特許第5997047号(P5997047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997047マイクロ構造化表面を有するアンチグレアフィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997047
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】マイクロ構造化表面を有するアンチグレアフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   G02B5/02 C
【請求項の数】9
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2012-514015(P2012-514015)
(86)(22)【出願日】2010年5月28日
(65)【公表番号】特表2012-529079(P2012-529079A)
(43)【公表日】2012年11月15日
(86)【国際出願番号】US2010036547
(87)【国際公開番号】WO2010141345
(87)【国際公開日】20101209
【審査請求日】2013年5月9日
(31)【優先権主張番号】61/183,154
(32)【優先日】2009年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/332,231
(32)【優先日】2010年5月7日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ビー.ウォーカー,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ピー. ティボウ
(72)【発明者】
【氏名】トライ ディー.ファム
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エイチ.コング
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ティー.アロンソン
(72)【発明者】
【氏名】カイル ジェイ.リンドストローム
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ケー.ガーラック
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル エル.トイ
(72)【発明者】
【氏名】タウン エル.マッケンジー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー エム.レンストローム
(72)【発明者】
【氏名】スラー ジェンドウビ
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル エー.エフ.ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】スコット アール.ケイトー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エー.ヤペル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エー.ジガル
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェイ.マクマン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ディー.ソロモンソン
(72)【発明者】
【氏名】ルー フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ティー.ボイド
【審査官】 居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−348156(JP,A)
【文献】 特開2002−365410(JP,A)
【文献】 特開2007−108724(JP,A)
【文献】 特開2009−086410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/02
B32B1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロ構造を含むマイクロ構造化表面層を有するマットフィルムであって、前記マイクロ構造において、少なくとも30%のマイクロ構造が少なくとも0.7度の傾斜規模を有し、少なくとも25%のマイクロ構造が1.3度未満の傾斜規模を有するように、下記式で定義される補集合的累積傾斜規模分布を有し、
【数1】
(式中、特定の角度θでのFccは、θ以上の傾斜の割合であり、N(θ)は、度による傾斜分布であり、θは下記式
【数2】
で定義され、∇H(x, y)は下記式
【数3】
で定義される。)
50%より多くのマイクロ構造は埋め込まれたマット粒子を含まず、前記マイクロ構造化表面層のピークは少なくとも10マイクロメートルかつ30マイクロメートル未満の平均等価円直径を有する、マットフィルム。
【請求項2】
前記マイクロ構造の15%未満が、4.1度以上の傾斜規模を有する、請求項に記載のマットフィルム。
【請求項3】
前記マイクロ構造の5%未満が、4.1度以上の傾斜規模を有する、請求項に記載のマットフィルム。
【請求項4】
前記マットフィルムが70〜90%の光学的透明度を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のマットフィルム。
【請求項5】
前記マットフィルムが1〜10%の曇り度を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のマットフィルム。
【請求項6】
前記マイクロ構造化表面層が、1.60を越える屈折率を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のマットフィルム。
【請求項7】
前記マイクロ構造化表面層が、1.60未満の屈折率を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のマットフィルム。
【請求項8】
前記マイクロ構造がマット粒子を含まない、請求項1〜のいずれか一項に記載のマットフィルム。
【請求項9】
前記マイクロ構造化表面層が、少なくとも0.05マイクロメートルかつ0.14マイクロメートル以下の平均表面粗さを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のマットフィルム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
様々なマットフィルム(アンチグレアフィルムとも表現)が記載されている。マットフィルムは、交互に配置された高及び低屈折率層を有して製造され得る。そのようなマットフィルムは、低光沢を反射防止と組み合わせて有し得る。しかしながら、交互に配置された高及び低屈折率層の不在下では、それらのフィルムはアンチグレアを有するが反射防止を有さないであろう。
【0002】
米国特許第2007/0286994号の段落0039に記載されているように、マット反射防止フィルムは、典型的には、等価な光沢フィルムと比較して低い透過率と高いヘイズ値とを有する。例えば、ヘイズ値は、ASTM D1003に従って測定した場合、概して少なくとも5%、6%、7%、8%、9%又は10%である。更に、光沢表面が、ASTM D 2457−03によって60°において測定した場合、典型的には少なくとも130の光沢を有するのに対して、マット表面は120未満の光沢を有する。
【0003】
マットフィルムを得るためのいくつかの手法が存在する。
【0004】
例えば米国特許第6,778,240号に記載されているように、マット粒子を加えることによりマットコーティングを調製することができる。
【0005】
更に、マットな反射防止フィルムは、高及び低屈折率層をマットフィルム基材上に提供することによっても調製することができる。
【0006】
更なる別の手法では、アンチグレア又は反射防止フィルムの表面を粗面化し又はテクスチャリングして、マット表面を提供することができる。米国特許第5,820,957号によれば、「反射防止フィルムのテクスチャリングされた表面は、多数のテクスチャリング材料、表面又は方法のいずれかにより付与することができる。テクスチャリング材料又は表面の非限定的な例としては、マット仕上げを有するフィルム若しくはライナー、マイクロエンボス加工フィルム、所望のテクスチャリングパターン若しくは鋳型を含むマイクロ複製工具、スリーブ若しくはベルト、金属若しくはゴムロール等のロール、又はゴム被覆ロールが挙げられる」。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、マイクロ構造化表面を有するアンチグレアフィルムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの実施形態において、マイクロ構造化表面は、少なくとも30%が、少なくとも0.7度の傾斜規模を有し、かつ少なくとも25%が、1.3度未満の傾斜規模を有する、補集合的累積傾斜規模分布(complement cumulative slope magnitude distribution)を有する複数のマイクロ構造を含む。
【0009】
別の実施形態では、アンチグレアフィルムは、90%未満の透明度と、少なくとも0.05マイクロメートル〜0.14マイクロメートル以下の平均表面粗さ(Ra)と、により特徴付けられる。
【0010】
別の実施形態では、アンチグレアフィルムは、90%未満の透明度と、少なくとも0.50マイクロメートル〜1.20マイクロメートル以下の平均最大表面高さ(Rz)と、により特徴付けられる。
【0011】
別の実施形態では、アンチグレアフィルムは、90%以下の透明度により特徴付けられ、マイクロ構造化層は、少なくとも5マイクロメートル〜30マイクロメートル以下の平均等価直径を有する山を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、アンチグレアフィルムのマイクロ構造の50%以下は、埋め込まれたマット粒子を含む。好ましい実施形態では、アンチグレアフィルムは、埋め込まれたマット粒子を含まない。
【0013】
アンチグレアフィルムは、一般に、少なくとも70%の透明度と、10%以下の曇り度と、を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、マイクロ構造の少なくとも30%、少なくとも35%、又は少なくとも40%は、1.3度未満の傾斜規模を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、マイクロ構造の15%未満、又は10%未満、又は5%未満は、4.1度以上の傾斜規模を有する。更に、マイクロ構造の少なくとも70%は、典型的には少なくとも0.3度の傾斜規模を有する。
【0016】
低「スパークル」を有するいくつかの実施形態では、マイクロ構造は、少なくとも5マイクロメートル又は少なくとも10マイクロメートルの平均等価円直径(ECD)を有する山を含む。更に、山の平均ECDは、一般に30マイクロメートル未満又は25マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態において、マイクロ構造は、少なくとも5マイクロメートル又は少なくとも10マイクロメートルの平均長さを有する山を含む。更に、マイクロ構造の山の平均幅は、典型的には少なくとも5マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、山の平均幅は、15マイクロメートル未満である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】マットフィルムの概略側面図。
図2A】マイクロ構造の陥没部の概略側面図。
図2B】マイクロ構造の突出部の概略側面図。
図3A】規則的に配置されたマイクロ構造の概略上面図。
図3B】不規則に配置されたマイクロ構造の概略上面図。
図4】マイクロ構造の概略側面図。
図5】埋め込まれたマット粒子を含むマイクロ構造部分を有する光学フィルムの概略側面図。
図6】切削工具システムの概略側面図。
図7A】様々なカッターの概略側面図。
図7B】様々なカッターの概略側面図。
図7C】様々なカッターの概略側面図。
図7D】様々なカッターの概略側面図。
図8A】例示的なマイクロ構造化表面(即ち、マイクロ構造化高屈折率層H1)の2次元表面プロファイル。
図8B図8Aの例示的なマイクロ構造化表面の3次元表面プロファイル。
図8C】それぞれX及びY方向に沿った図8Aのマイクロ構造化表面の断面プロファイル。
図8D】それぞれX及びY方向に沿った図8Aのマイクロ構造化表面の断面プロファイル。
図9A】別の例示的なマイクロ構造化表面(即ち、マイクロ構造化高屈折率層H4)の2次元表面プロファイル。
図9B図9Aの例示的なマイクロ構造化表面の3次元表面。
図9C】それぞれX及びY方向に沿った図9Aのマイクロ構造化表面の断面プロファイル。
図9D】それぞれX及びY方向に沿った図9Aのマイクロ構造化表面の断面プロファイル。
図10A】様々なマイクロ構造化表面のパーセント補集合的累積傾斜規模分布を示すグラフ。
図10B】様々なマイクロ構造化表面のパーセント補集合的累積傾斜規模分布を示すグラフ。
図11】様々な例示的なマイクロ構造化表面の補集合的累積傾斜規模を示すグラフ。
図12】曲率を計算する方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書には、マット(即ち、アンチグレア)フィルムが記載される。図1を参照すると、マットフィルム100はマイクロ構造化(例えば、視認)表面層60を含み、前記表面層60は、典型的には光透過性(例えば、フィルム)基材50上に配置されている。基材50及びマットフィルムは、一般に少なくとも85%又は90%、いくつかの実施形態では少なくとも91%、92%、93%又はそれ以上の透過率を有する。
【0019】
透明基材は、フィルムであってもよい。フィルム基材の厚さは、一般に、意図される使用に依存する。大部分の用途について、基材の厚さは好ましくは約0.5mm未満、より好ましくは約0.02〜約0.2mmである。代替的に、透明フィルム基材は、光学(例えば、照射)ディスプレイであってもよく、前記ディスプレイを介して試験、画像又は他の情報が表示され得る。透明基材は、ガラス等の多種多様な非ポリマー材料、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、(例えばビスフェノールA)ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、及び例えば二軸配向ポリプロピレンのようなポリオレフィン等の様々な熱可塑性及び架橋ポリマー材料のいずれかを含むか、又はそれからなってもよく、これらは様々な光学デバイスで一般に使用されている。
【0020】
耐久性マットフィルムは、典型的には比較的厚いマイクロ構造化マット(例えば、視認)表面層を含む。マイクロ構造化マット層は、典型的には少なくとも0.5マイクロメートル、好ましくは少なくとも1マイクロメートル、より好ましくは少なくとも2又は3マイクロメートルの平均厚さ(「t」)を有する。マイクロ構造化マット層は、典型的には15マイクロメートル以下、より典型的には4又は5マイクロメートル以下の厚さを有する。しかしながら、マットフィルムの耐久性が必要でない場合、マイクロ構造化マット層の厚さは、より薄くてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、マイクロ構造は、陥没部であってもよい。例えば、図2Aは、陥没したマイクロ構造320、又はマイクロ構造キャビティを含むマイクロ構造化(例えば、マット)層310の概略側面図を示す。マイクロ構造化表面を形成する工具表面は、一般に、複数の陥没部を含む。マットフィルムのマイクロ構造は、典型的には突出部である。例えば、図2Bは、突出したマイクロ構造340を含むマイクロ構造化層330の概略側面図である。図8A〜9Dは、複数のマイクロ構造化突出部を含む様々なマイクロ構造化表面を示す。
【0022】
いくつかの実施形態において、マイクロ構造は規則的なパターンを形成し得る。例えば、図3Aは、主表面415に規則的なパターンを形成するマイクロ構造410の概略上面図である。しかしながら、典型的にはマイクロ構造は不規則なパターンを形成する。例えば、図3Bは、不規則なパターンを形成するマイクロ構造420の概略上面図である。ある場合には、マイクロ構造は無作為に見える擬無作為パターンを形成し得る。
【0023】
(例えば、個別の)マイクロ構造は、傾斜により特徴付けることができる。図4は、マイクロ構造化(例えば、マット)層140の一部分の概略側面図である。詳細には、図4は、主表面120のマイクロ構造160と、対向主表面142と、を示す。マイクロ構造160は、マイクロ構造の表面全域に傾斜分布を有する。例えば、マイクロ構造は、位置510に傾斜θを有し、θは、線530と、マット層の主表面142との間の角度でる。
【0024】
一般に、マットフィルムのマイクロ構造は、典型的には高さ分布を有し得る。いくつかの実施形態において、(実施例に記載した試験方法に従って測定した)マイクロ構造の平均高さは、約5マイクロメートル以下、又は約4マイクロメートル以下、又は約3マイクロメートル以下、又は約2マイクロメートル以下、又は約1マイクロメートル以下である。平均高さは、典型的には少なくとも0.1又は0.2マイクロメートルである。
【0025】
いくつかの実施形態において、マイクロ構造は実質的にマット粒子(例えば、無機酸化物又はポリスチレン)を含まない。しかしながら、マット粒子の不在下でも、マイクロ構造70は、図1に示すように、典型的には(例えば、ジルコニア又はシリカ)ナノ粒子30を含む。
【0026】
ナノ粒子のサイズは、可視光線の顕著な光散乱を防止するように選択される。光学特性又は材料特性を最適化するため、及び全般的な組成物コストを低下させるために、数種類の無機酸化物粒子の混合物を用いることが望ましい場合がある。表面改質コロイド状ナノ粒子は、少なくとも1nm又は5nmの(例えば非会合の)一次粒径又は会合粒径を有する無機酸化物粒子であり得る。一次粒径又は会合粒径は一般に、100nm未満、75nm未満、又は50nm未満である。典型的には、一次粒径又は会合粒径は、40nm、30nm、又は20nm未満である。ナノ粒子は、非会合性であることが好ましい。それらの測定値は、透過電子顕微鏡(TEM)に基づき得る。表面改質コロイド状ナノ粒子は、実質的に完全に凝縮可能である。
【0027】
完全凝縮ナノ粒子(シリカを例外として)は、典型的には、55%を超える、好ましくは60%を超える、より好ましくは70%を超える結晶化度(単離金属酸化物粒子として測定した場合)を有する。例えば、結晶化度は、約86%まで以上の範囲にすることができる。結晶化度は、X線回折法によって割り出すことができる。凝縮結晶性のナノ粒子(例えばジルコニアナノ粒子)は屈折率が高く、非晶質ナノ粒子は典型的には屈折率がより低い。
【0028】
ナノ粒子のサイズが相当小さいため、それらのナノ粒子はマイクロ構造を形成しない。正しくは、マイクロ構造は、複数のナノ粒子を含む。
【0029】
別の実施形態では、マイクロ構造の一部分は、埋め込まれたマット粒子を含み得る。
【0030】
マット粒子は、典型的には、約0.25マイクロメートル(250ナノメートル)を越える、又は約0.5マイクロメートルを越える、又は約0.75マイクロメートルを越える、又は約1マイクロメートルを越える、又は約1.25マイクロメートルを越える、又は約1.5マイクロメートルを越える、又は約1.75マイクロメートルを越える、又は約2マイクロメートルを越える、平均サイズを有する。より小さいマット粒子は、比較的薄いマイクロ構造化層を含むマットフィルムには一般的である。しかしながら、マイクロ構造化層がより厚い実施形態では、マット粒子は、5マイクロメートル又は10マイクロメートル迄の平均サイズを有し得る。マット粒子の濃度は、少なくとも1又は2重量%〜約5、6、7、8、9又は10重量%以上の範囲であり得る。
【0031】
図5は、基材850上に配置されたマット層860を含む光学フィルム800の概略側面図である。マット層860は、基材850に付着された第1の主表面810と、重合バインダー840中に分散された複数のマット粒子830及び/又はマット粒子凝集体とを含む。マイクロ構造870のうちの相当部分、例えば少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%には、マット粒子830又はマット粒子凝集体880が存在しない。したがって、それらのマイクロ構造は(例えば、埋め込まれた)マット粒子を含まない。(例えば、シリカ又はCaCO)マット粒子の存在は、以下に記載するように、それらのマット粒子の存在が所望の反射防止、透明度、及び曇り度特性を提供するのに不十分であったとしても、改善された耐久性を提供し得ることが推定される。しかしながら、マット粒子のサイズが比較的大きいため、コーティング組成物中に均一に分散されたマット粒子を維持することは困難であり得る。このことは、適用されたマット粒子の濃度に変動を生じる場合があり(特にウェブコーティングの場合)、これは次にマット特性に変動を生じる。
【0032】
マイクロ構造の少なくとも一部分が埋め込みマット粒子又は凝集マット粒子を含む実施形態では、マット粒子の平均サイズは、典型的にはマイクロ構造の平均サイズよりも十分小さく(例えば、少なくとも約2以上の因数により)、したがって図5に示すように、マット粒子がマイクロ構造化層の重合性樹脂組成物で包囲される。
【0033】
マット層が埋め込みマット粒子を含む場合、マット層は、典型的には粒子の平均サイズよりも少なくとも約0.5マイクロメートル、又は少なくとも約1マイクロメートル、又は少なくとも約1.5マイクロメートル、又は少なくとも約2マイクロメートル、又は少なくとも約2.5マイクロメートル、又は少なくとも約3マイクロメートル大きい平均厚さ「t」を有する。
【0034】
マイクロ構造化表面は、任意の好適な製作方法により作製することができる。マイクロ構造は、典型的には、米国特許第5,175,030号(Luら)及び第5,183,597号(Lu)に記載されているように、重合性樹脂組成物を工具表面と接触させて成型及び硬化させることにより、工具からのマイクロ複製により製作される。工具は、任意の利用可能な製作方法、例えばエングレービング又はダイヤモンド切削を用いることにより製作することができる。例示的なダイヤモンド切削システム及び方法は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際出願公開第WO 00/48037号、並びに米国特許第7,350,442号及び同第7,328,638号に記載されているような高速工具サーボ(fast tool servo)(FTS)を含み及び使用し得る。
【0035】
図6は、マイクロ複製されてマイクロ構造160及びマット層140を製造し得る工具の切削に使用され得る切削工具システム1000の概略側面図である。切削工具システム1000は、ねじ切り旋盤プロセスを使用し、ドライバー1030によって中心軸1020を中心として回転し及び/又は中心軸1020に沿って移動し得るロール1010と、ロール材料を切削するためのカッター104と、を含む。カッターは、サーボ1050上に取り付けされ、ドライバー1060によってx方向に沿ってロール内へ及び/又はロールに沿って移動され得る。一般に、カッター1040はロール及び中心軸1020に対して垂直に取り付けられ、ロールが中心軸を中心として回転している間、ロール1010のエングレービング可能な材料内に押し進められる。次いで、カッターは中心軸に平行に押し進められて、ねじ切りを生成する。カッター1040を、高周波でかつ少ない変位で同時に作動させて、マイクロ複製された際にマイクロ構造160を生じる構造をロール内に生成し得る。
【0036】
サーボ1050は高速工具サーボ(FTS)であり、カッター1040の位置を迅速に調整する、度々PZTスタックと称されるソリッド・ステート圧電(PZT)装置を含む。FTS 1050は、カッター1040のx、y及び/若しくはz方向、又は軸外の方向における非常に正確かつ非常に高速な移動を可能にする。サーボ1050は、静止位置に対して制御動作を生成できる任意の高品質変位サーボであってもよい。ある場合には、サーボ1050は、0〜約20マイクロメートルの範囲の変位を、約0.1マイクロメートル又はそれより良好な分解能にて確実にかつ反復して提供し得る。
【0037】
ドライバー1060は、カッター1040をx方向に沿って中心軸1020に平行に移動し得る。ある場合に、ドライバー1060の変位分解能は約0.1マイクロメートルよりも良好であり、又は約0.01マイクロメートルよりも良好である。ドライバー1030により生成される回転動作がドライバー1060により生成される並行移動と同期化されて、得られるマイクロ構造160の形状を正確に制御する。
【0038】
ロール1010のエングレービング可能な材料は、カッター1040によってエングレービングされることが可能な任意の材料であってもよい。例示的なロール材料としては、銅、様々なポリマー、及び様々なガラス材料が挙げられる。
【0039】
カッター1040は、任意の種類のカッターであってもよく、用途にて望ましい任意の形状を有してもよい。例えば、図7Aは、半径「R」の弓形切削チップ1115を有するカッター1110の概略側面図である。ある場合には、切削チップ1115の半径Rは、少なくとも約100マイクロメートル、又は少なくとも約150マイクロメートル、又は少なくとも約200マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、切削チップの半径Rは、又は少なくとも約300マイクロメートル、又は少なくとも約400マイクロメートル、又は少なくとも約500マイクロメートル、又は少なくとも約1000マイクロメートル、又は少なくとも約1500マイクロメートル、又は少なくとも約2000マイクロメートル、又は少なくとも約2500マイクロメートル、又は少なくとも約3000マイクロメートルである。
【0040】
代替的に、工具のマイクロ構造化表面は、図7Bに示すようなV形切削チップ1125を有するカッター1120、図7Cに示すような、部分的に直線状の切削チップ1135を有するカッター1130、又は7Dに示すような湾曲切削チップ1145を有するカッター1140を使用して、形成されてもよい。1つの実施形態では、少なくとも約178度以上の頂角βを有するV形切削チップを使用した。
【0041】
再び図6を参照すると、ロール材料を切削する間の、中心軸1020に沿ったロール1010の回転とx方向に沿ったカッター104の移動とが、中心軸に沿ってピッチPを有するねじ経路をロールの周囲に画定する。カッターがロール表面に垂直な方向に沿って移動してロール材料を切削するにつれて、カッターによって切削される材料の幅が、カッターの内外への移動又は突入と共に変化する。例えば図7Aを参照すると、カッターによる最大侵入深さは、カッターにより切削される最大幅Pに対応する。一般に、比P/Pは約2〜約4の範囲内にある。
【0042】
いくつかのマイクロ構造化高屈折率層は、高屈折率のマット層を作製するための9個の異なるパターン化工具をマイクロ複製して作製された。高屈折率マット層のマイクロ構造化表面は、工具表面の正確な複製物であったため、マイクロ構造化高屈折率層に関する今後の説明は、逆工具表面の説明でもある。マイクロ構造化表面H5及びH5Aは同一の工具を使用したため、次に記載するように、実質的に同一の補集合的累積傾斜規模分布Fcc(θ)及び山の寸法特性を有する。マイクロ構造化表面H10A及びH10Bも同一の工具を使用したため、実質的に同一の補集合的累積傾斜規模分布Fcc(θ)及び山の寸法特性を呈する。マイクロ構造化表面H2A、H2B及びH2Cも、同一の工具を使用した。したがって、H2B及びH2Cは、H2Aと実質的に同一の補集合的累積傾斜規模分布及び山の寸法特性を有する。
【0043】
例示的なマイクロ構造化高屈折率層の表面プロファイルのいくつかの例を、図8A〜9Dに示す。
【0044】
約200マイクロメートル×250マイクロメートル〜約500マイクロメートル×600マイクロメートルの面積に亘る面積を有する、製作されたサンプルの表面の代表的な部分を、原子間力顕微鏡法(AFM)、共焦点顕微鏡法又は位相シフト干渉法により、実施例に記載した試験方法に従って特徴付けた。
【0045】
傾斜分布のFcc(θ)補集合的累積傾斜規模分布は、以下の等式により定義される。
【0046】
【数1】
【0047】
特定の角度(θ)におけるFccは、θ以上の傾斜の割合である。
【0048】
マイクロ構造化された(例えば、高屈折率層の)マイクロ構造のFcc(θ)を、以下の表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
H11は、SiO粒子を含む市販のマットARフィルムである。
【0051】
図10Aは、他のサンプル、サンプルAに関するパーセント累積傾斜分布を示す。図10Aから明らかなように、サンプルAの表面の約100%が約3.5度未満の傾斜規模を有した。更に、解析された表面の約52%が約1度未満の傾斜規模を有し、解析された表面の約72%が約1.5度未満の傾斜規模を有した。
【0052】
サンプルAと類似した、B、C及びDと標識した3つの追加のサンプルを特徴付けた。4つの全サンプルA〜Dはマイクロ構造160と同様のマイクロ構造を有し、工具システム1000と同様の切削工具システムを使用して、カッター1120と同様のカッターを使用してパターン化ロールを作製し、続いてパターン化工具をマイクロ複製してマット層140と同様のマット層を作製することにより、作製された。サンプルBは、約95.2%の光透過率、約3.28%の光学的曇り度及び約78%の光学的透明度を有し、サンプルCは、約94.9%の光透過率、約2.12%の光学的曇り度及び約86.1%の光学的透明度を有し、サンプルDは、約94.6%の光透過率、約1.71%の光学的曇り度及び約84.8%の光学的透明度を有した。加えて、R1〜R6と標識した6個の比較サンプルを特徴付けた。
【0053】
サンプルA〜Dのマイクロ構造のFcc(θ)は、以下の通りであった。
【0054】
【表2】
【0055】
本明細書に開示した光学的透明度値は、BYK−Gardiner製のHaze−Gard Plusヘイズメーターを使用して測定した。表1に示したように、重合(例えば、高屈折率)ハードコートマイクロ構造化表面の光学的透明度は、概して少なくとも約60%又は65%である。いくつかの実施形態において、光学的透明度は、少なくとも75%又は80%である。いくつかの実施形態において、透明度は、90%又は89%又は88%又は87%又は86%又は85%以下である。
【0056】
光学的曇り度は、典型的には、法線方向から2.5度を越えて逸脱する透過光の、総透過光に対する比として定義される。本明細書に開示した光学的曇り度値も、ASTM D1003に記載されている手順に従って、Haze−Gard Plusヘイズメーター(BYK−Gardiner,Silver Springs,Md.から入手可能)を使用して測定した。上記の表1に示したように、重合(例えば、高屈折率)ハードコートマイクロ構造化表面の光学的曇り度は、20%未満、好ましくは15%未満であった。好ましい実施形態では、光学的曇り度は、約1%又は2%又は3%〜約10%の範囲である。いくつかの実施形態では、光学的曇り度は、約1%又は2%又は3%〜約5%の範囲である。
【0057】
傾斜規模の列に報告した各値は、それらの傾斜規模以上を有するマイクロ構造の総百分率(即ち、マイクロ構造化表面の総百分率)である。例えば、マイクロ構造化表面H6の場合、マイクロ構造の97.3%が0.1度以上の傾斜規模を有し、マイクロ構造の89.8%が0.3度以上の傾斜規模を有し、マイクロ構造の62.6%が0.7度以上の傾斜規模を有し、マイクロ構造の22.4%が1.3度以上の傾斜規模を有し、マイクロ構造(測定した範囲の)の0(なし)が4.1度以上の傾斜規模を有した。逆に、マイクロ構造の62.6%が0.7度以上の傾斜規模を有したため、100%−62.6%=37.4%が、0.7度未満の傾斜規模を有した。更に、マイクロ構造の22.4%が1.3度大きい傾斜規模を有したため、100%−22.4%=77.6%が、1.3度未満の傾斜規模を有した。
【0058】
表1並びに図10A、10B及び図11に示すように、それぞれのマイクロ構造化表面のマイクロ構造の少なくとも90%以上が、少なくとも0.1度以上の傾斜規模を有した。更に、マイクロ構造の少なくとも75%が、少なくとも0.3度の傾斜規模を有した。
【0059】
前部(例えば、視認)表面マット層としての使用に好適な、高い透明度及び低い曇り度を有する好ましいマイクロ構造化表面は、H1とは異なる補集合的累積傾斜分布特性を有した。H1の場合、マイクロ構造の少なくとも97.3%が、少なくとも0.7度の傾斜規模を有した。2.7%のみが0.7度未満の傾斜規模を有した。他のマイクロ構造化表面では、マイクロ構造の少なくとも25%又は30%又は35%又は40%、いくつかの実施形態では、少なくとも45%又は50%又は55%又は60%又は65%又は70%又は75%が少なくとも0.7度の傾斜規模を有した。したがって、少なくとも25%又は30%又は35%又は40%又は45%又は50%又は55%又は60%又は65%又は70%が、0.7度未満の傾斜規模を有した。
【0060】
代替的に、又はそれに加えて、好ましいマイクロ構造化表面は、H1がマイクロ構造の少なくとも91.1%が少なくとも1.3度の傾斜規模を有した点で、H1と区別されることができた。8.9%のみが1.3度未満の傾斜規模を有した。他のマイクロ構造化表面では、マイクロ構造の少なくとも25%が、1.3度未満の傾斜規模を有した。いくつかの実施形態において、マイクロ構造の少なくとも30%又は35%又は40%又は45%が、少なくとも1.3度の傾斜規模を有したしたがって、マイクロ構造の55%又は60%又は65%が、1.3度未満の傾斜規模を有した。別の実施形態では、マイクロ構造の少なくとも5%又は10%又は15%又は20%が、少なくとも1.3度の傾斜規模を有した。したがって、マイクロ構造の80%又は85%又は90%又は95%が、1.3度未満の傾斜規模を有した。
【0061】
代替的に、又はそれに加えて、H1ではマイクロ構造の少なくとも約28.7%が少なくとも4.1度の傾斜規模を有した一方、好ましいマイクロ構造化表面では、マイクロ構造の20%又は15%又は10%未満が4.1度以上の傾斜規模を有した点で、マットなマイクロ構造化表面はH1から区別され得る。したがって、80%又は85%又は90%が4.1度未満の傾斜規模を有した。1つの実施形態では、マイクロ構造の5〜10%が4.1度以上の傾斜規模を有した。殆どの実施形態では、マイクロ構造の5%又は4%又は3%又は2%又は1%未満が4.1度以上の傾斜規模を有した。
【0062】
マイクロ構造化表面は、下記の実施例に記載する試験方法に従って特徴付けた際、複数の山を含む。山の寸法的特徴は、以下の表2に報告する。
【0063】
【表3】
【0064】
これらの寸法的特徴は、マット表面とLCD画素との相互作用を原因とする、マット表面を介して表示される画像の視覚的劣化である「スパークル」に関連することが見出された。スパークルの外観は、LCD画像上に「粒状性」を重ね合わせて、透過された像の透明度を損なう複数の特定の色の輝点として説明することができる。スパークルのレベル又は量は、マイクロ複製された構造と、LCDの画素との相対的なサイズの相違に依存する(即ち、スパークルの量はディスプレイ依存性である)。一般に、マイクロ複製構造は、スパークルを排除するためにLCD画素サイズよりも遙かに小さい必要がある。スパークルの量は、商標名「Apple iPod Touch」で入手可能な、白色状態のLCDディスプレイ(顕微鏡で測定して約159μmの画素ピッチを有する)上で、一組の物理的許容基準(異なるレベルのスパークルを有するサンプル)との視覚的比較によって評価される。等級は1〜4の範囲であり、1が最少、4が最多のスパークル量である。
【0065】
比較例H1は少量のスパークルを有したが、このマイクロ構造化(例えば、高屈折率)層は、表1に報告したように、低い透明度及び高い曇り度を有した。
【0066】
比較例H11は、実質的に全部の山がマット粒子によって形成されている市販のマットフィルムである。したがって、平均等価円直径(ECD)、平均長さ及び平均幅は、ほぼ同一である。他の実施例(即ち、H1を除く)は、比較例H11とは実質的に異なる山寸法特性を有するマットフィルムによって低スパークルが獲得できることを示す。例えば、他の全部の例示的なマイクロ構造化表面の山は、比較例H11よりも実質的に高い、少なくとも5マイクロメートル、典型的には少なくとも10マイクロメートルの平均ECDを有した。更に、H3及びH7よりも低いスパークルを有する他の実施例は、30マイクロメートル未満又は25マイクロメートル未満の平均ECD(即ち、山)を有した。他の例示的なマイクロ構造化表面の山は、5マイクロメートルを越える(即ち、H11よりも長い)、典型的には10マイクロメートルを越える、平均長さを有した。例示的なマイクロ構造化表面の山の平均幅も、少なくとも5マイクロメートルである。低スパークルの実施例の山は、約20マイクロメートル以下の平均長さ、いくつかの実施形態では、10又は15マイクロメートル以下の平均長さを有した。幅対長さの比(即ち、W/L)は、典型的には少なくとも1.0、又は0.9、又は0.8である。いくつかの実施形態において、W/Lは、少なくとも0.6である。別の実施形態では、W/Lは、0.5又は0.4未満、典型的には少なくとも0.1又は0.15未満である。最近傍(即ち、NN)は、典型的には少なくとも10又は15マイクロメートルでありかつ100マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態において、NNは、15マイクロメートル〜約20マイクロメートル又は25マイクロメートルの範囲である。W/Lが0.5未満である実施形態を除いて、より高いスパークルの実施形態は、典型的には少なくとも約30又は40マイクロメートルのNNを有する。
【0067】
典型的なマイクロ構造化層及びマットフィルムに関しては、マイクロ構造は実質的に表面全体を覆う。しかしながら、理論に束縛されるものではないが、少なくとも0.7度の傾斜規模を有するマイクロ構造は、所望のマット特性を提供すると考えられる。したがって、少なくとも0.7度の傾斜規模を有するマイクロ構造は、主表面の少なくとも約25%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%を覆い得るが、尚、所望の高い透明度及び低い曇り度を提供すると推定される。
【0068】
マイクロ構造化表面の複数の山は、平均高さ、平均粗さ(Ra)、及び平均最大表面高さ(Rz)に関連して特徴付けることもできる。
【0069】
【表4】
【0070】
平均表面粗さ(即ち、Ra)は、典型的には0.20マイクロメートル未満である。高い透明度を十分な曇り度と共に有する好ましい実施形態は、0.18又は0.17又は0.16又は0.15マイクロメートル以下のRaを有する。いくつかの実施形態において、Raは0.14又は0.13又は0.12又は0.11又は0.10マイクロメートル未満である。Raは、典型的には少なくとも0.04又は0.05マイクロメートルである。
【0071】
平均最大表面高さ(即ち、Rz)は、典型的には3マイクロメートル未満又は2.5マイクロメートル未満である。高い透明度を十分な曇り度と共に有する好ましい実施形態は、1.20マイクロメートル以下のRzを呈する。いくつかの実施形態において、Rzは、1.10又は1.00又は0.90又は0.80マイクロメートル未満である。Rzは、典型的には少なくとも0.40又は0.50マイクロメートルである。
【0072】
マットフィルムのマイクロ構造化層は、典型的には、重合性樹脂の反応生成物等の高分子材料を含む。重合性樹脂は、好ましくは表面改質ナノ粒子を含む。様々なフリーラジカル重合性モノマー、オリゴマー、ポリマー、及びこれらの混合物を高屈折率層の有機材料中に用いることができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、マットフィルムのマイクロ構造化層は、高い屈折率、即ち少なくとも1.60以上の屈折率を有する。いくつかの実施形態において、屈折率は、少なくとも1.62又は少なくとも1.63又は少なくとも1.64又は少なくとも1.65である。
【0074】
例えば、単独又は組み合せの形のジルコニア(「ZrO」)、チタニア(「TiO」)、酸化アンチモン、アルミナ、酸化スズを含む様々な高屈折率粒子が知られている。混合金属酸化物が使用されてもよい。高屈折率層中で使用するためのジルコニアは、「Nalco OOSSOO8」の商標名でNalco Chemical Co.から、及び「Buhler zirconia Z−WO sol」の商標名でBuhler AG Uzwil,Switzerlandから、入手可能である。ジルコニアナノ粒子はまた、米国特許第7,241,437号及び同第6,376,590号に記載されているように調製されてもよい。マット層の最大屈折率は、架橋有機材料中に分散された高屈折率無機(例えば、ジルコニア)ナノ粒子を有するコーティングについては、典型的には約1.75以下である。
【0075】
別の実施形態では、マットフィルムのマイクロ構造化層は、1.60未満の屈折率を有する。例えば、マイクロ構造化層は、約1.40〜約1.60の範囲の屈折率を有し得る。いくつかの実施形態において、マイクロ構造化層の屈折率は、少なくとも約1.47、1.48又は1.49である。
【0076】
1.60未満の屈折率を有するマイクロ構造化層は、典型的には、1つ以上のフリーラジカル重合性材料を含む重合性組成物の反応生成物と、典型的には低屈折率(例えば、1.50未満)を有する、表面改質無機ナノ粒子と、を含む。
【0077】
従来のハードコート組成物中で使用するための様々なフリーラジカル重合性モノマー及びオリゴマーが記載されており、前記モノマー及びオリゴマーには、例えば(a)1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル含有化合物;(b)グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル含有化合物;(c)ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート等の高官能性(メタ)アクリル含有化合物;(d)例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート類、エポキシアクリレート等のオリゴマー(メタ)アクリル化合物;前述したもののポリアクリルアミド類似体;及びそれらの組み合わせが挙げられる。このような化合物は、例えば、Exton,PennsylvaniaのSartomer Company;Smyrna,GeorgiaのUCB Chemicals Corporation;及びMilwaukee,WisconsinのAldrich Chemical Company等の供給業者から広く入手可能である。追加の有用な(メタ)アクリレート材料には、例えば、米国特許第4,262,072号(Wendlingら)に記載されているようなヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。中屈折率組成物中に使用されるシリカは、Nalco Chemical Co.,Naperville,Ill.から、製品1040、1042、1050、1060、2327及び2329等、商標名「Nalco Collodial Silicas」で市販されている。好適なヒュームドシリカには、例えば、DeGussa(Hanau,Germany)から、商標名「AerosilシリーズOX−50」並びに製品番号−130、−150及び−200で市販されている製品が挙げられる。ヒュームドシリカはまた、Cabot Corp.,Tuscola,Ill.から商標名「CAB−O−SPERSE 2095」、「CAB−O−SPERSE A105」及び「CAB−O−SIL M5」で市販されている。
【0078】
マイクロ構造化マット層中の(例えば、無機)ナノ粒子の濃度は、典型的には少なくとも25重量%又は30重量%である。中屈折率層は、典型的には50重量%又は40重量%以下の無機酸化物ナノ粒子を含む。高屈折率層中の無機ナノ粒子の濃度は、典型的には少なくとも40重量%でありかつ約60重量%又は70重量%以下である。
【0079】
無機ナノ粒子は、好ましくは表面処理剤で処理される。シリカに対してはシランが好ましく、ケイ酸質充填剤に対しては他のものが好ましい。ジルコニアのような金属オキシドに対しては、シラン及びカルボン酸が好ましい。様々な表面処理が知られており、そのいくつかは、米国特許第2007/0286994号に記載されている。
【0080】
1つの実施形態において、マイクロ複製層は、約1対1の比の、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を含む架橋モノマー(SR444)と表面改質シリカとを含有する組成物から調製される。別の実施形態では、マイクロ複製層は、シリカナノ粒子を含まない組成物から調製される。そのような組成物は、脂肪族ウレタンアクリレート(CN9893)及びヘキサンジオールアクリレート(SR238)を含有する。
【0081】
高屈折率(例えば、ジルコニア)ナノ粒子は、参照により本明細書に組み込まれる国際出願第PCT/US2009/065352号に記載されているように、カルボン酸末端基及びC〜Cエステル繰り返し単位又は少なくとも1つのC〜C16エステル単位を含む化合物を含有する表面処理剤で表面処理されてもよい。
【0082】
この化合物は、典型的には、次の一般式を有する。
【0083】
【化1】
式中、
nの平均は、1.1〜6であり、
L1は、C〜Cのアルキル基、アリールアルキル基、又はアリール基であり、所望により1つ以上の酸素原子又はエステル基によって置換され、
L2は、C〜Cのアルキル基、アリールアルキル基、又はアリール基であり、所望により1つ以上の酸素原子によって置換され、
Yは、
【0084】
【化2】
であり、
Zは、C〜Cのアルキル基、エーテル基、エステル基、アルコキシ基、(メタ)アクリレート基、又はこれらの組み合わせを含む、末端基である。
【0085】
いくつかの実施形態では、L2はC6〜C8のアルキル基を含み、nの平均は1.5〜2.5である。Zは、好ましくは、C〜Cのアルキル基を含む。Zは、(メタ)アクリレート末端基を含むことが好ましい。
【0086】
カルボン酸末端基、及びC〜Cのエステル繰り返し単位を含む表面改質剤は、ヒドロキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のヒドロキシポリカプロラクトンを、脂肪族無水物又は芳香族無水物と反応させることから誘導することができる。このヒドロキシポリカプロラクトン化合物は、典型的には、分子の分布を有する重合混合物として入手可能である。分子の少なくとも一部分は、C〜Cのエステル繰り返し単位を有し、即ち、nは少なくとも2である。しかしながら、この混合物はまた、nが1である分子も含むため、ヒドロキシポリカプロラクトン化合物混合物に関するnの平均は、1.1、1.2、1.3、1.4、又は1.5となり得る。いくつかの実施形態では、nの平均は、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、又は2.5である。
【0087】
好適なヒドロキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート化合物は、Cognisより商標名「Pemcure 12A」で、及びSartomerより商標名「SR495」(344g/モルの分子量を有すると報告されている)で市販されている。
【0088】
好適な脂肪族無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水スベリン酸、及び無水グルタル酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、脂肪族無水物は、無水コハク酸であることが好ましい。
【0089】
芳香族無水物は、比較的高い屈折率を有する(例えば、少なくとも1.50の屈折率)。芳香族無水物から誘導されたもののような表面処理化合物を含有させることにより、重合性樹脂組成物全体の屈折率を上昇させることができる。好適な芳香族無水物としては、例えば、無水フタル酸が挙げられる。
【0090】
代替的に、又はそれに加えて、表面処理剤は、前述したような脂肪族又は芳香族無水物と、ヒドロキシル(例えば、C〜C)アルキル(メタ)アクリレートとの反応により調製された(メタ)アクリレート官能性化合物を含有してもよい。
【0091】
この種類の表面改質剤の例は、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、及びグルタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル、コハク酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル、及びグルタル酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステルである。これらの化学種は、参考として本明細書に組み込まれる、国際公開第2008/121465号に示されている。
【0092】
マイクロ構造化層の重合性組成物は、典型的には、少なくとも5重量%又は10重量%の架橋剤(即ち、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を有するモノマー)を含有する。低屈折率組成物中の架橋剤の濃度は、一般に約30重量%又は25重量%又は20重量%以下である。高屈折率組成物中の架橋剤の濃度は、一般に約15重量%以下である。
【0093】
適切な架橋剤モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer Company,Exton,Pa.から商標名「SR351」で市販)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer Company,Exton,Pa.から商標名「SR454」で市販)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート(Sartomerから商標名「SR444」で市販)、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(Sartomerから商標名「SR399」で市販)、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールトリアクリレート(Sartomerから商標名「SR494」で市販)ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Sartomerから商標名「SR368」で市販)が挙げられる。いくつかの態様では、ヒダントイン部分含有マルチ−(メタ)アクリレート化合物、例えば米国特許第4,262,072号(Wendling et al.)に記載されているものが、用いられている。
【0094】
高屈折率重合性組成物は、典型的には、2つの(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の芳香族(メタ)アクリレートモノマー(即ち、ジ(メタ)アクリレートモノマー)を含有する。
【0095】
いくつかの実施形態において、ジ(メタ)アクリレートモノマーは、ビスフェノールAから誘導される。1つの例示的なビスフェノールAエトキシル化ジアクリレートモノマーは、Sartomerより、商標名「SR602」(20℃で610cpsの粘度と、2℃のガラス転移温度(Tg)とを有すると報告されている)で市販されている。別の例示的なビスフェノールAエトキシル化ジアクリレートモノマーは、Sartomerより、商標名「SR601」(20℃で、1080cpsの粘度と、60℃のTgを有すると報告されている)で市販されている。米国特許第7,282,272号に記載されているもの等、様々な他のビスフェノールAモノマーが当技術分野にて記載されている。
【0096】
別の実施形態では、高屈折率層及びARフィルムは、ビスフェノールAから誘導されたモノマーを含まない。
【0097】
好適な1種の二官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2008/0221291号に記載されているビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーである。ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、以下の一般式を有し得る。
【0098】
【化3】
【0099】
式中、それぞれのR1は独立してH又はメチルであり、
それぞれのR2は独立してBrであり、
mは0〜4の範囲であり、
それぞれのQは独立してO又はSであり、
nは0〜10の範囲であり、
Lは1つ以上のヒドロキシル基により所望により置換されたC2〜C12アルキル基であり、
zは芳香環であり、
tは独立して0又は1である。
【0100】
−Q[L−O]n C(O)C(R1)=CH基の少なくとも一方、好ましくは両方は、モノマーが25℃で液体であるようにオルト又はメタ位にて置換されている。
【0101】
このようなビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、単独で、又は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2008/112452号に記載されているもの等のトリフェニルトリ(メタ)アクリレートモノマーと組み合わせて使用されてもよい。国際公開第WO2008/112452号は、高屈折率層に好適な成分としても推定されるトリフェニルモノ(メタ)アクリレート及びジ(メタ)アクリレートも記載している。
【0102】
いくつかの実施形態において、二官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、450g/モル未満の分子量を有し、かつ少なくとも1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57又は1.58の屈折率を有する芳香族モノ(メタ)アクリレートモノマーと組み合わされる。そのような反応性希釈剤は、典型的には、フェニル、ビフェニル、又はナフチル基を含む。更に、このような反応性希釈剤は、ハロゲン化されてもよく、又は非ハロゲン化(例えば非臭素化)されてもよい。ビフェニルモノ(メタ)アクリレートモノマー等の反応性希釈剤を含有させることにより、有機成分の屈折率の上昇、及び粘度の低減による重合性組成物の加工性の改善が、同時に可能になる。
【0103】
芳香族モノ(メタ)アクリレート反応性希釈剤の濃度は、典型的には1重量%又は2重量%〜約10重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、高屈折率層は、9、8、7、6又は5重量%以下の反応性希釈剤を含む。過剰の反応性希釈剤が使用された場合、高屈折率層及び反射防止フィルムは、低下された鉛筆硬度を呈し得る。例えば、単官能性の反応性希釈剤の合計が約7重量%以下の場合、鉛筆硬度は典型的には約3H〜4Hである。しかしながら、単官能性希釈剤の合計が7重量%を越える場合、鉛筆硬度は2H以下に低下し得る。
【0104】
好適な反応性希釈剤としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、2−ナフチルチオエチルアクリレート、1−ナフチルチオエチルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチルアクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチルアクリレート、2−ブロモフェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルオキシエチルアクリレート、2−ナフチルオキシエチルアクリレート、フェノキシ−2−メチルエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,4−ジブロモ−6−sec−ブチルフェニルアクリレート、2,4−ジブロモ−6−イソプロピルフェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレートが挙げられる。ペンタブロモベンジルアクリレート及びペンタブロモフェニルアクリレート等の、他の高屈折率モノマーもまた用いることができる。
【0105】
1つの好適な希釈剤は、フェノキシエチルアクリレート(PEA)である。フェノキシエチルアクリレートは2つ以上の供給元から市販され、Sartomerから商標名「SR339」で、Eternal Chemical Co.Ltd.から商標名「Etermer 210」で、及びToagosei Co.Ltdから商標名「TO−1166」で市販されているものを含む。ベンジルアクリレートは、Alfa Aeser Corp(Ward Hill,MA)から市販されている。
【0106】
光学ディスプレイ又はフィルム上のマットコーティングの形成方法は、光透過可能な基材層を提供する工程と、この基材層上にマイクロ構造化層を提供する工程と、を含み得る。
【0107】
マイクロ構造化層は、例えば、Hバルブ又は他のランプを用いて、所望の波長で、好ましくは不活性雰囲気(酸素50ppm未満)内で紫外線に曝露することによって硬化させ得る。この反応メカニズムを通じて、フリーラジカル重合性物質を架橋させる。硬化したマイクロ構造化層を炉内で乾燥して、光開始剤の副生成物、又は、存在する場合、微量の溶媒を除去し得る。代替的に、より大量の溶媒を含有する重合性組成物をウェブ上に揚送し、乾燥した後、マイクロ複製及び硬化させてもよい。
【0108】
通常、基材は連続ウェブのロールの形状であるのが好都合だが、個々のシートにコーティングを塗布してよい。
【0109】
この基材は、基材と隣接層との間の接着を改善するために、例えば、空気又は窒素コロナ、プラズマ、火炎、又は化学線のような化学処理、コロナ処理により処理できる。所望であれば、中間層接着を増大させるため、任意の結合層又はプライマーを基材及び/又はハードコート層に適用することができる。代替的に、又はそれに加えて、プライマーを適用して干渉縞を低減し、又は静電気防止特性を提供してもよい。
【0110】
様々な恒久的な及び除去可能なグレード接着剤組成物が、フィルム基材の反対側に提供されてよい。感圧接着剤を使用する実施形態については、反射防止フィルム物品は典型的には除去可能な剥離ライナーを含む。ディスプレイ表面に適用する間に、反射防止フィルム物品がこのディスプレイ表面に接着することができるように剥離ライナーを取り外す。
【実施例】
【0111】
マイクロ構造化表面の特徴付け
以下の方法を用いて、原子間力顕微鏡法(AFM)、共焦点レーザー走査顕微鏡法(CSLM)又は位相シフト干渉法(PSI)により得た、山領域と、高さプロファイルにおける関心対象とを、約200マイクロメートル×250マイクロメートル〜約500マイクロメートル×600マイクロメートルの面積に亘る範囲の面積上で、10倍の対物レンズを有するWyko Surface Profilerを使用することにより同定及び特徴付けた。この方法は、曲率上の閾値化と反復アルゴリズムとを使用して、選択を最適化する。単純な高さ閾値の代わりに曲率を使用することにより、谷内に存在する、関連した山を見つけ出すことが補助される。単一の連続したネットワークの選択を回避することが補助される場合がある。
【0112】
高さプロファイルの解析に先だって、メディアンフィルターを使用してノイズを低減する。次いで、高さプロファイルの各地点に関して、最急傾斜の方向に平行な曲率(傾斜ベクトルに沿って)を計算した。この方向に直交する曲率も計算した。曲率は3つの地点を用いて計算し、以下のセクションに記載する。これら2方向の少なくとも一方にて正の曲率を有する範囲を同定することにより、山領域を同定する。他方の方向における曲率は、過度に負であってはならない。これを達成するために、これら2つの曲率上に閾値化を用いることにより二値画像を形成した。二値画像にいくつかの標準的な画像処理関数を適用して、二値画像を浄化した。加えて、浅すぎる山領域を除去した。
【0113】
メディアンフィルターのサイズと、曲率計算に使用した地点間の距離は重要である。それらが小さすぎる場合、主な山は、山上の不完全性を原因として、より小さい領域に分割され得る。それらが大きすぎる場合、関連した山を同定し得ない。これらのサイズは、山領域のサイズ又は山間の谷領域の幅のいずれか小さい方に対応するよう設定された。しかしながら、領域サイズは、メディアンフィルターのサイズと、曲率計算用の地点間の距離とに依存する。したがって、良好な山同定をもたらす、いくつかの設定条件を満足する間隔を同定するのに反復プロセスを使用した。
【0114】
傾斜及び曲率の解析
表面プロファイルデータは、表面の高さをx及びy位置の関数として与える。本発明者らは、このデータを関数H(x,y)として表す。画像のx方向は、画像の水平方向である。画像のy方向は、画像の垂直方向である。
【0115】
MATLABを使用して、以下を計算した。
【0116】
1.傾斜ベクトル
【0117】
【数2】
【0118】
2.傾斜(度による)分布−N(θ)
【0119】
【数3】
【0120】
3.FCC(θ)−傾斜分布の補集合的累積分布
【0121】
【数4】
【0122】
CC(θ)は累積傾斜分布の補集合であり、θ以上の傾斜の割合を与える。
【0123】
4.g−曲率、傾斜ベクトルの方向における曲率(逆マイクロメートル)
5.t−曲率、傾斜ベクトルを横断する方向における曲率(増加マイクロメートル)
曲率
図12に示すように、傾斜計算に使用した2地点と中心地点とを使用して、1地点の曲率を計算した。この解析において、曲率は、これら3地点で形成された三角形が内接する円の半径で1を除算したものとして定義される。
【0124】
曲率=±1/R=±2sin(θ)/d
式中、θは、三角形の、斜辺の反対側の角度であり、dは斜辺の長さである。曲率は、湾曲が上方に凹の場合、負であり、下方に凹の場合、正であると定義される。
【0125】
曲率は、傾斜ベクトル方向に沿って(即ち、g−曲率)及び傾斜ベクトルに横断する方向に沿って(即ち、t−曲率)測定される。補間を用いて2つの終点を得る。
【0126】
山の区分
曲率プロファイルを使用して、サンプル表面上の山に関するサイズ統計を得る。曲率プロファイルの閾値化を二値画像の生成に用いて、この二値画像は山の同定に使用される。MATLABを使用して、各画素に以下の閾値化を適用して、山の同定のための二値画像を生成した。
【0127】
max(g−曲率、t−曲率)>c0max
min(g−曲率、t−曲率)>c0min
式中、c0max及びc0minは、曲率のカットオフ値である。典型的には、c0max及びc0minは、以下のように指定される。
【0128】
【数5】
【0129】
は、有意である最小の傾斜(度による)の推定値でなければならない。Nは、視野の最長寸法全域に亘って有することが望ましい、山領域の最小値の推定値でなければならない。fovは、視野の最長寸法の長さである。
【0130】
画像処理ツールボックスを有するMATLABを使用して、高さプロファイルを解析し、山統計を生成した。以下の連続は、山領域の特徴付けに使用したMATLABコードの工程の概略を提供する。
【0131】
1.画素数が>=10011001の場合、画素数を減少させる
−nskip=fix(nanb/1001/1001)+1を計算する
■ 元の画像は、サイズna×nb画素を有する
−nskip>1の場合、(2fix(nskip/2)+1)×(2fix(nskip/2)+1)メディアン平均を実行する
■ fixは、端数を切り捨てて一番近似の整数とする関数である。
【0132】
−全部のnskip画素を各方向に保つ新しい画像を形成する(例えば、nskip=3の場合、行及び列1、4、8、11...を保つ)
2.r=round(Δx/pix)
−Δxは、傾斜計算で使用するステップサイズである。
【0133】
−pixは画素サイズである。
【0134】
−rは、画素の最近整数に四捨五入されたΔxである。
【0135】
−Δxの初期値は、ffovfovに等しいように選択される。
【0136】
■ ffovは、プログラムを実行する前にユーザによって選択されるパラメータである。
【0137】
3.round(fMXr)×round(fMYr)画素のウィンドウサイズを用いて、メディアン平均を実行する。
【0138】
−領域が配向されている場合、メディアン平均は、以下に定義する一般的な領域のアスペクト比(W/L)に近いアスペクト比を有するウィンドウにより行われる。ウィンドウのアスペクト比は、既定値rm_aspect_minを下回ってはならない。
【0139】
■ 領域が配向されている場合、高さプロファイリングは、この配向がx軸又はy軸に沿うよう整合されたサンプルを用いて行う必要があることに留意する。
【0140】
−この解析において、領域は、
■ 領域の平均配向角度(領域面積で重み付けされた)が15度未満、又は75度を越える場合、配向されていると考慮される。
【0141】
1.配向角度は、領域に関連した楕円の長軸がy軸と形成する角度として定義される。
【0142】
■ この配向角度の標準偏差は、25度未満である。
【0143】
■ カバレッジは10%を越える。
【0144】
−これが第1のroundであるか又は領域が配向されていない場合、
■ fMX及びfMYをfに等しくセットし、
−配向がy軸に沿っている場合、
■ fMX=round(fsqrt(aspect));
■ fMY=round(fr/sqrt(aspect));
−配向がx軸に沿っている場合、
■ fMX=round(fr/sqrt(aspect));
■ fMY=round(fsqrt(aspect));
−aspect=領域面積により重み付けされた平均アスペクト比
■ これがrm_aspect_min未満の場合、rm_aspect_minに等しくセットする。
【0145】
−fは、プログラムを実行する前に選択される固定パラメータである。
【0146】
4.傾きを除去する。
【0147】
−プロファイル全域にて、全方向における平均傾斜を効果的にゼロに等しくする。
【0148】
5.前述したように傾斜プロファイルを計算する。
【0149】
6.傾斜ベクトルに平行な方向(g−曲率)及び傾斜ベクトルを横断する方向(t−曲率)における曲率プロファイルを計算する。
【0150】
7.上述した曲率閾値化を用いて、二値画像を形成する。
【0151】
8.二値画像を収縮処理する。
【0152】
−画像が収縮処理された回数をround(r)に等しくセットする。
【0153】
−fは、プログラムの開始前に選択される固定パラメータ(典型的には≦1)である。
【0154】
−これは細線によって接続されている個別領域を分離し、小さすぎる領域を排除することを補助する。
【0155】
9.画像を膨張処理する。
【0156】
−画像が膨張処理される回数は、典型的には、画像が収縮処理される回数と同一であるよう選択される。
【0157】
10.画像を更に膨張処理する。
【0158】
−このroundでは、画像は収縮処理される前に膨張処理される。
【0159】
−行き止まり(cul-de-sacs)の除去、エッジの丸め、及び互いに非常に近接した領域の組み合わせを補助する。
【0160】
11.画像を収縮処理する。
【0161】
−画像が収縮処理される回数は、典型的には、直前の工程で画像が膨張処理された回数と同一であるよう選択される。
【0162】
12.画像のエッジに近すぎる領域を排除する。
【0163】
−一般的には、領域の任意の部分がエッジの(nerode+2)以内である場合、近すぎると判断され、nerodeは、工程9にて画像が収縮処理された回数である。
【0164】
−これは、視野内に部分的にのみ存在する領域を排除する。
【0165】
13.各領域内の任意の穴を満たす。
【0166】
14.ECD(等価円直径)<2sin(q)N/fovを有する領域を排除する。
【0167】
−q及びNは、曲率カットオフ計算に使用されるパラメータである。
【0168】
−これは、半径Rの半球と比較して小さい領域を排除する。
【0169】
−これらの領域は、領域内にq未満の傾斜のバリエーションを有する可能性がある。
【0170】
−これに代わって考慮される他のフィルターは、カットオフ値未満の標準偏差を傾斜内に有する領域を排除することである。
【0171】
15.次いで、rに関する新しい値を計算する。
【0172】
■ 同定された山の数がゼロと等しい場合、rを2減らし、端数を切り上げる。
【0173】
■ 工程4に進む
−新しいr=round(f
■ fは、プログラムの開始前に選択される固定パラメータ(典型的には≦1)である。
【0174】
■ Lは、表A1に定義されている長さである。
【0175】
−新しいrがrMIN未満の場合、rMINと等しくセットする。
−新しいrがrMAXを越える場合、rMAXと等しくセットする。
−rが不変又は繰り返される場合、これが選択されるRの値である。工程17に進む。
【0176】
−カバレッジが因数Kc若しくはそれ以上低下した場合、又は領域の数が因数Kn若しくはそれ以上増加した場合、rの以前の値が選択される。工程17に進む。
【0177】
−rの値が選択されない場合、工程4に進む。
【0178】
16.選択されたrに関して、同定された各領域に関して以下の寸法を計算する。
【0179】
−ECD、L、W及びアスペクト比。
【0180】
17.各寸法に関して平均及び標準偏差を計算する。
【0181】
18.カバレッジ及びNN(表A2)を計算する。
【0182】
【表5】
【0183】
【表6】
【0184】
寸法は、2つの高さプロファイルを平均した。
【0185】
典型的なパラメータ設定は、以下の通りであった。
【0186】
【表7】
【0187】
これらのパラメータ設定は、主構造(副構造ではなく)が同定されることを確実にするよう調整され得る。
【0188】
高さ度数分布
高さデータから最小の高さ値を減算したため、最小高さはゼロである。高さ度数分布は、ヒストグラムを形成することにより生成される。この分布の平均は、平均高さと称される。
【0189】
粗さの評価基準
Ra−測定されたアレイ全体に亘って計算された平均粗さ。
【0190】
【数6】
【0191】
式中、Zjk=ゼロ平均の除去後の各画素の高さ。
【0192】
Rzは、評価範囲内の10個の最大の山〜谷分離の平均最大表面高さである。
【0193】
【数7】
【0194】
式中、Hは山高さであり、Lは谷高さであり、H及びLは、共通の基準面を有する。
【0195】
補集合的累積傾斜分布に関して報告されたそれぞれの値、山寸法、及び粗さは、2つの範囲の平均に基づいていた。典型的な17”(43.2cm)コンピュータディスプレイのような大きいフィルムの場合、典型的には、無作為に選択された5〜10個の範囲の平均を使用した。
【0196】
高屈折率ハードコート組成物
ビフェニルジアクリレート−2,2’−ジエトキシビフェニルジアクリレート(DEBPDA)の合成−温度プローブ、窒素パージ管、撹拌機及び加熱マントルを装備した12000mlの4首樹脂頭部丸底フラスコに、2,2’−ビフェノール(1415g、7.6モル、1.0当量)、フッ化カリウム(11.8g、0.2モル、0.027当量)、炭酸エチレン(1415g、16.1モル、2.11当量)を加え、155℃に加熱した。4.5時間後、GC分析は、0%の出発物質、0%のモノエトキシル化及び94%の生成物を示した。80℃に冷却し、トルエン5.4リットルを加え、脱イオン水2.5リットルを加え、15分間混合し、相分離させた。水を除去し、再び脱イオン水2.5リットルで洗浄し、相分離させ、水を除去し、溶液を蒸留して、残留水及びトルエンほぼ1.8リットルを除去した。溶液を50℃に冷却し、シクロヘキサン1.8リットルを加え、CIBA Specialty Chemicalsから商標名Prostab 5198で得た、通常4−ヒドロキシTEMPOと称される4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(0.52g、0.003モル、0.00044当量)、フェノチアジン(0.52g、0.0026モル、0.00038当量)、アクリル酸(1089.4g、15.12モル、2.2当量)、メタンスルホン酸(36.3g、0.38モル、0.055当量)を加え、加熱還流した(ポット温度は、92〜95Cであった)。フラスコにディーン・スターク・トラップを装備して、水を収集した。18時間後、GC分析は8%のモノアクリレート中間体を示した。追加のアクリル酸8gを加え、更に6時間、合計で24時間還流を継続した。24時間後、GC分析は3%のモノアクリレート中間体を示した。反応物を50℃に冷却し、7%の炭酸ナトリウム2356mlで処理し、30分間撹拌し、相分離させ、水性物を除去し、DI水2356mlで再び洗浄し、相分離させ、水性物を除去した。(桃色〜赤色)トルエン/シクロヘキサン溶液に4−ヒドロキシTEMPO(0.52g、0.003モル、0.00044当量)、フェノチアジン(0.52g、0.0026モル、0.00038当量)、アルミニウムn−ニトロソフェニルヒドロキシアミン(0.52g、0.0012モル、0.00017当量)を加え、真空濃縮して、溶液をほぼ5000mlとした。セライトパッドで濾過し、濾液をエアパージにより50℃にて12torr(1.60kPa)真空で3時間真空濃縮した。得られた黄色〜茶色油をロールフィルム蒸発器上で蒸留することにより更に精製する。蒸留の条件は、155℃でバレルを加熱、50℃のコンデンサ、及び1〜5mtorr(0.13〜0.67kPa)であった。回収した収量は2467g(理論値の85%)であり、純度はほぼ90% DEBPDAであった。
【0197】
トリフェニルトリアクリレート1,1,1−トリス(4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)エタン(TAEPE)の合成
温度プローブ、撹拌機及び加熱マントルを装備した1000mlの3首丸底フラスコに1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(200g、0.65モル、1.0当量)、フッ化カリウム(0.5g、0.0086モル、0.013当量)、炭酸エチレン(175g、2.0モル、3.05当量)を加え、165℃に加熱した。5時間後、GC分析は、0%の出発物質、0%のモノエトキシル化、2%のジエトキシル化、及び95%の生成物を示した。100℃に冷却し、トルエン750mlを加え、3000mlの3首丸底フラスコに移動し、更にトルエン750mlを加えた。溶液を50℃に冷却し、4−ヒドロキシTEMPO(0.2g、0.00116モル、0.00178当量)、アクリル酸(155g、2.15モル、3.3当量)、メタンスルホン酸(10.2g、0.1モル、0.162当量)を加え、加熱還流した。フラスコにディーン・スターク・トラップを装備して、水を収集した。6時間後、GC分析は、7%のジアクリレート中間体と、85%の生成物とを示した。反応物を50℃に冷却し、7%の炭酸ナトリウム400mlで処理し、30分間撹拌し、相分離させ、水性物を除去し、20%の塩化ナトリウム水400mlで再び洗浄し、相分離させ、水性物を除去した。有機物をメタノール4000mlで希釈し、3インチ(7.6cm)×5インチ(12.7cm)直径のシリカゲルパッド(250〜400メッシュ)で濾過し、濾液をエアパージにより50℃にて12torr(1.60kPa)真空で3時間真空濃縮した。茶色油332g(理論値の85%)を回収し、純度はほぼ85% TAEPEであった。
【0198】
ジルコニアゾルの調製
実施例で使用したZrOゾルは、以下の特性を有していた(米国特許第7,241,437号に記載の方法に従って測定)。
【0199】
【表8】
【0200】
% C/T=一次粒径
HEAS/DCLA表面改質剤の調製
三首丸底フラスコに、温度プローブ、機械的撹拌器及びコンデンサを装備する。このフラスコに、以下の試薬を投入する:無水コハク酸83.5g、Prostab 5198阻害剤0.04g、トリエチルアミン0.5g、2−ヒドロキシエチルアクリレート87.2g、及びSartomerによる、商標名「SR495」のヒドロキシ−ポリカプロラクトンアクリレート(nの平均は約2)28.7g。このフラスコを中程度の振盪により混合し、80℃に加熱し、約6時間保持する。40℃に冷却した後、1−メトキシ−2−プロパノール200gを加え、このフラスコを1時間混合した。反応混合物は、赤外線及びガスクロマトグラフィー分析にしたがって、無水コハク酸と2−ヒドロキシエチルアクリレート(即ち、HEAS)との反応生成物と、無水コハク酸とヒドロキシ−ポリカプロラクトンアクリレート(即ち、DCLA)との反応生成物との81.5/18.5混合物であると決定された。
【0201】
HEAS表面改質剤−は、無水コハク酸と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応により生成された。
【0202】
HIHC 1の調製
ジルコニアゾル(1000g @ 45.3%固体)及び1−メトキシ−2−プロパノール476.4gを、5Lの丸底フラスコに投入した。フラスコを真空蒸留用に構成し、撹拌機、温度プローブ、therm−o−watchコントローラに取り付けた加熱マントルを装備した。ジルコニアゾル及びメトキシプロパノールを50℃に加熱した。HEAS/DCLA表面改質剤(233.5g @ 1−メトキシ−2−プロパノール中50%固体、重量比81.5/18.5のHEAS/DCLA)、DEBPDA(120.5g)、日本のToagosei Co.Ltd.から市販されている2−フェニル−フェニルアクリレート(HBPA)(50.2g @酢酸エチル中46%固体)、商標名「SR 351 LV」(85.3g)及び「ProStab 5198」(0.17g)でSartomerから入手可能な低粘度トリメチロールプロパントリアクリレートを、混合しながら個別にフラスコに投入した。Therm−o−watchを80℃及び80%出力にセットした。バッチ温度が80℃に到達する迄、水及び溶媒を真空蒸留により除去した。このプロセスを6回繰り返した後、真空蒸留用に構成し、かつ加熱マントル、温度プローブ/熱電対、温度コントローラ、撹拌機、及び水蒸気を液体組成物中に組み込むための鋼管を装備した12Lの丸底フラスコ内で6個のバッチ全部を組み合わせた。液体組成物を80℃に加熱し、この時点で800ml/時間の水蒸気流を真空下で液体組成物中に導入した。蒸気流を用いた真空蒸留を6時間継続し、その後、蒸気流を停止した。バッチを80℃で更に60分間真空蒸留した。次いで、エアパージを用いて真空を中断した。光開始剤(17.7gの「Darocure 4265」、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン)との50:50混合物を投入し、30分間混合した。得られた生成物は、1.6288の屈折率を有する、アクリレートモノマー中のほぼ68%の表面改質ジルコニア酸化物であった。
【0203】
HIHC 2の調製
ジルコニアゾル(5000g @ 45.3%固体)及び1−メトキシ−2−プロパノール2433gを12Lの丸底フラスコに投入した。フラスコを真空蒸留用に構成し、加熱マントル、温度プローブ/熱電対、温度コントローラ、撹拌機、及び水蒸気を液体組成物中に組み込むための鋼管を装備した。ジルコニアゾル及びメトキシプロパノールを50℃に加熱した。HEAS表面改質剤(1056g @ 1−メトキシ−2−プロパノール中50%固体、DEBPDA(454.5g)、HBPA(197g @酢酸エチル中46%固体)、SR 351 LV(317.1g)及びProStab 5198(0.69g)を混合しながら個別にフラスコに投入した。温度コントローラを80℃にセットした。バッチ温度が80℃に到達する迄、水及び溶媒を真空蒸留により除去し、この時点で800ml/時間の水蒸気流を真空下で液体組成物中に導入した。蒸気流を用いた真空蒸留を6時間継続し、その後、蒸気流を停止し、バッチを80℃で更に60分間真空蒸留した。次いで、エアパージを用いて真空を中断した。光開始剤(Darocure 4265 87.3g)を投入し、30分間混合した。得られた生成物は、以下の性質を有する、アクリレートモノマー中のほぼ73%の表面改質ジルコニア酸化物であった。
【0204】
高屈折率ハードコートコーティング組成物3〜9は、HIHC 1及びHIHC 2と同一の方法で調製した。高屈折率ハードコートのそれぞれの成分の(重量%固体)は、以下の通りであった。
【0205】
【表9】
【0206】
73重量%の表面改質ZrOは、約58重量%のZrO及び15重量%の表面改質剤を含む。
【0207】
** 60mmの2degコーンを有するTA Instruments AR2000上で測定、2℃/分での80℃〜45℃の温度勾配、せん断速度1/s。粘度単位は、パスカル秒である。
【0208】
【表10】
【0209】
SR601−ビスフェノール−Aエトキシル化ジアクリレートモノマーの商標名は、Sartomerから市販されている通りである(20℃で1080cpsの粘度、及び60℃のTgを有すると報告されている)。
【0210】
Darocure 1173−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン光開始剤、Ciba Specialty Chemicalsから市販されている。
【0211】
SR399−Sartomerから市販されているジペンタエリトリトールペンタアクリレートの商標名。
【0212】
マイクロ構造化高屈折率ハードコートの調製。
【0213】
実施例H1、H2A、H3、H2B、H2C−160°F(71℃)でホットプレート上に配置することにより予熱された矩形のマイクロ複製工具(幅4インチ(10.2cm)、長さ24インチ(61.0cm))を使用して、ハンドスプレッド(Handspread)コーティングを作製した。Northbrook,IL,USAのGeneral Binding Corporation(GBC)製の「Catena 35」モデルラミネータを160°F(71℃)に予熱した(速度5、積層圧「ヘビーゲージ(heavy gauge)」にセット)。高屈折率ハードコートを60℃の炉内で予熱し、Fusion Systems UVプロセッサのスイッチを入れ、ウォームアップした(60fpm(18.3メートル/分)、100%出力、600ワット/インチ(236ワット/cm)Dバルブ、二色性反射体)。ポリエステルフィルムのサンプルを、工具の長さに切った(〜2フィード(61.0cm))。高屈折率ハードコートを、プラスチックの使い捨てピペットを用いて工具の末端部に適用し、4mil(0.10mm)(Mitsubishi O321E100W76)の下塗りポリエステルをビーズ及び工具上に配置し、ポリエステルを有する工具をラミネータに通して、工具の陥没部が高屈折率ハードコート組成物で満たされるようにコーティングをざっと工具上に拡げた。サンプルをUVプロセッサベルト上に配置し、UV重合により硬化させた。得られた硬化コーティングは、ほぼ3〜6マイクロメートルの厚さを有した。
【0214】
【表11】
【0215】
ウェブコーターを使用して、4mil(0.10mm)PET基材上に他の高屈折率ハードコートコーティング(幅18インチ(45.7cm))を適用した。H10A及びH10Bを除く他の高屈折率ハードコートコーティングを、Mitsubishiから商標名「4mil(0.10mm)ポリエステルフィルム0321 E100W76」で入手可能な下塗りPETに、工具温度170°F(77℃)、ダイ温度160°F(71℃)、及び高屈折率ハードコートコーティング温度160°F(71℃)で適用した。高屈折率ハードコートコーティングH10A及びH10Bは、0.75MJ/cmにコロナ処理された、3Mから商標名「ScotchPar」で入手可能な非下塗り4mil(0.10mm)ポリエステルフィルムに、工具温度180°F(82℃)、H10Aの場合ダイ温度170°F(77℃)、H10Bの場合180°F(82℃)、及び高屈折率ハードコートコーティング温度180°F(82℃)で適用した。コーティングに先だって、基材はまた、ほぼ150〜180°F(66〜82℃)にセットされたIRヒーターで加熱された。高屈折率ハードコートコーティングは、工具と、ニップされたフィルムとの間に樹脂の回転バンクを生成することにより流し塗布された。コーティングを、Dバルブ及び二色性反射体により50〜100%出力でUV硬化させた。得られた硬化コーティングは、ほぼ3〜6マイクロメートルの厚さを有した。更なるプロセス条件は、以下の表に含まれる。
【0216】
【表12】
【0217】
概算の厚さ
マイクロ構造化高屈折率ハードコートサンプルの透明度、曇り度、及び補集合的累積傾斜分布を、以前に表1に記載したように特徴付けた。マイクロ構造化表面の山の寸法も、以前に表2に記載したように特徴付けた。
【0218】
中屈折率ハードコートからのマットフィルムの製作
材料:
PCT/US2007/068197号に記載されているような、A174で表面改質されたSiO
SR444 Sartomer Co.製の多官能性アクリレート
SR9893 Sartomer Co.から入手可能なアクリレート官能性ウレタンオリゴマー
SR238 Sartomer Co.製のヘキサンジオールアクリレート
Darocure 4265 Sartomer Co.から入手可能な光開始剤ブレンド
配合物1:1−メトキシ−2−プロパノール中のA174表面改質SiOを、SR444及びDarocur 4265と混合して、下記の表の組成物を提供した。均質になった際、溶媒を68℃で回転蒸発により除去し(水流アスピレーター)、その後、真空ポンプを用いて68℃で20分間乾燥した。
【0219】
配合物2:SR9893を70℃に加熱した後、SR238及びDarocure 4265とブレンドし、一晩機械的に混合した。
【0220】
中屈折率ハードコート配合物中に使用したそれぞれの成分の濃度(重量%固体)を、以下のように記載する。
【0221】
【表13】
【0222】
マイクロ構造化高屈折率ハードコートと同一の方法で、2つの異なる基材上にハンドスプレッドコーティングを調製した。
【0223】
基材1−Mitsubishi製の4mil(0.10mm)PET O321E100W76
基材2−3M製の4mil(0.10mm)PET、商標名「ScotchPar」
【0224】
【表14】
【0225】
本願発明の実施態様を、本願発明を限定する意図なく、以下に記載する。
[項1]
複数のマイクロ構造を含むマイクロ構造化表面層を有するマットフィルムであって、前記マイクロ構造が、少なくとも30%が、少なくとも0.7度の傾斜規模を有し、少なくとも25%が、1.3度未満の傾斜規模を有するように、補完的累積傾斜規模分布を有し、前記マイクロ構造の50%以下が、埋め込まれたマット粒子を含む、マットフィルム。
[項2]
前記マイクロ構造の少なくとも30%が、1.3度未満の傾斜規模を有する、項1に記載のマットフィルム。
[項3]
前記マイクロ構造の少なくとも35%が、1.3度未満の傾斜規模を有する、項1に記載のマットフィルム。
[項4]
前記マイクロ構造の少なくとも40%が、1.3度未満の傾斜規模を有する、項1に記載のマットフィルム。
[項5]
前記マイクロ構造の15%未満が、4.1度以上の傾斜規模を有する、項1〜4のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項6]
前記マイクロ構造の5%未満が、4.1度以上の傾斜規模を有する、項1〜4のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項7]
前記マイクロ構造の少なくとも75%が、少なくとも0.3度の傾斜規模を有する、項1〜6のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項8]
前記表面層が、少なくとも5マイクロメートルの平均等価円直径を有する山を含む、項1〜7のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項9]
前記平均等価円直径が少なくとも10マイクロメートルである、項8に記載のマットフィルム。
[項10]
前記平均等価円直径が30マイクロメートル未満である、項8又は9に記載のマットフィルム。
[項11]
前記平均等価円直径が25マイクロメートル未満である、項8又は9に記載のマットフィルム。
[項12]
前記マイクロ構造化表面が、少なくとも5マイクロメートルの平均長さを有する山を含む、項1〜7のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項13]
前記山が、少なくとも10マイクロメートルの平均長さを有する、項12に記載のマットフィルム。
[項14]
前記マイクロ構造化表面が、少なくとも5マイクロメートルの平均幅を有する山を含む、項1〜7のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項15]
前記山が、少なくとも15マイクロメートルの平均幅を有する、項14に記載のマットフィルム。
[項16]
前記フィルムが、0.14マイクロメートル未満の平均粗さ(Ra)を有する、項1〜15のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項17]
前記フィルムが、1.20マイクロメートル未満の平均最大表面高さ(Rz)を有する、項1〜16のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項18]
マイクロ構造化層を含むマットフィルムであって、90%以下の透明度と、少なくとも0.05マイクロメートルでありかつ0.14マイクロメートル以下の平均表面粗さと、を有し、前記マイクロ構造の50%以下が、埋め込まれたマット粒子を含む、マットフィルム。
[項19]
複数のマイクロ構造を含むマイクロ構造化層を有するマットフィルムであって、90%以下の透明度と、少なくとも0.50マイクロメートルでありかつ1.20マイクロメートル以下の平均最大表面高さと、を有し、前記マイクロ構造の50%以下が、埋め込まれたマット粒子を含む、マットフィルム。
[項20]
複数のマイクロ構造を含むマイクロ構造化層を有するマットフィルムであって、90%以下の透明度を有し、前記マイクロ構造化層が、少なくとも5マイクロメートルでありかつ30マイクロメートル以下の平均等価直径を有する山を含み、前記マイクロ構造の50%以下が、埋め込まれたマット粒子を含む、マットフィルム。
[項21]
前記マットフィルムが少なくとも70%の透明度を有する、項1〜20のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項22]
前記光学フィルムが10%以下の曇り度を有する、項1〜21に記載のマットフィルム。
[項23]
前記マイクロ構造化層が、約1.60を越える屈折率を有する重合性樹脂組成物の反応生成物を含む、項1〜22のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項24]
前記重合樹脂組成物が、少なくとも約1.60の屈折率を有するナノ粒子を含有する、項23に記載のマットフィルム。
[項25]
前記ナノ粒子がジルコニアを含む、項24に記載のマットフィルム。
[項26]
前記ナノ粒子が、カルボン酸末端基を含む化合物で表面改質されている、項23又は24に記載のマットフィルム。
[項27]
前記化合物が、C〜Cエステル繰り返し単位又は少なくとも1つのC〜C16エステル単位を含む、項26に記載のマットフィルム。
[項28]
前記化合物が、
i)少なくとも1種の脂肪族無水物と、
ii)少なくとも1種のヒドロキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレートと、の反応生成物を含む、項27に記載のマットフィルム。
[項29]
前記ナノ粒子が、脂肪族無水物と、ヒドロキシルC〜Cアルキル(メタ)アクリレートとの反応により調製された化合物で表面改質されている、項24〜28のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項30]
前記重合性樹脂組成物が、1種以上の芳香族ジ(メタ)アクリレートモノマーを約10〜約20重量%の範囲の量で含有する、項23〜29のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項31]
前記重合性樹脂組成物が、約5〜約15重量%の、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を有する架橋剤を含有する、項23〜29のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項32]
前記重合性樹脂組成物が、約10重量%迄の芳香族モノ(メタ)アクリレートモノマーを含有する、項23〜29のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項33]
前記マイクロ構造化層が、約1.60未満の屈折率を有する重合性樹脂組成物の反応生成物を含む、項1〜22のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項34]
前記マイクロ構造化層がシリカナノ粒子を含む、項33に記載のマットフィルム。
[項35]
前記マイクロ構造化層がウレタンアクリレートを含む、項33に記載のマットフィルム。
[項36]
前記マイクロ構造がマット粒子を含まない、項1〜35のいずれか一項に記載のマットフィルム。
[項37]
前記マイクロ構造化層がマイクロ複製されている、項1〜36のいずれか一項に記載のマットフィルム。
図1
図2A
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11
図12
図B