(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997100
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】鋼管杭の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/00 20060101AFI20160915BHJP
E02D 5/56 20060101ALI20160915BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20160915BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20160915BHJP
B23K 9/127 20060101ALI20160915BHJP
B23K 9/235 20060101ALI20160915BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20160915BHJP
B23K 9/032 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
B23K9/00 501B
E02D5/56
E02D5/28
B23K9/12 331G
B23K9/127 501A
B23K9/235 B
B23K9/235 Z
B23K26/00 B
B23K26/00 G
B23K9/032 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-111370(P2013-111370)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-226723(P2014-226723A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】512333799
【氏名又は名称】株式会社是永商会
(74)【代理人】
【識別番号】100095603
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 一郎
(72)【発明者】
【氏名】是永 直宏
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−038128(JP,U)
【文献】
特開2009−133109(JP,A)
【文献】
特開2003−126963(JP,A)
【文献】
特開2007−039716(JP,A)
【文献】
特開平08−168938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00
B23K 9/032
B23K 9/12
B23K 9/127
B23K 9/235
B23K 26/00
E02D 5/28
E02D 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の一端側外周に螺旋状の羽根を溶接して鋼管杭を製造する鋼管杭の製造方法であって、
前記鋼管の外周面に前記鋼管の長手方向と平行に形成された継目部を基準として前記鋼管の一端側外周の前記羽根を仮溶接する位置に螺旋状のケガキ線をレーザマーキング加工するマーキング工程を備え前記ケガキ線に沿うように前記鋼管の一端側外周に前記羽根を仮溶接する仮溶接工程と、前記継目部を目印として回転駆動装置に標示された位置決め基準の位置に合わせる位置決め工程を備え前記羽根が仮溶接された前記鋼管を前記回転駆動装置に保持する鋼管保持工程と、前記羽根及び前記鋼管の形状データを予め記憶させた溶接ロボットの溶接線検出センサで溶接線の位置を検出して実際の前記羽根及び前記鋼管との位置ずれ量を算出し本溶接を行う経路を補正して前記溶接ロボットに記憶させる溶接経路記憶工程と、前記回転駆動装置で前記鋼管を回転させながら前記溶接ロボットを前記鋼管の長手方向に移動させ前記溶接経路記憶工程で記憶した経路に沿って前記羽根の本溶接を行う本溶接工程と、を備えたことを特徴とする鋼管杭の製造方法。
【請求項2】
前記溶接経路記憶工程が、前記溶接ロボットによる前記本溶接工程の溶接開始位置を検出する溶接開始位置検出工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の下端側外周に螺旋状の羽根を溶接して鋼管杭を製造する鋼管杭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建設機械や鉄骨フレームなどの溶接にはアーク溶接ロボットが広く使われており、製品の形態に応じて、様々な溶接ロボットが開発され、溶接工程の自動化や半自動化が行われている。
例えば、(特許文献1)には、回転ドラムと回転ドラムの外周上にドラムの中心線と略平行に配設された縦筋保持部と回転ドラムを軸支し回転させる駆動部と、回転ドラムの外周表面上を上下動する溶接部と溶接部を装着し回転ドラムの長手方向に添って移動停止自在な移動部と、を備えた杭頭補強材溶接機が開示されている。
一方、基礎工事に用いられる鋼管杭は、例えば(特許文献2)に示すように、鋼管の一端側外周に螺旋状の羽根(翼)が溶接されており、回転させることにより地中に進入させることができる。
しかし、このような鋼管杭の羽根の溶接は専ら人手に頼っているため、作業時間がかかり、また長時間連続して作業を行うことが困難で、量産性に欠けるだけでなく、作業者の熟練度や疲労度などによって溶接の強度に差が出たり、溶接斑が発生したりし易く、品質の均一性に欠けるという問題点があった。
特に、螺旋状の羽根には、地盤からの支持力が最も加わるため、羽根の根元の溶接部の品質確保が重要であるが、上述のように溶接作業者の技量の影響を最も受け易く、品質の確保が困難であるという問題点があった。
この問題点を解決するために、(特許文献3)乃至(特許文献5)や(非特許文献1)などのように、円筒状の短管と外周の螺旋状の羽根を鋳鋼などで一体成形した先端部材と、鋼管を別々に製造しておき、これらを工場や施工現場において溶接や螺子止めによって連結する鋼管杭が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−210460号公報
【特許文献2】特開2009−133109号公報
【特許文献3】特開2011−80227号公報
【特許文献4】特開2005−90065号公報
【特許文献5】特開2003−27465号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】吉津利洋ほか著、「小口径鋼管を用いた杭状地盤補強工法の研究(鋳鉄製の先端翼を用いた小口径鋼管杭)」、日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸)2010年9月発行、P.607−608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術は以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献3)乃至(特許文献5)や(非特許文献1)の鋼管杭は、先端部材の短管と螺旋状の羽根が一体成形されているため、羽根に大きな支持力が加わっても、羽根の変形、割れ、脱落などが発生し難く、掘削力や支持力を向上させることができ、品質の安定性、均一性に優れるが、施工現場において先端部材を鋼管に取付けるために、溶接や螺子止めなどの作業を行うには手間と作業時間がかかり、作業者も必要で、省力性、量産性に欠けるという課題を有していた。特に、施工現場で溶接を行うには、溶接に必要な設備を施工現場まで運搬しなければならず、設備の設置スペースや作業スペースも必要で、現場での作業性、施工性に欠けるという課題を有していた。また、羽根を溶接する場合に比べて、溶接強度のばらつきなどの影響は小さいが、人手による溶接作業が必要であるため、一定の品質を確保するには、作業者にある程度の熟練度が要求され、作業者の負担を軽減することができず、連続作業性に欠けるという課題を有していた。
(2)以上のようなことから、人手による作業を簡素化して、作業者の負担を大幅に軽減し、長時間連続して作業を行うことができ、作業者の熟練度などによらず、短時間の内に、高強度かつ高品質で均一な鋼管杭を製造することができる量産性、省力性に優れた鋼管杭の製造方法の開発が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、上記要望に応えるもので、人手による作業を削減、簡素化して、作業者の負担を大幅に軽減することができ、長時間連続して作業を行うことが可能で、量産性、省力性に優れ、溶接の強度のばらつきや溶接斑などが発生し難く、作業者の熟練度などに関わらず、高強度で、高品質な鋼管杭を製造することができ、羽根に大きな支持力が加わっても、羽根の変形、割れ、脱落などが発生することのない品質の安定性、均一性に優れる鋼管杭の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段及びそれによって得られる作用、効果】
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明の鋼管杭の製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の鋼管杭の製造方法は、鋼管の一端側外周に螺旋状の羽根を溶接して鋼管杭を製造する鋼管杭の製造方法であって、鋼管の一端側外周に螺旋状の羽根を溶接して鋼管杭を製造する鋼管杭の製造方法であって、
前記鋼管の外周面に前記鋼管の長手方向と平行に形成された継目部を基準として前記鋼管の一端側外周の前記羽根を仮溶接する位置に螺旋状のケガキ線をレーザマーキング加工するマーキング工程を備え前記ケガキ線に沿うように前記鋼管の一端側外周に前記羽根を仮溶接する仮溶接工程と、
前記継目部を目印として回転駆動装置に標示された位置決め基準の位置に合わせる位置決め工程を備え前記羽根が仮溶接された前記鋼管を
前記回転駆動装置に保持する鋼管保持工程と、
前記羽根及び前記鋼管の形状データを予め記憶させた溶接ロボットの溶接線検出センサで溶接線の位置を検出して
実際の前記羽根及び前記鋼管との位置ずれ量を算出し本溶接を行う経路を
補正して前記溶接ロボットに記憶させる溶接経路記憶工程と、前記回転駆動装置で前記鋼管を回転させながら前記溶接ロボットを前記鋼管の長手方向に移動させ前記溶接経路記憶工程で記憶した経路に沿って前記羽根の本溶接を行う本溶接工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)鋼管の一端側外周に羽根を仮溶接する仮溶接工程と、回転駆動装置で鋼管を回転させながら溶接ロボットを鋼管の長手方向に移動させ溶接経路記憶工程で記憶した経路に沿って羽根の本溶接を行う本溶接工程と、を有するので、仮溶接工程と本溶接工程を並行して行うことができ、また予め仮溶接工程で羽根を仮溶接した鋼管を多量に用意しておけば、溶接ロボットによる本溶接工程を短時間で連続的に行うことができ、作業者の負担を軽減し、長時間連続して作業を行うことが可能で、量産性、省力性に優れる。
(2)羽根が仮溶接された鋼管を回転駆動装置に保持する鋼管保持工程と、溶接ロボットの溶接線検出センサで羽根の位置を検出して本溶接を行う経路を溶接ロボットに記憶させる溶接経路記憶工程を有することにより、作業者が鋼管保持工程において羽根が仮溶接された鋼管を回転駆動装置に保持するだけで、溶接ロボットが自動的に溶接経路記憶工程で本溶接を行う経路を記憶して後工程の本溶接工程を行うことができるので、作業者一人でも一連の作業を行うことが可能で、作業者の負担を大幅に軽減することができ、連続作業性、量産性、省力性に優れる。
(3)仮溶接工程と、鋼管保持工程のみを人手で行えばよく、溶接経路記憶工程と、本溶接工程は、溶接ロボットが自動的に行うので、溶接の強度のばらつきや溶接斑などが発生し難く、作業者の熟練度などに関わらず、高強度で、高品質性、均質性に優れる鋼管杭を製造することができる。
(4)仮溶接工程が、鋼管の外周面に鋼管の長手方向と平行に形成された継目部を基準として鋼管の一端側外周の羽根を仮溶接する位置に螺旋状のケガキ線をレーザマーキング加工するマーキング工程を有することにより、継目部を基準として鋼管の所定位置に羽根を簡単に位置決めして仮溶接することができ、常に鋼管と羽根との位置関係を一定に保つことができ、作業性、品質の安定性に優れる。
(5)鋼管保持工程においても、継目部を目印として鋼管を回転駆動装置に保持することにより、回転駆動装置及び溶接ロボットに対して、簡単かつ確実に羽根を位置合せすることができるので、溶接経路記憶工程で容易に羽根の位置を検出することができる。
(6)鋼管保持工程が、鋼管の外周面に設けられた継目部を基準とする位置決め工程を有するので、予めその継目部を基準として仮溶接工程を行うことにより、仮溶接される羽根を所定の位置に簡単に位置合せすることができ、溶接経路記憶工程で短時間の内に羽根の位置を検出することができ、作業効率性に優れる。
(7)鋼管保持工程の位置決め工程では、鋼管の外周面に鋼管の長手方向と平行に形成された継目部を回転駆動装置に標示された位置決め基準に合わせることにより、容易に位置合わせを行うことができ、作業の効率性、確実性に優れる。
(8)羽根及び鋼管の形状データを溶接ロボットに予め記憶させておき、実際の羽根及び鋼管との位置ずれ量を算出して、本溶接を行う経路を補正するようにすれば、短時間で溶接経路を設定することができる。
【0008】
ここで、仮溶接工程では、羽根の要所を溶接すればよく、溶接箇所の数や間隔は、適宜、選択することができる。尚、鋼管に設けた目印を基準にして仮溶接工程を行うことにより、常に鋼管と羽根との位置関係を一定に保つことができ、品質の安定性に優れる。
目印はレーザマーカなどの手段で鋼管の表面にマーキングしてもよいし、鋼管の継目をそのまま利用してもよい。
鋼管保持工程では、鋼管の少なくとも一端部を保持すればよい。回転駆動装置で鋼管を保持して回転させることができるので、溶接ロボットを鋼管の長手方向に移動させることにより、螺旋状の羽根を全長にわたって連続的に溶接することができる。回転駆動装置には、片持ち式或いは両持ち式のポジショナーが好適に用いられる。
溶接経路記憶工程で使用する溶接線検出センサとしては、プローブなどを用いる接触式センサ、レーザセンサなどを用いる非接触式センサ、溶接トーチを利用するアークセンサなどの従来公知のものを用いることが
できる。
【0010】
マーキング工程では、螺旋状の羽根のピッチや条数に応じて、ケガキ線をレーザマーキング加工すればよい。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の鋼管杭の製造方法であって、
前記溶接経路記憶工程が、前記溶接ロボットによる前記本溶接工程の溶接開始位置を検出する溶接開始位置検出工程を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)鋼管保持工程が、鋼管の外周面に設けられた
継目部を基準とする位置決め工程を備えることにより、溶接ロボットで羽根の位置を予測することができるので、溶接経路記憶工程の溶接開始位置検出工程において、予測した羽根の端面位置に向かって溶接線検出センサを移動させるだけで、容易に本溶接工程の溶接開始位置を検出することができ、溶接ロボットの制御の確実性、安定性に優れる。
(2)溶接経路記憶工程が、溶接ロボットによる本溶接工程の溶接開始位置を検出する溶接開始位置検出工程を有するので、羽根の端から端までを経路に沿って確実に本溶接することができ、溶接の信頼性、確実性に優れる。
【0013】
位置決め工程の基準となる目印が、鋼管の長手方向と平行に形成された継目部であることにより、別途、目印を設けることなく、簡単かつ確実に位置決めを行うことができ、作業工数を低減することが可能で、量産性、省力性、信頼性に優れる。
ここで、継目部は、鋼管の製造時に形成されたものをそのまま利用することができる。尚、継目のない(シムレースの)鋼管を使用する場合には、別途、
レーザマーカ等で目印をマーキングすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1の鋼管杭の製造方法におけるマーキング工程によりケガキ線が描かれた鋼管を示す平面模式図
【
図2】実施の形態1の鋼管杭の製造方法における仮溶接工程により羽根が仮溶接された鋼管を示す平面模式図
【
図3】実施の形態1の鋼管杭の製造方法における鋼管保持工程により回転駆動装置に保持された鋼管を示す平面模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における鋼管杭の製造方法について、以下、図面を用いて説明する。
図1は実施の形態1の鋼管杭の製造方法におけるマーキング工程によりケガキ線が描かれた鋼管を示す平面模式図であり、
図2は実施の形態1の鋼管杭の製造方法における仮溶接工程により羽根が仮溶接された鋼管を示す平面模式図である。
図1中、1は実施の形態1の鋼管杭の製造方法により螺旋状の羽根が溶接される鋼管、1aは鋼管1の長手方向と平行に形成された継目部、2は羽根を仮溶接する位置にレーザマーキング加工により螺旋状にマーキングされたケガキ線である。
図2中、3は鋼管1の一端側外周に仮溶接された螺旋状の羽根、4は人手によって点付け溶接された仮溶接部である。
【0016】
仮溶接工程を行う際には、まず、マーキング工程において、レーザマーカ等を用いて、
図1に示すように、鋼管1の一端側外周の羽根を仮溶接する位置に螺旋状のケガキ線2をマーキングする。
次に、ケガキ線2に沿うように鋼管1の一端側外周に羽根3を配置し、
図2に示すように、仮溶接工程において、仮溶接部4を点付け溶接する。
マーキング工程において、鋼管1の継目部1aを基準にしてケガキ線2をマーキングすることにより、鋼管1の所定の位置に確実に羽根3を仮溶接することができる。尚、ケガキ線2は仮溶接する羽根のピッチや条数に応じて、適宜、形成することができる。また、仮溶接部4の数、位置、間隔は、適宜、選択することができる。
【0017】
図3は実施の形態1の鋼管杭の製造方法における鋼管保持工程により回転駆動装置に保持された鋼管を示す平面模式図である。
図3中、5は鋼管1を回転自在に保持する片持ち式のポジショナーを用いた回転駆動装置、6は鋼管1の一端側を保持する回転駆動装置5のチャック部、10は羽根3の本溶接を行うアーク溶接ロボット、11はアーク溶接ロボット10のアーム部、11aはアーム部11の先端に配設された溶接トーチ、12は溶接ロボット10を鋼管1の長手方向と平行に移動させるためのレール部である。
図3に示すように、仮溶接工程が完了した鋼管1を鋼管保持工程において回転駆動装置5に保持する。回転駆動装置5は片持ちであるが、必要に応じて、鋼管1の長手方向の途中や他端側を補助支持具で支持してもよいし、両持ち式のポジショナーを用いてもよい。
次に、アーク溶接ロボット10を用いて、溶接開始位置検出工程で溶接開始位置を検出すると共に、溶接経路記憶工程で溶接線の位置を検出して本溶接を行う経路を記憶する。溶接開始位置検出工程及び溶接経路記憶工程で使用する溶接線検出センサとしては、プローブなどを用いる接触式センサ、レーザセンサなどを用いる非接触式センサ、溶接トーチ11aを利用するアークセンサなどの従来公知のものを用いることができる。溶接トーチ11aを利用する場合、別途、デバイス(センサ)を搭載する必要がなく、耐久性、汎用性、制御性に優れる。
鋼管保持工程において、仮溶接工程の基準とした継目部1aを基準として鋼管1を回転駆動装置5に保持することにより、回転駆動装置5及びアーク溶接ロボット10に対して、簡単かつ確実に羽根3を位置合せすることができるので、溶接開始位置検出工程及び溶接経路記憶工程で容易に羽根3の位置を検出し、短時間で溶接開始位置及び溶接経路を設定することができる。尚、回転駆動装置5の上面や側面に位置決め基準を標示しておけば、容易に継目部1aとの位置合わせを行うことができ、作業の効率性、確実性に優れる。
本溶接工程では、回転駆動装置5で鋼管1を回転させながらアーク溶接ロボット10を鋼管1の長手方向に移動させ溶接経路記憶工程で記憶した経路に沿って羽根3の本溶接を行う。
【0018】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における鋼管杭の製造方法によれば、以下の作用を有する。
(1)鋼管の一端側外周に羽根を仮溶接する仮溶接工程と、回転駆動装置で鋼管を回転させながら溶接ロボットを鋼管の長手方向に移動させ溶接経路記憶工程で記憶した経路に沿って羽根の本溶接を行う本溶接工程と、を有するので、仮溶接工程と本溶接工程を並行して行うことができ、また予め仮溶接工程で羽根を仮溶接した鋼管を多量に用意しておけば、溶接ロボットによる本溶接工程を短時間で連続的に行うことができ、作業者の負担を軽減し、長時間連続して作業を行うことが可能で、量産性、省力性に優れる。
(2)羽根が仮溶接された鋼管を回転駆動装置に保持する鋼管保持工程と、溶接ロボットの溶接線検出センサで羽根の位置を検出して本溶接を行う経路を溶接ロボットに記憶させる溶接経路記憶工程を有することにより、作業者が鋼管保持工程において羽根が仮溶接された鋼管を回転駆動装置に保持するだけで、溶接ロボットが自動的に溶接経路記憶工程で本溶接を行う経路を記憶して後工程の本溶接工程を行うことができるので、作業者一人でも一連の作業を行うことが可能で、作業者の負担を大幅に軽減することができ、連続作業性、量産性、省力性に優れる。
(3)仮溶接工程と、鋼管保持工程のみを人手で行えばよく、溶接経路記憶工程と、本溶接工程は、溶接ロボットが自動的に行うので、溶接の強度のばらつきや溶接斑などが発生し難く、作業者の熟練度などに関わらず、高強度で、高品質性、均質性に優れる鋼管杭を製造することができる。
(4)仮溶接工程が、
鋼管の外周面に鋼管の長手方向と平行に形成された継目部を基準として鋼管の一端側外周の羽根を仮溶接する位置に
螺旋状のケガキ線をレーザマーキング加工するマーキング工程を有することにより、
継目部を基準として鋼管の所定位置に羽根を簡単に位置決めして仮溶接することができ、
常に鋼管と羽根との位置関係を一定に保つことができ、作業性、品質の安定性に優れる。
(5)鋼管保持工程が、鋼管の外周面に設けられた
継目部を基準とする位置決め工程を有するので、予めその
継目部を基準として仮溶接工程を行うことにより、仮溶接される羽根を所定の位置に簡単に位置合せすることができ、溶接経路記憶工程で短時間の内に羽根の位置を検出することができ、作業効率性に優れる。
(6)鋼管保持工程が、鋼管の外周面に設けられた
継目部を基準とする位置決め工程を備えることにより、溶接ロボットで羽根の位置を予測することができるので、溶接経路記憶工程の溶接開始位置検出工程において、予測した羽根の端面位置に向かって溶接線検出センサを移動させるだけで、容易に本溶接工程の溶接開始位置を検出することができ、溶接ロボットの制御の確実性、安定性に優れる。
(7)溶接経路記憶工程が、溶接ロボットによる本溶接工程の溶接開始位置を検出する溶接開始位置検出工程を有するので、羽根の端から端までを経路に沿って確実に本溶接することができ、溶接の信頼性、確実性に優れる。
(8)位置決め工程の基準となる目印が、鋼管の長手方向と平行に形成された継目部であることにより、別途、目印を設けることなく、簡単かつ確実に位置決めを行うことができ、作業工数を低減することが可能で、量産性、省力性、信頼性に優れる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施の形態1で示した鋼管杭の製造方法により、鋼管杭の製造を行った。製造に用いた鋼管1は、呼び径65A、全長約2200mm、羽根3の外形約150mm、溶接長さ約480mmであった。
実施の形態1で示した鋼管杭の製造方法によれば、1人の作業員が8時間で68〜73本程度の鋼管杭を製造することができた。
【0020】
(比較例1)
全ての作業を人手で行った以外は、実施例1と同様にして鋼管杭の製造を行った。
2〜3人の作業員が共同で作業して1時間で3〜4本の鋼管杭しか製造することができず、1日に製造できる鋼管杭は25〜30本程度であった。
【0021】
(実施例1)の鋼管杭と(比較例1)の鋼管杭を比較すると、(実施例1)の鋼管杭の方がビード面の安定性に優れ、スパッタの発生も極めて少なかった。また、(比較例1)の鋼管杭は、外観上問題がないものでも埋設工事中に羽根3が外れることがあった。これは(比較例1)の鋼管杭は、外観ではわからないが、作業者の疲労などを原因とする品質のばらつきが発生しており、溶け込みが少なく、強度が不足しているものが含まれていたためと考えられる。これに対し、(実施例1)の鋼管杭では、埋設工事中に羽根3が外れるものは皆無であり、品質のばらつきが極めて少なく、溶け込みの安定性に優れ、強度も向上しているものと考えられる。
以上の結果から、実施の形態1の鋼管杭の製造方法によれば、工数を大幅に低減できるだけでなく、作業者の負担を軽減して、長時間連続作業を可能とし、生産性を向上することができると共に、品質を安定させて、歩留まりを向上させることができ、作業効率性、量産性、省力性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、人手による作業を削減、簡素化して、作業者の負担を大幅に軽減することができ、長時間連続して作業を行うことが可能で、量産性、省力性に優れ、溶接の強度のばらつきや溶接斑などが発生し難く、作業者の熟練度などに関わらず、高強度で、高品質な鋼管杭を製造することができ、羽根に大きな支持力が加わっても、羽根の変形、割れ、脱落などが発生することのない品質の安定性、均一性に優れる鋼管杭の製造方法の提供を行うことができ、鋼管杭の製造の自動化を促進して、高品質な鋼管杭の大量生産を実現することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 鋼管
1a 継目部
2 ケガキ線
3 羽根
4 仮溶接部
5 回転駆動装置
6 チャック部
10 溶接ロボット
11 アーム部
11a 溶接トーチ
12 レール部