(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997166
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】不安モニタリング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
A61B5/16
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-534415(P2013-534415)
(86)(22)【出願日】2011年10月12日
(65)【公表番号】特表2014-501546(P2014-501546A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】IB2011054496
(87)【国際公開番号】WO2012052880
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年9月24日
(31)【優先権主張番号】10188038.3
(32)【優先日】2010年10月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ファン エルスウェイク ジェイス アントニウス フランシスクス
(72)【発明者】
【氏名】デゾー ナタリー マガリ ダニエール
(72)【発明者】
【氏名】テイス ティム ヨハネス ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ジリーズ ミュレイ フルトン
(72)【発明者】
【氏名】フォト ヨーゲン
【審査官】
姫島 あや乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−275287(JP,A)
【文献】
特開2007−283095(JP,A)
【文献】
特表2006−510451(JP,A)
【文献】
特表2003−534864(JP,A)
【文献】
特表2010−518914(JP,A)
【文献】
特開2000−275248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61B 5/00
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタリングされるべき患者のデータを取得するプローブモジュールであって、唾液コルチゾールレベル又は血液コルチゾールレベルを測定する唾液コルチゾールアッセイを含む、プローブモジュールと、
前記取得されたデータに基づいて患者の不安状態を決定する評価モジュールであって、前記唾液コルチゾールレベル又は血液コルチゾールレベルに基づいて前記患者の状態を決定する、評価モジュールと、
前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするインジケータモジュールとを有し、
前記評価モジュールが、前記不安状態をフィードバックするように前記インジケータモジュールを制御するのにスタッフ供給力を考慮に入れる、患者モニタリングシステム。
【請求項2】
モニタリングされるべき患者のデータを取得するプローブモジュールであって、唾液コルチゾールレベル又は血液コルチゾールレベルを測定する唾液コルチゾールアッセイを含む、プローブモジュールと、
前記取得されたデータに基づいて患者の不安状態を決定する評価モジュールであって、前記唾液コルチゾールレベル又は血液コルチゾールレベルに基づいて前記患者の状態を決定する、評価モジュールと、
前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするインジケータモジュールとを有し、
前記プローブモジュールが、前記患者に投与されるように作成される放射性トレーサの放射線を測定する機能を持ち、
前記評価モジュールが、
前記測定された放射線レベルを受信し、
前記測定された放射線レベル及び前記患者の不安状態に基づいて前記患者に前記放射性トレーサを投与する最適な瞬間を決定する、患者モニタリングシステム。
【請求項3】
モニタリングされるべき患者のデータを取得するプローブモジュールであって、唾液コルチゾールレベル又は血液コルチゾールレベルを測定する唾液コルチゾールアッセイを含む、プローブモジュールと、
前記取得されたデータに基づいて患者の不安状態を決定する評価モジュールであって、前記唾液コルチゾールレベル又は血液コルチゾールレベルに基づいて前記患者の状態を決定する、評価モジュールと、
前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするインジケータモジュールとを有し、
前記プローブモジュールが、前記患者に投与された放射性トレーサの放射線を測定する機能を持ち、
前記評価ユニットが、前記患者の不安状態及び前記測定された放射線のレベルに基づいて担当スタッフにフィードバックするように前記インジケータモジュールを制御する、患者モニタリングシステム。
【請求項4】
前記プローブモジュールが、一次データを取得し、オプションとして前記患者の追加データを取得し、
前記評価モジュールが、
前記一次データから前記患者の不安状態の一次評価を行い、オプションとして前記追加データに基づいて前記患者の不安状態の微細評価を行い、
前記一次評価に基づいて前記追加データを取得し、前記微細評価に参加させるように前記プローブモジュールを制御する、請求項1乃至3に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項5】
前記評価モジュールが、自己学習機能を含む、請求項1乃至3に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項6】
前記評価モジュールが、患者基準データにアクセスし、前記患者基準データを考慮に入れて前記患者の状態を評価する、請求項1乃至3に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項7】
前記プローブモジュールが、前記患者をモニタリングするカメラと、前記カメラにより取得された画像情報に基づいて前記患者の不安状態を評価する画像評価モジュールとを含む、請求項1乃至3に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項8】
前記プローブモジュールが、生理学的センサと、前記生理学的センサにより取得された生理学的データに基づいて前記患者の不安状態を評価する生理学評価モジュールとを含む、請求項1乃至3に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項9】
前記プローブモジュールが、前記患者にアンケートを提示し、前記アンケートに対する応答を受信する、請求項1乃至3に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項10】
患者モニタリングシステムの作動方法において、制御部が、
患者の唾液又は血液におけるコルチゾールを測定するコルチゾールアッセイを用いて得られたデータを含む、モニタリングされるべき患者のデータを取得するステップと、
前記取得されたデータに基づき、患者の不安状態を決定するステップと、
前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするよう制御するステップとを有し、
前記フィードバックするよう制御するステップが、スタッフ供給力を考慮に入れる、患者モニタリングシステムの作動方法。
【請求項11】
患者モニタリングシステムの作動方法において、制御部が、
患者の唾液又は血液におけるコルチゾールを測定するコルチゾールアッセイを用いて得られたデータを含む、モニタリングされるべき患者のデータを取得するステップと、
前記取得されたデータに基づき、患者の不安状態を決定するステップと、
前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするよう制御するステップと、
前記患者に投与されるように作成される放射性トレーサの放射線を測定するよう制御するステップと、
前記測定された放射線レベル及び前記患者の不安状態に基づいて前記患者に前記放射性トレーサを投与する最適な瞬間を決定するステップとを有する患者モニタリングシステムの作動方法。
【請求項12】
患者モニタリングシステムの作動方法において、制御部が、
患者の唾液又は血液におけるコルチゾールを測定するコルチゾールアッセイを用いて得られたデータを含む、モニタリングされるべき患者のデータを取得するステップと、
前記取得されたデータに基づき、患者の不安状態を決定するステップと、
前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするよう制御するステップと、
前記患者に投与された放射性トレーサの放射線を測定するよう制御するステップとを有し、
前記フィードバックするよう制御するステップが、前記患者の不安状態及び前記測定された放射線のレベルに基づいて行われる、患者モニタリングシステムの作動方法。
【請求項13】
患者の唾液又は血液におけるコルチゾールを含む、モニタリングされるべき患者のデータを取得する命令と、
患者の不安状態を決定し、前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするよう制御する命令とを含み、
前記フィードバックするよう制御する命令が、スタッフ供給力を考慮に入れる、コンピュータプログラム。
【請求項14】
患者の唾液又は血液におけるコルチゾールを含む、モニタリングされるべき患者のデータを取得する命令と、
患者の不安状態を決定し、前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするよう制御する命令と、
前記患者に投与されるように作成される放射性トレーサの放射線を測定するよう制御する命令と、
前記測定された放射線レベル及び前記患者の不安状態に基づいて前記患者に前記放射性トレーサを投与する最適な瞬間を決定する命令とを含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
患者の唾液又は血液におけるコルチゾールを含む、モニタリングされるべき患者のデータを取得する命令と、
患者の不安状態を決定し、前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするよう制御する命令と、
前記患者に投与された放射性トレーサの放射線を測定するよう制御する命令とを含み、
前記フィードバックするよう制御する命令が、前記患者の不安状態及び前記測定された放射線のレベルに基づいて行われる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査されるべき患者のストレス又は不安を評価する機能を持つ患者モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような患者モニタリングシステムは、Artificial Intelligence in Medicine 36(2006)159-176におけるM. Nilsson他による論文'Clinical decision - support for diagnosis stress-related disorders by applying psychophysiological medical knowledge to an instance -based learning system'から既知である。この既知の患者モニタリングシステムは、心拍パターンを分類する。分類された心拍パターンは、患者がストレス関連障害に悩まされているかどうかを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、効率的かつ効果的に検査されるべき患者を安心させることである。特に、本発明は、患者がX線検査システム、磁気共鳴検査システム、PETシステム、コンピュータ断層撮影システム又はPET/MRIシステム若しくはPET/CTシステムのようなハイブリッド撮像システムのような撮像モダリティにおいて検査を受ける必要がある場合に、前記患者の不安レベルを低減するように対処する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、
‐モニタリングされるべき患者のデータを取得するプローブモジュール(10)と、
‐前記取得されたデータに基づいて患者の不安状態を決定する評価モジュール(20)と、
‐前記決定された不安状態を担当スタッフにフィードバックするインジケータモジュール(30)と、
を有する本発明の患者モニタリングシステムにより達成される。
【0005】
前記決定された患者の不安状態に基づいて、前記担当スタッフは通知される。特に、前記不安状態は、定量的な尺度における前記患者の不安レベルを含む。結果的に、前記スタッフは、効率的かつ効果的に患者を安心させるように不安な患者にアプローチすることができる。したがって、前記スタッフは、必要かつ有益である場合に前記患者モニタリングシステムからのフィードバクに基づいて患者を安心させることを可能にされる。特に、本発明は、スタッフがあまり不安ではない患者にアプローチし、前記患者が不要なスタッフの配慮のせいでより不安になることを防ぐ。更に、本発明は、病院スタッフの放射線被ばくを低減し、したがって、病院スタッフが不必要に(例えば核医学(PET)検査において)放射線にさらされることを防ぐ。
【0006】
本発明は、患者の不安レベルの評価がスタッフのメンバと前記患者との間の対人的相互作用により影響を受けないので、より信頼できる評価を可能にする。前記スタッフの配慮は、前記スタッフに対するフィードバックが対象の患者から取得されたデータに基づくので、個別の患者に対して正確にカスタマイズされる。このようにして、客観的により不安な患者に対してスタッフにより費やされる追加の時間は、実際の医療行為中により不安の影響を受けやすい患者に対して要求されるより少ない時間において利益をもたらす。
【0007】
このような医療行為の例は、例えば放射性トレーサを必要とする陽電子放出断層撮影又は磁気共鳴撮像による撮像検査である。これらは、不安な患者の落ち着きのなさのために繰り返されることを必要とすることが避けられるべきである高価な撮像行為である。本発明の患者モニタリングシステムの他の利点は、放射性トレーサを含む医療行為における放射線に対する病院スタッフの被ばく時間を最小化することを助けることができることである。最後に、本発明は、患者の健康の全体的な向上に寄与する、より個人化された患者ケアを提供する。
【0008】
本発明は、異なるタイプの医療行為及び異なる患者の幅広い不安レベルを考慮に入れる。特に、個別の患者が、X線撮像、コンピュータ断層撮影又は磁気共鳴撮像に基づく撮像検査行為のような様々なタイプの医療行為に対して異なって反応しうる。
【0009】
更に、本発明は、異なる不安プロファイル、対処様式及び不安レベルに対して異なる不安管理ストラテジを可能にするので、病院又はポイントオブケアのようなヘルスケア施設における不安管理プロトコルの公的な実施を容易化する。本発明は、患者の必要性に対してより良くカスタマイズされる決定を生成し、特定の時間に関与する医師又は看護師の個別の主観的な不安評価から独立な追加の配慮を患者に与えることができる。したがって、患者がアプローチされる又はガイドされる様式は、大きく変化することができる。
【0010】
本発明の推薦又は評価は、所定の部門における患者‐スタッフ関係において、より多くの調和を作る。一度患者プロファイルが決定されると、これは、例えば同時タイムスロットにおける不安な患者の計画を防ぐことにより、再受診の計画において効率を向上させるのを助けるために記憶されることができる。前記スタッフに対するフィードバックは、異なる形で提供されうる。例えば、前記患者モニタリングシステムは、患者の不安レベルが表示されることができるディスプレイを持つユーザインタフェースを含む。前記患者の不安レベルを表示する魅力的な様式は、'交通信号'である。複数の患者がモニタリングされる又は看護師が移動する行為に対して、携帯型表示装置(例えば"iPhone"又は"iPad")が、好適なインタフェースであることができる。
【0011】
本発明のこれら及び他の態様は、従属請求項において規定される実施例を参照して更に説明される。
【0012】
本発明の患者モニタリングシステムの一態様において、前記プローブモジュールは、前記患者の不安レベルの一次評価を生成するように前記評価モジュールにより使用される一次データを取得する。好ましくは、前記評価された不安レベルに対する信頼性スコアも計算される。前記信頼性スコアは、標準偏差又は変分の係数のような統計的拡張尺度であることができる。
【0013】
上記の単純な統計的拡張尺度の代わりに、より洗練されたアルゴリズムが、条件付き又はベイズ確率、決定樹等のような確率及び/又は信頼性スコアを決定するように複数のソースからの情報を結合するのに使用されうる。
【0014】
前記患者の不安レベルの一次評価に基づいて、オプションとして、前記計算された信頼範囲を考慮に入れる場合、追加のデータが、取得され、前記患者の不安レベルのより微細な評価を行うのに使用されうる。特に、本発明のこの態様において、前記一次データ取得は、前記患者及び/又は前記スタッフに対してあまり押しつけがましくない。したがって、より押しつけがましい追加のデータ取得が、そうする本当の必要性が存在する場合にのみアクティブにされることが達成される。換言すると、より押しつけがましいデータ取得は、前記患者の不安レベルが、前記一次データに基づいて信頼できる形で評価されることができ、前記患者のより押しつけがましくないアプローチを要求するだけである場合に避けられる。
【0015】
本発明の他の態様において、本発明の患者モニタリングシステムは、自己学習機能を設けられる。この態様において、前記患者モニタリングシステムは、前記スタッフが前記評価された不安レベルを確かめる又は無効にすることができるユーザインタフェースを設けられる。前記スタッフからのこの入力は、記憶され、前記取得されたデータと前記評価されるべき不安レベルとの間の関係を更新するのに使用される。この場合、前記更新された関係は、記憶され、未来の使用に対して前記評価モジュールに対して利用可能にされる。この自己学習態様は、個別の患者に割り当てられうるが、より幅広いグループからの患者の不安の評価にも使用されることができる。例えば、時間とともに、第1のPETスキャンにおけるリンパ腫患者に対する不安レベルが典型的にはフォローアップスキャンにおけるものより大幅に高いことが、明らかになりうる。
【0016】
本発明の他の態様において、前記評価モジュールは、所定の不安レベルに関連付けられた記憶された患者基準データを設けられる、又は前記記憶された患者基準データに対するアクセスを設けられる。前記所定の不安レベルに関連付けられる基準データセット内の複数のパラメータは、前記患者の不安レベルのより信頼できる推定値を生じる。基準データの例は、患者の性別、年齢、喫煙行動、教育レベル、又は特性不安若しくは好適な対処様式のような性格特性を含むデモグラフィックプロファイルである。
【0017】
本発明の他の態様において、前記プローブモジュールは、前記患者の画像情報を取得するカメラシステムを設けられる。特に、前記カメラシステムは、複数の患者を同時に、又は医療行為を受ける前に待合室にいる間に撮像するように構成されることができる。前記画像情報から、心拍数、呼吸数、動き、顔の表情、瞳孔サイズ(直径)のような、前記撮像された患者の複数のパラメータが、得られることができる。画像ベースの呼吸モニタリングは、欧州特許出願10160571.5(PH014905)において述べられている。これらのパラメータの1つ又は複数を基準分布と比較することにより、前記患者の不安レベルが、評価されることができる。
【0018】
本発明の他の態様において、前記プローブモジュールは、生理学的センサを設けられる。前記評価モジュールは、前記生理学的センサにより取得された生理学的データから前記患者の不安レベルを評価する。例えば、前記生理学的センサは、前記患者の皮膚の温度を測定する温度センサ、又は前記患者の皮膚の導電性を測定する導電性センサ(オームメータ)でありうる。
【0019】
本発明の次の態様において、前記プローブモジュールは、前記患者にアンケートを提示する。典型的なアンケートの例は、"落ち着いている"、"安心している"、"緊張している"のような20の質問からなるスピールバーガーの状態不安インベントリである。前記質問の各々は、1(全然そうではない)から5(非常にそうである)までの離散的な5段階評価(リッカート尺度と称される)で応答されなければならない。
【0020】
前記評価モジュールは、前記アンケートに対する応答から前記不安レベルを算出する。ほとんどの心理学的アンケートに対して、基準表が、複数の基準人口(例えば男性、高齢、学生等)に対して公開されている。
【0021】
本発明の特定の態様において、前記プローブモジュールは、前記患者の唾液内のコルチゾールを測定するコルチゾールアッセイを含む。代替的には、血液コルチゾールレベルが、使用されうる。心理学的ストレスが、コルチゾールレベルの後の上昇を持つコルチコトロピン放出ホルモン及び副腎皮質刺激ホルモンの放出を生じることは、Kirschbaum, C., & Hellhammer, D. (1994) 'Salivary cortisol in psychoneuroendocrine research:Recent developments and applications' in Psychoneuroendocrinology, 19(1994)313-333から既知である。
【0022】
本発明の他の態様において、前記評価モジュールは、前記患者の不安状態に関するフィードバックをスタッフに提供するのにスタッフ供給力を考慮に入れる。この実施において、前記評価モジュールは、例えば計画されたスタッフ勤務スケジュール又はスタッフの現在の活動の情報に対するアクセスを持つ。例えば、前記評価モジュールは、より少ないスタッフが供給可能である場合にフィードバックを低下し、より高い不安レベルを示す患者に限定されたフィードバックを提供する。このようにして、本発明の患者モニタリングシステムは、スタッフの配置の効率を向上させる。特に、スタッフは、更に忙しい場合、あまり不安ではない患者に付き添い、安心させることができるスタッフが存在しないので、あまり不安ではない患者に関するフィードバックをより少なく提供される。他方で、より多くのスタッフが供給可能であると、前記評価モジュールは、あまり不安でない患者に関するフィードバックをも提供するように前記インジケータモジュールを制御する。
【0023】
他の態様において、本発明は、核医学の分野において、特にPET(陽電子放出断層撮影)と併せて、応用される。この実施例において、前記プローブモジュールは、検査されるべき患者に投与されるように作成された放射性トレーサ造影剤の放射線を測定する更なる機能を持つ。前記放射線は、半導体放射線センサ又はガイガーカウンタ型の装置で測定されることができる。放射線の測定されたレベルは、前記評価モジュールに与えられる。前記評価モジュールは、例えば注射又は点滴により、放射性トレーサ造影剤を投与する最適な瞬間及び前記患者の不安状態を決定する。核医学における本発明の応用の目的は、臨床的ワークフローを向上させることである。核医学において、マッサージ療法のようなストレスを低減させる従来の慣習は、放射性造影剤の摂取を悪化させるリスクのために従来は使用されないことが観察される。核医学において、前記ワークフローは、前記放射性トレーサ造影剤の半減期による要件により支配されている。例えば、放射性
18Fは、約110分のかなり短い半減期を持ち、実際のPETスキャンが実行される少し前に例えばフルオロデオキシグルコース(
18FDG)の形で前記患者に投与される必要がある。本発明は、放射線が比較的高い間に、前記患者が比較的リラックスしているときに最適に前記放射性造影剤を与えることが可能である。患者不安(又はストレス)レベルが低いので、取得される画像データに対する患者ストレスによる摂動が避けられ、診断画質が向上される。特に、前記患者の不安レベルが低いので、前記画像データ内の腫瘍‐背景放射線が高く、前記画像における偽陽性のレベルは低い。特に、前記検査されるべき患者の不安レベルが低いので、がん細胞を含みえないが例えば筋肉活動による異常代謝亢進(hypermetabolistic)領域は、避けられる。他方で、前記放射性造影剤を投与する瞬間が最適化される場合、放射線に対する過剰な被ばくが、診断画質に負の影響を与えることなしに避けられることができる。したがって、本発明は、放射性造影剤を投与する瞬間を最適化し、造影剤の摂取中に及び画像データの実際の取得中に、例えばPETスキャン中に前記患者の不安レベルを低減することを可能にする。これらの効果は、担当スタッフがより効率的に配置され、放射線に対してより少なくさらされる改良された臨床的ワークフローと一緒に更に達成される。ワークフローは、測定される放射線と一緒にスタッフ供給力を考慮に入れることにより更に向上される。本発明の実際的な例において、前記プローブモジュールは、前記患者により着用されるブレスレットとして形成される。前記ブレスレット又はリストバンドは、前記患者のデータを取得するセンサ及び放射線センサの両方を組み込み、前記患者のデータから不安状態が決定される。例えば、半導体放射線センサ及び皮膚導電率を測定するセンサが、このようなブレスレットに組み込まれることができる。前記ブレスレットは、前記患者に対して押しつけがましくなく、前記患者の不安を本質的に増加させない。
【0024】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して及び添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ポイントオブケアにおいて実施される患者モニタリングの図表示を示す。
【
図2】核医学において使用される本発明の他の例を概略的に描く。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、診療所又は撮像モダリティ室のようなポイントオブケアにおいて実施される患者モニタリングの図表示を示す。本発明の患者モニタリングシステム1は、検査されるべき患者からデータを取得するプローブモジュール10を有する。
図1の例において、2つのカメラ11が、前記患者の心拍による動き、呼吸パターン、動き、瞳孔サイズ(直径)及び顔の表情を撮像するように設けられる。これらの画像の画像分析から、前記患者の不安レベルが評価される。このために、前記評価モジュールは、通常はソフトウェアで実施される画像分析及び評価機能を設けられる。
図1に示されるセットアップにおいて、待合室2内の二人の患者、患者A及び患者Bが、個別にモニタリングされることができる。前記患者の各々に対して、フォトプレチスモグラフィセンサ13が、前記患者の脈拍数を取得するように設けられる。更に、前記患者の各々に対するアンケートに対するアクセスを施すアンケートコンソール12が、設けられる。例えば状態不安アンケート又は特性不安アンケートが、使用されうる。前記アンケートコンソールは、これらのアンケートに対する前記患者の応答を出力する。第2段階において、対処様式又は特性不安のような関連する性格特性に関する情報を提供する"特性"アンケートが使用される。例は、病院不安及びうつ尺度、スピールバーガーの特性不安インベントリ及び対処動作選好調査である。
【0027】
プローブモジュール10により取得されるデータは、データ接続上で評価モジュール20に与えられる。前記プローブモジュールからのデータに基づいて、前記評価モジュールは、個別の患者に対する不安推定値を計算する。前記評価モジュールは、出力不安推定値を、例えば核個別の患者に対する'交通信号'の形式で、インジケータモジュール30に供給する。したがって、前記評価モジュールは、前記患者の不安レベルを評価し、前記評価を前記スタッフにフィードバックする。前記'交通信号'は、例えば評価モジュール20により生成される指示に応答して前記スタッフにより与えられることができるボタンの形式で、フィードバックオプションを設けられうる。前記スタッフのフィードバックは、前記評価モジュールの評価を承認する又は却下することでありうる。前記スタッフのフィードバックは、前記評価モジュールの自己学習機能により精度を向上させるように使用される。
【0028】
更に、評価モジュール20は、メモリユニット40内の記憶された基準データに対するアクセスを設けられる。前記メモリユニットは、前記患者の性別、年齢、検査のタイプ、受診の総数を含むデモグラフィックプロファイルを含む。
【0029】
前記評価モジュールは、複数の階層レベルにおいて前記患者の不安レベルを評価し、前記評価の階層レベルに基づいて追加のデータを実行するように前記プローブモジュールを制御する機能をも持つ。前記階層レベルは、例えば一次評価、及びそれぞれ一次及び追加のデータを要求する更に増加的に微細な評価を含む。例えば、すでに前記一次評価において、前記評価された不安レベルの信頼性スコアが計算され、これに基づいて次の階層レベルがアクティベートされる。これの一例において、患者は大人の男性である。第1の変数は、120拍/分において測定された心拍数である。前記評価システムは、ストレスを受けた男性に対する心拍数の確率分布関数を知っており、これによりストレス下の男性が120以下の心拍数を持つ確率が90%であると決定する。同様に、ストレス確率が、第2及び第3の変数(例えば呼吸数及び瞳孔サイズ)に対して計算される。これらの変数に対して、それぞれのストレス確率は、40%及び80%である。これは、信頼性インデックスとして26%の標準偏差を持つ70%の平均ストレス確率(すなわち赤信号)を生じる。
【0030】
増加する階層は、検査されるべき患者に対して増加する押しつけがましさレベルを持つ。次のレベルへの上昇を制御するために、前記患者モニタリングシステムは、制御バスを有し、前記制御バス上で、制御信号が、評価モジュール20からプローブモジュール10、特にカメラ、アンケートコンソール等のような前記プローブモジュールのデータ取得コンポーネントに転送される。前記評価モジュールは、現在のレベルにおける評価がプリセット閾値より低い信頼性レベルを持つ場合に、より高い階層レベルを始めるように構成される。
【0031】
核医学において応用される本発明の他の例は、
図2に概略的に描かれている。患者ストレスレベルは、早い段階で臨床医51に通信され、前記臨床医が患者リラクセーションのために適切なステップを取る(例えば、必要であると予測される場合に追加の時間をスケジュールする)のを助ける。次に、前記臨床医は、場合により技術52>53により支援されて、前記患者をリラックスさせることを目的とする。注射システムが、前記患者が十分にリラックスしていることに気が付くとすぐに、FDG記憶ユニットがトリガされる54。前記FDG記憶ユニットは、(所望の線量及び現在の放射線を与えられて)最適なFDG量を決定し、前記FDGを注射ユニット55に送信し、注射ユニット55は、前記FDGを患者56に注入する。