(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1側方部材に、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路とが厚み方向に形成され、
第1エンドカバーに前記第2流体流入路と連通する第2流体流入部と、前記第2流体流出路と連通する第2流体流出部が形成され、
前記第1側方部材の前記回転体への対向面に形成された、第2流体流入路から供給された第2流体の圧力を受ける第2圧力領域と、第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2圧力領域と前記第1圧力領域の間の中間圧力領域と夫々対応するように、
前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との接合部に、前記第2流体流入部と連通する第1エンドカバー側第2圧力部と、前記第2流体流出部と連通する第1エンドカバー側第1圧力部と、前記第1エンドカバー側第2圧力部と前記第1エンドカバー側第1圧力部の間に第1エンドカバー側中間圧力部が形成されている請求項1記載の圧力交換装置。
前記第2側方部材の前記回転体への対向面のうち、前記第1圧力領域と前記回転体を介して対向する領域に第1圧力領域が、前記第2圧力領域と前記回転体を介して対向する領域に第2圧力領域が、前記中間圧力領域と前記回転体を介して対向する領域に中間圧力領域が形成され、
前記第2エンドカバーと前記第2側方部材との接合部には、前記第1圧力領域に対応する第2エンドカバー側第1圧力部が、前記第2圧力領域に対応する第2エンドカバー側第2圧力部が、前記中間圧力領域に対応する第2エンドカバー側中間圧力部が形成されている請求項1から5の何れかに記載の圧力交換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された圧力交換装置では、ロータ80に配設された管状の圧力伝達部の断面積に依存して圧力伝達される処理流量が定まるので、処理流量を増やすためには、圧力伝達部の配設本数を増加させるか、圧力伝達部の一本あたりの断面積を大きくする必要があり、何れの場合であってもロータ80が大きくなり、それに伴って圧力交換装置が大型になり重量も増大する。
【0011】
一般的にロータ80は、軽量化、高剛性、耐摩耗性、低摩擦係数等の条件を満足させるために、セラミックス等の高価な材料で形成されているため、圧力交換装置を大型化するとそれに伴って材料費、製造費が嵩むという問題があった。
【0012】
さらに、大型のロータ80を回転させるために要するトルクも増大し、小型のロータ80を回転させる場合よりも大きなエネルギーが必要になり、効率が低下するという問題もあった。このような理由によって、圧力交換装置1台あたりの処理流量を増加させるのは極めて困難であった。
【0013】
そのため、大量の海水を淡水化処理する大型の海水淡水化施設には、多数の圧力交換装置が設置されていた。しかし、圧力交換装置の設置台数が増加すると、各圧力交換装置を接続する配管の施工及び管理が煩雑になるという問題があった。
【0014】
特許文献2に記載された圧力交換装置では、一方の回転板91に形成された流路91bと他方の回転板92に形成された流路92bの夫々が、回転体内部で軸心方向に沿った流路に円周方向に形成された流路が連通するように構成されているため、回転板91、92に流路を形成するための厚みが必要となる。そのため、回転板91、92が大型になり材料費や加工費が嵩むという問題があった。
【0015】
さらに、回転板91、92の大型化によって重量が増すと、回転体90の回転時に軸部93に作用するねじりや曲げ応力が大きくなり、その変形や破損を防止するために軸部93を太くする必要があるばかりでなく、回転のために要するエネルギーが増加し、効率が低下するという問題もあった。
【0016】
本発明の目的は、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明による圧力交換装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載したとおり、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、第1流体が流入及び流出する第1流路と、第2流体が流入及び流出する第2流路とが回転軸心方向に貫通するように前記回転軸心周りに配設された回転体と、第1流体を前記第1流路に案内する第1流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、前記第1側方部材との間で前記回転体を回転可能に挟持する第2側方部材と、前記第1側方部材の外側に配置され前記第1流体流入路と連通する第1流体流入部と、前記第1流体流出路と連通する第1流体流出部が形成された第1エンドカバーと、前記第2側方部材の外側に配置された第2エンドカバーとを備え、前記第1側方部材の前記回転体への対向面に形成された、第1流体流入路から供給された第1流体の圧力を受ける第1圧力領域と、第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第2圧力領域と、前記第1圧力領域と前記第2圧力領域の間の中間圧力領域と夫々対応するように、前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との接合部に、前記第1流体流入部と連通する第1エンドカバー側第1圧力部と、前記第1流体流出部と連通する第1エンドカバー側第2圧力部と、前記第1エンドカバー側第1圧力部と前記第1エンドカバー側第2圧力部の間に第1エンドカバー側中間圧力部が形成されている点にある。
【0018】
回転体と第1側方部材との間や、回転体と第2側方部材との間には適度な隙間が形成され、この隙間には回転体に流入するまたは回転体から流出する第1流体や第2流体が進入する。この隙間に進入した第1流体や第2流体は、回転体を円滑に回転させるための潤滑剤の役割をする。回転体と第1側方部材の隙間に進入した第1流体や第2流体の圧力は回転体を第2側方部材に向けて押すように作用する。回転体と第2側方部材の隙間に進入した第1流体や第2流体の圧力は回転体を第1側方部材に向けて押すように作用する。
【0019】
このように、前記各隙間に進入した第1流体や第2流体により、回転体は第1側方部材または第2側方部材との間で回転姿勢が保たれ、円滑な回転が可能となる。回転体と第1側方部材及び回転体と第2側方部材とが摺動する虞が低減されるので、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも、その寿命を延長することができる。また、処理流量を稼ぐために回転体を大径に形成し、圧力伝達部を構成する第1流路及び第2流路の断面積を大きくした場合でも摺動する虞が低減されるため、回転駆動するために要するエネルギーが低く抑えられるようになる。
【0020】
ところで、第1側方部材には、回転体と第1側方部材の隙間に進入した第1流体の圧力と、第1流体流入路の回転体と対向する面にかかる第1流体の圧力により、その外側に配置された第1エンドカバー側へ押される力が作用している。このような押圧力により回転体と第1側方部材と間の隙間が変動すると、隙間内の流体の圧力分布が変動することになり回転体の回転が不安定になってしまう。また、隙間が大きくなると漏れ量が増加するので圧力交換の効率が低下してしまう。
【0021】
そこで、第1側方部材を第1エンドカバー側から回転体側へ押圧することが考えられる。しかし、この押圧力が回転体側の押圧力より大きければ、回転体と第1側方部材の隙間が小さくなって摺動し回転抵抗が増加するという問題がある。逆に、第1側方部材の第1エンドカバー側の押圧力が回転体側の押圧力より小さければ、回転体と第1側方部材の隙間が大きくなって流体の漏れ量が増加して圧力交換の効率が低下するという問題がある。
【0022】
また、第1側方部材は全域に亘って均一な圧力で第1エンドカバー側へ押されているわけではない。前記第1側方部材の前記回転体への対向面のうち、第1流体流入路から供給される第1流体が進入した領域は、その第1流体の圧力が作用する第1圧力領域となっている。前記対向面のうち、第2流体との間で圧力交換された第1流体が進入した領域は、その第1流体の圧力が作用する第2圧力領域となっている。また、前記対向面のうち、前記第1圧力領域と前記第2圧力領域の間の領域は、第1圧力領域の第1流体の圧力と、第2圧力領域の第1流体の圧力の中間的な圧力が作用する中間圧力領域となっている。つまり、第1側方部材の回転体との対向面では位置によって作用する圧力が異なっている。
【0023】
そこで、第1エンドカバーと第1側方部材との接合部に、第1側方部材の回転体側の面に形成された各圧力領域と第1側方部材をはさんで回転体の軸心方向視で夫々に対応するように、第1流体流入部と連通する第1エンドカバー側第1圧力部と、第1流体流出部と連通する第1エンドカバー側第2圧力部と、第1エンドカバー側第1圧力部と第1エンドカバー側第2圧力部の間に第1エンドカバー側中間圧力部を形成する。
【0024】
このように、第1側方部材を第1エンドカバー側へ押す圧力分布に応じて、第1側方部材を回転体側へ押す圧力分布を第1側方部材をはさんで回転体の軸心方向視で夫々に対応させることで、第1側方部材の両面に作用する押圧力をつり合わせることができる。これにより、第1側方部材に撓みが発生することを抑制する。撓みの発生が抑制されるので、第1側方部材を薄肉化することができる。従って、圧力交換装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。
【0025】
なお、前記隙間は、狭すぎると回転体が第1側方部材と摺動しやすくなる。逆に、広すぎると第1流体や第2流体の漏れ量が多くなり、圧力の交換効率が低下してしまう。従って、前記隙間は、好ましくは1〜100μm程度に設定されている。
【0026】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載したとおり、上述の第一特徴構成に加えて、 前記第1側方部材に、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路とが厚み方向に形成され、第1エンドカバーに前記第2流体流入路と連通する第2流体流入部と、前記第2流体流出路と連通する第2流体流出部が形成され、前記第1側方部材の前記回転体への対向面に形成された、第2流体流入路から供給された第2流体の圧力を受ける第2圧力領域と、第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2圧力領域と前記第1圧力領域の間の中間圧力領域と夫々対応するように、前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との接合部に、前記第2流体流入部と連通する第1エンドカバー側第2圧力部と、前記第2流体流出部と連通する第1エンドカバー側第1圧力部と、前記第1エンドカバー側第2圧力部と前記第1エンドカバー側第1圧力部の間に第1エンドカバー側中間圧力部が形成されている点にある。
【0027】
回転体は支軸を介して連結された前記第1側方部材と第2側方部材との間で回転可能に挟持されている。回転体には第1流路と第2流路が回転軸心方向に貫通するように前記回転軸心周りに配設され、回転体の一端側から第1流体または第2流体を流入させて、第1流体と第2流体との間で圧力を交換し、該一端側から第1流体または第2流体を流出させる構成となっている。
【0028】
従って、特許文献1に記載された従来の圧力交換装置のような、直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換を行なう場合に回転体の回転軸心方向の長さを短く構成することができるので、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。また、圧力交換の流量を増加させる場合でも、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0029】
また、従来の圧力交換装置は、回転体の両端側に各流体流入路または流出路と接続される配管が設置される。圧力交換装置の両端側に配管を設置するスペースを広く確保しておく必要があった。
【0030】
第1流体流入路、第2流体流出路、第2流体流入路及び第1流体流出路を、第1側方部材に設けることで各流体流入路と流出路と接続する各配管は第1側方部材側に纏めて設置することができる。従って、配管を含めた設置スペースをコンパクト化ができる。さらに、各配管の設置作業やメンテナンス作業等の作業性が向上する。
【0031】
さらに、前記第1側方部材の前記回転体への対向面に形成された、前記第1側方部材と前記回転体との隙間に進入した第2流体流入路から供給された第2流体の圧力を受ける第2圧力領域と、前記隙間に進入した第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第1圧力領域と、前記第2圧力領域と前記第1圧力領域の間の中間圧力領域と第1側方部材をはさんで回転体の軸心方向視で夫々に対応するように、第1エンドカバーと第1側方部材との接合部に、第2流体流入部と連通する第1エンドカバー側第2圧力部と、第2流体流出部と連通する第1エンドカバー側第1圧力部と、第1エンドカバー側第1圧力部と第1エンドカバー側第2圧力部の間に第1エンドカバー側中間圧力部を形成することで、第1側方部材を第1エンドカバー側へ押す圧力分布に応じて、第1側方部材を回転体側へ押す圧力分布を対応させて、第1側方部材の両面に作用する押圧力をつり合わせることができる。これにより、第1側方部材に撓みが発生することを抑制する。
【0032】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載したとおり、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記中間圧力領域の流体を前記第1エンドカバー側中間圧力部へと導く連通部を備えている点にある。
【0033】
第1エンドカバー側中間圧力部には連通部を介して中間圧力領域の流体が導かれるので、中間圧力領域と第1エンドカバー側中間圧力部には同じ流体の圧力が作用する。このような連通部は、第1側方部材を厚み方向に貫通形成した連通孔や、第1側方部材の周囲に厚み方向に貫通形成した連通溝等で構成することができる。
【0034】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載したとおり、上述の第三の特徴構成に加えて、前記第1エンドカバーと前記第2エンドカバーとの間に、前記回転体と前記第1側方部材と前記第2側方部材とを収容する筒状ケーシングが配置され、前記連通部は前記第1側方部材と前記円筒ケーシングとの間に形成されている点にある。
【0035】
連通部は、第1側方部材を厚み方向に貫通形成した連通孔や、第1側方部材の周囲に厚み方向に貫通形成した連通溝や、筒状ケーシングに形成した連通溝や、第1側方部材の外周面と筒状ケーシングの内周面の隙間で構成することができる。
【0036】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載したとおり、上述の第四特徴構成に加えて、前記回転体と前記筒状ケーシングの間に、前記第1側方部材と前記第2側方部材で挟持された保持部材を備え、前記保持部材には、保持部材の内周面と外周面を連通する連通路が形成されている点にある。
【0037】
保持部材によって第1側方部材と第2側方部材の距離を回転体の軸心方向の長さよりわずかに広くすることで、回転体と第1側方部材との隙間や、回転体と第2側方部材との隙間を管理することが容易になる。
【0038】
回転体と保持部材との間には適度な隙間が形成され、この隙間には第1流体または第2流体が進入する。この隙間に進入した第1流体または第2流体は、回転体を円滑に回転させるための潤滑剤の役割をする。回転体と保持部材の隙間に進入した第1流体または第2流体を連通路を介して保持部材の内周面から外周面に導いて、保持部材の周面の内外に作用する圧力差を減らすことができる。従って、保持部材を薄く構成することができる。また、保持部材の外周面に導いた流体を第1エンドカバー側中間圧力部に導くこともできる。
【0039】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載したとおり、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記第2側方部材の前記回転体への対向面のうち、前記第1圧力領域と前記回転体を介して対向する領域に第1圧力領域が、前記第2圧力領域と前記回転体を介して対向する領域に第2圧力領域が、前記中間圧力領域と前記回転体を介して対向する領域に中間圧力領域が形成され、前記第2エンドカバーと前記第2側方部材との接合部には、前記第1圧力領域に対応する第2エンドカバー側第1圧力部が、前記第2圧力領域に対応する第2エンドカバー側第2圧力部が、前記中間圧力領域に対応する第2エンドカバー側中間圧力部が形成されている点にある。
【0040】
回転体の第1側方部材との対向面と、第2側方部材との対向面には、夫々第1圧力領域と、第2圧力領域と、中間圧力領域が回転体をはさんで回転体の軸心方向視で夫々に対応するように形成されるので、回転体の前記両対向面に作用する押圧力をつり合わせることができる。従って、回転体は円滑に回転することができる。
【0041】
第2側方部材は全域に亘って均一な圧力で第2エンドカバー側へ押されているわけではない。第2側方部材の回転体との対向面に形成された第2圧力領域と、第1圧力領域と、中間圧力領域では夫々その押圧力が異なっている。つまり、第2側方部材の回転体との対向面では位置によって作用する圧力が異なっている。
【0042】
そこで、第2エンドカバーと第2側方部材との接合部に、第2側方部材の回転体側の面に形成された各圧力領域と第2側方部材をはさんで回転体の軸心方向視で夫々に対応するように、第2エンドカバー側第1圧力部と、第2エンドカバー側第2圧力部と、第2エンドカバー側中間圧力部を形成する。
【0043】
このように、第2側方部材を第2エンドカバー側へ押す圧力分布に応じて、第2側方部材を回転体側へ押す圧力分布を対応させることで、第2側方部材の両面に作用する押圧力をつり合わせることができる。これにより、第2側方部材に撓みが発生することを抑制する。撓みの発生が抑制されるので、第2側方部材を薄肉化することができる。従って、圧力交換装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。
【0044】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載したとおり、上述の第六の特徴構成に加えて、前記第2側方部材は、前記中間圧力領域の流体を前記第2エンドカバー側中間圧力部へと導く連通部を備えている点にある。
【0045】
第2エンドカバー側中間圧力部には、連通部を介して、中間圧力領域の流体が導かれるので、第2側方部材の中間圧力領域と第2エンドカバー側中間圧力部では同じ流体の圧力が作用する。このような連通部は、第1側方部材を厚み方向に貫通形成した連通孔や、第2側方部材の周囲に厚み方向に貫通形成した連通溝等で構成することができる。
【0046】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載したとおり、上述の第七の特徴構成に加えて、前記第1エンドカバーと前記第2エンドカバーとの間に、前記回転体と前記第1側方部材と前記第2側方部材とを収容する筒状ケーシングが配置され、前記連通部は前記第2側方部材と前記円筒ケーシングとの間に形成されている点にある。
【0047】
連通部は、第2側方部材を厚み方向に貫通形成した連通孔や、第2側方部材の周囲に厚み方向に貫通形成した連通溝や、筒状ケーシングに形成した連通溝や、第2側方部材の外周面と筒状ケーシングの内周面の隙間で構成することができる。
【0048】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載したとおり、上述の第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記第1側方部材と前記回転体と前記第2側方部材とを貫通する支軸と、前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとの間に形成された前記支軸の一端を含む第1閉空間と、前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとの間に形成された前記支軸の他端を含む第2閉空間と、前記回転体に形成された前記支軸の挿通空間と、前記第1閉空間と前記挿通空間とを連通する第1連通路と、前記第2閉空間と前記挿通空間とを連通する第2連通路とを備えている点にある。
【0049】
回転体に形成された支軸の挿通空間内には第1流体や第2流体が流入する。第1側方部材や第2側方部材の夫々挿通空間と対向する面には、これら流体の圧力により外側への押圧力が作用する。第1連通路により第1閉空間と挿通空間とを連通することで、第1閉空間内に進入した流体の圧力が第1閉空間を内側へ押す圧力が作用する。第2連通路により第2閉空間と挿通空間とを連通することで、第2閉空間内に進入した流体の圧力が第2閉空間を内側へ押す圧力が作用する。このように、第1側方部材や第2側方部材の夫々挿通空間と対向する部分の両面に作用する押圧力を同じようにすることができるので、第1側方部材や第2側方部材の撓みの発生を抑制することができる。
【0050】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載したとおり、上述の第二から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記第1流路と前記第2流路との流路連通部が前記第2側方部材に形成されている点にある。
【0051】
第2側方部材に形成され流路連通部によって第1流路と第2流路が連通され、第1流体と第2流体との間で圧力が交換される。
【0052】
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載したとおり、上述の第十の特徴構成に加えて、前記流路連通部が前記第2側方部材に貫通形成されている点にある。
【0053】
第2側方部材には、第1流体または第2流体によって第2エンドカバー側へと押す力がかからない。従って、第2側方部材を薄肉化することができる。また、流路連通部を貫通形成することで製作が容易となる。
【0054】
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載したとおり、上述の第十または第十一の特徴構成に加えて、前記第2エンドカバーの一部から前記回転体が目視可能に構成されている点にある。
【0055】
例えば、第2エンドカバーの一部を透過性の部材で構成したり、または、その一部に回転体を目視可能な点検窓を備えたりすることで、圧力交換装置の試運転や運転時や点検の際に、回転体が円滑に回転しているか否かを外部から容易に確認することができる。
【0056】
同第十三の特徴構成は、同請求項13に記載したとおり、上述の第一から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記第1流路と前記第2流路との流路連通部が前記回転体に形成されている点にある。
【0057】
回転体に形成された流路連通部によって第1流路と第2流路が連通され、第1流体と第2流体との間で圧力が交換される。
【0058】
同第十四の特徴構成は、同請求項14に記載したとおり、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、第1流体が流入及び流出する第1流路と、第2流体が流入及び流出する第2流路とが回転軸心方向に貫通するように前記回転軸心周りに配設された回転体と、第1流体を前記第1流路に案内する第1流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、前記第1側方部材との間で前記回転体を回転可能に挟持する第2側方部材と、前記第1側方部材の外側に配置され前記第1流体流入路と連通する第1流体流入部と、前記第1流体流出路と連通する第1流体流出部が形成された第1エンドカバーと、前記第2側方部材の外側に配置された第2エンドカバーとを備え、前記第1側方部材の前記回転体への対向面に形成された、第1流体流入路から供給された第1流体の圧力を受ける第1圧力領域と、第2流体との間で圧力交換された第1流体の圧力を受ける第2圧力領域と夫々対応するように、前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との接合部に、前記第1流体流入部と連通する第1エンドカバー側第1圧力部と、前記第1流体流出部と連通する第1エンドカバー側第2圧力部とが形成されている点にある。
【0059】
同第十五の特徴構成は、同請求項15に記載したとおり、上述の第十四の特徴構成に加えて、前記第1側方部材に、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路とが厚み方向に形成され、第1エンドカバーに前記第2流体流入路と連通する第2流体流入部と、前記第2流体流出路と連通する第2流体流出部が形成され、前記第1側方部材の前記回転体への対向面に形成された、第2流体流入路から供給された第2流体の圧力を受ける第2圧力領域と、第1流体との間で圧力交換された第2流体の圧力を受ける第1圧力領域と夫々対応するように、前記第1エンドカバーと前記第1側方部材との接合部に、前記第2流体流入部と連通する第1エンドカバー側第2圧力部と、前記第2流体流出部と連通する第1エンドカバー側第1圧力部とが形成されている点にある。
【0060】
同第十六の特徴構成は、同請求項16に記載した通り、上述の第十四または第十五の特徴構成に加えて、前記第2側方部材の前記回転体への対向面のうち、前記第1圧力領域と前記回転体を介して対向する領域に第1圧力領域が、前記第2圧力領域と前記回転体を介して対向する領域に第2圧力領域が形成され、前記第2エンドカバーと前記第2側方部材との接合部には、前記第1圧力領域に対応する第2エンドカバー側第1圧力部が、前記第2圧力領域に対応する第2エンドカバー側第2圧力部が形成されている点にある。
【発明の効果】
【0061】
以上説明したとおり、本発明によれば、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に、本発明による圧力交換装置の好ましい実施形態を説明する。
【0064】
図1に示すように、海水淡水化施設は、海水を淡水化する施設であって、前処理装置1と、ろ過海水槽2と、供給ポンプ3と、保安フィルター4と、昇圧ポンプ5と、逆浸透膜装置6等を備えている。
【0065】
まず、海水は前処理装置1で夾雑物が取り除かれ、ろ過水槽2に貯留される。ろ過水槽2に貯留された海水は供給ポンプ3で保安フィルター4に供給される。保安フィルター4は、後段に設置された逆浸透膜装置6の逆浸透膜の詰まりを防止するために、海水に含まれる微細な異物を除去する。昇圧ポンプ5によって浸透圧以上の所定の圧力に昇圧された海水が逆浸透膜装置6に供給される。
【0066】
逆浸透膜装置6に供給された高圧の海水は前記逆浸透膜でろ過され、海水中の各種塩類が除去された淡水が得られる。こうして得られた淡水が飲料用水や工業用水等として利用される。
【0067】
ところで、逆浸透膜装置6は供給された海水のすべてを淡水化できるものではない。例えば、逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%は淡水化されるが、残りの60%は淡水化されずに逆浸透膜装置6から排水される。この淡水化されなかった60%の濃縮海水は非常に高い圧力をもっている。
【0068】
そこで、海水淡水化施設は圧力交換装置10を備えて、逆浸透膜装置6から排水される非常に高い圧力をもった濃縮海水(以下「高圧濃縮海水Hi」と記す)の圧力を逆浸透膜装置6に供給される海水の昇圧に利用することで、海水淡水化施設全体のエネルギー効率の向上を図っている。
【0069】
例えば、保安フィルター4から逆浸透膜装置6に供給される海水のうち、供給量の40%の海水は、高圧ポンプ5によって浸透圧以上の所定の圧力の6.9MPaに昇圧する。残りの60%の海水(以下、「低圧海水Li」と記す)は、圧力交換装置10と、ブースターポンプ7によりに6.9MPaに昇圧する。
【0070】
圧力交換装置10には低圧海水Liと、逆浸透膜装置6から排水された高圧濃縮海水Hiが供給される。圧力交換装置10内では高圧濃縮海水Hiの圧力によって低圧海水Liが6.75MPaに昇圧され、高圧海水Hoとして排水される。この高圧海水Hoがブースターポンプ7によって6.9MPaに昇圧されて、逆浸透膜装置6に供給されるのである。なお、圧力交換装置10内で低圧海水Liに圧力を伝達した高圧濃縮海水Hiは、低圧濃縮海水Loとして排水される。本実施形態では、高圧濃縮海水Hiと低圧濃縮海水Loが第1流体であり、低圧海水Liと高圧海水Hoが第2流体である。また、低圧海水Liが被濃縮流体である。
【0071】
圧力交換装置10の構成を説明する。
図2(a),(b)に示すように、圧力交換装置10は、連結部材11を介して締結された第1エンドカバー20と第2エンドカバー30の間に備えられた円筒形状のケーシング12を備えている。ケーシング12内には、第1側方部材50と、第1側方部材50と支軸13及び保持部材14を介して連結された第2側方部材60とが収容されている。さらに、第1側方部材50第2側方部材60との間には、回転体40が支軸13周りに回転可能に挟持されている。各構成部材は、海水に対する耐食性があり十分に強度のある材料により形成されている。
【0072】
第1側方部材50には、逆浸透膜装置6から排水された高圧濃縮海水Hiが供給される第1流体流入路51と、昇圧された高圧海水Hoが逆浸透膜装置6へと排出される第2流体流出路52と、逆浸透膜装置6へと供給するために昇圧される前の低圧海水Liが供給される第2流体流入路53と、圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水Loが排出される第1流体流出路54とが、その厚み方向に形成されている。
【0073】
回転体40には、複数本の第1流路41と第2流路42とが、その回転軸心方向に貫通するように回転軸心周りに配設されている。第1流体流入路51から第1流路41に高圧濃縮海水Hiが供給されると、回転体40内で低圧海水Liは昇圧されて高圧海水Hoとなり、高圧海水Hoが第2流路42から第2流体流出路52へと流出する。第2流体流入路53から第2流路42に低圧海水Liが供給されると、回転体40内で低圧海水Liに圧力を伝達した高圧濃縮海水Hiが第1流路41から第1流体流出路54へと流出する。
【0074】
回転体40は、第1側方部材50から流入する各流体及び第1側方部材50へと流出する各流体のエネルギーによって、第1側方部材50と第2側方部材60、及び保持部材14で区画された空間内で支軸13周りに回転するように構成されている。回転体40の回転に伴って、複数の第1流路41が順に第1流体流入路51、第1流体流出路54と連通し、複数の第2流路42が順に第2流体流入路53、第2流体流出路52と連通し、回転体40への各流体の流入及び流出が連続的に行われる。
【0075】
回転体40の外周面と第1側方部材50、第2側方部材60及び保持部材14の夫々の対向面には僅かに隙間が形成され、当該隙間には第1流体または第2流体が進入する。回転体40の回転時には、当該隙間に進入した第1流体または第2流体が潤滑剤の役割をし、回転体40は、第1側方部材50、第2側方部材60及び保持部材14で区画される空間内で円滑に回転する。
【0076】
このように、圧力交換装置10は、内部で回転する回転体40に逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hiと、逆浸透膜装置6へと供給すべき低圧海水Liを供給して、高圧濃縮海水Hiの圧力により、低圧海水Liを昇圧して高圧海水Hoとして排出するとともに、圧力を伝達し終えた高圧濃縮海水Hiを低圧濃縮海水Loとして排水する圧力交換を連続的に行なうのである。
【0077】
以下に、圧力交換装置10の各部を順に説明する。
【0078】
まず、
図2(b)及び
図3(a),(b)に基づいて、回転体40について説明する。
回転体40は、円柱の中央に支軸13を挿通可能な挿通空間43が形成されるとともに、挿通空間43の周囲に夫々16本の第1流路41と第2流路42が回転軸心周りに放射状に配置されて構成されている。第1流路41と第2流路42は、回転体40の端面40aと端面40b間をその回転軸心方向に貫通するように形成されている。第1流路41と第2流路42は、夫々流路断面積が略等しくなるように形成されている。
【0079】
高圧濃縮海水Hiは端面40aから第1流路41に流入し、圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水Loは第1流路41から端面40aを介して流出する。低圧海水Liは端面40aから第2流路42に流入し、昇圧された高圧海水Hoは第2流路42から端面40aを介して流出する。
【0080】
挿通空間43の両端には、挿通空間43より拡径された軸受部44a,44bが形成されている。軸受部44a,44bには、第1側方部材50と第2側方部材60の夫々に、回転体40の軸受部44a,44bに向けて突出するように形成された軸部45a,45bが夫々挿入され、回転体40は軸部45a,45bに軸支されて回転するように構成されている。なお、回転体40を回転可能に支持する構成はこれに限らない。例えば、回転体40の外周面と保持部材11の内周面を軸受にすることもできる。この場合、回転体の軸受部44a,44bや、第1側方部材50と第2側方部材の夫々に形成した軸部45a,45bを備える必要がない。さらに、保持部材をケーシング12と一体形成することで、ケーシング12の内周面と回転体40の外周面を軸受にすることもできる。
【0081】
次に、
図2(b)及び
図4(a),(b),(c)に基づいて、第1側方部材50について説明する。
第1側方部材50は、円盤状部材で構成されている。当該円盤状部材の正面視で外周側には、逆浸透膜装置6から排水された高圧濃縮海水Hiが供給される第1流体流入路51と、圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水Loが排出される第1流体流出路54
とが、夫々第1側方部材50の端面50aと端面50bを貫通するように厚み方向に形成されている。さらに、当該円盤状部材の正面視で内周側には、昇圧された高圧海水Hoが排出される第2流体流出路52と、逆浸透膜装置6に供給するための低圧海水Liが供給される第2流体流入路53とが、夫々第1側方部材50の端面50aと端面50bを貫通するように厚み方向に形成されている。
【0082】
各流入路及び流出路は第1側方部材50の正面視で端面50a側の各開口部から端面50b側の各開口部にかけて、第1側方部材50の正面視で、その流路断面が周方向に広がるようにその流路壁が形成されている。
【0083】
第1流体流入路51の端面50a側の開口部51a及び端面50b側の開口部51bは、夫々円周方向に沿った扇状に形成されている。第1流体流入路51は、開口部51aから開口部51bにかけて、第1側方部材50の正面視で、その流路断面が時計周り方向に広がるように流路壁51c(
図5(a)参照)が形成されている。
【0084】
第2流体流出路52の端面50a側の開口部52a及び端面50b側の開口部52bは、円周方向に沿った扇状に形成されている。第2流体流出路52は、開口部52aから開口部52bにかけて、第1側方部材50の正面視で、その流路断面が反時計周り方向に広がるように流路壁52c(
図5(b)参照)が形成されている。
【0085】
第2流体流入路53の端面50a側の開口部53a及び端面50b側の開口部53bは、円周方向に沿った扇状に形成されている。第2流体流入路53は、開口部53aから開口部53bにかけて、第1側方部材50の正面視で、その流路断面が時計周り方向に広がるように流路壁53c(
図5(c)参照)が形成されている。
【0086】
第1流体流出路54の端面50a側の開口部54a及び端面50b側の開口部54bは、円周方向に沿った扇状に形成されている。第2流体流出路52は、開口部54aから開口部54bにかけて、第1側方部材50の正面視で、その流路断面が反時計周り方向に広がるように流路壁54c(
図5(d)参照)が形成されている。
【0087】
端面50bの中央には、回転体40の軸受部43aに向けて突出するように軸部45aが形成されている。軸部45aの中央には、支軸13の一端を挿通する開口部55が第1側方部材50の厚み方向に形成されている。開口部55の近傍には、第1連通路56がその厚み方向に形成されている。さらに、第1側方部材50の外周部には、正面視で、軸心から周面にかけて、各流入路及び流出路が形成されていない領域の夫々180度の位置に、軸心方向に沿った第3連通路57が形成されている。
【0088】
なお、第1連通路56は、本実施形態のように別に設けず、開口部55と支軸13との間に隙間を設けて構成してもよい。さらに、第1連通路56は必ずしも第1側方部材50に形成しなくてもよい。例えば、
図13(b)に示すように、支軸13に、支軸13の第1側方部材50側の端部と挿通空間43とを連通する連通路を形成して、当該連通路を第1連通路56として機能させてもよい。
【0089】
図2(b)及び
図6(a),(b),(c)に基づいて、第2側方部材60について説明する。
第2側方部材60は、円盤状部材で構成されている。当該円盤状部材には、第1側方部材50の各開口部51b,52b,53b,54b(
図4(c)参照)に対向する位置に、第1流路41と第2流路42とを連通する連通部61a,61b,62a,62bが、その厚み方向に貫通形成されている。つまり、軸心方向視で51b,52bと61a,61bが、また、53b,54bと62a,62bとが重なり合うように略一致している。
【0090】
本実施形態では、連通部61a,61bと62a,62bとが、夫々第1流路41と第2流路42を連通して第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換部として機能する。
【0091】
なお、連通部61aと連通部61bを区画する区画壁61c、及び連通部62aと連通部62bを区画する区画壁62cは、夫々の端面60a側が、端面60aからに僅かに端面60b側へ深く形成されている。
【0092】
端面60aの中央には、回転体40の軸受部43bに向けて突出するように軸部45bが形成されている。軸部45bの中央には、支軸13の他端を挿通する開口部63が第2側方部材60の厚み方向に形成されている。端面60bの中央には、開口部63に挿通された支軸13の他端に螺合するナットを嵌入する凹部64が形成されている。開口部63の近傍には、第2連通路65がその厚み方向に形成されている。
【0093】
なお、第2連通路65は、本実施形態のように別に設けず、開口部63と支軸13との間に隙間を設けて構成してもよい。さらに、第2連通路65は必ずしも第2側方部材60に形成しなくてもよい。例えば、
図13(b)に示すように、支軸13に、支軸13の第2側方部材60側の端部と挿通空間43とを連通する連通路を形成して、当該連通路を第2連通路65として機能させてもよい。
【0094】
端面60aの、連通部61aと連通部62bの間には、中心から周方向に放射状に二本の溝部が形成されている。同様に、連通部61bと連通部62aの間には、中心から周方向に放射状に二本の溝部が形成されている。前記各二本の溝部は、軸部45b周りで夫々連通され、連通溝66,67を構成している。
【0095】
さらに、第2側方部材60の外周部には、正面視で、連通溝66と連通溝67の間の領域であって、第1側方部材50に形成された第3連通路57に対応する位置に、軸心方向に沿った第4連通路68が形成されている。
【0096】
図2(b)及び
図7(a),(b)に基づいて、保持部材14について説明する。
保持部材14は円筒状部材で構成されている。当該円筒状部材は、その内周径が回転体40の直径より僅かに大きく設定され、その長さは回転体40の回転軸心方向長さより僅かに長く設定されている。
【0097】
保持部材14の内周面には、両端部を除いた領域に、前記両端部より拡径された拡径領域14aが形成され、当該拡径領域14aの中央に保持部材14の内周面と外周面を連通する第5連通路14bが形成されている。
【0098】
さらに、保持部材14の両端面には、正面視で180度の位置に第6連通路14cが形成されている。
【0099】
なお、本実施形態では、保持部材14の内周面には、両端部を除いた領域に、前記両端部より拡径された拡径領域14aが形成され、当該拡径領域14aの中央に保持部材14の内周面と外周面を連通する第5連通路14bが形成され、さらに、保持部材14の両端面には、正面視で180度の位置に第6連通路14cが形成されている構成だが、拡径領域14aや第6連通路14cは必ずしも形成される必要は無い。また、回転体40の外周面の両端部を除いた領域に、回転体40の両端部の直径より縮径した縮径領域を形成してもよい。なお、第5連通路14bは、保持部材14の中央に形成しなくてもよい。また、第5連通路14bは2個に限らず、1個でも3個以上の複数個形成されてもよい。
【0100】
図2(b)に示すように、支軸13は、両端に雄ネジが形成された棒状部材で構成されている。一端が第1側方部材50の開口部55に挿通されナットで螺合され、他端が第2側方部材60の開口部63に挿通されナットで螺合される。
【0101】
支軸13を挿通空間43に挿通した回転体40を保持部材14に収容し、支軸13の一端側に第1側方部材50を配置して開口部55にその一端を挿通し、他端側に第2側方部材60を配置して開口部63にその他端を挿通した状態で、支軸48の両端をナットで螺合することで、回転体40は、第1側方部材50と、第1側方部材50と支軸13を介して連結された第2側方部材と、保持部材14で区画された空間内で支軸13周りに回転可能に挟持される。
【0102】
本実施形態では、圧力交換装置10は、回転体40を回転させるための外部動力や、第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入の方向を切り替る別途の流路の切替機構等を備えず、第1流体と第2流体の流れによって回転体を回転させるとともに、流入と流出を切り替えている。ここで、回転体40に回転トルクを付与するトルク付与機構について説明する。
【0103】
第1流体流入路51と第2流体流入路53は、流路壁が時計回りの方向に広がるように形成されている。一方、第2流体流出路52と第1流体流出路54は、流路壁が反時計回りの方向に広がるように形成されている。
【0104】
図5(a)から(d)に示すように、第1流体流入路51の流路壁51cと第2流体流入路53の流路壁53cは、流体の流入方向が端面50a側から見て時計周りの方向となるように傾斜している。一方、第2流体流出路52の流路壁52cと第1流体流出路54の流路壁54cは、流路壁51c及び流路壁53cとは逆方向へ傾斜している。
【0105】
図5(a)に示すように、第1流体流入路51は、開口部51aから開口部51bにかけて、第1側方部材50の正面視で、その流路断面が時計周り方向に広がるように流路壁51cが形成されており、開口部51bは、回転体40の周方向に沿って隣接する複数の第1流路41と連通する。
【0106】
第1流体流入部51から供給された高圧濃縮海水Hiは第1流体流入路51内で流路壁51cに沿って分散しながら、隣接する複数の第1流路41に流入する。このとき、第1流路41間の壁面(隔壁部)へ右方向の圧力を付与する。つまり、高圧濃縮海水Hiは正面視で、回転体40の時計周り方向の周方向成分の流れをもっているので、回転体40には時計回りの方向の力が付与される。
【0107】
図5(b)に示すように、第2流体流出路52は、開口部52aから開口部52bにかけて、第1側方部材50の正面視で、その流路断面が反時計周り方向に広がるように流路壁52cが形成されており、開口部52bは、回転体40の周方向に沿って隣接する複数の第2流路42と連通する。
【0108】
隣接する複数の第2流路42を流れる高圧海水Hoは、開口部52bで合流し、流路壁52cを経て流出する。このときに、高圧海水Hoは、第2流路42から第2流体流出路52に流れる水の通水断面積が広くなるように、第2流路42間の壁面(隔壁部)へ右方向の圧力を付与する。つまり、高圧海水Hoは正面視で、回転体40の時計周り方向の周方向成分の流れをもっているので、回転体40には時計回りの方向の力が付与される。
【0109】
つまり、
図5(a)に示すように、高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路51から第1流路41に流入するときのエネルギーにより回転体40に付与されるトルクと、
図5(b)に示すように、高圧海水Hoが第2流路42から第2流体流出路52へと流出するときのエネルギーにより回転体40に付与されるトルクは同じ向きになる。
【0110】
図5(c)に示すように、低圧海水Liが第2流体流入路53から第2流路42に流入するときのエネルギーにより回転体40に付与されるトルクと、
図5(d)に示すように、低圧濃縮海水Loが第1流路41から第1流体流出路54へと流出するときのエネルギーにより回転体40に付与されるトルクも同じ向きになる。
【0111】
以上のように、各流入路、流出路と第1流体、第2流体が回転体40に回転するトルクを付与するトルク付与機構が構成される。トルク付与機構は、第1流路41に流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーと第2流路42から流出する高圧海水Hoのエネルギー、及び、第2流路42に流入する低圧海水Liのエネルギーと第1流路41から流出する低圧濃縮海水Loのエネルギーにより回転体40を回転させるトルクを発生させるので、回転体40を回転させるための外部動力が不要となる。また、回転体40の回転に伴って、第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0112】
なお、回転体40は、回転体40に流入する高圧濃縮海水Hi及び低圧海水Li、回転体40から流出する高圧海水Ho及び低圧濃縮海水Loのエネルギーによって回転するように構成されているため、例えば、流入する各流体のエネルギーのみで回転する場合より、大きなトルクを付与することができる。
【0113】
ところで、流路壁51c,52c,53c,54cの形状が変わると、各流入路から各流路に流入する流体、及び、各流入路から流出路に流出する流体の流れの方向が変わり、回転体40に作用するトルクが変わるので回転体40の回転数が変わる。つまり、回転体40の回転数は、流路壁51c,52c,53c,54cの形状に依存する。圧力交換装置10の処理流量は、回転体40の回転数に依存するため当該形状を変更して、回転体40の回転数を調整することで圧力交換装置10の処理流量を容易に調整できる。例えば、当該形状の異なる第1側方部材を用意しておき、交換することで、容易に処理流量を調整できる。
【0114】
図2(b)に基づいて、ケーシング12について説明する。
ケーシング12は、円筒状部材で構成され、その内周径は第1側方部材50、第2側方部材60及び保持部材14の外径より僅かに大きく設定され、その長さは、第1側方部材50、第2側方部材60及び保持部材14を支軸で連結したものの軸心方向長さより長く設定されている。
【0115】
図2(a),(b)及び
図8(a),(b),(c)に基づいて、第1エンドカバー20について説明する。
第1エンドカバー20は連結部材11を介して第2エンドカバー30と締結され、第1エンドカバー20と第2エンドカバー30の間でケーシング12を保持する部材である。
【0116】
第1エンドカバー20は、大径円盤部20aと小径円盤部20bが一体形成された形状をしている。小径円盤部20bの直径はケーシング12の一端側に挿通
可能な大きさに設定されている。小径円盤部20bの外周には、ケーシング12内周の対向面とのシールを
嵌入するシール溝20cが形成され、シール溝20cに配設されるシールによってケーシング12内の流体が外部に漏れないように構成されている。なお、大径円盤部20aと小径円盤部20bは一体形成する構成であっても、別体で形成したものを組み合わせる構成であってもよい。
【0117】
第1エンドカバー20には大径円盤部20aと小径円盤部20bを貫通するように、第1流体流入部21、第2流体流出部22、第2流体流入部23及び第1流体流出部24がその厚み方向に形成されている。
【0118】
第1流体流入部21の大径円盤部20a側には、高圧濃縮海水Hiの流入管15が接合されるように構成されている。小径円盤部20b側には、第1側方部材50の第1流体流入路51の開口部51aより大きい断面積の扇状の開口部21aが形成されている。
【0119】
第2流体流出部22の大径円盤部20a側には、高圧海水Hoの流出管16が接合されるように構成されている。小径円盤部20b側には、第1側方部材50の第2流体流出路52の開口部52aより大きい断面積の扇状の開口部22aが形成されている。
【0120】
第2流体流入部23の大径円盤部20a側には、低圧海水Liの流入管17が接合されるように構成されている。小径円盤部20b側には、第1側方部材50の第2流体流入路53の開口部53aより大きい断面積の扇状の開口部23aが形成されている。
【0121】
第2流体流出部24の大径円盤部20a側には、低圧濃縮海水Loの流出管18が接合されるように構成され、小径円盤部20b側には、第1側方部材50の第1流体流出路54の開口部54aより大きい断面積の扇状の開口部24aが形成されている。
【0122】
第1エンドカバー20の各開口部21a,22a,23a,24aは、小径円盤部20bがケーシング12の一端に挿通された状態で、第1側方部材50の各開口部51a,52a,53a,54aを覆うように配置される。
【0123】
小径円盤部20bの中央には、支軸13の一端とナットを収容する凹部が形成されている。第1エンドカバー20の小径円盤部20bがケーシング12の一端に挿通された状態で、当該凹部が、第1側方部材50と第1エンドカバー20とで区画される第1閉空間25を構成する。第1側方部材50の開口部55の近傍に形成された第1連通路56は、第1閉空間25と回転体40に形成された支軸13の挿通空間43とを連通する。
【0124】
第1エンドカバー20と第1側方部材50との接合部である小径円盤部20bの端面には溝部が形成され、当該溝部にガスケット26が備えられている。
【0125】
ガスケット26によって、第1エンドカバー20と第1側方部材50との接合部であって、第1閉空間25の周囲に、前記第1エンドカバーに形成された第1流体流入部21、第2流体流出部22、第2流体流入部23及び第1流体流出部24のそれぞれを個別に区画する閉空間21b,22b,23b,24bが区画されている。
【0126】
なお、閉空間21b,22b,23b,24bは、完全に閉じた空間ではなく、第1流体流入部21、第2流体流出部22、第2流体流入部23及び第1流体流出部24を、夫々第1流体流入路51、第2流体流出路52、第2流体流入路53及び第1流体流出路54を連通する空間である。
【0127】
さらに、第1流体流入部21及び第1流体流出部24に対応する閉空間21b,24bの間と、第2流体流出部22及び第2流体流入部23に対応する閉空間22b,23bの間の双方に径方向に開放された第1開放空間27が区画されている。
【0128】
従って、閉空間21bが回転体40と第1側方部材50との隙間に形成された、第1流体流入路51と連通する第1圧力領域と対応する第1エンドカバー側第1圧力部を構成し、閉空間24bが回転体40と第1側方部材50との隙間に形成された、第1流体流出路54と連通する第2圧力領域と対応する第1エンドカバー側第2圧力部を構成する。閉空間22bは、回転体40と第1側方部材50との隙間に形成された、第2流体流出路52と連通する第1圧力領域と対応する第1エンドカバー側第1圧力部を構成し、閉空間23bが回転体40と第1側方部材50との隙間に形成された、第2流体流入路53と連通する
第2圧力領域と対応する第1エンドカバー側第2圧力部を構成する。
【0129】
さらに、第1開放空間27が、第1圧力領域と第2圧力領域の間の中間圧力領域と夫々対応する、第1エンドカバー側第1圧力部と前記第1エンドカバー側第2圧力部の間に形成された第2エンドカバー側中間圧力部を構成する。
【0130】
図2(b)及び
図9(a),(b),(c)に基づいて、第2エンドカバー30について説明する。
第2エンドカバー30は連結部材11を介して第1エンドカバー20と締結され、第2エンドカバー30と第1エンドカバー20の間でケーシング12を保持する部材である。
【0131】
第2エンドカバー30は、小径円盤部30aと大径円盤部30bとが一体形成された形状をしている。小径円盤部30aの直径はケーシング12の他端側に挿通可能されるような大きさに設定されている。小径円盤部30aの外周には、ケーシング12内周の対向面とのシールを嵌入るシール溝30cが形成され、シール溝30cに配設されるシールによってケーシング12内の流体が外部に漏れないように構成されている。
【0132】
本実施形態では、第2エンドカバー30は、透光性のある材料で形成され、圧力交換装置10の外部から回転体40を目視可能な構成となっている。なお、第2エンドカバー30の一部に透光性のある材料を用いて回転体40を目視できるように構成してもよい。また、小径円盤部30aと大径円盤部30bは、別体で形成したものを組み合わせる構成であってもよい。この場合、例えば、小径円盤部30aのみ透光性のある材料で形成し、大径円盤部30bは金属等の強度のある材料で形成するとともに大径円盤部30bに点検窓を備えて、回転体40を目視できるように構成してもよい。圧力交換装置10の試運転や運転時や点検の際に、回転体が円滑に回転しているか否かを外部から容易に確認することができる。
【0133】
小径円盤部30aの中央には第2側方部材60に形成された支軸13の他端とナットを収容する凹部64と対応する領域に凹部31が形成されている。さらに、凹部31の周囲には、圧力交換部を構成する連通部61(61a,61b)、及び連通部62(62a,62b)に対応する領域に凹部32,33が形成されている。なお、凹部31,32,33の深さは任意であり、また凹部31,32,33は必ずしも形成されなくてもよい。
【0134】
第2エンドカバー30の小径円盤部30aがケーシング12の他端に挿通された状態で、当該凹部31と第2側方部材60の凹部64とが、第2側方部材60と第2エンドカバー30とで区画される第2閉空間34を構成する。第2側方部材60の開口部63の近傍に形成された第2連通路65は、第2閉空間34と回転体40に形成された支軸13の挿通空間43とを連通する。
【0135】
第2エンドカバー30と第2側方部材60との接合部である小径円盤部30aの端面には溝部が形成され、当該溝部にガスケット35が備えられている。なお、本実施形態では、ガスケット35を備えるための溝部を第2エンドカバー30側に形成したが、当該溝部は第2側方部材60側の端面60bに形成し、その溝部にガスケットを備えてもよい。また、溝部を設けずにガスケットを備えてもよい。
【0136】
ガスケット35によって、第2エンドカバー30と第2側方部材60との接合部であって、凹部31の周囲に、圧力交換部を構成する連通部61a,61bに対応する領域と、圧力交換部を構成する連通部62a,62bに対応する領域をそれぞれ個別に区画する閉空間36,37が区画されている。つまり、第2エンドカバー30と第2側方部材60との接合部では、凹部32,33がガスケット35によって区画され閉空間36,37として機能する。
【0137】
閉空間36,37は、完全に閉じた空間ではなく、圧力交換部を構成する連通部61a,61bを連通する空間と、圧力交換部を構成する連通部62a,62bを連通する空間である。
【0138】
閉空間36,37は、ガスケット35により連通部61a,61bに対応する領域と、連通部62a,62bに対応する領域に区画される構成に限らず、連通部61a,61b,62a,62bの夫々に対応する領域に区画される構成でもよい。
【0139】
さらに、ガスケット35によって、閉空間36と閉空間37の間に径方向へ開放された第2開放空間38が区画されている。
【0140】
従って、閉空間36が、前記第1圧力領域に対応する第2エンドカバー側第1圧力部を構成する。閉空間37が、前記第2圧力領域に対応する第2エンドカバー側第2圧力部を構成する。第2開放空間38が、前記中間圧力領域に対応する第2エンドカバー側中間圧力部を構成する。
【0141】
以上のように構成された回転体40、第1側方部材50、第2側方部材60、保持部材14、支軸13、ケーシング12、第1エンドカバー20及び第2エンドカバー30等が組み合わされて圧力交換装置10が構成される。なお、第1側方部材50、第2側方部材60、保持部材14、ケーシング12、第1エンドカバー20及び第2エンドカバー30は、相対的な位置が移動しないように、夫々隣接する部材とピンやボルトなどで固定することが好ましい。
【0142】
ここで、回転体40が支軸13を介して連結された第1側方部材50と第2側方部材60との間で円滑に回転するように、回転体40の一端面と第1側方部材50との間、回転体40の他端面と第2側方部材60との間及び回転体40と保持部材14との間には、第1流体または第2流体が進入するような適度な隙間が形成されている。
【0143】
回転体40の回転時には、当該隙間に進入した流体が潤滑剤の役割をし、回転体40と、第1側方部材50、第2側方部材60、保持部材14の夫々の対向面の各部材同士の摺動が回避される。
【0144】
従って、当該隙間が狭すぎると、回転体40と第1側方部材50や、回転体40と第2側方部材60とが摺動したり、回転体40の外周面が保持部材14の内周面と摺動したりする虞がある。逆に、当該隙間が広すぎると、第1流体や第2流体の漏れ量が多くなり、例えば、第1流体流入路51から供給された高圧濃縮海水Hiが回転体40と第1側方部材50の隙間を介して直接第2流体流出路52へと流出するなどして、圧力の交換効率が低下してしまう。例えば、回転体40と第1側方部材50や、回転体40と第2側方部材60との隙間は、好ましくは1〜100μm程度に設定されている。また、回転体40と保持部材14の隙間は1mm程度に設定されている。なお、回転体40の外周面と保持部材14の内周面を軸受とする場合は、隙間は1〜500μm程度に設定される。
【0145】
このような隙間を調整する機構として支軸13や、連結部材11が備えられている。支軸13は、第1側方部材50と第2側方部材60を押す押圧機構として機能し、ナットの締め付けを調整することで第1側方部材50と第2側方部材60の軸心方向の距離を調整できる。これにより、回転体40と第1側方部材50の隙間と、回転体40と第2側方部材60の隙間が調整される。
【0146】
連結部材11は、両端に雄ネジ11aが形成された棒状部材と、前記雄ネジに螺合するナット11bを含んで構成されている。連結部材11は、第1エンドカバー20と第2エンドカバー30を押す押圧機構として機能し、ナットの締め付けを調整することで第1エンドカバー20と第2エンドカバー30の間隔を調整できる。これにより第1エンドカバー20と第2エンドカバー30を介して第1側方部材50と第2側方部材60を外側から押す力を調整でき、第1側方部材50及び第2側方部材60と回転体40との間隙が調整される。
【0147】
例えば、回転体40と第1側方部材50や、回転体40と第2側方部材60の摺動部が磨耗して当初の設定より隙間が大きくなり流体の漏れ量が増えるような場合であっても、支軸13や連結部材11で構成される押圧機構により第1側方部材50または第2側方部材60と回転体40との隙間が調整できる。圧力の交換効率の低下を防ぐことができる。回転体40などの主要部品の交換頻度を減らすことができるようになる。
【0148】
ところで、回転体40と第1側方部材50との隙間や、回転体40と第2側方部材60との隙間に進入した第1流体と第2流体の圧力によって、第1側方部材50と第2側方部材60には外側方向への力が作用する。また、回転体40と保持部材14との隙間に進入した第1流体と第2流体の圧力によって、保持部材14には外側方向への力が作用する。
【0149】
このように、隙間に進入した第1流体や第2流体の圧力は、第1側方部材50、第2側方部材60及び保持部材14に作用する。第1側方部材50の第1エンドカバー20側の押圧力が回転体40側の押圧力より大きければ、回転体40と第1側方部材50の隙間が小さくなって摺動し回転抵抗が増加するという問題がある。一方、第1側方部材50の第1エンドカバー20側の押圧力が回転体40側の押圧力より小さければ、回転体40と第1側方部材50の隙間が大きくなって流体の漏れ量が増加して圧力交換の効率が低下するという問題がある。
【0150】
また、回転体40と第1側方部材50との隙間や、回転体40と第2側方部材60との隙間に進入した第1流体と第2流体の圧力によって、第1側方部材50と第2側方部材60に作用する外側方向への力によって支軸13に無駄な応力かかってしまう。
【0151】
第1側方部材50は全域に亘って均一な圧力で第1エンドカバー20側へ押されているわけではない。第1側方部材50の回転体40への対向面である端面50bのうち、第1流体流入路51から供給される高圧濃縮海水Hiが進入した領域や、第1流体流入路51の流路壁51cのうち回転体40と対向する面は、高圧濃縮流体Hiのもつ高圧が作用する第1圧力領域となっている。
【0152】
第1側方部材50の回転体40への対向面である端面50bのうち、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loが進入した領域や、第1流体流出路54の流路壁54cのうち回転体40と対向する面は、その低圧濃縮海水Loの低圧が作用する第2圧力領域となっている。
【0153】
また、端面50bのうち、前記第1圧力領域と前記第2圧力領域の間の領域は、第1圧力領域の高圧濃縮海水Liの圧力と、第2圧力領域の低圧濃縮海水Loの圧力の中間的な圧力が作用する中間圧力領域となっている。つまり、端面50bでは位置によって作用する圧力が異なっている。
【0154】
同様に、第2側方部材60は全域に亘って均一な圧力で第2エンドカバー30側へ押されているわけではない。第2側方部材60の回転体40との対向面である端面60aに形成された前記第2圧力領域と回転体40を介して対向する第2圧力領域と、前記第1圧力領域と回転体40を介して対向する第1圧力領域と、前記第2圧力領域と前記第1圧力領域の間に形成される中間圧力領域では夫々その押圧力が異なっている。つまり、端面60aでは位置によって作用する圧力が異なっている。
【0155】
そこで、圧力交換装置10は、圧力バランス調整機構を備えている。
圧力バランス調整機構は、第1側方部材50に作用する圧力バランスを調整する第1圧力バランス調整機構71と、第2側方部材60に作用する圧力バランスを調整する第2圧力バランス調整機構72と、保持部材14に作用する圧力バランスを調整する第3圧力バランス調整機構73と、回転体40に作用する圧力バランスを調整する第4圧力バランス調整機構74を含んで構成されている。
【0156】
まず、第1圧力バランス調整機構71について説明する。
第1圧力バランス調整機構71は、第1側方部材50に形成された第1連通路56や第3連通路57と、保持部材14に形成された第6連通路14cと、ガスケット26と第1側方部材50と第1エンドカバー20間でガスケット20によって区画される閉空間21b,22b,23b,24b、第1閉空間25及び第1開放空間27とを含んで構成されている。
【0157】
第1側方部材50は、回転体40と第1側方部材50の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、第1エンドカバー20方向へ押されている。
【0158】
そこで、第1閉空間25に第1連通路56を介して挿通空間43側の第1流体または第2流体を導いて、当該流体の圧力によって第1側方部材50の中央部を内側へ押す。このように、第1側方部材50の中央部を外側へと押す力と内側へ押す力を対抗させることで第1側方部材50の中央部に作用する圧力バランスが調整され、その撓みの発生が抑制される。
【0159】
閉空間21b,22b,23b,24b内には、夫々高圧濃縮海水Hi、高圧海水Ho、低圧海水Li、低圧濃縮海水Loの圧力が作用しており、各閉空間に対応する領域には、第1側方部材50を内側へ押す力が作用しており、第1側方部材50を外側へと押す力とを対抗して圧力バランスが調整されている。
【0160】
さらに、第1開放空間27に第6連通路14c、第3連通路57を介して回転体40と第1側方部材50の隙間に進入した第1流体または第2流体を導いて、当該流体の圧力によって第1側方部材50の第1開放空間27に対応した領域を内側へ押す。このように、第1側方部材50の第1開放空間27に対応した領域を外側へと押す力と、内側へ押す力を対抗させることで第1側方部材50の周部の圧力バランスが調整され、その撓みの発生が抑制される。
【0161】
第1圧力バランス調整機構71により第1側方部材50に作用する圧力バランスが調整されるので、第1側方部材を薄肉化することができるので、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。
【0162】
なお、第1閉空間25に挿通空間43側の第1流体または第2流体を導く構成としては、第1連通路56によるものに限らない。例えば、支軸13内に挿通空間43と第1連通路25を連通する連通路を形成し、当該連通路を介して挿通空間43内の第1流体または第2流体を第1閉空間25に導くように構成してもよい。
【0163】
また、第1開放空間27に回転体40と第1側方部材50の隙間に進入した第1流体または第2流体を導く構成としては、第3連通路57によるものに限らない。例えば、ケーシング12の内周面に、第6連通路14cと第1開放空間27を連通する連通溝を形成し、当該連通溝を介して回転体40と第1側方部材50の隙間に進入した第1流体または第2流体を第1開放区間27に導くように構成してもよい。さらに、第3連通路57は必ずしも通路として形成しなくてもよい。例えば、ケーシング12の内径に対して第1側方部材50の直径を幾らか小さく形成することで、第1側方部材50の外周面とケーシング12の内周面の間に隙間を形成し、この隙間を第3連通路57として機能させてもよい。
【0164】
次に、第2圧力バランス調整機構72ついて説明する。
第2圧力バランス調整機構72は、第2側方部材60に形成される第2閉空間34や第2連通路65や第4連通路68と、保持部材14に形成された第6連通路14cと、第2エンドカバー20に形成された凹部31,凹部32,33や、第2開放空間38とを含んで構成されている。
【0165】
第2側方部材60は、回転体40と第2側方部材60の隙間に進入した第1流体または第2流体によって、第2エンドカバー30方向へ押されている。
【0166】
そこで、第2閉空間34に第2連通路65を介して挿通空間43側の第1流体または第2流体を導いて、当該流体の圧力によって第2側方部材60の中央部を内側へ押す。このように、第2側方部材60の中央部を外側へと押す力と内側へ押す力を対抗させることで第2側方部材60の中央部に作用する圧力バランスが調整され、その撓みの発生が抑制される。
【0167】
区画壁61c、区画壁62cの回転体40側には、第1流路と第2流路内の第1流体または第2流体によって、第2側方部材60を外側へと押す力が作用する。しかし、区画壁61c、区画壁62cの第2エンドカバー30には、凹部32,33に進入した第1流体または第2流体によって、第2側方部材60を内側へと押す力が作用する。このように、区画壁61c、区画壁62cを外側へと押す力と内側へ押す力を対抗させることで区画壁61c、区画壁62cに作用する圧力バランスが調整され、その撓みの発生が抑制される。
【0168】
さらに、第2開放空間38に、第6連通路14c、第4連通路68を介して回転体40と第2側方部材60の隙間に進入した第1流体または第2流体を導いて、当該流体の圧力によって第2側方部材60の第2開放空間38に対応した領域を内側へ押す。このように、第2側方部材60の第2開放空間38に対応した領域を外側へと押す力と、内側へ押す力を対抗させることで第1側方部材50の周部の圧力バランスが調整され、その撓みの発生が抑制される。
【0169】
第2圧力バランス調整機構72により第2側方部材60に作用する圧力バランスが調整されるので、第2側方部材を薄肉化することができるので、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。
【0170】
また、第1圧力バランス調整機構71と、第2圧力バランス調整機構72によって、第1側方部材50と第2側方部材60の夫々の圧力バランスを調整できるので、回転体40と第1側方部材50の隙間と、回転体40と第2側方部材60との隙間に進入した流体の圧力によって第1側方部材50と第2側方部材60が外側へ離隔して、支軸13に無駄な応力かかるような虞がなくなる。
【0171】
なお、第2閉空間34に挿通空間43側の第1流体または第2流体を導く構成としては、第2連通路56によるものに限らない。例えば、支軸13内に挿通空間43と第2閉空間34を連通する連通路を形成し、当該連通路を介して挿通空間43内の第1流体または第2流体を第2閉空間34に導くように構成してもよい。
【0172】
また、第2開放空間38に回転体40と第2側方部材60の隙間に進入した第1流体または第2流体を導く構成としては、第4連通路68によるものに限らない。例えば、ケーシング12の内周面に、第6連通路14cと第2開放空間38を連通する連通溝を形成し、当該連通溝を介して回転体40と第2側方部材60の隙間に進入した第1流体または第2流体を第2開放空間38に導くように構成してもよい。さらに、第4連通路68は必ずしも通路として形成しなくてもよい。例えば、ケーシング12の内径に対して第2側方部材60の直径を幾らか小さく形成することで、第2側方部材60の外周面とケーシング12の内周面の間に隙間を形成する。この隙間が第4連通路68として機能する。
【0173】
次に、第3圧力バランス調整機構73について説明する。
第3圧力バランス調整機構73は、保持部材14の拡径領域14aと、第5連通路14bとを含んで構成されている。
【0174】
回転体40と第1側方部材50及び第2側方部材60との隙間を介して、回転体40の外周面と保持部材14の内周面との隙間や、拡径領域14aに進入した第1流体または第2流体は、保持部材14を外側へ押す。
【0175】
そこで、保持部材14に形成された第5連通路14bを介して、第1流体または第2流体を保持部材14の外周面とケーシングの内周面との外周閉空間に導く。
【0176】
保持部材14の外周面とケーシング12の内周面と隙間に導かれた第1流体または第2流体の圧力によって、保持部材14を外側へ押す力と内側へ押す力を対抗させることで保持部材14に作用する圧力バランスが調整され、その撓みが抑制される。運転中に回転体40と保持部材11との隙間が適正に維持されるので、回転体40は円滑に回転する。拡径領域14aにかえて、回転体40の外周面の両端部を除いた領域に、回転体40の両端部の直径より縮径した縮径領域を設けたり、回転体40の外周面と保持部材11の内周面との間に隙間を設けたりしてもよい。
【0177】
第3圧力バランス調整機構73により保持部材14に作用する圧力バランスが調整されるので、保持部材14を薄肉化することができるので、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。
【0178】
次に、第4圧力バランス調整機構74について説明する。
第4圧力バランス調整機構74は、回転体40の端面40a,40bに作用する圧力バランスを調整する機構である。
【0179】
高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路51から複数の第1流路41に分散して流入するときに、高圧濃縮海水Hiの圧力は回転体40の隣接する第1流路41の間の端面40aに作用し、回転体40を第2側方部材60側へ押す。また、高圧海水Hoが複数の第2流路42から第2流体流出路52へ流出するときに、高圧海水Hoの圧力は回転体40の隣接する第2流路42の間の端面40aに作用し、回転体40を第2側方部材60側へ押す。
【0180】
同様に、低圧海水Liが第2流体流入路53から複数の第2流路42に分散して流入するときに、低圧海水Liの圧力は回転体40の隣接する第2流路42の間の端面40aに作用し、回転体を第2側方部材側へ押す。また、低圧濃縮海水Loが複数の第1流路41から第1流体流出路54へ流出するときに、高圧海水Hoの圧力は回転体40の隣接する第1流路41の間の端面40aに作用し、回転体40を第2側方部材60側へ押す。
【0181】
さらに、第1流体流入路51の開口部51b、第2流体流出路52の開口部52b、第2流体流入路53の開口部53b、第1流体流出路54の開口部54bと連通しない領域では、第1側方部材50と回転体40との隙間に進入した各流体の中間的圧力が端面40aに作用し、回転体40を第2側方部材60側へ押す。
【0182】
このように、回転体40には、第1流路41及び第2流路42に流入出する流体が端面40aに作用して、第2側方部材60側へと押される。
【0183】
しかし、第2側方部材に形成された連通部61a,61b,62a,62bにも第1流体及び第2流体が流入し、回転体40の端面40bに作用して、回転体40を第1側方部材50側へ押す。さらに、連通部61a,61b,62a,62bと連通しない領域では、第2側方部材60と回転体40との隙間に進入した各流体の中間的圧力が端面40bに作用し、回転体40を第1側方部材50側へ押す。これにより、両端面40a,40bに作用する押圧力が釣り合うとともに押圧力の分布も等しくなり、回転体40は第1側方部材50または第2側方部材60に一方的に摺動するようなことがなくなる。従って、回転体40は、円滑に回転することができる。
【0184】
このように、圧力交換装置10は、圧力バランス調整機構を備えることで、回転体40との隙間に進入した第1流体や第2流体の圧力によって、第1側方部材50、第2側方部材60及び保持部材14に撓みが発生する虞が低減され、回転体40は、第1側方部材50、第2側方部材60及び保持部材14で区画される空間内で円滑な回転が可能となる。
【0185】
圧力交換装置10の具体的な圧力交換の動作について説明する。
図10に示すように、回転体40には、16組の第1流路41a〜41pと第2流路42a〜42pが回転軸心周りに放射状に配設されている。
図10中の二点鎖線で示す領域は、第1側方部材50の第1流体流入路51の開口部51bと、第2流体流出路52の開口部52bと、第2流体流入路53の開口部53bと、第1流体流出路54の開口部54bに対応する領域を表している。
【0186】
回転体40が回転するある瞬間において、第1流体流入路51には、隣接する第1流路41a,41b,41c,41d,41eの5本が同時に連通する。
【0187】
第2流体流出路52には、第1流路41a,41b,41c,41d,41eと第2側方部材60内で連通した第2流路42a,42b,42c,42d,42eの5本が同時に連通する。
【0188】
第2流体流入路53には、隣接する第2流路42i,42j,42k,42l,42mの5本が同時に連通する。第1流体流出路54には、第2流路42i,42j,42k,42l,42mと第2側方部材60内で連通した第1流路41i,41j,41k,41l,41mの5本が連通する。
【0189】
第1流体流入路51に流入した高圧濃縮海水Hiは流路壁51cに沿って分散して、第1流路41a,41b,41c,41d,41eの夫々に流入する。このとき、回転体40には、
図10中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0190】
第1流路41a,41b,41c,41d,41eに流入した高圧濃縮海水Hiの圧力によって、夫々第2側方部材60内で連通した第2流路42a,42b,42c,42d,42eの低圧海水を昇圧され、高圧海水Hoは、第2流路42a,42b,42c,42d,42eから第2流体流出路52の流路壁52cに沿って流出する。このとき、回転体40には、
図10中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0191】
第2流体流入路53に流入した低圧海水Liは流路壁53cに沿って分散して、第2流路42i,42j,42k,42l,42mの夫々に流入する。このとき、回転体40には、
図10中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0192】
第2流路42i,42j,42k,42l,42mに流入した低圧海水Liの圧力によって、夫々第2側方部材60内で連通した第1流路41i,41j,41k,41l,41mの低圧濃縮海水Loが第1流体流出路54の流路壁54cに沿って流出する。このとき、回転体40には、
図10中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0193】
以上のように、第1流体流入路51から第1流路41に流入する高圧濃縮海水Hiが回転体40に与えるトルクと、第2流路42から第2流体流出路52へ流出する低圧海水Loが回転体40に与えるトルクと、第2流体流入路53から第2流路42に流入する低圧海水Liが回転体40に与えるトルクと、第1流路41から第1流体流出路54へ流出する低圧濃縮海水Loが回転体40に与えるトルクが、同一方向となり、本実施形態では、回転体40は時計周りに回転することになる。
【0194】
このように圧力交換がされているとき、第1流路41a,41b,41c,41d,41eは、第2側方部材60の連通部61a,61bを介して第2流路42a,42b,42c,42d,42eと連通している。第2流路42i,42j,42k,42l,42mは、第2側方部材60の連通路62a,62bを介して、第1流路41i,41j,41k,41l,41mと連通している。
【0195】
各第1流路41及び各第2流路42の圧損が周方向で異なるため、第1流路41から連通部61aに流入した流体が連通部61bを経由して圧損の低い第2流路42に流出すると、トルク付与機構は適正に機能せず、回転力が低下する虞がある。連通部62a,62bでも同様の問題が発生する虞がある、
【0196】
なお、圧損の低い流路とは、流入路から流路へと直線的に連通している流路であって、例えば、
図10の第1流路41aから第2流路42eへの流路や、第2流路42iから第1流路41への流路のことである。
【0197】
連通部61aと連通路61b及び連通部62b,62bを夫々区画壁61c,62cで区画しておくことで、圧損の低い流路への流れ(例えば、
図10の第1流路41aから第2流路42eへの流路や、第2流路42iから第1流路41への直接的な流れ)を阻害し、径方向に隣接する第1流路41から第2流路42への流れ、または第2流路42から第1流路への流れ(例えば、第1流路41aから第2流路41aへの流れや、第2流路42iから第1流路41iへの流れ)を生じさせ、トルク付与機構を適正に機能させることができる。
【0198】
第1流体流入路51、第2流体流出路52、第2流体流入路53、第1流体流出路54の何れにも連通しない第1流路41f,41g,41h,41m,41o,41p、及び第2流路42f,42g,42h,42m,42o,42pでは、圧力の交換は行われない。
【0199】
第2側方部材60には連通部61aと連通部62bの間、及び連通部61bと連通部62aの間に連通溝66,67が形成されている。連通溝66,67は、例えば数ミリ程度の溝で形成され、連通部61aと連通部62bの間、及び連通部61bと連通部62aの間に配置されることで、回転体40と第2側方部材60との隙間を通って高圧流体が低圧流体の連通路へと進入する際の大きな圧力変動、低圧流体が高圧流体の連通路へと進入する際の大きな圧力変動を緩和する。これにより、高圧流体が低圧流体の連通路へと進入したときの圧力の急変によるキャビテーションを防止することができる。
【0200】
なお、本実施形態では、連通溝66,67を第2側方部材60の端面60aのみに形成したが、第1側方部材50の端面50bにも同様の連通溝を形成してもよい。また、第2側方部材60に連通溝66,67を形成せずに、第1側方部材50のみにこのような連通溝を形成する構成であってもよい。
【0201】
以上のように、回転体40の回転によっての第1流体流入路51、第2流体流出路52、第2流体流入路53及び第1流体流出路54と連通する第1流路41、第2流路は順にずれていき、高圧濃縮海水Hiから高圧海水Hoへの圧力の伝達、及び、低圧海水Liから低圧濃縮海水Loへの圧力の伝達が連続的に行われる。つまり、第1流体と第2流体の圧力交換が連続的に行われる。
【0202】
なお、第1流路41及び第2流路42内では、濃縮海水と海水が混在することになるが、各々の流体は塩分濃度差があるため境界部分は拡散によりある一定量が常に混ざった領域となるだけで、当該領域は、ピストンのような役目をしながら第1流路41、連通部61a,61b,62a,62b、第2流路42の内部で往復動することになる。
【0203】
なお、上述の説明では、回転体40が回転するある瞬間において、第1流体流入路51、第2流体流出路52、第2流体流入路53、第1流体流出路54には第1流路41及び第2流路42が同時に5本連通する場合について説明したが、同時に連通する本数はこれに限らない。なお、同時に連通する本数が少なく、何れにも連通しない本数が多いと、装置から排水される水の脈動が大きくなる。また、流体流入路及び流体流出路の何れにも連通しない本数が少ないと、高圧の流体から低圧の流体への漏れ量が増加する。
【0204】
圧力交換装置10を構成する第1側方部材50、第2側方部材60、回転体40及び保持部材14は、アルミナ等のセラミックス、FRP、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等のように、海水に対する耐食性があり、十分に強度のある材料で構成することが好ましい。回転体40と保持部材14は、温度変化による熱膨張を考慮すると、熱膨張率が同等の素材を選択して構成することが好ましい。回転体40と保持部材14が、例えば外気温や水温の変化によって膨張、または収縮することがあっても、その隙間を一定に維持することができる。
【0205】
二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼を用いることも可能である。ただし、この場合は回転体40と第1側方部材50及び第2側方部材60との対向面、及び保持部材14の内周面を窒化処理し、或は、アルミナ等のセラミックを溶射し、肉盛溶接し、或はHIP処理して摩擦係数を低減する耐磨耗層を形成することが好ましい。
【0206】
ケーシング12は、樹脂材料、FRPまたは、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等の金属材料のように、海水に対する耐食性があり、ある程度強度を備えた材料で形成されている。樹脂材料やセラミックスで被覆することで耐食性を付加したステンレス鋼等の高強度の金属材料で構成してもよい。これにより、耐食性に劣る安価な材料でも採用することができ、コストダウンが図れる。
【0207】
本発明の一例である、一端側のみに流体の流入路や流出路が備えられた圧力交換装置10によると、従来の圧力交換装置のような、直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換を行なう場合に回転体40の回転軸心方向の長さを短く構成することができるので、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。また、圧力交換装置10の処理流量を増加させる場合でも、極端な大型化を回避することができる。
【0208】
圧力交換装置10は、第1流体流入路51、第2流体流出路52、第2流体流入路53及び第1流体流出路54は、第1側方部材50に形成されているため、各流体流入路と流出路と接続する各配管15、16,17,18は、圧力交換装置10の一方に纏めて設置することができる。従って、従来の装置のように回転体の両端側に夫々流体の流入路または流出路と接続する配管を設置する場合と比較して、配管を含めた設置スペースをコンパクト化ができる。また、配管が設置されていない第2側方部材60側からメンテナンス作業が可能となる。
【0209】
本発明による圧力交換装置の別実施形態について説明する。
図11には、別実施形態による圧力交換装置100が示されている。
【0210】
圧力交換装置100の回転体40は、円柱の中央に支軸13が挿通可能な挿通空間43が形成されるとともに、挿通空間43の周囲に夫々16本の第1流路41と第2流路42が回転軸心周りに放射状に配置されて構成されている。第1流路41と第2流路42は、回転体40の端面40aと端面40b間をその回転軸心方向に貫通するように形成されるとともに、端面40b側で連通するように形成れている。第1流路41と第2流路42は、夫々流路断面積が略等しくなるように形成されている。
【0211】
なお、圧力交換装置100のその他の部分の構成は、上述の
図2(a),(b)に示す圧力交換装置10と同様のため説明を省略する。
【0212】
本実施形態では、第1流路41と第2流路42の連通部40cが、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換部として機能する。第1流路41の第1流体と第2流路42の第2流体とは、回転する回転体40の内部に形成された圧力交換部でその圧力が伝達される。
【0213】
高圧濃縮海水Hiが端面40aから第1流路41に供給されると、回転体40に形成された第1流路41と第2流路42の連通部を介して、第2流路42の高圧海水Hoが端面40aから流出する。低圧海水Liが端面40aから第2流路42に供給されると、回転体40に形成された第2流路42と第1流路41の連通部を介して、第1流路41の低圧濃縮海水Loが端面40aから流出する。
【0214】
また、第1流路41と第2流路42は、回転体40の端面40b側で連通する構成に限らず連通部は、端面40aと端面40bの間の任意の位置であってよい。例えば、
図12(a)に示すように、端面40bから端面40a側に所定距離離隔した位置で連通された構成であってもよい。
【0215】
さらには、
図12(b)に示すように、第1流路41と第2流路42の端面40b側を、開口40dや開口40eを除いて閉塞するように構成してもよい。
【0216】
図13(a),(b),(c)には、別実施形態による圧力交換装置200が示されている。
【0217】
圧力交換装置200の回転体46は、一端から第1流体が流入及び流出し、他端から第2流体が流入及び流出する流路47が回転軸心方向に貫通するように回転軸心周りに配設されるとともに、回転体46の外周面の両端部を除いた領域に、回転体46の両端部の直径より縮径した縮径領域48が形成されている。回転体46は、支軸13を介して第1側方部材50と第2側方部材60に回転可能に支持されている。
【0218】
第1側方部材50には、高圧濃縮海水Hiを流路47に案内する第1流体流入路51と、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loを流路47から案内する第1流体流出路と54が、厚み方向に形成されている。
【0219】
第1エンドカバー20には、第1側方部材50の外側に配置され第1流体流入路51と連通する第1流体流入部と、第1流体流出路54と連通する第1流体流出部が形成され、第1流体流入部には流入管15が接続され、第1流体流出部には流出管18が接続されている。
【0220】
第2側方部材には、低圧海水Liを流路47に案内する第2流体流入路53と、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoを流路47から案内する第2流体流出路と52が、厚み方向に形成されている。
【0221】
第2エンドカバー30には、第2側方部材60の外側に配置され第2流体流入路53と連通する第2流体流入部と、第2流体流出路52と連通する第2流体流出部が形成され、第2流体流入部には流入管17が接続され、第2流体流出部には流出管16が接続されている。
【0222】
支軸13には、支軸13の第1側方部材50側の端部と挿通空間を連通する第1連通路56と、支軸13の第2側方部材60側の端部と挿通空間43とを連通する第2連通路65が形成されている。
【0223】
なお、圧力交換装置200のその他の部分の構成は、上述の
図2(a),(b)に示す圧力交換装置10と同様のため説明を省略する。
【0224】
上述の何れの実施形態でも、第1流路41の断面積と第2流路42の断面積は等しくなるように形成することで、流路断面積の変化による余分な圧力損失が低減できるように構成しているが、第1流路41と第2流路42の断面積は完全に等しい必要はない。また、第1流路41及び第2流路42の断面形状は、真円や楕円等の円形状、三角、四角等の多角形状であってもよく、第1流路41及び第2流路42の本数や断面形状を変更することで、圧力交換装置10の処理流量を変更することができる。なお、
図3(a)に示した第1流路41及び第2流路42の断面形状は、回転体の断面に対し開口率を大きく取れる点で好ましい。
【0225】
上述の何れの実施形態でも、保持部材14とケーシング12を別体で構成したが、ケーシング12を備えずに、保持部材14をケーシングとしても機能させてもよい。また、保持部材14と第2側方部材60を別体で構成したが、保持部材14と第2側方部材60をカップ状に一体形成し、第1側方部材50で閉じられる空間内に回転体40が配置されるように構成してもよい。
【0226】
上述の何れの実施形態でも、第1流体流入路51、第2流体流出路52、第2流体流入路53、第1流体流出路54のように、流入路と流出路が一対ずつ、合計4つ備えられる構成であるが、各流入路と流出路は夫々2つ以上の複数であってもよい。複数備える場合は、回転体40に流入及び回転体40から流出する各流体の圧力バランスの観点から各流入路及び流出路は回転軸心周りに点対称に配置されることが好ましい。
【0227】
上述の何れの実施形態でも、トルク付与機構は、第1流路41に流入するまたは第1流路41から流出する濃縮海水のエネルギー及び第2流路42に流入するまたは第2流路42から流出する海水のエネルギーにより回転体40にトルクを付与する構成であるが、前記トルク付与機構は、少なくとも第1流路41に流入する若しくは第1流路41から流出する濃縮海水のエネルギーまたは第2流路42に流入する若しくは第2流路42から流出する海水のエネルギーにより回転体40にトルクを付与するように構成すればよい。
【0228】
何れかのエネルギーのみを利用する場合、第2流路42より第1流路41のほうが、回転体40の半径方向外側に配置されているため、第1流路41に流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーを利用して回転体40にトルクを付与するように構成するとエネルギー効率がよい。
【0229】
上述の何れの実施形態でも、回転体40は第1流体及び第2流体のエネルギーにより回転する構成について説明したが、回転体40に駆動軸を連結し、駆動機等の外部動力で回転するように構成してもよい。外部動力で回転体40を回転駆動できるため、安定した回転を得ることができるので装置の信頼性が向上する。
【0230】
上述の何れの実施形態でも、第1流体流入路に高圧濃縮海水を流入させ、第2流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させる構成について説明したが、第1流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させ、第2流体流入路に高圧濃縮海水を流入させてもよい。
【0231】
以上説明した圧力交換装置の具体的構成は実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。