特許第5996978号(P5996978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996978
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】巻付装置、及び巻付方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/28 20060101AFI20160908BHJP
   B65H 18/10 20060101ALI20160908BHJP
   B65H 18/26 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   B65H19/28 B
   B65H18/10
   B65H18/26
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-197364(P2012-197364)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-51369(P2014-51369A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】難波 聡
(72)【発明者】
【氏名】谷川 良明
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−11453(JP,A)
【文献】 実公昭52−32749(JP,Y1)
【文献】 登録実用新案第3134355(JP,U)
【文献】 特開平8−169597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H18/00−19/30、21/00−21/02、54/00−54/533、65/00、69/00−73/00、77/00−79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な筒状フィルムを巻芯の周面に巻き付ける巻付装置であって、
前記巻芯を回転させる回転手段と、
前記巻芯よりも広い距離を互いに隔てた複数のガイドローラと、
前記複数のガイドローラを支持するガイドアームと、
前記複数のガイドローラに巻掛され前記巻芯に対向する可撓帯と、
前記可撓帯を前記巻芯の回転する向きに走行させる走行手段と、
前記巻芯に対して前記ガイドアームを移動することにより、前記可撓帯を前記巻芯の周面に押し付け、又は前記巻芯の周面から離脱させる動作手段とを備え、
前記動作手段が前記巻芯の周面から可撓帯を離脱させた状態で、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に筒状フィルムが供給され、
前記動作手段が前記巻芯の周面に可撓帯を押し付けることにより、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に筒状フィルムを挟み、前記可撓帯を前記周面に倣わせて前記周面の周長の1/2以上に相当する長さの円弧状に撓ませ、
前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に挟んだ筒状フィルムを前記回転手段による巻芯の回転、及び前記走行手段による可撓帯の走行に従わせ、前記巻芯の周面に巻き付けることを特徴とする巻付装置。
【請求項2】
前記巻芯の周面に筒状フィルムを押し付ける気流を発生する噴流手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の巻付装置。
【請求項3】
前記ガイドアームは、前記複数のガイドローラのうち一のローラを支持する第1節部と、前記複数のガイドローラのうち他のガイドローラを支持する第2節部と、前記第1節部、及び前記第2節部を相互に旋回自在に連結する関節とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻付装置。
【請求項4】
前記第1節部に対して前記第2節部を前記巻芯の周面に前進する方向に旋回させることにより、前記巻芯の周面に押し付けられる可撓帯を前記周面に倣わせて前記周面の周長の2/3以上に相当する長さの円弧状に撓ませることを特徴とする請求項3に記載の巻付装置。
【請求項5】
前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に供給される筒状フィルムを、前記巻芯の周面に近接させる近接手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の巻付装置。
【請求項6】
前記走行手段が前記可撓帯を前記巻芯の回転する周速度よりも速い速度で走行させることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の巻付装置。
【請求項7】
前記可撓帯は筒状フィルムよりも狭い幅を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の巻付装置。
【請求項8】
扁平な筒状フィルムを巻芯の周面に巻き付ける巻付方法であって、
前記巻芯よりも広い距離を互いに隔てた複数のガイドローラに巻掛された可撓帯を、前記巻芯の周面に対向させる工程と、
前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に筒状フィルムを供給する工程と、
前記可撓帯を前記巻芯の周面に押し付けることにより、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に筒状フィルムを挟み、前記可撓帯を前記周面に倣わせて円弧状に撓ませる工程と、
前記巻芯を回転させ、前記可撓帯を前記巻芯の回転する向きに走行させる工程と、
前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に挟んだ筒状フィルムを、前記巻芯の回転、及び前記可撓帯の走行に従わせ、前記巻芯の周面に巻き付ける工程とからなることを特徴とする巻付方法。
【請求項9】
前記巻芯の回転、及び前記可撓帯の走行に従わせ前記筒状フィルムを前記巻芯の周面に巻き付ける工程で、前記巻芯の周面に筒状フィルムを押し付ける気流を発生することを特徴とする請求項8に記載の巻付方法。
【請求項10】
前記巻芯の周面に可撓帯を押し付けることにより、前記可撓帯を前記周面に倣わせて前記周面の周長の1/2〜2/3以上に相当する長さの円弧状に撓ませることを特徴とする請求項8又は9に記載の巻付方法。
【請求項11】
前記可撓帯を前記巻芯の回転する周速度よりも速い速度で走行させることを特徴とする請求項8〜10の何れかに記載の巻付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状フィルムを巻取装置の巻芯に巻き付ける巻付装置、及び巻付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、柔軟性に富むフィルム101を巻芯103に巻き付ける巻付装置105を示している。巻付装置105は、巻芯103の上方から供給されるフィルム101をガイド部材107で案内し、巻芯103の周面109と、周面109に押し付けられた可撓帯111との間に、フィルム101を進入させるものである。巻芯103は矢印θの向きに回転し、可撓帯111は矢印fの向きに走行する。フィルム101の端部113が巻芯103の周面109と可撓帯111とに接触し、これらから受ける摩擦力により両者の間に引き込まれる。巻芯103の回転、及び可撓帯111の走行に従わせ、フィルム101の端部113を巻芯103の周面109に周回させることにより、フィルム101の巻付が完了する。
【0003】
続いて、巻付装置105は可撓帯111を巻芯103から離脱させ、巻芯103に所望の長さのフィルム101が巻き取られるまで巻芯103を回転させる。以上の動作に加え、フィルム101を巻き取った後のフィルム101の切断、及び巻芯103の搬出については、下記の特許文献に開示されている。
【0004】
図11(a),(b)は、筒状フィルム115を巻芯103に巻き付けた例を示している。筒状フィルム115は、瓶等の胴部を被覆するラベルの材料であるが、扁平に折り畳まれた形態で図10に示す巻付装置105に供給される。この形態で筒状フィルム115は著しく高弾性な素性を顕すため、上記の摩擦力だけでは、筒状フィルム115を図10に示す巻芯103の周面109と可撓帯111との間に引き込ませることができない。また、筒状フィルム115が巻芯103の周面109と可撓帯111との間に無理な力で押し込まれると、図11(b)に示す筒状フィルム115の幅方向の縁部117が矢印p方向の圧縮力を受けて塑性変形し、その折り目の痕が消えなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−145494号公報
【特許文献2】特開平10−25043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて為されたものであり、筒状フィルムに不要な力を加えることなく、その巻き付けを円滑に行える巻付装置、及び巻付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、扁平な筒状フィルムを巻芯の周面に巻き付ける巻付装置であって、前記巻芯を回転させる回転手段と、前記巻芯よりも広い距離を互いに隔てた複数のガイドローラと、前記複数のガイドローラを支持するガイドアームと、前記複数のガイドローラに巻掛され前記巻芯に対向する可撓帯と、前記可撓帯を前記巻芯の回転する向きに走行させる走行手段と、前記巻芯に対して前記ガイドアームを移動することにより、前記可撓帯を前記巻芯の周面に押し付け、又は前記巻芯の周面から離脱させる動作手段とを備え、前記動作手段が前記巻芯の周面から可撓帯を離脱させた状態で、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に筒状フィルムが供給され、前記動作手段が前記巻芯の周面に可撓帯を押し付けることにより、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に筒状フィルムを挟み、前記可撓帯を前記周面に倣わせて前記周面の周長の1/2以上に相当する長さの円弧状に撓ませ、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に挟んだ筒状フィルムを前記回転手段による巻芯の回転、及び前記走行手段による可撓帯の走行に従わせ、前記巻芯の周面に巻き付けることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記巻芯の周面に筒状フィルムを押し付ける気流を発生する噴流手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記ガイドアームが、前記複数のガイドローラのうち一のローラを支持する第1節部と、前記複数のガイドローラのうち他のガイドローラを支持する第2節部と、前記第1節部、及び前記第2節部を相互に旋回自在に連結する関節とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記第1節部に対して前記第2節部を前記巻芯の周面に前進する方向に旋回させることにより、前記巻芯の周面に押し付けられる可撓帯を前記周面に倣わせて前記周面の周長の2/3以上に相当する長さの円弧状に撓ませることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に供給される筒状フィルムを、前記巻芯の周面に近接させる近接手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記走行手段が前記可撓帯を前記巻芯の回転する周速度よりも速い速度で走行させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記可撓帯が筒状フィルムよりも狭い幅を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、扁平な筒状フィルムを巻芯の周面に巻き付ける巻付方法であって、前記巻芯よりも広い距離を互いに隔てた複数のガイドローラに巻掛された可撓帯を、前記巻芯の周面に対向させる工程と、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に筒状フィルムを供給する工程と、前記可撓帯を前記巻芯の周面に押し付けることにより、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に筒状フィルムを挟み、前記可撓帯を前記周面に倣わせて円弧状に撓ませる工程と、前記巻芯を回転させ、前記可撓帯を前記巻芯の回転する向きに走行させる工程と、前記巻芯の周面と前記可撓帯との間に挟んだ筒状フィルムを、前記巻芯の回転、及び前記可撓帯の走行に従わせ、前記巻芯の周面に巻き付ける工程とからなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記巻芯の回転、及び前記可撓帯の走行に従わせ前記筒状フィルムを前記巻芯の周面に巻き付ける工程で、前記巻芯の周面に筒状フィルムを押し付ける気流を発生することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記巻芯の周面に可撓帯を押し付けることにより、前記可撓帯を前記周面に倣わせて前記周面の周長の1/2〜2/3以上に相当する長さの円弧状に撓ませることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記可撓帯を前記巻芯の回転する周速度よりも速い速度で走行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の巻付装置、及び巻付方法によれば、複数のガイドローラに巻掛した可撓帯を巻芯の周面に押し付けることにより、巻芯の周面と可撓帯との間に筒状フィルムを挟むことができる。このため、筒状フィルムは、巻芯の周面と可撓帯との間に無理に押し込まれる力を受けることがない。
【0019】
また、巻芯が回転すると共に巻芯の周面に押し付けられた可撓帯が走行することにより、巻芯の周面と可撓帯との間に挟まれた筒状フィルムを、巻芯の周面に沿わせて周回させることができる。このため、本発明の巻付装置、及び巻付方法は、筒状フィルムを巻芯の周面に巻き付けるときに、筒状フィルムの縁部が塑性変形するのを予防することができる。
【0020】
本発明の巻付装置、及び巻付方法によれば、回転手段による巻芯の回転、及び走行手段による可撓帯の走行に従わせ筒状フィルムを巻芯の周面に巻き付ける工程で、巻芯の周面に筒状フィルムを押し付ける気流を発生させる。この気流は、筒状フィルムがその弾性力により巻芯の周面から離れる向きに反るのを抑制することができる。
【0021】
また、巻芯の周面に可撓帯が押し付けられた状態で、巻芯の周面と可撓帯との間に挟まれた筒状フィルムを案内する距離が、巻芯の周面の周長の2/3以上の長さに相当することが好ましい。これは、筒状フィルムをその弾性力に抗して巻芯の周面に沿うよう湾曲させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る巻付装置と巻取装置との配置を示す側面図。
図2】本発明の実施形態に係る巻付装置に適用したガイドアームの斜視図。
図3】本発明の実施形態に係る巻付装置に適用したガイドアームに駆動源を連結した構造を示す側面図。
図4】本発明の実施形態に係る巻付装置の第1の動作を示す側面図。
図5】本発明の実施形態に係る巻付装置の第2の動作を示す側面図。
図6】本発明の実施形態に係る巻付装置の第3の動作を示す側面図。
図7】本発明の実施形態に係る巻付装置の第4の動作を示す側面図。
図8】本発明の実施形態に係る巻付装置の第4の動作による作用を説明する側面図。
図9】本発明の実施形態に係る巻付装置に適用した噴流手段の作用を説明する側面図。
図10】従来例の巻付装置の概略を示す側面図。
図11】(a)は巻芯に巻き取られた筒状フィルムの斜視図、(b)はその矢印X−X線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、扁平な筒状フィルム1を巻芯3の周面5に巻き付ける巻付装置7、及び巻取装置9の要部を示している。巻取装置9は本発明を特徴づけるものでない。以下に記す駆動源は、エアシリンダー、電動機、又は回転機を意味する。駆動源、筐体、及び軸受は自明であるので、その図示を省略する。また、巻付装置7、及び巻取装置9の要素は図中で重なり合うものがあるが、これらは巻芯3の軸方向で互いに位置を違えているものもある。
【0024】
巻付装置7は、巻芯3を矢印θの向きに回転させる回転手段11と、巻芯3の直径よりも広い距離を互いに隔てた2つのガイドローラ13と、複数のガイドローラ13,15を支持するガイドアーム17と、複数のガイドローラ13,15に巻掛された可撓帯19と、可撓帯19を矢印fの向きに走行させる走行手段21と、近接手段23とを備える。
【0025】
筒状フィルム1は、平らな一重のフィルムを走行させる過程で、同フィルムをその走行する方向に直交する幅方向の両縁部が互いに重なるよう折返し、両縁部を接着したものである。このように製造された筒状フィルム1が、ガイドローラ25、及び水平方向に変位自在なテンションローラ27に巻掛られ、図中の右側から巻芯3へ向かって走行する。これにより巻芯3には筒状フィルム1が連続的に供給される。
【0026】
近接手段23は、巻付装置7の筐体に傾斜姿勢で取り付けたエアシリンダーであり、そのピストンロッド29の先端にローラ31を設けている。ピストンロッド29が巻芯3に前進することにより、筒状フィルム1にローラ31を押し付け、筒状フィルム1を巻芯3の周面5に近接するよう撓ませることができる。回転手段11は、巻取装置9の旋回アーム33の両端34,36に設けたチャック等により巻芯3を着脱自在に保持し、このチャック等と共に巻芯3を駆動源により回転させるものである。
【0027】
可撓帯19は図2,3で省略されている。図2に示すように、複数のガイドローラ13,15は、ピン35,37、39によりガイドアーム17にそれぞれ支持されている。ガイドアーム17は、2枚の略L字形鋼板を複数のピン39により連結した第1節部41と、2枚のアーチ形鋼板を複数のピン37により連結した第2節部43と、関節45とを備える。第1節部41の上端を貫くピン47が巻付装置7の筐体に軸受され、ガイドアーム17の第1節部41はピン47を中心に旋回することができる。関節45は、第1節部41に対して第2節部43が両者を貫くピン49を中心に旋回できるようにしたものである。
【0028】
図1に示すように、走行手段21は、ドライブローラ51、ガイドローラ53、及び上下方向に変位自在なテンションローラ55に可撓帯19を巻掛したものである。可撓帯19は、筒状フィルム1よりも狭い幅を有する無端状のバンドである。ドライブローラ51を駆動源が回転することにより、可撓帯19が2つのガイドローラ13の間を矢印fの向きに走行する。テンションローラ55が可撓帯19に付与する張力により、複数のガイドローラ13,15の間で可撓帯19が適度に緊張する。
【0029】
更に、巻付装置7は、図3に示す動作手段57と旋回手段59とを備える。動作手段57は、巻付装置7の筐体に支持されたエアシリンダーであり、そのピストンロッド61をピン47に固定したクランク63に連結している。ピストンロッド61が進退することにより、ガイドアーム17の第1節部41が矢印a,bで指した方向に旋回する。旋回手段59は、第1節部41に支持されたエアシリンダーであり、そのピストンロッド65をピン49に固定したクランク67に連結している。ピストンロッド65が進退することにより、第1節部41に対して第2節部43が矢印c,dで指した方向に旋回する。
【0030】
次に本発明の巻付方法について述べる。以下の文頭の英文字は巻付装置7、及び巻取装置9の動作を区分する指標である。また、巻付装置7の動作は、コンピューターがアクセスできる記憶媒体に書き込まれたプログラムに基づき、既述の駆動源をコンピューターが制御することにより成されるものとする。
【0031】
A:図3に示す動作手段57がガイドアーム17の第1節部41を矢印bの向きの限界まで旋回させ、旋回手段59が第1節部41に対して第2節部43を矢印dの向きの限界まで旋回させる。この状態で図1に示すように、2つのガイドローラ13の間で緊張する可撓帯19が巻芯3の周面5に対向し、巻芯3の周面5と可撓帯19との間に、筒状フィルム1の供給される間隙が確保される。回転手段11が巻芯3を矢印θの向きに回転することにより、筒状フィルム1が巻芯3に巻き取られる。
【0032】
B:図4に示すように、巻取装置9が旋回アーム33を矢印αの向きに180°旋回させ、旋回アーム33の一端34に保持された巻芯3と、旋回アーム33の他端36とを相互に置き換える。巻芯3に巻き取られた筒状フィルム1が所望の長さに達したところで、回転手段11が巻芯3の回転を停止させる。符号69は、旋回アーム33に支持されたガイドローラを指している。
【0033】
筒状フィルム1の供給が停止する。即ち、筒状フィルム1の製造は中断されることなく、筒状フィルム1の走行する行程に設置したアキュムレーター等により筒状フィルム1を滞留させ、筒状フィルム1の走行を停止させる。この間に巻付装置7、及び巻取装置9は下記の工程を実行する。
【0034】
C:図5に示すように、旋回アーム33の他端36に新たな巻芯3がロボット等により準備され、この巻芯3を旋回アーム33の他端36に設けたチャック等に保持させる。図に表れていないカッター等が旋回アーム33の他端36の下方で筒状フィルム1を切断し、可撓帯19と巻芯3の周面5との間に供給された筒状フィルム1を近接手段23が巻芯3の周面5に近接させる。
【0035】
一方、旋回アーム33の一端34の巻芯3を回転手段11が再び回転させ、上記のように切断された筒状フィルム1の端部71が巻芯3に巻き取られたところで巻芯3の回転を停止させる。この後、筒状フィルム1を巻き取った巻芯3は旋回アーム33の一端34から離脱され、ロボット等により他所へ搬出される。
【0036】
D:図3に示す動作手段57が、ガイドアーム17の第1節部41を矢印aの向きに旋回させ、図6に示すように、2つのガイドローラ13の間で緊張する可撓帯19を巻芯3の周面5に押し付ける。これにより、巻芯3の周面5と可撓帯19との間に筒状フィルム1を挟み、可撓帯19を周面5に倣わせて円弧状に撓ませる。
【0037】
E:図3に示す旋回手段59が第1節部41に対して第2節部43を矢印cの向きに旋回させる。これにより、図7,8に示すように、第2節部43に支持されたガイドローラ13が巻芯3の周面5に更に接近するので、巻芯3の周面5に押し付けられる可撓帯19の長さが、周面5の周長の2/3以上になる。これは、筒状フィルム1をその弾性力に抗して巻芯3の周面5に沿うよう湾曲させるのに有利である。
【0038】
F:回転手段11が巻芯3を矢印θの向きに回転させ、この巻芯3の周速度よりも約10〜35%速い速度で走行手段21が可撓帯19を走行させる。これにより、巻芯3の周面5と可撓帯19との間に挟んだ筒状フィルム1を、巻芯3の回転、及び可撓帯19の走行に従わせ、図8に示すように巻芯3の周面5に周回させることができる。更に、筒状フィルム1の端部73は、巻芯3の周面5に巻き付けられる筒状フィルム1に巻き込まれる。この直後に筒状フィルム1の供給が再開され、巻付装置7は上記Aの工程を実行することができる。
【0039】
以上に述べた巻付装置7、及び巻付方法によれば、可撓帯19を巻芯3の周面5に押し付けることにより、巻芯3の周面5と可撓帯19との間に筒状フィルム1を挟むことができる。このため、筒状フィルム1は、巻芯3の周面5と可撓帯19との間に無理に押し込まれる力を受けることがない。
【0040】
また、巻付装置7、及び巻付方法によれば、巻芯3の周面5と可撓帯19との間に挟まれた筒状フィルム1を、上記Fの工程で巻芯3の周面5に沿わせて周回させることができる。これにより、筒状フィルム1を巻芯3の周面5の全周に巻き付けるときに、筒状フィルム1の縁部が塑性変形するのを予防できる。
【0041】
しかも、可撓帯19の幅が筒状フィルム1よりも狭いので、巻芯3の周面5と可撓帯19との間に筒状フィルム1を挟んだ状態で、筒状フィルム1の幅方向の縁部よりも内方に可撓帯19を位置決めすることができる。これにより、筒状フィルム1の縁部に圧縮力が加わるのを予防できる。
【0042】
更に、図9に示すように、巻付装置7は、巻芯3の周面5に筒状フィルム1を押し付ける気流を発生する噴流手段75を備えることが好ましい。噴流手段75は、第2節部43の先端に、巻芯3の略中心に向けて開放されたノズル77を取り付け、上記Fの工程でコンプレッサー等からノズル77に供給される圧搾空気を気流として筒状フィルム1に噴射するものである。この気流は、筒状フィルム1がその弾性力により巻芯3の周面5から離れる向きに反るのを抑制することができる。
【0043】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施することができる。筒状フィルム1は、平らな一重のフィルムの両縁部を接着したものであると記したが、このような継目の無い無端状であっても良い。近接手段23を省略し、上記Aの工程で巻芯3の近傍に筒状フィルム1が自重により垂れ下がるようにしても良い。上記Eの工程で、巻芯3の周面5に押し付けられる可撓帯19の長さは、巻芯3の周面5の周長の1/2以上であれば足りる。ガイドアーム17の関節45を省略し、2つのガイドローラ13の相対的な位置を固定しても良い。
【0044】
筒状フィルム1は色彩、模様、又は図柄を付されたものであっても良い。例えば、走行手段21により筒状フィルム1の走行される向きに並ぶ複数の図柄が筒状フィルム1に印刷され、これらの図柄の間が余白である場合、上記Cの工程で筒状フィルム1の余白の部位を切断することが望ましい。そこで、図4に示す旋回アーム33の他端36の下方に、筒状フィルム1の図柄、又は余白を検出するセンサー等を設置する。
【0045】
図4の点eは、筒状フィルム1にカッター等が切り込む位置を示している。上記Bの工程で巻取装置9が旋回アーム33の旋回を終えた直後、コンピューターが駆動源によりテンションローラ27を図中の右側へ移動させる。その分、筒状フィルム1がテンションローラ27に引き戻され、筒状フィルム1の余白の位置が点eに合致したところで、上記のセンサー等から送出される信号に基づきコンピューターがテンションローラ27を停止させる。この時点でカッター等が筒状フィルム1を切断する。
【0046】
上記Fの工程で回転手段11が巻芯3を回転させる速度、及び走行手段21が可撓帯19を走行させる速度は、筒状フィルム1の種類、材質、厚み、硬さ、巻芯3の材質等により決定される設計値であり、各速度は設定条件に合わせて適宜決めれば良い。噴流手段75の構成は特に限定されず、また筒状フィルム1のフィルム種類、表面粗さ、巻径、厚み、帯電量等を考慮し、噴流手段75の発生する気流の向き、強さ、又は有無を適宜決めれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、筒状フィルムに限らず、あらゆる材料からなる帯状物を軸等に巻き付けるのに有益な技術である。
【符号の説明】
【0048】
1,115...筒状フィルム、3,103...巻芯、5,109...周面、7,105...巻付装置、9...巻取装置、11...回転手段、13,15,25,53,69...ガイドローラ、17...ガイドアーム、19,111...可撓帯、21...走行手段、23...近接手段、27,55...テンションローラ、29,61,65...ピストンロッド、31...ローラ、33...旋回アーム、34...一端、36...他端、35,37,39,47,49...ピン、41...第1節部、43...第2節部、45...関節、51...ドライブローラ、57...動作手段、59...旋回手段、63,67...クランク、71,73,113...端部、75...噴流手段、77...ノズル、101...フィルム、107...ガイド部材、117...縁部。
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