特許第5996780号(P5996780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996780
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】医療用チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   A61M25/00 542
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-507780(P2015-507780)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2013059068
(87)【国際公開番号】WO2014155576
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】荒井 保明
(72)【発明者】
【氏名】酒井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】稲見 祐希
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5810789(US,A)
【文献】 特開昭60−58167(JP,A)
【文献】 特開昭63−24958(JP,A)
【文献】 米国特許第5807349(US,A)
【文献】 国際公開第2011/093131(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/085439(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状器官内又は体腔内に挿入されて、流体を排出及び吸引する医療用チューブであって、
所定長さで伸び、一つの内部流路を形成したチューブ状の本体と、この本体の、前記管状器官内又は体腔内に挿入される部分に設けられ、流体を排出及び吸引可能なバルブとを備え、
前記バルブは、前記本体の軸方向に所定長さで伸びると共に、前記本体の外周から内周に至るように形成され、前記本体の周方向に間隔を開けて設けられた複数のスリットからなり、該複数のスリットにより、前記本体の、前記バルブが設けられた部分は、複数の壁部に分離形成されており、
各スリットは、前記本体の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、同方向に傾いて形成され、前記本体の軸中心Cに対する前記スリットの軸方向角度Eは、±6°とされており、前記本体内に流体が注入されて本体内部が加圧されると開口し、前記本体内が吸引されて本体内部が減圧されると、傾斜したスリット面で滑りを生じて開口するように構成されていることを特徴とする医療用チューブ。
【請求項2】
前記本体は、デュロメータ硬度が75A〜75Dとされた、可撓性を有する合成樹脂、フッ素系樹脂、又は、天然ゴムで形成され、
前記本体のラインLに対する前記スリットの角度θは、10〜60°とされ、
前記本体の内径をRとし、前記本体の、前記ラインLに沿った肉厚をTとしたとき、R/Tは2〜6とされ、
前記スリットの軸方向長さSは、前記本体の外径Dに対して、1.6〜5.0倍とされている請求項1記載の医療用チューブ。
【請求項3】
前記スリットの合わせ面には、潤滑剤が付着されている請求項1又は2記載の医療用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血管内に留置されて制癌剤等の薬液を投与するためのカテーテルや、脳室に溜まった水を腹腔へと排出するシャントチューブ、更には胆管等に挿入されて胆汁等を排出するドレナージチューブなどの、医療用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、制癌剤等の薬液を体内に注入する場合には、血管等の管状器官内に経皮的にカテーテルを挿入し、その先端部を癌に侵された部分まで到達させた後、先端部に設けた排出孔から薬液を投与したり、カテーテル先端を中心静脈に到達させて全身に薬液を投与したりすることが行われている。また、この種のカテーテルの排出孔には、血液等がカテーテル内に逆流して凝固することを防止するために、薬液等の投与時に開き、それ以外のときは閉じる弁体を設けることがある。
【0003】
ところで、近年の医療現場においては、カテーテル先端部が血管内に配置されているかを確認するため、カテーテル先端部から血液を吸引し、カテーテルの基端側から血液が流出するかどうかの吸引作業が要求される場合があった(ONSガイドライン等)。この吸引作業を行うため、吸引用の弁体を備えたカテーテルが用いられている。
【0004】
この種のカテーテルとして下記特許文献1には、カテーテルの周壁部分に形成された直線状スリットにより、スリット弁を備えた注入用連通孔が設けられていると共に、同周壁部分に形成された湾曲状スリットにより、フラップ弁を備えた吸引用連通孔が設けられた、弁付カテーテルが記載されている。このカテーテルでは、内部に薬液が注入され加圧されると、スリット弁が開いて注入用連通孔から薬液が血管内に注入され、一方、内部が減圧されると、フラップ弁が開いて吸引用連通孔から血液がカテーテル内に吸引される。
【0005】
上記弁付カテーテルのように、排出用及び吸引用にそれぞれ弁体を設ける構造ではなく、薬液等の排出時に開くと共に、血液等の吸引時にも開く構造とされた、いわゆる二方向弁を備えたカテーテルも知られている。
【0006】
例えば、下記特許文献2には、断面円形状の管体の先端側部分に、開閉可能なスリットを備えた弁が長手方向に沿って形成され、弁を介して内部から外部に液体を通過させるとき、または、弁を介して外部から内部に液体を通過させるときに、弁におけるスリットの両側の縁部のうちの一方の縁部が他方の縁部よりも変形し易くなるようにした、弁付きカテーテルが記載されている。このカテーテルでは、内部が加圧又は減圧された場合に、変形しやすいスリットの一方の縁部が変形することで、スリットが開いて、薬液の排出又は血液の吸引がなされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−200304号公報
【特許文献2】特開2011−50420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の弁付カテーテルにおいては、排出用及び吸引用にそれぞれ弁体を設けているので、限られたスペースに各弁体を複数設けることが難しく、カテーテルのフラップ弁が設けられた部分が、血管内壁に当接してしまった場合、カテーテル内を減圧してフラップ弁を開いても、吸引用連通孔が血管内壁により塞がれているので、カテーテル内に効果的に血液を吸引することができない可能性があった。
【0009】
一方、上記特許文献2の弁付きカテーテルでは、スリットの両側の縁部のうち、一方の縁部が他方の縁部よりも変形しやすくなるようにするために、スリットの加工が難しくなるという問題があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、比較的簡単な構造で、薬液等の流体の排出や、血液等の流体の吸引を、確実に行えるようにした、医療用チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の医療用チューブは、管状器官内又は体腔内に挿入されて、流体を排出及び吸引する医療用チューブであって、所定長さで伸びるチューブ状の本体と、この本体の、前記管状器官内又は体腔内に挿入される部分に設けられ、流体を排出及び吸引可能なバルブとを備え、前記バルブは、前記本体の軸方向に所定長さで伸びると共に、前記本体の外周から内周に至るように形成され、前記本体の周方向に間隔を開けて設けられた複数のスリットからなり、各スリットは、前記本体の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、同方向に傾いて形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の医療用チューブにおいては、前記本体のラインLに対する前記スリットの角度θは、10〜60°とされていることが好ましい。
【0013】
本発明の医療用チューブにおいては、前記本体の内径をRとし、前記本体の、前記ラインLに沿った肉厚をTとしたとき、R/Tは2〜6とされていることが好ましい。
【0014】
本発明の医療用チューブにおいては、前記スリットの軸方向長さSは、前記本体の外径Dに対して、1.6〜5.0倍とされていることが好ましい。
【0015】
本発明の医療用チューブにおいては、前記本体の軸中心Cに対する前記スリットの軸方向角度Eは、±6°とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、医療用チューブ内に制癌剤や栄養剤等の流体が注入されて、本体の内部が加圧されると、複数のスリットを介して分離された本体の各壁部が、本体の外径側にそれぞれ押圧され、それによって各スリットが開口するので、流体を排出させることができる。
【0017】
一方、ポンプやシリンジ等により、医療用チューブ内が吸引されて減圧されると、スリットにより分離された本体の各壁部が、本体の内径側に撓もうとする。その結果、スリットを介して突き合わされた端部どうしが互いに強く押圧される。
【0018】
この場合、スリットは、本体の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、同方向に傾いて形成されている。このため、スリットを介して突き合わされた端部の一方は、内周面に対して鋭角、外周面に対して鈍角で交わる形状となる(以下この端部を「内側端部」とする。また、スリットを介して突き合わされた端部の他方は、内周面に対して鈍角、外周面に対して鋭角で交わる形状となる(以下この端部を「外側端部」とする)。
【0019】
そして、上記のように、医療用チューブ内の吸引によって、スリットを介して突き合わされた端部どうしが互いに強く押圧されると、傾斜したスリット面で滑りを生じて、内側端部が医療用チューブの内径側に動き、外側端部が医療用チューブの外径側に動く。このため、複数のスリットによって分割された周壁部分が、スリットの傾斜方向(スリットによって形成される先端が鋭角をなしている方向)に動き、スリットを介して突き合わされた端部どうしが外れて、スリットが大きく開くことになる。これによって、医療用チューブの外側に存在する体液等の流体を効果的に吸引することができる。
【0020】
また、この医療用チューブにおいては、バルブは、本体の周方向に間隔を開けて設けられた複数のスリットからなるので、管状器官内又は体腔内に本体が挿入されたとき、本体の周方向一部が管状器官や体腔の内壁に当接して、その部分のスリットが塞がれたとしても、他のスリットが開くため、本体内への流体の吸引を確実に行うことができる。また、本体の周方向に間隔を開けて複数のスリットが設けられていることにより、上述した流体の排出時や吸引時に、流体からの押圧力やシリンジ等による吸引力が、バランスよく各壁部の内面に作用するので、各壁部を変形させやすくして、スリットを開きやすくすることができる。
【0021】
このように、本発明によれば、本体の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、同方向に傾いて形成された複数のスリットを、本体の周方向に間隔を開けて複数設けるだけで、薬液等の流体の排出及び体液等の流体の吸引を確実に行うことができる医療用チューブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の医療用チューブの第1実施形態を示す斜視図である。
図2】同医療用チューブを示しており、(a)は要部拡大側面図、(b)は要部拡大正面図、(c)は(b)のB−B矢示線における断面図である。
図3】同医療用チューブにおいて、図2(a)のA−A矢示線で切断した場合の、拡大断面図である。
図4】同医療用チューブにおいて、チューブ外部へ流体を排出する際の状態を示しており、(a)はスリットが開く前の要部断面図、(b)はスリットが開いた状態の要部断面図である。
図5】同医療用チューブにおいて、スリットが開いて、チューブ外部へ流体が排出される状態を示す要部側面図である。
図6】同医療用チューブにおいて、チューブ内部に流体を吸引する際の状態を示しており、(a)はスリットに押圧力がかかった初期状態の要部断面図、(b)はスリットを介して突き合わせされた端部どうしがずれ始める状態の要部断面図、(c)はスリットを介して突き合わせされた端部どうしがずれて外れてスリットが開き、流体が吸引される状態の要部断面図である。
図7】同医療用チューブにおいて、スリットが開いて、チューブ内部に流体が吸引される状態を示す、要部側面図である。
図8】同医療用チューブにおいて、ラインLに対するスリットの角度θの大きさの相違について説明する要部断面図である。
図9】同医療用チューブにおいて、R/Tの大きさの相違について説明する要部断面図である。
図10】本発明の医療用チューブの第2実施形態を示しており、(a)は通常状態での要部断面図、(b)は流体の排出時の要部断面図、(c)は流体の吸引時における要部断面図である。
図11】本発明の医療用チューブの第3実施形態を示しており、(a)は通常状態での要部断面図、(b)は流体の排出時の要部断面図、(c)は流体の吸引時の一態様を示す要部断面図、(d)は流体の吸引時の他の態様を示す要部断面図である。
図12】本発明の医療用チューブの第4実施形態を示しており、(a)は通常状態での要部断面図、(b)は流体の排出時の要部断面図、(c)は流体の吸引時における要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1〜9を参照して、本発明の医療用チューブの第1実施形態について説明する。
【0024】
図1に示すように、この実施形態における医療用チューブ10(以下、「チューブ10」という)は、血管内に挿入されて同血管内に継続的又は一時的に留置され、必要に応じて制癌剤や栄養剤等を投与したり、血液等の体液を吸引したりすることができる、流体を排出及び吸引可能なカテーテルとして用いられるものである。
【0025】
図2を併せて参照すると、このチューブ10は、所定長さで円筒状に伸びるチューブの本体20と、この本体20の、管状器官内に挿入される部分に設けられ、流体を排出及び吸引可能なバルブ30とを有している。
【0026】
また、この実施形態のチューブ10は、血管内の所定箇所に留置された後、本体20の基端部に薬液注入ポート40が接続されるようになっている(図1参照)。この薬液注入ポート40は、合成樹脂等からなる容器41と、この容器41外周の所定箇所に着脱可能に装着される接続部43とからなり、前記容器41の上面開口には注射器の針を差し込み可能なゴム膜41aが形成され、前記接続部43には本体20の基端部に接続される接続管43aが設けられている。
【0027】
本体20は、可撓性を有する合成樹脂、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、シリコーン等が挙げられ、それらの混合物或いは共重合体であってもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂や、天然ゴムでもよい。
【0028】
上記材料の中でも、例えば、JIS K 6253に規定される、デュロメータで計測した硬度が、75A〜75Dとなるものを用いることが好ましく、80A〜93Aとなるものを用いることがより好ましい。
【0029】
更に、前記本体20は、BaSO、Bi、W等の粉末を含有させて、X線不透過性としてもよい。また、本体20の外周に、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の親水性樹脂をコーティングしてもよく、ウロキナーゼ等の線溶活性を有する生理活性物質や、抗菌剤、顔料・染料(着色料)等をコーティングしてもよい。
【0030】
図2(c)に示すように、この実施形態では、本体20の先端は、先端壁25で閉塞された形状をなしている。この先端壁25は中央部が薄く、外側の周縁25aが厚く形成されて、いわゆるすり鉢形状をなしており(図2(c)参照)、同先端壁25の中央には直線状の切込み27が形成されている(図2(b)参照)。この切込み27は常時閉じているが、制癌剤等の流体が本体20内に注入され、内圧が高まると開いて、流体を排出可能とされ、本体20内が常圧に戻った場合や減圧された場合に、切込み27が閉じて、本体20内に血液等の外部流体が流入しないようになっている。
【0031】
また、本体20の先端壁25にすり鉢形状の凹部を設け、そこに切込み27を設けたことにより、チューブ10の先端側及び基端側の両方から、チューブ10内に図示しないガイドワイヤを挿入することができ、チューブ留置時の作業性を向上させることが可能となっている。
【0032】
なお、前記先端壁25は、その中央部を球面状やテーパ状に形成することもでき、中央部が薄く、外側の周縁25aが厚く形成されていればよい。また、先端壁25に形成される切込みはY字状や十字状等でもよい。
【0033】
更に、前記本体20は、図2(c)に示すように、先端壁25が設けられた部分22が射出成形され、それ以外の部分24が押し出し成形されて、両者が接合されて構成されている。
【0034】
図2(a)〜(c)及び図3に示すように、この実施形態のバルブ30は、本体20の先端部側において、その軸方向に沿って所定長さS(図2(a)参照)で伸びると共に、本体20の外周から内周に至るように形成され、本体20の周方向にほぼ均等な間隔をあけて対向して配置された一対のスリット31,31から構成されている(図2(b),図3参照)。
【0035】
より具体的には、図3に示すように、本体20のスリット31が形成された部分を、本体20の軸中心Cに対して垂直な断面で見たとき、各スリット31は、本体20の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、角度θで同方向に傾いて形成されている。この実施形態におけるスリット31,31は、共に上記ラインLに対して反時計方向(左回り)となるように傾いて形成されている(図3参照)。
【0036】
上記のように、本体20にスリット31,31を設けたことで、本体20が壁部34,35に分離形成される。また、各スリット31は、上記のように、本体20の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、角度θで同方向に傾いて形成されているので、スリット31を介して突き合わされた端部の一方は、内周面に対して鋭角、外周面に対して鈍角で交わる内側端部32となり、スリットを介して突き合わされた端部の他方は、内周面に対して鈍角、外周面に対して鋭角で交わる外側端部33となる(図3の網掛け部分参照)。
【0037】
なお、本発明におけるスリット31は、本体20の周方向に間隔を開けて設けられている。スリット31の間隔は、本体20の軸中心Cに対して垂直な断面で見たとき、スリットにより分離形成された所定の壁部の外周長さを1としたとき、残りの壁部の外周長さが、0.5〜2.0の割合で形成されることが好ましく、0.83〜1.20の割合で形成されることがより好ましく、均等な間隔で形成されることが最も好ましい。
【0038】
そして、本体20内に制癌剤等の流体が注入されて内部が加圧されると(図4(a)参照)、各壁部34,35が本体20の外径側にそれぞれ押圧されて、バルブ30を構成するスリット31,31が各々開口するので、流体を排出できるようになっている(図4(b)及び図5参照)。
【0039】
一方、本体20内が吸引されて内部が減圧されると、各壁部34,35が吸引されて本体20の内径側に撓もうとし、壁部34,35のスリット31を介して突き合わされた内側端部32及び外側端部33どうしが互いに押圧される(図6(a)参照)。そして、スリット31を介して突き合わされた端部どうしが互いに強く押圧されると、傾斜したスリット面で滑りを生じて、内側端部32が本体20の内径側に動き、外側端部33が本体20の外径側に動く(図6(b)参照)。このため、複数のスリット31によって分割された壁部34,35が、スリット31の傾斜方向(スリット31によって形成される各端部の先端が鋭角をなしている方向)に動き、スリット31を介して突き合わされた端部どうしが外れて、スリット31が大きく開くことになる(図6(c)、図7参照)。これによって、医療用チューブの外側に存在する体液等の流体を効果的に吸引することができる。
【0040】
また、本体20のラインLに対する各スリット31の角度θは、10〜60°であることが好ましく、14〜51°であることがより好ましい。
【0041】
これについて図8(a),(b)を併せて説明すると、上記角度θが10°未満の場合は、流体の吸引時において、壁部34,35の対向した端部32,33どうしが、互いに突き当たってずれにくくなるため、内側端部32が撓みにくくなる(図8(a)参照)。一方、上記角度θが60°を超える場合は、流体の吸引時において、スリット31を介して突き合わされた内側端部32及び外側端部33がずれても外れにくくなり、スリット31を効果的に開口しにくくなる(図8(b)参照)。なお、図8に示す本体20の断面図は、図3記載の本体20を所定角度回転させたものであり、実質的に同一である(図9においても同様である)。
【0042】
また、図3に示すように、本体20の内径をRとし、本体20の、ラインLに沿った肉厚をTとしたとき、R/Tは、2〜6であることが好ましく、2.4〜4.5であることがより好ましい。
【0043】
これについて図9(a),(b)を併せて説明すると、図9(a)に示すように、上記R/Tが2未満の場合は、流体の吸引時において、スリット31を介して突き合わされた内側端部32及び外側端部33がずれても、反対側の壁部内周面に当接して、内側端部32と外側端部33とがそれ以上位置ずれしなくなるため、内側端部32と外側端部33の突き合わされた端面が外れにくくなり、スリット31を効果的に開口させにくくなる。一方、図9(b)に示すように、上記R/Tが6を超える場合は、スリット31は開きやすくなるが(図9(b)右図参照)、その肉厚が、図1〜8に示すチューブや図9(a)に示すチューブと比べて薄くなり、本体20が柔らかくなる。
【0044】
また、図2(a)に示すように、スリット31の軸方向長さSは、本体20の外径Dに対して、1.6〜5.0倍であることが好ましく、2.3〜3.2倍であることがより好ましい。前記軸方向長さSが、本体20の外径Dに対して1.6倍未満の場合は、スリット31が開きにくくなり、流体の排出量及び吸引量が低下し、一方、5.0倍を超える場合は、本体20の剛性が低下することに加え、常圧時における閉鎖力が弱くなり、チューブ内に生体液が浸入するおそれがある。
【0045】
図2(a)に示すように、この実施形態におけるスリット31は、本体20の軸中心Cに対して平行となるように形成されているが、本体20の軸中心Cに対して傾いていてもよい。
【0046】
すなわち、図2(a)に示すように、本体20の軸中心Cに対して、スリット31の軸方向角度Eは、±6°であることが好ましく、±2°であることがより好ましい。前記角度Eが、±6°の範囲外の場合には、スリット31により分離形成された本体20の各壁部34,35の周方向長さが、本体20の軸方向に対して不均一となり、流体の排出時や吸引時における各壁部34,35の変形動作がバラつきやすく、各スリット31による流体排出量や吸引量に差異が生じる可能性がある。
【0047】
また、各スリット31の合わせ面には、グラファイト、二硫化モリブデン、フッ素含有化合物、窒化ホウ素、ステアリン酸塩、シリコーンオイル等のような潤滑剤が付着されていることが好ましく、生体適合性の観点からシリコーンオイルを用いることが特に好ましい。
【0048】
次に上記構造からなるチューブ10の使用方法の一例について説明する。ここでは、血管内に挿入・留置されて、制癌剤や栄養剤等の流体を投与したり、血液を吸引したりするための、血管用カテーテルとして用いる場合について説明する。
【0049】
まず、周知のセルディンガー法により、図示しない穿刺針を血管に穿刺し、同穿刺針の基端側から図示しないガイドワイヤを導入して血管内に挿入した後、穿刺針を引き抜くと共に、ガイドワイヤに沿って図示しない鞘状のシースを血管内に挿入する。次いで、ガイドワイヤの基端を、チューブ10の先端壁25の切込み27から挿入して、チューブ10内にガイドワイヤを導入する。そして、ガイドワイヤの先端を血管内の目的箇所に位置させ、このガイドワイヤ外周に沿ってシース内に前記チューブ10を挿入していき、その先端部を血管内の目的箇所に到達させる。その後、ガイドワイヤをチューブ10内から引き抜くと共にシースを血管から引き抜き、薬液注入ポート40の接続管43aをチューブ10の基端部に接続し、皮膚を切開して薬液注入ポート40を皮膚下に埋め込む。
【0050】
この状態で、薬液注入ポート40のゴム膜41aに、図示しない注射器の注射針を差し込んで制癌剤等の流体を注入することによって、本体20内に制癌剤等の流体が注入される。
【0051】
すると、本体20内に注入された流体によって、本体20の内部が加圧されるので(図4(a)参照)、スリット31により分離された壁部34,35が、本体20の外径側にそれぞれ押圧され、それによりバルブ30を構成する両スリット31,31が各々開口して、本体20の内部流体を各スリット31を通して本体外部に排出することができる(図4(b)及び図5参照)。
【0052】
このとき、このチューブ10においては、複数のスリット31から流体を排出することができるので、管状器官の内壁に対して、複数の方向から流体を投与することができ、その結果、効力が強い薬剤(制癌剤等)の影響を緩和することができる。
【0053】
また、この実施形態においては、本体20の先端壁25に切込み27が形成されているので、上記のように流体排出時にスリット31が開くと共に、常時は閉塞された切込み27も開くようになっている。その結果、流体排出時にはスリット31及び切込み27の両者が開くので、流体をスムーズに排出させることができる。
【0054】
一方、チューブ10を用いて、血液等の流体を吸引する際には、チューブ10の基端部に図示しないポンプやシリンジ等を接続し、これらを動作させて本体20の内部を吸引して、その内部を減圧する。
【0055】
すると、前述したように、本体20のスリット31により分離形成された各壁部34,35が、吸引されて本体20の内径側に撓もうとし、壁部34,35のスリット31を介して突き合わされた内側端部32及び外側端部33どうしが互いに押圧され(図6(a)参照)、傾斜したスリット面で滑りを生じて、内側端部32が本体20の内径側に動き、外側端部33が本体20の外径側に動く(図6(b)参照)。このため、複数のスリット31によって分割された壁部34,35が、スリット31の傾斜方向(スリット31によって形成される各端部の先端が鋭角をなしている方向)に動き、スリット31を介して突き合わされた端部どうしが外れてスリット31が大きく開く(図6(c)、図7参照)。これによって、医療用チューブの外側に存在する体液等の流体を効果的に吸引することができる。
【0056】
なお、この実施形態においては、流体吸引時には、本体20の先端壁25に形成された切込み27が閉じるようになっているので、本体20内を効果的に減圧することができ、その結果、スリット31をスムーズに開口させて、本体外側の流体を確実に吸引することができる。
【0057】
そして、このチューブ10においては、上述したように、本体20内が減圧されると、複数のスリット31,31がそれぞれ開口するため、血管等の管状器官内にチューブ10の本体20を挿入したときに、本体20の周方向一部が管状器官内壁に当接して、その部分におけるスリット31が塞がれたとしても、他のスリット31は開いた状態に保持することができ、流体を本体20内に確実に吸引することができる。
【0058】
また、スリット31は、本体20の周方向に間隔をおいて複数設けられているので、上述した流体の排出時に、流体からの押圧力が壁部34,35の内面にバランスよく作用すると共に(図4(a)参照)、流体の吸引時においても、ポンプやシリンジ等による吸引力が壁部34,35の内面にバランスよく作用するので(図6(a)参照)、流体の排出時及び吸引時において、各壁部34,35を変形させやすくすることができ、スリット31を開きやすくすることができる(図4(b)及び図6(b)参照)。更に、本体20に複数のスリット31が設けられているため、流体の排出時や吸引時における、排出量や吸引量を高めることができる。
【0059】
また、本体20のラインLに対する各スリット31の角度θを、10〜60°とした場合には、ラインLに対して前記角度θで傾いた斜めのスリット31によって、各壁部34,35の内側端部32及び外側端部33どうしの、ラインL方向に重なる部分の面積を適度にとることができるので、本体内部にポンプやシリンジ等による吸引力が作用したときに、各スリット31を開きやすくすることができる。
【0060】
更に、本体20の内径をRとし、本体20の、ラインLに沿った肉厚をTとしたとき、R/Tを2〜6とした場合には、本体内がポンプやシリンジ等により吸引され、本体20の壁部34,35の内側端部32が内径側に撓み変形するときに、内側端部32と外側端部33どうしが完全にずれて、スリット31を開きやすくすることができる。
【0061】
また、各スリット31の軸方向長さSを、本体の外径Dに対して1.6〜5.0倍とした場合には、本体20の剛性を保持しつつ、スリット31による吸引性能を高めることができるという効果が得られる。
【0062】
更に、本体20の軸中心Cに対する各スリット31の軸方向角度Eを±6°とした場合には、各スリット31により分離してなる本体20の各壁部34,35の、それぞれの周方向長さを、本体20の軸方向に沿ってほぼ均一にすることができるので、流体の排出時又は流体の吸引時における、各壁部34,35の変形動作をバランスよく行わせることができる。
【0063】
また、各スリット31の合わせ面に潤滑剤が付着されている場合には、スリット31により分離された各壁部34,35の、対向配置された内側端部32と外側端部33との接触面での摩擦抵抗を小さくすることができるので、本体20内が減圧されたときに、内側端部32を本体内径側に向けて位置ずれしやすくなり、スリット31を開口させやすくすることができる。
【0064】
なお、上記実施形態におけるチューブ10は、血管内に挿入されるカテーテルとして用いられるものとして説明したが、尿管、胆管、気管等の人体の管状器官内に挿入されて用いられる医療用チューブ、例えば、水頭症等の治療の際に、脳室に溜まった水を腹腔内へと排出するためのシャントチューブや、胆管内に溜まった胆汁を排出するためのドレナージチューブなどの、弁体を備えるチューブにも適用することができる。
【0065】
図10には、本発明における医療用チューブの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0066】
この実施形態における医療用チューブ10a(以下、「チューブ10a」という)は、図10(a)に示すように本体20のスリット31が形成された部分を、本体20の軸中心Cに対して垂直な断面で見たとき、本体20の周方向にほぼ均等な間隔で、3つのスリット31が設けられており、これにより3つの壁部34,35,36が形成されている。また、各スリット31は、本体20の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、角度θで同方向(反時計方向)に傾いて形成されている。
【0067】
そして、この実施形態のチューブ10aにおいても、本体20内に流体が注入されて内部が加圧されると、各壁部34,35,36が本体20の外径側に押圧され、各スリット31がそれぞれ開口して、流体を排出することができる(図10(a)参照)。一方、本体20内が吸引されて内部が減圧された場合には、各壁部の内側端部32が、他の壁部の外側端部33よりも大きな吸引力を受けて、内側端部32が外側端部33に対して内径側にずれるように撓んで、各スリット31がそれぞれ開口して、本体外側の流体を本体20内に吸引することができる(図10(b))。
【0068】
図11には、本発明における医療用チューブの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0069】
この実施形態における医療用チューブ10b(以下、「チューブ10b」という)は、図11(a)に示すように本体20のスリット31が形成された部分を、本体20の軸中心Cに対して垂直な断面で見たとき、本体20の周方向にほぼ均等な間隔で、4つのスリット31が設けられており、これにより4つの壁部34〜37が形成されている。各スリット31は、本体20の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、角度θで同方向(反時計方向)に傾いて形成されている。
【0070】
そして、この実施形態のチューブ10bでは、本体20内に流体が注入されて内部が加圧されると、各壁部34,35,36が本体20の外径側に押圧され、4つのスリット31がそれぞれ開口して、流体を排出することができる(図11(b)参照)。
【0071】
一方、本体20内が吸引されて内部が減圧された場合には、図11(c)又は図11(d)に示すように、各壁部が撓み変形する。これはチューブ10bの前述したR/T比や、スリット31の軸方向長さS等に応じて、変化するものと考えられる。
【0072】
すなわち、図11(c)に示す場合では、各壁部の内側端部32が、他の壁部の外側端部33よりも大きな吸引力を受けて、内側端部32が外側端部33に対して内径側にずれるように撓んで、4つのスリット31がそれぞれ開口して、本体外側の流体を本体20内に吸引される。
【0073】
一方、図11(d)に示す場合では、各壁部が撓み変形する際に、一部の壁部の内側端部32と外側端部33とが互いに当接して、その間のスリット31が閉塞されるものの、スリット31を、本体20の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、角度θで同方向に傾いて形成したことで、すべての端部32,33どうしがぶつかり合うことを防止して、いずれかのスリット31を開口させることができ、本体外側の流体を吸引することができる。
【0074】
図12には、本発明における医療用チューブの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0075】
この実施形態における医療用チューブ10c(以下、「チューブ10c」という)は、図12(a)に示すように本体20のスリット31が形成された部分を、本体20の軸中心Cに対して垂直な断面で見たとき、本体20の周方向にほぼ均等な間隔で、5つのスリット31が設けられており、これにより5つの壁部34〜38が形成されている。各スリット31は、本体20の軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して、角度θで同方向(反時計方向)に傾いて形成されている。
【0076】
そして、この実施形態のチューブ10cでは、本体20内に流体が注入されて内部が加圧されると、各壁部34〜38が本体20の外径側に押圧され、5つのスリット31がそれぞれ開口して、流体を排出することができる(図12(b)参照)。
【0077】
一方、本体20内が吸引されて内部が減圧された場合には、図12(c)に示すように、所定の壁部の内側端部32と外側端部33とが互いに当接して、その間のスリット31が閉塞されるものの、他の開口したスリット31から、本体外側の流体を吸引することができる。
【0078】
以上説明した実施形態では、医療用チューブを構成する本体の周方向に均等な間隔で、2〜5個のスリットを設けたが、これ以上のスリットを設けてもよい。しかし、スリットの個数を増やすと、チューブ留置時にバルブに不慮の外力が加わったときに、変形しやすくなり、それによりスリットが開口しやすくなる。そのため、スリットの個数としては、2〜4個であることが好ましく、特に2個であることが好ましい。
【実施例】
【0079】
本発明と同様のバルブを備えた医療チューブについて、流体の吸引性能を確認した。
1.吸引試験1
(1)試料の作製
下記表1で示すような各寸法、及び、材質のチューブを所定長さでカットして、本体20を形成すると共に、その軸中心Cを通り且つ径方向に伸びるラインLに対して30°で同方向に傾いたスリット31,31を、周方向に均等な間隔で形成して、試料1〜9の医療用チューブを作製した。また、スリット31の軸方向長さSは、5mmで形成した。
【0080】
(2)試験方法
上記各試料1〜9のスリット31の合わせ面に、シリコーンからなる潤滑剤を塗布しておき、各試料の基端部にシリンジを接続すると共に、各試料を所定の流体が貯留された容器内に挿入し、前記シリンジにより所定圧力で吸引して、流体の吸引性能を確認した。その結果を下記表1に示す。表1中、「◎」は吸引性能が非常に良好であったことを意味し、「○」は吸引が良好であったことを意味し、「×」は吸引ができなったことを意味する。
【0081】
(3)試験結果
その結果、R/Tが高いと、吸引性能が良好になることが確認できた(表1参照)。
【0082】
【表1】
【0083】
2.吸引試験2
(1)試料の作製
上記試料1〜9について、スリット31の軸方向長さSが3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmとしたものを準備した(表2参照)。表2に、各試料のS/Dについて併せて示す。
【0084】
(2)試験方法
各試料1〜9のスリット31の合わせ面にシリコーンからなる潤滑剤を塗布し、上記吸引試験1.と同様の方法で吸引試験を行った。その結果を下記表2に示す。表2中、「◎」は吸引性能が非常に良好であったことを意味し、「○」は吸引が良好であったことを意味し、「△」は充分に吸引できなかったことを意味し、「×」は吸引ができなったことを意味する。
【0085】
(3)試験結果
その結果、チューブ本体の外径Dに対してスリット31の軸方向長さSが長い方が、吸引性能が良い傾向となることが確認できた(表2参照)。
【0086】
【表2】
【0087】
3.吸引試験3
(1)試料の作製
上記吸引試験1における試料11と、同様の材質、内径R、外径D、肉厚Tを有する医療用チューブについて、本体20のラインLに対する2つのスリット31,31の角度θを、下記表3で示す角度(°)として、試料No.1〜7を作製した。表3中、角度X1は、図3の図中右側部分における角度θを意味し、角度X2は、図3の図中左側部分における角度θを意味する。また、スリット31の軸方向長さSは、いずれも5mmである。
【0088】
(2)試験方法
各試料No.1〜7について、スリット31の合わせ面にシリコーンからなる潤滑剤を塗布し、上記吸引試験1.と同様の方法で吸引試験を行った。その結果を下記表3に示す。表3中、「○」は吸引が良好であったことを意味し、「△」は充分に吸引ができなかったことを意味する。
【0089】
(3)試験結果
その結果、試料No.1〜7のいずれも、吸引性能が良好であることを確認できた(表3参照)。
【0090】
【表3】
【符号の説明】
【0091】
10,10a,10b,10c 医療用チューブ(チューブ)
20 本体
30 バルブ
31 スリット
32 内側端部
33 外側端部
34,35,36 壁部
C 本体の軸中心
D 本体の外径
E スリットの軸方向角度
L ライン
θ ラインLに対するスリットの角度
S スリットの軸方向長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12