(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車のバッテリ(7)の温度を制御するための装置(9)を備え、コンプレッサ(11)と、コンデンサ(13)と、第1の膨張部材(15)と、冷却流体および熱伝達流体(FC)の間で熱を交換するための熱調整交換器(17)と、切り替え手段と、を少なくとも備える、加熱、換気および/または空調装置(1)において、
前記温度制御装置(9)は、前記コンプレッサ(11)の出口を、前記コンデンサ(13)をバイパスして前記熱調整交換器(17)の入口に接続する、少なくとも1つのバイパス分岐(9b)を備えるとともに、
前記切り替え手段は、前記冷却流体の循環方向で第1の膨張部材(15)の上流に配置された、第2の制御弁(21)を少なくとも備える、
ことを特徴とする加熱、換気および/または空調装置(1)。
前記切り替え手段は、前記コンプレッサ(11)の前記出口に配置された第1の制御弁(19)を少なくとも備える、ことを特徴とする請求項1に記載の加熱、換気および/または空調装置(1)。
前記温度制御装置(9)は、前記冷却流体の循環方向で前記熱調整交換器(17)の上流に配置された第2の膨張部材(23)を少なくとも備える、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の加熱、換気および/または空調装置(1)。
前記車両の乗員室内に流通させることを目的とする内気流(FA3)の空調のための、前記コンプレッサ(11)と前記コンデンサ(13)とを少なくとも有するループ(9a)を備える、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の加熱、換気および/または空調装置(1)。
前記コンプレッサ(11)の出口に配置された第1の制御弁(19)と、前記冷却流体の循環方向で前記第1の膨張部材(15)の上流に配置された第2の制御弁(21)と、を備えた加熱、換気および/または空調装置(1)により実施される、請求項13に記載のバッテリ(7)の温度を制御する方法であって、
”冷却”と称される前記動作モードにおいて、
− 前記冷却流体が前記コンプレッサ(11)から前記コンデンサ(13)まで循環するように、前記第1の制御弁(19)を切り替えるステップと、
− 前記冷却流体が前記コンデンサ(13)から前記第1の膨張部材(15)まで、且つ前記熱調整交換器(17)を通過して循環するように、前記第2の制御弁(21)を切り替えるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
前記コンプレッサ(11)の出口に配置された第1の制御弁(19)と、前記冷却流体の循環方向で前記第1の膨張部材(15)の上流に配置された第2の制御弁(21)と、を備えた加熱、換気および/または空調装置(1)により実施される、請求項13または14に記載のバッテリ(7)の温度を制御する方法であって、
”加熱”と称される前記動作モードにおいて、
− 前記冷却流体が前記コンプレッサ(11)から前記第2の制御弁(21)まで循環するように、前記第1の制御弁(19)を切り替えるステップと、
− 前記冷却流体が前記第1の制御弁(19)から前記熱調整交換器(17)まで循環するように、第2の制御弁(21)を切り替えるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【背景技術】
【0003】
自動車、特に、少なくとも部分的には電気モータにより推進力が供給される、電気またはハイブリッド自動車は、通常、電気部品、特に電気モータまたはバッテリ等を備えている。特に、保護ケース内で、セルが並列に配置されており、バッテリまたはバッテリパックを形成している。
【0004】
バッテリの充電および放電は、発熱性のプロセスである。しかし、過度に高い温度、すなわち予め定められた最大閾値より高い温度の場合、腐食反応が加速され、その結果、バッテリの寿命が減少することがある。また、バッテリの破損にさえ至ることがある熱暴走のリスクもある。一方、過度に低い温度、すなわち予め定められた最小閾値より低い温度の場合、バッテリの充電が持続する時間の長さは、大きく減少し得る。
【0005】
従って、バッテリの温度を監視し、且つ平衡させることが重要である。バッテリの温度を制御するために、温度制御装置を使用することが知られている。
【0006】
このような温度制御装置は、バッテリセルにより発せられる熱を吸収することが可能な熱伝達流体(heat-transfer fluid)を用いて、熱を放出させ、それによりセルを冷却する。一般に用いられる熱伝達流体は、気体、例えば外気、あるいは液体、例えば水である。しかし、液体は、気体よりも良い熱導体であるため、液体が好ましい。
【0007】
さらに、車両には、多くの場合、内気流(internal air flow)を所望の温度で供給することにより、車両の乗員室の内部空間の温度を制御するための、加熱、換気および/または空調装置が備えられている。
【0008】
加熱、換気および/または空調装置は、通常、空調ループを備えており、空調ループ内で、冷却流体が循環する。
【0009】
また、車両の電気部品の温度管理を目的とする温度制御ループをさらに備える、加熱、換気および/または空調装置も知られている。
【0010】
より正確には、温度制御ループは、空調ループと関連付けられて、冷却流体と熱伝達流体の間の、例えばバッテリの冷却を目的とする熱交換を可能にしている。
【0011】
一方、バッテリを加熱するために、調整ループは、例えば抵抗器または正の温度係数を有する抵抗器を用いた追加の加熱装置を備える。このような加熱装置により加熱される熱伝達流体は、この場合、バッテリを加熱するための熱を供給することができる。この種の追加の加熱装置は、特に冬季の低温時に、バッテリの温度を調整するために必須であり、冬季の低温時には、バッテリの充電を開始する前に、バッテリの温度を上昇させる必要がある。これらの追加の加熱装置は、通常、バッテリパックを保護するハウジングに内蔵されている。
【0012】
しかし、冷却用の空調ループを用いるが、バッテリを加熱するための追加の加熱装置も必要とするこのような解決策は、嵩張り、且つバッテリパック内またはバッテリパックの近くで実施することが困難である。
【0013】
別の解決策も知られており、この解決策では、熱伝達流体回路を用いて、バッテリの温度を、まず、熱伝達流体を冷却するためのクーラーにより調整し、次に、熱伝達流体を加熱するための追加の電熱装置により調整する。クーラーと熱伝達流体を加熱するための装置とによるこの解決策は、特に嵩張る。
【0014】
もう1つの解決策によれば、バッテリパック内で、空調ループから来る冷却流体を循環させるためのチャネルが設けられ、低温回路を定義し、且つ、高温回路を定義するために、例えば抵抗器を備えるチャネルが設けられる。上記と同様に、このような解決策は、バッテリを冷却するための1つと、バッテリを加熱するためのもう1つとの、2つのシステムを設けることを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、従って、簡易であり、且つ、バッテリを冷却および加熱することが可能な少なくとも1つの温度制御装置を備える、自動車用の加熱、換気および/または空調装置を提案することにより、上述した従来技術のシステムの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明の主題は、自動車のバッテリの温度を制御するための装置を備え、コンプレッサと、コンデンサと、第1の膨張部材と、冷却流体および熱伝達流体の間で熱を交換するための熱調整交換器と、切り替え手段と、を少なくとも備える、加熱、換気および/または空調装置に関する。加えて、温度制御装置は、コンプレッサの出口を熱調整交換器の入口に接続し、且つコンデンサと、任意で第1の膨張部材とをバイパスする、少なくとも1つのバイパス分岐を備える。
【0017】
より具体的には、切り替え手段は、コンプレッサの出口に配置された第1の制御弁を少なくとも備える。
【0018】
加えて、または代替案として、切り替え手段は、冷却流体の循環方向で第1の膨張部材の上流に配置された、第2の制御弁を少なくとも備える。
【0019】
好適には、温度制御装置は、コンデンサと第2の制御弁の間に配置された冷却分岐を備える。好ましくは、冷却分岐は、コンデンサと第2の制御弁の間に配置された逆止弁を備える。
【0020】
さらに、温度制御装置は、冷却流体の循環方向で熱調整交換器の上流に配置され、好ましくは第1の膨張部材と並列に配置された第2の膨張部材を少なくとも備えてもよい。
【0021】
さらに、本発明に係る加熱、換気および/または空調装置は、車両の乗員室内に流通させることを目的とする内気流のための空調ループであって、コンプレッサと、コンデンサとを少なくとも備える空調ループを備える。
【0022】
本発明によれば、空調ループは、コンデンサとエバポレータの間に挿入された、第3の膨張部材と称される、少なくとも1つの膨張部材を備える。
【0023】
好適には、熱伝達流体は、冷却流体との熱交換の後にバッテリのセルと接触することが可能な熱調整気流である。
【0024】
温度制御装置は、次いで、熱調整交換器に熱調整気流を送るファンを備える。
【0025】
あるいは、熱伝達流体は、好ましくはバッテリのセルと接触することが可能な循環チャネルで循環する、熱伝達液体である。
【0026】
本発明は、また、上述の加熱、換気および/または空調装置により実施される、自動車内のバッテリの温度を制御するための方法であって、少なくとも”冷却”と称される動作モードおよび”加熱”と称される動作モードから、動作モードを選択し、これにより、
− ”冷却”と称される動作モード中に、コンプレッサから出てくる冷却流体は、コンデンサと、第1の膨張部材と、熱調整交換器とを通過し、且つ
− ”加熱”と称される動作モード中に、コンプレッサから出てくる冷却流体は、第1の膨張部材をバイパスし、熱調整交換器を通過する、ようにするステップを含む方法に関する。
【0027】
本発明に係るバッテリの温度を制御するための方法は、コンプレッサの出口に配置された第1の制御弁と、冷却流体の循環方向で第1の膨張部材の上流に配置された第2の制御弁と、を備えた加熱、換気および/または空調装置により実施される。
【0028】
この構成によれば、”冷却”と称される動作モード中に、この方法は、
− 冷却流体がコンプレッサからコンデンサまで循環するように、第1の制御弁を切り替えるステップと、
− 冷却流体がコンデンサから第1の膨張部材まで、且つ熱調整交換器を通過して循環するように、第2の制御弁を切り替えるステップと、
を含む。
【0029】
同じ構成によれば、”加熱”と称される動作モード中に、この方法は、
− 冷却流体がコンプレッサから第2の制御弁まで循環するように、第1の制御弁を切り替えるステップと、
− 冷却流体が第1の制御弁から熱調整交換器まで循環するように、第2の制御弁を切り替えるステップと、
を含む。
【0030】
勿論、本発明の様々な特徴、変形例、および/または実施形態は、それらが互いに矛盾しないか、または排他的でない限り、様々な組み合わせに従って互いに組み合わせることができる。
【0031】
本発明は、非限定の例として提供される添付の図面を参照して、例示として与えられる変形例を含む以下の詳細な説明を読むことにより、より良く理解され、且つ他の特徴および利点がさらに明らかとなり、添付の図面は、本発明およびその実施の概要の理解を補足することができ、且つ該当する場合は、その定義に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面において、種々の実施形態に共通の構造および/または機能的要素は、同一の参照番号を有してもよいことに留意すべきである。よって、逆のことを述べない限り、このような要素は、同じ構造的、寸法的および物理的特徴を有する。
【0034】
本発明によれば、”下流”、”上流”、”直列”および”並列”という用語は、空調ループおよび/または温度制御装置内の冷却流体の循環方向において、1つの構成要素の、別の構成要素に対する位置を限定する。
【0035】
図1および
図2は、第1の変形例に係る温度制御装置9を備える、自動車用の加熱、換気および/または空調装置1を、それぞれ、”冷却”と称される動作モード、および”加熱”と称される動作モードで模式的に示す。
【0036】
このような加熱、換気および/または空調装置1は、例えば乗員室内に内気流FA3を拡散するための少なくとも1つの空気入口ベントから少なくとも1つのベント3までを用いて、乗員室内に適切な温度で内気流FA3を供給することにより、特に、車両乗員室の空気熱パラメータを変更することを可能にする少なくとも1つの加熱、換気および/または空調ユニットを備えている。拡散ベント3は、特に、車両のフロントガラスおよび/または前面窓に内気流FA3を供給することを目的とする除氷/曇り除去ベント、車両の乗員に内気流FA3を供給することを目的とする換気ベント、または車両乗員室の底部に内気流FA3を供給することを目的とする低レベル拡散ベント、としてもよい。
【0037】
加熱、換気および/または空調装置1は、特にエバポレータ5を備える、冷却流体が循環する空調ループ9aを備える。好適には、エバポレータ5は、加熱、換気および/または空調ユニットに配置される。エバポレータ5は、乗員室内に拡散されることを目的とする内気流FA3を、適切な温度で冷却および/または除湿することを可能にする。
【0038】
加えて、乗員室内に拡散されることを目的とする内気流FA3を、適切な温度にするために、加熱、換気および/または空調ユニットは、加熱ラジエータ40も収容する。特定の実施形態によれば、加熱ラジエータ40は、加熱ラジエータ40内を通過し、加熱回路内を循環する加熱流体を有する。加熱回路は、特に、ポンプ42と、加熱流体を加熱するための加熱装置44とを備える。加熱装置44は、例えば、特に高電圧の電熱ラジエータである。
【0039】
図1は、バッテリ7またはバッテリパック7も示し、バッテリパック7は、バッテリパック7を形成するハウジング内で並列に配置される複数のセル8を備える。
【0040】
加えて、加熱、換気および/または空調装置1は、本発明に係る空調ループ9aの全てまたは一部に接続される、バッテリパック7の温度を制御するための装置9を備える。
【0041】
これより、
図1を参照して、温度制御装置9の第1の変形実施形態を説明する。
【0042】
温度制御装置9は、バッテリパック7を冷却するために冷却流体が循環する冷却分岐9cと、バッテリパック7を加熱するための冷却流体が循環するバイパス分岐9bとを備える。
【0043】
温度制御装置9は、
− 冷却流体を圧縮および循環させるためのコンプレッサ11と、
− 冷却流体と、好適には車両の動力学により、および/または電動ファンユニット29により動かされる、外気流FA1等の第1の気流FA1との間で熱交換を提供するためのコンデンサ13と、
− 少なくとも第1の膨張部材15と、
− 冷却流体と、熱伝達流体FC、特に、熱調整気流FA2などの第2の気流FA2との間で熱交換を提供するための熱調整交換器17と、
を直列に備える。
【0044】
本発明によれば、コンプレッサ11とコンデンサ13とは、空調ループ9aの一部も形成する。
【0045】
熱伝達流体FC、特に熱調整気流FA2は、例えば、バッテリパック7内の閉ループ内で、推進部材(図示せず)、特に、用いられる熱伝達流体FCの種類に応じた電動ファンユニット、またはファン、またはポンプの動作により循環される。
【0046】
冷却分岐9cは、コンデンサ13の出口にある冷却流体が、第1の膨張部材15と、熱調整交換器17とに循環するように配置される。
【0047】
バイパス分岐9bは、コンプレッサ11の出口にある冷却流体が、コンデンサ13および第1の膨張部材15をバイパスして、熱調整交換器17に直接循環するように配置される。
【0048】
バイパス分岐9bは、コンデンサ13を通過することなく、冷却流体を熱調整交換器17に分流するための分流(diversion)を形成する。好ましくは、バイパス分岐9b内では、冷却流体FRは、どのような膨張も受けない。
【0049】
バイパス分岐9bは、
図1では点線、
図2では実線で示している。逆に、冷却分岐9cは、
図1では実線、
図2では点線で示している。
【0050】
慣例では、点線は、冷却流体が循環していない空調ループ9aおよび/または温度制御装置9の一部を定義するために用いられ、実線は、冷却流体が循環している空調ループ9aおよび/または温度制御装置9の一部を定義するために用いられる。
【0051】
作動中は、コンプレッサ11は、図面においてイニシャル”BP”により模式的に示すように、低圧および低温の気体状態にある冷却流体を吸い込む。
【0052】
冷却流体は、例えば、空調ループ9aのエバポレータ5から、および/または温度制御装置9の熱調整交換器17から来る。
【0053】
圧縮は、図面においてイニシャル”HP”により模式的に示すように、冷却流体の圧力および温度を上昇させる。
【0054】
コンデンサ13は、例えば、車両内部で前面に配置され、車両の外部から来る外気流FA1によって通過される。
【0055】
コンデンサ13は、気体状の高温状態にある冷却流体を受け取ることが可能である。凝縮する際、気体状態にある冷却流体は、外気流FA1に対して熱を与える。
【0056】
第1の膨張部材15は、熱調整交換器17に入る前に冷却流体の圧力および温度を低下させ、バッテリパック7の”冷却”と称される動作モード中に、熱調整交換器17内で、冷却流体は蒸発を経る。
【0057】
このような条件下で、熱調整交換器17は、冷却流体が冷却分岐9c内を循環する場合、バッテリパック7内を循環する熱伝達流体FCを冷却すること、又は、冷却流体がバイパス分岐9b内を循環する場合、バッテリパック7内を循環する熱伝達流体FCを加熱することが可能である。
【0058】
図1に示される、バッテリパック7を冷却するための”冷却”と称される動作モード、および
図2に示される、バッテリパック7を加熱するための”加熱”と称される動作モードを、以下により詳細に述べる。
【0059】
バッテリパック7の”冷却”と称される動作モード中に、熱調整交換器17に入る冷却流体は、蒸発する間に熱伝達流体FCの熱を吸収し、これにより、熱伝達流体FCを冷却する効果を有する。
【0060】
バッテリパック7の”加熱”と称される動作モード中に、調整熱交換器に入る冷却流体は、熱伝達流体FCに対して熱を与え、これにより、熱伝達流体FCを加熱する効果を有する。
【0061】
本発明によれば、同じ熱調整交換器17を、バッテリパック7の”冷却”と称される動作モード、およびバッテリパック7の”加熱”と称される動作モードの両方で、どのような追加の加熱装置も必要とせずに使用することが可能である。
【0062】
熱調整交換器17は、また、コンプレッサ11の入口に接続された出口を有して配置される。よって、熱調整交換器17の出口にある低圧かつ低温の冷却流体は、コンプレッサ11に戻り、サイクルを再開する。
【0063】
温度制御装置9は、また、
図1で説明された”冷却”と称される動作モードと、
図2で説明された”加熱”と称される動作モードとの間で変化させるための切り替え手段を備える。
【0064】
示される実施形態によれば、切り替え手段は、コンプレッサ11の出口に配置された、第1の制御弁19、例えば第1の三方弁19を、少なくとも備える。好適には、第1の制御弁19は、制御手段(不図示)によって制御される。
【0065】
第1の制御弁19は、定義された構成に従って、コンプレッサ11からの冷却流体を、
−
図1に実線で示すように、コンデンサ13まで、および/または
−
図2に実線で示すように、バイパス分岐9bを通過して、熱調整交換器17まで、
循環させることを可能にする通路を備える。
【0066】
勿論、コンプレッサ11からコンデンサ13までの、冷却流体の第1の経路と、コンプレッサ11から熱調整交換器17までの、バイパス経路と称される、冷却流体用の第2の経路と、を定義するために、他の手段を考えることもできる。
【0067】
示される実施形態によれば、切り替え手段は、冷却流体の循環方向で第1の膨張部材15の上流に配置された、第2の制御弁21、例えば第2の三方弁21も備える。より正確には、示される実施形態によれば、第2の制御弁21は、第1の制御弁19と、第1の膨張部材15との間に配置される。
【0068】
第2の制御弁21は、定義された構成に従って、冷却流体を、
− コンデンサ13から、冷却分岐9cを介して、第1の膨張部材15まで、および/または
− 第1の制御弁19から、バイパス分岐9bを介して、コンデンサ13および第1の膨張部材15を通過することなしに、熱調整交換器17まで、
循環させることを可能にする通路を備える。
【0069】
この目的のために、温度制御装置9は、示される実施形態によれば、第1の膨張部材15と並列に配置される第2の膨張部材23を備える。
【0070】
好ましくは、第2の膨張部材23の流れの断面は、第1の膨張部材5の流れの断面よりも明らかに大きい。
【0071】
第2の膨張部材23によりもたらされた膨張に関わらず、冷却流体は、高温のままとなり、冷却流体が熱伝達流体FCに熱を与えることを可能にする。
【0072】
図1および
図2に示される実施形態によると、第2の膨張部材23は、従って、第2の制御弁21を、第1の膨張部材15をバイパスして熱調整交換器17の入口に接続することを可能にする。
【0073】
図面の読み取りを容易にするために、第2の制御弁21と、第1の膨張部材15と、第2の膨張部材23とを備える領域は、点線の円で示すように、模式的に拡大されている。
【0074】
例として、第1の膨張部材15は、冷却流体の循環を可能にする、および/または止めるための制御弁を備えるか、あるいはこの制御弁に結合された温度自動調整式の減圧器であり、第2の膨張部材23は、減圧器またはオリフィスチューブである。あるいは、第2の膨張部材は、冷却流体の循環を可能にする、および/または止めるための制御弁を備えるか、あるいはこの制御弁に結合されてもよい。
【0075】
変形例によれば、第1の膨張部材15と、第2の制御弁21と、第2の膨張部材23とは、単一の第1の膨張部材15に組み合わされてもよい。
【0076】
好適には、この種の単一の第1の膨張部材15は、遮断弁として機能することが可能な流体密封電子減圧器(fluid-tight electronic pressure-reducing device)であり、この流体密封電子減圧器の最大断面流れは、”加熱”と称される動作モードと、”冷却”と称される動作モードとの両方を提供可能とするのに十分である。
【0077】
”加熱”と称される動作モード中に、冷却流体は、”高温気体”と称される熱力学サイクルを経るが、この熱力学サイクルの中で、冷却流体は、コンプレッサ11により引き続き圧縮され、次いで、相変化なしに、コンプレッサ11に戻る前に、第2の膨張部材23により膨張されるか、またはそれぞれ単一の第1の膨張部材15により膨張される。
【0078】
”加熱”と称される動作モード中に、第2の膨張部材23またはそれぞれ単一の第1の膨張部材15は、冷却流体に圧力降下を経させ、その結果、温度の低下をもたらす。
【0079】
第2の膨張部材23またはそれぞれ単一の第1の膨張部材15には、コンプレッサ11から来る過熱気体が供給され、過熱気体の密度は、液体の密度よりもずっと低い。要求される流れの断面は、従って、”冷却”と称される動作モードよりもずっと大きい。
【0080】
”冷却”と称される動作モード中に、第1の膨張部材15またはそれぞれ単一の第1の膨張部材15には、コンデンサ13から来る液状の冷却流体が供給される。
【0081】
さらに、冷却分岐9cに、コンデンサ13と第2の制御弁21との間に配置された逆止弁25を設けることが可能である。よって、逆止弁25は、コンプレッサ13から第2の制御弁21までのみの冷却流体の循環を可能にする。
【0082】
勿論、第1の制御弁19から出てくる冷却流体が、冷却分岐9c内でコンデンサ13に向けて循環することを防止する、任意の他の遮断手段を設けることも可能である。
【0083】
加えて、空調ループ9aのコンデンサ13およびエバポレータ5の間に配置される第3の膨張部材27を、設けることができる。よって、コンデンサ13を離れる冷却流体は、膨張を経ることが可能であり、エバポレータ5に入ってエバポレータ5内で蒸発させる前に、圧力および温度が低下される。
【0084】
図面において、追加の熱交換器31は、車両の前面に配置される。このような追加の熱交換器31は、ハイブリッド自動車の場合の熱機関、又は、ハイブリッド若しくは電気自動車の場合のパワートレインなどの、車両内に設置された部品の冷却を提供することが可能である。
【0085】
先に第1の変形例に従い
図1および
図2で模式的に説明した温度制御装置9の様々な動作モードを、これより説明する。
【0086】
図1および
図2において、冷却流体の循環は、実線で模式的に示される。一方、空調ループ9aおよび/または温度制御装置9の不動作の部分、すなわち、冷却流体が循環しない部分は、点線で示される。
【0087】
温度制御装置9を用いる方法は、バッテリパック7の”冷却”と称される動作モード、または”加熱”と称される動作モードから、動作モードを選択するステップを含む。
【0088】
選択された動作モードに応じて、第1の制御弁19および第2の制御弁21は、冷却流体が冷却分岐9cおよび/またはバイパス分岐9b内を循環することができるように、適宜に制御される。
【0089】
図1は、”冷却”と称される動作モードで用いられ、バッテリパック7を冷却する温度制御装置9を示す。
【0090】
”冷却”と称される動作モード中に、コンプレッサ10から出てくる冷却流体は、コンデンサ13内で凝縮され、次いで、冷却分岐9cを介して、第1の膨張部材15に送られ、第1の膨張部材15内で、冷却流体は、熱調整交換器17内へと通過する前に、膨張を経るものであり、この熱調整交換器17を、熱伝達流体FC、特に、熱調整気流FA2が通過し、それにより冷却される。
【0091】
これを行うために、この方法は、
− 冷却流体がコンプレッサ11からコンデンサ13まで循環するように、第1の制御弁19を切り替えるステップと、
− 冷却流体がコンデンサ13から熱調整交換器17まで、第1の膨張部材15を通過して循環するように、第2の制御弁21を切り替えるステップと、
− 熱調整交換器17内で冷却流体を蒸発させるステップと、
を含む。
【0092】
よって、コンデンサ13を通過する間、高圧且つ高温に圧縮された気体状態にある冷却流体は、外気流FA1に熱を与える。
【0093】
コンデンサ13から出てくる冷却流体の一部は、冷却分岐9cを通り、第1の膨張部材15を通過して、熱調整交換器17へと循環する。冷却流体が、第1の膨張部材15を通過するにつれて、冷却流体の圧力および温度は低下する。よって、エバポレータとして機能する熱調整交換器17を通過する際に、冷却流体は、蒸発する間、熱伝達流体FCの熱を吸収する。
【0094】
冷却された熱伝達流体FCは、次いで、バッテリパック7内で、セル8の周りを循環し、セル8を冷却する。
【0095】
熱調整交換器17から出てくる冷却流体は、次いで、コンプレッサ18に戻り、サイクルを再開する。
【0096】
さらに、コンデンサ13から出てくる冷却流体の別の一部は、直列に、第3の膨張部材27内を循環して、冷却流体を膨張させ、次いで、エバポレータ5内を循環して、車両の乗員室に拡散させることを目的とする内気流FA3を冷却することができ、且つ次に、コンプレッサ11に戻ってサイクルを再開することができる。
【0097】
これより、
図2を参照して、バッテリパック7を加熱する”加熱”と称される動作モードで用いられる温度制御装置9を説明する。
【0098】
”加熱”と称される動作モード中に、コンプレッサ11から出てくる冷却流体は、熱調整交換器17内で、熱伝達流体FCと熱を交換する。
【0099】
これを行うために、この方法は、
− 冷却流体がコンプレッサ11から第2の制御弁21まで循環するように、第1の制御弁19を切り替えるステップと、
− 冷却流体が第1の制御弁19から熱調整交換器17まで循環するように、第2の制御弁21を切り替えるステップと、
を含む。
【0100】
熱調整交換器17は、その入口で、高温気体状態にある冷却流体を受け取る。熱調整交換器17を通過して、高圧且つ高温に圧縮された気体状態にある冷却流体は、熱伝達流体FCに熱を与える。
【0101】
加熱された熱伝達流体FCは、次いで、バッテリパック7内で、セル8の周りを循環し、セル8を加熱する。
【0102】
熱調整交換器17から出てくる冷却流体は、次いで、コンプレッサ11に戻り、サイクルを再開する。
【0103】
図3は、第2の変形例に係る温度制御装置9を備える、自動車用の加熱、換気および/または空調装置1を、それぞれ、”冷却”と称される動作モード、および”加熱”と称される動作モードで模式的に示す。
【0104】
第2の変形例は、熱調整交換器17がもはや、熱調整気流と冷却流体の間の熱の交換器ではない点が、
図1および
図2の第1の変形例と異なる。第2の変形例によれば、熱調整交換器17は、冷却流体と、特にグリコール水などの熱伝達液体との間の熱の交換器である。第2の変形例は、
図1および
図2に示される第1の変形例とは逆に、間接型と称される。
【0105】
第2の変形例によれば、バッテリパック7は、バッテリパック7のセル8と直接的に接して配置され、熱伝達流体FC、特に熱伝達液体LCによるバッテリパック7の温度制御を提供する、熱伝達流体FCの循環用のチャネル33を備える。
【0106】
第1の変形例に類似するやり方で、バッテリパック7の”冷却”と称される動作モード中に、熱調整交換器17に入る冷却流体は、熱伝達流体FC、特に熱伝達液体LCから熱を吸収し、これにより、熱伝達流体FCを冷却する効果を有する。
【0107】
バッテリパック7の”加熱”と称される動作モード中に、熱調整交換器17は、高温気体状態にある冷却流体を受け取り、且つ熱伝達流体FCに熱を与え、これにより、熱伝達流体FCを加熱する効果を有する。
【0108】
同じ熱調整交換器17を、バッテリパック7の”冷却”と称される動作モード、およびバッテリパック7の”加熱”と称される動作モードの両方で、どのような追加の加熱装置も必要とせずに使用することが可能である。
【0109】
さらに、第2の変形例によれば、例えば、熱伝達流体FCを循環させるための手段35、例えばポンプ35が設けられる。好ましくは、循環手段35は、バッテリパック7と熱調整交換器17との間に配置される。
【0110】
温度制御装置9の様々な動作モードを、第2の変形例に従い、これより説明する。
【0111】
図3および
図4において、冷却流体の循環は、実線で模式的に示される。一方、空調ループ9aおよび/または温度制御装置9の不動作の部分、すなわち、冷却流体が循環しない部分は、点線で示される。
【0112】
第1の変形例と同様のやり方で、温度制御装置9を用いる方法は、バッテリパック7の”冷却”と称される動作モード、または”加熱”と称される動作モードから、選択するステップを備える。
【0113】
選択された動作モードに応じて、第1の制御弁19および第2の制御弁21は、冷却流体が冷却分岐9aおよび/またはバイパス分岐9b内を循環することができるように、適宜に制御される。
【0114】
図3は、バッテリパック7を冷却するための”冷却”と称される動作モードで用いられる温度制御装置9を示す。
【0115】
”冷却”と称されるこの動作モード中に、コンプレッサ11から出てくる冷却流体は、コンデンサ13内で凝縮され、次いで、冷却分岐9cを介して、第1の膨張部材15に送られ、第1の膨張部材15内で、冷却流体は、熱調整交換器17内へと通過する前に、膨張を経るものであり、この熱調整交換器17を、熱伝達流体FC、特に、熱伝達液体LCが通過し、それにより冷却される。
【0116】
これを行うために、この方法は、
− 冷却流体がコンプレッサ11からコンデンサ13まで循環するように、第1の制御弁19を切り替えるステップと、
− 冷却流体がコンデンサ13から熱調整交換器17まで、第1の膨張部材15を通過して循環するように、第2の制御弁21を切り替えるステップと、
− 熱調整交換器17内で冷却流体を蒸発させるステップと、
を含む。
【0117】
よって、コンデンサ13を通過する間、高圧且つ高温に圧縮された気体状態にある冷却流体は、外気流FA1に熱を与える。
【0118】
コンプレッサ13から出てくる冷却流体の一部は、第1の膨張部材15を通過して、熱調整交換器17へと循環する。冷却流体が、第1の膨張部材15を通過するにつれて、冷却流体の圧力および温度は低下する。
【0119】
熱調整交換器17は、その入口で、最初に、低圧の冷却流体を受け取り、次に、熱伝達流体FCを受け取る。
【0120】
熱調整交換器17を通過する際、冷却流体は、熱調整交換器17を通過する熱伝達流体FCから熱を吸収し、これにより、熱伝達流体FCは冷却される。
【0121】
この方法は、熱伝達流体FCが、熱調整交換器17に戻る前に循環チャネル33内を循環するように、熱伝達流体FCを循環させる手段35を動作させるステップを含んでもよい。
【0122】
熱伝達流体FCの循環は、
図3において矢印により模式的に示される。
【0123】
冷却され、循環チャネル33内を循環する、熱伝達流体FC、特に熱伝達液体LCは、よって、バッテリパック7のセル8を冷却する。
【0124】
熱調整交換器17から出てくる冷却流体は、次いで、コンプレッサ11に戻り、サイクルを再開する。
【0125】
加えて、コンデンサ13から出てくる冷却流体の別の一部は、冷却流体の膨張を提供するために、第3の膨張部材27内を、次いで、エバポレータ5内を、直列に循環することができ、且つコンプレッサ11に戻ってサイクルを再開することができる。
【0126】
これより、
図4を参照して、バッテリ7の”加熱”と称される動作モード中におけるこの方法のステップを説明する。
【0127】
”加熱”と称される動作モード中に、コンプレッサ11から出てくる冷却流体は、熱調整交換器17内で、熱伝達流体FC、特に熱伝達液体LCと熱を交換する。
【0128】
これを行うために、この方法は、
− 冷却流体がコンプレッサ11から第2の制御弁21まで循環するように、第1の制御弁19を切り替えるステップと、
− 冷却流体が第1の制御弁19から熱調整交換器17まで循環するように、第2の制御弁21を切り替えるステップと、
を含む。
【0129】
熱調整交換器17は、従って、その入口で、最初に、高温気体状態にある冷却流体を受け取り、次に、熱伝達流体FC、特に熱伝達液体LCを受け取る。
【0130】
熱調整交換器17を通過する際、高圧且つ高温に圧縮された気体状態にある冷却流体は、熱伝達流体FCに熱を与える。
【0131】
この方法は、熱伝達流体FCが、熱調整交換器17に戻る前に循環チャネル33内を循環するように、熱伝達流体FCを循環させる手段35を動作させるステップを含んでもよい。
【0132】
循環チャネル33内を循環する加熱された熱伝達流体FCは、次いで、バッテリパック7のセル8を加熱することを可能にする。
【0133】
熱調整交換器17から出てくる冷却流体は、次いで、コンプレッサ11に戻り、サイクルを再開する。
【0134】
従って、熱調整交換器17の配置、および切り替え手段の制御は、既知の配置よりも少ない部品を用いて、バッテリパック7の”冷却”と称される動作モードと、”加熱”と称される動作モードとの間で動作モードを容易に変更することを可能とすることが理解され、それは、同じ熱調整交換器17を、”冷却”と称される動作モード、および”加熱”と称される動作モードのために用いており、”加熱”と称される動作モードで、少なくともコンデンサ13を、そして任意に第1の膨張部材15を、バイパスするためのバイパスを用いているためである。
【0135】
明らかに、本発明は、上述され且つ単なる例として提供された実施形態には限定されない。本発明は、本発明の構成、特に、上述の様々な動作モードの全ての組み合わせにおいて、当業者が考えることができる様々な修正、代替形態、および他の変形を包含するものであり、様々な動作モードは、個別に、または組み合わせて用いることができる。