ240は、後述する各種の処理及び各種の通信プロトコルを実行する。
【0050】
図4は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタック図である。
【0051】
図4に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルのレイヤ1乃至レイヤ3に区分されており、レイヤ1は物理(PHY)レイヤである。レイヤ2は、MAC(Media Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、を含む。レイヤ3は、RRC(Radio Resource Control)レイヤを含む。
【0052】
物理レイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。物理レイヤは、物理チャネルを用いて上位レイヤに伝送サービスを提供する。UE100の物理レイヤとeNB200の物理レイヤとの間では、物理チャネルを介してデータが伝送される。
【0053】
MACレイヤは、データの優先制御、及びハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理などを行う。UE100のMACレイヤとeNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータが伝送される。eNB200のMACレイヤは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式など)、及び割り当てリソースブロックを決定するMACスケジューラを含む。
【0054】
RLCレイヤは、MACレイヤ及び物理レイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとeNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータが伝送される。
【0055】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0056】
RRCレイヤは、制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRCレイヤとeNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のための制御信号(RRCメッセージ)が伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間にRRC接続がある場合、UE100は接続状態であり、そうでない場合、UE100はアイドル状態である。
【0057】
RRCレイヤの上位に位置するNAS(Non−Access Stratum)レイヤは、セッション管理及びモビリティ管理などを行う。
【0058】
図5は、LTEシステムで使用される無線フレームの構成図である。LTEシステムは、下りリンクにはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)、上りリンクにはSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)がそれぞれ使用される。
【0059】
図5に示すように、無線フレームは、時間方向に並ぶ10個のサブフレームで構成され、各サブフレームは、時間方向に並ぶ2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さは1msであり、各スロットの長さは0.5msである。各サブフレームは、周波数方向に複数個のリソースブロック(RB)を含み、時間方向に複数個のシンボルを含む。各シンボルの先頭には、サイクリックプレフィックス(CP)と呼ばれるガード区間が設けられる。リソースブロックは、周波数方向に複数個のサブキャリアを含む。1つのサブキャリア及び1つのシンボルにより構成される無線リソース単位はリソースエレメント(RE)と称される。
【0060】
UE100に割り当てられる無線リソースのうち、周波数リソースはリソースブロックにより特定でき、時間リソースはサブフレーム(又はスロット)により特定できる。
【0061】
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)として使用される制御領域である。また、各サブフレームの残りの区間は、主に物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)として使用できる領域である。さらに、各サブフレームには、セル固有参照信号(CRS)が分散して配置される。
【0062】
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)として使用される制御領域である。また、各サブフレームにおける周波数方向の中央部は、主に物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)として使用できる領域である。さらに、各サブフレームには、復調参照信号(DMRS)及びサウンディング参照信号(SRS)が配置される。
【0063】
(D2D通信)
次に、LTEシステムの通常の通信(セルラ通信)とD2D通信とを比較して説明する。
【0064】
図6は、セルラ通信におけるデータパスを示す図である。ここでは、eNB200−1との接続を確立したUE100−1と、eNB200−2との接続を確立したUE100−2と、の間でセルラ通信を行う場合を例示している。なお、データパスとは、ユーザデータ(ユーザプレーン)の転送経路を意味する。
【0065】
図6に示すように、セルラ通信のデータパスはコアネットワークを経由する。詳細には、eNB200−1、S−GW300、及びeNB200−2を経由するデータパスが設定される。
【0066】
図7は、D2D通信におけるデータパスを示す図である。ここでは、eNB200−1との接続を確立したUE100−1と、eNB200−2との接続を確立したUE100−2と、の間でD2D通信を行う場合を例示している。
【0067】
図7に示すように、D2D通信のデータパスはコアネットワークを経由しない。すなわち、UE間で直接的な無線通信を行う。このように、UE100−1の近傍にUE100−2が存在するのであれば、UE100−1とUE100−2との間でD2D通信を行うことによって、ネットワークのトラフィック負荷及びUE100のバッテリ消費量を削減するなどの効果が得られる。なお、Locally Routedというモード(局所中継モード)では、データパスがS−GW300を経由せずにeNB200を経由する。
【0068】
なお、D2D通信が開始されるケースとして、(a)相手端末(近傍端末)を発見するための動作(発見処理)を行うことによって相手端末を発見した後に、D2D通信が開始されるケースと、(b)相手端末(近傍端末)を発見するための動作を行わずにD2D通信が開始されるケースがある。
【0069】
例えば、上記(a)のケースでは、UE100−1及びUE100−2のうち一方のUE100が、近傍に存在する他方のUE100を発見することで、D2D通信が開始される。
【0070】
このケースの場合、UE100は、相手端末を発見するために、自身の近傍に存在する他のUE(近傍端末)100を発見する(Discover)機能、及び/又は、UE100は、他のUE100から発見される(Discoverable)機能を有する。
【0071】
具体的には、UE100−1は、相手端末(近傍端末)を発見するため又は相手端末(近傍端末)に発見されるために用いられる発見信号(Discovery信号/Discoverable信号)を送信する。発見信号を受信したUE100−2は、UE100−1を発見する。UE100−2が、発見信号に対する応答を送信することで、発見信号を送信したUE100−1は、相手端末であるUE100−2を発見する。
【0072】
なお、UE100は、相手端末を発見しても必ずしもD2D通信を行う必要はなく、例えば、UE100−1及びUE100−2は、互いに相手を発見した後に、ネゴシエーションを行って、D2D通信を行うか否かを判定してもよい。UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、D2D通信を行うことに同意した場合に、D2D通信を開始する。なお、UE100−1は、相手端末を発見した後にD2D通信を行わなかった場合、上位レイヤ(例えば、アプリケーションなど)に近傍のUE100(すなわち、UE100−2)の発見を報告してもよい。例えば、アプリケーションは、当該報告に基づく処理(例えば、UE100−2の位置を地図情報にプロットする処理など)を実行できる。
【0073】
また、UE100は、相手端末を発見したことをeNB200に報告し、相手端末との通信をセルラ通信によって行うかD2D通信によって行うかの指示をeNB200から受けることも可能である。
【0074】
一方、上記(b)のケースでは、例えば、UE100−1は、相手端末を特定せずに、D2D通信用の信号の送信(ブロードキャストによる報知など)を開始する。これにより、UE100は、相手端末の発見の有無にかかわらず、D2D通信を開始できる。なお、D2D通信用の信号の待ち受け動作を行っているUE100−2は、UE100−1からの当該信号に基づいて、同期又は/及び復調を行う。
【0075】
(送信電力制御情報)
次に、本実施形態に係る送信電力制御情報を
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、第1実施形態に係る送信電力制御情報の送受信を説明するための図である。
図9は、D2D通信に用いられるサブキャリアとD2D通信に用いられる送信電力との関連付けを示す送信電力制御テーブルである。
【0076】
発見処理又はD2D通信に用いることが可能な時間・周波数リソースである複数の無線リソースは、発見処理又はD2D通信に用いられる送信電力と関連付けられた無線リソースからなる。送信電力制御情報は、この複数の無線リソースと、複数の無線リソースのそれぞれに関連付けられた送信電力とを示す情報であり、具体的には、
図9に示す送信電力制御テーブルである。
【0077】
図8に示すように、eNB200は、送信電力制御情報を含む送信電力制御メッセージをUE100−1及びUE100−2に送信する。UE100−1及びUE100−2は、送信電力制御メッセージを受信する。UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、発見処理に用いる無線リソースに関連付けられた送信電力に基づいて、発見処理を行う。また、UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、D2D通信に用いる無線リソースに関連付けられた送信電力に基づいて、D2D通信を行う。
【0078】
本実施形態において、D2D通信に用いられる周波数帯域は、複数のサブキャリア(複数の無線リソース)に分けられている。D2D通信に用いられる複数のサブキャリアのそれぞれは、発見処理又はD2D通信に用いられる送信電力と関連付けられている。
【0079】
具体的には、
図8及び
図9に示すように、複数のサブキャリアのそれぞれ(f0、f1、…fn)は、D2D通信に用いられる送信電力の最大値(TxPwrMax0、TxPwrMax1、…、TxPwrMaxn)、D2D通信に用いられる送信電力の上限値(TxPwrUpThresh0、TxPwrUpThresh1、…、TxPwrUpThreshn)、D2D通信に用いられる送信電力の下限値(TxPwrDnThresh0、TxPwrDnThresh1、…、TxPwrDnThreshn)、送信電力が上限値以上の場合の変更先のサブキャリア(fup0、fup1、…、fupn)、及び、送信電力が下限値以下の場合の変更先のサブキャリア(fdown0、fdown1、…、fdownn)と関連付けられている。なお、送信電力の上限値は、送信電力の最大値と等しくてもよいし、送信電力の最大値よりも大きい値であってもよい。
【0080】
複数のサブキャリアのそれぞれは、異なる送信電力の上限値と関連付けられている。従って、例えば、サブキャリアf0に関連付けられた送信電力の上限値TxPwrUpThresh0は、サブキャリアf1に関連付けられた送信電力の上限値TxPwrUpThresh1よりも小さい。
【0081】
また、複数のサブキャリアのそれぞれは、異なる送信電力の下限値とも関連付けられている。従って、例えば、サブキャリアf0に関連付けられた送信電力の下限値TxPwrDnThresh0は、サブキャリアf1に関連付けられた送信電力の上限値TxPwrDnThresh1よりも小さい。
【0082】
複数のサブキャリアのそれぞれは、送信電力の上限値及び下限値と関連付けられているため、複数のサブキャリアのそれぞれは、送信電力の範囲と関連付けられている。
【0083】
図8に示すように、eNB200は、複数のサブキャリア(f)と、
図9に示した複数のサブキャリアのそれぞれに関連付けられた情報(TxPwrMax、TxPwrUpThresh、TxPwrDnThresh、fup、fdown)とをD2D通信の送信電力制御メッセージとして、UE100−1及びUE100−2に送信する。eNB200は、D2D通信の送信電力制御メッセージを、D2DPowerControlによってユニキャストで送信してもよいし、マスタ情報ブロック(MIB)又はシステム情報ブロック(SIB)によってブロードキャストで送信してもよい。
【0084】
(第1実施形態に係る移動通信システムの動作)
次に、第1実施形態に係る移動通信システムの動作について、
図10から
図13を用いて説明する。
【0085】
図10は、第1実施形態に係る移動通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図11は、第1実施形態に係るサブキャリアの選択例を説明するためのフローである。
図12は、サブキャリアを変更するケースを説明するための図である。
図13は、eNB200を経由した通信へ移行するケースを説明するための図である。
【0086】
図10に示すように、ステップ101において、UE100−1は、D2D通信に用いられる送信電力の決定及びサブキャリアの選択を行う。
【0087】
UE100−1は、D2D通信を開始する前に、D2D通信に用いられる送信電力の決定を行う。例えば、UE100−1は、予め設定された規定値に基づいて送信電力を決定する。或いは、UE100−1は、UE100−2とのD2D通信に用いられる使用送信電力を変更すると判断した場合、変更後の使用送信電力を決定する。UE100−1は、例えば、UE100−2から受信する信号の受信電力強度が所定値より小さい場合に、送信電力を変更すると判断する。UE100−1は、受信電力強度に基づいて、変更後の使用送信電力を決定する。
【0088】
以下において、サブキャリアf1を用いてUE100−2とD2D通信を行っていたUE100−1がサブキャリアを変更するケースを例に挙げて、説明する。
【0089】
UE100−1は、サブキャリアの再選択を行う。具体的には、UE100−1は、eNB200から受信した送信電力制御情報に基づいて、複数のサブキャリアの中からD2D通信に用いるサブキャリアの選択を行う。サブキャリアの選択について、
図11を用いて説明する。
【0090】
図11に示すように、ステップ201において、UE100−1は、使用送信電力(TxPwr)がサブキャリア(fi)と関連付けられた上限値(TxPwrUpThresh(fi))以上であるか否かを判断する。UE100−1は、使用送信電力が上限値以上である場合、ステップ202の処理を行う。一方、UE100−1は、使用送信電力が上限値未満である場合、ステップ205の処理を行う。
【0091】
ステップ202において、UE100−1は、変更先のサブキャリア(fup(fi))が存在するか否かを判断する。UE100−1は、変更先のサブキャリア(fup(fi))が存在する場合、ステップ203の処理を行う。一方、UE100−1は、変更先のサブキャリア(fup(fi))が存在しない場合、すなわち、使用送信電力が変更先のサブキャリア(fup(fi))に関連付けられた上限値のいずれよりも大きい場合、ステップ204の処理を行う。
【0092】
ステップ203において、UE100−1は、変更先のサブキャリア(fup(fi))を選択し、再びステップ201の処理を行う。
【0093】
ステップ204において、UE100−1は、eNB200を経由した通信を行うことを決定する。
【0094】
ステップ205において、UE100−1は、使用送信電力(TxPwr)が下限値(TxPwrDnThresh(fi))以下であるか否かを判断する。UE100−1は、使用送信電力が下限値以下である場合、ステップ206の処理を行う。一方、UE100−1は、使用送信電力が下限値より大きい場合、ステップ208の処理を行う。
【0095】
ステップ206において、UE100−1は、変更先のサブキャリア(fdown(fi))が存在するか否かを判断する。UE100−1は、変更先のサブキャリア(fdown(fi))が存在する場合、ステップ207の処理を行う。一方、変更先のサブキャリア(fdown(fi))が存在しない場合、ステップ208の処理を行う。
【0096】
ステップ207において、UE100−1は、変更先のサブキャリア(fdown(fi))を選択し、再びステップ201の処理を行う。
【0097】
ステップ208において、UE100−1は、D2D通信に用いるサブキャリアとしてサブキャリア(fi)を選択する。
【0098】
以上のステップによれば、使用送信電力が所定の送信電力の範囲に含まれるようなサブキャリアが選択される。すなわち、UE100−1は、使用送信電力が、選択したサブキャリアに関連付けられた送信電力の範囲に収まるように、複数のサブキャリアの中からサブキャリサを選択する。
【0099】
図10に戻り、例えば、選択したサブキャリアが、使用中のサブキャリアと同じである場合(すなわち、選択したサブキャリアがサブキャリアf1である場合)には、UE100−1は、そのままD2D通信を行う。従って、UE100−1及びUE100−2は、使用中のサブキャリアを用いて、使用送信電力が使用中のサブキャリアに関連付けられた送信電力の最大値を超えないようにD2D通信を行う。
【0100】
また、本実施形態において、サブキャリアは、上限値及び下限値と関連付けられている。従って、UE100−1及びUE100−2は、f1と関連付けられた送信電力の範囲(上限値及び下限値を超えない範囲)でD2D通信を行う。
【0101】
一方、選択したサブキャリアが使用中のサブキャリアと異なる場合には、UE100−1は、ステップ102の処理を行う。なお、本実施形態において、サブキャリアf2を選択したと仮定して説明する。
【0102】
図10及び
図12に示すように、ステップ102において、UE100−1は、サブキャリア変更の要求をUE100−2に行う。UE100−2は、サブキャリア変更の要求を受信する。
【0103】
サブキャリア変更の要求には、UE100−2を示す識別子と、D2D通信において使用するアプリケーションを示すアプリ識別子と、選択したサブキャリアf2と、を示す情報が含まれる。
【0104】
ステップ103において、UE100−2は、サブキャリア変更の応答をUE100−1に行う。UE100−1は、サブキャリア変更の応答を受信する。
【0105】
サブキャリア変更の応答には、UE100−2を示す識別子と、D2D通信において使用するアプリケーションを示すアプリ識別子と、選択したサブキャリアf2と、を示す情報が含まれる。
【0106】
ステップ104において、UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、サブキャリアf2に変更する。その後サブキャリアf2を用いて、使用送信電力でD2D通信を行う。従って、UE100−1及びUE100−2は、サブキャリアf2を用いて、使用送信電力がサブキャリアf2に関連付けられた送信電力の最大値を超えないようにD2D通信を行う。
【0107】
次に、UE100−1がeNB200を経由した通信を行うことを決定した場合について、
図10及び
図13を用いて説明する。
【0108】
ステップ105において、UE100−1は、eNB200を経由した通信の要求をUE100−2及びeNB200に行う。UE100−2及びeNB200は、eNB200を経由した通信の要求を受信する。
【0109】
eNB200を経由した通信の要求には、UE100−2を示す識別子及びD2D通信において使用するアプリケーションを示すアプリ識別子を示す情報が含まれる。なお、eNB200を経由した通信の要求には、UE100−1を示す識別子を示す情報が含まれる。
【0110】
ステップ106において、eNB200は、eNB200を経由した通信の要求をネットワーク300に送信する。ネットワーク300は、eNB200を経由した通信の要求を受信する。ネットワーク300は、例えば、eNB200の上位局(例えば、MME)などのコアネットワークである。
【0111】
eNB200が送信したeNB200を経由した通信の要求は、UE100−1を示す識別子、UE100−2を示す識別子及びアプリ識別子を示す情報が含まれる。
【0112】
ステップ107において、ネットワーク300は、UE100−1及びUE100−2の状態を更新する。すなわち、ネットワーク300は、UE100−1及びUE100−2がeNB200を介して通信を行うための処理を行う。
【0113】
ステップ108において、ネットワーク300は、eNB200を経由して、UE100−1及びUE100−2のそれぞれにeNB200を経由した通信の指示を行う。UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、eNB200を経由した通信の指示を受信する。
【0114】
eNB200を経由した通信の指示には、UE100−1を示す識別子、UE100−2を示す識別子及びアプリ識別子を示す情報が含まれる。
【0115】
その後、UE100−1及びUE100−2は、eNB200を経由した通信を行う。
【0116】
[第1実施形態の変形例]
次に、第1実施形態の変形例について、
図14及び
図15を用いて説明する。なお、上述した実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の部分は、説明を適宜省略する。
【0117】
上述した第1実施形態とは、送信電力制御情報及びサブキャリアの選択の仕方が異なる。
【0118】
(送信電力制御情報)
図14は、本変形例に係るD2D通信に用いられるサブキャリアとD2D通信に用いられる送信電力との関連付けを示す送信電力制御テーブルである。
【0119】
図14に示すように、本変形例において、D2D通信に用いられるサブキャリア(f0、f1、…、fn)のそれぞれは、D2D通信に用いられる送信電力の最大値(TxPwrMax0、TxPwrMax1、…、TxPwrMaxn)及びD2D通信に用いられる送信電力の最小値(TxPwrMin0、TxPwrMin1、…、TxPwrMinn)に関連付けられている。
【0120】
本変形例において、eNB200は、複数のサブキャリア(f)と、
図14に示した複数のサブキャリアのそれぞれに関連付けられた情報(TxPwrMax、TxPwrMin)とをD2D通信の送信電力制御メッセージとして、UE100−1及びUE100−2に送信する。なお、上述した実施形態に比べて、eNB200が送信する送信電力制御メッセージの情報量が少なくてすむ。
【0121】
(第1実施形態の変形例に係る移動通信システムの動作)
次に、第1実施形態の変形例に係る移動通信システムの動作について、
図15を用いて説明する。第1実施形態のステップ101であるD2D通信に用いられる送信電力の決定及びサブキャリアの選択以外は、第1実施形態と同じ動作であるため、説明を省略する。
【0122】
図15は、第1実施形態の変形例に係るサブキャリアの選択例を説明するためのフローである。
【0123】
まず、UE100−1は、D2D通信に用いられる送信電力を変更すると判断した場合、D2D通信に実際に用いる使用送信電力を決定する。
【0124】
図15に示すように、ステップ301において、UE100−1は、eNB200を経由した通信に用いられるサブキャリアfenbを、選択したサブキャリアfselect(サブキャリア候補)とする。
【0125】
ステップ302において、UE100−1は、送信電力制御情報に基づいて、D2D通信用のサブキャリアfiを選択する。具体的には、UE100−1は、送信電力制御情報によって示される複数のサブキャリア(f0〜fn)の中からサブキャリアfiを選択する。
【0126】
ステップ303において、UE100−1は、使用送信電力(TxPwr)が、選択したサブキャリアfiと関連付けられた下限値(TxPwrMin(fi))以上であり、且つ、選択したサブキャリアfiと関連付けられた上限値(TxPwrMax(fi))より小さいかを判断する。UE100−1は、使用送信電力が下限値以上であり、且つ、上限値より小さい場合、ステップ304の処理を行う。一方、UE100−1は、使用送信電力が下限値より小さい、又は、使用送信電力が上限値以上である場合、ステップ302の処理を行う。具体的には、UE100−1は、既に選択したサブキャリアと別のサブキャリアを選択し、ステップ303の処理を行う。UE100−1は、複数のサブキャリアのそれぞれが全て選択されるまで、ステップS302の処理を繰り返す。
【0127】
ステップ304において、UE100−1は、サブキャリアfiを選択したサブキャリアfselect(サブキャリア候補)とし、ステップ302の処理を行う。UE100−1は、送信電力制御情報によって示される全てのサブキャリアに対して、ステップ302の処理を行った場合、ステップ305の処理を行う。
【0128】
ステップ305において、UE100−1は、選択したサブキャリアfselect(サブキャリア候補)が、現在D2D通信において使用しているサブキャリアfcurrentと一致していないかどうかを判断する。サブキャリアfselectがfcurrentと一致している場合、UE100−1及びUE100−2は、そのままのサブキャリアfcurrentでD2D通信を行う。一方、サブキャリアfselect(サブキャリア候補)がfcurrentと一致していない場合、ステップ306の処理を行う。
【0129】
ステップ306において、UE100−1は、選択したサブキャリアfselect(サブキャリア候補)が、ステップ301において選択したサブキャリアfenbと一致しているかどうかを判断する。すなわち、UE100−1は、サブキャリア候補がサブキャリアfenbのみであるか否かを判断する。UE100−1は、サブキャリアfiがサブキャリアfenbと一致していない(すなわち、サブキャリア候補がサブキャリアfenb以外のサブキャリア候補を含む)場合、D2D通信に用いるサブキャリアとしてサブキャリアfiを選択する(S307)。一方、サブキャリアfiがサブキャリアfenbと一致している(すなわち、サブキャリア候補がサブキャリアfenbのみである)場合、eNB200を経由した通信を行うことを決定する(S308)。
【0130】
(第1実施形態のまとめ)
本実施形態において、UE100−1及びUE100−2のそれぞれは、UE100−1及びUE100−2が用いるサブキャリアに関連付けられた送信電力に基づいて、D2D通信を行う。具体的には、UE100−1がD2D通信に用いる使用送信電力よりも小さい上限値と関連付けられたサブキャリアが選択され、UE100−1は、選択されたサブキャリアを用いて、使用送信電力が上限値を超えないように、D2D通信を行う。これにより、使用送信電力よりも小さい送信電力の上限値と関連付けられたサブキャリアが適切に選択されることにより、送信電力を適切に制御可能となる。
【0131】
本実施形態において、eNB200は、送信電力制御情報をUE100−1に送信し、UE100−1は、送信電力制御情報に基づいて、複数のサブキャリアの中からD2D通信に用いるサブキャリアを選択する。これにより、UE100−1がサブキャリアを選択するため、eNB200がサブキャリアを選択せずにすみ、eNB200の負荷を低減することができる。
【0132】
本実施形態において、複数のサブキャリアのそれぞれに関連付けられた送信電力は、送信電力の範囲を示す。UE100−1は、送信電力制御情報に基づいて、D2D通信に用いる使用送信電力が、当該送信電力の範囲に収まるように、複数のサブキャリアの中からD2D通信に用いる無線リソースを選択する。具体的には、UE100−1は、所定のサブキャリアを用いてD2D通信を行っており、UE100−1は、送信電力制御情報に基づいて、使用送信電力が下限値以上であり、且つ、上限値より小さい場合、サブキャリアfiを選択し、UE100−1は、サブキャリアfiを用いて、使用送信電力がサブキャリア上限値を超えないようにD2D通信を行う。これにより、使用送信電力を変更した場合であっても、使用送信電力よりも小さい送信電力の上限値と関連付けられたサブキャリアを適切に選択することにより、送信電力を適切に制御可能となる。
【0133】
本実施形態において、UE100−1は、使用送信電力を変更する場合、D2D通信に用いるサブキャリアを再選択する。これにより、UE100−1は、変更後の使用送信電力に応じたサブキャリアを選択することができるため、UE100−1は、適切な送信電力でD2D通信を行うことができる。
【0134】
本実施形態において、UE100−1は、使用送信電力が変更先のサブキャリアのそれぞれに関連付けられた上限値いずれよりも大きいと判断した場合、UE100−1は、eNB200を経由した通信を行うことを要求する情報をeNB200に送信する。これにより、D2D通信の送信電力が干渉を与えるほど大きい場合には、eNB200を経由した通信を行うため、干渉の発生を抑制できる。
【0135】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、
図16から
図18を用いて説明する。なお、上述した実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の部分は、説明を適宜省略する。
【0136】
第2実施形態は、上述した第1実施形態とは、eNB200からの距離に応じて、送信電力の最大値(TxPwrMax)が大きくなるように、複数のサブキャリアのそれぞれは、送信電力の上限値と関連付けられているところが異なる。
【0137】
(送信電力制御情報)
図16は、第2実施形態に係るD2D通信に用いられるサブキャリアとD2D通信に用いられる送信電力との関連付けを示す送信電力制御テーブル(送信電力制御情報)である。
【0138】
図16に示すように、送信電力制御情報は、D2D通信に用いられる複数の無線リソース(複数のサブキャリア)と、複数の無線リソースのそれぞれに関連付けられた送信電力との情報に加えて、eNB200からの距離を示す情報を含む。本実施形態において、eNB200からの距離を示す情報は、eNB200とUE100との間のバスロスを示す情報である。従って、送信電力と基地局からの距離とが関連付けられている。
【0139】
具体的には、D2D通信に用いられるサブキャリア(f0、f1、…、fn)のそれぞれは、送信電力(TxPwrMax、TxPwrUpThresh、TxPwrDnThresh)に加えて、パスロスの上限値(PLup0、PLup1、…、PLupn)及びパスロスの下限値(PLdn0、PLdn1、…、PLdnn)と関連付けられている。パスロスの上限値(PLup)のそれぞれは、互いに異なった値である。また、パスロスの下限値(PLdn)のそれぞれは、互いに異なった値である。
【0140】
また、D2D通信に用いられるサブキャリア(f0、f1、…、fn)のそれぞれは、eNB200からの距離(すなわち、eNB200とUE100との距離)に応じて、送信電力の上限値が大きくなるように、サブキャリアと送信電力の上限値とが関連付けられている。
【0141】
eNB200は、複数のサブキャリア(f)と、
図16に示した複数のサブキャリアのそれぞれに関連付けられた情報(TxPwrMax、TxPwrUpThresh、TxPwrDnThresh、fup、fdown、PLup、PLdn)とをD2D通信の送信電力制御メッセージとして、UE100−1及びUE100−2に送信する。すなわち、eNB200は、複数のサブキャリアと、複数のサブキャリアに関連付けられた送信電力の上限値と、複数のサブキャリアに関連付けられたパスロスとを示す情報とをD2D通信の送信電力制御メッセージとして、UE100−1及びUE100−2に送信する。
【0142】
(第2実施形態に係る移動通信システムの動作)
次に、第2実施形態に係る移動通信システムの動作について、
図17を用いて説明する。第1実施形態のステップ101であるD2D通信に用いられる送信電力の決定及びサブキャリアの選択以外は、第1実施形態と同じ動作であるため、説明を省略する。
図17は、第2実施形態に係るサブキャリアの選択例を説明するためのフローである。
【0143】
まず、
図17に示すように、ステップ401において、UE100−1は、eNB200から送信される参照信号のパスロスを推定する。例えば、UE100−1は、eNB200から送信される参照信号に含まれるeNB200の参照信号の送信電力の情報とUE100−1が受信した参照信号の受信電力との差分によりパスロスを推定できる。
【0144】
ステップ402において、UE100−1は、eNB200を経由した通信に用いられるサブキャリアfenbを選択したサブキャリアfselect(サブキャリア候補)とする。
【0145】
ステップ403において、UE100−1は、送信電力制御情報に基づいて、D2D通信用のサブキャリアfiを選択する。具体的には、UE100−1は、送信電力制御情報によって示される複数のサブキャリア(f0〜fn)の中からサブキャリアfiを選択する。
【0146】
ステップ404において、UE100−1は、ステップ401において推定した推定パスロス(PL)が選択したサブキャリアfiと関連付けられたパスロスの下限値(PLdn(fi))以上であり、且つ、選択したサブキャリアfiと関連付けられたパスロスの上限値(PLup(fi))より小さいかを判断する。UE100−1は、推定パスロスが下限値以上であり、且つ、上限値より小さい場合、ステップ405の処理を行う。一方、UE100−1は、使用送信電力が下限値より小さい、又は、使用送信電力が上限値以上である場合、ステップ403の処理を行う。具体的には、UE100−1は、既に選択したサブキャリアと別のサブキャリアを選択し、ステップ404の処理を行う。UE100−1は、複数のサブキャリアのそれぞれが全て選択されるまで、ステップS403の処理を繰り返す。
【0147】
ステップS405において、UE100−1は、サブキャリアfiを選択したサブキャリアfselect(サブキャリア候補)とし、ステップ403の処理を行う。UE100−1は、送信電力制御情報によって示される全てのサブキャリアに対して、ステップ403の処理を行った場合、ステップ406の処理を行う。
【0148】
ステップ406から409は、送信電力をパスロスに置き換えた第1実施形態の変形例のステップ305から308に対応する。
【0149】
(第2実施形態のまとめ)
本実施形態において、eNB200からの距離に応じて、送信電力の上限値が大きくなるように、サブキャリアと送信電力の上限値とが関連付けられている。UE100は、eNB200からUE100までの距離に応じて、複数のサブキャリアの中からサブキャリアを選択する。これにより、eNB200とUE100との距離が大きい場合(例えば、
図18において、UE100−1がエリア2に存在する場合)には、送信電力の上限値が大きいサブキャリア(
図18のサブキャリア2)が用いられ、広いエリアでD2D通信を行うことができる。一方、eNB200とUE100との距離が小さい場合(例えば、
図18において、UE100−1がエリア1又はエリア2に存在する場合)には、送信電力の上限値が小さいサブキャリア(
図18のサブキャリア1)が用いられ、eNB200への干渉を抑制することができる。
【0150】
本実施形態において、eNB200からの距離を示す情報は、eNB200とUE100との間のパスロスを示す情報である。従って、複数のサブキャリアのそれぞれは、eNB200から送信される参照信号のパスロスと関連付けられ、eNB200は、複数のサブキャリアと、複数のサブキャリアに関連付けられた送信電力の上限値と、複数のサブキャリアに関連付けられたパスロスとを示す情報とをUE100−1及びUE100−2に送信し、UE100−1は、eNB200とUE100−1との間のパスロスを算出し、UE100−1は、電力制御情報とパスロスとに基づいて、サブキャリアを選択する。これにより、UE100−1がeNB200との位置関係を考慮しながら、送信電力の上限値と関連付けられたサブキャリアを選択するため、eNB200がサブキャリアを選択せずにすむとともに、eNB200への干渉を抑制することができる。
【0151】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について、
図19を用いて説明する。なお、上述した実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の部分は、説明を適宜省略する。
【0152】
上述した第2実施形態では、eNB200からの距離に応じて、複数のサブキャリアのそれぞれは、送信電力の上限値と関連付けられていたが、本実施形態では、D2D通信に用いられるD2D周波数帯域とセルラ通信に用いられるセルラ周波数帯域との関係に応じて、複数のサブキャリアのそれぞれは、送信電力の上限値と関連付けられている。
【0153】
(送信電力制御情報)
図19は、第3実施形態に係るD2D通信に用いられるサブキャリアとD2D通信に用いられる送信電力との関連付けを説明するための図である。
【0154】
図19(1)に示す例では、セルラ通信に用いられる周波数帯域と、D2D通信に用いられる周波数帯域とに分けられている。D2D通信に用いられる周波数帯域は、送信電力の上限値が所定値以下の低送信電力と関連付けられた低D2D周波数帯と送信電力の上限値が所定値より大きい高送信電力と関連付けられた高D2D周波数帯とに分けられている。低D2D周波数帯は、セルラ通信に用いられる周波数帯域に隣接している。一方、高D2D周波数帯域は、セルラ周波数帯域から離れている。
図19(1)に示す例では、セルラ通信に用いられる周波数帯域とD2D通信に用いられる周波数帯域とが重複していない。
【0155】
図19(2)に示す例では、セルラ通信に用いられる周波数帯域と、D2D通信に用いられる周波数帯域とが一部重複している。セルラ通信とD2D通信とに用いられる周波数帯とは、送信電力の上限値が所定値以下の低送信電力と関連付けられている。D2D通信のみに用いる周波数帯では、送信電力の上限値が所定値より大きい高送信電力と関連付けられている。セルラ通信にのみ用いられる周波数帯は、セルラ通信とD2D通信とに用いられる周波数帯(低D2D周波数帯)と隣接している。
【0156】
図19(3)に示す例では、セルラ通信に用いられる周波数帯域と、D2D通信に用いられる周波数帯域とが一部重複している。セルラ通信とD2D通信とに用いられる周波数帯とは、送信電力が所定値以下の低送信電力と関連付けられている。D2D通信のみに用いる周波数帯では、送信電力が所定値より大きい高送信電力及び送信電力が所定値より小さい低送信電力と関連付けられている。セルラ通信にのみ用いられる周波数帯は、セルラ通信とD2D通信とに用いられる周波数帯(低D2D周波数帯)と隣接している。
【0157】
(第3実施形態のまとめ)
本実施形態によれば、セルラ通信にのみ用いられる周波数帯域に隣接するD2D通信用の周波数帯は、所定値以下の送信電力の上限値と関連付けられている。すなわち、低D2D周波数帯は、セルラ通信にのみ用いられる周波数帯域と隣接して設けられる。一方、高D2D周波数帯は、セルラ通信にのみ用いられる周波数帯域から離れて設けられる。これにより、セルラ通信のみに用いられる周波数帯域に隣接するD2D通信用の隣接周波数帯は、D2D通信用の低い送信電力と関連付けられている。従って、セルラ通信用の周波数帯域とD2D通信用の周波数帯域とを完全に分離した状態で利用することができるだけでなく、一部共有した状態で利用することができる。つまり、送信電力を考慮することにより、セルラ通信用の周波数帯域とD2D通信用の周波数帯域とを一部共有した状態でも干渉を抑制できるため、周波数利用効率の良いシステム運用を実現することができる。
【0158】
[その他の実施形態]
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0159】
上述した実施形態では、D2D通信に用いられる使用送信電力について説明したが、発見処理に用いられる使用送信電力であってもよい。
【0160】
また、上述した第1実施形態では、サブキャリアを変更するケースを例に挙げて、説明したが、これに限られない。UE100−1は、D2D通信を開始する前に、複数のサブキャリアの中からD2D通信に用いられるサブキャリアを選択する場合に、上述の第1及び第2実施形態と同様にして、サブキャリアを選択することができる。
【0161】
また、上述した実施形態では、UE100がサブキャリアを選択していたが、これに限られない。例えば、D2D通信に用いられるサブキャリアをネットワーク300が選択してもよい。
【0162】
例えば、UE100−1は、使用する使用送信電力の情報をeNB200を経由して、ネットワーク300に送信する。ネットワーク300は、受信した情報に基づいて、使用送信電力が上限値を超えないようなサブキャリアを示す情報をeNB200を経由して、UE100−1に送信することができる。
【0163】
また、上述した第2実施形態では、D2D通信に用いられるサブキャリアのそれぞれは、eNB200からの距離に応じて、送信電力の上限値が大きくなるように、サブキャリアと送信電力の上限値とが関連付けられていたが、これに限られない。
【0164】
例えば、
図20において、第1セル250−1を管理する第1基地局200−1において、第1セル250−1の外周側では、D2D通信用の周波数帯f1が用いられ、第1セル250−1の中心側では、D2D通信用の周波数帯f2が用いられる。一方、第1セル250−1に隣接する第2セル250−2を管理する第2基地局200−2において、第2セル250−2の外周側では、D2D通信用の周波数帯f2が用いられ、第2セル250−2の中心側では、D2D通信用の周波数帯f1が用いられる。すなわち、第1セルの外周で用いられるD2D通信用の周波数帯と第2セルの外周で用いられるD2D通信用の周波数帯とが異なる。従って、複数の無線リソース(複数の周波数帯)のうち第1セル250−1の端部で使用可能な無線リソース(周波数帯f1)は、隣接セルである第2セル250−2の端部で使用可能な無線リソース(周波数帯f2)と異なる。これにより、第1セル250−1においてD2D通信を行っているユーザ端末グループと第2セル250−2においてD2D通信を行っているユーザ端末グループとの間で干渉が発生することを抑制できる。
【0165】
また、上述した各実施形態では、複数の無線リソースは、周波数方向に分けられた複数の周波数帯(具体的には、サブキャリア)であったが、例えば、複数の無線リソースは、時間軸方向に分けられた複数の無線リソースであってもよい。
【0166】
また、上述した第2実施形態では、eNB200からの距離を示す情報は、eNB200とUE100との間のパスロスであったがこれに限られない。eNB200からの距離を示す情報は、例えば、[m]、[km]などのeNB200からの物理的距離を示す情報であってもよい。この場合、UE100−1は、UE100−1の位置情報及びeNB200の位置情報に基づいて、算出したeNB200からの距離に応じて、複数のサブキャリアの中からサブキャリアを選択できる。
【0167】
また、上述した第1及び第2実施形態では、UE100−1は、eNB200からの送信電力制御情報に基づいて、サブキャリアの選択を行っていたが、これに限られない。UE100−1は、UE100−1に予め設定された設定情報に基づいて、サブキャリアの選択を行ってもよい。例えば、UE100−1は、eNB200が管理するセルに在圏していない場合に、設定情報に基づいて、サブキャリアの選択を行うことができる。
【0168】
上述した各実施形態及び各変形例は、それぞれ適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
【0169】
上述した実施形態では、本発明をLTEシステムに適用する一例を説明したが、LTEシステムに限定されるものではなく、LTEシステム以外のシステムに本発明を適用してもよい。
【0170】
なお、米国仮出願第61/766505号(2013年2月19日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。