特許第5997066号(P5997066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997066
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】回路形成装置及び回路形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 30/00 20060101AFI20160908BHJP
   B41F 9/01 20060101ALI20160908BHJP
   B41F 13/193 20060101ALI20160908BHJP
   B41F 17/10 20060101ALI20160908BHJP
   B41M 1/10 20060101ALI20160908BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   B41F30/00 A
   B41F9/01
   B41F13/193
   B41F17/10 H
   B41M1/10
   H05K3/12 630Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-7269(P2013-7269)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-136409(P2014-136409A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 純一
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 亮
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−175056(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0041249(US,A1)
【文献】 特開2005−349764(JP,A)
【文献】 特開2004−230792(JP,A)
【文献】 特開平06−255085(JP,A)
【文献】 特開2008−201092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 30/00
B41F 9/01
B41F 13/193
B41F 17/10
B41M 1/10
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写ローラと圧胴を少なくとも備え、グラビアオフセット印刷法によって回路を形成する回路形成装置であって、
前記転写ローラは、
ブランケット胴と、
前記ブランケット胴に巻回されたブランケットと、を有し、
前記ブランケットのギャップは、
前記ブランケットの第1の端部によって規定される前方端と、
前記ブランケットの第2の端部によって規定され、前記前方端よりも前記転写ローラの回転方向において後方に位置する後方端と、を有し、
前記前方端は、
前記前方端の中で前記回転方向における先端に位置する第1の最前部と、
前記第1の最前部から前記回転方向の後方に向かって傾斜する第1の傾斜部と、を有しており、
前記第2の端部は、前記第1の最前部に対向するように、前記回転方向の前方に向かって凸状となる凸部を有し、
前記後方端は、前記凸部によって規定される凹部を有しており、
前記回転方向における前記前方端と前記後方端との間の距離は、前記凹部の少なくとも一部と前記前方端との間で最小となっており、
下記(1)式を満たすことを特徴とする回路形成装置。
W1>W2・・・(1)
ただし、上記の(1)式において、W1は前記回転方向における前記前方端と前記後方端との間の最小の距離であり、W2は前記圧胴に対する前記ブランケットのニップ幅である。
【請求項2】
請求項1に記載の回路形成装置であって、
前記後方端における前記回転方向の最前部が、前記前方端における前記回転方向の最後部よりも前記回転方向における後方に位置する場合において、下記(2)式を満たすことを特徴とする回路形成装置。
W2>W3・・・(2)
ただし、上記の(2)式において、W3は前記後方端における前記回転方向の最前部と前記前方端における前記回転方向の最後部との間の距離である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路形成装置であって、
前記第1の傾斜部は、前記ギャップにおける前記転写ローラの回転軸方向の両端まで延在していることを特徴とする回路形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の回路形成装置であって、
前記凹部は略矩形状であることを特徴とする回路形成装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の回路形成装置であって、
前記凹部は、
前記凹部の中で前記回転方向における先端に位置する第2の最前部と、
前記第2の最前部から前記回転方向の後方に向かって傾斜する第2の傾斜部と、を有し、
前記第2の傾斜部は、前記ギャップにおける前記転写ローラの回転軸方向の両端まで延在していることを特徴とする回路形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の回路形成装置であって、
前記ギャップは、前記ブランケット胴の周面に複数形成されていることを特徴とする回路形成装置。
【請求項7】
転写ローラと圧胴を少なくとも備えたグラビアオフセット印刷機を用いて基材に回路を形成する回路形成方法であって、
前記転写ローラは、
ブランケット胴と、
前記ブランケット胴に巻回されたブランケットと、を有し、
前記ブランケットのギャップは、
前記ブランケットの第1の端部によって規定される前方端と、
前記ブランケットの第2の端部によって規定され、前記前方端よりも前記転写ローラの回転方向において後方に位置する後方端と、を有し、
前記前方端は、
前記前方端の中で前記回転方向における先端に位置する第1の最前部と、
前記第1の最前部から前記回転方向の後方に向かって傾斜する第1の傾斜部と、を有しており、
前記第2の端部は、前記第1の最前部に対向するように、前記回転方向の前方に向かって凸状となる凸部を有し、
前記後方端は、前記凸部によって規定される凹部を有しており、
前記回転方向における前記前方端と前記後方端との間の距離は、前記凹部の少なくとも一部と前記前方端との間で最小となっており、
前記ブランケットのギャップが前記圧胴と対向する際に、前記圧胴と前記ブランケットとの間のニップ圧を解放し、
下記(1)式を満たすことを特徴とする回路形成方法。
W1>W2・・・(1)
ただし、上記の(1)式において、W1は前記回転方向における前記前方端と前記後方端との間の最小の距離であり、W2は前記圧胴に対する前記ブランケットのニップ幅である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷によって回路を形成する回路形成装置及び回路形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の凹版(以下、グラビアと称する場合がある。)オフセット印刷技術の一つに、輪転式の凹版オフセット印刷機に透明フィルムを供給し、ペーストインキを透明フィルムに転写させることにより電磁波シールドパターンを印刷し、印刷後に当該パターンを加熱処理してペーストインキを硬化させることにより、電磁波シールドパターンを形成する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−111822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたフィルムは、加熱により熱収縮が生じて変形しやすく、加熱処理工程の前後で寸法変化が生じるため、厳密な寸法制御が要求される電子回路等の印刷にこのまま適用することはできない。そこで、この様な加熱処理時におけるフィルムの寸法変化を抑制するために、加熱処理よりも高い温度で印刷前に予め熱処理(以下、アニール処理と称する。)を施すことが一般に行われている。
【0005】
しかしながら、このアニール処理を施すことによっても結局、フィルムに歪みが生じるため、転写工程が進むにつれてこうした歪みが徐々に蓄積してフィルムに皺が発生してしまい、所望の印刷パターンが正しく印刷されない場合があるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、印刷時におけるフィルムの皺の発生を抑制可能な回路形成装置及び回路形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係る回路形成装置は、転写ローラと圧胴を少なくとも備え、グラビアオフセット印刷法によって回路を形成する回路形成装置であって、前記転写ローラは、ブランケット胴と、前記ブランケット胴に巻回されたブランケットと、を有し、前記ブランケットのギャップは、前記ブランケットの第1の端部によって規定される前方端と、前記ブランケットの第2の端部によって規定され、前記前方端よりも前記転写ローラの回転方向において後方に位置する後方端と、を有し、前記前方端は、前記前方端の中で前記回転方向における先端に位置する第1の最前部と、前記第1の最前部から前記回転方向の後方に向かって傾斜する第1の傾斜部と、を有しており、前記ブランケットの前記第2の端部は、前記第1の最前部に対向するように、前記回転方向の前方に向かって凸状となる凸部を有し、前記後方端は、前記凸部によって規定される凹部を有しており、前記回転方向における前記前方端と前記後方端との間の距離は、前記凹部の少なくとも一部と前記前方端との間で最小となっており、下記(1)式を満たすことを特徴とする。
W1>W2・・・(1)
ただし、上記の(1)式において、W1は前記回転方向における前記前方端と前記後方端との間の最小の距離であり、W2は前記圧胴に対する前記ブランケットのニップ幅である。
【0008】
[2]上記発明において、前記回路形成装置は、前記後方端における前記回転方向の最前部が、前記前方端における前記回転方向の最後部よりも前記回転方向における後方に位置する場合において、下記(2)式を満たしてもよい。
W2>W3・・・(2)
ただし、上記の(2)式において、W3は前記後方端における前記回転方向の最前部と前記前方端における前記回転方向の最後部との間の距離である。
【0009】
[3]上記発明において、前記第1の傾斜部は、前記ギャップにおける前記転写ローラの回転軸方向の両端まで延在していてもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記凹部は略矩形状であってもよい。
【0011】
[5]上記発明において、前記凹部は、前記凹部の中で前記回転方向における先端に位置する第2の最前部と、前記第2の最前部から前記回転方向の後方に向かって傾斜する第2の傾斜部と、を有し、前記第2の傾斜部は、前記ギャップにおける前記転写ローラの回転軸方向の両端まで延在していてもよい。
【0012】
[6]上記発明において、前記ギャップは、前記ブランケット胴の周面に複数形成されていてもよい。
【0013】
[7]本発明に係る回路形成方法は、転写ローラと圧胴を少なくとも備えたグラビアオフセット印刷機を用いて基材に回路を形成する回路形成方法であって、前記転写ローラは、ブランケット胴と、前記ブランケット胴に巻回されたブランケットと、を有し、前記ブランケットのギャップは、前記ブランケットの第1の端部によって規定される前方端と、前記ブランケットの第2の端部によって規定され、前記前方端よりも前記転写ローラの回転方向において後方に位置する後方端と、を有し、前記前方端は、前記前方端の中で前記回転方向における先端に位置する第1の最前部と、前記第1の最前部から前記回転方向の後方に向かって傾斜する第1の傾斜部と、を有しており、前記第2の端部は、前記第1の最前部に対向するように、前記回転方向の前方に向かって凸状となる凸部を有し、前記後方端は、前記凸部によって規定される凹部を有しており、前記回転方向における前記前方端と前記後方端との間の距離は、前記凹部の少なくとも一部と前記前方端との間で最小となっており、前記ブランケットのギャップが前記圧胴と対向する際に、前記圧胴と前記ブランケットとの間のニップ圧を解放し、下記(1)式を満たすことを特徴とする。
W1>W2・・・(1)
ただし、上記の(1)式において、W1は前記回転方向における前記前方端と前記後方端との間の最小の距離であり、W2は前記圧胴に対する前記ブランケットのニップ幅である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写ローラの回転方向におけるギャップの前方端と後方端との間の最小の距離が、圧胴に対するブランケットのニップ幅よりも相対的に広く形成されているので、ブランケットと圧胴との間で基材に印加されるニップ圧が、上記ギャップにおいて解放される。このため、印刷中の基材に皺が発生することを抑制することができる。
【0015】
また、ギャップの前方端が、転写ローラの回転方向における先端に位置する第1の最前部から当該回転方向の後方に向かって傾斜する第1の傾斜部を有している。これにより、当該第1の最前部から第1の傾斜部に沿って上記ニップ圧が解放されるため、印刷中の基材に蓄積する歪みを転写ローラにおける回転軸方向の外側に向かって逃がすことができる。
【0016】
また、ギャップの後方端は、ブランケットの第2の端部に設けられた凸部によって規定される凹部を有していると共に、当該凹部の少なくとも一部と前方端との間でギャップ幅は最小となっている。このため、転写の際にニップが解放される時間を当該凹部において短縮できることにより、基材の滑送を抑制することができる。また、転写ローラの軸方向の側部におけるギャップ幅は当該最小のギャップ幅よりも広く形成されているため、基材に蓄積した歪みを確実に下流側に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態における回路形成装置の構成を示す概要図である。
図2図2は、図1におけるII部の拡大図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態におけるブランケットのギャップを示す平面図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態におけるブランケットのギャップの変形例を示す平面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態におけるブランケットのギャップを示す平面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態におけるブランケットのギャップの変形例を示す平面図である。
図7図7は、本発明の第3実施形態におけるブランケットのギャップを示す平面図である。
図8図8は、転写ローラの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
<<第1実施形態>>
図1は本実施形態における回路形成装置1の構成を示す概要図であり、図2図1におけるII部の拡大図であり、図3は本実施形態におけるブランケット23のギャップ24を示す平面図であり、図4は本実施形態におけるギャップ24の変形例を示す平面図である。
【0020】
本実施形態における回路形成装置1は、グラビアオフセット印刷法によって基材91にインク92を印刷することにより、プリント配線板の配線パターンを形成する装置であり、図1に示すように、グラビアローラ10と、第1駆動機構13と、転写ローラ20と、第2駆動機構25と、圧胴30と、送出部40と、巻取部50と、サクションローラ(Suction Roller)60と、乾燥炉70と、を備えている。
【0021】
本実施形態における基材91の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等で構成されるフィルムを挙げることができるが、特にこれに限定されない。また、インク92の具体例としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、カーボン(C)等の導電材を含有した導電性ペーストを挙げることができる。
【0022】
なお、インク92を印刷して乾燥炉70で乾燥を行う際に、基材91の変形や寸法変化を抑制させるため、基材91には予め乾燥温度よりも高い温度でのアニール処理が施されている。本実施形態においてこのアニール処理は、後述する第2駆動機構25によって転写ローラ20を基材91から離した状態で回路形成装置1を駆動させ、予め乾燥温度よりも高い温度に設定された乾燥炉70の中に基材91を通過させることによって行われるが、アニール処理を行う方法は特に限定されない。例えば、回路形成装置1から独立した加熱機器を用いて基材91にアニール処理を施してもよい。
【0023】
図1に示すように、グラビアローラ10は、版胴11と、グラビア版12と、を備えている。版胴11は、円筒形状を有すると共に、特に図示しないモータ等によってその軸心を中心として回転駆動することが可能となっている。グラビア版12は、この版胴11の外周に巻回されている。特に図示しないが、グラビア版12の表面には、基材91に印刷する印刷パターンに対応した凹パターンが形成されている。
【0024】
このグラビアローラ10の周囲には、グラビア版12上を先端が摺接するようにドクターブレード14が設けられている。このドクターブレード14によって、グラビア版12の凹パターン内にインク92が充填されつつ、余分なインク92がグラビア版12上から掻き取られるようになっている。
【0025】
第1駆動機構13は、図1に示すように、駆動部131と支持部132から構成され、当該支持部132はグラビアローラ10の軸心を保持している。この第1駆動機構13は、駆動部131に内蔵されるモータ等(不図示)によって支持部132を前後に動かすことが可能となっている。そして、この支持部132の前後動によって、グラビアローラ10は、後述する転写ローラ20に対して接近又は離反することが可能となっている。
【0026】
この第1駆動機構13によって、転写ローラ20に対するグラビアローラ10の軸心位置を調整することが可能となっており、これによりグラビアローラ10と転写ローラ20との受理時におけるニップ圧を最適化できるようになっている。
【0027】
転写ローラ20は、ブランケット胴21と、粘着層22と、ブランケット23と、を有している。ブランケット胴21は、円筒形状を有しており、特に図示しないモータ等によってその軸心を中心として回転駆動することが可能となっている。
【0028】
粘着層22は、図2に示すように、ブランケット胴21とブランケット23との間に形成されており、当該粘着層22によってブランケット23がブランケット胴21の周面上に固定されている。この粘着層22は、両面に表面粘着性を有する樹脂フィルムや金属シート等を、ブランケット胴21とブランケット23との間に介装することによって形成される。なお、粘着層を形成する方法や材料は特に限定されず、例えば、一方の面に表面粘着性を有するブランケット23をブランケット胴21の外周に直接巻回させることで、粘着層を形成しても良い。
【0029】
ブランケット23は、グラビア版12からインク92を受理し、基材91へ転写する機能を有しており、ブランケット胴21の外周に巻回されている。ここで、ブランケット23には、一般的に、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、フッ素ゴム、アクリルゴム、またはクロロプレンゴム等の材料を用いているが、インクの離型性に優れているという観点から、シリコーンゴムを用いるのが好ましい。
【0030】
また、図3に示すように、転写ローラ20には、ブランケット23の第1の端部231から当該第1の端部231に対向する第2の端部232に亘ってブランケット胴21の表面が露出するギャップ24が設けられている。
【0031】
第1の端部231は、図3に示すように、ブランケット23における転写ローラ20の軸方向の全幅に亘るV字形状を有している。一方、第2の端部232は、転写ローラ20の回転方向前方に向かって凸状となる凸部236を有している。
【0032】
本実施形態におけるギャップ24は、図3に示すように、ブランケット23の第1の端部231によって規定される前方端241と、ブランケット23の第2の端部232によって規定される後方端242と、を有している。
【0033】
前方端241は、図3に示すように、ブランケット23における転写ローラ20の軸方向の略中央に屈曲部243を有している。そして、当該屈曲部243の図中右側には、屈曲部243からブランケット23の図中右側部23Rまで転写ローラ20の回転方向後方に向かって傾斜する傾斜部244Rが設けられている。同様に、屈曲部243の図中左側には、屈曲部243からブランケット23の図中左側部23Lまで転写ローラ20の回転方向後方に向かって傾斜する傾斜部244Lが設けられている。なお、屈曲部243が本発明の第1の最前部の一例に相当し、傾斜部244R、244Lが本発明の第1の傾斜部の一例に相当する。
【0034】
本実施形態において、傾斜部244R及び傾斜部244Lは、屈曲部243を中心として図3中の左右で線対称の形状となっているが、傾斜部244R、244Lが有する形状は特にこれに限定されず、左右非対称であってもよい。また、特に図示しないが、傾斜部244R、244Lを曲線状としてもよい。
【0035】
また、図4に示すように、傾斜部244Rとブランケット23の右側部23Rとの間に、転写ローラ20の軸方向と略平行に設けられた平坦部245Rを設けてもよい。同様に、傾斜部244Lとブランケット23の左側部23Lとの間に、転写ローラ20の軸方向と略平行に設けられた平坦部245Lを設けてもよい。
【0036】
後方端242は、第2の端部232が有する凸部236によって規定される凹部246を有している。この凹部246は、前方端241の屈曲部243と対向するように設けられている。また、凹部246とブランケット23の右側部23Rとの間には側方部247Rが設けられており、凹部246とブランケット23の左側部23Lとの間には側方部247Lが設けられている。
【0037】
本実施形態において、側方部247R、247Lはそれぞれ直線状であり、転写ローラ20の軸方向と略平行に延在しているが、特にこれに限定されない。例えば、側方部247R、247Lが曲線状であってもよい。また、特に図示しないが、側方部247Rとブランケット23の右側部23Rとの間に、転写ローラ23の回転方向後方に向かって傾斜する部分を設けてもよい。同様に、側方部247Lとブランケット23の左側部23Lとの間に、転写ローラ23の回転方向後方に向かって傾斜する部分を設けてもよい。
【0038】
また、本実施形態におけるギャップ24は、凹部246の右側角部246R及び左側角部246Lにおいて最小ギャップ幅W1(直線距離)を有している。
【0039】
図1に戻り、以上に説明した転写ローラ20は、グラビアローラ10に対向するように配置されており、グラビア版12とブランケット23を接触させた状態で、グラビアローラ10と転写ローラ20を共に回転させることで、グラビア版12に充填されていたインク92がブランケット23に受理される。
【0040】
第2駆動機構25は、図1に示すように、駆動部251と支持部252から構成され、当該支持部252は転写ローラ20の軸心を保持している。この第2駆動機構25は、駆動部251に内蔵されるモータ等(不図示)によって支持部252を前後に動かすことが可能となっており、この支持部252の前後動によって、グラビアローラ10及び後述する圧胴30に対して転写ローラ20を接近又は離反することが可能となっている。転写ローラ20がグラビアローラ10に接近して接触することにより、グラビア版12からブランケット23へのインク92の受理が可能となり、転写ローラ20をグラビアローラ10から離反させることにより、受理を停止することができる。また、転写ローラ20が基材91を挟んで圧胴30に接近してブランケット23を圧胴30に押し付けること(以下、上記の作用をニップと称する。)で、転写ローラ20から基材91へのインク92の転写が可能となる。また、転写ローラ20を圧胴30から離反させることにより、転写ローラ20から基材91へのインク92の転写を停止することができる。
【0041】
また、この第2駆動機構25によって、圧胴30に対する転写ローラ20の軸心位置を調整することが可能となっており、これにより転写ローラ20と圧胴30に挟まれた基材91と、転写ローラ20との転写時におけるニップ圧及びニップ幅を最適化できるようになっている。
【0042】
なお、ニップ幅とは、図2に示すように、転写ローラ20と圧胴30とが接近した際のニップ圧によってブランケット23が基材91を介して圧胴30に密着し、当該ブランケット23が圧胴30の周面に沿って変形している部分の幅W2(直線距離)のことである。
【0043】
本実施形態では、転写ローラ20と圧胴30との対向部分における上記のニップ幅W2と、ブランケット23のギャップ24が有する最小ギャップ幅W1とが、下記(1)式を満たすよう第2駆動機構25等を用いて調整される。
W1>W2・・・(1)
【0044】
また、本実施形態において、ギャップ24の後方端242における転写ローラ20の回転方向の最前部と、ギャップ24の前方端241における転写ローラ20の回転方向の最後部との間の距離W3(直線距離)は、当該最後部が当該最前部よりも転写ローラ20の回転方向における後方に位置する場合において、下記(2)式を満たすよう第2駆動機構25等を用いて調整される。
W2>W3・・・(2)
【0045】
すなわち、本実施形態では、図3に示すように、ギャップ24の後方端242における転写ローラ20の回転方向の最前部は凹部246の底部246Fであり、ギャップ24の前方端241における転写ローラ20の回転方向の最後部は側端部241R及び側端部241Lである。そして、それら底部246Fと側端部241R、241Lとの間の距離W3は、底部246Fが側端部241R、241Lよりも転写ローラ20の回転方向における後方に位置する本例の場合において、上記(2)式を満たすよう調整されている。
【0046】
圧胴30は、図1に示すように、転写ローラ20に対向するように配置された円筒状の部材であり、特に図示しないモータ等によってその軸心を中心として回転駆動することが可能となっている。この圧胴30に対して転写ローラ20を所定のニップ圧で押し付けた状態で、転写ローラ20と圧胴30との間に基材91を通過させることで、ブランケット23に保持されているインク92が基材91に転写される。
【0047】
本実施形態における回路形成装置1では、送出部40、巻取部50、及びサクションローラ60によって、転写ローラ20と圧胴30との間に、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式で基材91を供給することが可能となっている。
【0048】
具体的には、図1に示すように、送出部40は、転写ローラ20及び圧胴30の上流側に設けられており、印刷前の基材91がロール状に巻回されている。この送出部40のローラを図中反時計回りに回転させることで、印刷前の基材91が、転写ローラ20と圧胴30の間に連続的に供給される。なお、本実施形態において、「上流側」及び「下流側」とは、印刷を行う際の基材91の搬送方向を基準とする。
【0049】
一方、巻取部50は、転写ローラ20及び圧胴30の下流側に設けられており、印刷済みの基材91が乾燥炉70を通過した後、ロール状に巻き取られる。この巻取部50のロールを図中反時計回りに回転させることで、印刷済みの基材91が転写ローラ20と圧胴30の間から連続的に回収される。
【0050】
本実施形態では、サクションローラ60によって基材91の送り出しを制御する。特に図示しないが、このサクションローラ60は、その外周面に開口する多数の吸引口を有しており、この吸引口を介して基材91を吸着保持しつつ回転させることで、基材91を上流或いは下流側に送り出す。
【0051】
基材91にインク92が印刷されると、当該基材91上に所定の印刷パターンが所定ピッチで繰り返し形成される。サクションローラ60と巻取部50の間には、図1に示すように、乾燥炉70が設けられており、基材91はサクションローラ60によって送り出された後、乾燥炉70を通過する。基材91は、当該乾燥炉70を通過する間に130℃〜200℃程度の温度条件下に置かれ、この間にインク92は順次乾燥され、硬化される。これにより、基材91上に配線パターンが形成される。なお、乾燥炉70としては、例えば赤外線乾燥炉や熱風乾燥炉等を使用することができる。
【0052】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0053】
回路形成装置1によって基材91上に配線パターンを印刷する場合、図1に示すように、図中において時計回りに回転する転写ローラ20と、反時計回りに回転する圧胴30との間を、基材91が通過することによって当該印刷が行われる。
【0054】
この際に、インク92を、グラビアローラ10のグラビア版12から転写ローラ20のブランケット23に受理して、この受理されたインク92を、転写工程で確実に基材91上に転写する必要がある。このため、この転写工程において基材91は、転写ローラ20と圧胴30との間で挟圧されることにより、転写ローラ20のブランケット23に所定のニップ幅W2で押し付けられる。
【0055】
ここで、印刷後にインク92を高温乾燥させる際における基材91の変形や寸法変化を抑制するため、一般的に基材91には、予めアニール処理されたものを用いている。しかし、この場合、アニール処理によって印刷前の段階で基材91に歪みが生じているため、転写工程において基材91が転写ローラ20と圧胴30との間で挟圧されると、当該挟圧部分において基材91上に歪みが蓄積することとなる。
【0056】
これに対し、本実施形態では、転写ローラ20におけるブランケット23のギャップ24の最小幅W1と、転写ローラ20におけるブランケット23と圧胴30とで形成するニップ幅W2とが上記(1)式を満たしている。
【0057】
このため、転写時においてギャップ24が基材91を介して圧胴30と対向する際に、基材91はブランケット23のニップ圧から解放される。これにより、基材91の歪みは下流側に逃げる。
【0058】
この様に、転写時において、ギャップ24が基材91を介して圧胴30と対向する度に、基材91の歪みは下流側に逃げるため、基材91上に歪みが蓄積して皺が発生するのを抑制することができ、印刷の精度向上を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態におけるギャップ24の前方端241には、屈曲部243から転写ローラ20の回転方向後方に向かって傾斜する傾斜部244R、244Lが設けられている。これにより、転写時において、屈曲部243から傾斜部244R、244Lに沿って圧胴30に対するブランケット23のニップ圧が順次解放される。このため、基材91に蓄積した歪みを、転写ローラ20における軸方向の両端に向かって確実に逃がすことができる。
【0060】
本実施形態では、傾斜部244Rはブランケット23における図3中の右側部23Rまで延在しており、傾斜部244Lはブランケット23における図3中の左側部23Lまで延在している。このため、基材91に蓄積した歪みを、転写ローラ20における軸方向の両端に向かってより確実に逃がすことができる。
【0061】
さらに、本実施形態において、ブランケット23におけるギャップ24の後方端242には凹部246が設けられている。そして、当該凹部246の角部246Rと傾斜部244Rとの間、及び角部246Lと傾斜部244Lとの間において、ギャップ幅は最小幅W1となっており、側方部247Rと傾斜部244Rとの間及び側方部247Lと傾斜部244Lとの間において、ギャップ幅は最小幅W1よりも広くなっている。
【0062】
このため、転写の際に当該凹部246の角部246R、246Lにおいてニップが解放される時間を短縮できるため、基材91が滑送するのを抑制することができる。一方、側方部247Rと傾斜部244Rとの間及び側方部247Lと傾斜部244Lとの間において、基材91に蓄積した歪みを確実に下流側に逃がし、皺の発生を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ギャップ24の後方端242が有する転写ローラ20の回転方向最前端と、ギャップ24の前方端241が有する転写ローラ20の回転方向最後端との間の距離W3は、上記(2)式を満たしている。このため、ブランケット23のギャップ24が基材91を介して圧胴30と対向する際に、当該ブランケット23における少なくとも一部は常にニップされている。これにより、転写ローラ20の軸方向の全幅に亘ってニップが解放された際に、当該ニップの解放に伴うブランケット胴21への衝撃によって印刷面に縞模様の印刷濃度ムラ(いわゆるショック目)が生じるのを抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、凹部246の底部246Fが側端部241R、241Lよりも転写ローラ20の回転方向において後方に位置しているが、特にこれに限定されない。例えば、側端部241R、241Lが、凹部246の底部246Fよりも転写ローラ20の回転方向において後方に位置していてもよい。この場合には、上記(2)式によらず、常にブランケット23の少なくとも一部はニップされているため、印刷濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0065】
また、グラビアオフセット印刷によって回路を形成する場合、導電性ペーストを複数回重ねて印刷する場合がある。具体的には、印刷済みの基材91を巻取部50から取り出し、送出部40に再度取り付ける。その後に、転写ローラ20と圧胴30との間に当該基材91を通過させて印刷パターンを重ねて印刷する。この場合に、一回目の印刷のインクと二回目の印刷のインクは、同種のインクを用いてもよく、異種のインクを用いてもよい。
【0066】
この様な重ね印刷を行う場合に、ブランケット23のギャップ24が上記の形状を有することにより、転写ローラ20の軸方向の全幅に亘ってニップが解放されることがないため、当該ギャップ24での基材91の滑送により生じる印刷位置ずれを軽減することができる。このため、重ね印刷を行う際の印刷位置合わせの精度向上を図ることができる。
【0067】
本実施形態では、図3に示すように、凹部246は略矩形状を有している。このため、転写時においてギャップ24が基材91と図3中の下側から上側に向かって順次対向する際に、ギャップ24の後方端242は所定の幅(角部246Rと角部246Lとの間の幅)で基材91と対向する。これにより、基材91がギャップ24と対向する際における基材91とブランケット23との接触面積が増加するため、基材91の滑走による印刷位置ずれをより確実に抑制することができる。
【0068】
<<第2実施形態>>
図5は本発明の第2実施形態での回路形成装置のブランケット23Bにおけるギャップ24Bを示す平面図であり、図6はギャップ24Bの変形例を示す平面図である。ここで、第2実施形態における回路形成装置は、ブランケット23Bのギャップ24Bの形状が異なること以外は、上述した第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と相違する部分についてのみ説明し、第1実施形態と同一である部分については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施形態におけるギャップ24Bは、図5に示すように、ブランケット23Bの第1の端部231によって規定される前方端241と、ブランケット23Bの第2の端部232Bによって規定される後方端242Bと、を有している。
【0070】
ギャップ24Bが有する前方端241は、屈曲部243から転写ローラ20の回転方向後方に向かって傾斜する傾斜部244R、244Lを有しており、傾斜部244Rはブランケット23Bの右側部23Rまで延在していると共に、傾斜部244Lはブランケット23Bの左側部23Lまで延在しているが、特にこれに限定されない。例えば、図6に示すように、傾斜部244Rとブランケット23Bの右側部23Rとの間に平坦部249Rが設けられていてもよい。同様に、傾斜部244Lとブランケット23Bの左側部23Lとの間に平坦部249Lが設けられていてもよい。
【0071】
本実施形態におけるブランケット23Bの第2の端部232には、図5に示すように、転写ローラ20の回転方向における前方に向かって凸状となる凸部236Bが設けられており、当該凸部236Bは頂点部238を頂点とする三角形状を有している。
【0072】
ギャップ24Bが有する後方端242Bは、凸部236Bに対応する凹部246Bを有しており、この凹部246Bは、凸部236Bの頂点部238に対応する最深部248を有している。
【0073】
凹部246Bは、図5に示すように、最深部248がギャップ24Bの前方端241における屈曲部243と対向するように設けられており、この凹部246Bの最深部248と屈曲部243との間において、ギャップ幅は最小幅W1を有している。
【0074】
本実施形態においても、ギャップ24Bの最小幅W1と、転写ローラ20におけるブランケット23Bと圧胴30とで形成するニップ幅W2とが上記(1)式を満たしている。このため、転写時において、ギャップ24Bが基材91を介して圧胴30と対向する度に、基材91の歪みを下流側に逃がすことができ、基材91に皺が発生するのを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態におけるギャップ24Bの前方端241にも、屈曲部243から転写ローラ20の回転方向後方に向かって傾斜する傾斜部244R、244Lが設けられている。これにより、転写時において、屈曲部243から傾斜部244R、244Lに沿って圧胴30に対するブランケット23のニップ圧が順次解放し、基材91に蓄積した歪みを転写ローラ20における軸方向の両端に向かって逃がすことができる。
【0076】
また、本実施形態においても、凹部246Bの最深部248と屈曲部243との間でギャップ幅は最小幅W1となっている。これにより、転写の際に当該最深部248においてニップが解放される時間を短縮できるため、基材91が滑送するのを抑制することができる。また、側方部247Rと傾斜部244Rとの間及び側方部247Lと傾斜部244Lとの間においてギャップ幅は最小幅W1よりも広くなっているため、基材91に蓄積した歪みを確実に下流側に逃がし、皺の発生を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態においても、図5に示すように、ギャップ24Bの後方端242Bが有する凹部246Bの最深部248と、前方端241の側端部241R及び側端部241Lとの間の距離W3は、上記(2)式を満たしている。このため、ブランケット23Bのギャップ24Bが基材91を介して圧胴30と対向している間であっても、ブランケット23Bの一部が圧胴30に常にニップされるため、印刷時におけるニップ解放に伴うショック目の発生を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態においても、ギャップ24Bでの基材91の滑送により生じる印刷位置ずれを抑制できるため、重ね印刷を行う際の印刷位置合わせの精度向上を図ることができる。
【0079】
<<第3実施形態>>
図7は本発明の第3実施形態での回路形成装置のブランケット23Cにおけるギャップ24Cを示す平面図である。ここで、第3実施形態における回路形成装置は、ブランケット23Cのギャップ24Cの形状が異なること以外は、上述した第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と相違する部分についてのみ説明し、第1実施形態と同一である部分については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
本実施形態におけるギャップ24Cは、図7に示すように、ブランケット23Cの第1の端部231によって規定される前方端241と、ブランケット23Cの第2の端部232Cによって規定される後方端242Cと、を有している。
【0081】
ギャップ24Cが有する前方端241は、屈曲部243から転写ローラ20の回転方向後方に向かって傾斜する傾斜部244R、244Lを有しており、傾斜部244Rはブランケット23Bの右側部23Rまで延在していると共に、傾斜部244Lはブランケット23Bの左側部23Lまで延在している。なお、例えば、傾斜部244Rとブランケット23Cの右側部23Rとの間に平坦部が設けられていてもよい。同様に、傾斜部244Lとブランケット23Cの左側部23Lとの間に平坦部が設けられていてもよい。
【0082】
本実施形態におけるブランケット23Cの第2の端部232には、図7に示すように、転写ローラ20の回転方向における前方に向かって凸状となる凸部236Cが設けられている。この凸部236Cは、頂点部238Cからブランケット23Cの右側部23Rまで延在する裾部251Rと、頂点部238Cからブランケット23Cの左側部23Lまで延在する裾部251Lによって形成された三角形状を有している。
【0083】
ギャップ24Cが有する後方端242Cは、凸部236Cに対応する凹部246Cを有している。この凹部246Cは、凸部236Cの頂点部238に対応する最深部248Cと、凸部236Cの裾部251Rによって規定される斜辺部252Rと、凸部236Cの裾部251Lによって規定される斜辺部252Lと、を有している。なお、本実施形態における最深部248Cが本発明の第2の最前部の一例に相当し、本実施形態における斜辺部252R、252Lが本発明の第2の傾斜部の一例に相当する。
【0084】
凹部246Cは、図7に示すように、最深部248Cがギャップ24Cの前方端241における屈曲部243と対向するように位置しており、この凹部246Cの最深部248Cと屈曲部243との間において、ギャップ24Cが有するギャップ幅は最小幅W1となっている。
【0085】
また、本実施形態では、ギャップ24Cの前方端241の屈曲部243の内角が、ブランケット23Cの第2の端部232Cが有する凸部236Cにおける頂点部238Cの内角よりも大きくなっている。このため、本実実施形態のギャップ24Cは、転写ローラ20の軸方向における中央から側部に向かうに従って漸次的に間隔が広がる形状を有している。
【0086】
本実施形態においても、ギャップ24Cの最小幅W1と、転写ローラ20におけるブランケット23Cと圧胴30とで形成するニップ幅W2とが上記(1)式を満たしている。このため、転写時において、ギャップ24Cが基材91を介して圧胴30と対向する度に、基材91の歪みを下流側に逃がすことができ、基材91に皺が発生するのを抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態におけるギャップ24Cの前方端241にも、屈曲部243から転写ローラ20の回転方向後方に向かって傾斜する傾斜部244R、244Lが設けられている。これにより、転写時において、屈曲部243から傾斜部244R、244Lに沿って圧胴30に対するブランケット23のニップ圧が順次解放し、基材91に蓄積した歪みを転写ローラ20における軸方向の両端に向かって逃がすことができる。
【0088】
また、本実施形態においても、凹部246Cの最深部248Cと屈曲部243との間でギャップ幅は最小となっている。これにより、転写の際に当該最深部248Cにおいてニップが解放される時間を短縮できるため、基材91が滑送するのを抑制することができる。また、斜辺部252Rと傾斜部244Rとの間及び斜辺部252Lと傾斜部244Lとの間においてギャップ幅は最小幅W1よりも広くなっているため、基材91に蓄積した歪みを確実に下流側に逃がし、皺の発生を抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態においても、図7に示すように、ギャップ24Cの後方端242Cが有する凹部246Cの最深部248Cと、前方端241の側端部241R及び側端部241Lとの間の距離W3は、上記(2)式を満たしている。このため、ブランケット23Cのギャップ24Cが基材91を介して圧胴30と対向している間であっても、ブランケット23Cの一部が圧胴30に常にニップされるため、印刷時におけるニップ解放に伴うショック目の発生を抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態においても、ギャップ24Cでの基材91の滑送により生じる印刷位置ずれを抑制できるため、重ね印刷を行う際の印刷位置合わせの精度向上を図ることができる。
【0091】
また、本実施形態における凹部246Cは、最深部248Cから転写ローラ20の回転方向後方に向かって傾斜する斜辺部252R、252Lを有している。このため、基材91に蓄積した歪みは、最深部248Cから傾斜斜辺部252R、252Lに沿って転写ローラ20の軸方向両端に向かって押し出される。これにより、基材91の歪みをより確実に逃がすことができ、基材91に皺が発生するのを抑制することができる。
【0092】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0093】
例えば、図8に示す転写ローラ20Bのように、上記(1)式を満たすギャップ24が、ブランケット胴21の周面に複数(本例では2つ)形成されていてもよい。本例における転写ローラ20Bは、第1のブランケット23M及び第2のブランケット23Nを含むブランケット23が粘着層22を介してブランケット胴21に巻回されており、ブランケット23Mが有する端部231Mとブランケット23Nが有する端部232Nとの間にギャップ24Pが形成されている。また、ブランケット23Mが有する端部232Mとブランケット23Nが有する端部231Nとの間にギャップ24Qが形成されている。なお、ブランケット胴21に巻回されるブランケットの枚数は2枚に特に限定されない。
【0094】
なお、本例において、ブランケット23が本発明におけるブランケットの一例に相当し、ブランケット23Mの端部231M及びブランケット23Nの端部231Nが本発明における第1の端部の一例に相当し、ブランケット23Mの端部232M及びブランケット23Nの端部232Nが本発明における第2の端部の一例に相当する。
【0095】
この場合には、転写ローラ20Bが1回転した際に、ギャップ24P及びギャップ24Qが基材91を介して圧胴30と対向する。これにより、基材91の歪みが当該ギャップ24に沿って下流側に逃げる頻度が増加するため、基材91上に歪みが蓄積して皺が発生するのをより効率的に抑制することができ、印刷の精度向上を図ることができる。
【0096】
なお、ブランケット胴21に巻回されるブランケットの枚数は2枚に特に限定されない。また、ブランケット胴21の周面に複数のギャップが形成された場合において、それらのギャップの形状は特に限定されず、それぞれ同一でなくてもよい。例えば、複数の当該ギャップのうち、1つのギャップの形状を図3に示すような形状にすると共に、他の1つのギャップの形状を図4に示すような形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1・・・回路形成装置
10・・・グラビアローラ
20・・・転写ローラ
21・・・ブランケット胴
22・・・粘着層
23、23B、23C・・・ブランケット
231、231M、231N・・・第1の端部
232、232M、232N・・・第2の端部
236・・・凸部
24、24B、24C、24P、24Q・・・ギャップ
241・・・前方端
242・・・後方端
243・・・屈曲部
244R、244L・・・傾斜部
246・・・凹部
248、248C・・・最深部
252R、252L・・・斜辺部
30・・・圧胴
91・・・基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8