(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記陰極側電解部23の装置内に、供給原料である濃硫酸を希釈して低濃度の硫酸とし、かつ、該低濃度の硫酸を所望の温度及び濃度に調整する陰極側希釈硫酸生成ループA’と、該陰極側希釈硫酸生成ループA’で生成された希釈硫酸を前記陰極室7内に循環させる陰極側電解ループB’とが設けられており、
前記陰極側希釈硫酸生成ループA’は、陰極側タンク38と陰極側濃硫酸供給部39と陰極側冷却器41とがこの順に配置されて、これらが陰極側バイパス配管43によって結ばれてループを形成し、さらに、該陰極側希釈硫酸生成ループA’内のいずれかの個所に前記陰極側希釈硫酸生成ループA’内への純水の供給を可能にする陰極側純水供給配管12が接続され、さらに、前記陰極側濃硫酸供給部39への濃硫酸の供給を可能にするための濃硫酸供給配管29が接続されており、
前記陰極側電解ループB’は、前記陰極側タンク38と前記陰極側濃硫酸供給部39と前記陰極側冷却器41と、前記隔膜5と前記陽極室4と該陽極室4内に設けられた前記陽極3と前記陰極室7と該陰極室7内に設けられた前記陰極6とよりなる前記電解槽2の前記陰極室7とが、陰極側循環配管44によって結ばれてループを形成しており、
前記陰極側希釈硫酸生成ループA’と陰極側電解ループB’は、バルブの切り替え操作によって開閉され、
先ず、前記陰極側希釈硫酸生成ループA’のループを開閉するバルブを開とし、前記陰極側電解ループB’のループを開閉するバルブを閉とし、
前記陰極側濃硫酸供給配管29から前記陰極側濃硫酸供給部39に供給された濃硫酸が、前記陰極側冷却器41の直前の配管内に設けられた前記陰極側濃硫酸供給部39において、前記陰極側純水供給配管12から供給された純水によって希釈され、希釈された低濃度の希釈硫酸が前記陰極側希釈硫酸生成ループA’内を循環する間に所望の温度及び濃度に調整され、所望の温度及び濃度に調整された希釈硫酸が生成され、
しかる後、前記陰極側希釈硫酸生成ループA’のループを開閉するバルブを閉とし、前記陰極側電解ループB’のループを開閉するバルブを開とし、
前記陰極側希釈硫酸生成ループA’内で生成された希釈硫酸は、前記陰極側電解ループB’を構成している陰極側循環配管44を介して前記電解槽2の前記陰極室7に供給され、前記陰極側電解ループB’内を循環する間に、温度及び濃度調整された希釈硫酸の電解が行われることを特徴とする請求項1に記載の硫酸電解装置。
前記陽極側タンク31上部に、陽極ガスベント配管102を介して、陽極側気液分離機構91及び陽極側ミストセパレーター92が順次直列に連通するよう接続され、該陽極側気液分離機構91及び該陽極側ミストセパレーター92の底部に、それぞれの内部に蓄積された液体を排液するための、陽極側気液分離機構91と陽極側ミストセパレーター92とを連通した構造の排液手段を備えてなる請求項1又は2に記載の硫酸電解装置。
前記陽極側タンク31上部に、陽極ガスベント配管102を介して、陽極側気液分離機構91及び陽極側ミストセパレーター92が順次直列に連通するよう接続され、該陽極側気液分離機構91及び該陽極側ミストセパレーター92の底部には、それぞれの内部に蓄積された液体を排液するための、陽極側気液分離機構91と陽極側ミストセパレーター92とを連通した構造の排液手段を備えるとともに、
更に、前記陰極側タンク38上部に陰極ガスベント配管103を介して、陰極側気液分離機構96及び陰極側ミストセパレーター97が順次直列に連通するよう接続され、該陰極側気液分離機構96及び該陰極側ミストセパレーター97の底部には、それぞれの内部に蓄積された液体を排液するための、陰極側気液分離機構96と陰極側ミストセパレーター97とを連通した構造の排液手段を備えてなる請求項2に記載の硫酸電解装置。
前記希釈硫酸生成ループAにおいて、前記陽極側タンクを並列に複数個設け、該陽極側タンクの一つにおいて、生成した酸化性物質を含む電解硫酸を貯留した後、バルブを切り替えて他の陽極側タンクにて所定濃度の酸化性物質を含む電解硫酸を生成するようにした請求項1又は2に記載の硫酸電解装置。
一つの陽極側タンクに貯留した酸化性物質を所定濃度含む電解硫酸を、硫酸電解装置外のユースポイントへ送液している間、別の陽極側タンクを使用して所定濃度の酸化性物質を含む電解硫酸を生成するように構成した請求項7に記載の硫酸電解装置。
請求項1〜10のいずれか1項に記載の硫酸電解装置を用いるとともに、電解前の希釈硫酸の温度が30℃以下になるように温度調整を行うようにしたことを特徴とする硫酸電解方法。
請求項1〜10のいずれか1項に記載の硫酸電解装置を用いるとともに、電解した電解液の温度が30℃以下に温度調整されたものになるようにしたことを特徴とする硫酸電解方法。
請求項1〜10のいずれか1項に記載の硫酸電解装置を用いるとともに、電解前の希釈硫酸の硫酸濃度が2〜10mol/Lになるように濃度調整を行うようにしたことを特徴とする硫酸電解方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の電解めっき前処理剤やエッチング剤、半導体デバイス製造における化学的機械的研磨処理における酸化剤、湿式分析における有機物の酸化剤、シリコンウェハの洗浄剤等の、様々な製造プロセスや検査プロセスに用いる薬剤として、過硫酸が用いられている。この過硫酸は「酸化性物質」と呼ばれ、硫酸の電解によって生成することが知られており、既に工業規模で電解製造されている。
本発明において、「酸化性物質」とはペルオキソ二硫酸、ペルオキソ一硫酸等の過硫酸、過酸化水素を指すものであり、「電解硫酸」とは、硫酸を電解することにより製造されたこれらの酸化性物質及び未反応の硫酸を含んだものを指す。
【0003】
硫酸を電解する装置で生成した酸化性物質及び未反応の硫酸を含んだ電解硫酸(以下、単に「電解硫酸」と称す。)は、半導体製造工程においては、レジストや汚染有機物や汚染金属等の除去に用いられる。これらの用途に対しては、酸化性物質濃度は高濃度であるほど除去効果が高いことが知られており、硫酸電解装置には、より高濃度に酸化性物質を含んだ電解硫酸を生成できること、電解による酸化性物質の生成効率がより高いこと、及び生成した酸化性物質の分解性が低いことが求められる。硫酸電解において、高濃度に酸化性物質を含んだ電解硫酸を生成し、電解による酸化性物質の生成効率をより高め、該酸化性物質の分解性を低くするためには、硫酸電解装置へ、所望の濃度に調整された低濃度の硫酸を供給することが要求されている。
【0004】
しかしながら、一般的に硫酸は、98%や96%の濃硫酸として販売されるため、硫酸電解装置へ濃度の調整された希釈した低濃度の硫酸(希釈硫酸とも呼ぶ)を供給するには、工場の薬液供給設備に新規に専用の貯留タンクや供給配管を施工する必要があり、この場合は多額の設備コストが必要になる。また、低濃度の硫酸は濃硫酸と比較して体積が大きいため、濃硫酸を搬送するのと比較して薬品の搬送コストも増大するという問題が生じる。
【0005】
硫酸電解装置内で効率よく硫酸濃度を調整することができれば、設備コスト、搬送コストなど希釈硫酸の調製にかかるコストを最小限に抑制しながら、低濃度の硫酸を電解して高効率に酸化性物質を生成する硫酸電解が可能となる。また、濃硫酸から希釈硫酸を生成する機構と、希釈硫酸から酸化性物質を含む電解硫酸を生成する機構を構成する機器及びラインを極力共通化することができれば、硫酸電解装置の小型化及び簡易化を達成することができる。
【0006】
電気分解槽で硫酸を電気分解して過硫酸を生成することを記載した特許文献1の段落0011には、「過硫酸生成のために使用される硫酸の濃度範囲は、2〜11mol/Lの低濃度硫酸とすることにより、過硫酸の生成効率を向上させることができる」ことが記載されている。
【0007】
過硫酸供給システムを提案した特許文献2の段落0026には、「電解反応装置に供給される電解液の硫酸濃度の範囲に関して、10〜18M(mol/L)の低濃度硫酸とすることにより、過硫酸の生成効率を向上させることができること」が記載されている。
【0008】
特許文献3の段落0012及び段落0018には、「電解液として濃度の異なる硫酸を使用することにより、電解硫酸の生成のための電流効率を上げるとともに酸化性物質を効率よく安定的に生成する方法」が記載されている。
【0009】
しかるに、特許文献1〜3に記載の方法では、低濃度の硫酸を電解することによって生成が高効率になることを開示しながらも、硫酸の濃度調整の方法に関しての開示が無い。
低濃度の希釈硫酸を製造するためには、一般には、濃硫酸と純水を混合して硫酸濃度を適宜に調整する必要があるが、硫酸と純水を混合する際には、多量の希釈熱が発生し、突沸や希釈熱に起因した蒸気やミストが多量に発生する。そのため、硫酸濃度調整を行うタンクや設備からの排気が、何の対策も無く排気設備や除害設備に接続されていると、排気設備や除害設備に硫酸が混入してしまうことで、腐食や性能の劣化に直結するという問題を有している。
【0010】
特許文献4には、電解反応装置から発生する電解ガスに含まれる硫酸を除去する方法として気液分離手段を用いることが開示されている。しかし、装置内で硫酸濃度調整時に発生する蒸気やミストによる硫酸は、電解ガスに含まれる硫酸よりも多量であるにもかかわらず、硫酸濃度調整時に発生する蒸気及びミストの除去に関して開示が無く、硫酸濃度調整方法に関しても開示が無い。
【0011】
特許文献5では、洗浄に使用した硫酸を再濃縮した後、希釈及び冷却をして再電解し過硫酸を生成する方法の記載はあるが、低濃度で供給される洗浄に使用した硫酸を一旦濃縮しているため、清浄性が異なり、また、安全性についての問題を有している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施の一例を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の硫酸電解装置1の一例を示す図である。硫酸電解装置1は、陽極側電解部20と陰極側電解部23とを有してなり、2は電解槽である。該電解槽2は、隔膜5により陽極室4と陰極室7に区画してあり、陽極室4内には陽極3が設けられ、陰極室7内には陰極6が設けられている。陽極室4は、硫酸電解装置1の陽極側電解部20に設けられているが、本発明は、該陽極側電解部20を下記のように構成したことを特徴とする。
【0033】
陽極側電解部20には、陽極側希釈硫酸生成ループAと陽極側電解硫酸生成ループBとが形成されている。まず、
図1に例示した装置では、陽極側希釈硫酸生成ループAは、陽極側タンク31、陽極側濃硫酸供給部32、陽極側循環ポンプ33、陽極側冷却器34がこの順で配置されて、これらが陽極側バイパス配管36によって結ばれてループを形成している。そして、陽極側冷却器34と陽極側タンク31との間に配置された陽極側バイパスバルブ35によって、ループAの液の循環を中断できるように構成されている。
また、
図1に例示した装置では、陽極側タンク31に陽極側純水供給配管10が接続され、陽極側濃硫酸供給部32に陽極側濃硫酸供給配管27が接続されている。陽極側濃硫酸供給配管27から陽極側濃硫酸供給バルブ28を介して陽極側濃硫酸供給部32に供給された濃硫酸は、陽極側タンク31内において、陽極側純水供給配管10から陽極側純水供給バルブ11を介して供給された純水によって希釈されて低濃度の硫酸とされる。希釈された硫酸は、ループA内を循環する間に所望の温度及び濃度に調整される。陽極側希釈硫酸生成ループAで生成された所望の温度及び濃度に調整された希釈硫酸は、陽極側電解硫酸生成ループBを構成する電解槽2の陽極室4に供給されて電解される。陽極側電解硫酸生成ループBについては後述する。
【0034】
上記ループAにおいて、陽極側タンク31内に供給される純水は、図示されない積算流量計又はタンクに備えられた液面計を用いて定量されて、陽極側タンク31に供給される。積算流量計には、超音波式や電磁式、コリオリ式などのものが使用でき、積算流量計又は液面センサーからの測定値又は信号により制御機器が純水の供給や供給停止を制御する。尚、陽極側純水供給配管10の接続部分は
図1の例示に限定されず、ループA内であれば、その設置個所はどこであってもよい。21は陽極室入口バルブ、22は陽極室出口バルブであり、陽極側バイパスバルブ35と、これらのバルブを適宜に開閉することで、希釈硫酸は、希釈硫酸生成ループA又は電解硫酸生成ループBをそれぞれ循環する。また、24は陰極室入口バルブであり、25は陰極室出口バルブである。
【0035】
陽極側電解硫酸生成ループBは、電解槽2の陽極室4と、陽極側タンク31とが、陽極側循環配管37によって結ばれてループを形成しており各配管途中に配置されたバルブで、陽極側希釈硫酸生成ループAで生成した希釈硫酸が陽極側電解硫酸生成ループBを循環できるように構成されている。
上記ループBにおいては、上記ループAで温度及び濃度調整された希釈硫酸の電解を行い、電解硫酸を生成し、上記ループBを循環する間に生成された電解硫酸と上記ループAで調整された希釈硫酸とを混合し、電解硫酸を所望の温度及び濃度に調整する。また、これらの配管や機器の接液部分については、硫酸或いは酸化性物質を含む硫酸に対して耐食性を有する材料を使う必要がある。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂や、石英などを使用することができる。
【0036】
図1中の23は、硫酸電解装置1の陰極側電解部を示したものである。陰極側電解部23内には、陽極側電解部20と同様に、濃硫酸を所望の温度及び濃度の希釈硫酸に調整する陰極側希釈硫酸生成ループA’と、該ループA’で調整された希釈硫酸を陰極室7に通液して循環させる陰極側電解ループB’とが形成されている。
上記ループA’は、
図1に例示した装置では、陰極側タンク38、陰極側濃硫酸供給部39、陰極側循環ポンプ40、陰極側冷却器41、陰極側バイパスバルブ42、陰極側バイパス配管43、及び各配管途中に配置されたバルブで構成されている。そして、該例示の装置では、陰極側タンク38には陰極側純水供給配管12が接続されており、陰極側濃硫酸供給部39には陰極側濃硫酸供給配管29が接続されている。陰極側濃硫酸供給配管29から陰極側濃硫酸供給バルブ30を介して陰極側濃硫酸供給部39に供給された濃硫酸は、陰極側タンク38内において、陰極側純水供給配管12から陰極側純水供給バルブ13を介して陰極側タンク38に供給された純水によって希釈され、低濃度の希釈硫酸となる。そして、該希釈硫酸は上記ループA’内を循環する間に、所望の温度及び濃度に調整される。所望の温度及び濃度に調整された希釈硫酸は、上記ループB’に設けられた電解槽2の陰極室7に供給されて電解される。
【0037】
陰極側タンク38内に供給される純水は、図示されない積算流量計又は各タンクに備えられた液面計を用いて定量されて、陰極側タンク38に供給されるように構成するとよい。積算流量計には、超音波式や電磁式、コリオリ式などが使用でき、積算流量計又は液面センサーからの測定値又は信号により制御機器が純水の供給や供給停止を制御する。尚、陰極側純水供給配管12の接続部分は、ループA’内であれば、その設置個所はどこであってもよい。
また、これらの配管や機器の接液部分については、硫酸或いは酸化性物質を含む硫酸に対して耐食性を有する材料を使う必要があり、例えば、PTFEやPFAなどのフッ素樹脂や石英などが使用できる。
【0038】
上記陰極側電解ループB’は、電解槽2の陰極室7と、陰極側循環配管44と、陰極側タンク38と各配管途中に配置されたバルブでループ状に配置され、構成されている。陰極側電解部23内における上記ループB’では、希釈硫酸の電解が行われるが、電極反応は水素ガス発生のみであり、電解硫酸は生成されないので、上記ループB’内では、所望の温度及び濃度に調整された希釈硫酸が循環される。
【0039】
陽極側濃硫酸供給部32及び陰極側濃硫酸供給部39は、陽極側循環ポンプ33及び陰極側循環ポンプ40の入口側でも出口側のどちらにも配置することができる。しかし、昇圧された純水に濃硫酸を供給した場合、昇圧されている個所で、濃硫酸の希釈による著しい発熱及び気泡発生するために、更に昇圧される可能性があり、安全性の面から陽極側循環ポンプ33及び陰極側循環ポンプ40の入口側に配置することが好ましい。硫酸濃度は、上記陽極側希釈硫酸生成ループA及び陰極側希釈硫酸生成ループA’に供給する純水の量と、濃度が既知である濃硫酸の体積比率で調整することができる。それぞれの液体の体積は、積算流量計などを用いて定量して制御することができる。
【0040】
本発明においては、前記陽極3として導電性ダイヤモンド電極を用いることが好ましい。この場合は、PtやPbO
2などの電極触媒を用いた場合と比較して、酸素過電圧が高いため、過硫酸生成効率が高いとともに、化学的にも機械的にも耐久性が高く、陽極からの汚染発生がないため、高清浄な電解液である硫酸溶液及び電解生成物である電解硫酸を生成することができる。上記の理由から、電解槽2に使用される陽極3には、導電性ダイヤモンド電極を使用することが望ましい。
【0041】
一方、陰極6については、清浄性の面からは耐食性に優れる導電性ダイヤモンド電極の使用が望ましいが、硫酸に対して耐食性を有する、白金などの貴金属や、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブといったバルブ金属、更にはグラファイトやグラッシーカーボンのような炭素材からなる電極も、使用できる。
【0042】
本発明者らの検討によれば、硫酸濃度を調整する際に、電解槽2を循環系統内に備えたループBにて行うと、希釈熱により電解槽2の内部が高温になり、隔膜5が損傷する。このため、本発明ではこれを避け、硫酸濃度調整中は、陽極側電解部20内において、電解槽2への通液を回避し、陽極側バイパス配管36に通液するループAにより循環冷却させている。また、同様の理由から、陰極側電解部23内では、電解槽2への通液を回避させて、陰極側バイパス配管43に通液するループA’により循環冷却して硫酸の濃度調整及び温度調整を行っている。
【0043】
陽極側電解部20におけるループA及び陰極側電解部23におけるループA’において硫酸濃度調整を行うと、硫酸の希釈熱に起因した蒸気やミストが多量に発生する場合がある。本発明では、電解によって発生するガスに同伴したこれら蒸気やミストが、電解ガスの除害機器や装置外の排出先に送られ、それらを腐食することを防止するため、陽極側タンク31に接続された陽極ガスベント配管102の後方に、気液分離機構91と陽極側ミストセパレーター92を設置することが好ましい。同様に、陰極側タンク38に接続された陰極ガスベント配管103の後方には、陰極側気液分離手段96と陰極側ミストセパレーター97を設置することが好ましい。
【0044】
次いで、電解によって発生する電解ガスについて説明する。電解槽2の陽極室で発生する陽極ガスは、有毒なオゾンを含む場合がある。このため、陽極側ミストセパレーター92後方に、オゾン除害手段93として、オゾン分解触媒を設置してオゾンを酸素に還元して無害化するか、或いは空気や不活性ガスで十分に希釈して装置外に放出することが望ましい。オゾン分解触媒としては、過酸化マンガンを使用する場合が多いが、pHの低い硫酸等の酸溶液と接触した場合、過酸化マンガンは溶解してしまい、オゾン分解能が失われる場合がある。また、接触した液体が水であっても、オゾン分解触媒表面が水で覆われてしまった場合は、オゾンガスと触媒が接触できなくなるため、この場合もオゾン分解能は失われる。従って、装置内でオゾンを処理して安全に装置を稼動させるためには、気液分離機構91及びミストセパレーター92によって、電解ガスからミスト及び蒸気を除くことが好ましい。また、ミストや結露の可能性がある蒸気が供給されることが予め考慮された場合を除き、送ガスに用いる配管はステンレスなどの金属製配管を使用する場合が一般的であり、この場合は、硫酸ミストや結露との接触により腐食するため、基本的には装置外にこれらを含んだ電解ガスを排出しないことが必要である。
【0045】
電解槽2の陰極室で発生する陰極ガスの水素は、可燃性、爆発性を有するため、陰極側ミストセパレーター97の後方には水素燃焼触媒を設置して、発生する水素ガスと空気とを混合して燃焼させ、無害な水蒸気に変換して排出するか、或いは空気や不活性ガスにて十分に希釈して装置外に排出することが望ましい。水素燃焼触媒は、空気と水素とを燃焼させて水素を除害する機能を有するが、燃焼のための有効成分として貴金属を含む触媒を使用することが多い。一般に、触媒表面が水などの液体で覆われた場合は、水素ガスと触媒とが接触できなくなるため、水素燃焼能力は失われる。また、ミストや結露の可能性がある蒸気が供給されることが予め考慮された場合を除き、送ガスに用いる配管はステンレスなどの金属製配管を使用する場合が一般的であり、この場合は、硫酸ミストや結露との接触により腐食するため、基本的には装置外にこれらを含んだ電解ガスを排出しないことが必要である。
【0046】
陽極側気液分離機構91及び陰極側気液分離機構96には、配管やタンクなどの容器を用いて電解ガスと電解ガス中の液体との比重差を利用して電解発生ガスと硫酸が分離される機構のものや、容器内での電解ガスの滞留時間を長く取り、容器内にミストが落ちるようにした機構ものなどを用いることができる。ミストセパレーター92及び97は、筒状の容器の中に耐薬品性を有する材質のメッシュや多孔質材料を用いたものや、電解ガスの滞留時間を長く取りミストが落ちるようにしたものなどを用いることができる。また、気液分離機構やミストセパレーターやこれらを接続する配管を冷却することにより飽和水蒸気圧を下げ、これによって、電解ガス中の水分を凝結させて気液分離機構やミストセパレーターでの水分除去効率を大きくし、後ラインへの持ち出し量を少なくすることも有効な手段である。
【0047】
陽極側気液分離機構91、陰極側気液分離機構96、陽極側ミストセパレーター92、及び陰極側ミストセパレーター97に、多量の蒸気やミストが混入すると内部に液体が貯留してガス流路を閉塞し、陽極側タンク31及び陰極側タンク38の排気ができなくなる場合がある。そのため、陽極側気液分離機構91、陰極側気液分離機構96、陽極側ミストセパレーター92、及び陰極側ミストセパレーター97は、内部に貯留した液体を定期的に排液するようにすることが好ましい。
【0048】
陽極側気液分離機構91及び陽極側ミストセパレーター92の排液は、陽極側ガス配管排液バルブ94を開けることで陽極側排液配管95より行われる。陰極側気液分離機構96及び陰極側ミストセパレーター97の排液は、陰極側ガス配管排液バルブ99を開けることで陰極側排液配管100より行われる。
【0049】
ここで、気液分離について、各機器の目的と電解硫酸装置動作時の様子について説明する。
【0050】
(1)硫酸希釈時
ループAには、陽極側冷却器34が設けられているが、硫酸を希釈した際には、室温よりも液温度が上昇する。この際、配管と比較して広い陽極側タンク31の気体空間には、陽極側タンク31内に貯留された希釈硫酸濃度・温度と平衡となる水蒸気圧を含んだ気体(空気)が存在する可能性がある。この含水蒸気気体は、含水蒸気気体が接する室温下のタンク壁面や配管壁面で冷却されて水滴が凝縮する。
硫酸希釈動作は、始めに陽極側タンク31や配管内に規定量の純水が貯留され、循環途中に規定量の硫酸を注入し、混合するものであるので、陽極側タンク31内の液面は硫酸の注入に伴って上昇し、陽極側タンク31内の気体は徐々に陽極側タンク31外(陽極ガスベント配管102上部)へ排出され、空気の流れが発生する。この空気の流れに伴って、上記した壁面に付着した水滴が陽極ガスベント配管102中を移動していく。
【0051】
(2)電解時
電解時は、前記(1)と異なり、希釈による発熱ではなく、電解による発熱により前記(1)と同様の現象が発生する。更に、
図1に示した構成では、前記(1)の動作であれば、純水と硫酸の混合で発生した熱は速やかに陽極側冷却器34で除去されるが、電解槽2で発生した電解による熱は電解液の温度を上げ、陽極側タンク31内に供給されるため、前記(1)より水蒸気(水滴)の発生は多いと推測される。更に、電解時には、電解により電極から電解ガスが発生し、電解液に微細気泡として含まれる。この微細気泡は、陽極側タンク31内にて電解液中から気相中へ移動するが、微細気泡が液面で弾ける際に微細な飛沫が発生し、これがミストとして陽極側タンク31内の気体に含まれることになる。
【0052】
(3)各機構のこと
陽極側気液分離機構91上部に接続された陽極側ミストセパレーター92は、微細孔を有する分離膜がミストを通過させないことで、気体分子とミスト(微細であるため気体中を浮遊している液滴)を分離することができるものである。この分離膜によって分離されたミストの分離量が増えるにつれて徐々に液滴になり、液として流れることができるようになる。
陽極側気液分離機構91で分離された液体aは、重力(自重)により気液分離機構91下側に流れる。また、陽極側ミストセパレーター92で分離されたミストが集まることで液滴になり、自重により陽極側ミストセパレーター92下側へ流れ、陽極側気液分離機構91に移行する。陽極側ミストセパレーター92により分離された液体bは、陽極側気液分離機構91で前記液体aと同様に陽極側気液分離機構91下側に流れる。陽極側気液分離機構91下側に流れた液体a及びbは、陽極側ガス配管排液バルブ94の手前に集まり、陽極側ガス配管排液バルブ94が開いた際に装置外に自重で排出される。従って、気液分離機構やミストセパレーターで分離された液体の排出には、各機器の高さ位置の関係が重要であり、少なくとも、上方から順に、陽極側ミストセパレーター92、陽極側気液分離機構91、陽極側ガス配管排液バルブ94とする必要がある。ガス配管排液バルブ94の開閉のタイミングは任意に選べる。
尚、陰極側気液分離機構96の上部に接続された陰極側ミストセパレーター97においても同様とすることが好ましい。
【0053】
気液分離機構及びミストセパレーター内の排液を効率的に行うには、圧力差を用いると良い。例えば、陽極側排液配管95及び陰極側排液配管100に図示されない減圧器を設け、気液分離機構とミストセパレーター内を減圧することにより陽極ガス及び陰極ガスと反対方向のガス流を作ることで、効率的に気液分離機構及びミストセパレーター内の硫酸を排液することができる。
【0054】
もう一つの方法としては、陽極側ミストセパレーター92及び陰極側ミストセパレーター97の出口側に、図示されない不活性ガス供給部を設け、陽極ガス及び陰極ガスと反対方向に気液分離機構とミストセパレーター内を不活性ガスでブローすることで、効率的に気液分離機構及びミストセパレーター内の硫酸を排液することができる。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスを使用することができる。
【0055】
電解槽2に使用される隔膜5は、親水化処理を行った多孔質フッ素系樹脂膜又はフッ素樹脂系陽イオン交換膜を使用することが好ましい。フッ素樹脂系陽イオン交換膜を使用する場合は、陽極側から陰極側へ陽イオンがイオン交換膜を透過する際に、同伴される同伴水の影響により、陽極の硫酸濃度は電解時間の経過につれて上昇すると共に、陽極側の液量が減少し、陰極の硫酸濃度は同伴水により希釈されることで低下すると共に液量が増加する。
【0056】
陰極側の液量管理は、陰極タンク排出バルブ113の開閉により行い、定期的に排出する場合もタンクの液面高さで管理する場合も、陰極タンク排出バルブ113を開くことで、自重で装置外に液を排出する。排出量の管理は、いろいろな方法が取れるが、例えば、陰極側タンク38にLow位置を測定する液面センサーを設けておき、液排出が進んでそのセンサー位置まで液面が来たときに陰極タンク排出バルブ113を閉めることで管理することができる。陰極タンク排出バルブ113が開くタイミングとしては、電解時間と通電電流値を監視し、それらから同伴水量を算出して規定値に達したところで開く場合と、陰極側タンク38にHigh位置を測定する液面センサーを設けておき、同伴水蓄積が進んで液面がそのセンサー位置まで増加した際に開く場合の、どちらを用いることができる。
尚、陰極側タンク38の空間をバランスする気体は、陰極ガス除害機器98から陰極ガスベント配管103を通って流入させることができる。
【0057】
同伴水により陰極液が増加すると、陰極側タンク38の液面が上昇して陰極側タンク38の容量を超えてしまうため、陰極側タンク38においては、タンク液面が所定の高さに達したときに陰極タンク排出バルブ113を開けて、陰極タンク排出管112より所定量排液することで貯留量過剰になることを防止する。陰極側タンク38の液面の管理には、図示されていない液面センサーなどを用いることができる。このように、多孔質フッ素系樹脂膜を陽イオンが通過する際に同伴される同伴水により陰極電解部23の希釈硫酸溶液の液量が増加した際に、定期的若しくは陰極側タンク38の液面が所定の高さに達したときに所定量排液することにより、陰極側タンク38のオーバーフローを防止することができる。
【0058】
一方、陰極液を排液せずに継続して使用すると、同伴水により陰極の硫酸が更に希釈されて濃度低下し導電率が大きく低下する。陰極液を交換せずに長時間使用する際には、図示されない硫酸濃度計により陰極液の硫酸濃度を監視して、陰極側硫酸供給部39より濃硫酸を補充して一定濃度となるように制御することもできる。
例えば、電解時間と電流値を測定し、測定値から算出される同伴水量を求め、次に、電解前に調整された陰極側タンク38内の電解液量及びその硫酸濃度に前記同伴水量を加えた時の硫酸濃度を算出し、算出された硫酸濃度が規定範囲内より薄い場合は規定範囲に戻すために添加すべき硫酸量を算出し、算出された硫酸量を流量計で定量しながら、陰極側硫酸供給部39から陰極側電解ループB’動作状態のところへ濃硫酸を注入することで陰極液中の硫酸濃度を制御することができる。電解条件の変動を少なくするには、濃硫酸の注入速度を遅くし温度管理及びセルに供給される硫酸濃度が規定範囲内から逸脱しないように管理することが重要となる。
【0059】
陽極側電解部20におけるループB内において、所定時間電解後、所定の酸化性物質濃度に到達した陽極側タンク31内の電解硫酸は、陽極タンク排出配管110、陽極タンク排出バルブ111より装置外のユースポイントに供給する。尚、陰極側電解部23における陰極側電解ループB’内において、所定時間電解後、陰極側タンク38内の電解液は、陰極タンク排出配管112、陰極タンク排出バルブ113より装置外に排出する。
【0060】
陽極側タンク31内の電解硫酸が空になると、再度、硫酸濃度の調整が開始される。この際、薬品の使用量を低減するために陰極液は濃度管理を行い、濃度や導電率などの特性値を監視し、特性値が規定値を維持している間は繰り返し使用するのが良い。陰極側の温度、濃度管理は直接的には過硫酸生成効率に関係するものではないが、下記の理由から、管理することが好ましい。すなわち、陰極液は陽イオン交換膜である隔膜5を通して陽極液へ温度を伝え、陽極液温度を規定範囲内に収めることを妨害すること、陽極液と陰極液の濃度が異なる場合は、陽イオン交換膜である隔膜5が両極液濃度差の界面となるため希釈熱発生場所となり、電解液の温度制御が行いにくくなり、過硫酸生成効率に影響を与えること、過熱により陽イオン交換膜である隔膜5が劣化や寸法変化すること、過熱により水蒸気気泡が発生し、セルの抵抗が大きくなること等が発生することなどのため、陰極側の温度、濃度管理が必要となる。
【0061】
図2は、
図1の硫酸電解装置1の硫酸濃度調整及び電解の工程を示した図である。陽極側電解部20における工程は、
図2に示す通り、次の各工程よりなる。
【0062】
1)純水供給工程
陽極側タンク31に陽極側純水供給配管10より純水を供給する。
【0063】
2)純水循環工程
陽極側ポンプ33を駆動させて純水を循環させる。この際、陽極室4には通液せず、陽極側バイパス配管36を介して、純水をループA内に循環させる。
【0064】
3)濃硫酸供給工程
ループA内で循環している純水中に陽極側濃硫酸供給部32より濃硫酸を供給し、継続して循環することで濃硫酸と純水を混合する。この方法では、濃硫酸と純水を混合した直後に陽極側冷却器34に溶液が入るため、濃硫酸と純水が混合した際に発生する希釈熱が直ちに除去され、蒸気やミストの発生が抑制される。更に、希釈熱に起因した陽極側濃硫酸供給部32の温度上昇が抑制され、周辺の配管、ポンプ、バルブなどを高熱による破損や変形などから保護することができる。
【0065】
4)ガスベント配管排液工程
陽極側気液分離機構91及び陽極側ミストセパレーター92の排液を、陽極側ガス配管排液バルブ94を開けることで陽極側排液配管95より行われる。本工程は、上記3)濃硫酸供給工程、下記5)希釈硫酸濃度調整工程、及び6)電解工程において随時行われる。
【0066】
5)硫酸温度及び濃度調整工程
所望の温度以下、好ましくは温度30℃以下となるまでループA内で希釈硫酸溶液を循環冷却しながら混合する。硫酸温度が30℃以下の溶液では酸化性物質の生成する電流効率が高いため、30℃以下まで電解前に冷却することが好ましい。又、硫酸濃度は2〜10mol/Lとするのが良い。これは、硫酸濃度が10mol/Lを超えると、酸化性物質を生成する電流効率が急激に低下し、電流効率が60%以下となり、一方、2mol/L未満になると、酸化性物質の原料となる溶液中の硫酸イオンが少なくなり、電流効率が60%以下に低下するため、硫酸濃度を上記範囲内とすることが好ましい。
【0067】
上記のように陽極側電解部20で工程が進行する間に、陰極側電解部23でも、
図2に示す通り、同様に以下の工程が進行する。
【0068】
1)純水供給工程
陰極側タンク38に陰極側純水供給配管12より純水を供給する。
【0069】
2)純水循環工程
陰極側ポンプ40を駆動させて純水がループA’内を循環するようにさせる。この際、陰極室7には通液せず、陰極側バイパス配管43を介して陰極側タンク38に純水が循環される。
【0070】
3)濃硫酸供給工程
ループA’内で循環している純水中に陰極側濃硫酸供給部39より濃硫酸を供給し、継続して循環することで濃硫酸と純水を混合する。この方法では、濃硫酸と純水を混合した直後に陰極側冷却器41に溶液が入るため濃硫酸と純水が混合した際に発生する希釈熱が直ちに除去され、蒸気やミストの発生が抑制される。この時、循環流量に対して濃硫酸の供給流量が20%以下の流量となるようにすると、希釈熱に起因した陰極側濃硫酸供給部39の温度上昇を抑制され、周辺の配管、ポンプ、バルブなどを高熱による破損や変形などから保護できる。
【0071】
4)ガスベント配管排液工程
陰極側気液分離機構96及び陰極側ミストセパレーター97の排液を、陰極側ガス配管排液バルブ99を開けることで陰極側排液配管100より行われる。本工程は、上記3)濃硫酸供給工程、下記5)希釈硫酸濃度調整工程、及び6)電解工程において随時行われる。
【0072】
5)硫酸温度及び濃度調整工程
所望の温度以下、好ましくは温度30℃以下となるまでループA’内で希釈硫酸溶液を循環冷却しながら、均一になるまで混合する。硫酸濃度が30℃以下の溶液では、酸化性物質の生成する電流効率が高いため、30℃以下まで電解前に冷却するのが良い。
また、硫酸濃度は2〜10mol/Lとするのが良い。これは、硫酸濃度が10mol/L超えると、酸化性物質を生成する電流効率が急激に低下し、電流効率が60%以下となり、一方、2mol/L未満になると、酸化性物質の原料となる溶液中の硫酸イオンが少なくなるため、電流効率が60%以下に低下するため、硫酸濃度を上記範囲内とすることが好ましい。
【0073】
陽極側と陰極側は完全に分離されているため、陽極側及び陰極側で行われる1)〜5)の工程は同じであり、それぞれ完全に独立して行うことができる。
上記のようにして、陽極側と陰極側における陽極側希釈硫酸生成ループA及び陰極側希釈硫酸生成ループA’において、所望の温度及び所望の濃度に調整された希釈硫酸は、陽極側電解硫酸生成ループB及び陰極側電解ループB’の電解工程において電解される。
【0074】
6)電解工程
電解工程は、上記1)〜5)が陽極側、陰極側共に終了後に行われる、希釈硫酸溶液を電解する工程である。陽極側電解部20及び陰極側電解部23共に希釈硫酸溶液を循環させて電解を行う。溶液温度を30℃以下とすると電流効率が高いため、電解中の溶液温度は30℃以下に管理するのが良い。
【0075】
7)陽極液(電解硫酸)供給工程
電解工程において生成された電解硫酸は、陽極側電解部20のループBにおいて、所望の温度及び所望の濃度に調整された後、ユースポイントより供給される。これを電解硫酸液供給工程という。この電解硫酸液供給工程では、前記電解工程で所定の時間電解した後、或いは図示されない濃度モニターにより酸化性物質濃度を監視し、濃度が所定の濃度に到達した陽極液を系外に供給するものである。レジスト剥離装置やエッチング装置などに供給されるが、接続される装置や設備が限定されるものではない。
本発明による硫酸電解装置においては、酸化性物質濃度や硫酸濃度を測定するための濃度モニターを装置内若しくは電解硫酸が通液する外部配管に設置することができる。濃度モニターにて得た測定値は、電解セルへ供給する電流値の制御や、洗浄装置等の硫酸電解装置から電解硫酸が送液される装置への運転信号や送液信号やアラームなどの信号の出力タイミング決定などに用いることができる。尚、濃度モニターの測定方式としては特に制限されない。
【0076】
8)陰極液排液工程
電解工程中に陰極液が同伴水により増加し、陰極側タンク38の液面が所定位置に達すると、陰極タンク排出バルブ113が一時的に開かれ、陰極液を少量排液する。
電解工程において生成された陰極液は、陰極側電解部23の陰極側電解ループB’より排出される。これを陰極液排液工程という。この陰極液排液工程では、同伴水により希釈された陰極液を陰極側タンク38から全量排液する工程である。これは陰極液の使用回数を事前に設定してその回数に到達したら排液しても良いが、陰極液の硫酸濃度を図示されない硫酸濃度計にて測定して所定値まで濃度が低下した時に排液してもよい。なお、陰極排液工程は、陽極液供給工程と同時に行われてもよいが、電解工程と同時に行うことはできない。
【0077】
本発明の他の例においては、陽極側電解部20内に、2個以上の陽極側タンクを搭載しても良く、例えば、タンクごとに、装置外への送液専用、希釈硫酸調整専用、電解専用といった機能を割り振ったり、送液専用と、希釈硫酸調整と電解工程専用というような機能の割り振りにより、酸化性物質を含む硫酸を効率よく短時間で多量に生成することもできる。陰極側電解部23においても同様に複数のタンクを有する機構を備えることができる。硫酸電解装置1は、電解槽2を2台以上搭載しても良く、1台の電解槽に2対以上の陽陰極組を設置してバイポーラ構造にしても良い。
【0078】
図3は、陽極側電解部20において、陽極側タンクを複数個設置した例を示す図である。陰極側電解部23は図示していないが、
図1における陰極側電解部23と同様である。ループAにおいて第1の陽極側タンク49及び第2の陽極側タンク50を並列に設け、第1の陽極側タンク49において、生成した酸化性物質を含む電解硫酸を貯留した後、切替えバルブ51〜58を切り替えて第2の陽極側タンク50にて所定濃度の酸化性物質を含む電解硫酸を生成できる硫酸電解装置を示したものである。このようにすることにより、
(1)第1の陽極側タンク49に電解した硫酸を貯留しておき、諸バルブを切り替えて第2の陽極側タンク50にて同様に電解硫酸を製造している間に、第1の陽極側タンク49からユースポイントへ電解硫酸を供給することができる。これを繰り返すことで、連続的に途切れなく電解硫酸を供給することができるとともに、
(2)第1の陽極側タンク49と第2の陽極側タンク50で別々の硫酸濃度・酸化性物質濃度の電解硫酸を製造・貯留し、2個所のユースポイントへ送液したり、要求される酸化力が異なる使用工程へ1台の装置から送液することができる。
尚、前記した様に、陰極側電解部23における陰極側タンクも、陽極側タンクと同様に、複数設けることもできる。
【0079】
図4は、
図3の硫酸電解装置1の硫酸濃度調整及び電解の工程を示した図である。冷却器や硫酸混合器は一つだけ(共通)の場合を示したものである。先ず、
図4の左側に示す工程を以下に説明する。
【0080】
1)純水供給工程
切り替えバルブ55を開にして、陽極側タンク49に陽極側純水供給配管10より純水を供給する。供給する水量はタンク49に設置した液面センサーからの信号や陽極側純水供給配管10に設置した積算流量計からの信号によって切り替えバルブ55を閉とすることで定量できる。尚、陽極側タンク50に付属する切り替えバルブ52,54は閉である。
【0081】
2)純水循環工程
陽極側ポンプ33を駆動させて純水を循環させる。この際、陽極側バイパスバルブ35は開、陽極室出口バルブ22、陽極室入口バルブ21は閉とする。陽極室4には通液せず、陽極側バイパス配管36を介して純水がループA内を循環する。
【0082】
3)濃硫酸供給工程
ループA内で循環している純水中に陽極側濃硫酸供給部32より濃硫酸を供給し、継続して循環することで濃硫酸と純水とを混合する。この方法では、濃硫酸と純水とを混合した直後に陽極側冷却器34に溶液が入るため、濃硫酸と純水が混合した際に発生する希釈熱が直ちに除去され、蒸気やミストの発生が抑制される。更に、希釈熱に起因した陽極側濃硫酸供給部32の温度上昇が抑制され、周辺の配管、ポンプ、バルブなどを高熱による破損や変形などから保護することができる。
【0083】
4)ガスベント配管排液工程
陽極側気液分離機構91及び陽極側ミストセパレーター92の排液を、陽極側ガス配管排液バルブ94を開けることで陽極側排液配管95より行う。本工程は、上記3)濃硫酸供給工程、下記5)希釈硫酸濃度調整工程、及び6)電解工程において随時行われる。
【0084】
5)硫酸温度及び濃度調整工程
所望の温度以下、好ましくは温度30℃以下となるまで陽極側希釈硫酸生成ループA内で希釈硫酸溶液を循環冷却しながら混合する。硫酸温度が30℃以下の溶液では酸化性物質の生成する電流効率が高いため、30℃以下まで電解前に冷却することが好ましい。
また、硫酸濃度は2〜10mol/Lとするのが良い。これは、硫酸濃度が10mol/L超えると、酸化性物質を生成する電流効率が急激に低下し、電流効率が60%以下となり、一方、2mol/L未満になると、酸化性物質の原料となる溶液中の硫酸イオンが少なくなるため、電流効率が60%以下に低下するため、硫酸濃度を上記範囲内とすることが好ましい。
上記のようにして、陽極側における陽極側希釈硫酸生成ループAにおいて、所望の温度及び所望の濃度に調整された希釈硫酸は、陽極側電解硫酸生成ループBの電解工程において電解される。
【0085】
6)電解工程
電解工程は、上記1)〜5)が終了後に行われる、希釈硫酸溶液を電解する工程である。
図4においては陰極側については図示していないが、前記
図2における場合と同様に陰極側でも上記1)〜5)の各工程が、陽極側と同様に行われている。
陽極側電解部20において、希釈硫酸溶液を循環させて電解を行う。溶液温度を30℃以下とすると電流効率が高いため、電解中の溶液温度は30℃以下に管理するのが良い。
陽極側バイパスバルブ35を閉にし、陽極室出口バルブ22、陽極室入口バルブ21を開にし、陽極側タンク49と陽極室4の間で循環させる。
電解槽2に直流電流を給電し、既定供給電流にて規定時間の電解を行い、規定濃度の酸化性物質を含む電解硫酸を得る。切り替えバルブ51、53を閉とし、生成した規定濃度の酸化性物質を含む電解硫酸は陽極タンク49に貯留される。
【0086】
7)陽極液(電解硫酸)供給工程
電解工程において生成された電解硫酸は、陽極側電解部20の陽極側電解硫酸生成ループBにおいて、所望の温度及び所望の酸化性物質濃度に調整されており、ユースポイントへ供給される。これを電解硫酸液供給工程という。この電解硫酸液供給工程では、前記電解工程で所定の時間電解した後、或いは図示されない濃度モニターにより酸化性物質濃度を監視し、濃度が所定の濃度に到達した陽極液を系外に供給するものである。レジスト剥離装置やエッチング装置などに供給されるが、接続される装置や設備が限定されるものではない。
【0087】
この7)陽極液供給工程と並行して、
図4の右側に示す通り、陽極側タンク50に対して、上記1)と同様に純水が供給され、この後下記の通り、1)→6)が行われる。
【0088】
1)純水供給工程
切り替えバルブ56を開にして、陽極側タンク50に陽極側純水供給配管10より純水を供給する。供給する水量はタンク50に設置した液面センサーからの信号や陽極側純水供給配管10に設置した積算流量計からの信号によって切り替えバルブ56を閉とすることで定量できる。尚、陽極側タンク50に付属する切り替えバルブ52,54は開である。
【0089】
2)純水循環工程
陽極側ポンプ33を駆動させて純水を循環させる。この際、陽極側バイパスバルブ35は開、陽極室出口バルブ22、陽極室入口バルブ21は閉とする。陽極室4には通液せず、陽極側バイパス配管36を介して純水がループA内を循環する。
【0090】
3)濃硫酸供給工程
ループA内で循環している純水中に陽極側濃硫酸供給部32より濃硫酸を供給し、継続して循環することで濃硫酸と純水を混合する。この方法では、濃硫酸と純水を混合した直後に陽極側冷却器34に溶液が入るため、濃硫酸と純水が混合した際に発生する希釈熱が直ちに除去され、蒸気やミストの発生が抑制される。更に、希釈熱に起因した陽極側濃硫酸供給部32の温度上昇が抑制され、周辺の配管、ポンプ、バルブなどを高熱による破損や変形などから保護することができる。
【0091】
4)ガスベント配管排液工程
陽極側気液分離機構91及び陽極側ミストセパレーター92の排液を、陽極側ガス配管排液バルブ94を開けることで陽極側排液配管95より行う。本工程は、上記3)濃硫酸供給工程、下記5)希釈硫酸濃度調整工程、及び6)電解工程において随時行われる。
【0092】
5)硫酸温度及び濃度調整工程
所望の温度以下、好ましくは温度30℃以下となるまでループA内で希釈硫酸溶液を循環冷却しながら混合する。硫酸温度が30℃以下の溶液では酸化性物質の生成する電流効率が高いため、30℃以下まで電解前に冷却することが好ましい。
また、硫酸濃度は2〜10mol/Lとするのが良い。これは、酸化性物質の生成する電流効率が10mol/L以上の硫酸より高いためである。2mol/L以下になると、酸化性物質の原料となる溶液中の硫酸イオンが少なくなるため、電流効率が低下するためである。
上記のようにして、陽極側におけるループAにおいて、所望の温度及び所望の濃度に調整された希釈硫酸は、ループBの電解工程において電解される。
【0093】
6)電解工程
電解工程は、上記1)〜5)が終了後に行われる、希釈硫酸溶液を電解する工程である。
図4においては陰極側については図示していないが、前記
図2における場合と同様に陰極側でも上記1)〜5)の各工程が、陽極側と同様に行われている。
陽極側電解部20において、希釈硫酸溶液を循環させて電解を行う。溶液温度を30℃以下とすると電流効率が高いため、電解中の溶液温度は30℃以下に管理するのが良い。
陽極側バイパスバルブ35を閉にし、陽極室出口バルブ22、陽極室入口バルブ21を開にし、陽極側タンク50と陽極室4の間で循環させる。
電解槽2に直流電流を給電し、既定供給電流にて規定時間の電解を行い、規定濃度の酸化性物質を含む電解硫酸を得る。次いで、切り替えバルブ52、54を閉とし、生成した規定濃度の酸化性物質を含む電解硫酸は陽極タンク50に貯留される。
この後、陽極側タンク50からユースポイントへ電解硫酸が供給され、陽極側タンク49ではまた純水供給工程が始まり、繰り返される。
【実施例】
【0094】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
<実施例1>
図1及び
図2に示す硫酸電解装置及び硫酸電解方法で行った。
電解槽2に搭載される陽極3及び陰極6には、口径200mmφのシリコン板上へホウ素ドープして導電性を付与したダイヤモンドを被覆した導電性ダイヤモンド電極をそれぞれ用いた。電流密度は100A/dm
2とした。
陽極側、陰極側ともに、硫酸温度及び濃度調整工程は以下のとおりであり、濃硫酸を純水で希釈し、温度調整された所定濃度の希釈硫酸を調整した。
【0096】
陽極側の手順は以下の通りである。
1)陽極側純水供給配管10より陽極側タンク31へ純水供給して貯留した。純水の供給量は、図示されていない超音波方式の積算流量計を用いて秤量して供給した。
2)陽極側循環ポンプ33を駆動させて、ループA内で純水を循環させた。
3)ループA内を循環している純水に、陽極側濃硫酸供給部32からループA内に濃硫酸を供給し、希釈硫酸生成を行った。濃硫酸の供給量は、図示されていない超音波方式の積算流量計を用いて秤量して供給した。
4)濃硫酸と純水の混合により発生する希釈熱は循環中に陽極側冷却器34にて冷却し、30℃以下まで温度調整すると共に、濃硫酸を純水で希釈した希釈硫酸溶液は循環により十分に攪拌して混合した。
【0097】
陰極側の手順は以下の通りである。
1)陰極側純水供給配管12より陰極側タンク38へ純水供給して貯留した。純水の供給量は、図示されていない超音波方式の積算流量計を用いて秤量して供給した。
2)陰極側循環ポンプ40を駆動させて、ループA’内で純水を循環させた。
3)ループA’を循環している純水に、陰極側濃硫酸供給部39からループA’内に濃硫酸を供給し、希釈硫酸生成を行った。濃硫酸の供給量は、図示されていない超音波方式の積算流量計を用いて秤量して供給した。
4)濃硫酸と純水の混合により発生する希釈熱は、循環中に陰極側冷却器41にて冷却し、30℃以下まで温度調整すると共に、濃硫酸を純水で希釈した希釈硫酸溶液は循環により十分に攪拌して混合した。
【0098】
陽極側及び陰極側で硫酸濃度調整及び温度調整が完了した後、陽極側はバルブ21とバルブ22とを開き、バルブ35を閉じることでループBを構成し、陰極側は陰極室入口バルブ24と陰極室出口バルブ25を開き、陰極側バイバスバルブ42を閉じることで陰極側電解ループB’を構成し、それぞれ電解セルに希釈硫酸溶液を循環供給しつつ、電解セルに直流電流を供給し電解を行い、酸化性物質を含む電解硫酸を生成した。
【0099】
次に、前記の手法により、電解前の硫酸濃度を硫酸濃度調整工程後により1.8〜16.7mol/Lの範囲で調整した。陰極液も同様の方法を陰極側に適用して濃度調整した。希釈硫酸溶液を冷却後、電解を行った。条件は次の通りとした。
【0100】
【0101】
前記手順及び前記条件で電解した希釈硫酸を、電解部から分岐した図示されないサンプリング配管から溶液をサンプリングし、KI滴定法により希釈硫酸中に生成した酸化性物質の総量を定量測定した。
表1に、電解に供する希釈硫酸温度によって同一体積容量密度における総酸化性物質濃度の測定例を示す。硫酸濃度は、3.7mol/Lである。温度が30℃を超えると得られる濃度が低下する。
【0102】
【0103】
総酸化性物質濃度から求められた電流効率は、30℃付近から大きく低下することがわかり、酸化性物質を効率よく生成するには30℃以下にした希釈硫酸を使って電解を行うことが有効であることがわかった。
【0104】
表2に、硫酸濃度を1.8〜16.7mol/Lとした時の総酸化性物質濃度と電流効率の結果を示した。電流密度は100A/dm
2、体積容量密度は25Ah/Lとした。総酸化性物質濃度から求められた電流効率は、硫酸濃度が2.0〜10.0mol/Lのとき、60%以上の領域を示し、それより薄い領域及び濃い領域では急激に低下することがわかった。
【0105】
【0106】
表3に電解中にも電解液の冷却をし続けて30℃を保持した例と、電解中に冷却を止め電解による発熱によって電解液温度が51℃まで上昇した例を示す。
【0107】
【0108】
表3から明らかなように、30℃に冷却し続けた例は、酸化性物質濃度1.51mol/Lが得られたのに対し、電解中に冷却を止め、電解による発熱によって電解液温度が51℃まで上昇した例は、酸化性物質濃度が0.72mol/Lに留まり、効率の良い電解が行えなかった。
【0109】
<比較例1>
次に、比較例1として、濃硫酸と純水との混合位置を陽極側タンク内とし、更に、気液分離機構及びミストセパレーターを設けなかった場合を示す。この比較例1の希釈硫酸生成工程においては、冷却が適切でなく、装置トラブルが発生した。
【0110】
比較例1においては、6mol/Lの希釈硫酸溶液を調整するために、タンク上部からタンク内に超純水を2.6L投入した後に、5.9Lの98質量%硫酸をタンク下部から投入した。いずれの溶液も室温であった。超純水供給流量は3L/min、98質量%硫酸供給流量は0.2〜1L/minであった。
【0111】
タンク内部では超純水と硫酸の混合により発生した希釈熱により溶液温度が上昇したため、蒸気が多量に発生した。この蒸気に起因して、ガスベント配管の内壁には曇りが付着した。
98質量%硫酸の供給終了後、ポンプを起動させてタンクと熱交換器で溶液を循環させ、希釈硫酸溶液を25℃まで冷却した。冷却終了後、タンクと電解槽で溶液を循環させて、電解を開始した。電解中の溶液温度は27℃であり、陽極及び陰極のガスベント配管のガス圧は3〜5kPaであったが、電解開始10分後に陰極タンクのガス圧が急激に上昇し200kPaに到達し、異常となったためタンクと電解槽で溶液循環を停止した。
【0112】
この際、硫酸の希釈熱により発生した蒸気により、陰極タンクと陰極側除害設備として設置した水素燃焼塔の間に設置したフィルターの内部に硫酸希釈時に発生したミスト及び蒸気が凝結した液体が滞留しており、この液体によってガスフィルターが閉塞したため、陰極ガスが陰極タンクとフィルターの間で滞留し高圧が発生した。残圧を解放後、セルを解体したところ、陽イオン交換膜に貫通穴が確認された。