(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996980
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 13/08 20060101AFI20160908BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
F24F13/08 B
F24F1/00 401C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-199165(P2012-199165)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-55684(P2014-55684A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077780
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 泰甫
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−196453(JP,A)
【文献】
特開平05−066052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/08
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット内に室内熱交換器が内装され、前記キャビネットに吸込口が設けられ、吸込口から吸い込まれた室内空気が室内熱交換器を通って調和されてキャビネットの前下部に形成された吹出口から放出され、前記吹出口に横ルーバが開閉可能に設けられた空気調和機であって、前記吹出口より上方に前記吸込口が設けられ、前記吹出口の上壁に突起部が設けられ、前記吹出口から下方向に向けて調和空気を吹き出す際に、前記横ルーバの下端部を前記突起部に近接させ、調和空気が横ルーバと突起部との間を通過して吸込口に向かうのを低減することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記吹出口から下方向に向けて調和空気を吹き出す際に、送風方向において前記横ルーバが前記突起部と一部重なるように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記吹出口から下方向に向けて調和空気を吹き出す際に、前記横ルーバの下端部が前記突起部よりも送風方向上流側に位置することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットの吸込口から取り入れた空気を調和して吹出口から室内に放出する空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気調和機として、特許文献1には、筐体の前面上部に空気吸込口を備え、前面下部に空気吹出口を備え、空気吸込口と空気吹出口とを結ぶ内部空気循環通路に送風機を配置し、空気吹出口の上壁に突起部を形成した空気調和機が開示されている。
【0003】
上記空気調和機では、空気吹出口の上壁から下方に突起部を突出させることで、ショートサーキットを阻止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-211328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、横ルーバ自体の記載がないため、空気吹出口から吹き出す空気の向きを横ルーバにより上下方向に変化させたときのショートサーキットに及ぼす影響については全く考慮されていない。すなわち、本発明者は、特許文献1において、空気吹出口に横ルーバを設置して風向きを上下方向に変化させた場合、空気吹出口から下方向に向けて風を吹き出すべく、横ルーバを下向きにしたときに、横ルーバと吹出口上壁との間から筐体前面側に調和空気が流出し、そのうちの少なくとも一部が吸込口に吸い込まれることでショートサーキットが発生する可能のあることを見い出した。
【0006】
ショートサーキットが発生すると、吸込口から吸い込んだ室内空気の温度を検出するサーミスタにおいて正確な温度が検出できず、適切な空気調和機の運転が出来なくなるとともに、冷暖房能力の低下を招くことになる。
【0007】
そこで、本発明は、吹出口から吹き出す調和空気の向きを上下方向に変化させた場合でもショートサーキットを抑制可能な空気調和機の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る空気調和機は、キャビネット内に室内熱交換器が内装され、前記キャビネットに吸込口が設けられ、吸込口から吸い込まれた室内空気が室内熱交換器を通って調和されてキャビネットの前下部に形成された吹出口から放出され、前記吹出口に横ルーバが開閉可能に設けられた空気調和機であって、前記吹出口より上方に前記吸込口が設けられ、前記吹出口の上壁に突起部が設けられ、前記吹出口から下方向に向けて調和空気を吹き出す際に、前記横ルーバの下端部を前記突起部に近接させ、調和空気が横ルーバと突起部との間を通過して吸込口に向かうのを低減することを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、横ルーバを下向きに傾斜させて吹出口から吹き出す調和空気を下方向に導く際に、横ルーバと吹出口の上壁との隙間を通過した調和空気が吸込口に吸い込まれるショートサーキットを抑制することが可能となる。これにより、吸込口から吸い込んだ室内空気の温度を正確に検知することができ、適切な運転が可能となる。横ルーバの下端部を突起部に近接させる場合、横ルーバ下端部と突起部とを接触させてもよいし、ショートサーキットを低減できる範囲で両者の間に隙間が存在してもよい。
【0010】
吹出口から下方向に向けて調和空気を吹き出す際、横ルーバ下端と突起部の先端とが近接するようにしてもよいが、送風方向において前記横ルーバが前記突起部と一部重なるように配置された構成とすることも可能である。これにより、横ルーバの下端部と突起部との間に多少の隙間が存在していても、隙間が屈曲形成されるために調和空気の通過が制限され、ショートサーキットを効果的に抑制することができる。
【0011】
吹出口から下方向に向けて調和空気を吹き出す際に、横ルーバの下端部が突起部よりも送風方向上流側に位置するようにすれば、すなわち、横ルーバの下端部が突起部の送風方向上流側の面に近接するようにすれば、横ルーバの下端部と突起部との間に多少の隙間が存在していても、隙間の入口が調和空気の勢いが弱くなる吹出口の上壁位置に形成されるため、ショートサーキットをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によると、吹出口から下方向に向けて調和空気を吹き出す際に、横ルーバの下端部を突起部に近接させることにより、横ルーバと吹出口の上壁との隙間を通過した調和空気が吸込口に吸い込まれるショートサーキットを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る空気調和機の室内機における横ルーバの閉姿勢を示す外観正面図
【
図3】同じく室内機における横ルーバの前方吹出姿勢を示す側面断面図
【
図4】同じく室内機における横ルーバの下方吹出姿勢を示す一部側面断面図
【
図5】別の実施形態である横ルーバの下方吹出姿勢を示す一部側面断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態ではセパレート型空気調和機の室内機を例に説明する。この種の空気調和機は、室内機の内部に収容される室内熱交換器と、図示しない室外機に収容される圧縮機、四方弁、室外熱交換器、絞り装置(共に図示せず)とが冷媒管によって接続されて冷凍サイクルが構成され、冷房、暖房、除湿などの各種運転モードを実行できるようになっている。
【0015】
室内機は、
図1および
図2に示すように、キャビネット1の上面に室内空気を吸込む吸込口2が形成される。キャビネット1の吸込口2部分には格子状の吸込グリル11が形成される。なお、吸込口2は、キャビネット1の上面に形成するほか、キャビネット1の前面上部に形成してもよいし、キャビネット1の前面上部及び上面の両方に形成することも可能である。
【0016】
キャビネット1の前面下方に吹出口4が形成される。なお、キャビネット1を正面から見て幅方向を左右方向Xとし、キャビネットの高さ方向を上下方向Yとし、キャビネット1の奥行き方向を前後方向Zとする。
【0017】
キャビネット1内には、
図2に示すように、吸込口2から吹出口4に至る空気通路5が形成され、この空気通路5に送風方向Aの上流側からフィルタ3、室内熱交換器6及びファン7がこの順に配置されている。熱交換器6の送風方向上流側表面には吸込口2から吸い込まれた室内空気の温度を検知する温度センサ8が取り付けられている。
【0018】
室内熱交換器6は、前面側熱交換器6aと背面側熱交換器6bの2個の熱交換器が逆V字状に配置されており、前面側熱交換器6aの下方にはドレンパン9が配置され、熱交換器6で生成されるドレン水を受けるようになっている。さらに、ドレンパン9の下面にスタビライザ12が取り付けられる。
【0019】
ファン7は、クロスフローファンであり、空気通路5の下流側で室内熱交換器6に囲まれた空間内に配置される。空気通路5のうちファン7よりも下流側は、リアガイダ10とスタビライザ12とで構成され、ファン7からの送風がキャビネット1の前面下部の吹出口4に導かれる。
【0020】
より詳しくは、リアガイダ10は凹状曲面に形成され、ファン7の後側の案内壁から吹出口の下壁4bに至る送風案内壁として機能し、スタビライザ12は、ファン7の前側の案内壁から吹出口の上壁4aに至る送風案内壁として機能する。そして、スタビライザ12の下面に突起部13が形成される。突起部13は、先細で前後方向の断面が三角形状の突条部として吹出口4の幅方向(左右方向)全体に延設される。
【0021】
キャビネット1の前面には、前面側熱交換器6aに対向して前面開口1aが形成されている。この前面開口1aを覆うように前カバー14がキャビネット1に着脱可能に取り付けられる。フィルタ3は、前カバー14を開放することにより、キャビネット1の前面から取り外すことができる。前カバー14は、平板状のものであって、左右方向の幅がキャビネット1の横幅とほぼ等しく、また、高さはキャビネットの前面開口1aを覆う高さに設定される。
【0022】
キャビネット1は、その前側下部において、前カバー14よりも下側が側面視で円弧状に後退して底壁部15に至る。吹出口4の前方に横軸16周りに開閉回動可能に設けられた横ルーバ17と、横ルーバ17の後側(送風方向の上流側)の吹出口の下壁4bに揺動可能に配置された複数の縦ルーバ18とを備えている。横ルーバ17は、吹出口4の前方に配置されて閉姿勢でキャビネット1の外観の一部を形成するため、側面視で円弧状に湾曲した形状とされる。
【0023】
横ルーバ17は図示しない制御部により回動動作が制御される。より具体的に、制御部は、マイコンからなり、横ルーバ17やファン7のほかに、図示しない圧縮機等を駆動制御する。制御部は、キャビネット1に内装され、リモコンあるいはキャビネットに設けられた操作スイッチからの操作信号に応じて、冷暖房運転、除湿運転、換気運転といった各種運転の実行、ファン7の回転数及び横ルーバ17の向き等を制御する。
【0024】
横ルーバ17は、
図1,2に示す閉姿勢から、横軸16周りに横ルーバ17の上端を前方に回動させることで、調和空気を上方に吹き出す上方吹出姿勢を経て、
図3に示すように、調和空気を前方に吹き出す前方吹出姿勢をとる。なお、横ルーバ17の上端とは、閉姿勢時における横ルーバの上側の端部であり、横ルーバ17の下端とは、閉姿勢時における横ルーバの下側の端部である。
【0025】
前方吹出姿勢からさらに横ルーバ17の上端を下方に回動させると、
図4に示すように、横ルーバ17の前面を利用して吹出口4から放出された調和空気を斜め下方に吹き出す下方吹出姿勢をとる。このように、横ルーバ17は、閉姿勢〜下方吹出姿勢の間で開閉回動可能とされる。
【0026】
上記構成の空気調和機において、横ルーバ17を前方吹出姿勢にして調和空気を吹き出すと、
図3に示すように、吹出口の上壁4aに沿って送風方向Aの方向に流れる調和空気は、突起部13に衝突することで、黒色矢印で示すように、吹出口上壁4aから剥離して吹出口4の前方に送出される。これにより、ショートサーキットを低減することが可能となる。
【0027】
横ルーバ17を下方吹出姿勢にして調和空気を吹き出すと、
図4に示すように、横ルーバ17の外表面が送風方向Aに対して上流側を向くようになる。なお、横ルーバ17は、前述ごとく、側面視で円弧状に湾曲して形成されるため、横ルーバ17が下方吹出姿勢をとったときは、横ルーバ17は上流側に向かって凸状に湾曲した形成となる。
【0028】
このとき、横ルーバ17は下端部にいくほど、送風方向Aに対して大きく傾斜することになるため、空気通路を流れる調和空気から受ける抵抗も大きくなる。したがって、横ルーバ17の下端部と、吹出口の上壁4aとの間に十分な隙間が存在する場合には、その隙間を通過して吹出口4から流出する調和空気量が増加し、キャビネット1の前面に沿って、あるいはその近傍を流れて、吸込口2に吸い込まれるショートサーキットが発生する可能性が大きくなる。
【0029】
これに対して、本実施形態では、
図4に示すように、横ルーバ17の下端が突起部13に接触するため、吹出口の上壁4aに沿って流れる調和空気は強制的に向きを変えられ、吹出口4から下方に向かって放出される。これにより、ショートサーキットを低減することができる。
【0030】
閉姿勢から下方吹出姿勢の間での横ルーバ17の姿勢の変更は、リモコンあるいはキャビネットに設けられた操作スイッチから制御部に入力された操作信号により、段階的又は連続的に行なうことができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。たとえば、
図4では下方吹き出しの際に、横ルーバ17の下端部が突起部13の先端と接触する態様について説明したが、これに限らず、
図5に示すように、ショートサーキットを低減できる範囲で横ルーバ17と突起部13との間に隙間が存在してもよい。
【0032】
すなわち、
図5に示す態様では、横ルーバ17の下端部が突起部13よりも送風方向Aの上流側に位置し、かつ送風方向Aにおいて横ルーバ17が突起部13と一部重なるように配置される構成としている。
【0033】
上記構成により、横ルーバ17の下端部と、吹出口の上壁4a及び突起部13との間に隙間が形成されても、隙間の入口が調和空気の勢いが最も弱くなる吹出口の上壁4aの位置に形成され、しかも、隙間は、
図5の一点鎖線の矢印で示すように屈曲形成されるため、この隙間を通過する調和空気は大きな抵抗を受けることになり、隙間を通過する調和空気量が制限される。これにより、ショートサーキットを効果的に抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、突起部13はスタビライザ12の下面に形成しているが、これに限らず、スタビライザ12を備えずに、ドレンパン9の下面に突起部を設けるようにしてもよい。さらに、本実施形態では、突起部13は、吹出口4の幅方向の全体に設けられているが、ショートサーキットを低減可能な範囲で吹出口4の幅方向の一部に形成してもよい。
【0035】
また、
図4では下方吹き出しの際に、横ルーバ17の下端部が突起部13の先端と接触する態様について説明したが、横ルーバ17をさらに反時計回りに回動させて、突起部13の前方(送風方向の下流側)に横ルーバ17の下端が位置するようにしてもよい。これにより、突起部13により向きを変更された風が横ルーバ17に沿って下方に導かれ、横ルーバ17と吹出口の上壁4aとの隙間が、送風方向の上流側から見て突起部13により隠されるため、隙間を通って漏れる風を低減できる。
【符号の説明】
【0036】
1 キャビネット
1a 前面開口
2 吸込口
3 フィルタ
4 吹出口
4a 吹出口の上壁
4b 吹出口の下壁
5 空気通路
6 室内熱交換器
6a 前面側熱交換器
6b 背面側熱交換器
7 ファン
8 温度センサ
9 ドレンパン
10 リアガイダ
11 吸込みグリル
12 スタビライザ
13 突起部
14 前カバー
15 底壁部
16 横軸
17 横ルーバ
18 縦ルーバ