特許第5997030号(P5997030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997030
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】歩行型電動作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/08 20060101AFI20160908BHJP
   A01D 34/78 20060101ALI20160908BHJP
   A01D 34/81 20060101ALI20160908BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20160908BHJP
   H02K 5/10 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   A01B33/08 Z
   A01D34/78 Z
   A01D34/81
   H02K9/06 C
   H02K5/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-270429(P2012-270429)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-113107(P2014-113107A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(74)【代理人】
【識別番号】100114720
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕康
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭47−038446(JP,A)
【文献】 特開2009−225554(JP,A)
【文献】 特開2000−116062(JP,A)
【文献】 特開昭55−048315(JP,A)
【文献】 特開昭55−088611(JP,A)
【文献】 実開昭59−126778(JP,U)
【文献】 特開2006−033932(JP,A)
【文献】 特開平06−062637(JP,A)
【文献】 特開2007−196363(JP,A)
【文献】 特開平11−285206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/00−33/16
A01D 34/412−34/90
H02K 5/00−5/26
H02K 9/00−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動力によって作業を行う歩行型電動作業機であって、
前記モータを収納するモータハウジングと、
前記モータハウジングの外周面の少なくとも一部を覆うハウジングカバーと、
を備え、
前記モータハウジングと前記ハウジングカバーとの間に、前記モータの冷却を行うための冷却空気を導入する隙間を設け、さらに、
前記隙間の近傍であって前記モータハウジングの外周面には、水平方向に冷却空気を誘導する水平リブが形成されていることを特徴とする歩行型電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行型電動作業機において、
前記モータハウジングは、前記隙間から導入された冷却空気を前記モータハウジングの内部に導入するための開口部を備え、
前記開口部は、前記隙間よりも上方側に設けられることを特徴とする歩行型電動作業機。
【請求項3】
請求項2に記載の歩行型電動作業機において、
前記モータは、モータケースに収納された状態で前記モータハウジング内に収納設置されており、
前記モータケースは、上方側に冷却空気の取込口を備えるとともに下方側に冷却空気の排出口を備え、
下方側から上方側に向けて、前記隙間、前記開口部、前記取込口の順で配置されていることを特徴とする歩行型電動作業機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の歩行型電動作業機において、
前記開口部の開口面積に対して、前記モータハウジング内で冷却空気を導通させる流路の流路断面積が大きくなるように構成されることを特徴とする歩行型電動作業機。
【請求項5】
請求項〜4のいずれか1項に記載の歩行型電動作業機において、
前記モータハウジングの内部であって前記開口部の近傍には、冷却空気の流れを偏向させる偏向板が形成されていることを特徴とする歩行型電動作業機。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の歩行型電動作業機において、
前記ハウジングカバーの内周面には、前記モータハウジングの外周面に接触する補強リブが形成されていることを特徴とする歩行型電動作業機。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の歩行型電動作業機において、
前記ハウジングカバーは、前記モータハウジングに対して着脱自在に構成されることを特徴とする歩行型電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動力によって作業を行う歩行型電動作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータの駆動力によって作業を行う歩行型電動作業機として、例えば、電動耕運機や電動芝刈機などが知られている。この種の歩行型電動作業機を開示した先行技術文献として、下記特許文献1を示す。下記特許文献1に開示された歩行型電動作業機(電動管理機)は、耕運作業を行うためのものであり、その駆動源であるモータ(電動モータ)については、単一のカバー(ボンネット)によって覆われることで、モータ内部への水や塵芥等の異物の侵入を防止することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−126778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、歩行型電動作業機の技術分野では、モータの高出力化によって歩行型電動作業機の性能向上を図ることが行われている。しかしながら、モータの高出力化を実施した場合、モータの発熱を取り去るためにモータ内部に導入されている冷却空気の空気量が大きくなってしまうので、従来技術に係る単一のカバーでは、モータへの冷却空気とともに水や塵芥等の異物がカバー内部に運ばれてしまい、モータに不具合を発生させる虞が存在していた。
【0005】
上記の課題を解決する従来の手法としては、例えば、カバーに対して防塵・防水フィルターを設けることが考えられる。しかしながら、カバーに対して防塵・防水フィルターを設けると、その抵抗により冷却空気の導入が阻害されるので、適切なモータ冷却が出来ず、モータの高出力化を図ることが容易ではなくなってしまう。また、防塵・防水フィルターの設置は、目詰まりした場合などに備えた保守作業や実際の目詰まり時の交換作業を発生させるものであるため、ランニングコストを増加させてしまうといった課題を伴うものである。
【0006】
本発明は、上述した従来技術に存在する種々の課題の存在に鑑みて成されたものであり、その目的は、モータの高出力化によってモータ内部に導入される冷却空気の空気量が増加したとしても、適切に異物の侵入を防ぐことの可能な構造を備える歩行型電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明に係る歩行型電動作業機(10)は、モータ(21)の駆動力によって作業を行う歩行型電動作業機(10)であって、前記モータ(21)を収納するモータハウジング(31)と、前記モータハウジング(31)の外周面の少なくとも一部を覆うハウジングカバー(41)と、を備え、前記モータハウジング(31)と前記ハウジングカバー(41)との間に、前記モータ(21)の冷却を行うための冷却空気を導入する隙間(51(51a,51b,51c))を設け、さらに、前記隙間(51(51a,51b,51c))の近傍であって前記モータハウジング(31)の外周面には、水平方向に冷却空気を誘導する水平リブ(35(35a,35b))が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る歩行型電動作業機(10)において、前記モータハウジング(31)は、前記隙間(51(51a,51b,51c))から導入された冷却空気を前記モータハウジング(31)の内部に導入するための開口部(33)を備え、前記開口部(33)は、前記隙間(51(51a,51b,51c))よりも上方側に設けられることとすることができる。
【0010】
また、本発明に係る歩行型電動作業機(10)において、前記モータ(21)は、モータケース(22)に収納された状態で前記モータハウジング(31)内に収納設置されており、前記モータケース(22)は、上方側に冷却空気の取込口(22a)を備えるとともに下方側に冷却空気の排出口(22b)を備え、下方側から上方側に向けて、前記隙間(51(51a,51b,51c))、前記開口部(33)、前記取込口(22a)の順で配置されていることとすることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る歩行型電動作業機(10)では、前記開口部(33)の開口面積に対して、前記モータハウジング(31)内で冷却空気を導通させる流路の流路断面積が大きくなるように構成することができる。
【0012】
またさらに、本発明に係る歩行型電動作業機(10)において、前記モータハウジング(31)の内部であって前記開口部(33)の近傍には、冷却空気の流れを偏向させる偏向板(37)が形成されていることとすることができる。
【0014】
また、本発明に係る歩行型電動作業機(10)において、前記ハウジングカバー(41)の内周面には、前記モータハウジング(31)の外周面に接触する補強リブ(39)が形成されていることとすることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る歩行型電動作業機(10)において、前記ハウジングカバー(41)は、前記モータハウジング(31)に対して着脱自在に構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モータの高出力化によってモータ内部に導入される冷却空気の空気量が増加したとしても、適切に異物の侵入を防ぐことの可能な構造を備える歩行型電動作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る電動耕運機の全体構成を示す外観斜視図である。
図2】本実施形態に係る本体部の外観形状を示す図であり、特に、図中の分図(a)が上面視を、分図(b)が側面視を、分図(c)が正面視を示している。
図3】本実施形態に係る本体部からハウジングカバーを取り外した状態のモータハウジングの外観形状を示す図であり、特に、図中の分図(a)が上面視を、分図(b)が側面視を、分図(c)が正面視を示している。
図4】本実施形態に係るハウジングカバーを示す図であり、特に、分図(a)が外周面側を示しており、分図(b)が内周面側を示している。
図5】本実施形態に係るモータハウジングの半割体の一方を示す図であり、特に、分図(a)が外周面側を示しており、分図(b)が内周面側を示している。
図6】本実施形態に係る本体部における冷却空気の流れを説明するための図であり、特に、本体部外部からの冷却空気の導入経路を示している。
図7】本実施形態に係る本体部における冷却空気の流れを説明するための図であり、特に、本体部内部における冷却空気の流通経路を示している。
図8図2中の分図(b)におけるVIII−VIII断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本実施形態では、本発明の歩行型電動作業機が電動耕運機として構成される場合を例示して説明することとする。
【0019】
図1は、本実施形態に係る電動耕運機10の全体構成を示す外観斜視図である。この電動耕運機10には、駆動源であるモータ21が収納された本体部11と、この本体部11の下方にモータ21からの駆動力を受けて高速で回転運動可能な複数のなた状の爪12が設置されている。また、本体部11及び爪12の後方には、二つの補助車輪13が設置されており、さらに、本体部11の後方には、後方側斜め上方に延びるようにハンドル部14が形成されている。本実施形態のハンドル部14は、作業者が左右両手で把持できるように、後方に向けて二股に分かれた構成を有しており、その二股の端部には、それぞれ操作グリップ15が設置されている。
【0020】
したがって、本実施形態に係る電動耕運機10を操作する作業者は、左右の手それぞれで二つの操作グリップ15を把持しながら、所望の方向(例えば、前方)に向けて電動耕運機10に対して押圧力を加えることで、電動耕運機10を移動させることが可能となっている。なお、耕運作業を実施するときには、二つの補助車輪13は地面に接触しないように、例えば上面側に補助車輪13が向くように配置され、複数のなた状の爪12が作用を発揮することで、地面を耕すことができるようになっている。一方、耕運作業を終えて移動等するときには、二つの補助車輪13が地面に接触するように、例えば図1に示されるように補助車輪13が配置され、電動耕運機10のスムーズな移動が実現されることとなる。
【0021】
さて、上述した本実施形態に係る電動耕運機10は、モータ21が収納された本体部11の構成に有意な特徴を備えている。そこで、図2図8を用いて、本実施形態に係る本体部11の詳細な構成について説明することとする。ここで、図2は、本実施形態に係る本体部11の外観形状を示す図であり、特に、図中の分図(a)が上面視を、分図(b)が側面視を、分図(c)が正面視を示している。また、図3は、本実施形態に係る本体部11からハウジングカバー41を取り外した状態のモータハウジング31の外観形状を示す図であり、特に、図中の分図(a)が上面視を、分図(b)が側面視を、分図(c)が正面視を示している。さらに、図4は、本実施形態に係るハウジングカバー41を示す図であり、特に、分図(a)が外周面側を示しており、分図(b)が内周面側を示している。また、図5は、本実施形態に係るモータハウジング31の半割体31aの一方を示す図であり、特に、分図(a)が外周面側を示しており、分図(b)が内周面側を示している。さらに、図6及び図7は、本実施形態に係る本体部11における冷却空気の流れを説明するための図であり、特に、図6が本体部11外部からの冷却空気の導入経路を、図7が本体部11内部における冷却空気の流通経路を示している。またさらに、図8は、図2中の分図(b)におけるVIII−VIII断面を示す図である。
【0022】
本実施形態に係る本体部11は、図7にて詳細に示されるように、モータ21を収納するモータハウジング31と、モータハウジング31の外周面を覆うハウジングカバー41とによって構成されている。
【0023】
モータ21は、モータケース22に収納された状態でモータハウジング31内に収納設置されている。また、モータ21を収納するモータケース22は、上方側に冷却空気の取込口22aを備えるとともに下方側に冷却空気の排出口22bを備えている。モータ21の下方には、モータ軸21aの回転に応じて回転し、冷却空気の流れを作り出すファン21bが設置されているので、モータ21に電力が供給されてモータ軸21aが回転運動を行うと、モータ軸21aの回転に応じてファン21bが回転する。すると、ファン21bの回転に応じて冷却空気がモータケース22の上方側に設けられた取込口22aから導入され、モータ21の熱を奪いながらモータケース22の下方側に設けられた排出口22bへと導通し、モータケース22の下方外部に導出されることとなる。かかる構成によって、モータケース22内に設置された発熱体であるモータ21が適切に冷却され、所望のモータ性能を発揮することができるようになっている。
【0024】
上述したモータ21を収納するモータハウジング31は、図5に示すような半割体31aを左右で2つ組み合わせることで構成されるものである。図5で示されるように、本実施形態に係るモータハウジング31は、下方前方側に突出するアーム部32を備えている。作業者は、本実施形態に係る電動耕運機10を持ち運ぶ際に、このアーム部32を把持することで、電動耕運機10の移動を容易に行うことが可能となる。
【0025】
また、本実施形態に係るモータハウジング31は、前方側の略中央部の位置に、冷却空気をモータハウジング31の内部に導入するための開口部33を備えている。本実施形態に係る開口部33は、半割体31aごとに3つずつ形成されている。ただし、開口部33の形成個数については、電動耕運機10の大きさや性能、モータ21の能力等に応じて任意に選択することができる。
【0026】
さらに、モータハウジング31の内部であって開口部33の近傍には、冷却空気の流れを偏向させる偏向板37が形成されている(図5中の分図(b)及び図7参照)。したがって、モータハウジング31の外部から開口部33を介してモータハウジング31の内部に導入される冷却空気は、偏向板37の作用によって流れの向きを偏向板37の偏向面に沿った向き(例えば、水平方向)に強制的に変更されるので、例えば、外部からの冷却空気に混じった水や塵芥等の異物は偏向板37の作用によって偏向板37やモータケース22の外壁面に当たる。したがって、本実施形態によれば、モータケース22の上方側に設けられた取込口22aから異物が侵入してモータ21を傷めることがない。
【0027】
またさらに、本実施形態に係るモータハウジング31は、側面上方側にモータ21のブラシを取付・交換するためのブラシ交換穴34を備えている。
【0028】
さらにまた、本実施形態に係るモータハウジング31は、側面後方から背面にかけて、水平方向に延びる水平リブ35を有している。この水平リブ35は、モータハウジング31の剛性を高める補強機能を持つとともに、後述するハウジングカバー41がモータハウジング31に取り付けられた際に、モータハウジング31とハウジングカバー41との間に形成される隙間51に導入される冷却空気の流れ方向を水平方向にする機能を備える部材である。なお、隙間51に導入される冷却空気の流れ方向を水平方向にするのは、高速で回転運動する複数のなた状の爪12による耕運作業によって撒き上がる塵芥や水等の異物が隙間51を介してモータハウジング31とハウジングカバー41との間に極力入り込まないようにするためである。また、本実施形態に係る水平リブ35については、ハウジングカバー41によって覆われていないモータハウジング31の外周面に形成される水平リブ35aと、モータハウジング31を覆うハウジングカバー41の端部位置、すなわち、隙間51の入口位置においてモータハウジング31の外周面に形成される水平リブ35bとが存在している。
【0029】
上述した構成を有するモータハウジング31の上面側及び前面側を覆うように設置されるのが、図4にて示される本実施形態のハウジングカバー41である。このハウジングカバー41は、適度な強度と可撓性を有する樹脂材料によって形成されており、こちらも樹脂材料で構成されるモータハウジング31に対して着脱自在に構成される部材である。本実施形態に係るハウジングカバー41には、前面側下方及び上面側後方に係止爪が形成されており、一方、ハウジングカバー41が取り付けられるモータハウジング31の前面側下方及び上面側後方にも係止爪が形成されている。したがって、モータハウジング31に対してハウジングカバー41を取り付ける際には、ハウジングカバー41をわずかに撓ませながら前記係止爪同士を係り合わせることにより、モータハウジング31に対するハウジングカバー41の取り付けが容易に実現される。
【0030】
また、本実施形態に係るハウジングカバー41は、モータハウジング31に対して取り付けられたときに、図6及び図7に示されるように、本体部11の前面側下方の前方側に抜ける2つの隙間51aと、前面側下方の後方側に抜ける2つの隙間51bと、前面側下方の下方側に抜ける1つの隙間51cという、合計5つの隙間51a,51a,51b,51b,51cを形成するように構成されている。これら5つの隙間51a,51a,51b,51b,51cは、モータハウジング31とハウジングカバー41との間に形成される空間に通じており、隙間51から導入される冷却空気が、この空間内を流通するように構成されている。
【0031】
さらに、本実施形態に係るハウジングカバー41の内周面には、図4中の分図(b)に示すように、モータハウジング31の外周面に接触する補強リブ39が形成されている。上述したように、モータハウジング31とハウジングカバー41との間には、冷却空気を導通させるための空間が形成されているが、冷却空気の流通を阻害しない領域に対して補強リブ39を形成することで、モータハウジング31に対するハウジングカバー41の安定した取付状態が実現されることとなる。
【0032】
以上、本実施形態に係る電動耕運機10が有する本体部11の主要な構成部材についての説明を行った。次に、図6及び図7等を用いて、本実施形態に係る本体部11が発揮する冷却機構の作用効果についての説明を行う。
【0033】
モータ21に電力が供給されてモータ軸21aが回転運動を行うと、モータ軸21aの回転に応じてファン21bが回転する。すると、本体部11における冷却空気の取り入れ口であるモータハウジング31とハウジングカバー41との間に形成された5つの隙間51a,51a,51b,51b,51cからは、モータハウジング31とハウジングカバー41との間に形成される空間に対して、冷却空気が取り込まれる(図6及び図7における符号α参照)。
【0034】
このとき、モータハウジング31の側面後方から背面にかけて水平方向に延びるように形成される水平リブ35が作用することで、モータハウジング31とハウジングカバー41との間に形成される隙間51b,51bに導入される冷却空気の流れ方向は、水平方向を向くこととなる。隙間51b,51bに導入される冷却空気の流れ方向が水平方向となることで、高速で回転運動する複数のなた状の刃12による耕運作業によって撒き上げられる塵芥や水等の異物が、隙間51b,51bを介してモータハウジング31とハウジングカバー41との間に入り込み難くすることができる。
【0035】
またこのとき、モータハウジング31とハウジングカバー41との間に形成された5つの隙間51a,51a,51b,51b,51cは、本体部11の下方に形成されているので、モータハウジング31とハウジングカバー41との間に形成される空間に取り込まれた冷却空気は、当該空間を上方に向けて移動する(図6中の符号β参照)。
【0036】
モータハウジング31とハウジングカバー41との間に形成される空間を上方に向けて移動した冷却空気は、5つの隙間51a,51a,51b,51b,51cの上方に形成されたモータハウジング31の開口部33を介してモータハウジング31内部に導入される。
【0037】
このとき、図7で示されるように、モータハウジング31の内部であって開口部33の近傍には、冷却空気の流れを偏向させる偏向板37が形成されているので、モータハウジング31の外部から開口部33を介してモータハウジング31の内部に導入された冷却空気は、偏向板37の作用によって流れの向きを偏向板37の偏向面に沿った向きに強制的に変更される(図7中の符号γ参照)。したがって、例えば、外部からの冷却空気に混じった水や塵芥等の異物は、偏向板37の作用によって偏向板37やモータケース22の外壁面に当たるので、モータケース22の上方側に設けられた取込口22aから異物が侵入してモータ21を傷めることがない。
【0038】
偏向板37によって向きを変えられた冷却空気は、ファン21bの回転作用によってさらに上方に吸引され、モータケース22の上方側に形成された冷却空気の取込口22aに導入され、モータケース22内部を導通する。モータケース22の内部を導通する冷却空気は、モータ21の熱を奪いながらモータケース22の下方側に設けられた排出口22bへと導通し、モータケース22の下方外部に導出されることとなる。これにより、モータケース22内に設置された発熱体であるモータ21が適切に冷却され、所望のモータ性能を発揮することができるようになる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る本体部11に導入され、モータ21を冷却した後に、本体部11の外部に導出される冷却空気は、図6及び図7中の符号α→β→γの順に本体部内部を導通して機外に排出されるが、このような冷却空気の流れを実現する隙間51、開口部33、及び取込口22aは、本体部11の下方側から上方側に向けて、隙間51、開口部33、取込口22aの順で配置されているので、冷却空気は上へ上へと誘導されることとなる。つまり、冷却空気に混ざって本体部11の内部に侵入しようとする水や塵芥等の異物は、重力の作用によって下方に落とされるので、たとえモータ21の高出力化に伴い冷却空気の空気量が大きくなったとしても、モータ21内部への異物の侵入は適切に防止されることとなる。また、開口部33やその近傍に形成される偏向板37の作用も相俟って、モータ21内部への異物の侵入効果がさらに高められることとなる。
【0040】
なお、図8中の太線のハッチングで示される領域は、モータハウジング31内で冷却空気を導通させる流路の流路断面積を示しているが、当該流路断面積は、開口部33の開口面積に対して大きくなるように構成されているので、冷却空気は、モータハウジング31内に流入した時点で流速が低下する。すると、冷却空気に含まれる水や塵芥等の異物は、自重により冷却空気から適切に分離されることとなる。かかる作用によっても、モータ21内部への異物の侵入は適切に防止されることとなる。
【0041】
さらに、上述したように、本実施形態に係るハウジングカバー41については、その内周面に対してモータハウジング31の外周面に接触する補強リブ39が形成されているので、モータハウジング31に対する安定した取付状態が維持されることとなり、かかる作用によっても、モータ21内部への異物の侵入が適切に防止されることとなる。
【0042】
さらに、本実施形態に係るハウジングカバー41は、モータハウジング31に対して着脱自在に構成されている。したがって、本実施形態に係る電動耕運機10は、メンテナンス性に優れているということができる。特に、モータハウジング31からハウジングカバー41を取り外したときには、モータハウジング31の側面上方側に設けられたモータ21のブラシを取付・交換するためのブラシ交換穴34が露出するので、本実施形態に係る本体部11については、モータブラシの交換作業が容易に実施可能な構成が採用されている。
【0043】
さらに、本実施形態に係る本体部11は、騒音源でもあるモータ21の外周をモータハウジング31やハウジングカバー41といった多数の部材で取り囲んでいるので、防音効果を得る上でも好適な構成を有しているといえる。
【0044】
さらに、本実施形態に係るモータハウジング31は、左右2つ割りで構成された半割体31aを組み合わせることで形成されているが、そのモータハウジング31を覆うように設置されるハウジングカバー41は、少なくともモータハウジング31の上面側全面を覆うように構成されているので、2つの半割体31aの組み合わせ面からの雨水等の異物の侵入を好適に防止できる構成となっている。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0046】
例えば、上述した本実施形態に係るハウジングカバー41は、モータハウジング31の上面側及び前面側を覆うように形成されていたが、本発明の範囲はこの形態には限られず、例えば、モータハウジング31の上面側と背面側を覆うようにハウジングカバー41を設置したり、モータハウジング31の下面以外の全ての面を覆うようにハウジングカバー41を設置したりすることができる。
【0047】
また例えば、上述した実施形態では、本発明の歩行型電動作業機が電動耕運機10として構成される場合を例示したが、本発明に係る歩行型電動作業機が取り得る構成の範囲は上述したものには限られない。例えば、複数のなた状の爪12を用いる電動耕運機10に替えて、スパイラル刃を用いる草刈機としての歩行型電動作業機に対して、本発明の構成を用いることができる。また、畝立ての機械に対して本発明を適用することも可能である。
【0048】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0049】
10 電動耕運機、11 本体部、12 爪、13 補助車輪、14 ハンドル部、15 操作グリップ、21 モータ、21a モータ軸、21b ファン、22 モータケース、22a 取込口、22b 排出口、31 モータハウジング、31a 半割体、32 アーム部、33 開口部、34 ブラシ交換穴、35(35a,35b) 水平リブ、37 偏向板、39 補強リブ、41 ハウジングカバー、51(51a,51b,51c) 隙間。
図1
図2
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図8