【文献】
Ya-Show Chen, Chao-Shuan Chang, and Shing-Yi Suen,Protein adsorption separation using glass fiber membranes modified with short-chain organosilicon derivatives,Journal of Membrane Science,2007年,Vol.305, No.1-2,P.125-135
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窒素原子のドープ量は、前記表面側が最も濃度が高く、前記繊維の中心部になるほど濃度は低くなり、少なくとも最も中心に近いところでは窒素原子が存在しない、請求項6に記載のフィルターデバイス。
前記複数のシート状繊維構造体は、親水性コーティングされた第一のシート状繊維構造体と、疎水性コーティングされた第二のシート状繊維構造体とを設け、第一のシート状繊維構造体と、第二のシート状繊維構造体とが交互に積層された請求項10に記載の分析デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本開示はこれら実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
以下、本開示の実施の形態1におけるアモルファス二酸化ケイ素のシート状繊維構造体について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、実施の形態1におけるシート状繊維構造体の断面図、
図2は、シート状繊維構造体の表面状態を示す走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)像を示す写真である。
図1および
図2に示すように、シート状繊維構造体100は、アモルファス二酸化ケイ素(以下、単に二酸化ケイ素と呼ぶ)からなる繊維1が互いに絡み合い、接続され、内部に溶液や固体物質などを通すための空隙部2を有している。繊維1は、適度にカールした状態で互いに絡み合って密集している。
【0025】
さらに、この繊維1は、
図3に示すように適度にカールした状態で互いに絡み合って密集している。また、
図4に示すように、繊維1は、一部が互いに溶融された接続部3により接続されている。これにより繊維1は、より強固に繋がる。このように接続部3を持つことにより、隣り合う繊維1が互いに支え合うため、接続部3の無い場合に比べて強固になる。
【0026】
次に、シート状繊維構造体の製造方法の一例を示す。
まず、原料となるSiからなる粒子あるいは基材を準備する。この原料と少なくとも酸素が含まれるガスとを混合させ、ヒータなどを用いて1000〜1500℃で加熱する。原料はその原料が持つ沸点もしくは昇華点付近近辺に達すると蒸発をする。蒸発した原料はガスに含まれる酸素と結合し亜酸化シリコン(SiO)を形成した後、凝集を起こし、雰囲気中の酸素を取り込んで二酸化ケイ素(SiO
2)となり、繊維1として析出される。ここで、原料が持つ沸点もしくは昇華点付近近辺とは、原料が当該圧力雰囲気の時にガス化する温度のことをいう。
【0027】
ここで、形成されたSiOの周辺に核となる物質が存在すると凝集が起こりやすくなり、さらに雰囲気中の酸素を取り込んで、効率よく繊維1として析出される。なお、核となる物質としては、例えば、Ptの他に、Fe、Co、NiまたはAu等の金属を用いることができ、特に金属の種類には限定されない。また、核となる物質は必ずしも必要ではない。
なお、加熱時の圧力を大気圧より低くしておくと、原料の沸点もしくは昇華点付近が下がり、蒸発しやすくなるので、繊維1をより多く形成することができる。特に、出来るだけ酸素を取り除いた状態で昇温し、少量の酸素を追加した低酸素分圧下、例えば10
-2Pa〜数1000Paでその温度を維持することにより、繊維1の生産性が向上する。
【0028】
そして、このように析出した繊維1が絡み合い、重なり合うことによって、シート状繊維構造体100が形成される。このとき、繊維1が成長していく過程によってシート状になる場合と、繊維1が成長して形成された後にシート状になる場合とがある。このような条件は、繊維1を形成する際の温度に依存している。
【0029】
さらに、シート状繊維構造体100に約1100℃以上の熱を加えると、シート状繊維構造体100は熱溶融を起こす。熱溶融を起こしたSiO
2繊維は、冷却過程で隣り合う繊維と接触している箇所があると結合を起こし、
図3に示すように、接続部3を複数有するシート状繊維構造体100を形成する。このように接続されたシート状繊維構造体100は、空隙部2を有しているので表面積を大きく保つことができる。さらに繊維1が互いに支え合うため、接続部3の無い場合に比べて強固になる。
【0030】
なお、接続部3は、繊維1が成長していく過程においても形成される場合がある。接続部3の形成は繊維1の形成時の温度に依存している。特に原料にシリコン基板を用いた場合、繊維1形成過程における基板と繊維1との接合部分の表面では、繊維1が密集しているため溶融が起こりやすく、接続部3が形成されやすい。
【0031】
なお、繊維1を形成するために必要なガスは、酸素の他に、一酸化二窒素(N
2O)、一酸化炭素(CO)など酸化作用を有する(つまり酸素を供給する)ガスも使用可能である。しかしこれらのガスは、酸素とは別の不純物を含むため、繊維1の形成およびシート状繊維構造体100の形成過程に影響を及ぼすので、適切な濃度・温度・圧力の制御が必要である。
なお、繊維1の大きさ、繊維1の形成時における雰囲気の圧力、雰囲気の酸素濃度、雰囲気の温度などの条件により析出状態が変わる。そのため、これらの条件を変えることによって所望の形状を持った繊維1およびシート状繊維構造体100を形成できる。繊維1の直径(太さ)は0.01μm以上、1μm以下まで変えられる。繊維1の長さは1μm以上、500μm以下まで変えられる。
【0032】
このように形成されたシート状繊維構造体100の繊維1が複数形成されている領域においては、アモルファス二酸化ケイ素の表面積が極めて大きくなる。一方で、アモルファス二酸化ケイ素周辺には空隙部2が多数存在している。シート状繊維構造体100はアモルファス二酸化ケイ素からなる繊維1と空隙部2によって構成されている。そして本実施の形態では、空隙部2において、フィルター機能を設けることができる。
【0033】
また、このシート状繊維構造体100は高温、高酸素濃度下でも使用可能であり、
図3に示すように熱溶融により容易に網目状構造を形成することができるので、強度をさらに強くすることができるといったカーボン系ファイバーにはない特徴を有する。
【0034】
上記シート状繊維構造体100はガラスキャピラリ、PEEKチューブ等の送液路内に封入することでフィルターデバイス101とすることが可能であり、各種溶液のフィルターを容易に行うことができる。
図5は、複数の貫通孔4が形成された枠体5にシート状繊維構造体10を入れ、この枠体5をガラスからなるキャピラリ6の先端に封入した様子を示す模式図である。このようにすることで、キャピラリ6の上端から、たとえば白血球7と赤血球8が混在した溶液を投入すると、シート状繊維構造体100で白血球7が捕獲され、赤血球8のみが透過するといったフィルターデバイス101を得ることができる。なおここで、白血球7がシート状繊維構造体100に捕獲される理由は、白血球7のみがその表面に特定のタンパク質を保有しており、このタンパク質がシート状繊維構造体100の表面にあるSiOH基などに吸着されやすい性質を持っているからである。またシート状繊維構造体100の表面にはSiOH基の他、各種の分子構造をつけておくことができるので、フィルターにおいて捕獲したい物質によって各種分子構造の選択がなされることが好ましい。この場合においても、シート状繊維構造体100がナノ構造の屈曲した繊維構造であり、二酸化ケイ素(SiO
2)を主体とした材料であることは極めて有利である。すなわち、これら材料は耐薬品性、耐熱性に優れており、各種分子構造をつける際に用いる薬品や温度などの工程条件に制約がすくない。さらに、シート状繊維構造体100がナノ構造の屈曲繊維であるので、その表面積は大きくなり、
図6に示す捕獲の様子のように、被フィルター物質9である捕獲対象粒子を巻き込んで捕獲することができるので、より強い捕獲性能を有する。
【0035】
なお、
図5においては、フォルターデバイス101は、複数の貫通孔4を形成した枠体5にシート状繊維構造体100を形成したが、枠体5に保持部(図示せず)を設けてもよい。保持部を設けることにより、キャピラリ6挿入時の接合がさらに容易となる。さらに、保持部を設けることにより、枠体5本体の強度を増強することが可能となるため、保持部を設けることが望ましい。
【0036】
なお、
図5においては、フォルターデバイス101は、複数の貫通孔4を形成した枠体5にシート状繊維構造体100を形成したが、必ずしも枠体5に形成する必要はなく、
図7に示すように、流入口10と流出口11との間に挟むようにシート状繊維構造体100が備えられていればよい。この場合は流入口10から投入した溶液がシート状繊維構造体100に均一に透過するように、流入口10とシート状繊維構造体100の間に流路構造(図示せず)が設けられている。なお、このような流路構造が挟み込まれたフィルターは一般的であるので、ここではこれ以上説明しない。
なお、
図8に示すように、作製したシート状繊維構造体100の繊維1の表面を撥水膜12によって表面修飾することも可能である。撥水膜12は、例えばCF
2鎖が繋がったポリマーやCF基が存在するフッ素化合物、アルキルシリル基、フルオロシリル基、長鎖アルキル基によって形成できる。繊維1の表面が撥水効果を持つ化学物質で修飾されることにより、撥水膜12が繊維1の表面に形成される。
【0037】
撥水性の高いシート状繊維構造体100を用いたフィルターデバイス101は、フィルタリングする溶液の溶媒が疎水性である場合において特に有効である。すなわち、シート状繊維構造体100が親水性であると、疎水性溶媒はフィルターデバイス101に形成されたシート状繊維構造体100へ侵入できないが、疎水性にすることでこれら溶媒に対するフィルタリングを効率よく行うことが出来る。
【0038】
このように、シート状繊維構造体100の表面を疎水性にしたい場合において、本開示のシート状繊維構造体100は構造材料が二酸化ケイ素を主体としているため有利である。つまり、二酸化ケイ素は耐薬品、耐熱に優れており、撥水性表面を形成するための薬品、工程条件に制約が少ない。
【0039】
また、繊維1の表面側から窒素原子をドープすることで、繊維1の表面の分子組成を変更することができる。すなわち、繊維1の表面にSiN結合あるいはSiON結合を含むことができる。繊維1の主成分であるアモルファス二酸化ケイ素を、NH
3ガス雰囲気において1000℃前後に熱することで、繊維1の表面には窒素原子がドープされ、表面ではSi−O−N結合、もしくはSi−N結合が少なくとも5%以上、存在することになる。Si−O−N結合やSi−N結合は一般にアモルファス二酸化ケイ素の表面であるSi−O−H結合やSi−O−Si結合よりも安定しており、たとえば繊維1の表面に吸着する被フィルター物質9がフィルターデバイス101の経時変化によらず、安定して吸着するという利点を有している。
【0040】
例えば、二酸化ケイ素からなる繊維1を有するシート状繊維構造体100をNH
3ガス雰囲気囲気で焼成することによって繊維1の表面および内部に窒素をドープする窒化処理を施した。
図9は、実施の形態1におけるシート状繊維構造体を窒化処理した後の要部SEM写真である。
図9に示すように、窒化処理前の繊維1の形状と何ら変わりなく同じように、窒化処理後も複数の繊維1が互いに絡み合って接続され、空隙部2を形成している。
【0041】
図10は、窒化処理前後における繊維1についてのエネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry、EDS)分析結果を示す図である。その分析結果を(表1)に示す(小数点3桁未満は切り捨て。)。
【表1】
【0042】
窒化処理後は窒素原子(N)が増える一方で酸素原子(O)が減少しているのが分かる。すなわち、窒化処理前の繊維1には、窒素原子がほとんど存在しておらず、繊維1の表面はSiO結合である。一方、窒化処理後の繊維1の表面はSiO結合、SiN結合(もしくはSi−O−N結合)が混在している状態である。
【0043】
このようにSiN結合が存在する場合においては、SiO結合だけである場合よりも、表面の結合状態は安定的である。つまり、SiO結合だけの場合には最表面はSi−O−Siのシロキサン結合もしくは、Si−OHのシラノール基結合にて終端される必要があり、これらの結合は表面が暴露されている雰囲気に敏感に左右される。
【0044】
例えば、雰囲気温度が高く(たとえば100℃以上)乾燥した雰囲気である場合にはSi−O−Si結合が優勢になり、逆に、雰囲気温度が低く(たとえば室温以下)湿度が高い状態である場合にはSi−OH結合が優勢になるとされている。これは、下記反応が可逆的に起こりやすいからである。
Si−OH + Si−OH →← Si−O−Si + H
2O
【0045】
この反応は二つのSi−OH基が隣り合う距離にあるとき最も反応が起こりやすいため、表面がSiO
2のみで構成されている場合には環境によって不安定さが伴う。ここで不安定さとは、たとえば、表面電位のバラツキに影響する。表面がSiO
2のみで形成されている場合は、マイナスにチャージするSi−OH結合である場合と、プラスにチャージするSiO結合である場合と、が混在することになる。環境によって表面結合が変化することは、すなわち表面電位が環境によって変わりやすいということを意味している。
【0046】
しかし、本開示の一実施例のように、最表面にSiN結合が混在している場合には、Si−OH基が隣り合う確率が少なくなることで、上記反応が起こりにくく、つまり安定した表面となる。表面電位はNH
2基の数とSi−OH基の数の比によって変わるが、表面の結合状態が安定しているので、すなわち表面電位も安定している。
【0047】
本実施例では、上記のように窒化処理した繊維1からなるシート状繊維構造体100を用いて血液用フィルターを作成し、一定時間、保管し、環境によって表面状態がどのように変わるかを実際に実験した。
【0048】
図11は、窒化処理を行っていないサンプル(未処理1,未処理2,未処理3)と、窒化処理を行ったサンプル(窒化処理1、窒化処理2、窒化処理3)とを用い、血液用フィルターを作成した直後に血液サンプルを濾過し、赤血球回収率(透過率)と白血球除去率を比較した図である。
赤血球と白血球は、それぞれ異なる表面性を持ち、繊維1の表面には白血球のほうが赤血球に比べて捕捉されやすい性質を持つ。
図11に示すように、窒化処理を行っていないサンプル(未処理1,未処理2,未処理3)と、窒化処理を行ったサンプル(窒化処理1、窒化処理2、窒化処理3)との間には、赤血球の透過率は共に40〜70%、白血球の除去率は共に90〜100%と大きな差は見られなかった。すなわち、窒化処理による表面状態の変化は、シート状繊維構造体100を用いた血液用フィルターの初期特性においては何ら影響を及ぼさないことがわかった。
【0049】
そして、これら血液用フィルターのサンプルを窒素雰囲気にそれぞれパッケージし、長期的な保管を行った後、同様に血液サンプルを濾過し、赤血球透過率、白血球除去率を計測した。
図12は、窒化処理を行っていないサンプル(未処理4、未処理5)からなる血液用フィルター、あるいは、窒化処理を行ったサンプル(窒化処理4、窒化処理5、窒化処理6)からなる血液用フィルターをそれぞれ長期保管した後に、血液サンプルを濾過し、赤血球回収率(透過率)と白血球除去率を比較した図である。
【0050】
窒化処理を行っていないサンプル(未処理4、未処理5)では白血球の除去率が低下、赤血球透過率が上昇しており、血液用フィルターの特徴である白血球の優先的除去が見られにくくなった。一方で窒化処理を行ったサンプル(窒化処理4、窒化処理5、窒化処理6)では、初期状態のサンプル(窒化処理1、窒化処理2、窒化処理3)に比べて白血球の除去率が80〜95%へ低下が若干みられるものの、優先的に白血球を除去するフィルターとしての特性は失われてない。
すなわち、窒化処理を行うことで表面の結合状態が安定し、長期の保管においても表面特性の劣化が少なくなることが分かる。
【0051】
なお、上述のようなNH
3ガス雰囲気による窒素原子ドープを行った場合、繊維1の最も中心(内部)に近い部分では窒素原子が存在しないことが望ましい。つまり、窒素原子のドープ量は繊維物質の表面が最も高く、中心に向かうほど低くなり、最も中心では窒素原子は存在していない。このように、ドープ量が連続して変化していることで、繊維1は分子構造の不連続点を持つことが無いので、窒素原子のドープされた領域が剥がれるといったことがない。
【0052】
高分子材料によりフィルターデバイスを形成した場合は、耐熱性、耐薬剤性の問題がある。しかし、本実施の形態のシート状繊維構造体100を用いたフィルターデバイス101は、アモルファス二酸化ケイ素からなる無機材料であるため、耐熱性、耐薬剤性に優れている。シート状繊維構造体100は、耐熱温度が1000℃以上であり熱処理による表面処理などを容易に行える。そして、耐薬品性としてはフッ化水素酸以外に侵されることがなく、アルカリ性溶液に対しても強固である。このように、単位面積当たりの空隙率が高く、耐熱性、耐薬品性にも優れたフィルターデバイス101を提供できる。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1で形成されたシート状繊維構造体100を用いた分析デバイス102について説明する。
図13は、実施の形態2における分析デバイス102の上面図である。
図14は、実施の形態2におけるシート状繊維構造体の要部SEM写真である。
【0054】
本実施の形態における分析デバイス102は、シリコンからなる基板21と、この基板21表面に形成された末端に流入口24と流出口25とを設けた流路22と、この流路22の内壁に充填されたシリコン酸化物からなる繊維1よりなるシート状繊維構造体100とから構成されている。
【0055】
基板21は、単結晶シリコンからなるシリコン基板21を用いたが、他に例えば、ガラスや多結晶シリコン、熱酸化SiO
2、ポリシリコン、アモルファスシリコンなどの無機素材で形成することができる。また、シリコンの他に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、環状ポリオレフィンなどの樹脂や、それらの樹脂とガラスとの複合材料からも成形することもできる。
【0056】
ここで、シート状繊維構造体100に用いる繊維1は、流路22内壁から直接接合させることも可能であるが、流路22の内壁に充填しておいてもよい。ここで、「直接接合」とは、流路22内壁に繊維1とが直接形成され、流路22内壁と繊維1とを構成する原子または分子が直接結合している状態を指し、通常は分子間が共有結合をしている状態である。本実施例では、流路22内壁面のケイ素原子と繊維1中のケイ素原子とが、雰囲気中の酸素原子を介して共有結合している。
【0057】
図14に示すように、繊維1には、例えば、その表面に官能基23が形成されていてもよい。官能基23は、オクチル基、オクタデシル基、ドコシル基、トリアコチル基のいずれかを用いることができ、シランカップリング反応を用いることによって容易に繊維1の表面に形成することができる。
【0058】
この官能基23は、流路22内壁に形成された繊維1の表面に、分析直前に反応を行うことによって、官能基23を形成させても良いし、あらかじめ繊維1に官能基23を形成させた状態で、流路22の内部に充填させておいても良い。
【0059】
なお、繊維1が流路22内壁に形成された状態でシランカップリング反応によって官能基23を形成させる場合は、シランカップリング反応において未反応であった未反応シラノール基を繊維1表面より排除することが望ましい。
【0060】
本実施の形態における分析デバイス102は、流路22に供給されたサンプルが
図13に示した矢印方向に流れていき、流路22の内壁に充填された繊維1の表面に形成された官能基23と反応しながら流路22内部を通り抜けることで、サンプルを分離しながら、分析することができる。
【0061】
サンプルの供給は、
図13に示すように、流路22の末端に設けられた流入口24を用いて行われる。この時、流入口24に流体制御機構(図示せず)を設けることによってサンプルの供給をより円滑に行うことができる。流体制御機構としては、例えば、ロータリーポンプやブランジャーポンプを用いることができる。
【0062】
なお、流路22の末端である流出口25に光学分析用の光路(図示せず)を設けることで、分離された物質を分取後すぐに観測することができるため、流出口25に光学分析用の光路を設けることが好ましい。
【0063】
次に本実施の形態における分析デバイス102における効果を示す。
本実施の形態の分析デバイス102においては、0.01〜1μmの径を持つ繊維1からなるシート状繊維構造体100を用いているため、表面積の大きさを充分確保することによって、分離機能・感度を向上することができる。また、通常のシリカゲルなどの充填剤に比べ、繊維1の径が小さいために流路22内壁に高充填させることが可能となり、分析デバイス102そのものを小型化することが可能となる。従って、極微量のサンプルでも分析を行うことが可能となると同時に分離の際に用いるアセトニトリルなどの溶媒も少量で済ませることができ、分離用溶媒を削減することができる。その結果、分析時間の短縮や、分離用に用いられる溶媒を削減させることができ、分析効率を向上させることができる。
【0064】
本実施の形態の分析デバイス102は、吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排斥クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの固体相として用いることが可能であり、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィーなどとして用いることが可能である。
【0065】
なお、本実施の形態では流路22は基板21に形成する例で説明したが、必ずしも基板21上に形成する必要は無い。流路22は、キャピラリ形状(図示せず)となっており、流路22の内壁に官能基23を有する繊維1からなるシート状繊維構造体100が形成されている場合であっても実施することが可能である。
【0066】
なお、本実施の形態では流路22は基板21に直線状に1本形成する例で説明したが、流路22の末端に流入口24と流出口25とが形成されていれば、流路22の形状、本数はこれに限定されない。
【0067】
なお、本実施の形態では流体制御機構を用いてサンプルを供給したが、流出口25から吸引することによって、流路22にサンプルを供給することもできる。
【0068】
なお、実施の形態1同様に、シート状繊維構造体100を撥水処理し、撥水膜を形成しても同様の効果を奏する。
なお、実施の形態1同様に、シート状繊維構造体100の繊維1を窒化処理し、繊維1の表面側から窒素原子をドープすることで、繊維1の表面の分子組成を変更することができる。すなわち、繊維1の表面にSiN結合あるいはSiON結合を含ませることができる。この場合も同様の効果を奏する。
【0069】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、実施の形態1で形成されたシート状繊維構造体100を用いた分析デバイス102について説明する。本実施の形態での分析デバイス102は、一つの分析デバイス102の中に機能の異なる複数のシート状繊維構造体100が形成されている。
【0070】
図15に、本実施の形態における分析デバイス102の断面図を示す。分析デバイス102は、流入口24と流出口25と繋げる流路22を備えたキャピラリ26と、このキャピラリ26の流路22の内壁に充填されたシリコン酸化物からなる繊維1よりなるシート状繊維構造体100とから構成されている。このシート状繊維構造体100は、流路22内の複数ヶ所にそれぞれ備えられており、複数のシート状繊維構造体100は、親水性コーティングされた第一のシート状繊維構造体100aと、疎水性コーティングされた第二のシート状繊維構造体100bとを有し、この第一のシート状繊維構造体100aと、第二のシート状繊維構造体100bとが交互に積層されている。
【0071】
第一のシート状繊維構造体100aは、繊維1の表面を親水性コーティングすることによって得られる。繊維1の表面を親水性コーティングする場合には、シリコン酸化物よりなる表面をSi−OH結合が主流になるように処理すると親水性を有する。
【0072】
親水性コーティングすることにより、更に親水性特性はシート状繊維構造体の内部空間において均一になり、分析精度を向上させることが可能となる。
【0073】
一方、第二のシート状繊維構造体100aは、繊維1の表面を疎水性コーティングすることによって得られる。疎水性コーティングは、例えば、Si−O結合が主流になるように処理すると撥水性を有する。この方法に加えて、実施の形態1に示した方法により撥水処理することにより可能である。
【0074】
本開示によるシート状繊維構造体100は、大きな表面積を有しているので、親水性と撥水性との間をSiO結合、SiO結合の割合で制御することによって、親水性、撥水性等の表面の機能をより増大して得ることができる。さらにシート状繊維構造体100は複数の繊維1が互いに絡み合って接続しており、内部に大きな空隙を有していることから、表面の分子構造を変えるだけで親水性空間と撥水性空間を連続的に接続することが出来る。
【0075】
シート状繊維構造体100は、シリコン酸化物からなる繊維1からなっているため、繊維1を容易に化学修飾させることができるために、第一のシート状繊維構造体100a、第二のシート状繊維構造体100bを容易に形成することが可能となる。
【0076】
このように、一つの分析デバイス102の中に機能の異なる複数のシート状繊維構造体100を形成させておくことにより、それぞれの領域において溶媒物質の移動中に移動時間をより明確に変化させることが可能となるので、目的に応じた分離分析を容易に行うことができる。その結果、より効率的に分析を行うことができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、例えば第一のシート状繊維構造体100aと、第二のシート状繊維構造体100bとが交互に積層させて4層としたが、第一のシート状繊維構造体100aと、第二のシート状繊維構造体100bとが交互に積層した2層であっても構わない。
【0078】
なお、本実施の形態では、第一のシート状繊維構造体100aとして親水性コーティング、第二のシート状繊維構造体100bとして疎水性コーティングさせた繊維1を用いたが、それ以外にも例えば、イオン交換可能なイオン交換膜をコーティングさせた繊維1を用いたシート状繊維構造体100を用いることも可能である。
【0079】
ここでイオン交換可能なイオン交換膜をコーティングさせた繊維1とは、例えば、価数、解離性など性質の異なる官能基を繊維1に形成させることによって得られる。このようなシート状繊維構造体100を用いることにより、容易にイオン交換クロマトグラフィーを行うことが可能となる。
【0080】
あるいは、密度勾配を形成させた繊維1を用いたシート状繊維構造体100を用いることも可能である。
ここで密度勾配を形成させた繊維1とは、例えば、シート状繊維構造体100の上流から下流へ向かうに従って空隙径が徐々に小さくなるように孔径サイズを調節しシート状繊維構造体100を形成することによってできる。このようなシート状繊維構造体100を用いることにより、容易に分子排斥クロマトグラフィーを行うことが可能となる。
【0081】
これらのような目的の異なる複数のシート状繊維構造体100を用いることによって、一つの分析デバイスで様々な分析を行うことが可能である。