特許第5996860号(P5996860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996860
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】振出式シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/16 20060101AFI20160908BHJP
   B43K 25/02 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   B43K21/16 H
   B43K21/16 L
   B43K25/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-227697(P2011-227697)
(22)【出願日】2011年10月17日
(65)【公開番号】特開2013-86322(P2013-86322A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅信
【審査官】 櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−238889(JP,A)
【文献】 特開平08−080698(JP,A)
【文献】 実開昭63−144286(JP,U)
【文献】 特開2010−184358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 5/17
21/00−21/26
24/00−24/02
24/04−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒を振ることにより生じる重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルであって、前記軸筒の側壁後部に摺動窓を形成するとともに、前記軸筒内に長手方向に移動可能で後スプリングにより長手方向後方に付勢された摺動部材を内蔵し、摺動部材と、前記チャックと連動する芯タンクとが当接可能でかつ適宜離間して構成し、この摺動部材にクリップを上下に開閉可能に取り付け、前記クリップの固定部が前記軸筒の摺動窓を挿通することにより、前記クリップの前進と連動する前記摺動部材が前記芯タンクに当接し、前記クリップとともに前記摺動部材、前記芯タンク及び前記チャックが前進して前記芯タンク内の芯を前記チャックに追従させ、前記クリップの固定部の前端と前記摺動部材の端面との間にコイルスプリングを取り付け、前記クリップの固定部の下側を後方に付勢することにより、前記摺動部材を軸にして前記クリップの前部が下方に押されて前記軸筒の表面に押し付けられることを特徴とする振出式シャープペンシル。
【請求項2】
前記軸筒に芯挿入筒部を有する頭冠を取り付け、前記芯挿入筒部の下方に前記コイルスプリングが配されたことを特徴とする請求項1に記載の振出式シャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能なクリップを前進させることにより芯タンク内の芯をチャック内に追従させる振出式シャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外筒をスイングすることにより外筒内に収納された打下げハンマーを芯送り出し機構に作用させ、外筒の先端より芯を繰り出すことができるスイング式シャープペンシル(振出式シャープペンシル)において、芯送り出し機構の芯ケースと当接可能な受け面を有する芯ケース受けを設け、該芯ケース受けは、前記受け面を内部に有し芯ケースの後端が挿入される筒状部と、外筒の外部で外筒に沿って軸方向に伸びるクリップ部と、外筒の後部側面に形成された軸孔を通って該筒状部と該クリップ部を一体に連結する連結部と、からなるスイング式シャープペンシルが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、上記スイング式シャープペンシルは、クリップが上下に開閉することができず、クリップで服のポケット等を挟持して携帯しようとした場合、十分な挟持力が得られず、外れて紛失してしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−238889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、クリップを前進させることによりクリップとともにチャック及び芯タンクが前進して芯を追従させる振出式シャープペンシルにおいて、クリップで服のポケット等を挟持する時、十分な挟持力が得られない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
「1.軸筒を振ることにより生じる重量体の慣性力によりチャックを前進させて芯を繰り出す振出式シャープペンシルであって、前記軸筒の側壁後部に摺動窓を形成するとともに、前記軸筒内に長手方向に移動可能で後スプリングにより長手方向後方に付勢された摺動部材を内蔵し、摺動部材と、前記チャックと連動する芯タンクとが当接可能でかつ適宜離間して構成し、この摺動部材にクリップを上下に開閉可能に取り付け、前記クリップの固定部が前記軸筒の摺動窓を挿通することにより、前記クリップの前進と連動する前記摺動部材が前記芯タンクに当接し、前記クリップとともに前記摺動部材、前記芯タンク及び前記チャックが前進して前記芯タンク内の芯を前記チャックに追従させ、前記クリップの固定部の前端と前記摺動部材の端面との間にコイルスプリングを取り付け、前記クリップの固定部の下側を後方に付勢することにより、前記摺動部材を軸にして前記クリップの前部が下方に押されて前記軸筒の表面に押し付けられることを特徴とする振出式シャープペンシル。
2.前記軸筒に芯挿入筒部を有する頭冠を取り付け、前記芯挿入筒部の下方に前記コイルスプリングが配されたことを特徴とする前記1項に記載の振出式シャープペンシル。」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、クリップを前進させることによりクリップとともにチャック及び芯タンクが前進して芯を追従させる振出式シャープペンシルにおいて、クリップで服のポケット等を確実に挟持できるという利点が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施例1の振出式シャープペンシルを示す断面図である。(実施例1)
図2図2は、図1のA−A線を示す拡大断面図である。(実施例1)
図3図3は、本発明の実施例1の振出式シャープペンシルにおける摺動部材を示す拡大正面図である。(実施例1)
図4図4は、図3の摺動部材を示す拡大平面図である。(実施例1)
図5図5は、本発明の実施例1の振出式シャープペンシルにおいて、クリップが閉じた状態を示す主要部部分断面図である。(実施例1)
図6図6は、本発明の実施例1の振出式シャープペンシルにおいて、クリップが開いた状態を示す主要部部分断面図である。
図7図7は、本発明の実施例2の振出式シャープペンシルにおいて、クリップの取付状態を示す拡大断面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
クリップを前進させることによりクリップとともにチャック及び芯タンクが前進して芯を追従させることができ、かつ、クリップで服のポケット等を確実に挟持することができる振出式シャープペンシルを実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、図1図2図3図4図5及び図6に基づいて本発明における実施例1の振出式シャープペンシルを説明する。尚、図1の左側を前方とし、右側を後方とする。先ず、黄銅等の金属製のチャック1の前部を3分割し、頭部1Aと撓み可能な弾性片1Bを構成する。また、頭部1Aには後方に行くに従って細径となるテーパー部を形成する。更に、チャック1の芯保持部1Cにはネジ等により凹凸を形成する。
【0011】
前記チャック1の後部には合成樹脂製のコネクター2が圧入固着される。また、チャック1の頭部1Aには締具3が外嵌され、締具3を受け止めるワッシャー4とコネクター2の前端との間に100g程度の取付時荷重でチャックスプリング5が取り付けられる。したがって、通常チャックスプリング5により後方に付勢されるチャック1の頭部1Aは、締具3に押圧され閉じられることによって芯6を保持する。更に、前記コネクター2の後部に合成樹脂製のパイプからなる芯タンク7が圧入固着される。この芯タンク7の外側に重量体8が長手方向に摺動可能に外嵌され、振出式シャープペンシルの機構部が構成される。
【0012】
前記機構部を、ゴム製のグリップ9を把持部に取り付けた前軸10の前方より挿入し、ワッシャー4を前軸10の前端に当接する。更に、前軸10の前部に先部材11を着脱可能に螺合し、先部材11の内段11Aと前軸10の前端によりワッシャー4を挟持する。また、先部材11には芯6を軽く保持する芯ホルダー12が内蔵される。
【0013】
更に、後軸13の側壁後部に長手方向に伸びた摺動窓13Aを形成する。また、後軸13の細径の中間部には前方から後方に伸びた凹溝13Bが上下に互いに対向して形成される。更に、後軸13の細径部には後方から前方に伸びたキー溝13Cが内面両側に互いに対向して形成される。
【0014】
また、摺動部材14は図3及び図4に示したように、上下の相対位置に並列した切溝14Aをそれぞれ形成し、この切溝14Aの間に前端が傾斜し後端が垂直の突起14Bを上下の相対位置に形成する。この摺動部材14の中間部両側に外方に突出したキー14Cを形成する。更に、摺動部材14の後部に後方に突出した2つの片14Dを並列に形成し、この片14Dのそれぞれの両外側面に円柱形の隆起部14Eを相対位置に形成するとともに、それぞれの内側に断面円弧状の凹陥部14Fを形成する。また、2つの片14Dの下方に後方に突出した棒状突起14Gを形成する。
【0015】
前記後軸13に中駒15を前方より挿入して圧入固着する。また、後軸13の後方から前記摺動部材14を挿入し、摺動部材14のキー14Cを後軸13のキー溝13Cに挿入する。したがって、後軸13と摺動部材14は回動不能に構成されるので、摺動部材14の上下に形成した突起14Bが後軸13の凹溝13Bに容易に合わされ互いに係合する。そして、中駒15の内鍔15Aと摺動部材14の内段14Hとの間に取付時荷重250g程度で後スプリング16を取り付け、摺動部材14を長手方向後方に付勢して突起14Bを後軸13の凹溝13B後端縁13Dに当接させる。
【0016】
クリップ17は、前部下側に受部17Aを突出させるとともに、後部下側に固定部17Bを形成する。この固定部17Bは空洞で、かつ両側壁部に互いに対向する係止孔17Cが形成される。
【0017】
このクリップ17の固定部17Bを後軸13の摺動窓13Aより挿入し、前記摺動部材14の2つの片14Dに形成した円柱形の隆起部14Eにクリップ17の固定部17Bに形成した係止孔17Cを嵌め込み、隆起部14Eを係止孔17Cに回動自在に取り付ける。更に、摺動部材14の棒状突起14Gにコイルスプリング18を挿入し、このコイルスプリング18をクリップ17の固定部17B前端と摺動部材14の端面との間に取付時荷重850g程度で取り付け、通常クリップ17の固定部17B下側を後方に付勢することによって摺動部材14の隆起部14Eを軸にしてクリップ17の前部が下方に押され、クリップ17の受部17Aが後軸13の表面に押し付けられて閉じられる。
【0018】
更に、後軸13の後方から頭冠19を挿入し、頭冠19の芯挿入筒部19Aを摺動部材14の2つの片14Dに形成した断面円弧状の凹陥部14Fに挿入するとともに、上方に隆起した隆起部19Bを2つの片14Dの間に位置させる。そして、隆起部19Bの上部に形成した係止部19Cを後軸13の摺動窓13Aに係止するとともに、頭冠19の外鍔19Dを後軸13の後端に当接し、後軸13に頭冠19を取り付ける。この頭冠19には消しゴム20が取り付けられるとともに、消しゴム20を覆うノブ21が着脱可能に螺合される。
【0019】
この後軸13を前記前軸10に着脱可能に螺合し、芯タンク7を中駒15の内鍔15Aを挿通して摺動部材14の前部内孔14I内に挿入される。この前軸10と後軸13により軸筒を構成する。前記芯タンク7の後端と摺動部材14の内鍔14Jとの間は適宜離間して構成され、振出式シャープペンシルが構成される。
【0020】
次にクリップ17の開閉操作を説明すると、図5のクリップ17が閉じた状態からクリップ17の後部17Dを下方に押圧すると、摺動部材14の隆起部14Eを軸にしてクリップ17の前部が上方に開くとともにクリップ17の固定部17B下側でコイルスプリング18を圧縮させ図6に示した状態となる。また、クリップ17の後方の押圧を止めればコイルスプリング18に押されてクリップ17が閉じられ図5の状態に復帰する。
【0021】
この振出式シャープペンシルで芯6を繰り出すには、前軸10と後軸13からなる軸筒を振ることにより重量体8がコネクター2の外鍔2Aと中駒15の内鍔15Aとの間を摺動し、重量体8の慣性力によりチャック1、コネクター2及び芯タンク7を前進させて芯6を繰り出す。また、使用中の芯6が消耗して短くなった場合には、クリップ17を前方に移動させ、クリップ17とともに摺動部材14を前進させる。すると、摺動部材14の内鍔14Jが芯タンク7の後端に当接し、芯タンク7、コネクター2及びチャック1を前進させ、芯タンク7内の芯6をチャック1内に追従させる。
【0022】
また、芯タンク7内に芯6を補充する場合は、頭冠19からノブ21及び消しゴム20を外し、頭冠19の芯挿入筒部19Aより芯タンク7内に芯6を挿入する。
【0023】
この実施例1の場合には、コイルスプリング18が下方に位置されて芯6の挿入孔を構成できるので、クリップ17が開閉可能にもかかわらず芯タンク7内に確実に芯6を挿入することができる。
【実施例2】
【0024】
以下、図7に基づいて本発明における実施例2の振出式シャープペンシルを説明する。尚、図1と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。摺動部材114の後部に後方に突出した2つの片114Dを並列に形成し、この片114Dの両外側面に円形の穴部114Kを相対位置に形成するとともに、内側に断面円弧状の凹陥部114Fを形成する。また、2つの片114Dの下方に後方に突出した棒状突起114Gを形成する。この摺動部材114を後軸13の後方から挿入し、摺動部材114のキー114Cを後軸13のキー溝13Cに挿入する。
【0025】
クリップ117は、後部下側に固定部117Bを形成し、この固定部117Bは空洞で、かつ固定部117Bの両側壁部内側に互いに対向する係止突起117Eを形成する。
【0026】
このクリップ117の固定部117Bを後軸13の摺動窓13Aより挿入し、前記摺動部材114の2つの片114Dに形成した穴部114Kにクリップ117の固定部117Bに形成した係止突起117Eを嵌め込み、クリップ117の係止突起117Eを摺動部材114の穴部114Kに回動自在に取り付ける。
【0027】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、前軸、後軸、グリップ、中駒、摺動部材、クリップ、頭冠、ノブといった部材は複数の部材を固着して一体化しても良い。また、前軸と後軸を一体に構成して軸筒を構成しても良い。更に、先部材の一部に弾性片を形成して芯ホルダーとしても良い。更にまた、コネクターと芯タンクを一体に構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
クリップを前進させることによりクリップとともにチャック及び芯タンクが前進して芯をチャック内に追従させ、またクリップを開閉させることによりクリップで服のポケット等を確実に挟持することができる振出式シャープペンシルに適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 チャック
6 芯
7 芯タンク
8 重量体
14 摺動部材
16 後スプリング
17 クリップ
17B クリップ17の固定部
114 摺動部材
117 クリップ
117B クリップ117の固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7