(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明に係る眼底解析装置、眼底解析プログラム及び眼底解析方法の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0020】
この発明に係る眼底解析装置は、眼底の断層像(2次元断層像、3次元断層像)を解析するコンピュータであってもよいし、光コヒーレンストモグラフィを用いて眼底の断層像を形成することが可能なOCT装置であってもよい。後者のOCT装置には前者のコンピュータが含まれる。よって、以下においては後者のOCT装置について特に詳しく説明する。
【0021】
OCT装置としての眼底解析装置は、眼底の断層像を形成できるものであればどのようなタイプであってもよい。以下の実施形態では、スペクトラルドメインタイプについて特に詳しく説明する。なお、この発明の特徴の中心は眼底の断層像を解析する処理にあるので、スウェプトソースタイプやインファスタイプなどの他のタイプのOCT装置であっても同様に構成することが可能である。OCTを利用して断層像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。
【0022】
以下の実施形態ではOCT装置と眼底カメラとを組み合わせた装置について説明するが、眼底カメラ以外の眼底撮影装置、たとえばSLO、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡などに、この実施形態に係る構成を有するOCT装置を組み合わせることも可能である。また、この実施形態に係る構成を、単体のOCT装置に組み込むことも可能である。なお、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)とは、レーザ光で眼底を走査し、その反射光を光電子増倍管等の高感度な素子で検出することにより眼底表面の形態を画像化する装置である。
【0023】
[構成]
図1及び
図2に示すように、眼底解析装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底の断層像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
【0024】
〔眼底カメラユニット〕
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、又は近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像である。眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、たとえばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
【0025】
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ(単にCCDと呼ぶことがある)35、38)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの信号光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット100に導く。
【0026】
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。なお、観察光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いることも可能である。
【0027】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この眼底反射光は、ハーフミラー39Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系30のピントが前眼部に合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。
【0028】
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。また、撮影光源としてLEDを用いることも可能である。
【0029】
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用指標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための指標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。
【0030】
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー39Aにて反射され、ミラー32に反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0031】
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、たとえば従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。また、固視標の表示位置を任意に変更することも可能である。
【0032】
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
【0033】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
【0034】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー39Aを透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい(オートアライメント機能)。
【0035】
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0036】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31及びフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0037】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT計測用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、光路長変更部41と、ガルバノスキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。
【0038】
光路長変更部41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT計測用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、たとえばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含んで構成される。
【0039】
ガルバノスキャナ42は、OCT計測用の光路を通過する光(信号光LS)の進行方向を変更する。それにより、眼底Efを信号光LSで走査することができる。ガルバノスキャナ42は、たとえば、信号光LSをx方向に走査するガルバノミラーと、y方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。それにより、信号光LSをxy平面上の任意の方向に走査することができる。
【0040】
〔OCTユニット〕
図2を参照しつつOCTユニット100の構成の一例を説明する。OCTユニット100には、眼底Efの断層像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、眼底Efを経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するように構成されている。この検出結果(検出信号)は演算制御ユニット200に送られる。
【0041】
なお、スウェプトソースタイプのOCT装置の場合には、低コヒーレンス光源を出力する光源の代わりに波長掃引光源が設けられるとともに、干渉光をスペクトル分解する光学部材が設けられない。一般に、OCTユニット100の構成については、光コヒーレンストモグラフィのタイプに応じた公知の技術を任意に適用することができる。
【0042】
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、たとえば1040〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光L0として用いてもよい。
【0043】
光源ユニット101は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、LEDや、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含んで構成される。
【0044】
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて信号光LSと参照光LRに分割される。
【0045】
参照光LRは、光ファイバ104により導かれて光減衰器(アッテネータ)105に到達する。光減衰器105は、公知の技術を用いて、演算制御ユニット200の制御の下、光ファイバ104に導かれる参照光LRの光量を自動で調整する。光減衰器105により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ104により導かれて偏波調整器(偏波コントローラ)106に到達する。偏波調整器106は、たとえば、ループ状にされた光ファイバ104に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ104内を導かれる参照光LRの偏光状態を調整する装置である。なお、偏波調整器106の構成はこれに限定されるものではなく、任意の公知技術を用いることが可能である。偏波調整器106により偏光状態が調整された参照光LRは、ファイバカプラ109に到達する。
【0046】
ファイバカプラ103により生成された信号光LSは、光ファイバ107により導かれ、コリメータレンズユニット40により平行光束とされる。更に、信号光LSは、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に到達する。そして、信号光LSは、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに照射される。信号光LSは、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる信号光LSの後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれ、光ファイバ108を経由してファイバカプラ109に到達する。
【0047】
ファイバカプラ109は、信号光LSの後方散乱光と、光ファイバ104を経由した参照光LRとを干渉させる。これにより生成された干渉光LCは、光ファイバ110により導かれて出射端111から出射される。更に、干渉光LCは、コリメータレンズ112により平行光束とされ、回折格子113により分光(スペクトル分解)され、集光レンズ114により集光されてCCDイメージセンサ115の受光面に投影される。なお、
図2に示す回折格子113は透過型であるが、たとえば反射型の回折格子など、他の形態の分光素子を用いることも可能である。
【0048】
CCDイメージセンサ115は、たとえばラインセンサであり、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ115は、この電荷を蓄積して検出信号を生成し、これを演算制御ユニット200に送る。
【0049】
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。
【0050】
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ115から入力される検出信号を解析して眼底Efの断層像を形成する。そのための演算処理は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様である。
【0051】
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、眼底Efの断層像を表示装置3に表示させる。
【0052】
また、眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15及びLED51、61の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31、43の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、光路長変更部41の移動制御、ガルバノスキャナ42の動作制御などを行う。
【0053】
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、光減衰器105の動作制御、偏波調整器106の動作制御、CCDイメージセンサ115の動作制御などを行う。
【0054】
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼底解析装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、たとえば断層像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
【0055】
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、2つ以上の筐体に別れて構成されていてもよい。
【0056】
〔制御系〕
眼底解析装置1の制御系の構成について
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
【0057】
(制御部)
眼底解析装置1の制御系は、制御部210を中心に構成される。制御部210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。
【0058】
(主制御部)
主制御部211は前述の各種制御を行う。特に、主制御部211は、眼底カメラユニット2の合焦駆動部31A、光路長変更部41及びガルバノスキャナ42、更にOCTユニット100の光源ユニット101、光減衰器105及び偏波調整器106を制御する。
【0059】
合焦駆動部31Aは、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。なお、主制御部211は、図示しない光学系駆動部を制御して、眼底カメラユニット2に設けられた光学系を3次元的に移動させることもできる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの眼球運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、装置光学系の位置を眼球運動に追従させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0060】
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0061】
(記憶部)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、断層像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、被検眼が左眼であるか右眼であるかを示す左右眼情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼底解析装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0062】
(画像形成部)
画像形成部220は、CCDイメージセンサ115からの検出信号に基づいて、眼底Efの層構造を描写する2次元断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、分散補償、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部220は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。制御部211は、画像形成部220により形成された2次元断層像の画像データを記憶部212に記憶させる。
【0063】
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。
【0064】
(画像処理部)
画像処理部230は、眼底Efの断層像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正等の各種補正処理を実行する。また、画像処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
【0065】
画像処理部230は、2次元断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Efの3次元断層像を形成する。なお、3次元断層像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元断層像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元断層像を形成する。表示部240A等の表示デバイスには、この擬似的な3次元断層像が表示される。
【0066】
また、3次元断層像の画像データとして、複数の2次元断層像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の2次元断層像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0067】
制御部211は、上記のようにして形成された3次元断層像(ボリュームデータ、擬似的な3次元断層像、スタックデータ等)を記憶部212に記憶させる。
【0068】
画像処理部230は、眼底Efの黄斑及びその周辺部位を描出する断層像を解析してドルーゼンの状態を取得するための解析処理を行う。そのための構成として、画像処理部230は、層領域特定部231、近似曲線演算部232、突出領域特定部233、連結領域特定部234、及び形態情報生成部235を有する。
【0069】
(層領域特定部)
層領域特定部231は、眼底Efの断層像の画素の画素値に基づいて、この断層像において網膜色素上皮層に相当する画像領域を特定する。この画像領域を層領域と呼ぶ。
【0070】
層領域特定部231は、たとえば特許文献5と同様の処理を実行して層領域を特定する。この処理について簡単に説明する。層領域特定部231は、まず、階調変換処理、画像強調処理、閾値処理、コントラスト変換処理、二値化処理、エッジ検出処理、画像平均化処理、画像平滑化処理、フィルタ処理などの前処理を断層像に施して、この断層像が描出する層構造を明瞭化する。
【0071】
次に、層領域特定部231は、前処理が施された断層像を構成する画素の画素値(たとえば輝度値)を、眼底Efの深度方向(z軸方向)に沿って一列ずつ解析し、隣接する層の境界位置に相当する画素を特定する。このとき、深度方向にのみ広がりを有するフィルタ(たとえば微分フィルタ)を用いて層の境界位置に相当する画素を特定することができる。なお、深度方向及びそれに直交する方向の二方向に広がるエリアフィルタを用いて画素のエッジ検出を行うようにしてもよい。
【0072】
層領域特定部231は、このような処理により眼底Efの幾つかの層に相当する画像領域を特定する。更に、層領域特定部231は、特定された幾つかの画像領域のうちから網膜色素上皮層に相当するものを特定する。この処理の例を説明する。断層像中において、網膜表面側から数えて幾つ目の明るい層が網膜色素上皮層に相当しているかは、臨床的に取得された多数の眼底の断層像から既知である。よって、解析対象の断層像について、網膜表面をまず特定し、この網膜表面の側から明るい層の数をカウントし、所定のカウント値に相当する層が目的の層領域となる。
【0073】
層領域の別の特定方法として、網膜表面から奥行方向に向かって網膜色素上皮層までの標準的な距離に基づいて、解析対象の断層像中の層領域を特定してもよい。また、断層像中において、眼底Efの各層の明るさには差異があるので、当該差異を考慮して層領域を特定することができる。たとえば、明るく描写される層のうち網膜色素上皮層がN番目に明るく描写される場合、解析対象の断層像中に特定された層に相当する画像領域のうちN番目に明るいものを特定して層領域とすることができる。なお、層領域の特定方法はここに例示したものには限定されず、目的の層領域を特定可能であればその手法は問わない。
【0074】
なお、解析対象の断層像は2次元又は3次元の断層像である。2次元断層像を解析する場合、層領域は、(層領域の厚みを無視すると)略曲線状の画像領域として特定される。一方、3次元断層像を解析する場合、層領域は、(層領域の厚みを無視すると)略曲面状の画像領域として特定される。ここでは、2次元断層像を解析する場合について詳しく説明する。3次元断層像を解析する場合については変形例として後述する。
【0075】
層領域特定部231は、特定された層領域の情報、たとえば断層像中における層領域の位置情報(座標値)を生成する。なお、断層像から層領域を抽出するようにしてもよい。また、特定された層領域の形状を表す画像情報(たとえばワイヤモデル等)を生成してもよい。いずれにしても、層領域特定部231は、少なくとも、断層像中における網膜色素上皮層に相当する層領域を特定するものであればよい。
【0076】
(近似曲線演算部)
断層像における層領域(曲線状の画像領域)の特定結果は近似曲線演算部232に入力される。近似曲線演算部232は、この層領域の形状に基づいて、この形状を近似する曲線を求める。この曲線を近似曲線と呼ぶ。近似曲線は、この断層像が示す断面にドルーゼンが存在しないと仮定した場合における網膜色素上皮層の推定形状を表す。
【0077】
当該断面にドルーゼンが存在しない場合、特定される層領域は、少なくとも大局的には奥行方向に凸な曲線として断層像中に描出される。一方、当該断面にドルーゼンが存在する場合、特定される層領域にはドルーゼンに相当する凹凸が描出される。近似曲線は、このような凹凸を無視した層領域の大局的な形状を表すものである。
【0078】
このような近似曲線を求めるために、近似曲線演算部232には、特徴部位特定部232a、特徴部位補間部232b、自由曲線演算部232c、及び補正部232dが設けられている。また、補正部232dには、直線部位特定部232e及び第1変形部232fの組と、曲線部位特定部232g及び第2変形部232hの組と、突出判定部232i及び第3変形部232jの組とが設けられている。
【0079】
(特徴部位特定部)
特徴部位特定部232aは、特定された層領域中の画素の画素値に基づいて、この層領域の形状に基づく複数の特徴部位を特定する。この処理の例を、
図5A〜
図5Cを参照しつつ説明する。
【0080】
まず、
図5Aに示すように、特徴部位特定部232aは、層領域300の形状に基づいて、奥行方向(+z方向)における層領域300中の最深部位P0を特定する。この処理は、たとえば、層領域300中の各画素の座標値を参照し、z座標値が最大の画素を特定して最深部位P0に設定することで実行できる。異なる手法として、解析対象の断層像において、奥行方向に直交する直線を+z方向から−z方向に移動させていき、この直線に最初に接する層領域中の位置を最深部位に設定するようにしてもよい。このようにして特定された最深部位P0は層領域300の特徴部位とされる。
【0081】
次に、特徴部位特定部232aは、最深部位P0を通過しかつ層領域300に接する直線を求め、この直線と層領域300との接点を特徴部位とする。この処理の具体例を説明する。
図5Bに示すように、最深部位P0を通過する直線Lを最深部位P0を中心として回転させていく。
図5Bは、直線Lを時計回りrに回転させる場合を示している。
【0082】
このように直線Lを回転させていくと、
図5Cに示すように、或る段階で直線Lが層領域300に接する。このときの直線Lが、上記「最深部位P0を通過しかつ層領域300に接する直線」に相当する。この接点P1は層領域300の特徴部位とされる。なお、他の特徴部位は全て最深部位P0よりも−z側に位置するので、たとえば最深部位P0を通過しz座標軸に直交する位置から直線Lを回転させれば十分である。また、直線Lを逆方向(反時計回り)に回転させていくことにより、最深部位P0に対して特徴部位P1と反対側に位置する特徴部位を特定することができる。
【0083】
このような処理を繰り返すことにより層領域300の複数の特徴部位Pj(j=0、1、2、・・・、J)が特定される。なお、上記処理の反復方法としては、たとえば次の2つが考えられる。なお、他の方法で複数の特徴部位Pjを特定することも勿論可能である。
【0084】
第1の反復方法として、常に最深部位P0を通過する直線Lを考慮し、直線Lと層領域300との接点を順次に特定していくことができる。その場合、直線Lの回転に伴う第1番目の接点、第2番目の接点、第3番目の接点、・・・というように順次に接点(特徴部位)が特定されていく。
【0085】
第2の反復方法として、直線Lの回転中心を順次に変更していくことができる。つまり、最初は最深部位P0を中心として直線Lを回転させて第1の接点を特定する。次に、この第1の接点を中心として同様に直線Lを回転させて第2の接点を特定する。続いて、この第2の接点を中心として同様に直線Lを回転させて第3の接点を特定する。このようにして複数の接点(特徴部位)が順次に特定されていく。
【0086】
上記のようにして特定される特徴部位の個数は任意であるが、その個数が多いほど下記の処理の精度は向上する。一方、特徴部位の特定個数が増加するほど、処理に必要なリソースが増大する。
【0087】
(特徴部位補間部)
特徴部位補間部232bは、層領域の特徴部位を追加する処理を行う。この処理は、たとえば、常に実行されるものではなく、必要に応じて実行されるものである。以下、2種類の補間処理を説明する。
【0088】
第1の補間処理は、後段の自由曲線演算処理の要請に従うものである。すなわち、特徴部位に基づき自由曲線を求めるには、その方程式を解くために必要な特徴部位の最小数がある。この補間処理は、特徴部位特定部232aにより特定された特徴部位の個数が、この最低数未満である場合に実行される。なお、自由曲線の演算に必要な特徴部位の最小数は、求められる自由曲線の種類に応じて予め設定されている。その具体例として、自由曲線が3次スプライン曲線である場合、最小数は4に設定される。以上の準備の下、第1の補間処理は、たとえば次のようにして行われる。
【0089】
まず、特徴部位補間部232bは、特徴部位特定部232aにより特定された特徴部位の個数が、所定の最小数未満であるか判断する。特定された個数が最小数以上である場合、第1の補間処理は実行されない。
【0090】
特定された個数が最小数未満である場合、特徴部位補間部232bは、最小数と特定された個数との差として得られる個数だけ、新たな特徴部位を追加する。新たな特徴部位としては、たとえば、現時点までに得られている特徴部位を連結して形成される折れ線上において、層領域に最も近い点(奥行方向、つまりz方向における最近接点)が選択される。つまり、1番目に追加される特徴部位は、特徴部位特定部232aにより特定された特徴部位を連結してなる折れ線上において、層領域に最も近い点である。また、2つ以上の特徴部位を追加する場合、i(≧2)番目に追加される特徴部位は、特徴部位特定部232aにより特定された特徴部位及びi−1番目までに追加された特徴部位を連結してなる折れ線上において、層領域に最も近い点である。
【0091】
なお、特徴部位特定部232aにより1つしか特徴部位が特定されなかった場合には上記のような折れ線を形成することはできない。この場合、特徴部位補間部232bは、層領域上の任意の点、たとえば、断層像のフレーム(描画枠)の端部(縁部)と層領域との交点を、新たな特徴部位として追加することができる。この処理は、フレームの端部において層領域が突出している場合にも適用できる。以上が第1の補間処理の例である。
【0092】
第2の補間処理について説明する。この補間処理は、自由曲線の近似の確からしさ(確度)の要請に従うものである。具体的には、隣接する2つの特徴部位の間隔が広すぎると、これら特徴部位の間における層領域と近似曲線との間の誤差が大きくなってしまう。第2の補間処理は、特徴部位の間隔が広い場合に、それらの間に新たな特徴部位を追加するものである。この処理の例を以下に説明する。なお、特徴部位特定部232aにより1つしか特徴部位が特定されなかった場合、第1の補間処理と同様に、層領域上の任意の点(たとえばフレーム端部と層領域との交点)が新たな特徴部位としてまず追加される。
【0093】
まず、特徴部位補間部232bは、特徴部位特定部232aにより特定された特徴部位について、隣接する2つの特徴部位の間の距離を求める。この距離は、たとえば、奥行方向(z方向)に直交する断面方向(つまり信号光LSの走査方向)における距離である。なお、断層像が示す断面における2つの特徴部位の間の空間的な距離であってもよい。
【0094】
次に、特徴部位補間部232bは、求められた距離が所定値以上であるか判断する。距離が所定値未満である場合には、この特徴部位のペアに対する第2の補間処理は実行されず、必要に応じて他のペアに対する処理に移行する。
【0095】
一方、2つの特徴部位の間の距離が所定値以上である場合、特徴部位補間部232bは、当該2つの特徴部位の間に新たな特徴部位を追加する。新たな特徴部位を追加する位置は、たとえば、2つの特徴部位の中間位置とされる。また、z方向における2つの特徴部位の相対位置や、他の特徴部位の位置などの要因を考慮して追加位置を決定するようにしてもよい。また、2つの特徴部位の間の距離が所定値の2倍以上である場合、これら特徴部位の間に新たな特徴部位を2つ以上追加するようにしてもよい。特徴部位補間部232bは、全ての隣接する特徴部位のペアの間隔が所定値未満になるまで、上記したような補間処理を繰り返し行う。以上が第2の補間処理の例である。
【0096】
(自由曲線演算部)
自由曲線演算部232cは、複数の特徴部位に基づく自由曲線を求める。この複数の特徴部位は、特徴部位特定部232aにより特定された特徴部位、及び、必要に応じて特徴部位補間部232bにより追加された特徴部位である。
【0097】
自由曲線は、一般に、平面上のいくつかの点を所定の順序で通過するように定義された滑らかな曲線である。自由曲線の例としてスプライン曲線やベジェ曲線がある。この実施形態では、自由曲線としてスプライン曲線、特に3次スプライン曲線が用いられる。なお、スプライン曲線は、一般に、与えられた複数の制御点を通過する滑らかな曲線であり、隣接する2つの制御点を両端とする区間(セグメント)に対して個別の多項式を用いて求められる曲線である。また、n次スプライン曲線は、n次多項式を用いるものである。また、n次ベジェ曲線は、一般に、n個の制御点から得られるn−1次の曲線である。この実施形態では、各特徴部位を制御点として自由曲線の演算が行われる。
【0098】
(補正部)
補正部232dは、自由曲線演算部232cにより求められた自由曲線を補正する。この補正処理には様々なものがあるが、ここでは3種類の補正処理を説明する。第1の補正処理は、直線部位特定部232e及び第1変形部232fにより行われる。第2の補正処理は、曲線部位特定部232g及び第2変形部232hにより行われる。第3の補正処理は、突出判定部232i及び第3変形部232jにより行われる。これら補正処理は、数学的に求められた自由曲線を、医学的な知見に基づき補正するものと言える。
【0099】
なお、自由曲線演算部232cにより求められた自由曲線、又は、必要に応じて第1〜第3の補正処理の少なくとも1つを施して得られた曲線が、当該断面にドルーゼンが存在しないと仮定した場合における網膜色素上皮層の推定形状を表す近似曲線となる。
【0100】
(第1の補正処理:直線部位特定部、第1変形部)
第1の補正処理について説明する。第1の補正処理では、層領域の一部が(ほぼ)直線状になっている場合に、自由曲線の当該部位を補正するものである。自由曲線の演算の特性により、層領域が直線状になっている部位では、自由曲線が、層領域よりも奥行方向(+z方向)に配置され、かつ奥行方向(+z方向)に凸になることがある。このような自由曲線を近似曲線として採用すると、この直線状の部位をドルーゼンとして検出してしまうおそれがある。第1の補正処理は、このような事態を回避するためのものである。以下、この補正処理の例を説明する。
【0101】
直線部位特定部232eは、層領域特定部231により特定された層領域において実質的に直線的な部位を特定する。この処理は、たとえば、層領域の各点における傾き(微分値)を算出し、傾きが実質的に一定の区間を探索することにより行うことができる。なお、傾きが実質的に一定とは、傾きが完全に一定の区間だけでなく、傾きの変化が所定の閾値未満である場合も含むものとする。このようにして特定される層領域の部位を直線部位と呼ぶ。
【0102】
第1変形部232fは、自由曲線が直線部位よりも奥行方向(+z方向)に位置するか否か判定する。この処理は、たとえば、直線部位のz座標値と、この直線部位に対応する自由曲線の部位のz座標値とを比較することにより行われる。自由曲線が直線部位よりも奥行方向の逆方向(−z方向)に位置すると判定された場合、第1の補正処理は実行されない。
【0103】
自由曲線が直線部位よりも奥行方向に位置すると判定された場合、第1変形部232fは、自由曲線の当該対応部位を直線部位の位置に合わせるように自由曲線を変形する。その第1の処理例として、自由直線の対応部位を直線部位に置換するように対応部位及びその近傍部位を変形することができる。具体的には、たとえば、直線部位の両端位置等に制御点を新たに設定し、この新たな制御点を加味して対応部位の片側又は両側の自由曲線を新たに求め、かつ、直線部位を近似曲線の一部として採用する。この処理によれば、(実質的に)直線からなる部位を含む近似曲線が得られる。
【0104】
第2の処理例として、直線部位上に1つ以上の制御点を新たに設定し、この制御点を加味して新たな自由曲線を求める。この処理によれば、直線部位を自由曲線で近似することになる。なお、新たに追加される制御点の個数は、たとえば直線部位の長さ等に基づいて任意に設定することができる。
【0105】
(第2の補正処理:曲線部位特定部、第2変形部)
第2の補正処理について説明する。第2の補正処理では、自由曲線が層領域よりも奥行方向の逆方向(−z方向)に位置する場合に、自由曲線の当該部位を補正するものである。前述のように、自由曲線に基づき得られる近似曲線は、ドルーゼンが存在しないと仮定した場合における層領域の位置を推定するものである。よって、近似曲線は、層領域と同じ位置か、或いは層領域よりも奥行方向(+z方向)に位置していることが好適である。第2の補正処理は、この条件を満足しない自由曲線の部位を、この条件を満足するように変形するものである。以下、この補正処理の例を説明する。
【0106】
曲線部位特定部232gは、自由曲線において層領域よりも奥行方向の逆方向(−z方向)に位置する部位を特定する。この処理は、たとえば、自由曲線のz座標値と層領域のz座標値とを比較することにより、容易に行うことができる。
【0107】
第2変形部232hは、曲線部位特定部232gにより特定された自由曲線の部位を層領域の位置に合わせるように自由曲線を変形する。この処理は、第1の補正処理と同様に、変形のターゲット(層領域)への置換でもよいし、ターゲットに基づく新たな制御点を加味した自由曲線演算でもよい。
【0108】
(第3の補正処理:突出判定部、第3変形部)
第3の補正処理について説明する。第3の補正処理では、断層像のフレーム端部において層領域が突出している場合に、この突出部位の自由曲線を補正する。
【0109】
フレーム端部において層領域が突出している場合の例を
図6Aに示す。層領域300は、断層像のフレームFの右側端部において、奥行方向の逆方向(−z方向)に突出している。更に、層領域300の特徴部位として符号310及び320に示す点が得られたとする。ここで、特徴部位320は、特徴部位特定部232aにより特定されたものである。また、層領域300とフレームFの端部との交点である特徴部位310は、特徴部位補間部232bにより追加されたものである。
【0110】
図6Bの符号400は、これら特徴部位310及び320等に基づく自由曲線を示す。自由曲線400は、2つの特徴部位310及び320を通過するものであるから、
図6Bに示すように、突出部位の突出方向(−z方向)に傾斜したものとなる。すなわち、フレームFの端部に(便宜的に)設定された特徴部位310が自由曲線400の形状に影響を与え、その結果、突出部位の突出量を正確に測定することができなくなる。このような事態に対処するために第3の補正処理が実行される。以下、第3の補正処理の例を説明する。
【0111】
突出判定部232iは、断層像のフレームの端部近傍において層領域が奥行方向の逆方向(−z方向)に突出しているか判定する。この処理は、たとえば、(少なくともフレームの端部近傍において)層領域又は自由曲線の各点における傾き(微分値)を算出してその形状を求めることで実行できる。
【0112】
他の処理として、特徴部位補間部232bが層領域とフレーム端部との交点に特徴部位を追加した場合において、この新たな特徴部位(310)が、これに隣接する特徴部位(320)よりも−z方向に設定された場合に、断層像のフレーム端部近傍において層領域が奥行方向の逆方向(−z方向)に突出していると判定することも可能である。
【0113】
第3変形部232jは、層領域がフレーム端部近傍において突出していると判定された場合に、この突出部位に対応する自由曲線の部位を、フレームの中央側からの自由曲線の延長線に置換することで自由曲線を変形する。この処理の例を以下に説明する。
【0114】
図6Cを参照する。まず、第3変形部232jは、層領域とフレーム端部との交点に設定された特徴部位310に隣接する特徴部位320よりもフレーム中央側の所定位置に、制御点(基準制御点)410を設定する。基準制御点410としては、たとえば、フレームの横方向における中間点が用いられる。
【0115】
次に、第3変形部232jは、基準制御点410と特徴部位320との間を等分するように、基準制御点410と特徴部位320との間に所定個数の制御点を設定する。それにより、基準制御点410を含む複数の制御点と、特徴部位320とからなる点の組が得られる。この組に含まれる点の個数は、自由曲線の演算に必要な特徴部位の最小数以上とされる。また、隣接する点の間隔は比較的に広めに設定することができる。
図6Cに示す例では、3つの制御点410、420及び430と、特徴部位320とからなる組が設定されている。
【0116】
続いて、第3変形部232jは、得られた組に含まれる複数の点を制御点とする自由曲線を求める。
図6Cに示す4つの制御点320、410、420及び430を通過し、かつフレーム端部に至る3次スプライン曲線を求めることで、
図6Dに示す推定曲線500が得られる。推定曲線500は、層領域300の突出部位及びその近傍において定義される自由曲線であり、突出部位の突出量を測定するためのベースラインの推定位置を示すものである。
【0117】
次に、第3変形部232jは、自由曲線400のうち特徴部位320よりフレーム中央側の部分(内挿曲線)400aと、推定曲線500のうち特徴部位320よりフレーム端部側の部分(外挿曲線)500aとを、特徴部位320の位置において連結する(
図6Eを参照)。このようにして得られる曲線が、自由曲線400の変形結果として用いられる。
【0118】
他の処理例を説明する。まず、第3変形部232jは、層領域とフレーム端部との交点に設定された特徴部位(310)に隣接する特徴部位(320)から所定距離(たとえば当該隣接特徴部位のごく近傍)だけフレーム中央側の位置(基準位置)における、層領域の傾きを算出する。次に、第3変形部232jは、この基準位置とフレーム端部とを結び、かつ算出された傾きを有する線分を求める。そして、第3変形部232jは、突出部位に対応する自由曲線の部位、つまり交点に相当する特徴部位(310)と基準位置との間の部位を、この線分に置換する。
図6Fに示す補正線分510がこれに相当する。
【0119】
他の処理として、フレームの端部上の位置、又は突出部位中の任意の位置に、新たな特徴部位を設定し、この新たな特徴部位を加味して新たな自由曲線を求めることも可能である。
【0120】
(突出領域特定部)
突出領域特定部233は、近似曲線演算部232により求められた近似曲線と、層領域とに基づいて、断層像中の突出領域を特定する。突出領域とは、近似曲線が層領域よりも眼底Efの奥行方向(+z方向)に位置し、かつ、奥行方向における近似曲線と層領域との間の距離が所定閾値以上である画像領域を示す。つまり、突出領域とは、近似曲線に対して層領域が大きく−z方向に突出している領域を示す。
【0121】
なお、近似曲線に対して−z方向に突出する画像領域全体を突出領域として特定することもできるが、この実施形態では、網膜色素上皮層の自然な凹凸やノイズ等を回避するために、近似曲線から所定距離以上突出している部分のみを検出することにより、突出領域の特定精度の向上を図る。そのために、突出領域特定部233には、距離算出部233a、距離判断部233b及び画像領域特定部233cが設けられる。
【0122】
(距離算出部)
距離算出部233aは、近似曲線上の各点と層領域との間の奥行方向における距離を算出する。この処理は、近似曲線上の全ての点(画素)について実行する必要はなく、所定の画素間隔毎(たとえば5ピクセル毎)に行うようにしてもよい。距離の算出処理は、たとえば、近似曲線上の点(画素)と層領域上の対応点(画素)との間の画素数をカウントし、隣接する画素の間隔を単位距離と当該カウント結果とに基づいて行うことができる。また、画像の計測倍率と距離計測対象の画素間の画像中における距離とに基づいて求めてもよい。なお、距離算出部233aにより演算される距離は、画像中の距離(xyz座標系で定義される距離や、画素の間隔)を実空間の距離に換算したものであってもよいし、画像中の距離をそのまま使用してもよい。
【0123】
(距離判断部)
距離判断部233bは、距離算出部233aにより算出された各距離が所定閾値以上であるか判断する。この閾値は、たとえば多数の臨床例に基づいて事前に設定される。また、装置の計測精度などを考慮して閾値を設定することもできる。
【0124】
距離判断部233bは、距離が所定閾値以上と判断された近似曲線上の点(画素)に識別情報(たとえばフラグやタグ)を付与する。
【0125】
(画像領域特定部)
画像領域特定部233cは、距離判断部233bにより識別情報が付与された近似曲線上の画素の集合、つまり距離が所定閾値以上と判断された近似曲線上の点の集合と、層領域とに挟まれた画像領域を特定して目的の突出領域とする。
【0126】
このようにして特定される突出領域の例を
図7に示す。突出領域600は、層領域300と近似曲線400とに挟まれた画像領域であって、層領域300と近似曲線400との間の距離が所定閾値以上である画像領域である。
図7に示すように、この段階においては、層領域300と近似曲線400に挟まれた画像領域のうち、これらの共有点である特徴部位330及び340に近い裾野の部分(距離が所定閾値未満である部分)は突出領域とは判定されない。なお、
図7に示す範囲では層領域のピークは1つしか存在しないが、ピークが2つ以上存在する場合には、特徴部位の近傍以外にも突出領域とは判定されない部分が存在することがある。
【0127】
(連結領域特定部)
連結領域特定部234は、突出領域特定部233により特定された突出領域を含み、かつ近似曲線及び層領域に囲まれた連結領域を特定する。この処理は、たとえば、画素に対するラベリング処理により実行される。このラベリング処理は、たとえば4連結(4近傍)又は8連結(8近傍)のラベリング処理である。
【0128】
図7の例に対して上記処理を適用した場合に特定される連結領域を
図8に示す。
図7に示す突出領域600は、層領域300と近似曲線400とに挟まれた画像領域から、層領域300と近似曲線400との間の距離が所定閾値未満である部分を除いた画像領域である。連結領域特定部234は、この突出領域600を含み、かつ、近似曲線400及び層領域300に囲まれた連結領域、つまり
図8において符号700で示す連結領域を特定する。
【0129】
なお、
図7に示す段階では、特徴部位330及び340に近い裾野の部分を除いた突出領域600が特定されるが、
図8に示す段階では、この裾野の部分も含めた連結領域700が特定される。このような段階的処理を行うことで、ドルーゼンに相当すると考えられる画像領域全体が好適に検出される。
【0130】
なお、上記の例では、突出量が大きい突出領域を特定した後、各突出領域を含む連結領域をそれぞれ特定しているが、他の処理によって同様の結果を得ることも可能である。たとえば、層領域と近似曲線とに挟まれた連結領域をそれぞれ特定し、各連結領域について突出量が大きい部分、つまり奥行方向における層領域と近似曲線との間の距離が所定閾値以上である部位が存在するか判定することにより、目的の連結領域を特定することが可能である。この発明の要旨にはこのような変形も含まれる。
【0131】
(形態情報生成部)
形態情報生成部235は、連結領域特定部234により特定された連結領域の形態を表す形態情報を生成する。形態情報としては、たとえば、特定された連結領域の個数、サイズ、分布状態などがある。形態情報生成部235は、乳頭領域判定部235a、分布画像形成部235b、カウント部235c及びサイズ算出部235dを有する。
【0132】
(乳頭領域判定部)
乳頭領域判定部235aは、断層像を解析して、眼底Efの視神経乳頭に相当する乳頭領域がこの断層像に含まれるか判定する。視神経乳頭は、眼底Efにおける奥行方向(+z方向)への凹みとして断層像に描出される。乳頭領域判定部235aは、このような形状が断層像に描出されているか否か判定するものである。また、眼底Efの深部(脈絡膜や強膜)が描出された断層像を解析する場合には、視神経乳頭の深部に位置する組織の特徴的な形状が断層像に描出されているか否か判定するようにしてもよい。このような判定処理の例を以下に説明する。
【0133】
乳頭領域判定部235aは、断層像を解析して眼底Efの所定の特徴層に相当する特徴層領域を特定し、この特徴層領域の形状に基づいて乳頭領域が含まれるか判定する。特定対象の特徴層は、眼底Efを構成する任意の層組織、つまり網膜を構成する任意の層組織や、脈絡膜や、強膜である。網膜を構成する層組織としては、内境界膜、神経繊維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、視細胞層、網膜色素上皮層がある。なお、視神経乳頭の特徴的形状が明確に反映される層組織を特徴層として採用することが望ましい。また、断層像において明瞭に描出される層組織を特徴層として採用することが望ましい。そのような層組織として、眼底Efにおいて硝子体との境界をなす内境界膜がある。内境界膜に相当する画像領域を内境界膜領域と呼ぶ。
【0134】
視神経乳頭の一部が描出された断層像の例を
図9に示す。断層像Gには、層領域300及び近似曲線400とともに、内境界膜領域800が示されている。内境界膜領域800の右側端部の+z方向への陥没部分810は、視神経乳頭の陥没形状に起因するものとする。一方、
図9に示すように、視神経乳頭の近傍では網膜色素上皮層が−z方向に湾曲しているため、この部分が連結領域700として検出される可能性がある。
【0135】
乳頭領域判定部235aは、内境界膜領域において奥行方向(+z方向)に陥没している部位が存在するか判定し、陥没部位が存在すると判定された場合に乳頭領域が含まれると判定する。この処理の例として、乳頭領域判定部235aは、断層像Gのフレーム端部における内境界膜領域800の+z方向への陥没量を求める。この陥没量は、たとえば、内境界膜領域800において最も−z方向に位置する点と、最も+z方向に位置する点との差として算出される。この変位量が所定閾値以上である場合、乳頭領域判定部235aは、断層像Gに乳頭領域が含まれると判定する。他の処理として、内境界膜領域800に湾曲部分(たとえば所定値以上の曲率で湾曲している部分)が存在するか判断し、湾曲部分が存在する場合に乳頭領域が含まれると判定することも可能である。
【0136】
乳頭領域の判定において、被検眼Eが左眼であるか右眼であるかを加味して処理を行うことが可能である。一般に、眼底EfのOCT計測の計測対象は、視神経乳頭、又は黄斑及びその近傍部位である。視神経乳頭が計測対象の断層像においては、乳頭領域の判定を行う必要は特にない。一方、黄斑及びその近傍部位が計測対象の断層像においては、被検眼が左眼であればフレームの左側端部近傍に視神経乳頭が描出されている可能性があり、被検眼が右眼であればフレームの右側端部近傍に視神経乳頭が描出されている可能性がある。このような事項を考慮して、次のような構成を適用することが可能である。
【0137】
記憶部212には、被検眼Eが左眼であるか右眼であるかを示す左右眼情報が記憶されているものとする。左右眼情報は、ユーザが手入力してもよいし、電子カルテ等から自動で取得してもよい。また、OCT計測を実施したときに、たとえば装置光学系と顎受け(額当て)との位置関係に基づいて被検眼Eが左眼であるか右眼であるか自動判定し、その判定結果を左右眼情報として断層像に関連付けて記憶することもできる。
【0138】
乳頭領域判定部235aは、左右眼情報に基づいて被検眼Eが左眼であるか右眼であるか認識する。被検眼Eが左眼である場合、乳頭領域判定部235aは、断層像のフレームの少なくとも左側端部近傍を解析することにより、乳頭領域が含まれるか否か判定する。一方、被検眼Eが右眼である場合、乳頭領域判定部235aは、断層像のフレームの少なくとも右側端部近傍を解析することにより、乳頭領域が含まれるか否か判定する。
【0139】
このように被検眼Eが左眼であるか右眼であるかに応じて処理を切り替えることで、処理に供されるデータ量を低減させることができるので、処理時間の短縮や処理リソースの低減を図ることが可能である。
【0140】
断層像に乳頭領域が含まれているか否か判定する処理の他の例を説明する。OCT計測においては、信号光LSが走査された領域(走査線)を示す情報(走査位置情報)が得られる。また、計測中には、リアルタイムで眼底像が得られる。乳頭領域判定部235aは、走査位置情報と眼底像に基づいて、断層像に対応する走査線が視神経乳頭の少なくとも一部を通過しているか、つまり断層像に視神経乳頭の少なくとも一部が描出されているか判定することができる。このような判定処理によって、乳頭領域が断層像に含まれるか判定することが可能である。
【0141】
乳頭領域判定部235aにより断層像に乳頭領域が含まれると判定された場合、形態情報生成部235は、連結領域特定部により特定された連結領域のうち乳頭領域の近傍に位置する連結領域を除外して形態情報の生成を行う。ここで、除外される連結領域は、たとえば、乳頭領域の最も近くに位置する連結領域である。また、乳頭領域から所定距離だけ離れた範囲に含まれる連結領域を除外するようにしてもよい。それにより、視神経乳頭の近傍における層領域の湾曲部分をドルーゼンと誤検出することを防止できる。
【0142】
(分布画像形成部)
分布画像形成部235bは、連結領域特定部234により特定された連結領域の分布状態を表す分布画像を形成する。たとえば、単一の断層像における連結領域の分布を表す分布画像を形成することができる。この処理は、たとえば、連結領域を他の画像領域と異なる態様(表示色、表示輝度等)で呈示するものである。
【0143】
また、複数の断層像のそれぞれについて連結領域の特定がなされた場合、奥行方向に直交するxy平面における連結領域の分布状態を表す分布画像を形成することもできる。以下、xy平面における分布画像を形成する処理の例を説明する。
【0144】
複数の断層像は、たとえば後述の3次元スキャンを実行して得られる。3次元スキャンは、たとえばx方向に沿った、かつy方向に配列された複数の直線状の走査線に沿って信号光LSの照射位置を走査するスキャン形態である。3次元スキャンにより、各走査線に沿った断面における断層像が複数枚得られる。
【0145】
分布画像形成部235bは、これら断層像のそれぞれについて特定された連結領域に基づいて、xy平面における連結領域の分布画像を形成する。各断層像において、各連結領域はx方向(走査線方向)及びz方向に広がる画像領域である。また、複数の断層像はy方向に配列されている。複数の断層像をy方向に配列させると、各断層像中の連結領域が組み合わされて連結領域の2次元分布(xy平面における分布)が得られる。
【0146】
このとき、隣接する断層像における連結領域がy方向に隣接している場合には、これら連結領域間の画素を連結領域に設定してもよい。この処理は、特に、隣接する断層像の間隔(走査線の間隔)が十分狭い場合に有効である。
【0147】
分布画像形成部235bは、たとえば、連結領域に相当する画素とそれ以外の画素との画素値を相違させて表現することにより分布画像を形成する。一例として、連結領域とそれ以外の領域とを二値で区別して表現して二値画像を形成し、これを分布画像とすることができる。
【0148】
このようにして形成される分布画像の例を
図10に示す。分布画像900は、信号光LSの入射方向(−z方向)から眼底Efをみたときの連結領域Tの分布状態を表している。連結領域Tは、複数の連結領域Tk(k=1~K)からなる。分布画像900は、複数の走査線Ri(i=1〜m)を断面とする複数の断層像に基づいて形成される。
【0149】
(カウント部)
カウント部235cは、連結領域特定部234により特定された連結領域の個数をカウントする。この処理は、たとえば、分布画像に含まれる複数の連結領域(画素の集合)に対して所定の順序(たとえば分布画像の左上から右下に向かう順序)で番号1、2、・・・を順次に付与し、付与された最大の番号を連結領域の個数とすることにより実行される。なお、連結領域を特定する処理で実行されるラベリング処理において、連結領域をカウントする処理を並行して行うようにしてもよい。
【0150】
(サイズ算出部)
サイズ算出部235dは、連結領域特定部234により特定された各連結領域のサイズを算出する。連結領域のサイズを表す指標としては、面積、径(直径、半径等)、体積などがある。以下、連結領域のサイズ算出処理の例を説明する。
【0151】
まず、連結領域の面積を求める処理例を説明する。各連結領域は、連結と判断された複数の画素の集合である。各画素には予め面積(単位面積)が設定されている。この単位面積は、分布画像や断層像に対して任意に設定されたものであってよい。たとえば、計測倍率を考慮して、一つの画素に相当する実空間における面積を単位面積として設定することができる。サイズ算出部235dは、各連結領域に含まれる画素数と単位面積との積を演算して当該連結領域の面積とする。
【0152】
次に、連結領域の径を求める処理例を説明する。サイズ算出部235dは、まず上記のように面積を算出する。そして、サイズ算出部235dは、この面積を有する円の直径(又は半径)を当該連結領域の径とする。なお、連結領域に含まれる最長の線分を探索し、この線分の長さを当該連結領域の径として採用することも可能である。これら以外にも、連結領域を特徴づけることが可能な任意の距離を径として採用することができる。
【0153】
次に、連結領域の体積を求める処理例を説明する。前述のように、近似曲線上の各点と層領域との間の奥行方向における距離は、距離算出部233aにより既に算出されている。サイズ算出部235dは、各連結領域にわたって当該距離を積分することにより、この連結領域の体積を算出する。
【0154】
なお、サイズの算出方法は上記のものに限定されるものではない。また、サイズを表す指標(次元)も上記のものに限定されるものではない。
【0155】
以上のように機能する画像処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムが予め格納されている。
【0156】
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス240には、表示部240Aと操作部240Bとが含まれる。表示部240Aは、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスや表示装置3を含んで構成される。操作部240Bは、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。操作部240Bには、眼底解析装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、操作部240Bは、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。また、表示部240Aは、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0157】
なお、表示部240Aと操作部240Bは、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部240Bは、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部240Bに対する操作内容は、電気信号として制御部210に入力される。また、表示部240Aに表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部240Bとを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
【0158】
〔信号光の走査及び断層像について〕
ここで、信号光LSの走査及び断層像について説明しておく。
【0159】
眼底解析装置1による信号光LSの走査態様としては、たとえば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャンなどがある。これらの走査態様は、眼底の観察部位、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して適宜に選択的に使用される。
【0160】
水平スキャンは、信号光LSを水平方向(x方向)に走査させるものである。水平スキャンには、垂直方向(y方向)に配列された複数の水平方向に延びる走査線に沿って信号光LSを走査させる態様も含まれる。この態様においては、走査線の間隔を任意に設定することが可能である。また、隣接する走査線の間隔を十分に狭くすることにより、前述の3次元断層像を形成することができる(3次元スキャン)。垂直スキャンについても同様である。
【0161】
十字スキャンは、互いに直交する2本の直線状の軌跡(直線軌跡)からなる十字型の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。放射スキャンは、所定の角度を介して配列された複数の直線軌跡からなる放射状の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。なお、十字スキャンは放射スキャンの一例である。
【0162】
円スキャンは、円形状の軌跡に沿って信号光LSを走査させるものである。同心円スキャンは、所定の中心位置の周りに同心円状に配列された複数の円形状の軌跡に沿って信号光LSを走査させるものである。円スキャンは同心円スキャンの一例である。螺旋スキャンは、回転半径を次第に小さく(又は大きく)させながら螺旋状(渦巻状)の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。
【0163】
ガルバノスキャナ42は、互いに直交する方向に信号光LSを走査するように構成されているので、信号光LSをx方向及びy方向にそれぞれ独立に走査できる。更に、ガルバノスキャナ42に含まれる2つのガルバノミラーの向きを同時に制御することで、xy面上の任意の軌跡に沿って信号光LSを走査することが可能である。それにより、上記のような各種の走査態様を実現できる。
【0164】
上記のような態様で信号光LSを走査することにより、走査線(走査軌跡)に沿う方向と眼底深度方向(z方向)とにより張られる面における断層像を取得することができる。また、特に走査線の間隔が狭い場合には、前述の3次元断層像を取得することができる。
【0165】
上記のような信号光LSの走査対象となる眼底Ef上の領域、つまりOCT計測の対象となる眼底Ef上の領域を走査領域と呼ぶ。3次元スキャンにおける走査領域は、複数の水平スキャンが配列された矩形の領域である。また、同心円スキャンにおける走査領域は、最大径の円スキャンの軌跡により囲まれる円盤状の領域である。また、放射スキャンにおける走査領域は、各スキャンラインの両端位置を結んだ円盤状(或いは多角形状)の領域である。
【0166】
[動作]
眼底解析装置1の動作について説明する。
図11は、眼底解析装置1の動作の一例を表す。
【0167】
(S1:OCT計測)
被検眼EのOCT計測を行なって眼底Efの断層像を取得する。
【0168】
(S2:層領域の特定)
層領域特定部231は、眼底Efの断層像の画素の画素値に基づいて、この断層像において網膜色素上皮層に相当する画像領域(層領域)を特定する。層領域特定部231により得られた情報は近似曲線演算部232に送られる。
【0169】
(S3:特徴部位の特定)
特徴部位特定部232aは、ステップ2で特定された層領域中の画素の画素値に基づいて、この層領域の形状に基づく複数の特徴部位を特定する。
【0170】
(S4:特徴部位の補間)
特徴部位補間部232bは、必要に応じ、層領域の特徴部位を追加する処理を行う。
【0171】
(S5:自由曲線の演算)
自由曲線演算部232cは、ステップ3で特定された特徴部位及びステップ4で追加された特徴部位に基づいて、自由曲線を求める。
【0172】
(S6:自由曲線の補正)
補正部232dは、必要に応じ、ステップ5で求められた自由曲線を補正する。それにより、断層像が示す断面にドルーゼンが存在しないと仮定した場合における網膜色素上皮層の推定形状を表す近似曲線が得られる。
【0173】
(S7:距離の算出)
距離算出部233aは、ステップ6(補正が行われない場合にはステップ5)で得られた近似曲線上の各点と層領域との間の奥行方向における距離を算出する。
【0174】
(S8:距離の判断)
距離判断部233bは、ステップ7で算出された各距離が所定閾値以上であるか判断する。
【0175】
(S9:突出領域の特定)
画像領域特定部233cは、ステップ8において距離が所定閾値以上と判断された近似曲線上の点の集合と、層領域とに挟まれた画像領域を特定する。この画像領域が突出領域となる。
【0176】
(S10:連結領域の特定)
連結領域特定部234は、ステップ9で特定された突出領域を含み、かつ近似曲線及び層領域に囲まれた連結領域を特定する。
【0177】
(S11:乳頭領域の判定)
乳頭領域判定部235aは、断層像を解析して、眼底Efの視神経乳頭に相当する乳頭領域がこの断層像に含まれるか判定する。乳頭領域が含まれると判定された場合、形態情報生成部235は、ステップ10で特定された連結領域のうちから、乳頭領域の近傍に位置する連結領域を除外する。
【0178】
(S12:形態情報の生成)
形態情報生成部235は、ステップ10で特定された連結領域(ステップ11で除外されたものを除く)の形態を表す形態情報を生成する。
【0179】
(S13:解析結果の出力)
画像処理部230は、ステップ12で生成された形態情報を含む解析結果呈示情報を生成する。主制御部211は、解析結果呈示情報に基づいて表示部240Aに解析結果を表示させる。この解析結果は、眼底Efにおけるドルーゼンの存在の有無を示す情報や、眼底Efに存在するドルーゼンのサイズや分布等を示す情報を含む。なお、解析結果呈示情報に基づいて解析レポートを印刷出力することも可能である。また、解析結果呈示情報や上記処理により得られた情報、更には患者や被検眼に関する情報などを外部装置に送信したり、記録媒体に記録させたりすることもできる。以上で、この動作例に係る処理は終了となる。
【0180】
[効果]
眼底解析装置1の効果について説明する。
【0181】
眼底解析装置1は、記憶部212と、層領域特定部231と、近似曲線演算部232と、突出領域特定部233と、連結領域特定部234と、形態情報生成部235とを有する。記憶部212には、眼底Efの層構造を描写する断層像が記憶される。層領域特定部231は、断層像の画素の画素値に基づいて、網膜色素上皮層に相当する当該断層像中の層領域を特定する。近似曲線演算部232は、層領域の形状に基づく近似曲線を求める。突出領域特定部233は、近似曲線が層領域よりも眼底Efの奥行方向に位置し、かつ奥行方向における近似曲線と層領域との間の距離が所定閾値以上である突出領域を特定する。連結領域特定部234は、この突出領域を含み、かつ近似曲線及び層領域に囲まれた連結領域を特定する。形態情報生成部235は、連結領域の形態を表す形態情報を生成する。
【0182】
このような眼底解析装置1によれば、ドルーゼンに相当すると考えられる画像領域を効果的に検出することが可能である。より具体的には、大きく突出している突出領域を特定することにより、ノイズ等に起因する小さな凹凸を除外してドルーゼンと考えられる画像領域を好適に検出することができる。また、このような突出領域を含む連結領域全体を検出することにより、ドルーゼンに相当すると考えられる画像領域を漏れ無く検出することができる。したがって、この実施形態によれば、眼底Efの断層像に基づいてドルーゼンを効果的に検出することが可能である。
【0183】
近似曲線演算部232は、層領域の形状に基づいて、層領域中の複数の特徴部位を特定する特徴部位特定部232aを含んでいてもよい。その場合、近似曲線演算部232は、特定された複数の特徴部位に基づいて近似曲線を求める。複数の特徴部位を考慮することにより、より高い確度や精度で近似曲線を求めることが可能となる。
【0184】
特徴部位特定部232aの構成例として次のものがある。特徴部位特定部232aが、層領域の形状に基づいて奥行方向における層領域中の最深部位を特定して特徴部位とし、この最深部位を通過しかつ層領域に接する直線を求め、層領域とこの直線との接点を更なる特徴部位とするように構成することが可能である。更に、特徴部位特定部232aが、最深部位を通過する直線を最深部位を中心として回転させていくことにより接点を順次に特定するように構成することが可能である。また、特徴部位特定部232aが、最深部位を通過する直線を最深部位を中心として回転させて接点を特定し、特定された接点を通過する直線をこの接点を中心として回転させて更なる接点を特定するように構成することが可能である。
【0185】
近似曲線演算部232は、特徴部位補間部232bを有していてもよい。特徴部位補間部232bは、特徴部位特定部232aにより特定された特徴部位のうち隣接する2つの特徴部位の間の距離を求める。更に、特徴部位補間部232bは、この距離が所定値以上である場合に、この2つの特徴部位の間に新たな特徴部位を追加する。このような補間処理を行うことにより、より高い確度や精度で近似曲線を求めることができる。
【0186】
近似曲線演算部232は、複数の特徴部位に基づく自由曲線を求め、この自由曲線に基づいて近似曲線を求めることができる。このとき、自由曲線は、スプライン曲線、特に3次スプライン曲線であってよい。自由曲線を求めることにより、高い確度や精度で近似曲線を求めることができる。
【0187】
自由曲線を求める場合において、以下のような処理を行なって自由曲線を補正することができる。第1の例として、近似曲線演算部232に、直線部位特定部232eと、第1変形部232fとを設ける。直線部位特定部232eは、層領域において実質的に直線的な部位を特定する。第1変形部232fは、自由曲線が直線部位よりも奥行方向に位置する場合に、自由曲線の当該部位を直線部位の位置に合わせるように自由曲線を変形する。この場合、近似曲線演算部232は、第1変形部232fによる変形結果に基づいて近似曲線を求める。
【0188】
第2の例として、近似曲線演算部232に、曲線部位特定部232gと、第2変形部232hとを設ける。曲線部位特定部232gは、自由曲線において層領域よりも奥行方向の逆方向に位置する部位を特定する。第2変形部232hは、この特定部位を層領域の位置に合わせるように自由曲線を変形する。この場合、近似曲線演算部232は、第2変形部232hによる変形結果に基づいて近似曲線を求める。
【0189】
第3の例として、近似曲線演算部232に、突出判定部232iと、第3変形部232jとを設ける。突出判定部232iは、断層像のフレームの端部近傍において層領域が奥行方向の逆方向に突出しているか判定する。第3変形部232jは、層領域が突出していると判定された場合に、この突出部位に対応する自由曲線の部位を、フレームの中央側からの自由曲線の延長線に置換することで、自由曲線を変形する。この場合、近似曲線演算部232は、第3変形部232jによる変形結果に基づいて近似曲線を求める。
【0190】
上記のような処理により自由曲線を補正することで、近似曲線の確度や精度の向上を図ることが可能である。
【0191】
突出領域特定部233は、たとえば次の処理を行なって突出領域の特定を行うことができる。まず、突出領域特定部233は、眼底Efの奥行方向における近似曲線上の各点と層領域との間の距離を算出し、算出された距離が所定閾値以上であるか判断する。そして、突出領域特定部233は、距離が所定閾値以上であると判断された近似曲線上の点の集合と層領域とに挟まれた画像領域を特定し、この画像領域を突出領域とする。このような処理を行うことで、突出領域の特定を好適に行うことができる。
【0192】
形態情報生成部235は、乳頭領域判定部235aを含んでいてもよい。乳頭領域判定部235aは、断層像を解析して、眼底Efの視神経乳頭に相当する乳頭領域が当該断層像に含まれるか判定する。乳頭領域が含まれると判定された場合、形態情報生成部235は、連結領域特定部234により特定された連結領域のうち乳頭領域の近傍に位置する連結領域を除外して形態情報を生成する。この処理により、視神経乳頭の近傍における網膜色素上皮層の湾曲形状に起因する誤検出を防止できるので、ドルーゼンに相当すると考えられる画像領域をより効果的に検出することが可能である。
【0193】
乳頭領域判定部235aは、たとえば、断層像を解析して眼底Efの所定の特徴層に相当する特徴層領域を特定し、この特徴層領域の形状に基づいて乳頭領域が含まれるか判定するように構成される。このとき、所定の特徴層は、眼底Efにおいて硝子体との境界をなす内境界膜であってよい。その場合、乳頭領域判定部235aは、特徴層領域(内境界膜領域)において眼底Efの奥行方向に陥没している部位が存在するか判定し、陥没部位が存在すると判定された場合に乳頭領域が含まれると判定する。この処理により、乳頭領域を効果的に検出することができる。
【0194】
乳頭領域判定部235aは、被検眼Eが左眼であるか右眼であるかを示す左右眼情報の入力を受けて、異なる処理を実行することができる。つまり、被検眼Eが左眼である場合、乳頭領域判定部235aは、断層像のフレームの少なくとも左側端部近傍を解析することにより上記判定を行う。一方、被検眼Eが右眼である場合、乳頭領域判定部235aは、断層像のフレームの少なくとも右側端部近傍を解析することにより上記判定を行う。この処理により、解析処理に掛かる時間の短縮や、リソースの低減を図ることが可能である。
【0195】
眼底解析装置1は、光源ユニット101からの光を信号光LSと参照光LRとに分割し、被検眼Eの眼底Efを経由した信号光LSと参照光路を経由した参照光LRとを重畳させて干渉光LCを生成して検出する光学系と、干渉光LCの検出結果に基づいて眼底Efの断層像を形成する画像形成部(画像形成部220、画像処理部230)を有していてもよい。記憶部212は、画像形成部により形成された断層像を記憶する。
【0196】
ここで、画像形成部220により形成される断層像は2次元断層像であり、画像処理部230により形成される断層像は3次元断層像である。上記例では2次元断層像に対する処理について特に詳しく説明したが、3次元断層像に対する処理も同様にして実行することが可能である。このとき、2次元断層像に対する処理における「線」が「面」に読み替えられる。たとえば、曲線が曲面に、直線が平面にそれぞれ読み替えられる。断層像の次元の相違に基づく処理の相違はこのような便宜的なものに過ぎないので、双方の断層像に対する処理は概念的には実質的に同一のものと言える。
【0197】
上記構成を用いて3次元断層像を処理する場合の例を説明する。眼底解析装置1は、記憶部212と、層領域特定部231と、近似曲線演算部232と、突出領域特定部233と、連結領域特定部234と、形態情報生成部235とを有する。記憶部212には、眼底Efの層構造を描写する3次元断層像が記憶される。層領域特定部231は、3次元断層像の画素の画素値に基づいて、網膜色素上皮層に相当する当該断層像中の層領域を特定する。この層領域は一般に曲面である(特異点を含んでいてもよい)。近似曲線演算部232は、層領域の形状に基づく近似曲面を求める。突出領域特定部233は、近似曲面が層領域よりも眼底Efの奥行方向に位置し、かつ奥行方向における近似曲面と層領域との間の距離が所定閾値以上である突出領域を特定する。突出領域は一般に3次元領域である。連結領域特定部234は、この突出領域を含み、かつ近似曲面及び層領域に囲まれた連結領域を特定する。連結領域は一般に3次元領域である。形態情報生成部235は、連結領域の形態を表す形態情報を生成する。このような眼底解析装置1によれば、眼底Efの3次元断層像に基づいてドルーゼンを効果的に検出することが可能である。
【0198】
[変形例]
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜に施すことが可能である。
【0199】
上記の実施形態では、網膜色素上皮層に相当する層領域と近似曲線(近似曲面)との間の距離に基づいてドルーゼン(と考えられる画像領域)を検出しているが、OCT計測の感度を向上させるなどしてブルッフ膜に相当する画像領域(膜領域と呼ぶ)を検出し、層領域と膜領域との間の距離に基づいてドルーゼンを検出するように構成してもよい。ドルーゼンはブルッフ膜と網膜色素上皮層との間に発生するものであるから、この変形例に係る処理を実行することで、ドルーゼンの形態をより高精度、高確度で把握することが可能となる。
【0200】
なお、上記実施形態は、OCT画像からの検出が困難なブルッフ膜の代わりに、ドルーゼン(突出)が無いと仮定した状態の網膜色素上皮層の形態を近似する近似曲線を用いるものである。
【0201】
更なる変形例として、OCT画像から網膜色素上皮層に相当する層領域を特定するとともに、ブルッフ膜に相当する膜領域の特定を試みることができる。膜領域が特定された場合には、膜領域と層領域との間の距離に基づいて連結領域を特定して形態情報を生成する。一方、膜領域の特定に失敗した場合には、上記実施形態のように近似曲線(近似曲面)を求め、層領域と近似曲線(近似曲面)とに基づいて連結領域を特定して形態情報を生成する。
【0202】
この変形例によれば、膜領域が特定された場合には高精度、高確度でドルーゼンの形態を把握できるとともに、膜領域が特定されなかった場合には近似曲線(又は近似曲面)を利用してドルーゼンの形態を把握できる。
【0203】
上記の実施形態においては、参照ミラー114の位置を変更して信号光LSの光路と参照光LRの光路との光路長差を変更しているが、光路長差を変更する手法はこれに限定されるものではない。たとえば、被検眼Eに対して眼底カメラユニット2やOCTユニット100を移動させて信号光LSの光路長を変更することにより光路長差を変更することができる。また、特に被測定物体が生体部位でない場合などには、被測定物体を深度方向(z軸方向)に移動させることにより光路長差を変更することも有効である。
【0204】
[眼底解析プログラム]
この発明に係る眼底解析プログラムについて説明する。この眼底解析プログラムは、眼底の層構造を描写する断層像を記憶する記憶部を有するコンピュータに後述の動作を実行させる。このコンピュータの例として、上記実施形態の演算制御ユニットがある。この眼底解析プログラムは、このコンピュータ自体に記憶されていてもよいし、このコンピュータと通信可能に接続されたサーバ等に記憶されていてもよい。
【0205】
この眼底解析プログラムに基づいてコンピュータが実行する動作について説明する。まず、コンピュータ(層領域特定部)は、断層像の画素の画素値に基づいて、網膜色素上皮層に相当する当該断層像中の層領域を特定する。次に、コンピュータ(近似曲線演算部)は、層領域の形状に基づく近似曲線を求める。続いて、コンピュータ(突出領域特定部)は、近似曲線が層領域よりも眼底の奥行方向に位置し、かつ近似曲線と層領域との間の奥行方向における距離が所定閾値以上である突出領域を特定する。更に、コンピュータ(連結領域特定部)は、この突出領域を含み、かつ近似曲線及び層領域に囲まれた連結領域を特定する。そして、コンピュータ(形態情報生成部)は、連結領域の形態を表す形態情報を生成する。コンピュータは、生成された形態情報を表示出力、印刷出力、送信出力することができる。
【0206】
このような眼底解析プログラムによれば、上記実施形態と同様に、眼底の断層像に基づいてドルーゼンを効果的に検出することが可能である。なお、この実施形態に係る眼底解析プログラムは、上記実施形態の眼底解析装置1が有する任意の機能をコンピュータに実行させるものであってよい。
【0207】
この発明に係る他の眼底解析プログラムについて説明する。この眼底解析プログラムは、眼底の層構造を描写する3次元断層像を記憶する記憶部を有するコンピュータに後述の動作を実行させる。このコンピュータの例として、上記実施形態の演算制御ユニットがある。
【0208】
この眼底解析プログラムに基づいてコンピュータが実行する動作について説明する。まず、コンピュータ(層領域特定部)は、3次元断層像の画素の画素値に基づいて、網膜色素上皮層に相当する当該断層像中の層領域を特定する。次に、コンピュータ(近似曲面演算部)は、層領域の形状に基づく近似曲面を求める。続いて、コンピュータ(突出領域特定部)は、近似曲面が層領域よりも眼底の奥行方向に位置し、かつ奥行方向における近似曲面と層領域との間の距離が所定閾値以上である突出領域を特定する。コンピュータ(連結領域特定部)は、この突出領域を含み、かつ近似曲面及び層領域に囲まれた連結領域を特定する。コンピュータ(形態情報生成部)は、連結領域の形態を表す形態情報を生成する。コンピュータは、生成された形態情報を表示出力、印刷出力、送信出力することが可能である。
【0209】
このような眼底解析プログラムによれば、上記実施形態と同様に、眼底の3次元断層像に基づいてドルーゼンを効果的に検出することが可能である。なお、この実施形態に係る眼底解析プログラムは、上記実施形態の眼底解析装置1が有する任意の機能をコンピュータに実行させるものであってよい。
【0210】
実施形態に係る眼底解析プログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。また、ハードディスクドライブやメモリ等の記憶装置に記憶させることも可能である。
【0211】
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
【0212】
[眼底解析方法]
この発明に係る眼底解析方法について説明する。この眼底解析方法は、眼底の層構造を描写する断層像を解析するものであり、次のようなステップを含んで構成される。なお、この眼底解析方法を、次のようなステップを眼底解析装置(OCT装置等)に実行させるための装置制御方法として把握することも可能である。
【0213】
(第1のステップ)
断層像の画素の画素値に基づいて、網膜色素上皮層に相当する当該断層像中の層領域を特定する。
(第2のステップ)
層領域の形状に基づく近似曲線を求める。
(第3のステップ)
近似曲線が層領域よりも眼底の奥行方向に位置し、かつ近似曲線と層領域との間の奥行方向における距離が所定閾値以上である突出領域を特定する。
(第4のステップ)
突出領域を含み、かつ近似曲線及び層領域に囲まれた連結領域を特定する。
(第5のステップ)
連結領域の形態を表す形態情報を生成する。
【0214】
このような眼底解析方法によれば、上記実施形態と同様に、眼底の断層像に基づいてドルーゼンを効果的に検出することが可能である。なお、この実施形態に係る眼底解析方法(又は装置の制御方法)は、上記実施形態の眼底解析装置1が実行可能な任意の処理を含んでいてもよい。
【0215】
この発明に係る他の眼底解析方法について説明する。この眼底解析方法は、眼底の層構造を描写する3次元断層像を解析するものであり、次のようなステップを含んで構成される。
【0216】
(第1のステップ)
3次元断層像の画素の画素値に基づいて、網膜色素上皮層に相当する当該断層像中の層領域を特定する。
(第2のステップ)
層領域の形状に基づく近似曲面を求める。
(第3のステップ)
近似曲面が層領域よりも眼底の奥行方向に位置し、かつ近似曲面と層領域との間の奥行方向における距離が所定閾値以上である突出領域を特定する。
(第4のステップ)
突出領域を含み、かつ近似曲面及び層領域に囲まれた連結領域を特定する。
(第5のステップ)
連結領域の形態を表す形態情報を生成する。
【0217】
このような眼底解析方法によれば、上記実施形態と同様に、眼底の3次元断層像に基づいてドルーゼンを効果的に検出することが可能である。なお、この実施形態に係る眼底解析方法(又は装置の制御方法)は、上記実施形態の眼底解析装置1が実行可能な任意の処理を含んでいてもよい。