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特許5997145有機性廃水及び有機性汚泥の処理方法及び処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997145
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】有機性廃水及び有機性汚泥の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20160915BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20160915BHJP
   C02F 11/14 20060101ALI20160915BHJP
   C02F 3/28 20060101ALI20160915BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   C02F11/00 CZAB
   C02F11/12 Z
   C02F11/14 B
   C02F11/00 Z
   C02F3/28 A
   C02F11/04 Z
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-521582(P2013-521582)
(86)(22)【出願日】2012年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2012065581
(87)【国際公開番号】WO2012176753
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2011-137339(P2011-137339)
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野 隆生
(72)【発明者】
【氏名】島村 和彰
(72)【発明者】
【氏名】森田 智之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 建樹
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−334584(JP,A)
【文献】 特開2011−050803(JP,A)
【文献】 特開2000−061473(JP,A)
【文献】 特開2002−045889(JP,A)
【文献】 国際公開第03/086990(WO,A1)
【文献】 特開2004−000941(JP,A)
【文献】 特許第5875259(JP,B2)
【文献】 特開2007−196095(JP,A)
【文献】 特開2004−160304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥中に含まれるMAP粒子を種晶として、次の汚泥減量化工程から返送されてくる固液分離水中に溶解していたリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させ、粒径25μm以上の粗MAP粒子に成長したMAP粒子と、粒径25μm未満の微細MAP粒子を含むMAP脱離汚泥とに分離するリン分離工程と、前記リン分離工程で分離したMAP脱離汚泥のpHを低下させてMAP脱離汚泥中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥を得るpH調整工程と、該pH調整汚泥を濃縮乃至脱水して脱水ケーキを得る一方、該濃縮乃至脱水によって得られた固液分離水の一部又は全部を前記リン分離工程に返送する汚泥減量化工程と、を備えた有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法。
【請求項2】
有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥中に含まれるMAP粒子を種晶として、次の汚泥減量化工程から返送されてくる固液分離水中に溶解していたリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させ、粒径25μm以上の粗MAP粒子に成長したMAP粒子と、粒径25μm未満の微細MAP粒子を含むMAP脱離汚泥とに分離するリン分離工程と、前記工程で分離したMAP脱離汚泥を濃縮し、得られた濃縮汚泥のpHを低下させて該濃縮汚泥中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥を得、該pH調整汚泥を脱水して脱水ケーキを得る一方、該脱水によって得られた固液分離水の一部又は全部を前記リン分離工程に返送する汚泥減量化工程と、を備えた有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法。
【請求項3】
請求項1のリン分離工程の代わりに、
有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥に、MAP分離工程から返送されてくるMAP濃縮スラリーと、汚泥減量化工程から返送されてくる固液分離水とを混合し、前記嫌気性処理汚泥及び前記MAP濃縮スラリー中に含まれるMAP粒子を種晶として、前記嫌気性処理汚泥及び前記固液分離水中に溶解していたリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させるMAP処理工程と、
前記MAP処理工程で成長させたMAP粒子を含むMAP処理汚泥を、MAP濃縮スラリーとMAP脱離汚泥とに分離し、分離したMAP脱離汚泥を、請求項1記載のpH調整工程に供給する一方、前記MAP濃縮スラリーの一部を前記MAP処理工程に返送するMAP分離工程と、
残りの前記MAP濃縮スラリーからMAP粒子を回収するMAP回収工程と、
を有するリン分離工程を、備えた請求項1記載の有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法。
【請求項4】
請求項2のリン分離工程の代わりに、
有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥に、MAP分離工程から返送されてくるMAP濃縮スラリーと、汚泥減量化工程から返送されてくる固液分離水とを混合し、前記嫌気性処理汚泥及び前記MAP濃縮スラリー中に含まれるMAP粒子を種晶として、前記嫌気性処理汚泥及び前記固液分離水中に溶解していたリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させるMAP処理工程と、
前記MAP処理工程で成長させたMAP粒子を含むMAP処理汚泥を、MAP濃縮スラリーとMAP脱離汚泥とに分離し、分離したMAP脱離汚泥を、請求項2記載の汚泥減量化工程に供給する一方、前記MAP濃縮スラリーの一部を前記MAP処理工程に返送するMAP分離工程と、
残りの前記MAP濃縮スラリーからMAP粒子を回収するMAP回収工程と、
を有するリン分離工程を、備えた請求項2記載の有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法。
【請求項5】
前記汚泥減量化工程では、リン分離工程から供給されたMAP脱離汚泥のpHを低下させてMAP脱離汚泥中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥を得、次いで、pH調整汚泥を濃縮して濃縮汚泥と固液分離水としての分離水とを得、次いで、濃縮汚泥に鉄系又はアルミ系の無機凝集剤を添加して脱水して、脱水ケーキと固液分離水としての脱水ろ液とを得、脱水ケーキを排出させる一方、前記固液分離水としての分離水及び脱水ろ液の一部又は全部を、リン分離工程に返送することを特徴とする請求項1又は3に記載の有機性廃水及び汚泥の処理方法。
【請求項6】
前記汚泥減量化工程では、リン分離工程から供給されたMAP脱離汚泥を濃縮して濃縮汚泥と固液分離水としての分離水とを得、次いで、濃縮汚泥のpHを低下させて濃縮汚泥中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥を得、次いで、pH調整汚泥を脱水して、脱水ケーキと固液分離水としての脱水ろ液とを得、脱水ケーキを排出させる一方、前記固液分離水としての分離水及び脱水ろ液の一部又は全部を、リン分離工程に返送することを特徴とする請求項2又は4に記載の有機性廃水及び汚泥の処理方法。
【請求項7】
有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥は、汚泥中に揮発性浮遊物質が3000mg/L以上存在し、かつ25μm未満のMAP粒子由来のリン含有量が該汚泥全体のリン含有量の5%以上存在することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法。
【請求項8】
リン分離工程において、溶解しているリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させる際、少なくとも2段階のpH調整を行い、1段階目はpHを6.4〜7.5に調整し、2段階目はpHを7.2〜8.4に調整することを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の有機性廃水及び汚泥の処理方法。
【請求項9】
汚泥中に存在する有機成分の一部を溶解性成分に変換する可溶化処理を行うことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の有機性廃水及び汚泥の処理方法。
【請求項10】
pH調整してから脱水工程までの処理工程において、汚泥に対して希釈水を添加し、汚泥を希釈させた後に脱水処理を行うことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の有機性廃水及び汚泥の処理方法。
【請求項11】
有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理することができる嫌気性処理槽と、嫌気性処理汚泥中に含まれるMAP粒子を種晶として溶解しているリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させることができ、且つ、粒径25μm以上の粗MAP粒子に成長したMAP粒子を含むMAP濃縮スラリーと粒径25μm未満の微細MAP粒子を含むMAP脱離汚泥とに分離することができるリン分離装置と、リン分離装置で分離されたMAP脱離汚泥のpHを低下させてMAP脱離汚泥中に残存するMAP粒子を溶解させることができるpH調整手段と、pH調整汚泥を濃縮乃至脱水する濃縮乃至脱水装置と、該濃縮乃至脱水装置から排出される固液分離水を前記リン分離装置に返送する汚泥返送管と、を備えた有機性廃水又は有機性汚泥の処理装置。
【請求項12】
有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理することができる嫌気性処理槽と、嫌気性処理汚泥中に含まれるMAP粒子を種晶として溶解しているリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させることができ、且つ、粒径25μm以上の粗MAP粒子に成長したMAP粒子を含むMAP濃縮スラリーと粒径25μm未満の微細MAP粒子を含むMAP脱離汚泥とに分離することができるリン分離装置と、リン分離装置で分離されたMAP脱離汚泥を濃縮し、pHを低下させてMAP脱離汚泥中に残存するMAP粒子を溶解させ、次いで脱水する濃縮乃至脱水装置と、該濃縮乃至脱水装置から排出される固液分離水を前記リン分離装置に返送する汚泥返送管と、を備えた有機性廃水又は有機性汚泥の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含有する廃水(「有機性廃水」と称する)、並びに、有機物を含有する汚泥(「有機性汚泥」と称する)の処理方法及び処理装置に関する。詳しくは、下水処理場や各種廃水処理施設等から排出される廃水などの有機性廃水、或いは、該有機性廃水を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥などの嫌気性処理汚泥から、リン成分をリン酸マグネシウムアンモニウム(以下「MAP」ともいう)として分離回収する、有機性廃水及び有機性汚泥の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃水から窒素成分及びリン成分を分離する方法として、有機性廃水にマグネシウムイオンなどを添加して、廃水中に含まれるリン、アンモニア及びマグネシウムイオンを反応させてリン酸マグネシウムアンモニウム(以下「MAP」と称する)の結晶を成長させ、MAP粒子として分離回収する方法(「MAP処理法」と称する)が知られている。
【0003】
このようなMAP処理法は、リン成分の回収を安定的に行うことができる上、回収されるMAPは優れた肥料としての付加価値があるため、資源の有効利用の点からも優れたリン及び窒素の回収兼除去技術である。
【0004】
MAP処理法に関しては、例えば特許文献1において、汚泥にカチオン性有機高分子凝集剤(カチオンポリマー)を添加する第1の凝集手段と、該第1の凝集手段で得られた凝集汚泥を濃縮する重力濃縮手段と、該重力濃縮手段の濃縮汚泥に無機凝集剤を添加する第2の凝集手段と、該第2の凝集手段で得られた凝集汚泥に両性有機高分子凝集剤(両性ポリマー)を添加する第3の凝集手段と、該第3の凝集手段で得られた凝集汚泥を脱水処理する脱水手段と、前記重力濃縮手段からの分離水を処理するMAP生成手段と、を備えてなる汚泥処理装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、有機性廃水を嫌気性処理する嫌気性消化工程において汚泥中に発生するMAP粒子を液体サイクロンなどによって分離し、該MAP粒子を含むMAP分離濃縮液を得た後、該MAP分離濃縮液にマグネシウムイオンを新たに添加し、溶解しているリン成分との反応によって、該MAP分離濃縮液に存在するMAP粒子の表面に新たなMAPを積層させてMAP粒子として回収し、MAP粒子回収後のMAP脱離汚泥は脱水して脱水ケーキとして排出させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−28500号公報
【特許文献2】特開2004−160304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2が提案する方法によれば、溶解しているリン成分もMAPとして回収することができるため、リンの回収率を高めることができる。
ところが、液体サイクロンなどの物理的手段によって分離できるMAP粒子は、ある程度粒径の大きなMAP粒子であるため、例えば粒径25μm未満の微細なMAP粒子(「微細MAP粒子」とも称する)は分離されずに汚泥中に残存し、脱水ケーキに含まれる状態で廃棄されることになり、その分リンの回収率が低下するという課題を抱えていた。特に処理対象とする汚泥中に微細MAP粒子由来のリン成分が5質量%以上存在する場合は、リン回収率の低下が顕著であった。
【0008】
そこで本発明は、液体サイクロンなどの物理的手段によって分離できない微細なMAP粒子を回収できるようにして、リンの回収率をさらに高めることができる、新たな有機性廃水及び有機性汚泥の処理方法及び処理装置を提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥中に含まれるMAP粒子を種晶として、次の汚泥減量化工程から返送されてくる固液分離水中に溶解していたリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させ、粒径25μm以上の粗MAP粒子に成長したMAP粒子と、粒径25μm未満の微細MAP粒子を含むMAP脱離汚泥とに分離するリン分離工程と、前記リン分離工程で分離したMAP脱離汚泥のpHを低下させてMAP脱離汚泥中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥を得るpH調整工程と、該pH調整汚泥を濃縮乃至脱水して脱水ケーキを得る一方、該濃縮乃至脱水によって得られた固液分離水の一部又は全部を前記リン分離工程に返送する汚泥減量化工程と、を備えた有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法を提案する。
【0010】
本発明はまた、有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥中に含まれるMAP粒子を種晶として、次の汚泥減量化工程から返送されてくる固液分離水中に溶解していたリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させ、粒径25μm以上の粗MAP粒子に成長したMAP粒子と、粒径25μm未満の微細MAP粒子を含むMAP脱離汚泥とに分離するリン分離工程と、前記工程で分離したMAP脱離汚泥を濃縮し、得られた濃縮汚泥のpHを低下させて該濃縮汚泥中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥を得、該pH調整汚泥を脱水して脱水ケーキを得る一方、該脱水によって得られた固液分離水の一部又は全部を前記リン分離工程に返送する汚泥減量化工程と、を備えた有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法を提案する。
【発明の効果】
【0011】
有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理して得られる嫌気性処理汚泥中には、前述のように、液体サイクロンなどの物理的手段によって分離できない微細MAP粒子が含まれている。そこで本発明は、該微細MAP粒子を含む汚泥のpHを低下させて該微細MAP粒子を溶解させてリン分離工程に返送するようにして、リン分離工程では、汚泥中に含まれているMAP粒子を種晶として、溶解しているリン成分などのMAP基質成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させることにより、液体サイクロンなどの物理的手段によって分離回収できるようになり、MAP粒子として回収できるリンの回収率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の基本フローの一例を説明するための図である。
図2】本発明の基本フローの他例を説明するための図である。
図3図1に示した基本フローの具体的態様の一例を説明するための図である。
図4図2に示した基本フローの具体的態様の一例を説明するための図である。
図5図1に示した基本フローの具体的態様の他の一例を説明するための図である。
図6図2に示した基本フローの具体的態様の他の一例を説明するための図である。
図7図3のフローにおいて、pH調整工程での設定pH値と、リン溶出率(A)、MAP再結晶化率(B)、B/A及び不純物含有率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本処理方法I>
本発明の実施形態の一例として、図3に示した有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法(「本処理方法I」と称する)について説明する。
【0014】
本処理方法Iは、図3に示すように、有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理する「嫌気性処理工程1」と、嫌気性処理工程1で得られた嫌気性処理汚泥4から粗MAP粒子を含むMAP濃縮スラリー2a2とMAP脱離汚泥2a1とに分離し、該MAP脱離汚泥2a1を次のpH調整工程Aに供給する一方、該MAP濃縮スラリー2a2に、後述する汚泥減量化工程3から返送されてくる固液分離水3abを混合し、必要に応じてMg源又はpH調整剤2b2を添加して、該MAP濃縮スラリー2a2中の粗MAP粒子を種晶として、前記固液分離水3abに溶解していたリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させ、次いで、成長したMAP粒子を回収する「リン分離工程2」と、前記MAP脱離汚泥2a1に酸を加えてpHを低下させることにより、MAP脱離汚泥2a1中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥A1を得る「pH調整工程A」と、pH調整汚泥A1を濃縮乃至脱水して脱水ケーキ3b1と固液分離水3abとに分離し、該脱水ケーキ3b1を排出させる一方、該固液分離水3abをリン分離工程2に返送する「汚泥減量化工程3」と、を備えた有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法である。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0015】
(有機性廃水又は有機性汚泥)
本処理方法Iが処理する有機性廃水又は有機性汚泥としては、下水処理場や、各種廃水処理施設等から排出される有機性廃水又は有機性汚泥などを例示することができる。例えば、し尿や浄化槽汚泥の消化脱離液、汚泥の消化液、化学工場排水など、高濃度の有機物、リン及び窒素を含有する廃水などを挙げることができる。
【0016】
(嫌気性処理工程1)
嫌気性処理工程1では、有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性消化タンク1aにおいて嫌気性処理を行い、メタンガスを含む発生ガス、嫌気性処理水及び嫌気性処理汚泥を得、前記発生ガス及び嫌気性処理水を系外に排出する一方、嫌気性処理汚泥をリン分離工程2に供給する。
【0017】
嫌気性処理とは、酸素のない嫌気性環境下で生育する嫌気性微生物の代謝反応を利用して、有機物をメタンガスや炭酸ガスなどに分解する生物処理方法である。つまり、有機性廃水または汚泥に対して嫌気的な環境を与えた処理工程全般を指し、酸発酵、メタン発酵、嫌気性消化等を含む処理である。
【0018】
嫌気性処理の具体的な方法としては、例えば嫌気微生物を浮遊状態で保持する嫌気性消化法や、自己造粒性の嫌気微生物からなるグラニュール汚泥を保持した上向流汚泥床法(UASB)、嫌気微生物を砂や粒状活性炭などの流動性担体表面に保持する嫌気性流動床法、嫌気微生物を固定床充填材の表面に保持する嫌気性固定床法など、公知の方法を適宜採用可能である。
嫌気性処理工程を実施する装置としては、嫌気性消化反応槽としての嫌気性消化タンク1aを備えていればよく、該嫌気性消化タンク1aには原水供給管及び嫌気性処理汚泥排出管などが接続されていればよい。
【0019】
嫌気性処理工程1では、有機物の分解過程で、その分解代謝物として、アンモニウムイオン、リン酸イオン、マグネシウムイオンなど、リン酸マグネシウムアンモニウム(「MAP」とも称する)の合成に必要なMAP基質成分が嫌気性処理汚泥4中に溶出する。
これらのMAP基質成分は、嫌気性消化タンク1a内のpHが7.2〜8.4程度の弱アルカリ性下において、MAP生成反応が促進され、嫌気性消化タンク1a内でMAP結晶を生成するようになる。これらMAP結晶には、粒径25μm未満の微細粒子(「微細MAP粒子」)、粒径25μm〜数ミリ大の粒子(「粗MAP粒子」と称する)、さらには、タンク内の壁面や底面や攪拌羽根に付着して成長する結晶など、様々な形態のものが存在する。
よって、嫌気性消化タンク1aから排出される嫌気性処理汚泥4には、このような微細MAP粒子や粗MAP粒子、さらには溶解しているリン成分などが含まれている。
【0020】
嫌気性処理工程1で得られる嫌気性処理汚泥4としては、有機性汚泥由来の固形成分である揮発性浮遊物質(「VSS」とも称する)が汚泥中に3000mg/L以上存在し、かつ25μm未満のMAP粒子(「微細MAP粒子」とも称する)由来のリン含有量が該汚泥全体のリン含有量に対して5%以上、中でも95%以下、その中でも運転条件等の総合的観点から特に20%以下の割合で存在する汚泥であるのが好ましい。
【0021】
<リン分離工程2>
リン分離工程2では、嫌気性処理工程1によって得られた嫌気性処理汚泥4を、粗MAP粒子を含むMAP濃縮スラリー2a2とMAP脱離汚泥2a1とに分離し(「MAP分離工程2a」)、該MAP脱離汚泥2a1をpH調整工程に供給する一方、該MAP濃縮スラリー2a2を、後述する汚泥減量化工程3から返送されてくる固液分離水3ab(分離水3a2及び脱水ろ液3b2)と混合し、必要に応じてMg源又はpH調整剤2b2を添加して、該MAP濃縮スラリー2a2中の粗MAP粒子を種晶として、MAP濃縮スラリー2a2、分離水3a2及び脱水ろ液3b2に溶解しているリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させ(「MAP処理工程2b」)、そして、成長したMAP粒子を分離回収する(「MAP回収工程2c」)。
【0022】
(MAP分離工程2a)
前記MAP分離工程2aでは、前述のように嫌気性処理汚泥4を、粗MAP粒子を多く含むMAP濃縮スラリー2a2とMAP脱離汚泥2a1とに分離する。
【0023】
嫌気性処理汚泥4をMAP濃縮スラリー2a2とMAP脱離汚泥2a1とに分離する方法としては、国際公開第2003/086990号公報等に記載の液体サイクロン等の固液分離装置を用いた方法を採用することができる。すなわち、1mm〜5mmの穴径の振動ふるい等で髪の毛、種子類、木屑等の汚泥中に混在する夾雑物を除去した後、嫌気性処理汚泥4を液体サイクロン等に投入することで、MAP濃縮スラリー2a2とMAP脱離汚泥2a1とに分離することができる。この際、除去した前記夾雑物は、そのまま廃棄処理してもよいし、また、後段の脱水工程3bの前段でMAP脱離汚泥2a1に添加して脱水補助剤として使用することも可能である。
【0024】
(MAP処理工程2b)
MAP処理工程2bでは、前記MAP分離工程2aで分離したMAP濃縮スラリー2a1と、汚泥減量化工程3から返送されてくる固液分離水3ab(分離水3a2及び脱水ろ液3b2)とを混合し、必要に応じてMg源又はpH調整剤2b2を添加して、MAP濃縮スラリー2a2中に存在する粗MAP粒子をMAP晶析反応の種晶として、MAP濃縮スラリー2a2、分離水3a2及び脱水ろ液3b2に溶解しているリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させる。
【0025】
MAP濃縮スラリー2a2には、粗MAP粒子が含まれている一方、MAP濃縮スラリー2a2及び、汚泥減量化工程3から返送されてきた固液分離水3ab(分離水3a2及び脱水ろ液3b2)には、アンモニウムイオン、リン酸イオン、マグネシウムイオンなど、MAPの合成に必要なMAP基質成分が溶解しているため、必要に応じてMg源、pH調整剤等2b2を添加することで、粗MAP粒子をMAP晶析反応の種晶として、溶解しているリン成分をMAPとして晶析させことでMAP粒子の成長反応を進めることができる。
【0026】
pH7.2〜8.4程度の弱アルカリ性下において、MAP生成反応が促進されるため、当該pH範囲となるようにpH調整剤を添加するのが好ましい。
該pH調整剤としては、例えばアルカリ剤として苛性の他、水酸化マグネシウム等も使用可能である。他方、酸性剤としては、硫酸が適している。
但し、脱水工程で得られる脱水ろ液3b2は、pHが約3.5〜5.0である場合があり、この場合には、該脱水ろ液3b2がpH調整剤としての役割を果たすことができる。
【0027】
他方、添加するMg源としては、例えば水酸化マグネシウム、塩化マグネシウムの他、海水等の使用が可能である。
また、アンモニウムイオン、リン酸イオンなどが不足している場合には、不足しているMAP基質成分を添加するのが好ましい。
【0028】
MAP処理工程2bを実施する装置としては、粗MAP粒子の結晶化を進める反応槽を備えた晶析反応装置を使用すればよい。例えば上向流流動層型や完全混合型等の一般的な晶析反応槽を採用することが可能である。
【0029】
このように溶解しているリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させる際は、MAPの晶析が促進されるpH7.2〜8.4の範囲に徐々に調整するのが好ましい。具体的には、少なくとも2段階のpH調整を行い、1段階目はpHを6.4〜7.5に調整し、2段階目はpHを7.2〜8.4に調整するのが好ましい。急激にMAPの晶析が促進されるpH領域(7.2〜8.4)に調整すると、汚泥中のMAP粒子を種晶としてMAPが晶析するほかに、微細MAP粒子を生成する反応も進んでしまうからである。
具体的手法としては、例えばMAP反応槽として2段型以上の反応槽を直列に連結し、設定pHを段階的に上げるようにすればよい。例えば1段目MAP反応槽の設定pHを6.4〜7.5とし反応槽内を粒子状MAP濃度が高い状態の完全混合型リアクターとし、2段目のMAP反応槽の設定pHを7.2〜8.4として反応槽内を上向流流動層型リアクターとすればよい。
【0030】
また、MAP晶析可能なpH5.5以上の領域においては、MAP過飽和度が急上昇する可能性のある反応部においては、粒子状MAP濃度が高い状態とするのが好ましい。
そこで、例えば、低pHリン酸含有液などのpH調整剤やMg源等は、液体サイクロンなどによるMAP粒子分離後のMAP濃縮スラリー等の懸濁物質(SS)に占めるMAP粒子の割合が5%以上の液体に接触させた後、該MAP反応槽内の液体に添加するのが好ましい。
【0031】
(MAP回収工程2c)
前記MAP回収工程2cでは、前記MAP処理工程2bで成長させたMAP粒子を分離し、回収リン2c1として回収する。
【0032】
MAP粒子の回収方法としては、MAP処理工程2bの反応槽底部から適宜タイミングで引き抜く方式、或いは、エアリフトポンプ等で該反応槽上部から引き抜く方式などを採用することができる。
【0033】
なお、MAP回収工程2cにおいてMAP粒子を分離回収した残渣は、MAP脱離汚泥2a1と共に、汚泥減量化工程3に供給すればよい。
【0034】
<pH調整工程A>
pH調整工程Aでは、リン分離工程2で供給されたMAP脱離汚泥2a1のpHを6.8以下に調整することで、MAP脱離汚泥2a1中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥A1を得る。
【0035】
調整するpH領域としては、汚泥中のMAP粒子が溶解し得るpH領域であればよい。具体的には、pH6.8以下であればよい。この際、汚泥のpHが低いほど、MAP粒子由来のリン酸イオン溶出量は増えるものの、pHが低くなり過ぎると、鉄イオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオンなど、不要の金属イオンが溶出するようになり、pHが高くなった時にこれら不要の金属イオンとリン酸イオンとが結合して、MAPの生成を妨げることになる。
そのため、pH調整工程Aでは、汚泥のpHを3.5〜6.8に調整するのが好ましく、中でもpH4.5以上或いは6.5以下に調整するのがより一層好ましい。
【0036】
pHを低下させる手段としては、硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液を添加する方法が挙げられる。また、ポリ鉄、硫酸バンド等の酸性の無機凝集剤を添加してpHを低下させることもできる。中でも、固液分離水3ab中のリン酸イオンを減少させないために、MAP脱離汚泥中のリン酸イオンと結合して反応生成物を作成する成分が存在しないか、若しくはその成分の濃度が3%未満の低濃度であるものが好ましい。この観点からは、鉄イオンやカルシウムイオンやアルミニウムイオンなどが溶解していないものをpH調整剤として使用するのが好ましい。
なお、酸性溶液を添加することにより、硫化水素等の臭気成分が発生する場合がある。そのような場合には、添加する酸性溶液に鉄イオンを、対象汚泥中固形物当たり0.2%以上(鉄として)含有させることで、硫化水素を硫化鉄として変化させ、臭気の発生を抑制することが可能である。
【0037】
<汚泥減量化工程3>
汚泥減量化工程3では、pH調整汚泥A1を濃縮乃至脱水して脱水ケーキ3b1を得る一方、該濃縮乃至脱水によって得られた固液分離水3ab(分離水3a2、脱水ろ液3b2)の一部又は全部を前記リン分離工程2に返送する。
より具体的には、図3に示すように、前記pH調整工程Aで得られたpH調整汚泥A1を濃縮して濃縮汚泥3a1と分離水3a2に分離し、分離水3a2を前記MAP処理工程2bに供給する一方、濃縮汚泥3a1を回収し(「濃縮工程3a」)、次に、該濃縮汚泥3a1を脱水して脱水ケーキ3b1と脱水ろ液3b2とに分離し、該脱水ケーキ3b1を排出させる一方、該脱水ろ液3b2をリン分離工程に返送するようにすればよい(「脱水工程3b」)。
【0038】
(濃縮工程3a)
濃縮工程3aでは、前記pH調整工程Aで得られたpH調整汚泥A1を濃縮して濃縮汚泥3a1と分離水3a2に分離し、分離水3a2を前記MAP処理工程2bに供給する一方、濃縮汚泥3a1を回収する。
【0039】
濃縮汚泥3a1と分離水3a2に分離する濃縮手段としては、重力ろ過型、遠心分離型、スクリーン又は膜分離型等の濃縮機を使用して濃縮する方法を挙げることができる。
【0040】
濃縮工程3aでは、濃縮の目安として、濃縮汚泥3a1の含水率が4〜15%、中でも9%以上或いは13%以下となるように濃縮するのが好ましい。
【0041】
(脱水工程3b)
脱水工程3bでは、濃縮汚泥3a1を脱水して脱水ケーキ3b1と脱水ろ液3b2とに分離し、該脱水ケーキ3b1を排出させる一方、該脱水ろ液3b2をリン分離工程2に返送する。
【0042】
脱水処理を行う機構としては、例えばベルトプレス、スクリュープレス、及び遠心脱水機等いずれの脱水機でも適応可能である。
【0043】
脱水工程3bでは、脱水の目安として、脱水ケーキ3b1の含水率が82〜65%、の中でも72%以上或いは78%以下となるように脱水するのが好ましい。
【0044】
(凝集剤)
上記濃縮工程3aにおいてpH調整汚泥A1に凝集剤を添加して濃縮するようにしてもよいし、脱水工程3bにおいて濃縮汚泥3a1に凝集剤を添加して脱水するようにしてもよいし、また、両工程において凝集剤を添加するようにしてもよい。
pH調整汚泥A1を濃縮した後、凝集剤を添加するようにすれば、使用する凝集剤の量を減らすことができるばかりか、凝集剤を汚泥に均一に混合させることができるため、脱水効率を高めることができる。しかも、濃縮により得られる固液分離水3abよりも、脱水により得られる固液分離水3ab(脱水ろ液3b2)の量が少ないから、濃縮した後、ポリ鉄などの無機凝集剤を添加しても、返送する固液分離水3ab中の鉄イオン量を少なく抑えることもできる。
【0045】
上記凝集剤としては、高分子凝集剤、無機凝集剤を挙げることができる。
高分子凝集剤としては、例えばカチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤などを挙げることができる。カチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤の混合物を使用することも可能である。
【0046】
無機凝集剤としては、例えばポリ鉄(鉄濃度5〜15%)、塩鉄等の鉄系凝集助剤や硫酸バンド、PAC等のアルミ系凝集助剤等を挙げることができる。
これら無機凝集剤由来の鉄イオンやアルミニウムイオンなどの不要金属イオンは、汚泥中のリン酸イオンと結合してMAP生成の妨げになるため、少なくとも返送する固液分離水3ab中の不要金属イオン濃度は低く抑えるのが好ましい。つまり、脱水効率と固液分離水3ab中の不要金属イオン濃度とを考慮して、無機凝集剤の添加量を調整するのが好ましい。
同様の観点から、無機凝集剤は、濃縮工程3aでは添加せず、脱水工程3bの前に添加することが有効である。この際、脱水ろ液3b2は、前記リン分離工程2に返送しないことも有効である。
【0047】
好ましい一例としては、pH調整汚泥A1に高分子凝集剤を添加して濃縮して濃縮汚泥3a1と分離水3a2に分離し、次に、該濃縮汚泥3a1に無機凝集剤を添加して脱水して脱水ケーキ3b1と脱水ろ液3b2とに分離する方法を挙げることができる。
【0048】
汚泥に対して凝集剤を添加する機構としては、凝集剤をそのまま該汚泥が存在する装置に投入する機構、凝集剤を溶液として、ポンプにて同装置に定量供給する機構等が挙げられる。
【0049】
なお、汚泥減量化工程3において、ポリ鉄等の無機凝集剤を添加した後に濃縮又は脱水などの固液分離を実施する場合(濃縮工程3a又は脱水工程3b)、リン酸イオンが当該無機凝集剤の金属イオン(ポリ鉄の鉄イオン)と結合してリン酸塩を生成するため、固液分離によって固形物側に分離され、固液分離水3ab中のリン酸イオンが少なくなってしまう。そのため、固液分離水3abを前記リン分離工程2に返送する意義が薄れることが考えられる。しかし、該固液分離水3ab中には、MgイオンやNHイオンなど、リン酸イオン以外のMAP基質成分が高濃度に存在するため、該固液分離水3abをリン分離工程2のMAP処理工程2bに供給するなどすれば、有効に利用することが可能である。
【0050】
また、上記凝集剤と共に、脱水性改善補助剤として、成分溶解濃度1%以上の液状ポリマー又は5mm以下のセルロース系繊維状物質等をさらに添加してもよい。
脱水性改善補助剤は、総量として該汚泥のTSに対して7%以下程度で用いられる場合にコスト的なメリットが出やすい。
【0051】
(固液分離水3abの返送)
上記のような濃縮工程3aで得られる分離水3a2、乃至、脱水工程3bで得られる脱水ろ液3b2は、前記リン分離工程2の前記MAP処理工程2bに返送する。分離水3a2のみを前記MAP処理工程2bに返送してもよい。
【0052】
これら分離水3a2及び脱水ろ液3b2中には、前記pH調整工程AにおいてMAP粒子が溶解した成分、すなわちリン酸イオン(PO−P)、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンなど、MAPの合成に必要なMAP基質成分が溶解している。
【0053】
なお、分離水3a2及び脱水ろ液3b2は、前記pH調整工程AでのpH調整によってpH3.5〜6.8に調整される場合があり、この場合は、前段の該MAP処理工程2bで使用するpH調整剤の代わりとして使用することができ、薬品使用量を軽減することができる。特に、Mg源添加とpH調整を、水酸化マグネシウムと硫酸で行っている場合には、硫酸の代わりとして特に有効である。
【0054】
(有機成分の可溶化処理)
本処理方法Iの処理対象である有機性廃水又は有機性汚泥、或いは、嫌気性処理工程1で得られた嫌気性処理汚泥4、或いは、MAP濃縮スラリー2a2、或いは、MAP脱離汚泥2a1など、汚泥中に存在する有機成分の一部を溶解性成分に変換する可溶化処理を行ってもよい。
このような可溶化処理は、嫌気性処理工程1の前段、嫌気性処理工程1中、及び嫌気性処理工程1の後段等、pH調整工程Aの前段であれば適宜実施することが可能である。
【0055】
有機成分の可溶化処理としては、例えばオゾン処理、超音波処理、水熱処理、電気分解等の処理を挙げることができる。
中でも、発明者らの研究調査の結果、これらの可溶化処理の中でも、設定温度70〜90℃、滞留時間40〜75分の水熱処理を採用することにより、リン分離工程2でのMAPとして回収するリンの回収を、費用対効果的に最も効率良く高めることができると共に、水熱処理による臭気発生、処理水着色等の問題も大幅に抑制できることを確認した。
【0056】
このような有機成分の可溶化処理により、固形性有機物の割合が減少し、溶解性成分を増加させることができる。可溶化処理により新たに溶出した溶解性成分の中には、MAPを構成するリン酸イオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン等が含まれることから、例えば嫌気性処理工程1においてこのような可溶化処理を実施することにより、様々な粒径のMAP粒子がより多く存在することになる。その結果、それらのMAP粒子を多く回収することができるようになり、リン回収率をさらに高めることができる。
【0057】
<本処理方法II>
本発明の実施形態の一例として、図4に示した有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法(「本処理方法II」と称する)について説明する。
【0058】
本処理方法IIは、図4に示すように、前記本処理方法IにおけるpH調整工程Aを、汚泥減量化工程3において行うようにした処理方法である。すなわち、汚泥減量化工程3において、MAP脱離汚泥2a1を濃縮した後、pH調整工程を実施するようにした処理方法である。より具体的には、リン分離工程2で分離したMAP脱離汚泥2a1を濃縮し、得られた濃縮汚泥3a1のpHを低下させて該濃縮汚泥3a1中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥A11を得、該pH調整汚泥A11を脱水して脱水ケーキ3b1を得る一方、該脱水によって得られた固液分離水3ab(分離水3a、脱水ろ液3b2)の一部又は全部を前記リン分離工程2に返送する。
【0059】
すなわち、本処理方法IIは、図4に示すように、有機性廃水又は有機性汚泥を嫌気性処理する「嫌気性処理工程1」と、嫌気性処理工程1によって得られた嫌気性処理汚泥4からMAP濃縮スラリー2a2とMAP脱離汚泥2a1とを分離し、MAP脱離汚泥2a1を次の汚泥減量化工程3に供給し(MAP分離工程2a)、該MAP濃縮スラリー2a2に次の汚泥減量化工程3から返送されてくる固液分離水3ab(分離水3a、脱水ろ液3b2)を混合し、必要に応じてMg源及びpH調整剤2b2などを添加し、固液分離水3ab(分離水3a、脱水ろ液3b2)に溶解しているリン成分を、MAP濃縮スラリー2a2中のMAP粒子を種晶として、MAPとして晶析させてMAP粒子を成長させ(MAP処理工程2b)、成長したMAP粒子を回収する(MAP回収工程2c)ようにして「リン分離工程2」を実施する。他方、前記MAP脱離汚泥2a1を濃縮して濃縮汚泥3a1と分離水3aを得(濃縮工程3a)、分離水3aをリン分離工程2のMAP処理工程2bに返送する一方、得られた濃縮汚泥3a1に酸を加えてpHを6.8以下として、濃縮汚泥3a1中に残存するMAP粒子を溶解させてpH調整汚泥A11を得(pH調整工程A)、該pH調整汚泥A11を脱水して脱水ケーキ3b1と脱水ろ液3b2とに分離し、該脱水ケーキ3b1を排出させる一方、該脱水ろ液3b2をリン分離工程2のMAP処理工程2bに返送する(脱水工程3b)ようにして「汚泥減量化工程3」を実施する処理方法である。
【0060】
このように、MAP脱離汚泥2a1を濃縮した後、酸を加えてpHを低下させてMAP粒子を溶解させ、次いで脱水するようにすれば、減容化された汚泥に対してpH調整するから、pH調整に使用する酸の使用量を少なくすることができ、リン回収率を向上させることができる。図6の処理方法も同様である。
この際、濃縮工程3aの濃縮率を高めることにより、濃縮汚泥3a1中に残存するMAP粒子の濃度を高めることができりから、リン分離工程2に返送する脱水ろ液3b2中のリン酸イオン濃度を高めることができ、その結果、リン回収率を高めることができる。他方、濃縮工程3aの濃縮率を高め過ぎると、pH調整工程において、硫酸などの薬品を汚泥中に均等に浸透させることが難しくなったり、凝集濃縮フロックの凝集力が低下したりする。よって、かかる観点から、濃縮工程3aでは、濃縮汚泥3a1の汚泥濃度が6〜13%程度となるように濃縮するのが好ましい。
【0061】
なお、本処理方法IIについて特別に記述した点以外の点は、本処理方法IIは前記本処理方法Iと同様である。
【0062】
<本処理方法III・IV>
本発明の実施形態の一例として、図5図6に示した有機性廃水又は有機性汚泥の処理方法(「本処理方法III」「本処理方法IV」と称する)について説明する。
【0063】
本処理方法IIIは、図5に示すように、前記本処理方法Iのリン分離工程2において、MAP分離工程2aとMAP処理工程2bの順序を入れ替えた処理方法である。
また、本処理方法IVは、図6に示すように、前記本処理方法IIのリン分離工程2において、MAP分離工程2aとMAP処理工程2bの順序を入れ替えた処理方法である。
【0064】
本処理方法III及びIVのリン分離工程2では、嫌気性処理工程1によって得られた嫌気性処理汚泥4に、MAP分離工程2aから返送されてくるMAP濃縮スラリー2a2と、汚泥減量化工程3から返送されてくる固液分離水3ab(分離水3a2、脱水ろ液3b2)とを混合し、必要に応じてMg源及びpH調整剤2b2を添加して、嫌気性処理汚泥4及びMAP濃縮スラリー2a2中の粗MAP粒子を種晶として、嫌気性処理汚泥4、MAP濃縮スラリー2a2、分離水3a2及び脱水ろ液3b2中に溶解していたリン成分をMAPとして晶析させてMAP粒子を成長させ(「MAP処理工程2b」)、このように成長したMAP粒子を含むMAP濃縮スラリー2a2とMAP脱離汚泥2a1とに分離し、該MAP脱離汚泥2a1を次のpH調整工程Aに供給し、該MAP濃縮スラリー2a2の一部を前述のようにMAP処理工程2bに返送し(「MAP処理工程2a」)、該MAP濃縮スラリー2a2の残りからMAP粒子を回収する(「MAP回収工程2c」)方法である。
【0065】
なお、前記本処理方法IIでは、リン分離工程2から送られてくるMAP脱離汚泥2a1を濃縮脱水し、得られた分離水3aをリン分離工程2に返送しているが、本処理方法IVでは、当該分離水3aを系外に排出している。
本処理方法III及びIVについて特別に記述した点以外の点は、本処理方法III及びIVは前記本処理方法Iと同様である。
【0066】
ところで、pH調整工程Aが濃縮工程3aの前段に位置する場合は(図3及び図5)、高分子凝集剤を添加する前にpH調整を行うのが好ましい。その理由は、pH調整工程Aの前に高分子凝集剤を添加すると、微細MAP粒子が凝集フロックに取り込まれて、添加した酸との接触が阻まれる割合が高くなるからである。
他方、pH調整工程Aが濃縮工程3aの後段に位置する場合は(図4及び図6)、濃縮汚泥3a1の濃度が10%以上の比較的高い状態が好ましい。また、酸添加及び浸透により、凝集濃縮フロックの凝集力の一部が損なわれる可能性があることから、その場合は脱水性改善補助剤等を添加することも有効である。
【0067】
また、本処理方法I〜IVにおいて、pH調整してから脱水工程までの処理工程において、汚泥に対して希釈水を添加し、汚泥を希釈させた後に脱水処理を行うようにしてもよい。
このように汚泥を希釈させた後に脱水処理を行うことにより、脱水ケーキ中に残留する水分中に含まれるリン酸イオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン等のMAP構成成分の量を減少させることができると共に、逆に脱水ろ液3b2中のこれらMAP構成成分の量を増加させることができるから、結果的にリン回収率をさらに高めることができる。
ただし、希釈倍率を高め過ぎると、脱水性を悪化させたり、MAP処理工程でのMAP生成効率を悪化させたりする可能性があることから、希釈倍率としては1.2〜7.0倍が望ましい。
【0068】
希釈水として使用できるのは、脱水処理に大きく悪影響を及ぼさず、リン酸イオンと結合する可能性のある成分が多く含まれない液体であれば使用可能である。例えば水道水、地下水、砂ろ過水、下水処理水等を挙げることができる。
さらにまた、pH調整時に添加する硫酸等の酸添加剤の濃度を水等で薄めて添加する方法で実質的に汚泥を希釈することも有効である。
【0069】
<用語の説明>
また、本願明細書、図面及び特許請求の範囲における「%」は、特に言及しない限り、質量割合である。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の廃水処理技術を実際に組み込んだ実験プラントの運転結果の一例について説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0071】
なお、下記実施性において、「脱離液型MAP方式」とは、図3及び図4に示したリン分離工程の方式の意味であり、「汚泥型MAP方式」とは、図5及び図6に示したリン分離工程の方式の意味である。
【0072】
<MAP粒子径の測定及び確認方法>
MAP粒子の粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−910)及び超音波ふるい(昭和電工株式会社製マイクロシーブShodex PS)により測定したものである。
MAP粒子径の測定及び確認方法としては、粗MAP粒子を主体とするMAP濃縮スラリー等のサンプルはレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定し、微細MAP粒子主体のMAP脱離汚泥等のサンプルは超音波ふるいにより25μm未満の存在量を確認した。
【0073】
具体的に説明する。
粗MAP粒子主体のサンプルの場合は、1Lビーカーに対象サンプル200mlを取りpH8.0のアルカリ水を800ml添加し、攪拌後2分静置した後に上澄み水を静かに分離し、該ビーカー底部の粒子状物質を回収し、該回収物中の粒子の粒子径をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定した。
該測定装置は、一般的には0.1μm〜1000μmまで測定可能であるが、25μm未満の粒子はわずかであり、例えば汚泥中粗MAP粒子が0.5g/l以上存在するような一般的な嫌気性処理汚泥の場合、本方式で1Lビーカー底部に分離した粒子サンプルはほぼ98%以上が25μm以上であった。
【0074】
また、微細MAP主体のサンプルは、固形物換算で約1g相当のサンプルを分取し、pH8.0のアルカリ水を希釈水とし、穴径25μmのマイクロシーブを装填した超音波ふるいにより25μm以上の粒子と25μm未満の粒子の存在割合を測定した。一般的な嫌気性処理汚泥に対して液体サイクロンで分級した後のMAP脱離汚泥等をサンプルとした場合は、25μm以上の粒子割合はほぼ1%未満でありほぼ全微粒子が25μm未満であった。
【0075】
<実施例1(実施例1−1〜1−3)、比較例1−1〜1−2>
実施例1は、A下水処理場の汚泥を使用して行ったパイロットプラント実験による実施例である。フローは、先に示した図4のフローと同じ「脱離液型MAP方式」である。
A処理場は、汚泥の嫌気性消化処理を採用している。
【0076】
実施例1のパイロットプラントでは、A処理場の消化タンクから排出された嫌気性処理汚泥(表1に性状を記載)を、穴径3mmの振動ふるい機に導入して髪の毛や種子系の夾雑物を分離し、夾雑物脱離後の汚泥を胴体径4インチの液体サイクロンに導入し、液体サイクロンのアンダー出口径12mmから排出されるMAP濃縮スラリーはMAP処理工程としてのMAP反応槽へ導入した。
【0077】
実施例1−1,1−2、比較例1−1及び1−2の4系列では、完全混合型の1槽のみからなるMAP反応槽を採用した。設定pHは8.1±0.2とした。槽内MAP粒子存在量を100g/l以上とした。
【0078】
実施例1−3のみ、第1MAP反応槽と第2MAP反応槽からなる2槽型のMAP反応槽を採用した。
このうちの第1MAP反応槽は、完全混合型であり、前段の液体サイクロンから分離されたMAP濃縮スラリーに、後段の分離水、脱水ろ液、及びMg源やpH調整剤が最初に接触する機構を採用した。
該第1MAP反応槽の設定pHは7.1±0.2とし、反応槽内を粒子状MAP濃度は30g/l以上となるように調節できるように、第2MAP反応槽からの循環液を導入できる構成とした。
【0079】
他方、第2MAP反応槽は、上向流流動層型反応槽とし、設定pHは8.1±0.2とした。該MAP反応槽は円筒型で、下部よりMAP濃縮懸濁液、分離水、脱水ろ液、及びMg源やpH調整剤が導入するようにした。
該第2MAP反応槽は、中段部分より内部液を引抜きし循環流量倍率2.5倍で循環流として下部より注入することで、上向流速を15〜30m/hとしており、該引抜き中間部分より上方は反応槽径が大きくなっており、そのゾーンでは上向流を大幅に低下することが可能な反応槽を採用した。この反応槽の採用により、粒径の大きいMAP粒子は、該反応槽の底部に堆積し、比較的微細なMAP粒子は該反応槽上部に滞留する状態ができる。該MAP反応槽内においてMAP粒子から形成される流動層の高さは、MAP粒子が成長することによって増加する。
【0080】
高さが増加した流動層内のMAP粒子は、該MAP反応槽底部より、MAP粒子抜き出し管を経て定期的に抜き出した。底部から抜き出されるMAP粒子は、流動層内にあるMAP粒子の中でも、粒径が大きく、緻密であった。また、該第1及び第2MAP反応槽には、pH計を設置し、リアルタイムにpHを測定し、アルカリ剤として水酸化マグネシウム、酸性剤として硫酸の注入制御を行った。
Mg源の供給は、反応槽内のMg/P比が1.2になるように調整して添加した。
【0081】
液体サイクロンのオーバー出口から排出されるMAP脱離汚泥を濃縮工程に導入するようにした。
該濃縮工程を実施する装置は、凝集反応槽と濃縮機とから構成されており、該凝集反応槽の滞留時間は3分とした。カチオン度がやや高い両性の高分子凝集剤を、汚泥TS当たり1.8%の添加率で添加し、汚泥を凝集させた後、背圧板付き多重円盤スリット型の濃縮機に導入して汚泥濃度として11〜13%まで濃縮処理を行った。
該濃縮処理により分離される分離水を、先のMAP反応槽に導入した。
該濃縮汚泥は、施例系列のみpH調整装置に導入し硫酸を添加し、pH5.5になるように調整した。その後、無機凝集剤としてポリ鉄を汚泥TSあたり1.5%(as Fe)添加し汚泥混和装置で混和された後、スクリュープレス型脱水機に導入し脱水した。
該脱水機により脱水されたケーキは系外に搬出し、脱水ろ液は前段のMAP反応槽に導入するようにした。
【0082】
運転系列及び概略運転条件は、次のとおりであった。
実施例1−1:pH調整値5.5−ポリ鉄なし
実施例1−2:pH調整値5.5−ポリ鉄添加率:1.5%
実施例1−3:pH調整値5.5−ポリ鉄添加率:1.5%−2段MAP槽
比較例1−1:pH調整なし −ポリ鉄なし (実施例1−1の比較例)
比較例1−2:pH調整なし −ポリ鉄添加率:1.5% (実施例1−2の比較例)
【0083】
上記処理に使用したA処理場の嫌気性処理汚泥の性状を表1に示す。
該嫌気性処理汚泥中の汚泥有機物由来のVSSは12.4g/l存在し、微細MAP粒子(粒径25μm未満)中のリン成分は、汚泥中T−Pの21.6%存在していた。 上記処理成績を表2に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
(結果・考察)
実施例1−1では、汚泥lLあたりのMAP回収量は3.18g/汚泥1Lであった。
実施例1−1に対する比較例である比較例1−1では、2.49g/汚泥1Lであり、実施例1−1の方が約3割多くなった。これは、比較例1−1が濃縮工程の後段のpH調整工程を採用していないために汚泥中に混在する微細MAP粒子等の酸溶解が行えず、結果的に該微細MAP由来のリンを回収できなかったことによる。
【0087】
実施例1−2では、汚泥lLあたりのMAP回収量は3.53g/汚泥1Lであった。実施例1−2に対する比較例である比較例1−2では、2.40g/汚泥1Lであり実施例1−2の方が約5割多くなった。これは、比較例1−2がpH調整工程を採用していないために汚泥中に混在する微細MAP粒子等の酸溶解が行えず、該微細MAP由来のリンを回収できなかったことによるものである。
ただし、比較例1−2では、ポリ鉄は1.5%添加しているため、pHは6.5程度まで減少したが、この程度のpHレベルでは微細MAP由来の溶出リン酸イオンが少ない上、溶出したリン酸イオンとポリ鉄由来の鉄イオンが結合してリン酸鉄を形成するために、逆にリン酸イオン濃度が低下し、MAP回収率の向上に寄与できなかったと考えられる。
【0088】
実施例1−3では、汚泥lLあたりのMAP回収量は3.85g/汚泥1Lであり、実施例1−2よりもさらにMAP回収量が多く5系列の運転の中で最も大きくなった。実施例1−3では2槽型MAP反応槽を採用したことから、該槽に供給される基質等に対して急激なpH上昇を与えず比較的緩やかにpH上昇し晶析反応を進行させることができたことが、MAP回収率が最も高かった理由と考えられる。
【0089】
次に、薬品コストに関して述べる。
MAP反応に必要な薬品は、Mg源及びアルカリ剤としてのMg(OH)と、pH調整剤としてのHSOである。
実施例1−1は、16.3円/kg−MAPであり、比較例1−1の15.6円/kg−MAPとほぼ等しくなった。
コストの内訳から見ると、実施例1−1は、Mg(OH)コストが減少し、HSOコストが増加した。これは、実施例1−1でのpH調整工程時に使用したHSOコスト分が増加したが、微細MAP溶解由来のMAP回収が行えた分でMg源補給とMAP回収量増加により回収MAPあたりのMgコストが低下したことで、この両方のコスト増減分がほぼ相殺したためであると考えられる。
【0090】
実施例1−2は、11.6円/kg−MAPであり、比較例1−2の11.8円/kg−MAPとほぼ等しくなった。コストの内訳から見ると、実施例1−1と比較例1−1と同様に実施例の方が回収MAPあたりのMg(OH)コストが減少し、pH調整工程で使用したHSOコストが増加したが、両方のコスト増減分がほぼ相殺したと考えられる。
実施例1−3では、薬品コスト合計が最も小さい9.7円/kg−MAPとなった。2槽型のMAP反応槽とすることで、微細MAPの発生率が低下し、処理系列を循環する微細MAP由来の基質量が減少したために、使用した薬品が効率良く消費されたことによると考えられる。
【0091】
次に、脱水性に関して述べる。
汚泥脱水工程において、無機凝集剤を使用した実施例1−2、1−3、及び比較例1−2は、ケーキ含水率がほぼ等しく、75.7〜76.1%の範囲内であった。一方、無機凝集剤を使用しなかった実施例1−1、及び比較例1−1では、ケーキ含水率はほぼ等しく79.0〜79.2%の範囲内であった。脱水性に関しては、pH調整工程でのpH5.5という運転条件においてはpH調整工程の有無に寄らずほぼ一定であった。
【0092】
以上の結果から鑑みて、「脱離液型MAP方式」において低コストて高回収率のリン回収、及び高効率の脱水性を発揮する為のプロセスとしては、実施例1−3に示す方法が最も良好であったと判断することができる。
【0093】
<実施例2(実施例2−1〜2−4)、比較例2−1〜2−2>
先の実施例1は、リン分離工程として「脱離液型MAP方式」を採用した場合であり、実施例2として「汚泥型MAP方式」を採用した場合の試験も重ねて行った。
【0094】
実施例2(実施例2−1〜2−2)は、実施例1と同じく、A下水処理場の汚泥を使用して行ったパイロットプラント実験による実施例であり、フローは、先に示した図6のフローと同じである。また、使用した汚泥は実施例1と同じ性状の汚泥を使用した。
【0095】
実施例2(実施例2−1〜2−2)では、実施例1とほぼ同じ装置を転用して使用し、MAP処理工程におけるMAP反応槽は、完全混合型のパドル撹拌方式のもの1槽を使用した。また、該MAP反応槽に供給する脱水ろ液は、MAP分離工程である液体サイクロンから供給されるMAP濃縮スラリーに最初に接触した後に該MAP反応槽に導入されるフローとした。
また、実施例2(実施例2−1〜2−2)では、汚泥減量化工程において、無機凝集剤の添加なしの場合と無機凝集剤の添加ありの両方について行った。
【0096】
運転系列及び概略運転条件は、次のとおりであった。
実施例2−1:pH調整値5.5−ポリ鉄なし
実施例2−2:pH調整値5.5−ポリ鉄添加率:1.5%
比較例1−1:pH調整なし −ポリ鉄なし
(実施例2−1の比較例)
比較例1−2:pH調整なし −ポリ鉄添加率:1.5%
(実施例2−2の比較例)
【0097】
【表3】
【0098】
実施例2−1では、汚泥lLあたりのMAP回収量は3.28g/汚泥1Lであった。
実施例2−1に対する比較例である比較例2−1では、2.52g/汚泥1Lであり実施例2−1の方が約3割多くなった。
これは、比較例2−1が濃縮工程の後段のpH調整工程を採用していないために、汚泥中に混在する微細MAP粒子等の酸溶解が行えず、結果的に該微細MAP由来のリンを回収できなかったことによる。
【0099】
実施例2−2では、汚泥lLあたりのMAP回収量は3.59g/汚泥1Lであった。実施例2−2に対する比較例である比較例2−2では、2.45g/汚泥1Lであり実施例2−2の方が約5割多くなった。
これは、比較例2−2がpH調整工程を採用していないために汚泥中に混在する微細MAP粒子等の酸溶解が行えず、該微細MAP由来のリンを回収できなかったことによる。
【0100】
(実施例2の追加)
実施例2−1において、pH調整後の汚泥に対する汚泥可溶化処理として、温度80℃、処理時間60分の水熱処理を行った後、高分子凝集剤のみを添加して脱水処理を行った(実施例2−3)。
また、実施例2−1において、pH調整後の汚泥に対して下水処理における砂ろ過水を希釈水として用いて対象汚泥に対して2.5倍に希釈した(実施例2−4)。
【0101】
運転系列及び概略運転条件は、次のとおりであった。
実施例2−3:pH調整値5.5−可溶化処理(80℃、60分)−ポリ鉄なし
実施例2−4:pH調整値5.5−希釈2.5倍処理−ポリ鉄なし
【0102】
【表4】
【0103】
その結果、実施例2−3では、汚泥lLあたりのMAP回収量は4.02g/汚泥1Lであった。実施例2−1と比較して2割程度回収量が上昇した。これは汚泥中に存在する有機物の一部が可溶化処理により溶出し脱水ろ液中のMAP構成成分が増加しMAP処理工程において回収されるMAP量が増加したことによると考えられる。
【0104】
実施例2−4では、汚泥1LあたりのMAP回収量は3.61g/汚泥1Lであった。実施例2−1と比較して1割程度回収量が上昇した。これは脱水ケーキ重量中の約8割を占める水分中に存在するリン酸イオン等のMAP構成成分が希釈処理により薄まり脱水ケーキとして系外に持ち出されるリン排出量を減少させ、その分脱水ろ液中のMAP構成成分の総量を増加させたことによりMAP処理工程において回収されるMAP量が増加したことによると考えられる。
【0105】
次に、薬品コストに関して述べる。
MAP反応に必要な薬品は、Mg源及びアルカリ剤としてのMg(OH)と、pH調整剤としてのHSOである。実施例2−1は、16.9円/kg−MAPであり比較例2−1の17.5円/kg−MAPとほぼ等しくなった。
コストの内訳的には、実施例1の場合と同様に実施例2−1は、Mg(OH)コストが減少し、HSOコストが増加したが、この両方のコスト増減分がほぼ相殺したと考えられる。
【0106】
実施例2−2は11.2円/kg−MAPであり、比較例2−2の13.1円/kg−MAPよりも約2割減少した。
実施例2のMAP脱離汚泥は、pH8.0以上の汚泥となるために、比較例2−2においてポリ鉄を添加率1.5%で添加した場合でも、pHが大きく低下することが無いことから、返送した脱水ろ液中のMg源やpH調整剤としての効果が低かったと考えられる。
【0107】
実施例2−3では12.1円/kg−MAPであり、実施例2−1と比較して2割程度減少した。汚泥の可溶化によりリン酸イオンの他にマグネシウムイオン等が溶出することにより、MAP処理工程において添加される水酸化マグネシウムをある程度補う形でコストが低下したと考えられる。
【0108】
実施例2−4では14.8円/kg−MAPであり、実施例2−1と比較して1割程度減少した。汚泥の希釈効果により本来脱水ケーキ中水分として系外に持ち出されていた3つのMAP構成成分を回収することができたことは良かったが、希釈したことにより各イオン濃度が低下したことから、回収効率としてはやや悪くなった可能性がある。
【0109】
次に、脱水性に関して述べる。
汚泥脱水工程においてポリ鉄を使用していない実施例2−1では、比較例2−1よりも0.6ポイントケーキ含水率が低く、ポリ鉄を使用した実施例2−2では、比較例2−2よりも3.4ポイントケーキ含水率が低かった。特に実施例2−2において比較例よりもケーキ含水率が大幅に良好であった理由としては、比較例2−2においては添加したポリ鉄の多くの成分が、汚泥中に残留する微細MAP成分の一部を溶解するとともに、リン酸鉄を生成するために消費され、汚泥の脱水性改善のために働かなかったことが考えられる。
【0110】
実施例2−3では77.8%となり、実施例2−1よりも1.6ポイント小さくなった。汚泥の可溶化により汚泥の無機分の比率が高まったことにより脱水性が向上したと考えられる。また、実施例2−4では78.1%となり、実施例2−1よりも1.3ポイント小さくなった。汚泥の希釈により汚泥の洗浄効果があり、脱水性の阻害要因となる汚泥中のコロイダルな成分が除外されたことによると考えられる。
【0111】
以上の結果から鑑みて、「汚泥型MAP方式」において低コストで高回収率のリン回収、及び高効率の脱水性を発揮する為のプロセスとしては、実施例2−2に示す方法が最も良好であったと判断することができる。
【符号の説明】
【0112】
1…嫌気性処理工程
2…リン分離工程、2a…MAP分離工程、2a1…MAP脱離汚泥、2a2…MAP濃縮スラリー、2b…MAP処理工程、2b1…MAP処理汚泥、2b2…Mg源及びpH調整剤等、2c…MAP回収工程、2c1…回収リン、
3…汚泥減量化工程、3a…濃縮工程、3a1…濃縮汚泥、3a2…分離水、3b…脱水工程、3b1…脱水ケーキ、3b2…脱水ろ液、
A…pH調整工程、A1、A11…pH調整汚泥、
4…嫌気性処理汚泥、5…高分子凝集剤、6…無機凝集剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7