(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
[0002]本開示は、椎間板材料の除去に関する。更に詳細には、本発明は、椎間板に関連する材料(組織、軟骨など)の或る部分、又はすべての部分を除去する、例えば髄核摘出術(nucleotomy)を施術する方法及び電動装置に関する。
【0003】
[0003]脊椎は、種々ある構造体の中でもとりわけ、連続する椎体(椎骨)を含み、これらの椎体のうちの隣接する椎体は、椎間板によって支持され、分離される。健康な脊椎では、椎間板はこれらの椎体の間隔を保持し、脊椎全体に亘る体液の流れを促進し、椎体構造の間でクッションとして作用する。椎間板は普通、線維輪(annulus fibrosus)(又は「annulus(アニュラス)」)、髄核(nucleus pulposus)(又は、「nucleus(ニュークリアス)」)、及び対向する終板を含む。これらの終板は、軟骨に類似し、隣接する椎体を椎間板に取り付けるように機能する。髄核は、これらの終板の間に配置され、線維輪により外周を拘束される。
【0004】
[0004]椎間板は、本質的に弾力性に富み、壊れてしまう、又はずれてしまう。例えば、椎間板は、過度な動き、過度な体重、怪我、病気、及び/又は加齢によって徐々に進行する機能低下によって過度な応力を受けてしまう。椎間板損傷又は他の椎間板異常によって、深刻な背痛、及び身体障害が生じてしまい、多くの場合、慢性化し、治療が困難になる。例えば、線維輪は膨らむ、又は線維輪に亀裂ができる虞があり、この場合、膨らんだ髄核組織が脊椎神経を圧迫する(例えば、椎間板ヘルニア)。同様に、椎間板は時間の経過とともに変性して、椎間板腔が潰れてしまう。
【0005】
[0005]外科手術は、壊れた、又は外れた椎間板を修復するために行われてきた。これらの手術として、髄核摘出術又は椎間板切除術(discectomy)を挙げることができ、これらの手術では、椎間板の一部(例えば、髄核)又は全体を摘出する。固定(癒合)術は、認可されている別の手術法であり、この固定術では、脊椎の骨を固定して隣接する椎体の間の相対運動を制限する。固定術用装置(群)を挿入し/植え込むためには、この場合も同じように、特定の椎間板組織を除去する必要がある。同様に、椎間板減圧術/固定術(disc decompression/fusion procedures)では、線維輪に穴を開け、その後、場合によっては、椎間固定材料で埋め戻す前に、髄核組織を除去する必要がある。ごく最近、髄核置換用インプラントが開発されており、これらのインプラント製品の場合も、インプラントの適用前に椎間板組織(すなわち、髄核、及び/又は線維輪の一部又はすべて)を除去する必要がある。幾つかの症例では、軟骨を終板に隣接するように作製して、骨の成長、及び椎間固定材料の付着を促進すると有利である。
【0006】
[0006]正確な手術に関係なく、椎間板材料(群)を除去するための種々の手動器具が従来より、採用されている。これらの手動器具として、骨刀、外科用のみ、ギロチン式のカッターなどを挙げることができる。椎間板、繊細な周囲構造(例えば、神経)、及び広範囲の種類の切除対象材料に関連する外科手術部位の極めて限定された性質(すなわち、髄核組織がかなり柔らかいのに対し、線維輪組織は極めて頑丈である)によって、簡易手動器具に対する依存度が高まる可能性がある。有望となる可能性はあるが、手動器具の利用によって、手術が極めて長時間になってしまう可能性がある。多くの場合、幾つかの異なる手動器具は、所望の椎間板材料を除去するために、多数回に亘って外科手術部位に差し込み、外科手術部位から取り出す必要がある。これにより、脊椎に隣接する敏感な構造(血管及び神経)に損傷を与える機会が増えてしまう。手動器具はまた、外科手術部位を手術中及び手術後にクリーンな状態に保つために別体の洗浄及び吸引器具(群)を必要とする。更に、髄核摘出術のような特定の手術の場合、外科用手動器具は、外科医が、触感に頼って、確実に線維輪が損傷しないようにする必要がある。
【0007】
[0007]損傷し、かつ変性した椎間板から、非常に多くの患者にとって深刻な健康問題が生じる。多くの現在の治療法、及び将来の治療法では、髄核及び/又は他の椎間板組織を除去する必要がある。椎間板材料除去用手動器具は、使用するために非常に長い時間を要し、かつ多数の他の器具を必要とする。椎間板材料を切除する利用可能な電動器具は、終板を効果的に作製して骨の成長を促進し、椎間固定材料の付着を促進する機能を持っていない。従って、外科医は、電動器具を椎間板から取り出し、手動器具を挿入して、終板を作製する。器具が、外科手術部位の近傍の神経及び動脈の傍を通過するたびに、神経及び動脈を損傷する危険が高まる。椎間板腔内における、又は椎間板腔におけるこの繊細な材料除去操作を行うこれらの器具、及び関連する方法を改良することができれば、必ず大好評を博すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0026]本明細書において開示される原理による椎間板切除器具20の1つの実施形態を
図1及び
図2に示す。器具20は、外側管状アセンブリ22と内側管状アセンブリ24とを含む。外側管状アセンブリ22は、外側管状部材26と第1ハブアセンブリ28とを含む。同様に、内側管状アセンブリ24は、内側管状部材30(
図2から最も良く分かる)と第2ハブアセンブリ32とを含む。種々の構成部品に関する詳細は、以下に提供される。しかしながら、一般的な用語で表現すると、内側管状部材30は、外側管状部材26の内部に同軸に配置され、この場合、管状部材26、30を組み合わせて、体内組織材料切除ヘッド34(
図1)を画成する。使用状態では、器具20は電動ハンドピース(図示せず)に接続され、当該電動ハンドピースは、第2ハブアセンブリ32を、従って内側管状部材30を外側管状部材26に対して、振動しながら回転させて椎間板材料(図示せず)のせん断を切除ヘッド34で行う。更に、手動剥離具38を外側管状部材26の外側表面に配置する。当該剥離具38は、終板(図示せず)を作製するために有用である。
【0013】
[0027]外側管状部材26は、近位セグメント40、及び剥離具38を保持する遠位セグメント44を画成する細長本体である。更に、外側管状部材26は、遠位セグメント44から近位セグメント40に延在する中心通路46(
図2)を画成する。特に
図2を参照すると、近位セグメント40は、第1ハブアセンブリ28に接続されるように適合させ、かつ長手軸Aを画成する。例えば、近位セグメント40は、近位開口端部47及び半径方向開口部48を形成し、これらの近位開口端部47及び半径方向開口部48は共に、中心通路46に通じている。以下に説明するように、開口端部47によって、内側管状部材30を中心通路46内に容易に収容することができるのに対し、開口部48によって、中心通路46と、第1ハブアセンブリ28の対応する部品との間の流体接続を確立することができる。別の構成として、近位セグメント40は、多種多様な他の形態を採ることができる。
【0014】
[0028]別の構成では、外側管状部材26は、1つ以上の湾曲部を、近位セグメント40と遠位セグメント44との間の領域に画成することができる。例えば、湾曲領域が、米国特許出願公開第2007/0149975A1号に開示されており、この特許文献の内容は、本明細書において参照されることにより、当該内容全体が本明細書に組み込まれる。この実施形態では、内側管状部材30は、外側管状部材26の湾曲部の形状に沿って変化する。
【0015】
[0029]遠位セグメント44は、1つの実施形態では、中心通路46を閉鎖する遠位端52で終端する。更に、遠位セグメント44は、閉鎖遠位端52に近接する切除窓54を形成する。以下に更に詳細に説明するように、閉鎖遠位端52が、内側管状部材30のカット面を遠位端で遮蔽するように機能するのに対し、切除窓54は当該カット面を露出させる。従って、1つの実施形態では、閉鎖遠位端52の外部表面は湾曲している。剥離具38は、遠位セグメント44の外部表面に設けられる擦過面を画成し、外科医が終板を作製して、骨の成長、及び椎間固定材料の付着を促進し易くする。
【0016】
[0030]
図3A及び
図3Bを参照するに、切除窓54は、中心通路46に通じている、又は中心通路46に流体接続され、内周縁56によって画成される。外側管状部材26の長手方向延出部に関して、内周縁56は、対向する第1及び第2長辺部58、60、及び対向する側方端部62、64を略画成する。これらの空間的な表示を念頭に置いて、1つの実施形態では、内周縁56は、複数の歯66を長辺部58、60の各長辺部に沿って形成する。これらの歯66は、多種多様な形態を採ることができるが、1つの実施形態では、辺部58、60に関して対称に配置される。1つの実施形態では、辺部58、60の各辺部は、少なくとも4個の歯66を含む、又は形成することにより、椎間板材料の除去を効果的に促進する。これらの歯66は、極めて鋭利に形成され(例えば、約0.005インチの先端幅又は先端厚さ)、外側管状部材26の残りの部分の曲率に沿って周方向に包み込む、又は湾曲する。1つの実施形態では、これらの歯66のうちの隣接する歯の先端間の間隔(対応する辺部58又は60に沿った)は、0.04〜0.06インチの範囲であり、更に好ましくは約0.05インチ(±0.002インチ)である。更に、1つの実施形態では、側方端部62、64は同様に鋭利である。他の寸法及び/又は構成を用いることができるが、上記選択は、椎間板に関連する異種材料構造の切除に大いに資するという驚くべき効果を発揮することが判明している。
【0017】
[0031]剥離具38は、遠位セグメント44の外側表面から延出して、擦過具38の遠位面68及び近位面69により形成される環状擦過面67を画成する。遠位面68が、外側管状部材26の外周面から略直角に延出しているのに対し、近位面69は、遠位端52に向かって傾斜している。剥離具38は、従って遠位面68及び/又は近位面69は、遠位セグメント44の外側表面から、遠位セグメント44に対して種々の角度で、かつ種々の位置で延出することができる。例えば、剥離具38(遠位面68及び/又は近位面69を含む)は、遠位セグメント44の外側表面に対して斜めの角度で延出することができる。更に、剥離具38は、遠位端52から直接、遠位端52に対して斜めの角度で、又は遠位セグメント44の延出部の方向と平行に延出することができる。いずれにしても、遠位面68及び近位面69は収束して擦過面67を形成し、この擦過面67は、以下に説明するように、椎間板材料を終板から除去するために有用である。
【0018】
[0032]
図2を参照するに、外側管状部材26は、内側管状部材30を高い回転速度/振動速度(例えば、5,000RPMの振動速度)で支持することができる硬化処理された安全な外科手術材料により形成されることが好ましい。従って、例えば外側管状部材26は、ステンレス鋼304により形成されるが、非常に多くの種類の材料を等しく許容することができる。それとは関係なく、中心通路46は、内側管状部材30を同軸に収容して、内側管状部材30が通路46の内部で回転することができるようなサイズに形成される。1つの実施形態では、かつ以下に説明するように、中心通路46の直径は、洗浄液通路を設けることができるように内側管状部材30の外径よりも僅かに大きくする。
【0019】
[0033]第1ハブアセンブリ28は、外側管状部材26の近位セグメント40を収容し、保持するように適合させ、1つの実施形態では、洗浄カラー(irrigation collar)68と、外側ハブ70と内側ハブ72とを含む。洗浄カラー68は洗浄ポート74を形成し、以下に説明するように、外側管状部材26の中心通路46に流入し、中心通路46から流出する洗浄流体の流路を、最終的な組み付けが完了すると形成するように構成される。外側ハブ70及び内側ハブ72は、洗浄カラー68を外側管状部材26に固く固定するように適合させるので、多種多様な形態を採ることができる。しかしながら、1つの実施形態では、外側ハブ70は、洗浄カラー68を覆うように固く固定されるだけでなく、外側管状部材26にも固く固定されるようなサイズに形成される。これとは異なり、内側ハブ72は、洗浄カラー68と外側管状部材26との間に固く固定されるようなサイズに形成され、1つの実施形態では、長手方向通路76及び半径方向開口部77を形成する。長手方向通路76が、内側ハブ72全体を貫通して延在しているのに対し、半径方向開口部77は、最終的な組み付けが完了すると、ポート74(及び、外側管状部材26の半径方向開口部48)に流体接続されるようにサイズ形成され、かつ配置される。最終的な完全密閉状態を更に高めるために、第1ハブアセンブリ28は更に、1つの実施形態では、シール群(例えば、O−リング群)78とシールハブ79とを含む。それとは関係なく、第1ハブアセンブリ28は、洗浄液を洗浄液供給源(図示せず)から切除ヘッド34に洗浄ポート74及び通路46を経て供給する機構を形成する。洗浄流体は、外科手術部位を「クリーンな状態にし」、内側管状部材30と外側管状部材26との間の潤滑作用を向上させ、外科手術部位からの材料の排出/吸引(以下に説明する)を、切除ヘッド34の「目詰まり」を除去することにより容易にするように機能する。別の構成として、第1ハブアセンブリ28は、多種多様な他の形態を採ることができる。
【0020】
[0034]内側管状部材30は、外側管状部材26と同様であり、近位領域80及び遠位領域84を画成する細長管体である。更に、内側管状部材30は、近位領域80から遠位領域84に延在する中心管腔86を画成する。この場合も同じように、内側管状部材30は、外側管状部材26の内部に同軸に収容されるようなサイズに形成され、この場合、近位領域80は第2ハブ32に取り付けられるように適合させる。内側管状部材30は、高速(例えば、約5,000RPMの振動速度)で回転するときの構造的完全性を保持することができる全体構造を有する。
【0021】
[0035]遠位領域84は切除用先端90を形成する。
図3Cを更に参照するに、切除用先端90は、マウス部94の周りの周縁に沿って延在するように形成される複数の歯92を含む。これらの歯92は、前に説明した歯66(
図3A及び
図3B)に極めて類似しており、マウス部94の対向辺部に沿って対称に配置される(
図3Cには、これらの歯92からなる一方の集合だけを見ることができることを理解されたい)。従って、1つの実施形態では、これらの歯92のうちの少なくとも4本の歯が、マウス部94の各辺部に沿って形成され、極めて鋭利になっている。更に、1つの実施形態では、これらの歯92は、最終的な組み付けが完了すると、これらの歯66と空間的に一致するようにサイズ形成され、かつ配置される。従って、1つの実施形態では、これらの歯92のうちの隣接する歯は、約0.04〜0.06インチ、更に好ましくは約0.05インチ(±0.002インチ)の先端間の間隔を有する。
【0022】
[0036]マウス部94は、管腔86に通じているので、管腔86に流体接続される。以下に更に詳細に説明するように、この構成によって、マウス部94から管腔86を経て延びる吸引通路を形成することができる。この点に関して、管腔86/マウス部94を経て吸引される材料は、第2ハブアセンブリ32に接続される適切なポートを通って取り出すことができる。1つの実施形態では、遠位領域84は、約3〜8mm、更に好ましくは4.5mmの比較的大きい外径を有することにより、使用中の管腔86の詰まりを低減する。別の構成として、他の寸法を用いることができる。
【0023】
[0037]正確な構成に関係なく、1つの実施形態では、外側管状部材26の殆どの部分の内径が少なくとも、内側管状部材30の外径よりも僅かに大きく、
図3Dに示すように、最終的な組み付けが完了すると、環状の隙間100がこれらの2つの構成部品26、30の間に形成されるようにする。
図3Dは、内側管状部材30が全体として、外側管状部材26よりも中心に位置しているものとして示しているが、実際の局面では、内側管状部材30は、外側管状部材26に種々の半径方向位置で接触する可能性があることを理解されたい。この考え方に沿って、1つの実施形態では、内側管状部材30の切除用先端90(
図3C)は、外側管状部材26の内径に、より近似する値で一致する内側管状部材30の残りの部分の外径よりも大きい直径を有する(例えば、切除用先端90を個別に形成し、内側管状部材30の残りの部分に組み付けることにより)ことができる。それとは関係なく、隙間100のサイズは、
図3Dでは、説明を分かり易くするために誇張されている。
図1及び
図2を更に参照するに、環状隙間100は、洗浄ポート74から切除窓54にまで延びて、内部洗浄液通路又は機構を形成し、この内部洗浄液通路又は機構により、洗浄流体を洗浄ポート74から切除窓54(従って切除ヘッド34)に、環状隙間100を経て供給することができる。別の構成として、別体の洗浄管(図示せず)を、外側管状部材26の外面に沿って配設する(又は、外面と一体的に形成する)ことができる。
【0024】
[0038]特に、
図2を参照するに、第2ハブアセンブリ32は、内側管状部材30に取り付けられるようなサイズに形成され、1つの実施形態では、回転ハブ102とバネ104とを含む。回転ハブ102は、この技術分野で公知の電動ハンドピース(図示せず)に結合されるように適合させる。バネ104によって、電動ハンドピースとの解除可能な係合が容易になり、別の実施形態では、バネ104は無くすことができる。このためには、電動ハンドピースは多種多様な形態を採ることができ、電気的に駆動する、又はバッテリで駆動する、或いは空圧で駆動することができる。
【0025】
[0039]器具20の組み付けでは、第1ハブアセンブリ28を外側管状部材26に固く固定する。1つの実施形態では、内側ハブ72を、近位セグメント40を覆うように取り付けて、半径方向開口部77が半径方向開口部48に位置合わせされるようにする、又はそれ以外には、半径方向開口部48に流体接続されるようにする。外側管状部材26への内側ハブ72の取り付けを確実に行うために、接着剤(例えば、ロックタイト(Loctite)社製接着剤)を用いることができる。洗浄カラー68を、内側ハブ72を覆うように取り付けて、ポート74が半径方向開口部77(従って、半径方向開口部48)に位置合わせされるようにする、又はそれ以外には、半径方向開口部77に流体接続されるようにする。シール群78をポート74/半径方向開口部77の境界部の両側に配設して、流体密状態を維持する。外側ハブ70を、外側管状部材26及び洗浄カラー68を覆うように組み付ける、又は形成する。必要に応じて、接着剤(例えば、ロックタイト社製接着剤)を用いて、外側ハブ70を洗浄カラー68に接合させることができる。
【0026】
[0040]第2ハブアセンブリ32は、内側管状部材30の近位領域80に取り付けられる。接着剤を用いて、回転ハブ102を内側管状部材30に接合させることができる。内側管状部材30は、内側ハブ72及び外側管状部材26に遠位方向に挿通摺動させて、又は内側ハブ72及び外側管状部材26に遠位方向に挿通挿入して、切除用先端90が切除窓54に位置する、又は切除窓54の内部に位置するようにする。このためには、シールハブ79を内側管状部材30の外面に密着係合させて、外側管状部材26の内部(例えば、隙間100(
図3D)の内部)の洗浄流体が、シールハブ79の近傍から流れ出ないようにする、又は漏洩しないようにする。
【0027】
[0041]最終的な組み付けが完了したときの切除ヘッド34を
図4に更に詳細に示す。具体的には、切除用先端90は、切除窓54から覗いている。使用状態では、内側管状部材30は、外側管状部材26に対して回転振動するので、せん断作用が、切除用先端90の歯92と切除窓54の歯66との間に生じる。非常に多くの尖鋭歯を突設することにより、このせん断運動で材料を効果的に除去することができ、更には、このせん断運動からユーザは、制御された切除操作又はせん断操作を行う能力を得ることができるので、確実に、所望の体内組織材料にのみ接触し、所望の体内組織材料のみを切除することができる。このためには、外側管状部材26の閉鎖遠位端52が、非外傷性接触解剖学的構造(non-traumatically contacting anatomical structures)の鈍角面となることにより、「ブラインド操作」による切除手術時の器具の安全性を実現する。椎間板材料を除去した後、外科医が擦過具38を用いて終板を作製する。具体的には、擦過具38を終板に接触させ、擦過具38を使用して、材料を終板から、器具20を終板に対して手動で移動させることにより擦り取る。1つの特定の実施形態では、擦過具38で擦過操作を行って、終板から出血が見られるようにすることができ、これにより、終板に付着する材料の適正な付着面を形成することができる。
【0028】
[0042]材料を椎間板110から、椎間板材料切除器具20を、本明細書において開示される原理に従って使用して除去する1つの方法を
図5〜
図8に示す。これらの図を参照するに、椎間板110は普通、線維輪114によって取り囲まれる髄核112と、対向する終板116、118(
図7及び
図8)と、を含む。終板116、118が今度は、隣接する椎骨120、122(
図7及び
図8)それぞれの一部として形成され、従って軟骨に類似している。これらの一般的な定義を念頭に置いて、器具20を用いて、椎間板110に関連する材料(例えば、組織、軟骨など)の或る部分、又はすべてを外科的に除去する、又は切除する。例えば、変性椎間板110の治療に関連して広く行われている1つの手術が髄核摘出術であり、この髄核摘出術では、髄核112の一部又は全部を除去する。このことを念頭に置いて、器具20を椎間板110に、例えば後側方アプローチにより移動させる。椎間板110への別のアプローチも許容され、別のアプローチとして、本開示の原理の範囲内で、後方アプローチ、経椎間孔アプローチ、前方アプローチ、左側方アプローチ又は右側方アプローチなどを挙げることができる。それとは関係なく、
図5に示すように、切除ヘッド34は、線維輪114の外側に、線維輪114内に形成される開口部124に位置合わせされるように位置決めされる。開口部124は、自然発生横断通路又は同様の通路とすることができ、別の構成として、開口部124は、線維輪114に外科的切除により形成する、又はそれ以外に、外科的に創出することができる。閉鎖遠位端52は、線維輪114に外傷を伴うことがないように接触し、線維輪114を、損傷を起こし得る歯66(
図3A)及び歯92(
図3C)との不所望な接触から保護する。
【0029】
[0043]次に、切除ヘッド34は線維輪114の内部に遠位方向に進入し、作動して、
図6に示すように、髄核領域112の或る部分又は全部を除去する。
【0030】
[0044]具体的には、器具20に給電して、接触する材料の除去を行う。更に具体的には、かつ
図7を更に参照するに、電動ハンドピース(図示せず)が作動して、切除用先端90(
図3C)が、切除窓54に対して回転振動するようになる。例えば、切除用先端90は、5,000RPMの速度で、又は5,000RPM超の速度で回転振動させることができる。1つの実施形態では、電動ハンドピースが作動して、内側管状部材26(
図2)を一方向に2回転させ、続いて反対方向に2回転させるなどするが、他の作動方式も許容される。それ以外の構成として切除用先端90/切除窓54に接触している髄核組織112は、これらの2つの構成要素の間でせん断され、外科手術部位からマウス部94/管腔86(
図2)を経て吸引される。更に、洗浄流体を外科手術部位に、前に説明した洗浄機構により直接送り込むことにより、組織切除ヘッド34の目詰まりを、具体的にはマウス部94/管腔86の詰まりを最小限に抑える。洗浄流体は、外科手術部位だけでなく、内側管状部材30/外側管状部材26の境界を潤滑化するように機能することもできる。
【0031】
[0045]髄核組織112を除去した後、椎間板110の他の材料を更に、器具20で効果的に擦過し、除去することができる。例えば、終板116、118は、擦過具38を用いて、器具20を椎間板110から取り出すことなく所望の通りに擦過することもできる。
図8に示すように、擦過具38は、終板118を擦過するように位置決めすることができる。器具20、従って擦過具38は、終板118に沿って擦過して、終板118を作製することにより、骨を成長させる、及び/又は椎間固定材料を付着させることができる。具体的には、擦過具38で終板118を擦過することにより、終板118の上面を除去することができ、血液に勢いを付けて、血液を終板118に流入させることができる。自己移植術では、この血液によって終板118と、椎間板110に注入される自己移植材料との間の癒合が促進される。終板118から擦過具38で擦過されて除去される組織は、器具20を更に操作することにより、マウス部94/管腔86を経て吸引することができる。終板116は同様にして作製することができる。
【0032】
[0046]擦過具38に代えて剥離具を用いることもできる。
図9は、環状擦過面204、206、及び208を含む手動擦過具202を有する別の遠位端200を示している。環状擦過面204、206、及び208は、外側管状部材26の外周面から延出し、構造的に、上に説明した環状面67と同様である。更に、擦過具202は、外側管状部材26の遠位端52から離間している。環状擦過面204、206、及び208の各環状擦過面は、遠位端52から離間し、かつ互いに対して平行に配置される。別の実施形態では、擦過具202は、擦過面204、206、及び208のうちの1つの擦過面を無くした構成の2つの環状擦過面を含むことができる。更に別の実施形態では、環状擦過面204、206、及び208は、互いに対して平行ではなく、これらの環状擦過面のうちの1つ以上の環状擦過面が、外側表面に対して傾斜する。1つの例では、これらの環状擦過面のうちの1つの環状擦過面が、外側管状部材と鋭角をなすことができるのに対し、別の環状擦過面は、同様の部材を基準にして鈍角をなす。
【0033】
[0047]
図10は、外側管状部材26の外周面に、かつ切除窓54の両側に配置される擦過具224を含む別の遠位端220を示している。擦過具224は、椎間板の終板を作製する際に使用される擦過面を形成するコーティングを含む。1つの実施形態では、当該コーティングは、外側管状部材26の外周面から延出する不規則な突起群を形成する。擦過具224のコーティングは、1つの例では、ダイヤモンド、ニッケルで被覆されたタングステン、及び/又はこれらの材料の組み合わせのような硬質の生体適合材料により形成することができる。
【0034】
[0048]別の実施形態では、
図11〜
図13に示すように、手動擦過面は、外側管状部材26の切除窓から遠位方向に延出することができる。
図11は、擦過面232が、切除窓54から遠位方向に延出する構成の別の遠位端230を示している。擦過具232は、環状擦過面234と、擦過具232の上面から窪んだ内側カップ状形状部又は内側環状形状部236と、を画成する。手術中、外科医は、外側管状部材26を回転させて、擦過面234を終板に接触させることができ、材料を当該終板から除去して、終板を作製することにより、骨を成長させる、及び/又は椎間固定材料を付着させることができるようになる。
【0035】
[0049]
図12は、手動剥離具252が、外側管状部材26の切除窓54から遠位方向に延出する構成の別の遠位端250を示している。具体的には、剥離具252は、切除窓54から遠位方向に延出する環状カット面254を含む。
【0036】
[0050]
図13は、手動剥離具262が、外側管状部材26の切除窓54から遠位方向に延出する構成の別の遠位端260を示している。具体的には、剥離具262は、切除窓54から遠位方向に延出する環状カット面264を含む。
【0037】
[0051]
図14は、手動剥離具272が、長手方向に延出して擦過面を画成する構成の別の遠位端270を示している。この遠位端270を設けることにより、切削具274を利用して、椎間板材料を除去し易くなる。
【0038】
[0052]本発明を、好適な実施形態を参照しながら説明してきたが、この技術分野の当業者であれば、本発明の思想及び範囲から逸脱しない限り、変更を構造及び細部に加えることができることを理解できるであろう。
(請求項1)
線維輪及び対向する終板により取り囲まれる髄核で画成される椎間板の材料を除去する方法であって、
外科用切除器具を提供する工程であって、当該外科用切除器具が、
中心通路及び当該中心通路の遠位セグメントの切除窓を画成する細長外側管状部材であって、当該切除窓が外周縁を有し且つ当該中心通路に流体接続される、細長外側管状部材と、
前記中心通路内に同軸に配置される内側管状部材であって、当該内側管状部材が中心管腔及び当該管腔の遠位領域の切除用先端を画成し、当該切除用先端が前記管腔に上記以外の構成として流体接続されるマウス部の周りに形成される複数の歯を含む、内側管状部材と、を含み、
最終的な組み付けが完了すると、前記切除用先端が前記切除窓の内部から覗くようになり、かつ当該切除用先端及び当該切除窓が組み合わされて切除ヘッドを画成し、
前記外科用切除器具が更に、前記外側管状部材に接続され、かつ擦過面を画成する手動剥離具を含む、外科用切除器具を提供する工程と、
前記内側管状部材を電動ハンドピースに接続する工程であって、当該電動ハンドピースによって当該内側管状部材が前記外側管状部材に対して回転するようになるように前記電動ハンドピース適合させる、接続する工程と、
前記切除ヘッドを椎間板に挿入する工程と、
前記切除ヘッドを位置決めして、前記切除用先端が前記椎間板の対象材料に接触するようにする工程と、
前記電動ハンドピースを作動させて、前記切除用先端を前記切除窓に対して回転させる工程と、
前記被接触椎間板材料を、前記切除窓の外周縁と前記切除用先端の前記歯とでせん断する工程と、
前記手動剥離具を位置決めして、前記擦過面が終板に接触するようにする工程と、
椎間板材料を前記終板から前記擦過面を使用して除去する工程と、
せん断され、除去された前記椎間板材料を、前記管腔を通じて、前記マウス部を経て吸引する工程と、
を含む、方法。
(請求項2)
請求項1記載の方法において、
前記剥離具は、前記外側管状部材の外周面から延出する遠位面及び近位面を含み、当該遠位面及び当該近位面が前記擦過面を画成する、方法。
(請求項3)
請求項2記載の方法において、
前記剥離具は、前記外側管状部材の遠位端から離間している、方法。
(請求項4)
請求項2記載の方法において、
前記遠位面は、前記外側管状部材の軸に直交する、方法。
(請求項5)
請求項4記載の方法において、
前記近位面は、前記遠位面に対して斜めの角度で傾いている、方法。
(請求項6)
請求項5記載の方法において、
前記擦過面は、環状である、方法。
(請求項7)
請求項2記載の方法において、
前記遠位面は、前記外側管状部材の軸に対して傾斜している、方法。
(請求項8)
請求項1記載の方法において、
前記剥離具は複数の環状擦過面を含み、
これらの環状擦過面は、前記外側管状部材の外周面から延出し、
前記複数の環状擦過面は、互いに対して、前記外側管状部材の長さに沿って離間している、方法。
(請求項9)
請求項8記載の方法において、
前記複数の環状擦過面は、3つの擦過面を含む、方法。
(請求項10)
請求項8記載の方法において、
前記複数の環状擦過面は、互いに対して平行である、方法。
(請求項11)
請求項8記載の方法において、
前記複数の環状擦過面は、互いに対して非平行である、方法。
(請求項12)
請求項1記載の方法において、
前記擦過面は、前記切除窓の両側の前記外側管状部材の外側表面に塗布されるコーティングを含む、方法。
(請求項13)
請求項9記載の方法において、
前記コーティングは、ダイヤモンドを含む、方法。
(請求項14)
請求項1記載の方法において、
前記切除窓の前記外周縁は、少なくとも8個の歯を画成する、方法。
(請求項15)
請求項1記載の方法において、
せん断される前記材料は、髄核組織である、方法。
(請求項16)
請求項1記載の方法において、
せん断される前記材料は、線維輪組織である、方法。
(請求項17)
請求項1記載の方法において、
除去される前記材料は、終板軟骨である、方法。
(請求項18)
電動ハンドピースと一緒に使用され、細長外側管状部材と内側管状部材とを含む外科用椎間板材料切除器具であって、
前記細長外側管状部材は、中心通路及び当該中心通路の遠位端の切除窓を画成し、
前記切除窓が、前記中心通路に流体接続され、かつ外周縁によって画成され、
前記外周縁が、前記切除窓の第1長辺部の少なくとも4個の歯と、第2長辺部の少なくとも4個の歯と、を形成し、
前記内側管状部材は、前記中心通路内に同軸に配置され、
前記内側管状部材が、中心管腔及び当該中心管腔の遠位端の切除用先端を画成し、
前記切除用先端が、前記管腔に上記以外の構成として流体接続されるマウス部の少なくとも一部の周りに形成される複数の外周突設歯を含み、
前記器具は、前記外側管状部材の外周面に配置される擦過面を含む手動剥離具を備え、
最終的な組み付けが完了すると、前記剥離具は、材料を終板から除去するように構成され、前記切除用先端は、前記切除窓の内部から覗くようになり、当該切除用先端及び当該切除窓が組み合わされて切除ヘッドを画成し、当該切除ヘッドは、椎間板材料をせん断し、せん断した材料を、前記マウス部及び管腔を経て吸引するように構成される、外科用椎間板材料切除器具。
(請求項19)
請求項18記載の器具において、
前記剥離具は、前記外側管状部材の外周面から延出する遠位面及び近位面を含み、当該遠位面及び当該近位面が前記擦過面を画成する、器具。
(請求項20)
請求項19記載の器具において、
前記剥離具は、前記外側管状部材の遠位端から離間している、器具。
(請求項21)
請求項19記載の器具において、
前記遠位面は、前記外側管状部材の軸に直交する、器具。
(請求項22)
請求項21記載の器具において、
前記近位面は、前記遠位面に対して斜めの角度で傾いている、器具。
(請求項23)
請求項22記載の器具において、
前記擦過面は、環状である、器具。
(請求項24)
請求項18記載の器具において、
前記剥離具は複数の環状擦過面を含み、
これらの環状擦過面は、前記外側管状部材の外周面から延出し、
前記複数の環状擦過面は、互いに対して、前記外側管状部材の長さに沿って離間している、器具。
(請求項25)
請求項24記載の器具において、
前記複数の環状擦過面は、3つの擦過面を含む、器具。
(請求項26)
請求項18記載の器具において、
前記擦過面は、前記切除窓の反対側の前記外側管状部材の外側表面に塗布されるコーティングを含む、器具。
(請求項27)
請求項26記載の器具において、
前記コーティングは、ダイヤモンドを含む、器具。