特許第5997174号(P5997174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997174
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】織機用ウェフトフィーダー
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/34 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   D03D47/34
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-543900(P2013-543900)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-503705(P2014-503705A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】IB2011003029
(87)【国際公開番号】WO2012080815
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】MI2010A002276
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513148439
【氏名又は名称】ロイ エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】ROJ S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】バッラービオ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】コヴェッリ,マルコ
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−328581(JP,A)
【文献】 特開昭61−197371(JP,A)
【文献】 実開昭56−138886(JP,U)
【文献】 特開平02−160952(JP,A)
【文献】 実開昭62−175091(JP,U)
【文献】 特開平08−167780(JP,A)
【文献】 特表平10−511069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 29/00−51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を駆動する電動モータを収容する本体と、その中間部でロータを回転駆動する回転軸と、前記回転軸の端部に回転可能に取付けられ、磁気手段により固定されているドラムとを備えるタイプの、織機用織糸のウェフトフィーダー装置であり、更に複数対の発光センサおよび受光センサが、ドラムと、ドラム側面にヨコ方向に延在する、ウェフトフィーダーの本体の延長部とにそれぞれ取付けられ、前記複数対の発光センサおよび受光センサが、そのセンサ対の間を通過する糸の有無を検知するように構成される織機用織糸のウェフトフィーダー装置であって、前記ドラムの外面が複数の個別セクターで構成され、前記発光センサと関連する供給及び制御回路が、前記セクターの一つの厚みに埋め込まれ、ウェフトフィーダーの本体の前記延長部に対向するよう配置されていることを特徴とする、ウェフトフィーダー装置。
【請求項2】
発光センサを収容するドラムの前記セクターは、連結可能な二つの部分、内側部と外側部とでそれぞれ構成され、その上に前記発光センサが配線された供給及び制御回路がそれら内側部と外側部の間に挟まれており、前記回路がフレキシブルプリント回路であることを特徴とする、請求項1に記載のウェフトフィーダー装置。
【請求項3】
前記発光センサが、SMD型LEDであることを特徴とする、請求項2に記載のウェフトフィーダー装置。
【請求項4】
前記発光センサが、前記外側部に形成された穴に収容され、前記穴は、外側がサファイアスライドで閉じられ、内側が耐油性レジンで封止されていることを特徴とする、請求項2に記載のウェフトフィーダー装置。
【請求項5】
前記発光センサが、それぞれウェフトフィーダーの軸に平行な線上の、ドラムの頭と糸停止ピンを収容する穴の近傍に設けられたストック開始センサとストック終了センサ、並びに糸停止ピンを収容する穴の側方で同穴の近傍に対称に設けられ、引出しコイルの数を制御する制御センサを含むことを特徴とする、請求項2に記載のウェフトフィーダー装置。
【請求項6】
それぞれウェフトフィーダー本体とドラムと一体化した磁気カップに収容される二つの環状コイルを備える、前記発光センサの誘導電流供給回路を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のウェフトフィーダー装置。
【請求項7】
前記電気コイルは、等しい直径又は少し異なる直径を有し、前記ロータの対向する側で互いに対向することを特徴とする、請求項6に記載のウェフトフィーダー装置。
【請求項8】
前記受光センサは、電磁糸停止装置と共に、ウェフトフィーダーの本体から突出する制御ブロックの下方部内に収容され、前記制御ブロックは、ドラム側面に横方向に延在する、ウェフトフィーダーの本体の前記延長部を構成することを特徴とする、請求項1に記載のウェフトフィーダー装置。
【請求項9】
前記受光センサは、前記受光センサの各実装面が一つの回路に存在するように二つのプリント回路に形成され、前記プリント回路は制御ブロックの下方部に設けられた各シート内に収容され、単一のクランプにより定位置に閉じこめられることを特徴とする、請求項8に記載のウェフトフィーダー装置。
【請求項10】
前記制御ブロックの外面全体は均一にアール付けされ、つまり鋭角や角が完全に除かれており、更にその前面には急なテーパーが施されていることを特徴とする、請求項8に記載のウェフトフィーダー装置。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、特に織機用織糸のウェフトフィーダーに関する。
【従来技術の背景】
【0002】
織機用ウェフトフィーダー装置は、織機と織機にヨコ糸を供給する給糸リールとの間に配置され、リールから糸を繰出す機能を実行することでヨコ入れ装置が糸を使えるようにし、ヨコ入れ作業全体において糸の張力を適度に維持することで、ウェフトフィーダーを装備しない織機においてヨコ入れ作業時に生じるような糸張力の急激な上昇を回避する装置である。本発明の目的は、規則正しくかつより遅い平均速度でヨコ糸をリールから引出し、固定円筒ドラムに連続的に巻取ることで、ドラムに糸ストックを形成する巻取りアセンブリをウェフトフィーダー内に設けることにより達成される。その後、この糸ストックは、織機のヨコ入れ装置(噴射ノズル又はグリッパー)により、断続的に高速で引出される。
【0003】
ウェフトフィーダーは、特にリールから直接給糸することが技術的に不可能であった近代の高速織機が導入されてから、これまで長年に亘って製織機に使用されてきた装置である。ウェフトフィーダーは長年に亘る進化の過程において、上述の基本的機能の他に、ウェフトフィーダーのクリティカルポイントに常に糸が存在するようにチェックし、ストックに貯留する糸の量と個々の巻き間隔を調整し、ヨコ入れ装置による引出し動作時における急激な加速による動的効果を制限するよう繰出し糸の速度を落とし、ヨコ入れ装置により引き出された糸の長さを測定することで、所定の長さの糸が供給された時点で糸の引出しを停止することを可能にする追加の制御機能を得ている。
【0004】
これら各種機能は、ウェフトフィーダーに搭載された処理装置のお蔭で得られるものである。この処理装置は、フィーダー装置の上記クリティカルポイントに対応して糸の有無を検出する電気信号で起動する最新のアルゴリズムに基づいて動作する。現在これらの電気信号は、発光/受光センサ対を用いて得られる。このセンサ対は、発光センサと受光センサの間の光路が糸の経路を所望の制御位置で遮るようにウェフトフィーダーに取付けられる。現在のウェフトフィーダーは、光路のタイプに応じて、つまりウェフトフィーダーに取付けられるLED光センサの位置に応じて、二つのカテゴリに分類される。
【0005】
第一のウェフトフィーダーカテゴリにおいては、発光センサも受光センサも、ウェフトフィーダー本体から突出し、ドラムの側面と平行に延びる支持アームに取付けられる。そして、各センサ対間の光路は、予め注意深く位置と角度を設定され、上記支持アームに対向するドラム側面に固着された各反射面を通る。
【0006】
より最近の第二のウェフトフィーダーカテゴリにおいては、発光センサは固定ドラムの側面に精密に取り付けられるが、受光センサは支持アームの上述した位置にある。この第二のウェフトフィーダーカテゴリにおいて、発光センサから発せられる光が受光センサにより直接受光されるので、その光放射の有無に対応する電気信号(この信号はそれぞれ、光路を通過する糸の有無により得られる)は、前述の反射システムの信号より強力で安定しているという利点がある。一方、この第二のウェフトフィーダーカテゴリには、発光センサを起動するに必要なエネルギーを標準的な電気ケーブルを介して供給することができないという欠点がある。というのは、当業者に周知のように、回転軸と一体化され、ドラムに糸を巻付けるよう構成されたロータをウェフトフィーダー本体とドラムの間に収容できるようにするために、ウェフトフィーダーの固定ドラムが、磁気手段のみを介してウェフトフィーダーの回転軸上の安定位置に保持されるからである。従って、従来の電気接続が沿設されるウェフトフィーダー本体に、ドラムを固定する機械的連結が設けられていないので、発光センサへの給電は、ドラム内に配置する別個の手段(バッテリ)、或いはウェフトフィーダー本体とドラムにそれぞれ収容される電気コイル対から成る誘導電流供給アセンブリを介して行わざるをえない。
【0007】
近年ウェフトフィーダーの上記の各性能が次第に完成度と信頼度を増してゆくなかで、これらの装置の新機能、つまり、最も多様性に富む織機への汎用性が重要になる。実際この汎用性は、職工の間で需要が大きい。というのは、この汎用性により、各種用途の織機やヨコ糸形成に使用される糸のタイプや色に応じて様々なタイプのウェフトフィーダーを取付ける必要から解放されるからである。
【0008】
実際、糸番と糸色に関する限りは、総じて職工から求められるのは、送り糸の条件変更の際のウェフトフィーダーの高い操作柔軟性である。具体的に言うと、ウェフトフィーダーは、光学的に検出しにくい極細の糸であれ、濃い色の糸であれ、透明又は高反射性の糸であれ、規則正しく動作することが求められる。
【0009】
特に、計測型ウェフトフィーダー、つまりヨコ入れ装置により引出される糸量を計測して、規定長に達した時点で引出しを止めることが可能で、現在は主にエアジェット織機やウォータージェット織機に使用されるウェフトフィーダーに関する限りは、織機の種類と製作される個々の織物の厚みに応じて、この糸長を広い測定範囲で変更できるという事実が、ユーザに高く評価されている。この目的を達成するには、明らかにヨコ入れの度にドラムから引出される糸の巻数の変更に加えて、ドラム自体を複数の個別シリンダセクターで構成し、上記セクターの径方向位置を最小径位置と最大径位置の間で手動調整できるようにする方法が知られている。しかしながら、この最後の条件(最大径)は、ウェフトフィーダーの設計段階で任意に決定可能であるのに対して、最小径条件は当然ながら、ドラム内に収容しなければならない諸々の装置の容積により限定される。本発明の主題である直接実装型光学センサを有するウェフトフィーダーのカテゴリにおいて、これら装置には、発光センサとそれに対応する誘導電流供給回路と電気コイルが含まれる。つまり厳密にはこれらの装置の容積が加わることが原因で、ヨコ糸長が短い分野における使用の柔軟性が、反射型光学センサを備えるウェフトフィーダーよりも劣るのである。
【課題および解決手段】
【0010】
従って本発明の一般的な課題は、特に引出糸長、糸番、糸色に関して、使用時の各種パラメータに対する高度な使用柔軟性を示す直接実装型センサを備える新しいウェフトフィーダー構造を提供することである。
【0011】
従って本発明の第一の目的は、ウェフトフィーダーに引出される最小ヨコ糸長の分野に関する上記の限界を解消し、反射型センサを備えるウェフトフィーダーの使用柔軟性と同等の柔軟性を提供し、それにより直接実装型センサを備えるウェフトフィーダーのこの課題に関連する利点を、薄い織物にまで拡大することである。
【0012】
本発明の第二の目的は更に、特に太い糸及び/又は非常に色の濃い、透明な或いは高反射性の糸に対する受光センサの感度と選択性を向上させることである。
【0013】
本発明の第三の目的は、上記と同じ一般的な課題の範囲に含まれるが、最後の目的で、ドラムからの糸の引出し、特に細いヨコ糸の引出しをより規則正しく行えるようにすることである。周知のように、上記のヨコ糸は、引出し時に所謂バルーン効果(ヨコ入れ装置による引出し時に糸にかかる動的衝撃が原因で、ドラムの前に大きな糸の環が形成されること)を生じる。
【0014】
本発明によれば、上記の主な目的は、請求項1に定義される特徴を有する直接実装型センサを備えるウェフトフィーダーを介して達成される。従属請求項には更に、本発明の好適且つ追加的特徴が定義される。これらの特徴は、上記の更なる目的の達成を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明によるウェフトフィーダーの他の特徴や利点は、いずれの場合においても、本発明の好適な実施態様の以下の詳細な説明から明らかになるだろう。但し、この実施態様は限定的でない単なる一例として、添付図に示される。
図1図1は、本発明によるウェフトフィーダーの側面図である。
図2図2は、図1のウェフトフィーダーの主要構成要素の分解図である。
図3図3は、図1のウェフトフィーダーのドラムの上方セクター及び発光センサの電源回路の分解図である。
図4図4は、図1のウェフトフィーダーの固定磁気カップの分解図である。
図5図5は、図1のウェフトフィーダーの浮動磁気カップの分解図である。
図6図6は、図1のウェフトフィーダーの電磁糸停止装置を収容し、受光センサを内蔵するブロックの分解図である。
【好ましい実施態様の詳細な説明】
【0016】
本発明によるウェフトフィーダーの全体構造(それ自体既知である)が、図1及び図2に明確に示されている。かかるウェフトフィーダーは、本体1で構成され、その内部に中空の回転軸2を駆動する電動モータが収容される。回転軸2は、その中間部でカップ状ロータ3を回転駆動し、その端部でドラムT内に回転可能に収容された偏心装置Dを回転駆動する。ロータ3と偏心装置Dは、回転軸2と一体形成することもできるし、或いは別個の要素として構成してから、それらを任意の既知の方法、例えば楔止等により回転軸2と一体化することもできる。ドラムTの外面は、複数の個別セクター4で構成される。これらのセクター4には、上記偏心装置Dと一体のフィンガー5が貫通する幅広の切欠きが設けられる。セクター4の位置は、ドラムTの直径が変更できるように径方向に調整可能となっており、従って、ドラムに巻きかけられる個々の糸コイルの長さが変えられ、従ってドラムに貯留されるすべての糸量が変更できる。
【0017】
ロータ3は、二つのカップ状の永久磁石要素の間に形成されたギャップ内を回転する。正確に言うと、本体1と一体化した固定磁気カップ6と、磁石の反対側に位置するドラムTと一体化した浮動磁気カップ7との間に形成されたギャップ内を回転する。磁気カップ6、7の磁石は、二つのカップが強く引き合うように配置される。この吸引力は、本体1との機械的連結が全くなくても、また、回転軸2がドラムTに与える牽引作用にも関わらず、回転時にドラムTの位置を固定させるに十分なものである。ドラムTと磁気カップ7は、その軸方向位置を定める軸受を介して回転軸上に支持されている。
【0018】
リール(図示せず)からの糸は、ウェフトフィーダーの後端部8からその中空軸2内に軸方向に入り、ロータ内に形成されて軸2の軸腔につながるチャネルを経てロータ3の周縁部に形成された出口9から出る。ロータ3が回転駆動されると、リールから引出された糸はドラムTのセクター4上の一連のコイルとして配置される。同時に偏心装置Dが回転駆動され(ドラムT内で軸2により回転駆動される)、糸コイルはセクター4へと徐々に変位し、周期的にセクター4から出入するフィンガー5の動きにより一定且つ調整可能な間隔でロータ3から離れる。偏心装置Dと各フィンガー5を備えていないウェフトフィーダーもあるが、この場合、コイルは互いに接触した状態でドラムTに巻き取られる。いずれにせよ本発明は、このタイプのウェフトフィーダーにも同様に適用可能である。
【0019】
本発明によれば、従来の支持アームの代わりに制御ブロック10が、ウェフトフィーダーの本体1の上方部から最終的に突出する。以下に詳細に説明するが、双方の受光センサRがこの制御ブロック内に収容されている。ブロック10から出てドラムTのブロックに臨むセクター4sの対応する穴Fに入るピンで構成され、ドラムTからの糸の引出しを停止させる電磁糸停止装置が、巻戻しコイル数が目標ヨコ糸長に相当する数値に達した時にドラムからの糸の引出しを阻止する。
【0020】
本明細書の冒頭部で述べたように、本発明の主な目的は、発光センサとその電源システムをドラムTに内蔵したために、ドラムTの外径がフィンガー5を制御する偏心装置Dだけを収容するのに必要な最低限の直径よりも大きくなるのを防止することである。これは反射型センサを備えるウェフトフィーダーに起こる問題である。
【0021】
この目的を達成するために、本発明のウェフトフィーダーにおいて、発光センサEを、図3に詳細に示す特定の構造を有するドラムTの上方セクター4sに埋め込む。実際この分解図から明らかなように、単一部品で構成されるドラムTの他のセクターとは異なり、このセクター4sは、ベース部11とカバー部12とを連結することで構成される。このベース部とカバー部の間には、超薄膜フレキシブルプリント回路13が挟まれている。発光センサEは、SMD型LEDつまり超小型の表面実装型デバイスであり、予めフレキシブルプリント回路13に配線されている。例示した実施態様において、発光センサEは4台あって、正確には、センサE1はドラムTに巻きかけられる糸コイルを検出して糸切れを監視するよう設計され、センサE2はドラムTへの糸の充填完了を検知するよう設計され、最後にセンサ対ES及びEZは、糸ストックがロータ3の回転方向S又はZに貯留される場合に、ドラムから引出されるコイル数をそれぞれカウントすることができる。センサES及びEZは、糸止めピン23を収容する穴Fの両側から同じ短い間隔をおいて取付けられるので、上記の穴FとセンサE2の両方に対して完全に対称となっている。これらセンサEの密接した対称配置は、セクター4sの特定の構造と後に説明される制御ブロック10の構造により可能となっているが、このような配置が、糸のセンサ通過時の非常に安定した正確な信号(上記の信号は、ロータの回転の両方向に関して完全に対称的である)と、同じ糸によるより優れたセンサクリーニング作用を得ることを可能にしている。
【0022】
セクター4sを取付ける際、ベース部11とカバー部12は、間にフレキシブルプリント回路13を挿入した後に互いに連結されるので、発光センサは自ずと、カバー部12に設けられたそれぞれの円形シート14に位置決めされる。その後これらのシートは、耐摩耗性の高い、透明なサファイアスライド15で上側を、耐油性レジンで下側を閉じられ、その後、4本の螺子16でアセンブリを封鎖する。この構造により、セクター4sは、他のセクター4と略同じ径方向の厚みを有する。従って、ドラムT内に発光センサEが存在することにより、そのドラムTの最小径が増大するということはなくなり、従って、ウェフトフィーダーに引出される糸の最小長が増加することはなくなる。
【0023】
厳密には必要ではないいずれの構成要素もドラムTから排除するために、本発明によるウェフトフィーダーにおいて、発光センサEの誘導電流力供給装置を構成する一対の電気コイルBは、特に便利で有効な位置に配置されている。この配置は、図4図5から直接知ることができる。これらの図はそれぞれ、ウェフトフィーダー本体1と一体化した固定磁気カップ6とドラムTと一体化した浮動磁気カップ7を示す。
【0024】
電気コイルBはどちらも環状形状を有し、軸2と同心状にカップ6、7内に対応して設けられた環状シート内に収容される。特に、第一電気コイルBpは、磁気カップ6の凹面に形成された環状シート17内に収容され、第二電気コイルBsは、磁気カップ7の凸面に形成された環状シート18内に収容される。この構造のおかげで、二つの電気コイルBは、ドラムTの領域を完全に自由にするだけでなく、磁気カップ6、7との完全な一体化も果たすので、上記カップの機能性に全く影響しない。上記の電気コイルBp、Bsは、全体に亘って僅かな間隔をおいて対向するように、つまり非導電性プラスチック材料から成るロータ3の厚み分だけ互いに離間されるように、同じ直径又はごく僅かに異なる直径を有するのが好適である。これにより、第二電気コイルBsに高い効率で発電することができ、従って発光センサEに十分給電することができる。
【0025】
本発明のウェフトフィーダーの他の改良点は、受光センサRの配置を、上記の発光センサEの新規配置と正確且つ有効に連結できるようにしたことである。実際本発明によれば、上記受光センサRは、単一の制御ブロック10内に収容されており、このブロックには電磁糸停止装置も収容されている。制御ブロック10は、上記構成要素が収容された下方部19と、蓋として、更にブロック10をウェフトフィーダー本体1に固着させる片持ち梁要素としての二つの役割を果たす上方部20とを含むアルミニウム鋳物で構成するのが好適である。図1及び図2に明確に示すように、下方部19の外面は全て均一にアール付けされている。つまり、鋭いエッジと角が完全に無くなり、更に前方の領域、つまり本体1に対向しない側には、急なテーパーを施して電磁糸停止装置を収容するに厳密に必要とされる容積まで下方部の容積を削っている。
【0026】
受光センサRは、二枚の別個のリジッドプリント回路に配線された(正確には、受光センサはそれぞれ、発光センサRの配置されている面に配される)SMD型フォトトランジスタで構成するのが好適である。これらのプリント回路は、ブロック10の下方部19内に予め形成された適切なシート内に入れられ、螺子手段により上記下方部19に固着された単一クランプ21により定位置に閉じこめられる。特に、傾斜位置の矩形の第一プリント回路には受光センサR1が実装されるが、水平位置のY形の第二プリント回路には受光センサR2、RZ、RSが実装される。これらのセンサはそれぞれ、同じ番号で対応付けられた発光センサEと機能的に接続される。この場合にも、別の構成として、全ての受光センサRを収容する単一のフレキシブルプリント回路を使用し、回路の各部が正確に傾斜するようにクランプ21の形状と寸法を適当に変更することも可能である。
【0027】
最後に、ブロック10の下方部19の残りの内部スペースには、電磁糸停止装置(それ自体既知である)が収容される。電磁糸停止装置は必須要素として、制御電磁石22と可動停止ピン23を備えている。停止ピンは、停止装置が駆動されると、Y形プリント回路の二つのアーム間を移動し、セクター4sに設けられた穴Fに入る。発光センサEに関する説明と同様に、受光センサRも下方部19の適切な腔部内に収容され、サファイアスライド15で外側を閉じられ、耐油性レジンで内側を封止される。スペーサーと密封手段と封鎖手段で装置を完成する。
【0028】
受光センサRとそれらを収容するブロック10の特定の構成により、多くの構造上と動作上の利点が得られる。構造上の観点からは、受光センサRと電磁糸停止装置22、23が、分離可能かつ全開可能な本体(正確には、ブロック10の下方部19である)に搭載できることから、実装作業を大幅に簡素化し、作業時間を短縮し、受光センサRの完璧な角位置決めの再現性が得られ、はるかに頑丈で防護性の高い構造が得られる。
【0029】
動作上の観点からは、第一に、ブロック10のコンパクトな形状、センサRと電磁糸停止装置22、23の近接配置、直接実装型センサの使用により、停止装置22、23の動作により生じる振動が及ぼす、センサRの読取り感度への悪影響を大幅に低減することができる。ブロック10が箱形であり、それを密封手段で閉鎖することで、粉塵や他の汚れが全く入ってこないようにして清潔を保ち、各構成要素の良好な動作を維持する。下方部19の前方の急なテーパーと高度なアール付けを施した形状から、ウェフトフィーダーの前方には広いフリースペースができる。従ってウェフトフィーダーでは、糸を引出す間に糸のバルーン効果が容易に生じ、効率が高い(糸引出し速度が速い)、織物の品質が高い(糸ストレスが少ない)、エネルギー節約(空気消費量が低減される)等の利点がある。最終的に、ブロック10をセクター4sの上面に非常に近接させて取付けることで、各センサ対E2/R2、EZ/RZ、ES/RSをセクター4とフィンガー5との間の間隙に蓄積される塵が完全にない状態に維持することができる。これには、三対のセンサが非常に近接した状態に取付けられることも関与している。
【0030】
上記の説明から、本発明のウェフトフィーダーが設定された目的を完全に達成したことが明らかとなる。実際、ドラムTの上方セクター4s内での発光センサEの特定位置により、この要素の容積を増加しなくてすむので、反射型センサを備えるウェフトフィーダーに関するドラムの最小径条件への影響をなくすことができる。従って本発明のウェフトフィーダーは、これまで特徴となっていた唯一の限界を解消し、発光センサEのセクター4sへの実装を大幅に簡略化するとともに信頼性を高めたので、反射型センサを備えるウェフトフィーダーに対して競争力のあるものとなっている。実際に上記の実装工程は、反射型センサの動作のため、特に、耐摩耗性を強化するために上記センサの表面にプラズマ処理を施す場合に要求されるような、同じセクターにおいて適切に傾斜を持たせた鏡面を正確に位置決めする工程よりもはるかに楽になっている。
【0031】
発光センサEと受光センサRを特定の近接対称配置にしたおかげで、太い糸の場合にも糸の有無を示す信号を高感度で安定して得ることができるだけでなく、非常に暗い色や透明又は高反射性のヨコ糸に対する優れた検出能を得ることができ、本発明の第二の目的も達成している。
【0032】
アール面を設けた単一のコンパクトなブロックにまとめられたので、受光センサRも電磁糸停止装置22、23も、ウェフトフィーダーの前方に糸バルーン形成のための広いスペースを可能にし、糸に有害なストレスが生じるのを防止し、従って本発明の第三の目的も達成している。
【0033】
但し、本発明は上述した特定の構成に限られるものではなく、上記の構成は単なる本発明の例示にすぎず、当業者の考えうる範囲において、以下のクレームに定義される本発明の適用範囲から逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6