特許第5996934号(P5996934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5996934回転子積層鉄心の樹脂封止方法及び回転子積層鉄心の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996934
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】回転子積層鉄心の樹脂封止方法及び回転子積層鉄心の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20160908BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20160908BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H02K1/27 501D
   H02K15/03 Z
   H02K15/02 K
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-115822(P2012-115822)
(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公開番号】特開2013-243863(P2013-243863A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】長井 亮
(72)【発明者】
【氏名】小田 仁
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/145399(WO,A1)
【文献】 特開2008−042967(JP,A)
【文献】 特開2010−246266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−99/00
H02P 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄心片を積層して形成された鉄心本体に設けられた複数の磁石挿入部に永久磁石をそれぞれ挿入した後、前記鉄心本体を上型及び下型で押圧した状態で、該上型及び該下型のいずれか一方の金型に形成された樹脂溜め部から前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して、前記鉄心本体に前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂溜め部から前記磁石挿入部への前記樹脂部材の充填は、前記磁石挿入部の注入口と前記樹脂溜め部が設けられた前記金型との間に形成され、前記鉄心本体に当接する密閉突出部によって、前記樹脂溜め部から前記注入口の周囲領域を選択的に押圧して行い、しかも、前記密閉突出部は、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型に形成されていることを特徴とする回転子積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項2】
複数の鉄心片を積層して形成された鉄心本体に設けられた複数の磁石挿入部に永久磁石をそれぞれ挿入した後、前記鉄心本体を上型及び下型で押圧した状態で、該上型及び該下型のいずれか一方の金型に形成された樹脂溜め部から前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して、前記鉄心本体に前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂溜め部から前記磁石挿入部への前記樹脂部材の充填は、前記磁石挿入部の注入口と前記樹脂溜め部が設けられた前記金型との間に形成され、前記鉄心本体に当接する密閉突出部によって、前記樹脂溜め部から前記注入口の周囲領域を選択的に押圧して行い、しかも、前記密閉突出部は、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型に当接する一枚の板からなるカルプレートに形成されていることを特徴とする回転子積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項3】
少なくとも一方が昇降する上型と下型を有し、前記上型及び前記下型を用いて複数の鉄心片を積層して形成された鉄心本体を上下方向から押圧し、前記鉄心本体に複数設けられ、永久磁石がそれぞれ挿入された磁石挿入部に、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に形成された樹脂溜め部から前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して、前記鉄心本体に前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の製造装置において、
前記磁石挿入部の注入口と前記樹脂溜め部が設けられた前記金型との間に形成され、前記鉄心本体に当接し、前記樹脂溜め部から前記注入口の周囲領域を選択的に押圧する密閉突出部を有し、しかも、前記密閉突出部は、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型に形成されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造装置。
【請求項4】
少なくとも一方が昇降する上型と下型を有し、前記上型及び前記下型を用いて複数の鉄心片を積層して形成された鉄心本体を上下方向から押圧し、前記鉄心本体に複数設けられ、永久磁石がそれぞれ挿入された磁石挿入部に、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に形成された樹脂溜め部から前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して、前記鉄心本体に前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の製造装置において、
前記磁石挿入部の注入口と前記樹脂溜め部が設けられた前記金型との間に形成され、前記鉄心本体に当接し、前記樹脂溜め部から前記注入口の周囲領域を選択的に押圧する密閉突出部を有し、しかも、前記密閉突出部は、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型に当接する一枚の板からなるカルプレートに形成されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材を用いて鉄心本体に永久磁石を固定する回転子積層鉄心の樹脂封止方法及び回転子積層鉄心の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転子積層鉄心における鉄心本体への永久磁石の固定方法として、鉄心本体に磁石挿入孔を形成し、磁石挿入孔に永久磁石を挿入して樹脂部材を充填する方法が知られている。
この具体的な方法として、例えば特許文献1には、図5に示すように、鉄心片を積層して形成された鉄心本体100aを、上型101と下型102を有する樹脂封止装置103にセットした後、上型101又は下型102(図5では、上型101)に設けられた樹脂溜めポット104から、永久磁石105が挿入された磁石挿入孔106内に樹脂部材107を充填する方法が開示されている。なお、符号100は、永久磁石105が樹脂封止された回転子積層鉄心である。
また、特許文献2には、図6に示すように、鉄心本体115を上型109及び下型110で挟んで、上型109に設けられた樹脂溜め部111から樹脂部材112を、永久磁石113が挿入された磁石挿入部114に注入し硬化させた際、回転子積層鉄心108の鉄心本体115の上表面側に形成される樹脂流路部分とゲート部分に、不要な樹脂部材112が残留することを防ぐため、鉄心本体115の上表面に、樹脂注入孔116が形成されているカルプレート(ダミー板ともいう)117を当接配置し、カルプレート117の樹脂注入孔116を介して樹脂溜め部111から磁石挿入部114に樹脂部材112を注入し硬化させた後、カルプレート117を鉄心本体115から除去する方法が開示されている。
【0003】
一方、かしめ接合により形成され、回転電動機用ロータ(回転子積層鉄心)に使用する積層コア(鉄心本体)118においては、一方の端面にはかしめ凸部119が存在することになるため、特許文献3には、図7(A)、(B)に示すように、積層コア118を挟持する対となるエンドプレートのうち、積層コア118の端面の一方側に配置するエンドプレート120に、かしめ凸部119を収納する環状凹部121を設けることが開示されている。なお、符号122は、積層コア118に固定される永久磁石である。これによって、エンドプレート120と積層コア118の端面との間に生じる隙間を小さく、又は無くすことができ、磁石固定用接着剤(樹脂部材)の漏出やロータ内部への異物の混入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4388988号公報
【特許文献2】特許第4414417号公報
【特許文献3】特開2004−357347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転子積層鉄心の鉄心本体では、鉄心本体を構成している各鉄心片に板厚偏差が存在するため、あるいは、鉄心片がかしめ積層時に変形することに起因して、鉄心本体の端面にうねりが発生することがある。
ここで、特許文献1では、図8に示すように、鉄心本体100aを上型101と下型102を有する樹脂封止装置103にセットした後、上型101に設けられた樹脂溜めポット104から、永久磁石105が挿入された磁石挿入孔106内に樹脂部材107を充填する際、鉄心本体100aの端面にうねりが存在していると、上型101の下面全体が鉄心本体100aの上端面全体と密着せず、上型101の下面と鉄心本体100aの上面との間に隙間が生じることになる。そして、隙間が、樹脂溜めポット104の周囲、樹脂溜めポット104から磁石挿入孔106の上端部に樹脂部材107を案内するランナー104aの周囲、及び磁石挿入孔106の上端部の周囲の少なくとも1つに形成されると、鉄心本体100aの上端部に樹脂部材107が漏れ出し、その隙間が鉄心本体100aの上端面の外周まで延伸している場合(領域G1に存在する場合)、樹脂部材107を充填する過程で樹脂部材107が隙間を介して鉄心本体100aの外周部に漏れ出すという問題が生じる。
【0006】
また、特許文献2では、図9に示すように、カルプレート117が上面に載置された鉄心本体115を上型109及び下型110で挟んで、上型109に設けられた樹脂溜め部111から樹脂部材112を、永久磁石113が挿入された磁石挿入部114に注入する際、鉄心本体115の端面にうねりが存在していると、カルプレート117の下面全体が鉄心本体115の上端面全体と密着せず、カルプレート117の下面と鉄心本体115の上面との間に隙間が生じることになる。そして、隙間が、カルプレート117の樹脂注入孔116の周囲及び磁石挿入部114の周囲の少なくとも1つに形成されると、鉄心本体115の上端部に樹脂部材112が漏れ出し、その隙間が鉄心本体115の上端面の外周まで延伸している場合(領域G2に存在する場合)、樹脂部材112を充填する過程で樹脂部材112が隙間を介して鉄心本体115の外周部に漏れ出すという問題が生じる。
【0007】
そして、特許文献3では、図7に示す積層コア118の端面全体にうねりが存在する場合、エンドプレート120の当接面全体が積層コア118の端面全体と密着せず、エンドプレート120の当接面と積層コア118の端面との間に隙間が生じることになる。ここで、隙間が、永久磁石122が挿入される図示しない磁石挿入部の周囲に形成され、積層コア118の端面の外周まで延伸している場合、磁石挿入部に注入する磁石固定用接着剤の一部が隙間を介して積層コア118の外周部に漏れ出すという問題が生じる。また、磁石挿入部の周囲に形成される隙間が積層コア118の端面の外周まで延伸していなくても、この隙間はエンドプレート120に形成された環状凹部121と連通することが可能なため、磁石挿入部に注入する磁石固定用接着剤の一部は隙間を介して環状凹部121に流入することができ、環状凹部121の周囲に形成される隙間が積層コア118の端面の外周まで延伸していると、環状凹部121に流入した磁石固定用接着剤の一部が隙間を介して積層コア118の外周部に漏れ出すという問題が生じる。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、回転子積層鉄心の鉄心本体の端面にうねりが存在していても、樹脂部材を用いて鉄心本体に永久磁石を固定する際に樹脂部材の漏れを防止することが可能な回転子積層鉄心の樹脂封止方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う第1の発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、複数の鉄心片を積層して形成された鉄心本体に設けられた複数の磁石挿入部に永久磁石をそれぞれ挿入した後、前記鉄心本体を上型及び下型で押圧した状態で、該上型及び該下型のいずれか一方の金型に形成された樹脂溜め部から前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して、前記鉄心本体に前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂溜め部から前記磁石挿入部への前記樹脂部材の充填は、前記磁石挿入部の注入口と前記樹脂溜め部が設けられた前記金型との間に形成され、前記鉄心本体に当接する密閉突出部によって、前記樹脂溜め部から前記注入口の周囲領域を選択的に押圧して行い、しかも、前記密閉突出部は、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型に形成されている
【0010】
【0011】
の発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、複数の鉄心片を積層して形成された鉄心本体に設けられた複数の磁石挿入部に永久磁石をそれぞれ挿入した後、前記鉄心本体を上型及び下型で押圧した状態で、該上型及び該下型のいずれか一方の金型に形成された樹脂溜め部から前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して、前記鉄心本体に前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記樹脂溜め部から前記磁石挿入部への前記樹脂部材の充填は、前記磁石挿入部の注入口と前記樹脂溜め部が設けられた前記金型との間に形成され、前記鉄心本体に当接する密閉突出部によって、前記樹脂溜め部から前記注入口の周囲領域を選択的に押圧して行い、しかも、前記密閉突出部は、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型に当接する一枚の板からなるカルプレートに形成されている。
【0012】
前記目的に沿う第の発明に係る回転子積層鉄心の製造装置は、少なくとも一方が昇降する上型と下型を有し、前記上型及び前記下型を用いて複数の鉄心片を積層して形成された鉄心本体を上下方向から押圧し、前記鉄心本体に複数設けられ、永久磁石がそれぞれ挿入された磁石挿入部に、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に形成された樹脂溜め部から前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して、前記鉄心本体に前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の製造装置において、
前記磁石挿入部の注入口と前記樹脂溜め部が設けられた前記金型との間に形成され、前記鉄心本体に当接し、前記樹脂溜め部から前記注入口の周囲領域を選択的に押圧する密閉突出部を有し、しかも、前記密閉突出部は、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型に形成されている。
【0013】
【0014】
の発明に係る回転子積層鉄心の製造装置は、少なくとも一方が昇降する上型と下型を有し、前記上型及び前記下型を用いて複数の鉄心片を積層して形成された鉄心本体を上下方向から押圧し、前記鉄心本体に複数設けられ、永久磁石がそれぞれ挿入された磁石挿入部に、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に形成された樹脂溜め部から前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して、前記鉄心本体に前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の製造装置において、
前記磁石挿入部の注入口と前記樹脂溜め部が設けられた前記金型との間に形成され、前記鉄心本体に当接し、前記樹脂溜め部から前記注入口の周囲領域を選択的に押圧する密閉突出部を有し、しかも、前記密閉突出部は、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型に当接する一枚の板からなるカルプレートに形成されている。
【発明の効果】
【0015】
第1、第2の発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法及び第3、第4の発明に係る回転子積層鉄心の製造装置においては、樹脂溜め部から磁石挿入部の注入口の周囲領域を選択的に覆う密閉突出部を介して鉄心本体を押圧するので、従来の上型のように、下面全体を用いて鉄心本体を押圧する場合と比較して、鉄心本体に加える押圧力を増大させることができる。その結果、鉄心本体の端面にうねりが存在していても、密閉突出部が形成されていない窪み領域によってうねりを回避しつつ、密閉突出部を鉄心本体の端面に密着させて、樹脂溜め部から磁石挿入部の注入口までの周囲領域を選択的に押圧することができる。その結果、樹脂溜め部から樹脂部材を磁石挿入部に充填する際に、鉄心本体の端面に存在するうねりに起因して鉄心本体の端面と樹脂溜め部が形成された金型の端面との間に発生する隙間に樹脂部材の一部が流入することを防止でき、樹脂部材が鉄心本体の外部に漏れ出すことを防止できる。
【0016】
の発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法及び第の発明に係る回転子積層鉄心の製造装置において、密閉突出部が、樹脂溜め部が設けられた上型又は下型のいずれか一方に当接して設けられたカルプレートに形成されているので、磁石挿入部に樹脂部材が注入される側の鉄心本体の端面に不要樹脂部材が残留することを防止することができ、不要樹脂部材の除去作業が削減されて生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置の説明図である。
図2図1のP−P矢視断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置の説明図である。
図4図3のQ−Q矢視断面図である。
図5】第1の従来例に係る樹脂封止方法の説明図である。
図6】第2の従来例に係る樹脂封止方法の説明図である。
図7】(A)、(B)は第3の従来例に係る樹脂封止方法の説明図である。
図8】第1の従来例に係る樹脂封止方法における樹脂部材の漏れ出しの説明図である。
図9】第2の従来例に係る樹脂封止方法における樹脂部材の漏れ出しの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置は、鉄心片11を積層して鉄心本体12を形成する図示しない鉄心片積層機構と、少なくとも一方が昇降する上型15と下型16(この実施の形態では、上型15が固定され、下型16が昇降する)を備え、上型15及び下型16を用いて鉄心本体12を上下方向から押圧し、鉄心本体12に複数設けられ、永久磁石14(未磁化のものを含む)がそれぞれ挿入された磁石挿入部13に、上型15及び下型16のいずれか一方の金型、本実施の形態では上型15に形成された樹脂溜め部17から磁石挿入部13に樹脂部材18を充填する樹脂封止機構10とを有している。
これによって、鉄心本体12の磁石挿入部13に挿入した永久磁石14を鉄心本体12に固定することができ、図示しない回転軸を取り付けることにより回転子積層鉄心19が形成される。ここで、符号20は、回転軸が挿通される軸孔、符号21は、樹脂溜め部17内の溶融状態の樹脂部材18を加圧して、樹脂溜め部17から樹脂部材18を磁石挿入部13に流出させるプランジャである。なお、プランジャ21は、上型15の上方に配置される図示しないプランジャ駆動手段と連結している。以下、詳細に説明する。
【0019】
磁石挿入部13の注入口と上型15の間、即ち、上型15の下面(鉄心本体12の上端面に対向する面)には、鉄心本体12の上端面に当接し、樹脂溜め部17から磁石挿入部13の注入口の周囲領域を選択的に覆う密閉突出部23が形成されている。ここで、樹脂溜め部17から磁石挿入部13の注入口の周囲領域とは、具体的には、樹脂溜め部17から樹脂部材18が流出する流出口の周囲と、樹脂溜め部17から流出した樹脂部材18を磁石挿入部13の注入口まで案内する樹脂流路(ランナーともいう)22の周囲と、磁石挿入部13の注入口の周囲で構成される領域をさす。また、上型15には、樹脂溜め部17内で樹脂部材18を溶融状態に保つ図示しない加熱手段(例えば、電気ヒータ)が、下型16には、鉄心本体12を加熱する加熱手段(例えば、電気ヒータ)がそれぞれ設けられている。
【0020】
ここで、磁石挿入部13は鉄心本体12の外周側に配置されるため、樹脂溜め部17は上型15の外周側に配置されることになる。従って、上型15の下部には、鉄心本体12の上端面の中央部側(軸孔20の周囲であって、各樹脂溜め部17の流出口よりも軸孔20側の範囲)に対向する領域に窪み領域24を形成する。そして、密閉突出部23を介して鉄心本体12に加える押圧力を増大させるには、密閉突出部23の面積を減少させる必要があるので、窪み領域24の外周形状は、図1に示すように、樹脂溜め部17の配置に沿った形状にすることが好ましく、例えば、窪み領域24は、平面視して、配置された樹脂溜め部17を避けるように、半径方向外側に突出する複数の突起部を備えた形状(花びら形状)となっている。
【0021】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置の樹脂封止機構10を使用した回転子積層鉄心19の樹脂封止方法について説明する。
図1図2に示すように、回転子積層鉄心19の樹脂封止方法は、複数の鉄心片11を積層して形成された鉄心本体12に設けられた複数の磁石挿入部13に永久磁石14をそれぞれ挿入した後、鉄心本体12を上型15及び下型16で押圧した状態で、上型15に形成された樹脂溜め部17から磁石挿入部13に樹脂部材18を充填して、鉄心本体12に永久磁石14を固定する方法であって、樹脂溜め部17から磁石挿入部13への樹脂部材18の充填は、磁石挿入部13の注入口と上型15の間に形成され、鉄心本体12の上端面に当接する密閉突出部23によって、樹脂溜め部17から磁石挿入部13の注入口の周囲領域を選択的に押圧して行っている。以下、詳細に説明する。
【0022】
鉄心片積層機構を用いて、厚みが、例えば、0.2mm以上0.5mm以下の電磁鋼板を環状に打抜いて形成した鉄心片11を順次積層して鉄心本体12を形成する。ここで、積層された鉄心片11同士は、例えば、かしめ結合により固定されている。次いで、鉄心本体12の中央の軸孔20の周囲に形成された複数の磁石挿入部13に、永久磁石14をそれぞれ挿入する。なお、永久磁石14の高さは、磁石挿入部13の深さより少し低い高さに調整されている。
続いて、図示しない鉄心本体予熱機構を用いて、永久磁石14が挿入された鉄心本体12を、樹脂部材18の溶融温度付近まで予熱する。ここで、樹脂部材18には、熱硬化性樹脂を使用することができ、予熱温度は、樹脂部材18の溶融温度より10〜20℃の範囲で高い温度又は低い温度とする。予熱が終了した鉄心本体12は、鉄心本体予熱機構から取り出され、樹脂封止機構10にセットされる。なお、この実施の形態では熱硬化性樹脂を使用したが、これに代えて熱可塑性樹脂を使用してもよい。
【0023】
樹脂封止機構10には、鉄心本体12の上、下端面にそれぞれ当接して、鉄心本体12を上下方向から押圧する上型15及び下型16が取り付けられている。ここで、下型16は、樹脂封止機構10の図示しないフレームの下側に昇降可能に設けられた下部昇降架台(図示せず)に固定されている。一方、上型15は、フレームの上側に設けられた上部固定架台(図示せず)に、下型16に対向するように固定されている。従って、下型16の所定位置に予熱が終了した鉄心本体12を載置し、下型16を上型15に向けて上昇させ、上型15の下面側に形成された密閉突出部23を鉄心本体12の上端面に当接させると、密閉突出部23は、樹脂溜め部17から磁石挿入部13の注入口の周囲領域を選択的に覆って押圧する。その結果、鉄心本体12の上端面にうねりが存在していても、密閉突出部23を鉄心本体12の上端面の樹脂溜め部17から磁石挿入部13の注入口の周囲領域に密着させることができる。
【0024】
この後、樹脂溜め部17内に樹脂部材18を予め投入し、上型15に設けられた加熱手段で加熱して、樹脂部材18を溶融状態にしつつプランジャ駆動手段を駆動させてプランジャ21で樹脂溜め部17内の溶融状態の樹脂部材18を加圧すると、樹脂部材18は、樹脂溜め部17の流出口から樹脂流路22内に流入し、樹脂流路22を通過して磁石挿入部13の注入口から磁石挿入部13内に充填される。このとき、樹脂溜め部17の流出口の周囲と、樹脂流路22の周囲と、磁石挿入部13の注入口の周囲は、密閉突出部23で覆われた状態となっているので、樹脂溜め部17から樹脂部材18を磁石挿入部13に充填する際に、鉄心本体12の上端面に存在するうねりに起因して鉄心本体12の上端面と樹脂溜め部17が形成された上型15の下端面との間に発生する隙間に樹脂部材18の一部が流入することを防止でき、樹脂部材18が鉄心本体12の外部に漏れ出すことを防止できる。
【0025】
磁石挿入部13への樹脂部材18の充填が終了すると、上型15及び下型16に設けられた加熱手段を用いて樹脂部材18を加熱し硬化させる。樹脂部材18の硬化が完了すると、鉄心本体12の押圧状態を解放するため下型16を下降させ、鉄心本体12を下型16から取り出し、冷却する。
【0026】
本発明の第2の実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置の樹脂封止機構25は、第1実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置の樹脂封止機構10と比較して、図3図4示すように、密閉突出部26が、樹脂溜め部27が設けられた上型28又は下型29のいずれか一方の金型、この実施の形態では上型28と鉄心本体12との間に配置されたカルプレート30の下表面に形成されていることが特徴となっている。このため、カルプレート30について詳細に説明し、第1の実施の形態で説明した構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付して説明は省略する。
【0027】
鉄心本体12の磁石挿入部13に樹脂部材18を充填する際に、カルプレート30の上表面が上型28の下面に密接し、カルプレート30の下表面に形成された密閉突出部26が、樹脂溜め部27から磁石挿入部13の注入口の周囲領域を選択的に覆って押圧している。ここで、カルプレート30には、上側が上型28に設けられた樹脂溜め部27から樹脂部材18が流出する流出口に連通し、下側が鉄心本体12の磁石挿入部13の注入口に連通する樹脂注入孔31が形成されている。従って、樹脂溜め部27から磁石挿入部13の注入口の周囲領域とは、樹脂溜め部27から樹脂部材18が流出する流出口の周囲はカルプレート30の上部側で覆われるため、具体的には、カルプレート30の樹脂注入孔31の周囲と、磁石挿入部13の注入口の周囲で構成される領域をさす。
【0028】
なお、磁石挿入部13は鉄心本体12の外周側に配置されるため、カルプレート30に形成される樹脂注入孔31はカルプレート30の外周側に配置されることになる。従って、カルプレート30の下部には、鉄心本体12の上端面の中央部側(軸孔20の周囲であって、各樹脂注入孔31よりも軸孔20側の範囲)に対向する領域に窪み領域32を形成する。そして、密閉突出部26を介して鉄心本体12に加える押圧力を増大させるには、密閉突出部26の面積を減少させる必要があるので、窪み領域32の外周形状は、図3に示すように、樹脂注入孔31の配置に沿った形状にすることが好ましく、例えば、窪み領域32は、平面視して、配置された各樹脂注入孔31を避けるように、半径方向外側に突出する複数の突起部を備えた形状(花びら形状)となっている。
【0029】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置の樹脂封止機構25を使用した回転子積層鉄心19の樹脂封止方法について説明するが、樹脂封止機構25を使用した回転子積層鉄心19の樹脂封止方法は、樹脂封止機構10を使用した回転子積層鉄心19の樹脂封止方法と比較して、カルプレート30を用いることが特徴となっている。このため、カルプレート30の作用について説明する。
予熱が終了した鉄心本体12を下型29の所定位置に載置し、鉄心本体12の上端面にカルプレート30を載置する。次いで、下型29を上型28に向けて上昇させ、カルプレート30の上表面を上型28の下面に当接させると、樹脂溜め部27から樹脂部材18が流出する流出口の周囲をカルプレート30の上部側で覆うことができる。一方、カルプレート30の下表面に形成された密閉突出部26が、樹脂溜め部27から磁石挿入部13の注入口の周囲領域を選択的に押圧するので、鉄心本体12の上端面にうねりが存在していても、カルプレート30の樹脂注入孔31から磁石挿入部13の注入口の周囲領域に密閉突出部26を密着させることができる。
【0030】
この後、プランジャ駆動手段を駆動させてプランジャ21で樹脂溜め部27内の溶融状態の樹脂部材18を加圧すると、樹脂部材18は、樹脂溜め部27の流出口から樹脂注入孔31を介して磁石挿入部13の注入口から磁石挿入部13内に充填される。このとき、樹脂注入孔31の周囲と磁石挿入部13の注入口の周囲は、密閉突出部26で覆われた状態となっているので、鉄心本体12の上端面にうねりが存在していても、樹脂溜め部27から磁石挿入部13への樹脂部材18の充填を行う際に、樹脂部材18の一部が、鉄心本体12の上端面に存在するうねりに起因して鉄心本体12の上端面とカルプレート30の下表面との間に発生する隙間に流入することを防止でき、鉄心本体12の外部に漏れ出すことが防止できる。
【0031】
なお、カルプレート30の上表面は、上型28の下端面に密接しているので、カルプレート30の上表面と上型28の下端面との間に樹脂部材18が流入することはない。
そして、樹脂部材18の硬化が完了した後、鉄心本体12の押圧状態を解放するため下型29を下降させると、鉄心本体12がカルプレート30と共に下降するので、カルプレート30が載置された状態の鉄心本体12を下型29から取り出し、カルプレート30を鉄心本体12から引き離すと、樹脂注入孔31内で硬化した樹脂部材18はカルプレート30と共に取り除かれ、鉄心本体12の上端面に不要樹脂部材が残留することはない。このため、不要樹脂部材の除去作業が削減されて、回転子積層鉄心19の生産性が向上する。
【0032】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、樹脂溜め部を上型に設けたが、下型に設けてもよい。また、樹脂溜め部を下型に設け、カルプレートを下型と鉄心本体の下端面に当接して配置してもよい。
更に、カルプレートを鉄心本体に当接させて使用したが、カルプレートを上型の下端面に又は下型の上端面に予め当接させて配置するようにしてもよい。この場合、樹脂部材18の硬化が完了した鉄心本体を下降させる際に、カルプレートは、樹脂注入孔31内で硬化した樹脂部材18と共に鉄心本体から分離するので、不要樹脂部材が存在しない状態の鉄心本体が得られる。
【符号の説明】
【0033】
10:樹脂封止機構、11:鉄心片、12:鉄心本体、13:磁石挿入部、14:永久磁石、15:上型、16:下型、17:樹脂溜め部、18:樹脂部材、19:回転子積層鉄心、20:軸孔、21:プランジャ、22:樹脂流路、23:密閉突出部、24:窪み領域、25:樹脂封止機構、26:密閉突出部、27:樹脂溜め部、28:上型、29:下型、30:カルプレート、31:樹脂注入孔、32:窪み領域
図1
図2
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図9