(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996997
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 25/02 20060101AFI20160908BHJP
B43K 3/00 20060101ALI20160908BHJP
B43K 24/08 20060101ALN20160908BHJP
【FI】
B43K25/00 D
B43K3/00 K
!B43K24/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-227766(P2012-227766)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-79912(P2014-79912A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】松村 直実
(72)【発明者】
【氏名】小林 均
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−033126(JP,A)
【文献】
実開昭52−003637(JP,U)
【文献】
実開平03−116992(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/02
B43K 3/00
B43K 24/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具を構成する筒体にクリップを着脱自在に付設してなる筆記具であって、前記筒体の一方の端部に頭冠を装着し、前記筒体又は頭冠の外周面に、前記筒体又は頭冠の外周面から突出し、前記筒体又は頭冠の外周面と離間して長手方向に延びる非円周状の突片を形成し、前記筒体又は頭冠に、一端及び側面に開口部を有する装着部を設け、前記装着部の一端の開口部から装着部内に、前記クリップに設けた取付部を挿入可能又は前記装着部の一端の開口部から前記クリップの取付部を取り外し可能とするとともに、前記クリップを付設又は取り外した状態で、前記筒体の一方の端部に頭冠を装着することで、前記頭冠又は筒体が、前記装着部の一端の開口部を閉鎖することを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記装着部の一端の開口部を閉鎖する頭冠又は筒体に、該頭冠又は筒体の外周面から突出する突部を設け、該突部が前記装着部の一端の開口部を閉鎖する請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記筒体と頭冠が、着脱自在に螺着してあることを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具を構成する筒体の外周面に、クリップを着脱自在に装着してなる筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具として、例えば、筆記具を構成する筒体の外周面にクリップを装着してなる筆記具は良く知られている。こうしたクリップを装着した筆記具において、実開平6−83389号「クリップ取付装置」では、クリップを筒体とクリップ押さえで挟持して装着してなる筆記具が開示されている。
【0003】
また、実開平6−45780号公報「筆記具のキャップ」では、クリップとキャップとの間に開口部を有した孔部が設けられ、該孔部に紐が取付け及び取り外し可能とした筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−83389号公報
【特許文献2】実開平6−45780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した特許文献1、2など従来の筆記具は、ポケット等に挟持するために、クリップを設けている。しかし、カバン等で筆記具を持ち運ぶ場合には、ペンケース等に入れるため、クリップを必要としないケースも多い。一方で、クリップを必要としないが、ストラップを取り付ける等、紐を取付け可能とする筆記具が切望されている。
【0006】
本発明の目的は、筒体にクリップを装着してなる筆記具において、クリップを着脱自在に装着するとともに、紐を取付け及び取り外し可能な孔部を有する筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、筆記具を構成する筒体にクリップを着脱自在に付設してなる筆記具であって、前記筒体の一方の端部に頭冠を装着し、前記筒体又は頭冠の外周面に、前記筒体又は頭冠の外周面から突出し、前記筒体又は頭冠の外周面と離間して長手方向に延びる非円周状の突片を形成し、前記筒体又は頭冠に、一端及び側面に開口部を有する装着部を設け、前記装着部の一端の開口部から装着部内に、前記クリップに設けた取付部を挿入可能又は前記装着部の一端の開口部から前記クリップの取付部を取り外し可能とするとともに、前記クリップを付設又は取り外した状態で、前記筒体の一方の端部に頭冠を装着することで、前記頭冠又は筒体が、前記装着部の一端の開口部を閉鎖することを特徴とする。
【0008】
また、前記装着部の一端の開口部を閉鎖する頭冠又は筒体に、該頭冠又は筒体の外周面から突出する突部を設け、該突部が前記装着部の一端の開口部を閉鎖する。
【0009】
本願発明の第1の構成によれば、前記筒体の一方の端部に頭冠を装着し、前記筒体又は頭冠の外周面に、前記筒体又は頭冠の外周面から突出し、前記筒体又は頭冠の外周面と離間して長手方向に延びる非円周状の突片を形成し、前記筒体又は頭冠に、一端及び側面に開口部を有する装着部を設け、前記装着部の一端の開口部から装着部内に、前記クリップに設けた取付部を挿入可能又は前記装着部の一端の開口部から前記クリップの取付部を取り外し可能とするとともに、前記クリップを付設又は取り外した状態で、前記筒体の一方の端部に頭冠を装着することで、前記頭冠又は筒体が、前記装着部の一端の開口部を閉鎖することで、前記装着部の一端の開口部が開口した状態で、該開口部からクリップを容易に取り外すことができ、クリップを装着後は前記頭冠又は筒体によって前記装着部の一端の開口部を閉鎖することによって、不用意にクリップが外れることはない。
【0010】
また、前記クリップを取り外した状態でも、前記頭冠又は筒体によって、前記装着部の一端の開口部を閉鎖することができ、両側面の開口部は開口したままの状態となる。そのため、紐等、側面の開口部を挿通して使用することが可能となる効果を奏する。尚、紐を挿通する場合も、装着部の一端の開口部を開口することによって容易に実施可能である。
【0011】
本願発明の第2の構成によれば、前記装着部の一端の開口部を閉鎖する頭冠又は筒体に、該頭冠又は筒体の外周面から突出する突部を設け、該突部が前記装着部の一端の開口部を閉鎖することで、頭冠又は筒体の外径を大きくして前記装着部の一端の開口部を閉鎖する場合に比べ、装着部及び突部が、筒体の外周面及び頭冠の外周面から一部分のみが突出しているため、装着部からクリップを取り外しても、机上などで筆記具が回転することを防止する、回り止め突起となる効果を奏する。
【0012】
尚、本発明の筆記具を構成する筒体には、軸筒、キャップ等、筆記具を構成する従来から知られている筒体を適宜用いることができる。また、頭冠とは、前記した筒体に着脱自在に装着することができ、筒体と頭冠を装着することで装着部の後端又は先端の開口部を閉鎖することができる部材のことであって、尾栓形状、冠形状、蓋形状等、特に限定されるものではない。
【0013】
また、本願発明の第2の構成によれば、前記突部が前記装着部の一端の開口部を閉鎖することで、頭冠を完全に取り外すことなく、筒体又は頭冠の回転によって、装着部と突部の回転方向の位置をずらすことで、前記装着部の一端の開口部が開口してクリップを着脱することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、筒体にクリップを装着してなる筆記具において、クリップを着脱自在に装着するとともに、紐を取付け及び取り外し可能な孔部を有する筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態の筆記具を示す縦断面図である。
【
図2】
図1におけるクリップを取り外した状態を示す図である。
【
図5】
図1におけるクリップを取り外す状態を示す、一部省略した説明図である。
【
図6】第2の実施形態の筆記具を示す縦断面図である。
【
図7】
図6におけるクリップを取り外した状態を示す図である。
【
図10】
図6におけるクリップを取り外した状態を示す、一部省略した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に図面を参照しながら、本発明の筆記具の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1から
図5に示す第1実施形態の筆記具1は、軸筒(筒体)2と頭冠3を螺着して得た軸筒本体内に収容したボールペンレフィルからなる筆記体7を、コイルスプリング11によって、頭冠3の後端方向に向かって、摺動自在に付勢して収容してあり、頭冠3に配設したノック体5を押圧することによって、回転カム4からなる従来から知られている回転カムによる出没機構を作動させ、ボールペンチップ9の先端部を軸筒2の先端開口部2Aから出没可能としてある。軸筒2の把持部にはグリップ12を二色成形により装着してあり、頭冠3の内壁にはカム溝(図示せず)を設けてある。
【0018】
軸筒(筒体)2の外周面には、該軸筒2の外周面から外方に突出し、且つ軸筒2の後方側(頭冠3側)に向かって、軸筒2の外周面と離間して長手方向に延びる非円周状、且つ縦断面が略L字状の突片2Bを一体に設けてある。この突片2Bを設けることで、軸筒2に、後端の開口部T1及び側面の開口部T2を有する装着部S1を設けてあり、前記装着部S1にクリップ6の取付部6Aを装着又は取り外し可能に付設してある。
【0019】
また、軸筒2の後端部には、頭冠3を着脱自在に螺合してある。具体的には、軸筒2の後端部内に設けた雌ねじ部2Cに、頭冠3の雄ねじ部3Bを着脱自在に螺着してある。この頭冠3は、クリップ6を装着又は取り外した状態で、軸筒2に着脱自在としてあり、軸筒2の後端部に頭冠3を装着することで、頭冠3の外周面から突出して設けた突部3Aが、前記装着部S1の後端の開口部T1を閉鎖する。
【0020】
また、前記装着部S1の後端の開口部T1からクリップ6を取り外すには、軸筒2の後端部から頭冠3を取り外し、又は頭冠3を回転させ、装着部S1の後端の開口部T1を開口する。その後、装着部S1の後端の開口部T1からクリップ6を後方に押圧することで、クリップ6の取付部6Aを装着部S1から後方に移動させて、クリップ6を取り外すことができる。また、前記装着部S1の後端の開口部T1からクリップ6を取り外した状態で、軸筒2の後端部に頭冠3を螺着して、装着部S1の後端の開口部T1を閉鎖することができる。
【0021】
前記した軸筒2の装着部S1にクリップ6を装着するには、軸筒6の後端部から頭冠3を取り外し又は回転し、装着部S1の後端の開口部T1を開口する。その後、装着部S1の後端の開口部T1に、クリップ6に一体に設けた横断面がコ字状の底片の取付部6Aを、装着部S1の後端の開口部T1から軸筒先端側に挿入することで、クリップ6を装着することができる。さらにその後、軸筒2の後端部に、頭冠3を螺着すると、頭冠3の外周面から突出して設けた突部3Aが、前記装着部S1の後端の開口部T1を閉鎖してクリップ6の脱落を防止する。
【0022】
また、クリップ6を取り外した状態で、軸筒2の後端部に頭冠3を螺着しても、装着部S1の側面の開口部T2にストラップ等の紐部材(図示せず)を挿通して取り付けて使用することができる。尚、前記した紐部材は、頭冠3の装着後に挿通することも可能であるが、頭冠3を取り外した後、紐部材を挿通し、頭冠3を装着することで、容易に紐部材を取り付けることができる。
【0023】
軸筒内に配設した筆記体7は、インキ収容筒8の先端部内に、ポリプロピレン製のチップホルダー9の後端部を圧入装着し、チップホルダー9の先端圧入部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップ10の後端部に形成した小径部を圧入装着してボールペンレフィル形態の筆記体7である。尚、インキ収容筒7の後端部には、尾栓を装着し、インキ収容筒内には、黒色のボールペン用インキ及びインキ追従体を直に収容している。
【0024】
図6から
図10に示す第2実施形態の筆記具101は、頭冠102の外周面には、該頭冠103の外周面から外方に突出し、且つ頭冠103の先端側(軸筒102側)に向かって、頭冠3の外周面と離間して長手方向に延びる非円周状の突片103Aを一体に設けてある。この突片103Aを設けることで、頭冠103に、先端の開口部T3及び側面の開口部T4を有する装着部S2を設けてあり、前記装着部S2にクリップ6の取付部6Aを装着又は取り外し可能に付設し、軸筒(筒体)102と頭冠103を凹凸嵌合することで、軸筒102の外周面から突出して設けた突部102Aが装着部S2の先端の開口部K3を閉鎖する以外は、第1実施形態と同様にして筆記具101を得ている。
【0025】
本実施形態では、便宜上、頭冠をネジ嵌合によって螺着することで、装着部の一端の開口部を開閉自在としてあるが、頭冠の装着方法は、凹凸嵌合、乗り越し嵌合、ネジ嵌合、圧入嵌合等によって着脱自在に装着、或いは、軸筒後端部にヒンジ部を形成し、頭冠を軸筒に対し回動自在に配設するなど、特に限定されるものではないが、前記筒体と頭冠が、着脱自在に螺着することで、クリップをポケット等に挟持した時に、頭冠が開口する方向へは力が働き難く、且つ繰り返し、装着部の一端の開口部を開閉しても、筒体と頭冠との装着力に影響が少ないため、不用意に装着部の後端の開口部を開口することがないので好ましい。
【0026】
また、突片及び取付部の横断面形状は特に限定されるものではないが、クリップは、クリップ片と取付部によって、突片を覆うように装着してあるため、突片の横断面を略長方形(横断面が非円形)とすることで、クリップが突片に対して回転することを抑制できるので好ましい。
【0027】
本実施形態では、便宜上、回転カムによる出没式筆記具を例示しているが、回転操作により、筆記部を軸筒前端開口部から出没させる機構等、ノック式、スライド式、キャップ式等、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の筆記具は、インキの種類に限定されることなく、クリップを着脱自在に付設した筆記具として広く実施可能である。
【符号の説明】
【0029】
1、101 筆記具
2、102 前軸
2A 先端開口部
2B 突片
2C 雌ねじ部
3、103 頭冠
3A 突部
4 回転カム
5 ノック体
6 クリップ
6A 取付部
7 筆記体
8 インキ収容筒
9 チップホルダー
10 ボールペンチップ
11 コイルスプリング
103A 突片
102B 突部
S1、S2 装着部
T1、T3 一端の開口部
T2、T4 側面の開口部