(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2記載の車両のドアフレーム構造において、上記立柱サッシュと上記アッパサッシュのそれぞれの上記接合端面はサッシュ長手方向と直交する面に対して傾斜している車両のドアフレーム構造。
請求項4記載の車両のドアフレーム構造において、上記立柱サッシュと上記アッパサッシュのそれぞれの上記接合端面はサッシュ長手方向と直交する面である車両のドアフレーム構造。
請求項1ないし5のいずれか1項記載の車両のドアフレーム構造において、上記立柱サッシュに上記内周傾斜面が形成され、上記アッパサッシュに上記外周傾斜面が形成されている車両のドアフレーム構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非閉鎖断面形状のサッシュ構成部材を低コストに製造するにはプレス成形が適しているが、成形時の型抜きによる断面形状の制約を受ける。例えば、車内側に位置する壁部から車外側に向けて一対の壁部が突出するコ字状の断面形状の場合、車外側に向けて成形型を引き抜くことが想定されるが、車外側に向けて延設される一対の壁部が徐々に互いの間隔を狭くする形状であると、車外側への成形型の引き抜きが困難になる。逆に、一部のサッシュ構成部材の成形のしやすさを優先すると、ドアフレーム全体としてのデザイン性などが制約されてしまう。例えば、アッパサッシュと立柱サッシュでは筒状断面部を含めた全体的な断面形状に関する要求が異なるが、互いの接合端面の形状を完全一致させることを優先した結果、ドアコーナー部を除く部分でアッパサッシュと立柱サッシュのそれぞれの断面形状の自由度が低くなってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、生産性の高さと、立柱サッシュとアッパサッシュの断面形状の自由度の高さを両立した車両のドアフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、立柱サッシュとアッパサッシュが互いの接合端面を当接させて接合される形態の車両のドアフレーム構造に関しており、立柱サッシュとアッパサッシュはそれぞれ筒状断面部を有し、この筒状断面部が、車内側に位置してドアフレームの外周側から内周側に延びる車内側面と、車内側面のドアフレーム内周側端部に続いて車外側に向かう内周側面とを有すること;立柱サッシュとアッパサッシュのいずれか一方が、筒状断面部の内周側面を、車内側面に対して直交して車外側と車内側を結ぶ面を基準として車内側部分よりも車外側部分がドアフレーム外周側に位置する外周傾斜面としていること;及び、立柱サッシュとアッパサッシュの他方
が、上記接合端面で筒状断面部を車外側に開放させた非閉鎖断面形状となっており、該非閉鎖断面形状の筒状断面部の内周側面を、先端部が外周傾斜面と重ならずに外周傾斜面よりもドアフレーム内周側に位置する内周傾斜面としていること;を特徴としている。
【0007】
外周傾斜面及び内周傾斜面は、車内側で
互いに当接して接合される接合端面を有し、車外側領域では重ならず非当接の関係になるように構成することができる。この構成は、立柱サッシュとアッパサッシュのそれぞれの接合端面がサッシュ長手方向と直交する面に対して傾斜している場合に好適である。
【0008】
あるいは、外周傾斜面及び内周傾斜面を、全ての領域で重ならず非当接の関係にさせてもよい。この構成は、立柱サッシュとアッパサッシュのそれぞれの接合端面がサッシュ長手方向と直交する面である場合に好適である。
【0009】
外周傾斜面と内周傾斜面をドアフレームのいずれの部分に形成するかは任意に設定可能であるが、一例として立柱サッシュに内周傾斜面を形成し、アッパサッシュに外周傾斜面を形成するとよい。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明の車両のドアフレーム構造によれば、立柱サッシュとアッパサッシュのそれぞれの筒状断面部を構成する内周側面を、サッシュ端面の接合状態で互いの少なくとも一部が重ならない内周傾斜面と外周傾斜面としたことにより、ドアコーナー部での立柱サッシュとアッパサッシュの端面接合を行いつつ、立柱サッシュとアッパサッシュの断面形状を異ならせてドアフレームの構成に自由度を持たせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のドアフレーム構造を適用する自動車の前部座席用の側面ドアを車内側から見た側面図である。
【
図2】
図1のドアでアッパサッシュと立柱サッシュが接合されるドアコーナー部を含むドアフレームの一部を車内側から見た図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿う立柱サッシュの断面図である。
【
図4】
図2のB-B線に沿うアッパサッシュの断面形状を示す図である。
【
図5】
図2のドアコーナー部での立柱サッシュの端面形状を示す図である。
【
図6】
図2のドアコーナー部におけるアッパサッシュと立柱サッシュの接合端面の関係を示す図である。
【
図7】ドアコーナー部でアッパサッシュにおける立柱サッシュとの溶接範囲を示す図である。
【
図8】異なる実施形態のドアフレーム構造のドアコーナー部付近を拡大した図である。
【
図9】
図8のドアコーナー部での立柱サッシュの端面形状を示す図である。
【
図10】
図8のドアコーナー部におけるアッパサッシュと立柱サッシュの接合端面の関係を示す図である。
【
図11】本発明のドアフレーム構造を適用する自動車の後部座席用の側面ドアを車内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は自動車の前部座席用の側面ドア10を示している。ドア10は、二点鎖線で概略形状を示すドアパネル12と、ドアパネル12の上部に枠状に形成されたドアフレーム14とを有し、ドアパネル12の上縁部とドアフレーム14の内縁部とで囲まれる窓開口16内にドアガラス(図示略)が昇降する。窓開口16に臨むドアフレーム14の内周側には弾性材からなるガラスラン(図示略)が配設されており、ドアガラスの縁部がガラスランにより保持される。ドアフレーム14は、ドア上縁部を形成するアッパサッシュ18と、ドアパネル12の後部から上方へ延設された立柱サッシュ20を備えており、アッパサッシュ18の後端部と立柱サッシュ20の上端部がドアコーナー部で接合される。ドアパネル12は車外側のアウタパネルと車内側のインナパネルを組み合わせて構成され、アッパサッシュ18の前方下部はミラーブラケット22を介してインナパネルに固定され、立柱サッシュ20の下部はロックブラケット24を介してインナパネルに固定される。ミラーブラケット22とロックブラケット24に対して、車両前後方向に延びるベルトラインリンフォース26が固定される。ドア10を閉じたとき、アッパサッシュ18は、図示しない車両ボディのルーフパネルのドア開口部に沿って位置し、立柱サッシュ20は、車両ボディのセンターピラーに沿って位置される。アッパサッシュ18と立柱サッシュ20の外周側には弾性材からなるウェザストリップ(図示略)が配設されており、ドア10を閉じるとウェザストリップが弾性変形して、ドア10と車両ボディの間を液密に塞ぐ。以下の説明では、ドアフレーム14において窓開口16に臨む側を内周側と呼び、これと反対側の車両ボディ開口部に臨む側を外周側と呼ぶ。また、前方、後方、上方、下方、車内側、車外側といった方向の表現は、この前部座席用ドア10が取り付けられる自動車のボディを基準とした方向を意味する。
【0013】
アッパサッシュ18は一体形成された長尺部材で構成されており、本実施形態ではアルミ材の押出成形品として形成されている。
図4に示すように、アッパサッシュ18は、車外側に位置する車外側壁30と、車外側壁30の外周側端部から車内側に延びるガラスラン保持底壁31と、ガラスラン保持底壁31から内周側に延びる中央立壁32と、中央立壁32から車内側に延びるウェザストリップ保持底壁33及び内周壁(内周側面、外周傾斜面)34と、ウェザストリップ保持底壁33と内周壁34を接続する車内側壁(車内側面)35と、ウェザストリップ保持底壁33と車内側壁35の境界部分から外周側に突出して車外側に曲げられた片持ち突出部36と、片持ち突出部36の車外側に対向して位置し中央立壁32から車内側に突出する抜止段部37とを有している。車外側壁30、ガラスラン保持底壁31及び中央立壁32に囲まれる部分は、内部にガラスランを嵌合保持させるガラスラン保持部38を構成している。ガラスラン保持部38は内周側に向けて開かれた有底の箱形形状をなしている。中央立壁32の一部にはガラスラン保持部38内に保持されたガラスランの抜け止めに用いられる抜止段部39が形成されている。中央立壁32、ウェザストリップ保持底壁33、車内側壁35、片持ち突出部36及び抜止段部37に囲まれる部分は、内部にウェザストリップを嵌合保持させるウェザストリップ保持部40を構成する。ガラスラン保持部38は外周側に向けて開かれた有底の箱形形状をなしており、片持ち突出部36と抜止段部37によってウェザストリップの脱落が防止される。中央立壁32、ウェザストリップ保持底壁33、内周壁34及び車内側壁35に囲まれる部分は、角筒状(袋状)の中空断面のメインフレーム部(筒状断面部)41を構成する。車外側壁30に対して、図示を省略する外装部材(ガーニッシュ)が取り付けられる。
【0014】
図3に示すように、立柱サッシュ20はガラスランチャンネル42とアウタ部材43とウェザストリップチャンネル44を組み合わせて構成されている。ガラスランチャンネル42はアルミ材の押出成形又はロール成形により形成される長尺部材であり、車外側に位置する車外側壁45と、車外側壁45の外周側端部から車内側に延びるガラスラン保持底壁46と、ガラスラン保持底壁46から内周側に延びる車内側壁47と、車内側壁47の内周側端部を車外側に曲げて形成した被挟持部48とを有する。車内側壁47は、車外側壁45に対向する外周側壁部47aと車外側壁45に対向しない内周側壁部47bを有し、内周側壁部47bが外周側壁部47aよりも車内側に位置している。被挟持部48の先端は、概ね外周側壁部47aを内周側に延長した位置にある。
【0015】
アウタ部材43は、アルミ材のプレス成形により形成される長尺部材であり、車外側に位置する車外側壁50と、車外側壁50の内周側端部から車内側に延びる底壁51と、底壁51から車内側に延長されたウェザストリップ当接壁52と、ウェザストリップ当接壁52の車内側端部から内周側に延びる車内側壁(車内側面)53と、車内側壁53から離れて車外側に進むにつれて徐々に内周側に進む傾斜壁54と、傾斜壁54から角度を変えて車外側に延びる内周壁(内周側面)55と、内周壁55の車外側端部を外周側に折り返した折返部56を有する。
【0016】
ガラスランチャンネル42とアウタ部材43は、ガラスラン保持底壁46の外周側に底壁51を重ねて溶接で固定される。ガラスランチャンネル42とアウタ部材43はさらに、被挟持部48を折返部56で挟んで密着固定させるヘミング加工接合によっても固定される。ウェザストリップチャンネル44は、底壁51の外周側に溶接等で固定されるウェザストリップ保持底壁57と、ウェザストリップ保持底壁57の車外側と車内側の端部から外周側に突出する一対の保持爪58、59とを備えており、アルミ材のプレス成形又はロール成形によって形成される。
【0017】
立柱サッシュ20のうち、ガラスランチャンネル42の車外側壁45、ガラスラン保持底壁46及び車内側壁47に囲まれる部分は、内部にガラスランを嵌合保持させるガラスラン保持部60を構成している。ガラスラン保持部60は内周側に向けて開かれた有底の箱形形状をなしている。アウタ部材43の車外側壁50、底壁51及びウェザストリップ当接壁52とウェザストリップチャンネル44とに囲まれる部分は、内部にウェザストリップを嵌合保持させるウェザストリップ保持部61を構成する。ウェザストリップチャンネル44の保持爪58と保持爪59によってウェザストリップの脱落が防止される。ドア10を閉じたときに、ウェザストリップの一部がウェザストリップ当接壁52に当接する。
【0018】
ガラスランチャンネル42の車内側壁47、アウタ部材43のウェザストリップ当接壁52、車内側壁53、傾斜壁54及び内周壁55に囲まれる部分は、角筒状(袋状)の中空断面のメインフレーム部(筒状断面部)62を構成する。メインフレーム部62の断面形状は立柱サッシュ20の上下方向の位置によって異なり、下方に進むにつれてウェザストリップ当接壁52と内周壁55の車内側への突出量が大きくなる。すなわち、下方に進むにつれてメインフレーム部62が徐々に車内側に長くなる。メインフレーム部62は、立柱サッシュ20の長手方向におけるいずれの断面位置でも車外側に開放された断面形状になっており、車内側壁53から離れて車外側に進むにつれて、底壁51及びウェザストリップ当接壁52からなる外周側の壁部と、傾斜壁54及び内周壁55からなる内周側の壁部との間隔が広くなる。ガラスランチャンネル42の車外側壁45とアウタ部材43の車外側壁50に対して、図示を省略する外装部材(ガーニッシュ)が取り付けられる。
図1に示すように、立柱サッシュ20における車外側壁50は、上方から下方に進むにつれて徐々に幅を広くする。
【0019】
アッパサッシュ18と立柱サッシュ20が接合するドアコーナー部の構造を説明する。アッパサッシュ18は前端部からドアコーナー部に至るまで概ね一様な断面形状を有しており、その後端部が、アッパサッシュ18の長手方向と直交する面(物直方向の面)に対して傾斜する接合端面18Kとして形成されている。
図4はアッパサッシュ18の物直方向の断面形状を示しているが、アッパサッシュ18の接合端面18Kを後方から見ると
図4の物直方向断面と同様の形状になっている(
図6参照)。立柱サッシュ20は、ドアコーナー部ではガラスランチャンネル42とウェザストリップチャンネル44が省略され、アウタ部材43のみが存在している。アウタ部材43はドアコーナー部では断面形状が変化しており、
図5に示すアウタ部材43の接合端面43Kでは、
図3に示す通常断面部分での車外側壁50、底壁51、ウェザストリップ当接壁52、車内側壁53及び内周壁55のそれぞれから連続する部分が車外側壁50C、底壁51C、ウェザストリップ当接壁52C、車内側壁53C及び内周壁(内周側面、内周傾斜面)55Cとなっている。傾斜壁54に連続する傾斜壁54Cは上方に進むにつれて徐々に幅が狭くなり(
図2参照)、最終的に接合端面43Kでは車内側壁53Cと内周壁55Cの境界の角部分となる(
図5参照)。一方、車内側壁53Cは上方に進むにつれて徐々に幅が広くなっており、接合端面43Kで最も幅広になる(
図2参照)。
【0020】
ドアコーナー部分でのアッパサッシュ18と立柱サッシュ20の接合関係を
図6に示す。ドアコーナー部のアウタ部材43は車外側に向けて開放されたコ字状の形状を有し、アッパサッシュ18の接合端面18Kのうち車外側壁30を除いた外縁部分に沿ってアウタ部材43の接合端面43Kが重なる。詳細には、アウタ部材43における車外側壁50C、底壁51C、ウェザストリップ当接壁52C、車内側壁53Cがそれぞれアッパサッシュ18のガラスラン保持底壁31、中央立壁32、片持ち突出部36、車内側壁35の端面に当て付く。アウタ部材43の内周壁55Cは、傾斜壁54Cに近い車内側の基部ではアッパサッシュ18の内周壁34の端面に重なるが、車外側に進むと内周壁34と重ならずに内周側に離れていく形状を有している。つまり内周壁55Cは、車内側から車外側に進むにつれてウェザストリップ当接壁52Cから離間するように、内周側に向けて所定の開き角を有する形状になっている。
【0021】
図4や
図6から分かるように、アッパサッシュ18におけるメインフレーム部41は、内周側に位置する内周壁34が、車内側(車内側壁35に接続する側)から車外側(中央立壁32に接続する側)に進むにつれて徐々に内周側から外周側に向かうように傾斜している。つまり、外周側から内周側に延びる車内側壁35に直交し、内周壁34と車内側壁35の境界部を通って車内側と車外側を結ぶ仮想面P(
図4)を設定した場合、内周壁34は、車内側壁35から離れて車外側に進むにつれて、この仮想面Pから外周側に離れてウェザストリップ保持底壁33に接近する負角形状になっている。
【0022】
前述した通り、ドアコーナー部分における立柱サッシュ20のアウタ部材43は車外側に向けて開放されたコ字状の断面形状になっている。このアウタ部材43のように一方の側部が開放された長尺部材を形成する場合、その開放方向に引き抜かれる成形型を用いてプレス成形することが製造コストや生産性の点で好ましい。但し、車外側壁50C及びウェザストリップ当接壁52Cからなる外周側の壁部や、内周壁55Cからなる内周側の壁部が、車内側壁53Cから離れて車外側に進むにつれて互いの間隔を狭くする負角の延設方向に設定されていると、成形型を車外側に引き抜くことが難しくなる。ここで、アッパサッシュ18の内周壁34が仮想線Pに対する負角になっており、内周壁55Cを完全に内周壁34に沿わせた形状にすると、車内側壁53Cを基準として内周壁55Cが負角になるため、車外方向への成形型の引き抜きを妨げてしまう。これと異なり本実施形態では、
図6に示すように、傾斜壁54Cに近い車内側の一部領域では内周壁34の端面に重なり、それよりも車外側に進んだ領域では内周壁34と重ならずに内周側に離れる形状に内周壁55Cを設定したことにより、内周壁55Cが負角にならずに車外側への成形型の引き抜きが可能なアウタ部材43の断面形状になっている。
【0023】
アッパサッシュ18とアウタ部材43は、互いの接合端面18K、43Kを付きあわせた状態で接合端面18K、43Kの側部に沿って溶接を行って固定される。アッパサッシュ18における溶接の範囲を
図7にDで示す。ガラスラン保持底壁31と車外側壁50C、底壁51Cとウェザストリップ当接壁52の上部、車内側壁35と車内側壁53Cについては、互いに重なる部分が全体的に溶接される、内周壁34と内周壁55Cは、車内側壁35や車内側壁53Cに近い重畳部分が溶接され、互いに重ならない部分は溶接されない。また、片持ち突出部36とウェザストリップ当接壁52Cの端面が互いに重なる関係にあるが、片持ち突出部36の先端付近の所定範囲はウェザストリップ当接壁52Cに対して溶接されない。
【0024】
アッパサッシュ18と立柱サッシュ20の溶接による接合の詳細を説明する。アッパサッシュ18における片持ち突出部36は先端を自由端部とした片持ち形状をなしており、
図7に示すE領域の肉厚が一定で、E領域よりも先端側は丸みを帯びた先細形状になっており、E領域よりも基端側は徐々に肉厚を大きくしてメインフレーム部41(ウェザストリップ保持底壁33と車内側壁35の境界部分)に接続している。この片持ち突出部36において、E領域の基端位置E-1を境とした先端側部分を細幅部36a、基端位置E-1を境とした基端側部分を拡幅部36bとする。拡幅部36bは、湾曲しながらメインフレーム部41に接続するという形状上の要求から、メインフレーム部41に近づくにつれて徐々に肉厚が大きくなっている。より詳しくは、片持ち突出部36の車内側の面36c(
図4、
図7)を基準として、この車内側の面36cと直交する方向で片持ち突出部36の幅W(
図7)を設定すると、拡幅部36bではE領域(細幅部36a)から離れて基端側に進むにつれて徐々に幅Wが拡大する。アッパサッシュ18における溶接範囲Dは片持ち突出部36の細幅部36aを含んでおらず、メインフレーム部41の車内側壁35に沿う領域から片持ち突出部36の拡幅部36bまでが溶接範囲Dとして設定されている。すなわち細幅部36aと拡幅部36bの境界位置E-1が溶接範囲Dの一端部(始点あるいは終点)となる。溶接範囲Dの他端部は、前述した内周壁34と内周壁55Cの重畳部分に定められる。
【0025】
このように、アッパサッシュ18でメインフレーム部41から突出する片持ち突出部36のうち、先端側の細幅部36aを溶接範囲Dに含めていない。片持ち突出部36の細幅部36aは拡幅部36bよりも肉厚が小さく溶接時の高熱による影響を受けやすいが、細幅部36aを溶接箇所から外すことにより、溶接の高熱を起因とする片持ち突出部36の溶け落ちを防ぐことができる。一方、片持ち突出部36の拡幅部36bは肉厚が大きく高熱による影響を受けにくいため、拡幅部36bを溶接範囲Dに含めておくことで、片持ち突出部36の全体を溶接しない場合に比べてアッパサッシュ18と立柱サッシュ20の接合強度を高めることができる。なお、片持ち突出部36の細幅部36aを溶接範囲に含まないという条件を満たしていれば、必要とされる強度に応じて溶接範囲D以外の箇所(例えば、ガラスラン保持底壁31と車外側壁50Cの接合部分、中央立壁32と底壁51Cの接合部分など)でアッパサッシュ18と立柱サッシュ20を溶接してもよい。
【0026】
図8から
図10は異なる実施形態を示している。この実施形態のアッパサッシュ118と立柱サッシュ120は、ドアコーナー部での接合形態が先の実施形態と異なっている。アッパサッシュ118における立柱サッシュ120との接合端面118K、120Kはそれぞれ、アッパサッシュ118の長手方向と直交する物直方向の面として形成されている。アッパサッシュ118の接合端面118Kは、先の実施形態のアッパサッシュ18の接合端面18Kとは切断される方向が異なるものの、後方から見るとアッパサッシュ18の接合端面18Kと概ね同じ形状を有しており、
図10ではアッパサッシュ118の接合端面118Kの各部を、
図6におけるアッパサッシュ18の接合端面18Kと同符号で示している。
【0027】
立柱サッシュ120を構成するアウタ部材143の上端部付近は前方に向けて湾曲されており、アッパサッシュ118の接合端面118Kに当接する接合端面が
図9及び
図10に示す形状になっている。このアウタ部材143側の接合端面143Kは、先の実施形態のアウタ部材43の接合端面43Kに対応する部位を有しており、具体的には車内側壁(車内側面)153Cを車内側の基準面として、車内側壁153Cの外周側端部から車外側に向けてウェザストリップ当接壁152C、底壁151C、車外側壁150Cが延設され、車内側壁153Cの内周側端部に続く傾斜壁154Cから車外側に向けて内周壁(内周側面、内周傾斜面)155Cが延設されている。先の実施形態の内周壁55Cと同様に、内周壁155Cは、車内側から車外側に進むにつれて車外側壁150C、底壁151C及びウェザストリップ当接壁152Cから離間する傾斜を有しており、アウタ部材143を成形する際に車外側へ向けて成形型の引き抜きが可能になっている。内周壁155Cは先の実施形態の内周壁55Cよりも内周方向への開き角が大きく、全体がアッパサッシュ118の内周壁34と重ならない。サッシュ長手方向と直交する物直方向端面でアッパサッシュ118と立柱サッシュ120を接合させる本実施形態では、アウタ部材143の接合端面143Kを、車内側壁153Cに対する内周方向への開き角の大きい内周壁155Cを有する形状に設定することが有効である。
【0028】
図8から
図10の実施形態においても、アッパサッシュ118を構成する片持ち突出部36のうち先端側の細幅部36aが立柱サッシュ120に対する溶接範囲に含まれていない。これにより、所定の接合強度を確保できると共に、溶接の高熱を起因とする片持ち突出部36の溶け落ちを防ぐことができる。
【0029】
以上に説明した実施形態のドアフレーム構造では、アッパサッシュ18(118)の接合端面18K(118K)と立柱サッシュ20(120)の接合端面43K(143K)が、互いに当接接合可能な形状を備えつつ、アッパサッシュ18(118)のメインフレーム部41の内周側を構成する内周壁34と、立柱サッシュ20(120)のメインフレーム部62の内周側を構成する内周壁55C(155C)を、互いの少なくとも一部が重ならない形状としている。これにより、立柱サッシュ20(120)のアウタ部材43(143)をプレス成形によって容易に成形可能な断面形状としつつ、押出成形されるアッパサッシュ18(118)ではメインフレーム部41に独自の断面形状を持たせており、ドアフレーム14の各部での形状自由度の高さと生産性の両立が達成されている。なお、アッパサッシュ18(118)と立柱サッシュ20(120)を接合した状態では内周壁34と内周壁55C(155C)の間に段差が存在するが、この段差はメインフレーム部41、62の内周側に向くものであるため、ドアフレーム14の外観に影響しない。内周壁34と内周壁55C(155C)の間の段差は、アッパサッシュ18(118)と立柱サッシュ20(120)の接合後に必要に応じて埋められる。
【0030】
以上の各実施形態は自動車の前部座席用の側面ドア10へ適用しているが、
図11に示す後部座席用の側面ドア210など、他のドアにも適用が可能である。ドア210はドアパネル212とドアフレーム214を有し、ドア上縁部を形成するアッパサッシュ218と、ドアパネル212の前部から上方へ延設された立柱サッシュ220が、ドア前方上部のドアコーナー部分で互いの端面を当接させて接合される。前部座席用のドア10におけるアッパサッシュ18(118)と立柱サッシュ20(120)の接合構造と共通するため詳細な説明は省略するが、ドア210のアッパサッシュ218と立柱サッシュ220の接合構造に本発明を適用することも可能である。
【0031】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は図示した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて改良や改変が可能である。例えば図示実施形態のドアフレームを構成する各部材はアルミ材としたが、鉄などの異なる材質で形成されるドアフレームにも本発明は適用が可能である。
【0032】
また、図示実施形態ではアッパサッシュ18(118)の側に、車内側から車外側へ進むにつれて徐々に外周側に進む傾斜(負角)の内周壁34が形成され、立柱サッシュ20(120)の側に、車内側から車外側へ進むにつれて徐々に内周側に進む傾斜の内周壁55C(155C)が形成されているが、この関係を逆にすることも可能である。