【文献】
BRANDL, C. et al.,Cancer Immunol Immunother,2007年,Vol.56, No.10,p.1551-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤の治療のための、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物であって、前記患者が、化学療法治療または実験化学療法治療に難治性、および/または、化学療法または実験化学療法治療での治療後に再発しており、前記組成物が、グルココルチコイドと組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
前記節外性リンパ腫が、中枢神経系(CNS)、皮膚組織、乳房、肺、肝臓、消化管、泌尿生殖路、眼組織、骨髄および/または骨を含む、請求項1または2に記載の組成物。
前記組成物の1回目投与量が第1期間に投与されるものであり、続いて前記組成物の2回目投与量が第2期間に投与されるものであり、ここで前記2回目投与量が前記1回目投与量を超える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
前記第1期間が3日間から10日間の間であり、前記第2期間が3日間から10日間の間であり、前記第3期間が8日間から78日間の間である、請求項17〜28のいずれか1項に記載の組成物。
前記グルココルチコイドがコルチゾン、コルチゾール、クロプレドノール、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デフラザコート、フルオコルトロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドの少なくとも1つからなる群から選択される、請求項1〜38のいずれか1項に記載の組成物。
前記CD19xCD3二重特異性抗体が3回の用量で投与されるものであり、ここで2回目投与量が1回目投与量を超え、3回目投与量が2回目投与量を超え、前記グルココルチコイドが、前記CD19xCD3二重特異性抗体の各用量の投与の後に少なくとも2日間投与されるものである、請求項44に記載の組成物。
前記グルココルチコイドが、前記CD19xCD3二重特異性抗体の投与の前および後に6から40mgの間の用量で投与されるものであり、前記抗体が1回目投与量5μg/m2/d、2回目投与量15μg/m2/d、及び3回目投与量60μg/m2/dで投与されるものである、請求項45に記載の組成物。
患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘤を治療するための医薬キットであって、請求項1〜46のいずれか1項に記載の組成物および場合により使用説明のための手段(使用説明シート)を含み、前記患者が、化学療法治療または実験化学療法治療に難治性、および/または、化学療法または実験化学療法治療での治療後に再発していることを特徴とする、キット。
【発明の概要】
【0012】
本発明はこのニーズに取り組んでいる。従って、本発明は、この技術的課題に対する解決策として、患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤の治療に使用するための手段および方法であって、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物が用いられる前記手段および方法に関する実施形態を提供する。CD19xCD3二重特異性(一本鎖)抗体の例は、ブリナツモマブ(Blinatumomab)(MT103)である。
【0013】
ブリナツモマブは、ほとんどのB細胞およびB腫瘍細胞の表面上のCD19に結合し、同時にT細胞をつなぐことができ、それによってT細胞が標的のB細胞またはB腫瘍細胞を殺すのを誘発するリンパ腫指向性組換え二重特異性一本鎖CD19xCD3抗体である。このように、ブリナツモマブはいわゆるBiTE((二重特異性T細胞エンゲージャー)抗体である。ブリナツモマブは、一本鎖ポリペプチド鎖に組み合わされた4つの免疫グロブリン可変ドメインからなる。可変ドメインのうちの2つは、大部分のB細胞およびB腫瘍細胞上に発現される細胞表面抗原であるCD19に対する結合部位を形成する。他の2つの可変ドメインは、T細胞上のCD3複合体のCD3εに対する結合部位を形成する。ブリナツモマブは、身体の細胞傷害性または細胞破壊性T細胞を腫瘍細胞に向けるように設計されており、現在臨床試験中である。
【0014】
WO2007/068354は、CD19xCD3二重特異性抗体が、種々のB細胞非ホジキンリンパ腫の中で、特にDLBCLの治療に使用することができることを述べているが、この文書は、直接かつ明白に請求されたCD19xCD3二重特異性抗体の治療用途の基礎をなす治療効果または薬理効果の実際の存在に関して結論を引き出すことを可能にするものではない。
難治性かつ侵襲性のDLBCLに話を移せば、このことはさらに確かである。
【0015】
しかしながら、驚いたことに、CD19xCD3二重特異性抗体は、患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ細網組織(本明細書においてはリンパ節組織とも呼ぶ)および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤の治療に有益であることを本発明者らは見出した。実際に、臨床試験において、DLBCLを患っている患者の治療においてCD19xCD3二重特異性抗体が優れた結果を導いたことが観察され、投与わずか数週間後にすでに腫瘍性腫瘤のはなはだしい減量(tremendous debulking of tumorous mass)が見られた患者もあった。注目すべきは、CD19xCD3二重特異性抗体で治療された患者は、化学療法剤の併用またはその併用とCD20特異的抗体リツキシマブとの併用のいずれかの、種々の化学療法剤の併用で強い前治療を受けていたことである。しかしながら、DLBCL患者において、単独治療剤としてCD19xCD3二重特異性抗体を用いた免疫療法は、部分寛解またはさらには完全寛解ももたらした(添付の実施例、特に患者153-001、135-001および109-038を参照のこと)。
【0016】
要約していえば、本発明者らによって、その臨床試験において見られた優れた結果は、予見しうるものではなかった。なぜなら、癌、特にリンパ腫の治療において、すべてに合う(one-fits-all)薬物("魔法の弾丸")は入手不能であり、従って、ありとあらゆる臨床試験に関して、いわば成功についての合理的な期待は存在せず、その理由で当業者は大変に慎重であり、ヒト患者において実験薬を単純に試用しようとはしないものである。それにもかかわらず、本発明者らは、CD19xCD3二重特異性抗体に関する深い知識および前臨床データをもとに、リスクを負い、多かれ少なかれ治療抵抗性のDLBCL患者を治療し、成功した。よって、CD19xCD3二重特異性抗体は、それによってDLBCLの新規治療の道を開くことができる。
【0017】
本発明の側面を以下に示す:
1.患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤の治療(方法)に使用するための、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物。また、DLBCLに悩む患者にCD19xCD3二重特異性抗体の有効量を投与することを含む、DLBCLによって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤の治療法。
2.腫瘍性腫瘤が、10x10mmを超えるサイズを有する腫瘍を特徴とする、項目1に記載の組成物または方法。
3.リンパ節組織がリンパ節および/または脾臓を含む、項目1または2に記載の組成物または方法。
4.節外性リンパ腫が、中枢神経系(CNS)、皮膚組織、乳房、肺、肝臓、消化管、泌尿生殖路、眼組織、骨髄および/または骨を含む、項目1または2に記載の組成物または方法。
5.組成物の1回目投与量が第1期間に投与され、続いて組成物の2回目投与量が第2期間に投与され、ここで2回目投与量が1回目投与量を超える、前記項目のいずれか1つに記載の組成物または方法。
6.前記第1期間が3日間を超える、前記項目のいずれか1つに記載の組成物または方法。
7.前記第1期間が3日間から10日間の間である、前記項目のいずれか1つに記載の組成物または方法。
8.前記第2期間が18日間を超える、前記項目のいずれか1つに記載の組成物または方法。
9.前記第2期間が18日間から81日間の間であり、好ましくは21日間または49日間である、前記項目のいずれか1つに記載の組成物または方法。
10.前記第1期間が3日間から10日間の間であり、前記第2期間が18日間から81日間の間である、前記項目のいずれか1つに記載の組成物または方法。
11.前記第1期間が7日間であり、前記第2期間が21日間または49日間である、項目10に記載の組成物または方法。
12.前記1回目投与量が1から15μg/m
2/dの間であり、好ましくは5、10または15μg/m
2/dである、前記項目のいずれか1つに記載の組成物。
13.前記2回目投与量が15から60μg/m
2/dの間であり、好ましくは60μg/m
2/dである、前記項目のいずれか1つに記載の組成物または方法。
14.第1および第2期間に1回目および2回目投与量を投与した後に、第3期間に組成物の3回目投与量を投与することをさらに含む、項目5に記載の組成物または方法。
15.第3期間が第1および第2期間を超え、ここで2回目投与量が前記1回目投与量を超える、項目14に記載の組成物または方法。
16.3回目投与量が1回目および2回目投与量を超える、項目14または15に記載の組成物または方法。
17.前記第1期間が3日間を超える、項目14〜16のいずれか1つに記載の組成物または方法。
18.前記第1期間が3日間から10日間の間であり、好ましくは7日間である、項目14〜17のいずれか1つに記載の組成物または方法。
19.前記第2期間が3日間を超える、項目14に記載の組成物または方法。
20.前記第2期間が3日間から10日間の間であり、好ましくは7日間である、項目14〜19のいずれか1つに記載の組成物または方法。
21.前記第3期間が8日間を超える、項目14に記載の組成物または方法。
22.前記第3期間が8日間から78日間の間であり、好ましくは14または42日間である、項目14〜21のいずれか1つに記載の組成物または方法。
23.前記第1期間が3日間から10日間の間であり、前記第2期間が3日間から10日間の間であり、前記第3期間が8日間から78日間の間である、項目14〜22のいずれか1つに記載の組成物または方法。
24.前記第1期間が7日間であり、前記第2期間が7日間であり、前記第3期間が14または42日間である、項目23に記載の組成物または方法。
25.前記1回目投与量が1から15μg/m
2/dの間であり、好ましくは5μg/m
2/dである、項目14〜24のいずれか1つに記載の組成物または方法。
26.前記2回目投与量が1から15μg/m
2/dの間であり、好ましくは15μg/m
2/dである、項目14〜25のいずれか1つに記載の組成物または方法。
27.前記3回目投与量が15から60μg/m
2/dの間または15から90μg/m
2/dの間または15から120μg/m
2/dの間であり、好ましくは60μg/m
2/dである、項目14〜26のいずれか1つに記載の組成物または方法。
28.組成物が、少なくとも1つの化学療法剤をさらに含む、前記項目のいずれか1つに記載の組成物または方法。
29.それを必要とする患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘤を治療する方法であって、それを必要とする患者に組成物の治療的有効量を投与することを含む前記方法に使用するための、前記項目のいずれか1つに記載の組成物。
30.患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘤を治療するための医薬キットであって、前記項目のいずれか1つに記載の組成物および場合により使用説明のための手段(使用説明シート)を含む前記キット。
31.びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘤を治療するための医薬組成物の製造のための、前記項目のいずれか1つに記載の組成物の使用。
32.前記項目のいずれか1つに記載の1回目投与量および2回目投与量を含む医薬パッケージまたはキット。
33.前記項目のいずれか1つに記載の3回目投与量をさらに含む、項目32に記載の医薬パッケージまたはキット。
34.1回目および/または2回目および/または3回目投与量を患者に投与する手段をさらに含む、項目32または33に記載の医薬パッケージまたはキット。
【0018】
特記しない限り、本明細書で用いられる当該分野のすべての用語、表記法および科学用語または用語法は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。場合によっては、本明細書において、一般に理解される意味を有する用語が、明確にするためにおよび/または即時に参照するために規定されることがあるが、本明細書におけるこのような定義の包含は、必ずしも、当該技術分野で一般に理解されることに関して実質的に異なることを表すと理解してはならない。本明細書に記載または参照された技術および手順の多くは、当業者による従来の方法論を用いて十分に理解され、一般に用いられるものである。特記しない限り、必要に応じて、製造業者によって規定されたプロトコルおよび/またはパラメータに従って市販キットおよび試薬の使用に関する手順が一般に用いられる。
【0019】
本明細書に示した一般法に関する説明は、単に例示を目的としたものである。本開示を検討することによって、当業者には、他の代替法および実施形態が明らかとなるであろう。
【0020】
接続詞"または(or)"によって連結される一群の項目は、その群の中で相互に排他的であることが求められていると解釈してはならない。特記されない限り、むしろそれは、"および/または(and/or)"として理解されなければならない。
【0021】
本明細書において、単数形"ある(a)"、"ある(an)"および"その(the)"は、文脈によって明確に否定されない限りは複数指示を含む事に注意しなければならない。従って、例えば、"ある試薬"とは、このような種々の試薬の1以上を含み、"その方法"とは、本明細書に記載の方法に修飾しうるまたはそれに代わりうる当業者に公知の等価なステップまたは方法を含む。
【0022】
本開示に引用したすべての公報および特許は、参照によってその全体が組み込まれる。参照によって組み込まれた事項が本明細書に矛盾するまたは一致しない範囲に限り、本明細書はかかる事項のすべてに優先する。
【0023】
特記しない限り、一連の要素に先行する用語"少なくとも"は、そのシリーズにおけるあらゆる要素を指すものと解される。本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物は、当業者には明らかであるか、あるいはただルーチン試験を用いるだけで確かめることができるであろう。このような等価物は本発明に含まれるものとする。
【0024】
本明細書および以下の特許請求の範囲を通じて、特記しない限り、単語"含む(comprise)"ならびに"含む(comprises)"および"含んでいる(comrising)"などの変化形は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを含むが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを排除しないことを意味すると理解される。本明細書で用いられる場合、用語"含んでいる(comrising)"は、用語"含んでいる(containing)"で代用することもできるし、本明細書で用いられる場合、場合により、用語"含んでいる(having)"で代用することもできる。
【0025】
本明細書で用いられる場合、"からなっている(consisting of)"は、請求項の要素において記載されていない任意の要素、ステップまたは成分を排除する。本明細書で用いられる場合、"本質的に〜からなっている(consisting essentially of)"は、請求項の基本的および新規特性に著しく影響しない材料またはステップを排除しない。本明細書の各例において、"含んでいる(comrising)"、"本質的に〜からなっている(consisting essentially of)"および"からなっている(consisting of)"は、他の2つの用語のいずれかで代用することができる。
【0026】
本明細書に記載されるように、"好ましい実施形態"は、"本発明の好ましい実施形態"を意味する。同様に、本明細書に記載されるように、"種々の実施形態"および"他の実施形態"は、それぞれ、"本発明の種々の実施形態"および"本発明の他の実施形態"を意味する。
本明細書のテキストを通じて、いくつかの文書が引用されている。本明細書に引用された文書(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、使用説明書などを含む)のそれぞれは、上記下記にかかわらず、参照によりその全体が本願に組み込まれる。これらのいずれも、先行発明によってこのような開示に本発明が先行しないと認めるものとして解釈してはならない。
【0027】
発明の詳細な説明
当該技術分野で、DLBCLの治療に化学療法単独または化学療法と免疫療法との併用が用いられることは明らかである。しかしながら、リツキシマブ(CD20特異的抗体)などの抗体は、DLBCLの治療に単一化合物では通例用いられない。これは、恐らく、DLBCLは侵襲性で増殖の速いリンパ腫であり、そのため、CDCおよび/またはADCCを発揮するためには、免疫(エフェクター)細胞を必要とする抗体単独では単独療法で有効であることを予期し得ないためであると考えられる。従って、通例、リツキシマブと化学療法剤との併用が用いられる。さらに、B細胞がBcl-2陽性でない場合、リツキシマブは所望の治療効果を示せないことが観察された(Armitage (2007), Blood 110(1):29-36)。従って、リツキシマブは、特定の環境下で、やや限定された治療スペクトルしか示さないと考えられる。
【0028】
さらに、DLBCLはしばしば大きな腫瘤を形成するため、従来のIg抗体では大きな腫瘤に効率的に浸透することができず、そのあと腫瘍細胞を殺すことができるエフェクター細胞を誘引できないと想定することは合理的であると言える。患者は、しばしば免疫細胞も傷つける化学療法剤で強い前治療を受けているため、例えばリツキシマブは免疫系のエフェクター細胞を必要とするが、これを十分な量または質で利用できないので、このことが当てはまる。従って、腫瘍細胞を殺すための免疫細胞を効率的に誘引する(つなぐ)抗体を利用できることが望ましい。本発明は、このような抗体をCD19xCD3二重特異性(一本鎖)抗体として提供する。実際、臨床試験において、驚くべきことに、本発明者らは、単独治療剤でのCD19xCD3二重特異性(一本鎖)抗体が、DLBCLによって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤を首尾よく小さくしたことを観察した。実際、63x47mmかまたはそれ以上のサイズを有する腫瘍でさえも、小さくなるかまたは除去されさえした。このような優れた結果は予想できなかった。なぜなら、例えば、リツキシマブは、当該技術分野で単独治療剤では使用されていないからである。むしろ、リツキシマブは化学療法剤との併用で用いられている。
【0029】
本発明者らは、化学療法または化学療法と免疫療法(強力なCD20特異的抗体であっても)との併用で強い前治療を受けており、CD19xCD3二重特異性抗体を単独治療剤で用いる時点で少なくとも部分的に大きな腫瘍を患っている患者において侵襲性で増殖の速いリンパ腫を治療する課題に対処しなければならないばかりでなく、二重特異性抗体で以前観察された副作用を改善し、好ましくは予防するという課題も解決しなければならなかった。すなわち、本発明者らは、一方では、DLBCLを患っている患者(化学療法および化学免疫療法で前治療を受けた患者)における前(免疫)化学療法または化学療法の後の腫瘍進行の発達および開始さえも観察しなければならず、他方では用量制限毒性を観察しなければならなかった。
【0030】
実際、例えばWO99/54440に記載されているように、CD19xCD3抗体であるブリナツモマブを用いて行った以前の研究(B細胞由来慢性リンパ性白血病(B-CLL)患者にボーラス注入で投与した)において副作用が観察された。特に、臨床試験において、患者22名中7名に、例えば、錯乱、運動失調、言語障害または失見当識を含む初期の精神・神経系作用が見られた。
これらの望ましくない副作用をよりよく管理することを試みるために、前記抗体のボーラス注入から長期間の持続静注へと切り替えることによってCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の投与方法を変えた。しかしながら、その臨床試験期間中においても、なお精神・神経系作用が見られた。
【0031】
従って、DLBCLによって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤の治療のためのCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の投与に関する臨床試験のために、本発明者らは、有効で、患者の大部分に認容性が良好な治療レジメンを開発しなければならなかった。このために、本発明者らは、患者に5/15/60μg/m
2/24時間を投与することによるCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の段階的投与を用いた。それによって、副作用、特に精神・神経系事象の例数を減らし、それを改善することができ、それを予防することさえもできた。CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の段階的投与において、患者の治療期間に、5/15μg/m
2/24時間、5/60μg/m
2/24時間または15/60μg/m
2/24時間などの用量のうち2つを用いる治療レジメンもまた考えられる。適切な用量は、患者において、最低限の副作用での有効性、認容性および安全性に基づいて臨床医によって選択されることができる。
しかしながら、本発明者は、その後に高投与量に増加させない均一な用量の継続投与を含む、DLBCLによって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤の治療もまた考える。例えば、本治療レジメンは、8週間[56日間]までの治療期間の終わりまで、およびそれ以上にわたって、優れた認容性を有し、副作用がなく、安全かつ効果的である場合、CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の5μg/m
2/24時間、15μg/m
2/24時間または60μg/m
2/24時間の投与を含む。
【0032】
本発明の方法が、さらに、グルココルチコイドの投与を特徴とするということもまた考えられる。この投与は、DLBCL患者におけるCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の投与前および場合によりその投与中に行われる。この併用投与は、抗体の投与後に、そして場合により抗体での継続治療中に1日以上連続して行うことができる。
【0033】
本実施例において示されるように、本発明の治療法の期間中に、グルココルチコイドは神経系反応を改善および/または予防することが見出された。従って、本発明の方法は(およびそれによる本発明の用法・用量もまた)、さらに、少なくとも1つのグルココルチコイドの任意の投与を特徴とする。前記投与は、好ましくは、本抗体での最初の治療の前に行われ、次いで治療開始後2日目および3日目に併用で行われ、治療中に何らかの神経系有害事象(単数または複数)が生じた場合、後に投与することもできる。治療レジメンが本明細書に記載の投与計画に従った用量増加を含む場合、各用量増加の前にグルココルチコイドが投与され、各新規増加用量後2日目および3日目に併用で投与され、場合により何らかの神経系有害事象を治療するためにさらなる日々に投与される。
【0034】
グルココルチコイド(GC)は、ヒトを含むほぼすべての脊椎動物細胞に存在するグルココルチコイド受容体(GR)に結合するステロイドホルモンのクラスである。これらの化合物は、炎症の原因にかかわらず強力な抗炎症薬である。グルココルチコイドは、サイトカインIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8およびIFN-γをコードする遺伝子を抑制することによって、特に細胞性免疫を抑制する。
【0035】
本明細書において、用語"グルココルチコイド"は、少なくともコルチゾン、コルチゾール、クロプレドノール、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デフラザコート、フルオコルトロン、トリアムシノロン、デキサメタゾンおよびベタメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロンアセトニドを含む。デキサメタゾンが好ましく、その好ましい投与量範囲は1用量当たり6から40mgの間である。
【0036】
デキサメタゾンは、最も一般に用いられるステロイドの中では最も高いグルココルチコイドの有効性を有し、同様に最も長い半減期を有する(下記の表を参照のこと)。しかしながら、当業者は、他の公知のグルココルチコイド(その一部は明細書に開示されている)の1つを選択することができ、CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体でのDLBCL患者の治療によって生じ得る神経系有害事象を改善または予防するための適切な有効用量を選択することができる。
【表1】
【0037】
デキサメタゾンはまた、恐らくはCNSへの特異的透過により、中枢神経系(CNS)悪性疾患(例えばCNSリンパ腫または脳転移)に有益な効果を有する。デキサメタゾンはまた、脳浮腫を治療するために(他のステロイドよりも)優先的に用いられる。コルチコステロイドは、腫瘍自身において毛細血管の透過性を減少させるが、動物モデルにおいて、デキサメタゾンの作用は異なり、腫瘍から総体流(bulk flow)を除去する効果によって浮腫を減少させることができることが見いだされた(Molnar, Lapin, & Goothuis, 1995, Neurooncol. 1995;25(1):19-28)。
【0038】
本発明者らは、副作用をさらに減らすおよび/または予防する目的で、CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の用量増加中のデキサメタゾンを(間欠的)投与することにより、神経系反応のさらなる改善および/または予防に寄与することができることを見出した。具体的には、CD19xCD3二重特異性(一本鎖)抗体の用量が増加される3日間の間にデキサメタゾンが投与される。より具体的には、デキサメタゾンは、1日目に24μgの用量で投与され、2日目に16μgの用量で投与され、3日目に8μgの用量で投与された(実施例8もまた参照のこと)。デキサメタゾンは、公知の免疫抑制剤であるため、T細胞(CD4
+およびCD8
+T細胞)を含む免疫細胞の活性を抑制することが知られており、従って、CD19xCD3二重特異性抗体が強力な(活性)T細胞をつなぐことができることを予期できなかったが、本発明者らは、その正反対であることを観察した。実際、CD19xCD3二重特異性抗体によってつながれたT細胞は明らかに強力であった。なぜなら、DLBCL患者での臨床試験において、腫瘤の顕著な縮小が観察されたからである(添付の実施例を参照のこと)。
【0039】
CD19xCD3二重特異性抗体での臨床試験におけるDLBCL患者の腫瘍性腫瘤の治療成功を考慮して、本発明は、第1の側面において、患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤の治療に使用するための、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物を提供する。
【0040】
同様に、これに変えて、本発明は、それを必要とする患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘤を治療する方法であって、それを必要とする患者に組成物の治療的有効量を投与することを含む前記方法に使用するための、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物を提供する。
【0041】
また、これに変えて、本発明は、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ細網組織および/または節外性リンパ腫の腫瘤を治療するための医薬組成物の製造のための、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物の使用を提供する。
【0042】
さらにまた、これに変えて、本発明は、患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤を治療する方法であって、前記患者にCD19xCD3二重特異性抗体の治療的有効量を投与することを含む前記方法を提供する。抗体は、好ましくは組成物であり、好ましくは組成物は医薬組成物である。
【0043】
DLBCLは、B細胞から発生するリンパ節組織の新形成である。DLBCLは、成人の非ホジキンリンパ腫のおおよそ40%(患者25,000名/年)を占める、大細胞型リンパ系B細胞の悪性増殖の、臨床的、形態学的および遺伝子的に不均一なグループである。正常胚中心B細胞または活性化メモリーB細胞のいずれかの特徴を示す、異なる遺伝子発現プロフィールを有する、予後の異なる2つのDLBCLサブグループが同定されている。胚中心B細胞様(GC)サブグループは、活性化B細胞様(ABCまたは非GC)サブグループ(5年生存率:16%)と比較して、著しくすぐれた予後(5年生存率:76%)と関連していた(Alizadeh et al. (2000) Nature 403:503-511, Shipp et al. (2002) Nat Med 8:68-74)。
【0044】
DLBCLの最初の徴候(症状)は、多くの場合、頚部、鼠径または腹部のリンパ節における急速な増大を示す無痛の腫瘤である。患者はまた、発熱、体重減少、寝汗または他の症状を経験する場合もある。
【0045】
本明細書において、"CD19xCD3二重特異性抗体"(CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体を含む-本明細書においては、両用語を同義で使用する場合もある)は、2つの結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチド鎖を意味する。このようなCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体は、本発明の方法/用法・用量との関係において好ましい。各結合ドメインは、抗体H鎖("VHまたはH領域")由来の少なくとも1つの可変領域を含み、ここで第1結合ドメインのVH領域はCD3ε分子に特異的に結合し、第2結合ドメインのVH領域はCD19に特異的に結合する。2つの結合ドメインは、場合により、短いポリペプチドスペーサーによって互いに結合される。限定するものではないポリペプチドスペーサーの例は、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(G-G-G-G-S)およびその反復配列である。各結合ドメインは、さらに、抗体L鎖("VLまたはL領域")由来の1つの可変領域を含むことができ、ここで各第1および第2結合ドメイン内のVH領域およびVL領域は、例えばEP 623679 B1に開示され請求されたタイプのポリペプチドリンカー(いずれにせよ第1結合ドメインのVH領域およびVL領域と第2結合ドメインのVH領域およびVL領域が互いに対合し、それぞれの第1および第2結合ドメインに特異的に結合することができるように十分に長いポリペプチドリンカー)を介して互いに結合されている。このようなCD19CD3二重特異性一本鎖抗体は、WO99/54440およびWO2004/106381およびWO2008/119565において詳細に説明されている。
【0046】
本発明に関連して、用語"結合ドメイン"は、所定の標的構造/抗原/エピトープに特異的に結合する/相互作用するポリペプチドのドメインを特徴づける。従って、結合ドメインは"抗原相互作用部位"である。本発明では、用語"抗原相互作用部位"は、特異抗原または抗原の特異基(例えば異なる種における同一抗原)と特異的に相互作用するポリペプチドのモチーフを定義する。前記結合/相互作用はまた、"特異的認識"を定義すると理解される。本発明では、用語"特異的に認識する"は、抗体分子が、抗原、例えば本明細書で定義するヒトCD3抗原の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つのアミノ酸と特異的に相互作用および/または結合することができることを意味する。このような結合は、"錠前と鍵の原理"の特異性によって例示することができる。従って、結合ドメインのアミノ酸配列における特異的モチーフと抗原とは、それらの一次構造、二次構造または三次構造の結果としてばかりでなく、前記構造の二次修飾の結果として互いに結合する。抗原相互作用部位とその特異抗原との特異的相互作用は、抗原に対する前記部位の単純な結合をもたらすこともできる。さらに、結合ドメイン/抗原相互作用部位とその特異抗原との特異的相互作用は、代わりに、例えば抗原の配座変化の誘発、抗原のオリゴマー化などによってシグナル開始をもたらすことができる。本発明に沿った結合ドメインの好ましい例は抗体である。結合ドメインは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることもできるし、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体由来であることもできる。用語"抗体"は、なお結合特異性を保持しているそれらの誘導体または機能性フラグメントを含む。抗体の製造技術は当該分野で公知であり、例えばHarlow and Lane "Antibodies, A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988 and Harlow and Lane “Using Antibodies: A Laboratory Manual” Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999 に記載されている。用語"抗体"はまた、種々のクラスの免疫グロブリン(Ig)(すなわちIgA、IgG、IgM、IgDおよびIgE)ならびにサブクラス(例えばIgG1、IgG2など)を含む。
【0047】
用語"抗体"の定義はまた、キメラ、一本鎖およびヒト化抗体などの実施形態ばかりでなく、抗体フラグメント、例えば特にFabフラグメントも含む。抗体フラグメントまたは誘導体は、F(ab')2、Fv、scFv断片または、他のV領域またはドメインとは独立して抗原またはエピトープに特異的に結合する、VHまたはVLであることができる、単に1つの可変ドメインを含む、単一ドメイン抗体、単一可変ドメイン抗体もしくは免疫グロブリン単一可変ドメインをさらに含む。例えば、上記で引用したHarlowおよびLane((1988)および(1999))を参照のこと。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、単離された抗体単一可変ドメインポリペプチドばかりでなく、抗体単一可変ドメインポリペプチド配列の1以上のモノマーを含むより大きなポリペプチドも含む。本明細書において、CD3εはT細胞受容体の一部として発現された分子を意味し、先行技術において一般的にそれに与えられた意味を有する。ヒトにおいては、それは、個々にまたは独立して組み合わされた形態で、すべての公知のCD3サブユニット、例えばCD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3ζ、CD3αおよびCD3βを含む。ヒトCD3εは、Genbankアクセッション番号NM_000733で表される。
【0048】
ヒトCD19タンパク質は、Genbankアクセッション番号AAA69966で表される。
【0049】
好ましくは、本発明の方法/用法・用量に用いられる二重特異性抗体は、ドメイン配置VL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)を有する。
【0050】
しかしながら、本発明の方法は、
VH(CD19)-VL(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)、
VL(CD19)-VH(CD19)-VL(CD3)-VH(CD3)、
VH(CD19)-VL(CD19)-VL(CD3)-VH(CD3)、
VL(CD3)-VH(CD3)-VH(CD19)-VL(CD19)、
VH(CD3)-VL(CD3)-VH(CD19)-VL(CD19)、
VL(CD3)-VH(CD3)-VL(CD19)-VH(CD19)または
VH(CD3)-VL(CD3)-VL(CD19)-VH(CD19)
などの他のドメイン配置のCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体を用いて行うことができることもまた考えられる。
【0051】
本発明の方法に用いられる好ましいCD19xCD3二重特異性抗体は、
(a)配列番号1のCD3 CDR-H1(GYTFTRYTMH)、配列番号12のCD3 CDR-H2(YINPSRGYTNYNQKFKD)および配列番号13のCD3 CDR-H3(YYDDHYCLDY)で示されるH鎖の抗CD3 CDR;および/または
(b)配列番号14のCD3 CDR-L1(RASSSVSYMN)、配列番号15のCD3 CDR-L2(DTSKVAS)および配列番号16のCD3 CDR-L3(QQWSSNPLT)で示されるL鎖の抗CD3 CDR;および/または
(c)配列番号17のCD19 CDR-H1(GYAFSSYWMN)、配列番号18のCD19 CDR-H2(QIWPGDGDTNYNGKFKG)および配列番号19のCD19 CDR-H3(RETTTVGRYYYAMDY)で示されるH鎖の抗CD19 CDR;および/または
(d)配列番号20のCD19 CDR-L1(KASQSVDYDGDSYLN)、配列番号21のCD19 CDR-L2(DASNLVS)および配列番号22のCD19 CDR-L3(QQSTEDPWT)で示されるL鎖の抗CD19 CDRを含む。
【0052】
本発明の方法に用いられるCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体は、H鎖およびL鎖のCD3 CDRを含むことがより好ましい。よりさらに好ましくは、本発明の方法に用いられるCD19xCD3二重特異性抗体は、H鎖およびL鎖のCD3 CDRならびにH鎖およびL鎖のCD19 CDRを含む。
本明細書において言及したCDRは、Kabatナンバリングシステムに従う。Kabatナンバリングスキームは、一貫した方法で抗体の残基をナンバリングするために広く採用されている基準である(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 1991)。
【0053】
あるいは、本発明の方法に用いられるCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体は、
(a)配列番号3に示すCD19可変H鎖(配列番号4に示すヌクレオチド配列);および/または
(b)配列番号5に示すCD19可変L鎖(配列番号6に示すヌクレオチド配列);および/または
(c)配列番号7に示すCD3可変H鎖(配列番号8に示すヌクレオチド配列);および/または
(d)配列番号9に示すCD3可変L鎖(配列番号10に示すヌクレオチド配列)
を含むことが好ましい。
より好ましくは、本発明の方法に用いられるCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体は、CD19可変H鎖およびL鎖ならびに/またはCD3可変H鎖およびL鎖を含む。よりさらに好ましくは、本発明の方法に用いられるCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体は、CD19可変H鎖およびL鎖ならびにCD3可変H鎖およびL鎖を含む。他の実施形態において、前記二重特異性一本鎖抗体は、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2に示す核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(c)(b)の核酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%または99%一致する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列であって、CD3およびCD19に特異的に結合することができる前記アミノ酸配列;ならびに
(d)(b)のヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果として縮重している核酸配列によってコードされるアミノ酸配列であって、CD3およびCD19に対して特異的に結合することができる前記アミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこともまた好ましい。
【0054】
配列同一性は、全アミノ酸配列に関して決定されることが理解されるべきである。配列のアラインメントのために、例えば、GapまたはBestFitというプログラムを使用することができ(Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48 (1970), 443-453; Smith and Waterman, Adv. Appl. Math 2 (1981), 482-489)、これらのプログラムはGCGソフトウェアパッケージに含まれている(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison、Wisconsin, USA 53711 (1991)。本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性抗体(好ましくはMT103)のアミノ酸配列に対して例えば70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を決定し同定することは、当業者にはルーチン法である。例えば、Crickのwobble仮説に従えば、アンチコドンの5'塩基は他の2つの塩基ほどには空間的に制限されておらず、従って非標準的な塩基対を形成することができる。言い換えれば、コドントリプレットの3番目の位置の異なる2つのトリプレットが、同じアミノ酸残基をコードすることができるように、この3番目の位置が変化することができる。前記仮説は、当業者には公知である(例えばhttp://en.wikipedia.org/wiki/Wobble_Hypothesis; Crick, J Mol Biol 19 (1966): 548-55を参照のこと)。さらに、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対して例えば70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列の細胞傷害性活性を測定することは、当業者にはルーチン手順である。CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体のアミノ酸配列に対して例えば70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するCD19xCD3二重特異性一本鎖抗体または抗体構築物の細胞傷害性活性は、例えばWO99/54440に記載されている方法で測定することができる。
【0055】
特に好ましい前記CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。
【0056】
WO99/54440に記載されているCD19xCD3二重特異性抗体MT103および、WO2004/106381またはWO2008/119565に記載されているCD19xCD3二重特異性抗体もまた特に好ましい。
【0057】
さらに、WO2008/119565に記載されているCD19xCD3二重特異性抗体は特に好ましい。この二重特異性抗体のCD3結合部分は、ヒトならびにアカゲザルおよびマカクなどのヒト以外の霊長類に結合することができ、それによって異種間特異的反応性(cross-species specific reactivity)が付与される。従って、これは前臨床および臨床研究の両方に使用することができ、このことは大変に有益である。なぜなら、サロゲート抗体を必要としないため、前臨床研究で得られた結果は、ヒトでの使用に直接に応用し適合させることができるからである。
典型的には、リンパ腫の診断は、一般に、リンパ腫、特にDLBCLを発症するおよび/または有することが疑われる患者から得られる試料で行われる。
【0058】
本発明では、用語"試料"とは、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたはそれらの一部を含むヒト患者から得られる任意の生体試料を意味する。生体試料は、体液(例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、滑液および髄液)ならびに悪性CD19陽性リンパ球と認められた組織源を含む。患者から組織生検および体液を得る方法は当該分野で公知である。一般に、末梢血単核細胞(PBMC)、特にB細胞およびT細胞を含む生体試料が供給源として好ましい。
【0059】
末梢血単核細胞(PBMC)、特にB細胞およびT細胞を含む試料は、好ましくは、ヒト患者の末梢血から採取される。他の好ましい試料は、全血、血清、血漿または滑液であり、血漿または血清が最も好ましい
【0060】
患者から得られる他の好ましい試料はリンパ節生検である。リンパ節生検は、例えば、異常リンパ節の切除生検または関連器官の一般切開生検によって得られる。場合によっては、カッティングニードル生検によって、診断用の適切な組織が得られることもある。さらに、適切な骨髄生検を行うことができる。診断は、遺伝子発現プロファイリングによって補うことができる。より好ましくは、診断は、好ましくはリンパ腫、特にDLBCLの診断の経験を積んだ血液病理学者によって、好ましくはリンパ系新生物に関するWHO分類を適用することによって行われる(Armitage in Blood (2007), Vol. 110 (1):29-36 の刊行物の30ページの表1を参照のこと)。最初の診断を明確にするために、免疫組織化学を行うことが好ましい場合もあり、細胞遺伝学または蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を利用することが好ましい場合もある。
【0061】
これを考慮すれば、前述の症状に従って、かつ/または前述の手段および方法、例えばリンパ節生検、免疫組織化学、細胞遺伝学、遺伝子プロファイリングおよび/またはFISHを適用することによってDLCBLを診断することは本発明の好ましい実施形態である。
【0062】
診断がなされたら、好ましくは確定されたら、その疾患が体内で広がった範囲に関するさらなる情報を得るために、経験を積んだ血液病理学者によるさらなる再生検ならびに/または、胸部、腹部および/または骨盤のCT、超音波イメージングおよび/またはPETスキャンを含むさらなるイメージング検査による再病期分類などの追加の検査が行われる。このプロセスは病期分類と呼ばれる。これらの検査結果は、最も効果的な治療コースの決定に役立つであろう。
【0063】
身体のどの部位が濾胞性リンパ腫に罹患していたかの決定に役立てるために、いくつかの病期分類検査が利用できる。用いることができる検査には、CTスキャン、血液検査、骨髄生検および/またはPETスキャンが含まれる。
【0064】
病期分類は、診断時に、リンパ系のどのくらいが関与しているかに基づいて、患者を群(病期)に分割することを含む。病期分類は、患者の予後および治療オプションを決定するのに役立つ。
リンパ腫の病期は以下のように定義することができる:
病期I-ただ1つのリンパ節領域が関与しているか、またはただ1つのリンパ構造が関与している。
病期II-横隔膜の同じ側の2以上のリンパ節領域またはリンパ節構造が関与している。
病期III-横隔膜の両側のリンパ節領域または構造が関与している。
病期IV-リンパ節領域または構造以外のいくつかの器官または組織、例えば肝臓、肺または骨髄に関する幅広い病変が認められる。
病期が決められる場合、病期はまた、発熱、体重減少または寝汗が認められるかどうかを示す文字、AまたはBも含む。"A"は、これらの症状が認められないことを意味し、"B"は、これらの症状が認められることを意味する。例えば、病期1B疾患患者は、1つのリンパ節領域に癌の根拠を有し、"B"症状(発熱、体重減少または寝汗)を有する。
【0065】
本発明において、DLBCLは、好ましくは、Cheson et al. (2007), J. Clin. Oncol. 25(5):579-586 の基準に基づいて病期分類される。
【0066】
本明細書で用いられる場合、"CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物"は、好ましくは医薬組成物を含む。従って、CD19xCD3二重特異性抗体は、好ましくは医薬の形態である。従って、本明細書で用いられる場合、用語"医薬組成物"と"医薬"は交換可能である。
【0067】
本明細書において、用語"医薬"は、その最も広い意味を有し、患者のDLBCLの治療に用いられる化合物(単数または複数)を含むものとする。好ましくは、DLCBLの治療に用いられる化合物はCD19xCD3二重特異性抗体である。従って、医薬組成物は、好ましくはCD19xCD3二重特異性抗体を含み、場合により薬学的に許容される担体を含む。
【0068】
薬学的に許容される担体は、滅菌注射液または分散剤の用時調製のための滅菌水溶液または分散剤および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は当該技術分野で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物に適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が考えられる。
適当な流動性は、例えば、コーティング剤(例えばレシチン)の使用、分散剤の場合における必要な粒度の維持および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0069】
抗体を含む医薬組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤、例えば(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート化剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含むことができる。本発明の医薬組成物はまた、組成物中に、等張化剤、例えば糖、ポリアルコール(例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロール)または塩化ナトリウムを含むこともできる。
【0070】
薬学的に許容される希釈剤は、生理食塩水および水性緩衝液を含む。抗体を含む医薬組成物はまた、医薬組成物の保存期限を長くするかまたは有効性を高めることができる、選択された投与経路に適した1以上のアジュバント、例えば防腐薬、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐薬または緩衝液を含むこともできる。本発明の化合物は、例えば、ラクトース、ショ糖、粉末剤(例えば、デンプン粉)、アルカン酸セルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アカシアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジンおよび/またはポリビニルアルコールと混合されることができる。アジュバントの他の例は、QS21、GM-CSF、SRL-172、ヒスタミン二塩酸塩、チモカルチン、Tio-TEPA、モノホスホリル脂質A/マイクロバクテリア組成物、ミョウバン、不完全フロイントアジュバント、モンタニドISA、リビアジュバントシステム、Titermaxアジュバント、syntexアジュバント製剤、免疫刺激複合体(ISCOM)、ゲルブ(gerbu)アジュバント、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、リポ多糖およびポリイノシンポリシチジン酸である。
【0071】
CD19xCD3二重特異性抗体を含む(医薬)組成物は、例えばWO2007/068354に記載されている。
【0072】
微生物の存在の予防は、滅菌手順ならびに種々の抗菌剤および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの含有の両方によって確実にすることができる。さらに、注射剤の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組み入れによってもたらすことができる。
本発明の化合物を含む抗体を含む医薬組成物はまた、従って適切な塩を含むこともできる。本発明の化合物の安定化に、任意の適切な塩、例えば任意の適切な形態のアルカリ土類金属塩(例えば緩衝塩)を用いることができる。一般的には、適切な塩は、塩化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムおよび塩化カルシウムを含む。一実施形態において、本発明の医薬組成物における本発明の化合物を安定化するためにアルミニウム塩が用いられるが、このアルミニウム塩はまた、このような組成物が患者に投与される場合にアジュバントとして役立つことができる。抗体を含む医薬組成物は、種々の適切な形態であることができる。このような形態は、例えば、液体、半固体および固体剤形、例えば液体溶液(例えば、注射用および注入用溶液)、分散剤または懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、ゲル、クリーム、顆粒、粉末剤、錠剤、ピル、粉末剤、リポソーム、デンドリマーおよび他のナノ粒子を含む(例えば、Baek et al., Methods Enzymol. 362, 240-9 (2003), Nigavekar et al., Pharm Res. 21(3), 476-83 (2004), microparticles, and suppositories. を参照のこと。
【0073】
"薬学的に許容される塩"とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒性作用を付与しない塩のことを言う(例えばBerge, S. M. et al., J. Pharm. Sci. 66, 1-19 (1977) を参照のこと)。このような塩の例は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、毒性のない無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸など、ならびに毒性のない有機酸、例えば脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などから誘導された塩を含む。塩基付加塩は、アルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど、ならびに毒性のない有機アミン、例えばN,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどから誘導された塩を含む。
【0074】
薬学的に許容される担体は、本発明の化合物と生理学的に適合する、ありとあらゆる適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌薬、等張化剤、抗酸化剤ならびに吸収遅延剤などを含む。本発明の医薬組成物に用いることができる適切な水性および非水性担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、コーンオイル、落花生油、綿実油およびゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガントガムならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルならびに/または種々の緩衝液を含む。他の担体は医薬品業界に公知である。
【0075】
本発明の医薬組成物は、併用療法アプローチ、すなわち他の医薬または薬物、例えば、患者において悪性CD19陽性リンパ球を治療するための他の医薬および/または本発明の方法との関係において有益であることができる任意の他の治療剤との共投与で用いることが考えられる。共投与される医薬または薬物の例は化学療法薬、例えばデキサメタゾンである。しかしながら、本明細書に記載のように、デキサメタゾンは化学療法薬であることも公知であるが、本明細書の他の部分で記載のように、本発明との関係において、デキサメタゾンは、好ましくは、副作用、例えば特に神経系作用を改善および/または回避/予防するのに役立つ化合物として用いられる。
【0076】
1以上のさらなる治療剤"との併用"投与は、共(同時)投与および、任意の順序での連続投与を含む。
【0077】
本明細書において、"治療"とは、患者へのCD19xCD3二重特異性抗体の使用もしくは投与または患者から単離された組織または細胞株へのCD19xCD3二重特異性抗体の使用もしくは投与と定義され、ここで患者はDLBCLを有するか、またはDLBCLを発症するリスクを有するか、DLBCLの症状を有するか、もしくはDLBCLの素因を有し、ここで目的は、DLBCL、DLBCLの症状もしくはDLBCLの素因を治療する、治癒する、軽減する、和らげる、変える、治す、改良する、改善する、またはそれに作用することである。"治療"とはまた、CD19xCD3二重特異性抗体を含む医薬組成物の患者への使用もしくは投与またはCD19xCD3二重特異性抗体を含む医薬組成物の、患者から単離された組織もしくは細胞株への使用もしくは投与を意味し、ここで患者は疾患、疾患の症状または疾患の素因を有し、ここで目的は、疾患、疾患の症状または疾患の素因を治療する、治癒する、軽減する、和らげる、変える、治す、改良する、改善する、またはそれに作用することである。本発明に用いられる医薬組成物は、好ましくは、CD19xCD3二重特異性抗体の"治療的有効量"を含む。
【0078】
一実施形態において、DLBCLに対する組成物の"治療的有効量"または"有効量"とは、同義で、この組成物の非存在下と比較して、DLBCLと関連する1以上の症状(例えば、臨床症状、生化学的症状など)を遅延させる、減少させる、和らげる、改良する、安定化する、予防するおよび/または後退させる組成物の量のことを言う。これには、所望の治療結果を得るために必要な用量および期間を用いることが含まれる。症状を"遅延させる"という用語は、本明細書に記載されるように、CD19xCD3二重特異性抗体の暴露と1以上の症状の開始との間の期間を大きくすることを言う。症状を"除去する"という用語は、本明細書に記載されるように、1以上の症状の40、50、60、70、80、90%の減少、またはさらには100%の減少を言う。治療的有効量はまた、組成物の任意の毒性効果または有害な影響よりも治療的に有益な効果がまさるものも含む。
【0079】
"予防的有効量"とは、所望の予防結果を得るのに必要な用量および期間で有効な量のことを言う。予防用量は、疾患の前または初期の病期の被験者において用いられるため、予防的有効量は治療的有効量より少なくてもよい。具体的な用量は臨床試験によって容易に決定することができ、それは、例えば個人の投与経路、疾病状態、年齢、性別および体重に左右される(例えば、体重1kg当たりの薬物のミリグラム数)。予防は、例えば、悪性CD19発現細胞を除去する(枯渇する)ために幹細胞治療、好ましくは自己幹細胞治療の前に患者に投与される場合、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性抗体の使用によって達成することができる。用量については、以下にさらに詳細に説明する。
【0080】
正確な用量は、治療の目的によって決まり、当業者によって公知の技術を用いて確認されることができる。当該技術分野で公知なように、前述したように、年齢、体重、一般健康状態、性別、日常の飲食物、薬剤相互作用および疾患の重症度に応じて調整が必要な場合があり、これは当業者によって、ルーチン試験を用いることにより確認されることができる。本発明の各方法または方法段階の治療効果は、治療効果を示すすべての確立されたおよびアプローチによってさらに検出可能である。例えば、罹患組織/器官の外科的切除または生検によって治療効果が検出され、続いてそれが、免疫組織化学(IHC)またはそれに匹敵する免疫学的技術によって分析されることが考えられる。あるいは、その治療的アプローチがすでに有効であるかどうかを診断するために、患者の血清中の腫瘍マーカー(存在する場合)を検出することも考えられる。これに加えて、あるいはこれに代えて、各患者の一般所見(良好な体調、満足のいく状態、腫瘍を介した疾患の減少など)を評価することも可能であり、これはまた、治療効果がすでに表れているかどうかを当業者が評価するのにも役立つ。本発明の化合物の治療効果の観察を可能にする多数の他の方法は当業者に公知である。
【0081】
"治療的もしくは予防的有効用量"または"治療的もしくは予防的有効量"とはまた、投与された場合、CD19発現細胞と関連するDLBCLまたは前悪性状態を有する患者の治療に治療陽性反応をもたらすCD19xCD3二重特異性抗体の量を意味する。適切な用量は、本明細書の他の部分でさらに詳細に説明されている。
従って、一般に、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物が、CD19発現細胞と関連するDLBCLまたは前悪性状態を有する患者の治療に治療陽性反応をもたらすことが好ましい。
【0082】
DLBCLまたはそれに関連する前悪性状態に対する"治療陽性反応"とは、CD19xCD3二重特異性抗体の治療活性および/またはDLBCLもしくはそれに関連する前悪性状態と関連する症状の改善と関連するDLBCLもしくはそれに関連する前悪性状態の改善を意味する。すなわち、抗増殖効果、さらなる腫瘍増殖の予防、腫瘍サイズの縮小、癌細胞数の減少および/または、CD19発現細胞と関連する1以上の症状の減少を観察することができる。従って、例えば、治療陽性反応は、以下の疾患の改善の1以上を指すであろう:(1)腫瘍サイズの縮小;(2)癌(すなわち新生物)細胞数の減少;(3)腫瘍細胞死の増加;(4)腫瘍細胞生存の抑制;(4)腫瘍増殖の抑制(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);(5)癌細胞の末梢器官への浸潤の抑制(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);(6)腫瘍転移の抑制(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);(7)さらなる腫瘍増殖の予防;(8)患者の生存率の増加;および(9)DLBCLと関連する1以上の症状のある程度の軽減。
【0083】
任意の所定の悪性腫瘍における治療陽性反応は、その悪性腫瘍に特異的な標準的応答基準によって決定することができる。スクリーニング技術、例えば核磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン、X線イメージング、CTスキャン、骨スキャンイメージング、内視鏡検査ならびに、骨髄穿刺(BMA)および循環血液中における腫瘍細胞の計数を含む腫瘍生検試料採取を用いて、腫瘍の形態(すなわち全腫瘍量、腫瘍サイズなど)の変化に関して腫瘍応答を評価することができる。これらの治療陽性反応に加えて、CD19xCD3二重特異性抗体での治療を行っている患者は、疾患と関連する症状の改善に関する有益な効果を経験することができる。従って、DLBCLに関しては、患者は、本明細書に記載のいわゆるB症状、例えば寝汗、発熱、体重減少および/またはじんま疹の症状の減少を経験することができる。
【0084】
本疾患の改善は、完全奏効で特徴づけることができる。"完全奏効"とは、イメージング検査、例えば以前認められたX線撮影検査における異常が正常化されることによって、臨床的に検出可能な疾患が認められないことを意味する。このような応答は、本発明の治療後、好ましくは、少なくとも4〜8週間、場合により6〜8週間、または8、10、12、14、16、18、20週間もしくはそれ以上持続する。あるいは、本疾患の改善は、部分奏効で分類することもできる。"部分奏効"とは、新規病変が認められず、すべての測定可能な腫瘍量(すなわち、患者に存在する悪性細胞数または腫瘤の測定容積)において少なくとも約50%の減少が認められることを意味し、これが4〜8週間または8、10、12、14、16、18、20週間もしくはそれ以上持続することを意味する。しかしながら、"完全奏効"は、必ずしもDLBCLが治癒したことを意味するわけではない。なぜなら、患者は再発しうるからである。しかしながら、その場合、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物で患者を再度治療することができる。NHL患者についての詳細な寛解および応答の定義は、Cheson et al., 1999, J. Clin. Oncol. Apr;17(4):1244 に準じて用いられる。
【0085】
いくつかの実施形態において、患者は、好都合には、化学療法、例えばCHOPもしくはDHAP、実験化学療法および/または化学免疫療法例えばR-CHOP、R-DHAP、R-ICE、R-VIPE、R-Treo/Fludで前治療を受けているかまたは自己幹細胞治療(SCT)を受けたことがある。
"前治療を受けている"または"前治療"とは、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物の投与の前に患者が1以上の他のDLBCL治療を受けている(すなわち、少なくとも1つの他のDLBCL治療で治療されている)ことを意味する。"前治療を受けている"または"前治療"は、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物での治療開始前の2年以内、18ヶ月以内、1年以内、6ヶ月以内、2ヶ月以内、6週間以内、1ヶ月以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、6日間以内、5日間以内、4日間以内、3日間以内、2日間以内に、またはさらには1日以内に少なくとも1つの他のDLBCL治療で治療を受けた患者を含む。患者が、以前のDLBCL治療での前治療に対するレスポンダーであった必要はない。従って、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物の投与を受ける患者は、以前のDLBCL治療での前治療に、あるいは前治療が複数のDLBCL治療を含む場合の以前のDLBCL治療の1以上に応答した場合であっても、あるいは応答しなかった(すなわちDLBCLが難治性であった)場合であってもよい。
【0086】
さらに、他の実施形態において、患者は、SCTを受ける前に本発明の手段および方法に従って治療される。
【0087】
いくつかの実施形態において、患者は化学療法治療または実験化学療法治療に難治性である、かつ/または化学療法または実験化学療法治療での治療後に再発している。
【0088】
前述の実施形態のいくつかにおいて、患者は標準的化学療法薬または実験化学療法治療に耐性を示す。
【0089】
"患者"は、CD19xCD3二重特異性抗体で治療を受ける予定であるかまたは受けるヒト個体(または被験者)である。本発明では、患者は、悪性CD19陽性リンパ球(特にB細胞)を含むかまたは既に含むことが疑われる/想定される。後者の場合、前記患者は、このような細胞、すなわちDLBCLを含むことがすでに診断されている(好ましくは、上述したように)。これらの悪性CD19陽性リンパ球(特にB細胞)は、DLBCLを発症しているおよび/または患っている患者に存在する。本発明では、患者は、従って、悪性CD19陽性リンパ球の治療を必要としている。
【0090】
"悪性"は、徐々に悪化する疾患、特にDLBCLに寄与するリンパ球(特にB細胞)の説明に用いられる。この用語は、癌(本明細書においてはDLCBL)の説明として最もよく知られている。悪性CD19陽性リンパ球(特にB細胞)は、その増殖において自己限定性ではなく、隣接組織に侵入することができ、遠隔組織に広がる(転移する)ことができる。本明細書で用いられる場合、悪性は癌性と同義である。
【0091】
しかしながら、"正常"(非悪性)リンパ球(特にB細胞)もまたCD19を発現するため、CD19xCD3二重特異性抗体がこれらの正常リンパ球(特にB細胞)にも結合し、細胞傷害性T細胞の動員によって(二重特異性CD19xCD13抗体の2番目の特異性によって)これらの正常B細胞が枯渇されることが想定されなければならない。それにもかかわらず、CD19xCD3二重特異性抗体の非存在下でこれらの正常B細胞の集団が再構成されることが想定される。抗CD20抗体によるそれらの枯渇後に、関節リウマチ患者においてB細胞が再構成されたことがLeandroおよび共同研究者によって観察された(Arthritis Rheum. 2006 Feb;54(2):613-20)。CD20は、CD19と同様にほとんどのB細胞上で発現されるため、二重特異性CD19xCD3抗体によって枯渇された場合のB細胞もまた再構成されると想定することができる。
【0092】
用語"投与する"とは、その文法形式すべてにおいて、単独治療剤または他の治療剤との併用のいずれかでのCD19xCD3二重特異性抗体(医薬組成物の形態で)の投与を意味する。従って、本発明との関係において、"CD19xCD3二重特異性抗体の投与"もしくは"CD19xCD3二重特異性抗体を投与する"またはそれらの任意の他の文法形式は、そのCD19xCD3抗体が、組成物、好ましくは場合により薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態であることを意味する。従って、組成物、好ましくはCD19xCD3二重特異性抗体を含む医薬組成物がヒト患者に投与されることが理解されるべきである。患者に投与される場合、好ましくは、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物の治療的有効用量が患者に投与される。従って、本発明の組成物は、好ましくは、CD19xCD3二重特異性抗体の"治療的有効量"または"予防的有効量"を含む。
【0093】
同様に、CD19xCD3二重特異性抗体を含む組成物が抗腫瘍活性を有することもまた好ましい。"抗腫瘍活性"とは、悪性CD19発現細胞の増殖または蓄積速度の減少を意味し、故に既存の腫瘍の増殖速度の減少もしくは治療中に生じる腫瘍の減少および/または既存の新生物(腫瘍)細胞もしくは新しく形成された腫瘍細胞の破壊を意味し、故に治療中の腫瘍の全サイズの減少を意味する。少なくとも1つのCD19xCD3二重特異性抗体を用いる治療によって、疾病状態の治療に関して有益な生理的応答が引き起こされる。
【0094】
本明細書において、"腫瘍"とは、悪性CD19発現B細胞のすべての腫瘍細胞の発育増殖ならびにDLBCLを引き起こすすべての前癌および癌性B細胞および組織のことを言う。腫瘍は、DLBCLによって引き起こされる腫瘍性腫瘤、特にリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤をもたらす。本明細書において、"新生物"とは、異常な組織発育をもたらす任意の形態の調節不全または調節異常細胞増殖のことを言う。従って、"腫瘍細胞"は、調節不全または調節異常細胞増殖を有する悪性B細胞を含む。
【0095】
用語"癌"および"癌性"は、一般的には調節異常細胞増殖を特徴とする、患者における生理的状態を指すかまたは説明する。本発明との関係において、癌は、好ましくはDLBCLである。
【0096】
DLBCLによって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤は、好ましくは、10x10mmを超えるサイズ、より好ましくは15x15mmを超えるサイズ、よりさらに好ましくは20x20mmまたはそれ以上を超えるサイズを有する腫瘍を特徴とする。同様に、3次元で測定される場合、DLBCLによって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘍性腫瘤は、好ましくは、10x10x10mmを超えるサイズ、より好ましくは15x15x15mmを超えるサイズ、よりさらに好ましくは20x20x20mmまたはそれ以上を超えるサイズを有する腫瘍を特徴とする。
【0097】
リンパ節組織は、好ましくは、リンパ節(リンパ節領域および/またはリンパ構造を含む)および脾臓を含む。リンパ節領域は、リンパ節および周辺組織の領域と定義することができる。例は、頚部における頚部リンパ節、腋窩における腋窩リンパ節、鼠径における鼠径リンパ節および/または胸部における縦隔リンパ節を含む。リンパ構造は、リンパ系の一部である器官または構造、例えばリンパ節、脾臓および胸腺と定義することができる。
従って、前述の実施形態のいくつかにおいて、患者は、特に、少なくとも1つ以上の、2つ以上の、3つ以上の、4つ以上のまたは5つ以上の腫脹したリンパ節(単数または複数)を有する。
【0098】
"節外性リンパ腫":ルーチンの病期分類手順後に、臨床的に'優位な'節外性構成要素(多くの場合、これに一次治療が向けられなければならない)に加えて、リンパ節転移がないか、または'小'転移のみが存在する場合、リンパ腫を節外性とみなすことができる。好ましくは、節外性リンパ腫は、中枢神経系(CNS)、皮膚組織、乳房、肺、肝臓、消化管、泌尿生殖路、眼組織、骨髄および/または骨を含む。
【0099】
本明細書において言及した医薬組成物の投与は、好ましくは静注である。これは、継続的に(持続的に)投与されることができる。
継続投与は、本質的に中断せずに行う投与のことを言う。"本質的に中断せずに"は、通例、途切れのない流れまたは空間的拡張なしの継続投与を含む。
【0100】
好ましい実施形態において、(医薬)組成物の1回目投与量は第1期間に投与され、続いて組成物の2回目投与量は第2期間に投与され、ここで2回目投与量は1回目投与量を超える。
【0101】
用語"超える"とは、第2期間が第1期間よりは少なくとも1日長いことを意味する。
【0102】
本明細書において示した用量または日数範囲は、1、2、3、4または5きざみで増加させて例示されていることが理解されなければならない。しかしながら、これらの範囲は、2以上のきざみの場合は、より小さなきざみ、例えば1のきざみ(10から30は、例えば10、11、12、13、13などから30までを含む)またはより小さなきざみ、例えば小数点以下の数値で例示されるものを含む。
【0103】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記第1期間は少なくとも3日間の期間であり、それによってより長い期間、例えば8、9、10、11、12、13または14日間の期間が排除されないと考えられる。"より長い"は、それによって、最も短い時間単位として丸1(一)日に限定されない。すなわち、1/2日間または丸数時間もまた考えられる。しかしながら、最も短い時間単位は丸1日が好ましい。
【0104】
従って、前記第1期間は3日間を超える。より好ましくは、前記第1期間は3日間から10日間の間であることが考えられるが、7日間が特に好ましい。
【0105】
本明細書において、"XからY"と定義される時間間隔は、"XからYの間"と定義される時間間隔と等しい。両方の時間間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、時間間隔"3から10日間"または"3から10日間"の間は、1、2、3、4、5、6、7および/または8日間の期間を含むことを意味する。
【0106】
第1期間の期間、第2期間の期間は、例えばヒト患者の年齢、性別、体重などを考慮して変えることができる。
【0107】
従って、本発明の他の好ましい実施形態において、前記第2期間は少なくとも18日間の期間であり、それによってより長い期間、例えば19、20、25、30、35、40、45、49、50、55、60、65、60、65、70、75、80、81、82、83、84、85、86、87、88または90日間の期間が排除されないと考えられる。"より長い"は、それによって、最も短い時間単位として丸1(一)日に限定されない。すなわち、1/2日間または丸数時間もまた考えられる。しかしながら、最も短い時間単位は丸1日が好ましい。
【0108】
従って、前記第2期間は18日間を超える。より好ましくは、前記第2期間は18日間から81日間の間であることが考えられ、21日間または49日間が特に好ましい。
【0109】
本明細書において、"XからY"と定義される時間間隔は、"XからYの間"と定義される時間間隔と等しい。両方の時間間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、時間間隔"18から81日間"または"18から81日間"の間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、61、62、63および/または64日間の期間を含むことを意味する。
【0110】
本発明のより好ましい実施形態において、前記第1期間は3日間から10日間の間であり、前記第2期間は18日間から81日間の間である。
【0111】
よりさらに好ましい実施形態において、前記第1期間は7日間であり、前記第2期間は21日間または49日間である。
【0112】
従って、本発明の方法/用法・用量のさらに好ましい実施形態において、前記1回目投与量は、1から15μg/m
2/dの間、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m
2/dである。5または15μg/m
2/dの用量が特に好ましい。
【0113】
本明細書において、"XからYの間"と定義される用量間隔は、"XからY"と定義される用量間隔と等しい。両方の時間間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、用量間隔"1から15の間"または"1から15"は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m
2/dの用量を含むことを意味する。
【0114】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、その後に高投与量に増加させない抗体の均一な用量の継続投与を含む。例えば、本投与は、8週間[56日間]までの治療期間の終わりまで、およびそれ以上にわたって、安全かつ効果的であると決定された場合、CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の60μg/m
2/24時間、15μg/m
2/24時間または5μg/m
2/24時間の投与を含む。"日"は1日を意味する。
【0115】
"m
2"は、患者の体表面(BSA)の平方メートルを意味する。"典型的な"平均BSAには、一般に、成人に関しては約1.73m
2、新生児に関しては約0.25m
2、2歳児に関しては約0.5m
2、9歳児に関しては約1.07m
2、10歳児に関しては約1.14m
2、12〜13歳児に関しては約1.33m
2、男性に関しては約1.9m
2、女性に関しては約1.6m
2が採用される。
しかしながら、BSAは、次式のうちの1つによってより正確に算出することができる(BSAを算出する場合、これらの式のそれぞれを用いることができる):
-Mosteller式(Mosteller, N Engl J Med 1987 Oct 22; 317(17): 1098):
BSA(m
2)=([高さ(cm)x体重(kg)]/3600)
1/2、またはインチおよびポンド:
BSA(m
2)=([高さ(インチ)x体重(ポンド)]/3131)
1/2
-DuBois式(DuBois, Arch Int Med 1916 17:863-871):
BSA(m
2)=0.007184x高さ(cm)
0.725x体重(kg)
0.425
-Haycock式(Haycock, The Journal of Pediatrics 1978 93:1: 62-66):
BSA(m
2)=0.024265x高さ(cm)
0.3964x体重(kg)
0.5378
-Gehan式(Gehan, Cancer Chemother Rep 1970 54:225-35):
BSA(m
2)=0.0235x高さ(cm)
0.42246x体重(kg)
0.51456
-Boyd式(Boyd, University of Minnesota Press, 1935)
BSA(m
2)=0.0003207x高さ(cm)
0.3x体重(グラム)
(0.7285-(0.0188x log10(グラム)
【0116】
本明細書に開示された用量のそれぞれは、一般に、各用量に係数1.9を掛け合わせることによって量(μg)/m
2/dからμg/dに変換できることが好ましい。従って、本明細書に開示された用量のそれぞれは、それに係数1.9を掛け合わせることによって本方法および使用に用いることができる。例えば、用量5μg/m
2/dは、9.5μg/dに変換され、用量15μg/m
2は28.5μg/m
2/に変換され、用量60μg/m
2/は114μg/m
2に変換される。掛け算によって得られた10進数は、それぞれ、切り上げか切り捨てによって整数にすることが好ましい。例えば、用量9.5μg/dは切り捨てによって9μg/dにすることができ、用量28.5μg/m
2は切り捨てによって28μg/dにすることができる。同様に、用量9.5μg/dは切り上げによって10μg/dにすることができ、用量28.5μg/m
2は切り上げによって29μg/dにすることができる。
【0117】
用語"μg"は、"CD19xCD3二重特異性抗体調製物のμg"を含む。前記CD19xCD3二重特異性抗体調製物のうち10%以下が誤って折り畳まれていることが好ましい。従って、好ましい実施形態において、CD19xCD3二重特異性抗体のうち90%、91%、92%、93%、94%またはさらには95%は正しく折りたたまれている。例えば、WO2005/052004を参照のこと。抗体調製物は、場合により、さらなる成分、例えば凍結保護剤(lyoprotectant)、界面活性剤、充填剤、バインダーおよび/または増量剤(bulking agent)などを含むことができることも考えられる。このようなさらなる成分の量は、好ましくは、本発明の"用量"および/または方法(用法・用量)に関連して用いられるとき、用語"μg"には含まれない。
【0118】
例えば、用量1μg/m
2/dは、CD19xCD3二重特異性抗体1μgが、各患者の体表面1平方メートルあたり1日にわたって均等にまたは持続的に投与されることを意味する。"1日にわたって持続的に"とは、中断なしに永続的に進行されることが可能な注入のことを言う。
【0119】
前記2回目投与量が15から60μg/m
2/dの間である、すなわち15、20、25、30、35、40、45、50、55および60μg/m
2/dであることは好ましい実施形態である。用量60μg/m
2/dが特に好ましい。従って、前記2回目投与量は治療的に活性である。
好ましい実施形態において、前記1回目投与量は5から15μg/m
2/dの間であり、前記2回目投与量は15から60μg/m
2/dの間である。
【0120】
本明細書において、"XからYの間"と定義される用量間隔は、"XからY"と定義される用量間隔と等しい。両方の用量間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、用量間隔"15から60の間"または"15から60"は、用量15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59および/または60μg/m
2/dを含むことを意味する。
【0121】
本明細書で示された範囲は、5のきざみで例示されていることが理解されなければならない。しかしながら、これらの範囲はまた、より小さなきざみ、例えば1のきざみ(10から30は、例えば10、11、12、13、13などから30までを含む)またはより小さなきざみ、例えば小数点以下の数値で例示されるものを含む。
【0122】
好ましくは、CD19xCD3二重特異性抗体を用いる本発明の使用および方法には、以下の投与スキームは含まれない:
(i)1日分の二重特異性抗体5μg/m
2を投与し、残りの期間(2回目およびそれぞれのさらなる日数連続で)、1日量として15μg/m
2を投与すること;および/または
(ii)1日分の二重特異性抗体15μg/m
2を投与し、残りの期間(2回目およびそれぞれのさらなる日数連続で)、1日量として45μg/m
2を投与すること;および/または
(iii)1日分の二重特異性抗体5μg/m
2を投与し、次いで1日分15μg/m
2を投与し、残りの期間(3回目およびそれぞれのさらなる日数連続で)、1日量として45μg/m
2を投与すること;および/または
(iv)1日分の二重特異性抗体10〜80μg/m
2未満を投与し、次いで用量10〜80μg/m
2(2回目およびそれぞれのさらなる日数連続で)を投与すること;および/または
(v)1日分の二重特異性抗体10〜80μg/m
2未満を投与し、次いで1日分の用量10〜80μg/m
2未満を投与し、次いで10〜80μg/m
2未満の用量(3回目およびそれぞれのさらなる日数連続で)を投与すること。
【0123】
本願の他の好ましい実施形態において、前記抗体の3回目投与量は、第1および第2期間に1回目および2回目投与量を投与した後に第3期間に投与される。従って、本発明は、本明細書に記載の使用および方法に用いられる3ステージ(3段階)投与スキーム(用法・用量)を提供する。
【0124】
前記3回目投与量の投与は、好ましくは静脈内に投与される。この投与は、好都合には持続的に投与される。
【0125】
本発明の好ましい実施形態において、前記第3期間は前記第1および第2期間を超える。用語"超える"は、第3期間が第1および第2期間よりも少なくとも1日長いことを意味する。 第1および第2期間の期間と同様に、第3期間の期間は、例えばヒト患者の年齢、性別、体重などを考慮して変えることができる。
【0126】
本発明の3ステージ投与計画において、前記第1期間は少なくとも3日間の期間であり、それによってより長い期間、例えば8、9、10、11、12、13または14日間の期間が排除されないと考えられる。"より長い"は、それによって、最も短い時間単位として丸1(一)日に限定されない。すなわち、1/2日間または丸数時間もまた考えられる。しかしながら、最も短い時間単位は丸1日が好ましい。
従って、前記第1期間は3日間を超える。より好ましくは、前記第1期間は3日間から10日間の間であることが考えられ、7日間が特に好ましい。
【0127】
本明細書において、"XからY"と定義される時間間隔は、"XからYの間"と定義される時間間隔と等しい。両方の時間間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、時間間隔"3から10日間"または"3から10日間"の間は、1、2、3、4、5、6、7および/または8日間の期間を含むことを意味する。
【0128】
本発明の3ステージ投与スキームにおいて、前記第2期間は少なくとも3日間の期間であり、それによってより長い期間、例えば8、9、10、11、12、13または14日間の期間が排除されないと考えられる。"より長い"は、それによって、最も短い時間単位として丸1(一)日に限定されない。すなわち、1/2日間または丸数時間もまた考えられる。しかしながら、最も短い時間単位は丸1日が好ましい。
従って、前記第1期間は3日間を超える。より好ましくは、前記第1期間は3日間から10日間の間であることが考えられるが、7日間が特に好ましい。
【0129】
本明細書において、"XからY"と定義される時間間隔は、"XからYの間"と定義される時間間隔と等しい。両方の時間間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、時間間隔"3から10日間"または"3から10日間"の間は、1、2、3、4、5、6、7および/または8日間の期間を含むことを意味する。
【0130】
本発明の3ステージ投与スキームにおいて、前記第3期間は少なくとも8日間の期間であり、それによってより長い期間、例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70および/または71日間の期間は排除されないことが考えられる。"より長い"は、それによって、最も短い時間単位として丸1(一)日に限定されない。すなわち、1/2日間または丸数時間もまた考えられる。しかしながら、最も短い時間単位は丸1日が好ましい。
従って、前記第1期間は8日間を超える。より好ましくは、前記第1期間は8日間から78日間の間であることが考えられるが、14または42日間が特に好ましい。
【0131】
本明細書において、"XからY"と定義される時間間隔は、"XからYの間"と定義される時間間隔と等しい。両方の時間間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、時間間隔"18から78日間"または"18から78日間"の間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、61、62 63、64、65、66、67、68、69、70および/または71日間の期間を含むことを意味する。
【0132】
本発明の3ステージ投与スキームのより好ましい実施形態において、前記第1期間は3日間から10日間の間であり、前記第2期間は3日間から10日間の間であり、前記第3期間は8日間から78日間の間である。
【0133】
よりさらに好ましい実施形態において、前記第1期間は7日間であり、前記第2期間は7日間であり、前記第3期間は14または42日間である。
【0134】
本発明の3ステージ投与スキームの好ましい実施形態において、前記3回目投与量は前記1回目および2回目投与量を超える。前記2回目および3回目投与量は、好ましくは治療的に活性である。前記2回目投与量は、前記1回目投与量を超えることに注目すべきである。
【0135】
従って、本発明の3ステージ投与スキームのさらに好ましい実施形態において、前記1回目投与量は1から15μg/m
2/dの間であり、好ましくは5から15μg/m
2/dであり、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m
2/dである。用量5または10μg/m
2/dが特に好ましい。
【0136】
本発明の3ステージ投与スキームのさらに好ましい実施形態において、前記2回目投与量は1から15μg/m
2/dの間であり、好ましくは5から15μg/m
2/dの間であり、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m
2/dである。用量15μg/m
2/dが特に好ましい。
【0137】
本明細書において、"XからYの間"と定義される用量間隔は、"XからY"と定義される用量間隔と等しい。両方の時間間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、用量間隔"1から15の間"または"1から15"は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m
2/dの用量を含むことを意味する。
【0138】
本発明の3ステージ投与スキームのさらに好ましい実施形態において、前記3回目投与量は15から120μg/m
2/dの間であり、より好ましくは15から90μg/m
2/dの間であり、すなわち15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85および90μg/m
2/dであり、よりさらに好ましくは、前記3回目投与量は15から60μg/m
2/dの間であり、よりさらに好ましくは20から60μg/m
2/dの間であり、すなわち15、20、25、30、35、40、45、50、55および60μg/m
2/dである。用量60μg/m
2/dまたは90μg/m
2/dが特に好ましい。
【0139】
本発明の3ステージ投与スキームの好ましい実施形態において、前記1回目投与量は1から15μg/m
2/dの間であり、前記2回目投与量は1から15μg/m
2/dの間であり、前記3回目投与量は15から60μg/m
2/dまたは15から90μg/m
2/dまたは15から120μg/m
2/dの間である。
前記1回目投与量が5μg/m
2/dであり、前記2回目投与量が15μg/m
2/dであり、前記3回目投与量が60または90μg/m
2/dであることが特に好ましい。
【0140】
本明細書において、"XからYの間"と定義される用量間隔は、"XからY"と定義される用量間隔と等しい。両方の用量間隔は、具体的には、上限と共に下限もまた含む。このことは、例えば、用量間隔"15から60の間"または"15から60"は、用量15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59および/または60μg/m
2/dを含むことを意味する。同様に、このことは、例えば、用量間隔"15から90の間"または"15から90"は、用量15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、86、87、88、89または90μg/m
2/dを含むことを意味する。
【0141】
好ましい実施形態において、デキサメタゾンはCD19xCD3二重特異性抗体と共に投与される。具体的には、この投与は、CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の1回目投与量の投与の前のデキサメタゾンでの1以上の前治療段階(単数または複数)を含む。3ステージ投与スキームにおいて、デキサメタゾンは、CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の1回目投与量の前ならびに2回目および/または3回目投与量への増加の前に投与される。さらにまた、デキサメタゾンは、場合により、1回目投与量の後の追加の1または2日間およびそれぞれの継続的用量増加の後に投与される。上記のように、デキサメタゾン治療によって、(有害)神経系作用/反応、例えば錯乱、運動失調、失見当識、嚥下障害、失語症、言語障害、小脳症状、振戦、失行症、発作、大発作てんかん、麻痺および/または平衡障害が減少または軽減することが観察された。
【0142】
より具体的には、3ステージ投与スキームにおいて、デキサメタゾンは、CD19xCD3二重特異性抗体の1回目投与量の投与の前の6から48時間の間の範囲で投与され、より好ましくは、最初の投与の前の6から12時間の間、より好ましくは12時間前で投与される。次いで、抗体の1回目投与量が投与されるおおよそ1時間(15分〜2時間の範囲、30分、45分、60分、75分、90分を含む)前、デキサメタゾンの用量が患者に再度投与される。次いで、デキサメタゾは、抗体の1回目投与の後の1日以上、好ましくは2〜3日間、好ましくは最初の抗体の投与の後の2日間に投与され、各用量増加の後の2日以上、好ましくは抗体の用量増加の投与の後の2日間に投与される。デキサメタゾンの用量のそれぞれは、好ましくは6から40mgの間であり、好ましくは1用量当たりおおよそ20または24mgである。
【0143】
6から48時間の間の時間範囲は、デキサメタゾン用量の投与を含み、抗体の最初の投与の前の時間が6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47および48時間であることを意味する同様に、6から12時間の間の好ましい時間範囲は、抗体の最初の投与の前のデキサメタゾン用量の投与を含み、かつ6、7、8、9、10、11および12時間を含む。
【0144】
他の実施形態において、デキサメタゾンは、CD19xCD3二重特異性抗体の用量が増加される間、2日間、3日間、4日間、または5日間投与される。例えば、デキサメタゾンは、第1時点で用量6から40mgまたは6から48mgで、好ましくは20、24、28、32、36、40、44または48mgで、好ましくは20または24mgで投与され、第2時点で好ましくは用量8、12、16、20または24mgで、好ましくは16mgで投与され、かつ/または第3時点で、好ましくは用量2、4、6、8、10または12mgで、好ましくは8mgで投与される。また、デキサメタゾンは、第4時点または第5時点で、好ましくは用量2、4、6、8、10または12mgで、好ましくは8mgで投与されることもできる。
【0145】
他の実施形態において、それぞれ、第1期間と第2期間の間または第2期間と第3期間の間に、CD19xCD3二重特異性抗体の用量の増加中にデキサメタゾンが投与される場合、本明細書に記載されるように、デキサメタゾンは、n-3、n-2、n-1、n、n+1、n+2および/またはn+3の日(nは、それぞれ第1または第2期間の最終日である)に投与され、ここでn-3とn+3の間の最大日数は3、4または5日間であり、好ましくは3または4日間である。例えば、デキサメタゾンは、n-3日とn+1日の間(すなわち5日間)、またはn-3日とn日の間(すなわち4日間)、n-2日とn+1日の間(すなわち4日間)またはn-1日とn+1日の間(すなわち3日間)に投与することができる。
【0146】
従って、デキサメタゾンが3、4または5日間投与される場合、好ましくは上記の投与スキームが用いられることが考えられる:
-第1時点において、好ましくは用量20、24、28、32、36、40、44または48μgで、好ましくは24μgで(同じ用量を、μg単位の代わりにmg単位で投与することができる)投与され、
-第2時点において、好ましくは用量8、12、16、20または24μgで、好ましくは16μgで(同じ用量を、μg単位の代わりにmg単位で投与することができる)投与され、
-第3時点において、好ましくは用量2、4、6、8、10または12μgで、好ましくは8μgで(同じ用量を、μg単位の代わりにmg単位で投与することができる)投与され、
-第4時点において、好ましくは用量2、4、6、8、10または12μgで、好ましくは8μgで(同じ用量を、μg単位の代わりにmg単位で投与することができる)投与され、かつ/または
-第5時点において、好ましくは用量2、4、6、8、10または12μgで、好ましくは8μgで(同じ用量を、μg単位の代わりにmg単位で投与することができる)投与される。
【0147】
あるいは、デキサメタゾンの用量は、各投与において同じ[6〜40mg]であることができ、好ましくは1用量当たり20または24mgであることができる。
【0148】
好ましくはまた、神経系作用が観察されたときにCD19xCD3二重特異性抗体が投与される場合、第1、第2および/または第3期間の間の任意の日にデキサメタゾンが投与されることが考えられる。
【0149】
本発明の別の実施形態は、上記のように、その後の高投与量に増加させない、抗体の均一なまたは一定投与量を投与することである。例えば、本投与は、8週間[56日間]までの治療期間の終わりまで、およびそれ以上にわたって、安全かつ効果的であると決定された場合、CD19xCD3二重特異性一本鎖抗体の5μg/m
2/24時間、15μg/m
2/24時間または60μg/m
2/24時間の投与を含む。この実施形態において、デキサメタゾンは6から48時間、好ましくは6から12時間の範囲で、より好ましくは6または12時間で投与され、抗体の1回目投与量の投与の前、再度1時間以内に(15分〜2時間の範囲、30分、45分、60分、75分、90分を含む)投与される。抗体の投与後に、そして神経系作用が観察された場合、デキサメタゾンは、好ましくは1日以上、好ましくは2〜3日間投与される。
【0150】
デキサメタゾンは、公知の免疫抑制剤であるため、T細胞(CD4
+およびCD8
+T細胞)を含む免疫細胞の活性を抑制することが知られており、従って、CD19xCD3二重特異性抗体が強力な(活性)T細胞をつなぐことができることを予期できなかったが、本発明者らは、その正反対であることを観察した。実際、CD19xCD3二重特異性抗体によってつながれたT細胞は明らかに強力であった。なぜなら、DLBCL患者での臨床試験において、腫瘤の顕著な縮小が観察されたからである(添付の実施例を参照のこと)。
【0151】
他の側面において、本発明は、患者において、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)によって引き起こされるリンパ節組織および/または節外性リンパ腫の腫瘤を治療するための医薬キットであって、前記請求項のいずれか1つに記載の組成物および場合により使用説明のための手段(使用説明シート)を含む前記キットに関する。
【0152】
よりさらなる側面において、本発明は、本明細書で定義する1回目投与量および2回目投与量を含む(医薬)キットまたは医薬パッケージに関する。
【0153】
他の側面において、本発明は、本明細書で定義する1回目投与量および2回目投与量ならびに、3ステージ用法・用量/方法に関連して定義される3回目投与量も含む(医薬)キットまたは医薬パッケージに関する。
【0154】
さらに他の側面において、(医薬)キットまたは医薬パッケージは、3ステージ用法・用量/方法に関連して本明細書で定義する3つすべての用量、すなわち1回目、2回目および3回目投与量を含む。
【0155】
前記1回目、2回目および3回目投与量は、それによって、1つのシールした医薬パッケージまたはキットにパッケージングされる。当然のことながら、"1回目投与量"、"2回目投与量"および"3回目投与量"は、この点において、所定の期間(第1または第2期間のいずれか)用いられる単回投与の各数を含む。このことは、例えば、本発明の医薬パッケージまたはキットに含まれる"1回目投与量"または"2回目投与量"が、例えば、別々にされた7つの1日量を含むことを意味する。パッケージングした1日量の数は、それによって対象とする期間(前記期間がX日間の場合、X1日量、期間がY日間の場合、Y1日量など)を反映する。これらの実施形態において、(医薬)キットまたは医薬パッケージは、単一パッケージ中に別々の容器で1日量を含む。
【0156】
あるいは、対象とする1回目投与量および/または2回目投与量および/または3回目投与量が各数の1日量に分離されず、全部または一部分のいずれかで、第1および/または第2期間のいずれかの必要な用量を一部分において(例えば1〜3日間用)または全部で(すなわち第1または第2期間用)1つの単一容器(例えば注入バッグ)に含まれることもまた考えられる。このことは、1つの単一容器が、第1期間などの間に用いられる予定の"1回目投与量"のための例えば7つの1日量を含むことを意味する。
【0157】
当然のことながら、本発明の(医薬)キットまたは医薬パッケージは、各期間(別々か一緒で)の必要に応じておおよそ1日量を含むこともできる。あるいは、(医薬)キットまたは医薬パッケージは、本明細書で定義する第1および第2期間のための1日量(別々か一緒で)のための必要数を含むように、すなわち"1回目投与量"、"2回目投与量"および"3回目投与量"が単一パッケージに含まれるように調製される。このようなパッケージは、患者の1回の全治療(第1および第2期間を含む)に理想的に十分である。本発明のキットおよびパッケージの一部を個々に、バイアルまたはボトルまたは容器もしくは多重容器ユニットの組み合わせにパッケージングすることができる。キットの製造は、好ましくは、当業者に公知の標準的方法に従って行う。
【0158】
本発明は、他の側面において、前記の医薬パッケージまたはキットおよび、本発明の方法によるそれらの順次使用のための書面による使用説明書に関する。前記医薬パッケージまたはキットは、ヒト患者におけるリンパ腫または白血病に存在する悪性CD19陽性リンパ球を治療するために、あるいは患者へのCD19xCD3二重特異性抗体の投与によってもたらされる副作用を改善または予防するためにその内容物を使用することができることを示すラベルまたは押印をさらに含むことができる
【0159】
本発明の医薬パッケージまたはキットは、患者に1回目および/または2回目投与量ならびに/または3回目投与量を投与する手段および/または緩衝液、バイアル、治療剤の注入に通常用いられるテフロン(登録商標)バッグまたは注入バッグをさらに含むことも考えられる。"手段"は、それによって、シリンジ、皮下注射針、カニューレ、カテーテル、静注用注入バッグ、静脈内ビヒクル、バイアル、緩衝液、安定剤、本発明の各用量および注入物の調製において当業者の助けとなる文書による使用説明書などからなる群から選択される1以上の商品(単数または複数)を含む。
【0160】
本発明の医薬パッケージまたはキットはさらに化学療法剤を含むこともまた考えられる。
【0161】
他の側面において、本発明は、前記請求項のいずれか1つに記載の方法に従った用法・用量の投与に適するように(に対応するように)前記1回目および/または前記2回目投与量が用意された医薬パッケージまたはキットを提供する。