(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の種類の分光要素は、前記第1および第2の光感知セルの各々のセル入射光のうち、前記第1の色成分の光の一部を、前記第1の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の光の残りおよび前記第1の色成分の補色光を、前記第2の光感知セルに入射させ、
前記第2の種類の分光要素は、前記第3および第4の光感知セルの各々のセル入射光のうち、前記第2の色成分の光の一部を、前記第4の光感知セルに入射させ、前記第2の色成分の光の残りおよび前記第2の色成分の補色光を、前記第3の光感知セルに入射させる、請求項1から4のいずれかに記載の固体撮像素子。
前記第1の種類の分光要素は、さらに、前記第1および第3の光感知セルの各々のセル入射光のうち、前記第1の色成分の光の一部を、前記第1の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の光の残りおよび前記第1の色成分の補色光を、前記第3の光感知セルに入射させ、
前記第2の種類の分光要素は、さらに、前記第2および第4の光感知セルの各々のセル入射光のうち、前記第2の色成分の光の一部を、前記第4の光感知セルに入射させ、前記第2の色成分の光の残りおよび前記第2の色成分の補色光を、前記第2の光感知セルに入射させる、
請求項5に記載の固体撮像素子。
前記第1の種類の分光要素および前記第2の種類の分光要素の各々は、透光性部材を有し、前記透光性部材の形状、および前記透光性部材と前記透光性部材よりも屈折率の低い他の透光性部材との屈折率の差を利用して分光する、請求項1から8のいずれかに記載の固体撮像素子。
前記信号処理部は、前記第1の光電変換信号と前記第1から第4の光電変換信号の平均値との差分演算、および前記第4の光電変換信号と前記第1から前記第4の光電変換信号との差分演算により、第1の色差信号および第2の色差信号を生成する、請求項10に記載の撮像装置。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOS等の固体撮像素子(以下、「撮像素子」と称する場合がある。)を用いたデジタルカメラやデジタルムービーの高機能化、高性能化には目を見張るものがある。特に半導体製造技術の急速な進歩により、撮像素子における画素構造の微細化が進んでいる。その結果、撮像素子の画素および駆動回路の高集積化が図られ、撮像素子の高性能化が進んでいる。特に近年では、固体撮像素子の配線層が形成された面(表面)側ではなく裏面側で受光する裏面照射型(backside illumination)の撮像素子を用いたカメラも開発され、その特性等が注目されている。その一方で撮像素子の多画素化に伴い、1画素の受ける光量が低下するため、カメラ感度が低下するという問題が起きている。
【0003】
カメラの感度低下は、多画素化以外にも、色分離用の色フィルタが用いられることにも原因がある。通常のカラーカメラでは、撮像素子の各光感知セルに対向して有機顔料を色素とする減色型の色フィルタが配置される。色フィルタは、利用する色成分以外の光を吸収するため、このような色フィルタを用いた場合、カメラの光利用率は低下する。例えば、赤(R)1画素、緑(G)2画素、青(B)1画素を基本構成とするベイヤー型の色フィルタ配列をもつカラーカメラでは、R、G、Bの各色フィルタは、それぞれR、G、B光のみを透過させ、残りの光を吸収する。したがって、ベイヤー配列によるカラーカメラにおいて利用される光は、入射光全体の約1/3である。
【0004】
上記の感度低下の問題に対して、入射光を多く取り込むために、撮像素子の受光部にマイクロレンズアレイを取り付けることによって受光量を増やす技術が特許文献1に開示されている。この技術によれば、マイクロレンズを用いて光感知セルに集光することにより、撮像素子における光開口率を実質的に向上させることができる。この技術は現在殆どの固体撮像素子に用いられている。この技術を用いれば、確かに実質的な開口率は向上するが、色フィルタによる光利用率低下の問題を解決するものではない。
【0005】
光利用率低下と感度低下の問題を同時に解決する技術として、多層膜の色フィルタ(ダイクロイックミラー)とマイクロレンズとを組み合わせて、光を最大限利用する技術が特許文献2に開示されている。この技術では、光を吸収せず特定波長域の光を選択的に透過させ、他の波長域の光を反射する複数のダイクロイックミラーが用いられる。これにより、光を損失することなく、個々の光感知部に必要な波長域の光のみを入射させることができる。
【0006】
図10は、特許文献2に開示された撮像素子の撮像面に垂直な方向の断面を模式的に示す図である。この撮像素子は、撮像素子の表面および内部にそれぞれ配置された集光用のマイクロレンズ4a、4bと、遮光部20と、光感知セル2a、2b、2cと、ダイクロイックミラー17、18、19とを備えている。ダイクロイックミラー17、18、19は、光感知セル2a、2b、2cにそれぞれ対向して配置されている。ダイクロイックミラー17は、R光を透過させ、G光およびB光を反射する特性を有している。ダイクロイックミラー18は、G光を反射し、R光およびB光を透過させる特性を有している。ダイクロイックミラー19は、B光を反射し、R光およびG光を透過させる特性を有している。
【0007】
マイクロレンズ4aに入射した光は、マイクロレンズ4bによって光束を調整された後、第1のダイクロイックミラー17に入射する。第1のダイクロイックミラー17は、R光を透過させるが、G光およびB光を反射する。第1のダイクロイックミラー17を透過した光は、光感知セル2aに入射する。第1のダイクロイックミラー17で反射されたG光およびB光は、隣接する第2のダイクロイックミラー18に入射する。第2のダイクロイックミラー18は、入射した光のうちG光を反射し、B光を透過させる。第2のダイクロイックミラー18で反射されたG光は、光感知セル2bに入射する。第2のダイクロイックミラー18を透過したB光は、第3のダイクロイックミラー19で反射され、その直下の光感知セル2cに入射する。このように、特許文献2に開示された撮像素子によれば、集光マイクロレンズ4aに入射した可視光は、色フィルタによって吸収されず、そのRGBの各成分が3つの光感知セルによって無駄なく検出される。
【0008】
上記の従来技術のほか、マイクロプリズムを用いることによって光の損失を防ぐことができる撮像素子が特許文献3に開示されている。この撮像素子は、マイクロプリズムによって赤、緑、青に分離された光をそれぞれ異なる光感知セルが受ける構造を有している。このような撮像素子によっても光の損失を防ぐことができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2および特許文献3に開示された技術では、利用するダイクロイックミラーの数だけ、または分光する数だけ光感知セルを設ける必要がある。例えばRGB3色の光を検出するには、光感知セルの数を、従来の色フィルタを用いた場合の光感知セルの数と比較して3倍に増やさなければならないという課題がある。
【0010】
以上の技術に対し、光の損失は一部発生するが、ダイクロイックミラーと反射とを用いて光の利用率を高める技術が特許文献4に示されている。
図11は当該技術を用いた撮像素子の断面図の一部を示したものである。図示されるように、透光性の樹脂21内にダイクロイックミラー22、23が配置される。ダイクロイックミラー22はG光を透過させ、R光およびB光を反射する特性を有する。また、ダイクロイックミラー23はR光を透過させ、G光およびB光を反射する特性を有する。
【0011】
このような構成により、B光は光感知部で受光できないが、R光、G光は以下の原理で全て検出できる。まずR光がダイクロイックミラー22、23に入射すると、ダイクロイックミラー22では反射され、ダイクロイックミラー23では透過する。ダイクロイックミラー22で反射されたR光は、さらに透光性の樹脂21と空気との界面でも反射され、ダイクロイックミラー23に入射する。R光は、ダイクロイックミラー23を透過し、さらにR光透過性を有する有機色素フィルタ25およびマイクロレンズ26も透過する。このようにして、一部が金属層27で反射するものの、ダイクロイックミラー22、23に入射するR光の殆どが光感知部に入射する。一方、G光がダイクロイックミラー22、23に入射すると、ダイクロイックミラー22では透過し、ダイクロイックミラー23では反射される。ダイクロイックミラー23で反射されたG光は、さらに透光性の樹脂21と空気との界面で全反射し、ダイクロイックミラー22に入射する。G光は、ダイクロイックミラー22を透過し、さらにG光透過性を有する有機色素フィルタ24およびマイクロレンズ26も透過する。このようにして、一部が金属層27で反射するものの、ダイクロイックミラー22、23に入射するG光の殆どが損失なく光感知部に入射する。
【0012】
上記の原理により、特許文献4に示された技術では、RGB光のうち1色は損失するものの2色は殆ど損失なく受光できる。このため、RGB3色分の光感知部を配置する必要はない。ここで、ダイクロイックミラーを有さず有機色素フィルタのみによってカラー化を行う場合と比較すると、有機色素フィルタのみによる場合の光利用率が約1/3であるのに対して、特許文献4に開示された技術を用いた場合の光利用率は全入射光の約2/3となる。すなわち、この技術によれば撮像感度が約2倍に向上する。しかしながら、この技術によっても、3色のうちの1色は損失することになる。
【0013】
一方、分光要素を用いて大幅に光感知セルを増やすことなく光利用率を高めるカラー化技術が特許文献5に開示されている。この技術によれば、光感知セルに対応して配置された分光要素によって光が波長域に応じて異なる光感知セルに入射する。個々の光感知セルは、複数の分光要素から異なる波長域の成分が重畳された光を受ける。その結果、各光感知セルから出力される光電変換信号を用いた信号演算によって色信号を生成することができる。但し、このカラー化技術は、セルピッチが1ミクロン程度の撮像素子に適しているが、セルピッチが大きくなるとカラー化の性能が劣化する傾向がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様による固体撮像素子は、各々が第1の光感知セル、第2の光感知セル、第3の光感知セル、および第4の光感知セルを含む複数の単位ブロックが2次元状に配列された光感知セルアレイと、前記光感知セルアレイに対向して配置された、第1の種類の分光要素および第2の種類の分光要素を含む分光要素アレイとを備える。前記分光要素アレイが存在しないと仮定した場合に各光感知セルが受ける光を各光感知セルのセル入射光とし、前記セル入射光に含まれる可視光が、第1の色成分、第2の色成分、および第3の色成分から構成され、各色成分を除く色成分の可視光を、当該色成分の補色光とするとき、前記分光要素アレイは、前記第1の種類の分光要素によって前記第1および第2の光感知セルの各々のセル入射光に含まれる前記第1の色成分の光の一部を前記第1の光感知セルに入射させ、前記第2の種類の分光要素によって前記第3および第4の光感知セルの各々のセル入射光に含まれる前記第2の色成分の光の一部を前記第4の光感知セルに入射させる。
【0023】
ある実施形態において、前記第1から第4の光感知セルの各々の形状は4角形状であり、前記第1から第4の光感知セルは、2行2列に配列され、前記第1の種類の分光要素は、前記第1および第2の光感知セルの境界に対向する位置に配置され、前記第2の種類の分光要素は、前記第3および第4の光感知セルの境界に対向する位置に配置されている。
【0024】
ある実施形態において、前記第1の種類の分光要素は、さらに、前記第1および第3の光感知セルの境界に対向する位置に配置され、前記第2の種類の分光要素は、さらに、前記第2および第4の光感知セルの境界に対向する位置に配置されている。
【0025】
ある実施形態において、前記第1の種類の分光要素は、さらに、前記第1および第3の光感知セルの各々のセル入射光に含まれる前記第1の色成分の光の一部を前記第1の光感知セルに入射させ、前記第2の種類の分光要素は、さらに、前記第2および第4の光感知セルの各々のセル入射光に含まれる前記第2の色成分の光の一部を前記第4の光感知セルに入射させる。
【0026】
ある実施形態において、前記第1の種類の分光要素は、前記第1および第2の光感知セルの各々のセル入射光のうち、前記第1の色成分の光の一部を、前記第1の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の光の残りおよび前記第1の色成分の補色光を、前記第2の光感知セルに入射させる。前記第2の種類の分光要素は、前記第3および第4の光感知セルの各々のセル入射光のうち、前記第2の色成分の光の一部を、前記第4の光感知セルに入射させ、前記第2の色成分の光の残りおよび前記第2の色成分の補色光を、前記第3の光感知セルに入射させる。
【0027】
ある実施形態において、前記第1の種類の分光要素は、さらに、前記第1および第3の光感知セルの各々のセル入射光のうち、前記第1の色成分の光の一部を、前記第1の光感知セルに入射させ、前記第1の色成分の光の残りおよび前記第1の色成分の補色光を、前記第3の光感知セルに入射させる。前記第2の種類の分光要素は、さらに、前記第2および第4の光感知セルの各々のセル入射光のうち、前記第2の色成分の光の一部を、前記第4の光感知セルに入射させ、前記第2の色成分の光の残りおよび前記第2の色成分の補色光を、前記第2の光感知セルに入射させる。
【0028】
ある実施形態において、前記第1の種類の分光要素は、前記第1の光感知セルの周囲の境界に対向する位置に配置された4つの分光要素を含み、前記第2の種類の分光要素は、前記第4の光感知セルの周囲の境界に対向する位置に配置された4つの分光要素を含む。
【0029】
ある実施形態において、前記第1の色成分は赤および青の一方の色成分であり、前記第2の色成分は赤および青の他方の色成分である。
【0030】
ある実施形態において、前記第1の種類の分光要素および前記第2の種類の分光要素の各々は、透光性部材を有し、前記透光性部材の形状、および前記透光性部材と前記透光性部材よりも屈折率の低い他の透光性部材との屈折率の差を利用して分光する。
【0031】
本発明の一態様による撮像装置は、上記のいずれかの固体撮像素子と、前記固体撮像素子に像を形成する光学系と、前記固体撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部であって、前記第1の光感知セルから出力される第1の光電変換信号、前記第2の光感知セルから出力される第2の光電変換信号、および前記第3の光感知セルから出力される第3の光電変換信号、前記第4の光感知セルから出力される第4の光電変換信号を用いた演算によって色情報を生成する信号処理部とを備える。
【0032】
ある実施形態において、前記信号処理部は、前記第1の光電変換信号と前記第1から第4の光電変換信号の平均値との差分演算、および前記第4の光電変換信号と前記第1から前記第4の光電変換信号との差分演算により、第1の色差信号および第2の色差信号を生成する。
【0033】
本発明の一態様による信号処理方法は、上記のいずれかの固体撮像素子から出力される信号を処理する方法であって、前記第1の光感知セルから出力される第1の光電変換信号、前記第2の光感知セルから出力される第2の光電変換信号、前記第3の光感知セルから出力される第3の光電変換信号、および前記第4の光感知セルから出力される第4の光電変換信号を取得するステップAと、前記第1から第4の光電変換信号を用いて色情報を生成するステップBとを含む。
【0034】
ある実施形態において、前記ステップBは、前記第1の光電変換信号と前記第2の光電変換信号との差分演算によって生成される第1の差分信号を生成するステップと、前記第3の光電変換信号と前記第4の光電変換信号との差分演算によって生成される第2の差分信号を生成するステップとを含む。
【0035】
ある実施形態において、前記ステップBは、前記第1および第2の光電変換信号の加算、前記第3および第4の光電変換信号の加算、および前記第1から第4の光電変換信号の加算のいずれかを含む演算によって輝度信号を生成するステップと、前記輝度信号、前記第1の差分信号、および前記第2の差分信号を用いて前記セル入射光に含まれる赤、緑、および青の色信号を生成するステップとをさらに含む。
【0036】
以下、具体的な実施形態を説明する前に、まず
図1、2A〜2F、3A〜3Fを参照しながら、本開示における実施形態の概要を説明する。なお、以下の説明において、波長域または色成分の異なる光を空間的に分離することを「分光」と称することがある。
【0037】
本発明の一態様による固体撮像素子は、撮像面に2次元状に配列された複数の光感知セル(画素)を含む光感知セルアレイと、複数の分光要素を含む分光要素アレイとを備えている。
図1は、固体撮像素子10の撮像面に形成された光感知セルアレイ200および分光要素アレイ100の一部を模式的に示す斜視図である。分光要素アレイ100は、光感知セルアレイ200に対向して光が入射する側に配置されている。なお、光感知セル2の配列、形状、サイズなどはこの図の例に限られず、公知のどのような配列、形状、サイズであってもよい。また、分光要素アレイ100は、便宜上、四角柱で表されているが、実際はこのような形状を有しているわけではなく、様々な構造をとり得る。分光要素アレイ100は、複数の分光要素を備えている。各分光要素は、例えば、マイクロレンズや高屈折率の透明部材であり、入射光を波長に応じて異なる方向に分離するように設計されている。
【0038】
各光感知セル2は、光を受けると光電変換によって受けた光の強度(入射光量)に応じた電気信号(以下、「光電変換信号」または「画素信号」と呼ぶこととする。)を出力する。本実施形態では、各光感知セル2は、分光要素アレイ100によって進行方向が変化した複数の波長域(色成分)の光を受ける。その結果、各光感知セル2が受ける光は、分光要素が存在しないと仮定した場合に受ける光とは異なる分光分布(波長域ごとの強度分布)を有する。また、分光要素アレイ100は、必ずしも入射光全てを分光するわけではなく、ある割合k(kは0より大きく、1以下の実数)だけ分光する。
【0039】
以下、
図2A〜2Eを参照しながら、撮像素子10の基本構造の一例を説明する。
【0040】
図2Aは、光感知セルアレイ200の基本画素構成(単位ブロック)40の一例を示す平面図である。光感知セルアレイ200は、各々が4つの光感知セル2a、2b、2c、2dを含む複数の単位ブロック40が撮像面上に2次元状に配列された構造を有している。図示される例では、1つの単位ブロック内に4つの光感知セルが2行2列に配置されている。また、各光感知セルの形状は4角形状である。なお、この構成はあくまでも一例であり、光感知セルの配列および形状はこの例に限定されない。
【0041】
図2B、2C、2D、2Eは、それぞれ
図2AにおけるAA´線断面、BB´線断面、CC´線断面、DD´線断面を模式的に示す図である。分光要素アレイ100は、前述のように、複数の分光要素を有している。分光要素アレイ100に入射する光のうち、割合kに相当する光がこれらの分光要素によって分光され、割合(k−1)に相当する光は、分光されずに透過する。
図2B〜2Eは、撮像素子10に入射した光のうち、割合kの光が分光要素アレイ100を透過する際に色成分によって進行方向が変化し、結果として各光感知セルが受ける光の分光分布が互いに異なっていることを示している。本実施形態では、分光要素アレイは、分光特性が異なる第1の種類の分光要素と第2の種類の分光要素とを含んでいる。各分光要素は、屈折や回折を利用して入射光を色成分によって異なる方向に分離する。
図2B、2Cに示される断面図は、水平方向(
図2Aに示すx方向)における分光の様子を示し、
図2D、2Eに示される断面図は、垂直方向(
図2Aに示すy方向)における分光の様子を示している。
【0042】
ここで、分光要素アレイ100が存在しないと仮定した場合に各光感知セルが受ける光をその光感知セルの「セル入射光」と呼ぶこととする。1つの単位ブロック40に含まれる光感知セル2a〜2dが近接している場合、それらの光感知セルのセル入射光に含まれる光の強度および分光分布はほぼ同一であると考えることができる。それらの光感知セルのセル入射光の可視光成分の強度を記号「W」で表すこととする。本明細書では、セル入射光に含まれる可視光成分を、大別して第1の色成分、第2の色成分、第3の色成分に分類する。第1〜第3の色成分の強度をそれぞれC1、C2、C3と表すと、W=C1+C2+C3となる。また、セル入射光の割合kの光強度を当該光強度にkを付して表す。すると、各光感知セルのセル入射光のうち、分光要素によって分光される光の強度はkWで表され、分光されない光の強度は(1−k)Wで表される。
【0043】
以下の説明では、各色成分の強度だけでなく、色成分自体をC1、C2、C3で表すことがある。また、各色成分を除く可視光の色成分をその色成分の「補色」と呼び、補色の光を「補色光」と呼ぶ。すると、第1の色成分C1の補色はC2+C3、第2の色成分C2の補色はC1+C3、第3の色成分C3の補色はC1+C2で表される。以下では、便宜上、色成分Cn(CnはC1、C2、C3のいずれか)の補色およびその強度をCn^で表す場合がある。第1〜第3の色成分の組み合わせは、典型的には赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の組み合わせであるが、可視光を3つの波長域に分けるものであれば他の色成分の組み合わせであってもよい。
【0044】
以下、
図2A〜
図2Eに示す例における分光要素アレイ100の働きを説明する。第1の光感知セル2a、第2の光感知セル2b、第3の光感知セル2c、第4の光感知セル2dへの入射光について、水平方向(x方向)、垂直方向(y方向)の方向別に説明する。ここで、分光は分光要素アレイ100に含まれる第1の種類の分光要素および第2の種類の分光要素によって行われる。第1の種類の分光要素は、入射光を、第1の色成分の光と、第1の色成分の補色光とに分離するように設計されている。一方、第2の種類の分光要素は、入射光を、第2の色成分の光と、第2の色成分の補色光とに分離するように設計されている。
【0045】
第1に、水平方向に並ぶ第1の光感知セル2aと第2の光感知セル2bに関して、水平方向の分光について説明する。分光要素アレイ100は、第1の光感知セル2aおよび第2の光感知セル2bの各セル入射光(強度W)の内、そのk倍の光(強度kW)を分光させる。その分光の内の第1の色成分の光(強度kC1)を第1の光感知セル2aに、その分光の内の第1の色成分の補色光(強度kC1^)を第2の光感知セル2bに、分光されなかった残りの強度W’(=(1−k)W)の光を第1の光感知セル2aおよび第2の光感知セル2bの各々に入射させる。なお、
図2Bに示されているように、第1の光感知セル2aおよび第2の光感知セル2bには、両サイドから矢印で表される光が入射しており、それらの光の合計が、それぞれkC1およびkC1^で表される。ここで、分光は、第1の種類の分光要素によって行われる。
【0046】
第2に、水平方向に並ぶ第3の光感知セル2cと第4の光感知セル2dに関して、水平方向の分光について説明する。分光要素アレイ100は、第3の光感知セル2cおよび第4の光感知セル2dの各セル入射光(強度W)の内のk倍の光(強度kW)を分光させる。そして、その分光の内の第2の色成分の光(強度kC2)を第4の光感知セル2dに、その分光のうちの第2の色成分の補色光(強度kC2^)を第3の光感知セル2cに、分光されなかった残りの強度W’(=(1−k)W)の光を第3の光感知セル2cおよび第4の光感知セル2dの各々に入射させる。なお、
図2Cに示されているように、第3の光感知セル2cおよび第4の光感知セル2dには、両サイドから矢印で表される光が入射しており、それらの光の合計が、それぞれkC2^およびkC2で表される。ここで、分光は、第2の種類の分光要素によって行われる。
【0047】
第3に、垂直方向に並ぶ第1の光感知セル2aと第3の光感知セル2cに関して、垂直方向の分光について説明する。分光要素アレイ100は、第1の光感知セル2aおよび第3の光感知セル2cの各セル入射光(強度W)の内のk倍の光(強度kW)を分光させる。そして、その分光の内の第1の色成分の光(強度kC1)を第1の光感知セル2aに、その分光の内の第1の色成分の補色光(強度kC1^)を第3の光感知セル2cに、分光されなかった残りの強度W’(=(1−k)W)の光を第1の光感知セル2aおよび第3の光感知セル2cの各々に入射させる。なお、
図2Dに示されているように、第1の光感知セル2aおよび第3の光感知セル2cには、両サイドから矢印で表される光が入射しており、それらの光の合計が、それぞれkC1およびkC1^で表される。ここで、分光は、第1の種類の分光要素によって行われる。
【0048】
第4に、垂直方向に並ぶ第2の光感知セル2bと第4の光感知セル2dに関して、垂直方向の分光について説明する。分光要素アレイ100は、第2の光感知セル2bおよび第4の光感知セル2dの各セル入射光(強度W)の内のk倍(強度kW)を分光させる。そして、その分光の内の第2の色成分の光(強度kC2)を第4の光感知セル2dに、その分光の内の第2の色成分の補色光(強度kC2^)を第2の光感知セル2bに、分光されなかった残りの強度W’(=(1−k)W)の光を第2の光感知セル2bおよび第4の光感知セル2dの各々に入射させる。なお、
図2Eに示されているように、第2の光感知セル2bおよび第4の光感知セル2dには、両サイドから矢印で表される光が入射しており、それらの光の合計が、それぞれkC2^およびkC2で表される。ここで、分光は、第1の種類の分光要素によって行われる。
【0049】
以上の説明では、各光感知セルへの入射光に関して、水平、垂直の方向別に説明したため、分光されなかった光強度W’を重複して表記したが、各光感知セルは、分光されなかった光として強度W’の光のみを受光する。
【0050】
図2Fは、各光感知セルが受ける光の強度を示す図である。上記の構成により、分光のみに着目すると、光感知セル2a、2b、2c、2dは、水平方向の分光により、それぞれkC1、kC1^、kC2^、kC2で表される強度の光を受け、垂直方向の分光により、それぞれkC1、kC2^、kC1^、kC2で表される強度の光を受ける。各光感知セルは、そられに加えて、強度W’の分光されなかった光を受ける。その結果、光感知セル2a、2b、2c、2dは、
図2Fに示されるように、それぞれW’+2kC1、W’+kC1^+kC2^、W’+kC1^+kC2^、W’+2kC2で表される強度の光を受ける。各光感知セルは、これらの強度に応じた光電変換信号(画素信号)を出力する。
【0051】
ここで、光感知セル2a〜2dが出力する光電変換信号をそれぞれS2a〜S2dとし、強度Wに対応する信号をWs、強度W’に対応する信号をW’s、強度C1に対応する信号をC1s、強度C2に対応する信号をC2s、強度C3に対応する信号をC3s、さらに強度C1^に対応する信号をC1^s(=C2s+C3s)、強度C2^に対応する信号をC2^s(=C1s+C3s)、強度C3^に対応する信号をC3^s(=C1s+C2s)とし、Ws=C1s+C2s+C3sとする。すると、S2a〜S2dは、それぞれ以下の式1〜4で表すことができる。
(式1) S2a=W’s+2kC1s
(式2) S2b=Ws’+kC1^s+kC2^s=Ws’+kWs+kC3s
(式3) S2c=Ws’+kC1^s+kC2^s=Ws’+kWs+kC3s
(式4) S2d=W’s+2kC2s
なお、これらS2a〜S2dの信号を合計すると、4Ws’+2kC1s+2kC1^s+2kC2s+2kC2^s=4Ws’+4kWs=4(1−k)Ws+4kWs=4Wsとなることから、光損失が生じていないことがわかる。
【0052】
ここで、入射光に対する分光する光の割合kは設計値であり、既知であるので、信号S2a〜S2dの平均値をSav(=Ws)として、信号S2aから(1−k)Savを減算し2kで除算すれば、C1sが得られる。同様に、信号S2dから(1−k)Savを減算し2kで除算すれば、C2sが得られる。さらに、信号(S2b+S2c)から2Savを減算し2kで除算すれば、C3sが得られる。結局、式5〜式7の演算により、C1s、C2s、C3sの色信号が得られる。
(式5) C1s=(S2a−(1−k)Sav)/2k
(式6) C2s=(S2d−(1−k)Sav)/2k
(式7) C3s=(S2b+S2c−2Sav)/2k
すなわち、光感知セル2a〜2dから出力される4つの光電変換信号S2a〜S2dに基づく信号演算によってカラー信号を算出できる。
【0053】
次に、
図3Aから
図3Fを参照しながら、撮像素子10の他の例を説明する。
【0054】
図3Aは、この例における光感知セルアレイ200の単位ブロック40を示す平面図である。光感知セル200の単位ブロック40は、
図2Aに示す構成と同様の構成を有している。
【0055】
図3B、3C、3D、3Eは、それぞれ
図3AにおけるAA´線断面、BB´線断面、CC´線断面、DD´線断面を模式的に示す図である。この例では、分光要素アレイ100は、第1の種類の分光要素と第2の種類の分光要素とを含む。第1の種類の分光要素は、入射光を第1の色成分の光の一部と、第1の色成分の光の残りの一部と、第1の色成分の光の補色光とに分離する。第2の種類の分光要素は、入射光を第2の色成分の光の一部と、第2の色成分の光の残りの一部と、第2の色成分の光の補色光とに分離する。以下、各光感知セルへの入射光について、水平方向および垂直方向に分けて説明する。
【0056】
第1に、水平方向に並ぶ第1の光感知セル2aおよび第2の光感知セル2bに関して、水平方向の分光について説明する。分光要素アレイ100は、第1の光感知セル2aおよび第2の光感知セル2bの各セル入射光(強度W)のうち、そのk倍の光(強度kW)を分光させる。その分光のうちの第1の色成分の光の半分(強度kC1/2)を第1の光感知セル2aに、その分光のうちの第1の色成分の光の残りの半分(強度kC1/2)と第1の色成分の補色光(強度kC1^)とを第2の光感知セル2bに、分光されなかった残りの強度W’(=(1−k)W)の光を第1の光感知セル2aおよび第2の光感知セル2bの各々に入射させる。なお、
図3Bに示されているように、第1の光感知セル2aおよび第2の光感知セル2bには、両サイドから矢印で表される光が入射しており、それらの光の合計が、それぞれkC1/2およびkC1^+kC1/2で表される。ここで、分光は、第1の種類の分光要素によって行われる。
【0057】
第2に、水平方向に並ぶ第3の光感知セル2cおよび第4の光感知セル2dに関して、水平方向の分光について説明する。分光要素アレイ100は、第3の光感知セル2cおよび第4の光感知セル2dの各セル入射光(強度W)のうち、そのk倍の光(強度kW)を分光させる。その分光のうちの第2の色成分の光の半分(強度kC2/2)を第4の光感知セル2dに、その分光のうちの第2の色成分の光の残りの半分(強度kC2/2)と第2の色成分の補色光(強度kC2^)とを第3の光感知セル2cに、分光されなかった残りの強度W’(=(1−k)W)の光を第3の光感知セル2cおよび第4の光感知セル2dの各々に入射させる。なお、
図3Cに示されているように、第3の光感知セル2cおよび第4の光感知セル2dには、両サイドから矢印で表される光が入射しており、それらの光の合計が、それぞれkC2^+kC2/2およびkC2/2で表される。ここで、分光は、第2の種類の分光要素によって行われる。
【0058】
第3に、垂直方向に並ぶ第1の光感知セル2aおよび第3の光感知セル2cに関して、垂直方向の分光について説明する。分光要素アレイ100は、第1の光感知セル2aおよび第3の光感知セル2cの各セル入射光(強度W)のうち、そのk倍の光(強度kW)を分光させる。その分光のうちの第1の色成分の光の半分(強度kC1/2)を第1の光感知セル2aに、その分光のうちの第1の色成分の光の残りの半分(強度kC1/2)と第1の色成分の補色光(強度kC1^)とを第3の光感知セル2cに、分光されなかった残りの強度W’(=(1−k)W)の光を第1の光感知セル2aおよび第3の光感知セル2cの各々に入射させる。なお、
図3Dに示されているように、第1の光感知セル2aおよび第3の光感知セル2cには、両サイドから矢印で表される光が入射しており、それらの光の合計が、それぞれkC1/2およびkC1^+kC1/2で表される。ここで、分光は、第1の種類の分光要素によって行われる。
【0059】
第4に、垂直方向に並ぶ第2の光感知セル2bおよび第4の光感知セル2dに関して、垂直方向の分光について説明する。分光要素アレイ100は、第2の光感知セル2bおよび第4の光感知セル2dの各セル入射光(強度W)のうち、そのk倍の光(強度kW)を分光させる。その分光のうちの第2の色成分の光の半分(強度kC2/2)を第4の光感知セル2dに、その分光のうちの第2の色成分の光の残りの半分(強度kC2/2)と第2の色成分の補色光(強度kC2^)とを第2の光感知セル2bに、分光されなかった残りの強度W’(=(1−k)W)の光を第2の光感知セル2bおよび第4の光感知セル2dの各々に入射させる。なお、
図3Eに示されているように、第2の光感知セル2bおよび第4の光感知セル2dには、両サイドから矢印で表される光が入射しており、それらの光の合計が、それぞれkC2^+kC2/2およびkC2/2で表される。ここで、分光は、第2の種類の分光要素によって行われる。
【0060】
以上の説明では、各光感知セルへの入射光に関して、水平、垂直の方向別に説明したため、分光されなかった光強度W’を重複して表記したが、各光感知セルは、分光されなかった光として強度W’の光のみを受光する。
【0061】
図3Fは、各光感知セルが受ける光の強度を示す図である。上記の構成により、光感知セル2a、2b、2c、2dは、それぞれ、W’+kC1、W’+kC1^+kC1/2+kC2^+kC2/2、W’+kC1^+kC1/2+kC2^+kC2/2、W’+kC2で表される強度の光を受ける。各光感知セルは、これらの強度に応じた光電変換信号(画素信号)を出力する。
【0062】
光感知セル2a〜2dが出力する光電変換信号S2a〜S2dは、それぞれ以下の式8〜11で表すことができる。
(式8) S2a=W’s+kC1s
(式9) S2b=W’s+kC1^s+kC1s/2+kC2^s+kC2s/2
(式10) S2c=W’s+kC1^s+kC1s/2+kC2^s+kC2s/2
(式11) S2d=W’s+kC2s
これらS2a〜S2dの信号を合計すると、4W’s+2kC1s+2kC1^s+2kC2s+2kC2^s=4W’s+4kWs=4Wsとなることから、光損失が生じていないことがわかる。この場合も、割合kは設計値であり、既知であるため、式8〜11からC1s、C2s、C3sの色信号を得ることができる。
【0063】
以上のように、この例においても、光感知セル2a〜2dから出力される4つの光電変換信号S2a〜S2dに基づく信号演算によってカラー信号を算出できる。
【0064】
以上の撮像素子10によれば、光の一部を吸収する色フィルタを用いることなく、分光要素を用いて信号演算によってカラー情報を得ることができる。そのため、光の損失を防ぐことができ、撮像感度を高めることが可能となる。
【0065】
なお、
図1、
図2B〜2E、
図3B〜3Eでは、分光要素アレイ100は複数の光感知セルを覆う連続的な要素として描かれているが、分光要素アレイ4は、空間的に分離した複数の分光要素の集合体であってもよい。このような分光要素として、例えば後述する高屈折率透明部材、ダイクロイックミラー、マイクロプリズムなどが用いられ得る。本実施形態における分光要素アレイ100は、上記の例で示した光電変換信号が得られればどのように構成されていてもよく、例えばホログラム素子などを用いて分光を行ってもよい。
【0066】
以下、
図4から
図8を参照しながらより具体的な実施形態を説明する。以下の説明において、共通する要素には同一の符号を付している。
【0067】
(実施形態1)
図4は、第1の実施形態による撮像装置の全体構成を示すブロック図である。本実施形態の撮像装置は、デジタル式の電子カメラであり、撮像部300と、撮像部300から送出される信号に基づいて画像を示す信号(画像信号)を生成する信号処理部400とを備えている。なお、撮像装置は静止画のみを生成してもよいし、動画を生成する機能を備えていてもよい。
【0068】
撮像部300は、被写体を結像するための光学レンズ12と、光学フィルタ11と、光学レンズ12および光学フィルタ11を通して結像した光情報を、光電変換によって電気信号に変換する固体撮像素子10(イメージセンサ)とを備えている。撮像部300はさらに、撮像素子10を駆動するための基本信号を発生するとともに撮像素子10からの出力信号を受信して信号処理部400に送出する信号発生/受信部13と、信号発生/受信部13によって発生された基本信号に基づいて撮像素子10を駆動する素子駆動部14とを備えている。光学レンズ12は、公知のレンズであり、複数のレンズを有するレンズユニットであり得る。光学フィルタ11は、画素配列が原因で発生するモアレパターンを低減するための水晶ローパスフィルタに、赤外線を除去するための赤外カットフィルタを合体させたものである。撮像素子10は、典型的にはCMOSまたはCCDであり、公知の半導体製造技術によって製造される。信号発生/受信部13および素子駆動部14は、例えばCCDドライバなどのLSIから構成されている。
【0069】
信号処理部400は、撮像部300から送出される信号を処理して画像信号を生成する画像信号生成部15と、画像信号の生成過程で発生する各種のデータを格納するメモリ30と、生成した画像信号を外部に送出する画像信号出力部16とを備えている。画像信号生成部15は、公知のデジタル信号処理プロセッサ(DSP)などのハードウェアと、画像信号生成処理を含む画像処理を実行するソフトウェアとの組合せによって好適に実現され得る。メモリ30は、DRAMなどによって構成される。メモリ30は、撮像部300から送出された信号を記録するとともに、画像信号生成部15によって生成された画像データや、圧縮された画像データを一時的に記録する。これらの画像データは、画像信号出力部16を介して不図示の記録媒体や表示部などに送出される。
【0070】
なお、本実施形態の撮像装置は、電子シャッタ、ビューファインダ、電源(電池)、フラッシュライトなどの公知の構成要素を備え得るが、それらの説明は本発明の理解に特に必要でないため省略する。また、以上の構成はあくまでも一例であり、撮像素子10および画像信号生成部15を除く構成要素には、公知の要素を適切に組み合わせて用いることができる。
【0071】
以下、本実施形態における固体撮像素子10を説明する。
【0072】
図5は、露光中にレンズ12を透過した光が撮像素子10に入射する様子を模式的に示す図である。
図5では、簡単のためレンズ12および撮像素子10以外の構成要素の記載は省略されている。また、レンズ12は、一般には光軸方向に並んだ複数のレンズによって構成され得るが、簡単のため、単一のレンズとして描かれている。撮像素子10の撮像面10aには、2次元状に配列された複数の光感知セル(画素)を含む光感知セルアレイが配置されている。各光感知セルは、典型的にはフォトダイオードであり、光電変換によって入射光量に応じた光電変換信号(画素信号)を出力する。撮像面10aにはレンズ12および光学フィルタ11を透過した光(可視光)が入射する。一般に撮像面10aに入射する光の強度および波長域ごとの入射光量の分布(分光分布)は、入射位置に応じて異なる。
【0073】
図6A、6Bは、本実施形態における画素配列の例を示す平面図である。光感知セルアレイ200は、例えば、
図6Aに示すように撮像面10a上に正方格子状に配列された複数の光感知セルを有する。光感知セルアレイ200は、複数の単位ブロック40から構成され、各単位ブロック40は4つの光感知セル2a、2b、2c、2dを含んでいる。なお、光感知セルの配列は、このような正方格子状の配列ではなく、例えば、
図6Bに示す斜交型の配列であってもよいし、他の配列であってもよい。各単位ブロックに含まれる4つの光感知セル2a〜2dは、
図6A、6Bに示すように、互いに近接していることが好ましいが、これらが離れていても、後述する分光要素アレイを適切に構成することによって色情報を得ることが可能である。また、各単位ブロックが5個以上の光感知セルを含んでいてもよい。
【0074】
光感知セルアレイ200に対向して、光が入射する側に複数の分光要素を含む分光要素アレイが配置される。本実施形態では、各単位ブロックに含まれる4つの光感知セルの各々を囲むように1つの境界に対して1つずつ分光要素が設けられる。本実施形態においては、第1の光感知セル2aの周囲の境界の少なくとも一部を覆うように第1の種類の分光要素1aが配置される。また、第4の光感知セル2dの周囲の境界の少なくとも一部を覆うように第2の種類の分光要素1bが配置される。
【0075】
以下、本実施形態における分光要素を説明する。
【0076】
本実施形態における分光要素は、屈折率が異なる2種類の透光性部材の境界で生じる光の回折を利用して入射光を波長域に応じて異なる方向に向ける光学素子である。このタイプの分光要素は、屈折率が相対的に高い材料で形成された高屈折率透明部材(コア部)と、屈折率が相対的に低い材料で形成されコア部の各々の側面と接する低屈折率透明部材(クラッド部)とを有している。コア部とクラッド部との間の屈折率差により、両者を透過した光の間で位相差が生じるため、回折が起こる。この位相差は光の波長によって異なるため、光を波長域(色成分)に応じて空間的に分離することが可能となる。例えば、第1の方向および第2の方向に第1色成分の光を半分ずつ向け、第3の方向に第1色成分以外の光を向けることができる。また、3つの方向にそれぞれ異なる波長域(色成分)の光を向けることも可能である。コア部とクラッド部との屈折率差によって分光が可能になるため、本明細書では、高屈折率透明部材のことを「分光要素」と呼ぶことがある。このような回折型の分光要素の詳細は、例えば、特許第4264465号公報に開示されている。
【0077】
以上のような分光要素を有する分光要素アレイは、公知の半導体製造技術により、薄膜の堆積およびパターニングを実行することにより、製造され得る。分光要素の材質(屈折率)、形状、サイズ、配列パターンなどを適切に設計することにより、個々の光感知セルに所望の波長域の光を分離・統合して入射させることが可能となる。その結果、各光感知セルが出力する光電変換信号の組から、必要な色成分に対応する信号を算出することができる。
【0078】
以下、
図7A〜7Fを参照しながら本実施形態における撮像素子10の基本構造および各分光要素の働きを説明するが、本実施形態では裏面照射型の撮像素子を用いている。但し、本実施形態において撮像素子10のタイプが裏面照射型であるか表面照射型であるかは重要ではなく、撮像素子10は表面照射型であってもよい。また、本実施形態の場合、撮像素子のセルピッチは水平方向、垂直方向とも約4ミクロンであり、比較的高感度な撮像素子である。
図7A〜7Eは、本実施形態における撮像素子10の基本構造を示す図である。
図7Aは撮像素子10の基本構造を示す平面図である。各単位ブロックにおいて、4つの光感知セル2a、2b、2c、2dに対向して、それらの境界近くに分光要素1a、1bが配置されている。このような基本構造を有する複数のパターンが撮像面10a上に繰り返し形成されている。
【0079】
図7B、7C、7D、7Eは、
図7AにおけるAA´線断面、BB´線断面、CC´線断面およびDD´線断面をそれぞれ示す図である。図示されるように、撮像素子10は、シリコンなどの材料からなる半導体基板7と、半導体基板7内に配置された光感知セル2a〜2dと、半導体基板7の裏面側(光が入射する側)に形成された透明層6aと、透明層6aの内部に配置された板状の高屈折率透明部材1a、1bを備えている。半導体基板7の表面側(光が入射する側の反対側)には配線層5が形成されている。また、表面側には半導体基板7や配線層5などを支持する固定基盤9が配置されている。固定基板9は透明層6bを介して半導体基板7と接合されている。本実施形態では、高屈折率透明部材1a、1bが、分光要素として機能する。
【0080】
図7A〜7Eに示す構造は、公知の半導体製造技術により作製され得る。
図7A〜7Eに示される撮像素子10は、配線層5の反対側から各光感知セルに光が入射する裏面照射型の構造を有している。しかしながら、本実施形態の撮像素子10はこのような構造に限られず、配線層5の表面側から光を受ける表面照射型の構造を有していてもよい。
【0081】
第1の種類の分光要素1aおよび第2の種類の分光要素1bは、
図7B〜7Eに示すように、光が透過する方向に長い長方形状の断面を有し、自身と透明層6aとの間の屈折率差によって分光する。分光要素1aは、光感知セル2aを取り囲む形で他の光感知セルとの境界の上部に配置され、分光要素1bは、光感知セル2dを取り囲む形で他の光感知セルとの境界の上部に配置されている。分光要素1aは、入射光をその直進方向にシアン(Cy)光、その両側斜め方向にR光(光強度としてはR/8ずつ)に分光させる。分光要素1bは、入射光をその直進方向に黄(Ye)光、その両側斜め方向にB光(光強度としてはB/4ずつ)に分光させる。分光要素1a、1bは本来1ミクロン程度の光感知セルピッチの撮像素子に適しているが、本実施形態の撮像素子は光感知セルピッチが約4ミクロンと大きいため、入射光全てを分光させるわけではなく、入射光の約50%を分光させる。なお、
図7A〜7Eにおいて、各光感知セルに入射する光の強度をWで表し、分光されない光の強度をW’(=0.5W)で表している。このように、本実施形態では、分光される割合kは、1/2である。また、分光した色については、赤、緑、青、黄、シアンの光強度をそれぞれR、G、B、Ye、Cyで表している。
【0082】
入射光の分光に関して
図7Aを用いて説明すると、分光要素1aは、上下左右方向から光感知セル2aに赤(R)光をR/8ずつ入射させ、分光要素1bは、上下左右方向から光感知セル2dに青(B)光をB/8ずつ入射させる。その結果、光感知セル2aには、周囲の4つの分光要素1aから、強度R/2で表されるR光が入射し、光感知セル2dには、周囲の4つの分光要素1bから、強度B/2で表されるB光が入射する。また、両分光要素により、光感知セル2bと2cそれぞれに、合わせて強度R/4+Cy/2+B/4+Ye/2で表される光が入射する。分光されない光の光強度については当該図に記していないが、各光感知セルに光強度W’の光が入射する。
【0083】
入射光の分光状況について、
図7B〜7Eを用いて説明する。
図7Bは
図7AにおけるAA´線断面を示す図であり、分光要素1aが入射光を分光し、光感知セル2aと2bに分光した光の一部を入射させる状況を示している。本実施形態の場合、分光要素1aは光感知セル2aと2bの境界の真上に配置されず、若干光感知セル2b側にずれている。その結果、光感知セル2aにはR光が両サイドの分光要素1aからR/8ずつ(合わせるとR/4)入射し、感知セル2bにはR光とCy光が両サイドの分光要素1aからR/8+Cy/4ずつ(合わせるとR/4+Cy/2)入射する。光感知セル2a、2bの各々には、さらに、分光されない光W’(=W/2)も入射する。
【0084】
図7Cは
図7AにおけるBB´線断面を示す図であり、分光要素1bが入射光を分光し、光感知セル2cと2dに分光した光の一部を入射させる状況を示している。本実施形態の場合、分光要素1bは光感知セル2cと2dの境界の真上に配置されず、若干光感知セル2c側にずれている。その結果、光感知セル2dにはB光が両サイドの分光要素1bからB/8ずつ(合わせるとB/4)入射し、光感知セル2cにはB光とYe光が両サイドの分光要素1bからB/8+Ye/4ずつ(合わせるとB/2+Ye/2)入射する。光感知セル2c、2dの各々には、さらに、分光されない光W’(=W/2)も入射する。
【0085】
図7Dは
図7AにおけるCC´線断面を示す図であり、分光要素1aが入射光を分光し、光感知セル2aと2cに分光した光の一部を入射させる状況を示している。本実施形態の場合、分光要素1aは光感知セル2aと2cの境界の真上に配置されず、若干光感知セル2c側にずれている。その結果、光感知セル2aにはR光が両サイドの分光要素1aからR/8ずつ(合わせるとR/4)入射し、光感知セル2cにはR光とCy光が両サイドの分光要素1bからR/8+Cy/4ずつ(合わせるとR/4+Cy/2)入射する。光感知セル2a、2cの各々には、さらに、分光されない光W’(=W/2)も入射する。
【0086】
図7Eは
図7AにおけるDD´線断面を示すものであり、分光要素1bが入射光を分光し、光感知セル2bと2dに分光した光の一部を入射させる状況を示したものである。本実施形態の場合、分光要素1bは光感知セル2bと2dの境界の真上に配置されず、若干光感知セル2b側にずれ、さらにその中心方向に分光要素1bの下端が僅かずれている。その結果、光感知セル2dにはB光が両サイドの分光要素1bからB/8ずつ(合わせるとB/4)入射し、感知セル2bにはB光とYe光が左右方向からB/8+Ye/4ずつ(合わせるとB/4+Ye/2)入射する。光感知セル2b、2dの各々には、さらに、分光されない光W’(=W/2)も入射する。
【0087】
図7Fは、各光感知セルに入射する光の強度を示す図である。上記の構成により、分光されない入射光W’も含めると、光感知セル2a、2b、2c、2dには、それぞれ光強度 W’+R/2、W’+R/4+Cy/2+B/4+Ye/2、W’+R/4+Cy/2+B/4+Ye/2、W’+B/4の光が入射する。
【0088】
上記の分光要素1aと1bの特性および配置構造による分光の結果、光感知セル2a〜2dは、それぞれ以下の式12〜15で表される光電変換信号S2a〜S2dを出力する。ここで、赤光、緑光、青光の強度に相当する信号をそれぞれRs、Gs、Bsで表し、シアン光の強度に相当する信号CsをGs+Bs、黄光の強度に相当する信号YsをRs+Gsで表す。
(式12)S2a=W’s+Rs/2
(式13)S2b=W’s+Rs/4+Bs/4+(Gs+Bs)/2+(Rs+Gs)/2=5W’s/2+Gs/4
(式14)S2c=W’s+Rs/4+Bs/4+(Gs+Bs)/2+(Rs+Gs)/2=5W’s/2+Gs/4
(式15)S2d=W’s+Bs/2
【0089】
結局、S2aからW’sを減算し、2倍することによりRsが得られ、S2dからW’sを減算し、2倍することによりBsが得られる。また、S2bとS2cの和から5W’sを減算し、2倍することによりGsが得られる。W’sはS2a〜S2dの平均値Savを1/2倍した値であり、Savは以下の式16で表される。すなわち、以下の式16〜式19に示す演算により、Rs、Gs、Bsの色信号が得られる。
(式16)Sav=(S2a+S2b+S2c+S2d)/4
(式17)Rs=2(S2a−Sav/2)
(式18)Gs=2((S2b+S2c)−5Sav/2)
(式19)Bs=2(S2d−Sav/2)
【0090】
画像信号生成部15(
図4)は、式16〜19で示される光電変換信号を用いた演算によって色情報を生成する。以下、
図8を参照しながら、画像信号生成部15による色情報生成処理を説明する。
【0091】
図8は、本実施形態における色情報生成処理の手順を示すフロー図である。画像信号生成部15は、まず、ステップS10において、光電変換信号S2a〜S2dを取得する。続いて、ステップS12において、S2a〜S2dの平均値Savを求め、さらにその1/2であるSav2を算出する。次に、ステップS14において、画素信号S2aとS2dからSav2を減算し、R、B信号とし、画素信号S2bとS2cの加算結果から5倍のSav2を減算し、G信号とする。最後に、ステップS16において、算出されたR、G、Bの信号を2倍し、1組の画素信号としてRGBカラー信号とする。
【0092】
画像信号生成部15は、以上の信号演算を光感知セルアレイ2の単位ブロック40ごとに実行することによってR、G、Bの各色成分の画像を示す信号(「カラー画像信号」と呼ぶ。)を生成する。生成されたカラー画像信号は、画像信号出力部16によって不図示の記録媒体や表示部に出力される。
【0093】
このように、本実施形態の撮像装置によれば、光電変換信号S2a〜S2dを用いた加減算処理により、カラー画像信号が得られる。本実施形態における撮像素子10によれば、光を吸収する光学素子を用いないため、色フィルタなどを用いる従来技術と比較して光の損失を大幅に低減することができる。
【0094】
以上のように、本実施形態の撮像素子10では、2行2列の光感知セルアレイに対向して、1行1列目の光感知セルとその他の光感知セルとの4つの境界線の上部に光を赤光と赤光以外とに分ける第1の種類の分光要素1aが配置される。2行2列目の光感知セルとその他の光感知セルとの4つの境界線の上部に光を青光と青光以外とに分ける第2の種類の分光要素1bが配置される。当該構成を基本構成として2次元状に配列された光感知セルの上部全てにわたって分光要素1aと1bが配列される。このような分光要素の配列パターンが撮像面上に繰り返し形成されているため、光感知セルアレイ200における単位ブロック40の選び方を1行または1列ずつ変えても、得られる4つの光電変換信号は、常に式16〜19で表される4つの信号の組み合わせとなる。すなわち、演算対象の画素ブロックを1行および1列ずつずらしながら上記の信号演算を行うことにより、RGB各色成分の情報をほぼ画素数分だけ得ることができる。このことは、撮像装置の解像度を画素数の程度まで高めることができることを意味している。しかも、上記のように1画素の周辺に複数個の分光要素を配置することにより、1つの分光要素による分光は僅かでも複数の分光を集めることができ、画素セルサイズが大きい撮像素子のカラー化にも対応できるという効果がある。したがって、本実施形態の撮像装置は、従来の撮像装置よりも高感度であることに加えて、高解像度で高感度のカラー画像を生成することが可能である。
【0095】
なお、画像信号生成部15は、必要に応じて信号の増幅、合成、補正を行ってもよい。また、各分光要素は上述した分光性能を厳密に有していることが理想であるが、それらの分光性能が多少ずれていてもよい。すなわち、各光感セルから実際に出力される光電変換信号が、式16〜19に示す光電変換信号から多少ずれていてもよい。各分光要素の分光性能が理想的な性能からずれている場合であっても、ずれの程度に応じて信号を補正することによって良好な色情報を得ることができる。
【0096】
さらに、本実施形態における画像信号生成部15が行う信号演算を、撮像装置自身ではなく他の機器に実行させることも可能である。例えば、撮像素子10から出力される光電変換信号の入力を受けた外部の機器に本実施形態における信号演算処理を規定するプログラムを実行させることによっても色情報を生成することができる。
【0097】
加えて、上記の説明では入射光量に対する分光される光の量の割合kを1/2としたが、これはあくまで一例である。本実施形態の信号処理に関して、一般化したkを用いて表現すると、式12〜15は、それぞれ以下の式20〜23に書き替えられる。ここで、W’s=(1−k)Ws=(1−k)(Rs+Gs+Bs)である。
(式20) S2a=W’s+kRs
(式21) S2b=W’s+kRs/2+kBs/2+k(Gs+Bs)+k(Rs+Gs)
(式22) S2c=W’s+kRs/2+kBs/2+k(Gs+Bs)+k(Rs+Gs)
(式23) S2d=W’s+kBs
【0098】
したがって、S2aからW’sを減算し、1/k倍することにより、Rsが得られ、S2dからW’sを減算し、1/k倍することによりBsが得られる。また、S2bとS2cの和から5W’sを減算し、1/k倍することによりGsが得られる。W’sは、S2a〜S2dの平均値Savをk倍した値であり、Savは以下の式24で表される。すなわち、以下の式24〜27に示す演算により、Rs、Gs、Bsの色信号が得られる。
(式24) Sav=(S2a+S2b+S2c+S2d)/4
(式25) Rs=(S2a−kSav)/k
(式26) Gs=((S2b+S2c)−5kSav)/k
(式27) Bs=(S2d−kSav)/k
【0099】
なお、以上の処理は一例であり、最終的にカラー信号が得られれば、どのような処理を行ってもよい。例えば、以下の処理によってカラー信号を得てもよい。上記式25はkRs=S2a−kSaに、式27はkBs=S2d−kSavに書き替えることができる。kRs、kBsは、それぞれ入射光のR成分、B成分を表すことから、式24で表されるSavを輝度信号とし、(S2a−kSav)と(S2d−kSav)とを色差信号とすることができる。画像信号生成部15は、光電変換信号S2a〜S2dから、これらの輝度信号および色差信号を生成し、それらをRGB変換することにより、カラー信号を得ることも可能である。
【0100】
なお、撮像素子10の基本構造は
図7A〜7Fに示す構成に限られるものではない。例えば、分光要素1aと分光要素1bとが入れ替わった構成で配置されていても本実施形態の効果に変わりはない。また、分光要素1a、1bの配置や構造に関して、微妙なずれや傾きを持たせたが、それはあくまで特定の画素に特定の色を集めるためであり、そのような構成に限定されない。例えば空間的にRGBに分光する分光要素があれば、それを1行1列目の画素周辺に配置しR光のみを集光させ、2行2列目の画素周辺に配置しB光のみを集光させることも可能である。そうすれば、上記実施形態で示したカラー化と同様な効果を得ることができる。
【0101】
以上の説明では、分光要素として、2つの部材の屈折率差を利用して分光する光学素子を用いているが、分光要素は、各光感知セルに所望の色成分の光を入射できればどのようなものであってもよい。例えば、分光要素としてマイクロプリズムやダイクロイックミラーを用いてもよい。また、異なる種類の分光要素を組み合わせて用いることも可能である。
【0102】
さらに、上記の各実施形態では、x方向およびy方向の両方について、分光が行われるが、このような構成に限定されない。例えば、x方向またはy方向のいずれか一方に関してのみ分光が行われる構成であってもよい。具体的には、
図2B、2C、
図3B、3C、
図7B、7Cに示される水平方向の分光のみ、または、
図2D、2E、
図3D、3E、
図7D、7Eに示される垂直方向の分光のみが行われるように分光要素アレイ100が構成されていてもよい。そのような構成例を
図9A〜9Cに示す。
【0103】
図9Aは、水平方向の分光のみが行われるように構成された撮像素子の基本構成例を示す図である。
図9Bは、
図9AにおけるAA’線断面図であり、
図9Cは、
図9AにおけるBB’線断面図である。図示されるように、この構成例では、第1の種類の分光要素1aは、第1の光感知セル2aと第2の光感知セル2bとの境界に配置される。分光要素1aは、第1の光感知セル2aおよび第2の光感知セル2bの各々のセル入射光に含まれる第1の色成分の光の一部(強度kC1)を第1の光感知セル2aに入射させ、その補色光(強度kC1^)を第2の光感知セル2bに入射させるように構成されている。一方、第2の種類の分光要素1bは、第3の光感知セル2cと第4の光感知セル2dとの境界に配置される。分光要素1bは、第3の光感知セル2cおよび第4の光感知セル2dの各々のセル入射光に含まれる第2の色成分の光の一部(強度kC2)を第4の光感知セル2dに入射させ、その補色光(強度kC2^)を第3の光感知セル2cに入射させるように構成されている。
【0104】
以上のような簡単な構成であっても、第1の色成分の光は第1の光感知セル2aに集中し、第2の色成分の光は第4の光感知セル2dに集中するため、色信号C1s、C2s、C3sを得ることができる。具体的には、4つの光感知セルの信号の平均値Savに(1−k)を乗じてW’sを求め、W’sを第1および第2光電変換信号S2a、S2dから減ずることにより、色信号C1s、C2sを得ることができる。色信号C1s、C2sが得られれば、Sav−C1s−C2sを計算することにより、色信号C3sも得ることができる。